説明

レーザ加工機

【課題】加工ノズルを所定のピッチ送り方向に移動可能に支持させてなるノズル支持ユニットと、このノズル支持ユニット及び加工ノズルを前記ピッチ送り方向とは交差した所定の走行方向に走行可能に支持する走行駆動機構と、前記加工ノズルの前記ピッチ送り方向位置を検出するためのリニアスケールとを有するレーザ加工機において、走行駆動機構が発熱しノズル支持ユニットが熱膨張することに伴い、リニアスケールの検出値と加工ノズルの実際の位置とがずれてしまう不具合の発生を抑制する。
【解決手段】ノズル支持ユニット(X軸ユニット322)における走行駆動機構R近傍の位置の温度と室温との温度差を検知するための温度差検知手段7と、この温度差検知手段7が検出した温度差に基づきリニアスケール6が検出した値に補正を加えながら加工ノズル3のピッチ送り方向位置を制御する制御装置Sとをレーザ加工機1に具備させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば太陽電池パネル、有機ELディスプレイやプラズマディスプレイの製造工程における薄膜のレーザスクライブ、パターニング等を実施するレーザ加工機に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のレーザ加工機は、基板の被加工面に成膜した薄膜にレーザ光を照射して除去加工することを主務とする。出願人が既に提案しているレーザ加工機(下記特許文献1を参照)では、エアを吹出させる浮上装置を用いて基板を浮かせつつ台車で搬送し、所定の加工用領域に設置した加工ノズルから出射するレーザ光により薄膜をパターニングする。
【0003】
上掲のレーザ加工機は優れて有用なものである。しかしながら、レーザ加工時に基板を加工用領域の前後に往復動させるために、基板寸法の倍以上の面積を占有してしまうきらいがある。
【0004】
そこで、占有面積を削減するための構成として、基板を動かないよう保定する保定機構と、所定の走行方向に走行して前記基板の被加工面にレーザ光を照射しかつその走行方向とは交差したピッチ送り方向にも移動可能な加工ノズルと、前記所定の走行方向に走行可能であるとともに前記ピッチ送り方向に前記加工ノズルを移動可能に支持するノズル支持ユニットと、このノズル支持ユニットを前記所定の走行方向に走行させるための走行駆動機構とを具備する構成のレーザ加工機が考えられている。
【0005】
このような構成を採用すれば、基板でなく加工ノズルを走行させるため、レーザ加工機の設置に必要な面積は、基板を往復動させる従来の構成と比較して約半分となる。
【0006】
しかして、このようなレーザ加工機においては、加工ノズルを前記走行方向に基板の一端部から他端部まで走行させるごとに、加工ノズルを前記ピッチ送り方向に所定ピッチだけ移動させる必要がある。この移動に際して、加工ノズルのピッチ送り方向の現在位置を検出するために、前記ノズル支持ユニットと前記加工ノズルとの間にリニアスケールを設ける構成が考えられる。ところが、走行駆動機構によりノズル支持ユニットを前記所定の走行方向に走行させると、走行駆動機構が発熱し、走行駆動機構からの熱がノズル支持ユニットに伝達されてノズル支持ユニットが熱膨張することがある。この熱膨張により、ノズル支持ユニット上に設けたリニアスケールの光透過孔間の距離が延び、リニアスケールによる計測値と加工ノズルの実際の位置とがずれてしまう不具合が発生しうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4231538号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記に着目してなされた本発明は、走行駆動機構が発熱しノズル支持ユニットが熱膨張することに伴う上述した不具合の発生を抑制することを所期の目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち本発明に係るレーザ加工機は、加工対象物を支持する本体と、前記加工対象物の被加工面にレーザ光を照射して加工する加工ノズルと、所定のピッチ送り方向に前記加工ノズルを移動可能に支持するノズル支持ユニットと、このノズル支持ユニット及び前記加工ノズルを前記ピッチ送り方向とは交差した所定の走行方向に走行可能に支持する走行駆動機構と、前記ノズル支持ユニットと前記加工ノズルとの間に設けられ前記加工ノズルの前記ピッチ送り方向位置を検出するためのリニアスケールと、前記ノズル支持ユニットにおける前記走行駆動機構近傍の位置の温度と室温との温度差を検知するための温度差検知手段と、この温度差検知手段が検出した温度差に基づき前記リニアスケールが検出した値に補正を加えながら前記加工ノズルのピッチ送り方向位置を制御する制御装置とを具備することを特徴とする。
【0010】
このような構成によれば、ノズル支持ユニットの走行駆動機構近傍の位置の温度と室温との温度差を検知し、この温度差に基づき補正手段により前記リニアスケールの検出した値に補正を加えることにより、ノズル支持ユニットの熱膨張による生じるリニアスケールの測定誤差を補正できる。
【0011】
前記加工ノズルを前記ピッチ送り方向に沿って複数配列しているレーザ加工機においては、各加工ノズルのピッチ送り方向位置を検知可能であるとともに、前記制御装置が、各加工ノズルごとに前記リニアスケールにより検出された値を前記温度差検知手段が検出した温度差に基づき補正を加えるものが望ましい。このようなものであれば、各加工ノズルそれぞれについて、ノズル支持ユニットの熱膨張により生じるリニアスケールの測定誤差を補正できるからである。
【0012】
特に、各加工ノズルごとに、温度差に対する補正量を異ならせているものであれば、ノズル支持ユニットの熱膨張による変位がノズル支持ユニット上の位置により異なることを反映してより正確に加工ノズルの位置を知ることができる。
【0013】
また、前記ノズル支持ユニットの前記走行駆動機構近傍の位置、及び前記本体の走行駆動機構から離間した位置にそれぞれ設けた温度センサを利用して前記温度差検知手段を形成しているものであれば、本体の走行駆動機構から離間した位置に設けた温度センサが検出した温度を室温と見なすことにより、レーザ加工機内に温度差検知手段を収納しつつ、室温の測定値に対する走行駆動機構の発熱の影響を抑制できる。なお、「前記ノズル支持ユニットの前記走行駆動機構近傍の位置、及び前記本体の走行駆動機構から離間した位置にそれぞれ設けた温度センサ」とは、前記ノズル支持ユニットの前記走行駆動機構近傍の位置の温度、及び前記本体の走行駆動機構から離間した位置の温度をそれぞれ検知可能なものだけでなく、この両位置の温度差を検知するための熱電対の両電極等をも含む概念である。
【0014】
さらに、上述したような走行駆動機構を少ない設置スペースで設置できるようにするための構成として、前記走行駆動機構を、前記ノズル支持ユニットに設けたリニアモータ可動子と、前記本体に設けたリニアモータ固定子とを利用して形成しているものが挙げられる。
【0015】
そして、リニアスケールの測定誤差を小さくするために好適な態様として、前記走行駆動機構を、前記ノズル支持ユニットのピッチ送り方向中央部に設けているものが挙げられる。このようなものであれば、ノズル支持ユニットがピッチ送り方向中央部から離間する方向に熱膨張することになるので、一端部に走行駆動機構を設ける場合と比較して、発熱源である走行駆動機構からの最大距離を小さくできるからである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ノズル支持ユニットの走行駆動機構近傍の位置の温度と室温との温度差を検知し、この温度差に基づき補正手段により前記リニアスケールの検出した値に補正を加えることにより、ノズル支持ユニットの熱膨張に伴いリニアスケールによる計測値と加工ノズルの実際の位置とがずれてしまう不具合の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態のレーザ加工機を示す全体斜視図。
【図2】同レーザ加工機の集塵ノズルをオミットした分解斜視図。
【図3】同レーザ加工機の加工ノズル及び支持機構を示す部分分解斜視図。
【図4】同レーザ加工機の集塵ノズルをオミットした正面図。
【図5】同レーザ加工機の制御装置の機能ブロック図。
【図6】同レーザ加工機の補正マップを概略的に示す図。
【図7】同レーザ加工機の加工ノズルのX軸方向位置の検出値と実測値との間の変位の時間変化を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態について述べる。
【0019】
図1ないし図4に示すレーザ加工機1は、加工ノズル3の上方に架設した支持機構4と、支持機構4の傍らに設置した保定用押付板2と、支持機構を下方から支持する架台8とを具備し、加工対象物である基板0を支持する本体Bと、架台8上に配置してなり前記基板0の被加工面にレーザ光を照射して加工する加工ノズル3と、この加工ノズルを所定のピッチ送り方向たるX軸方向に走行可能に支持するノズル支持ユニットたるX軸ユニット322と、このX軸ユニット322及び前記加工ノズル3を前記X軸方向とは交差した所定の走行方向たるY軸方向に走行可能に支持する走行駆動機構Rと、前記本体Bの支持機構4の上方に吊設した集塵ノズル5と、加工ノズル3のX軸方向位置を検出するためのリニアスケール6と、前記ノズル支持ユニットSにおける前記走行駆動機構R近傍の位置の温度と室温との温度差を検知するための温度差検知手段7と、この温度差検知手段7が検出した温度差に基づき前記リニアスケール6が検出した値に補正を加えながら前記加工ノズル3のX軸方向位置を制御する制御装置Cとを主要な構成要素とする。
【0020】
前記本体Bは、上述したように、加工ノズル3の上方に架設した支持機構4と、支持機構4の傍らに設置した保定用押付板2と、支持機構を下方から支持する架台8とを具備する。
【0021】
前記支持機構4は、架台8に固定するフレーム9により加工ノズル3やノズル支持ユニットS等と衝突しない高さに持ち上げた台枠を主体とする。台枠4は、前後方向に拡張し上下に貫通した複数の開口47を左右方向に配列した形状をなす。加工ノズル3から出射するレーザ光は、この開口47を通過する。台枠4の開口47の周縁部には、多数の転動体45を散開させて設けている。この台枠4は、左右方向に移動可能であるようにフレーム9に支持されている。台枠4とフレーム9との間には、台枠4の左右方向の移動を惹起するピッチ送り用モータ46を介設している。
【0022】
前記保定用押付板2は、図2に示すように、レーザ加工時に基板0を動かないよう保定する保定機構である。この保定用押付板2は、左右に対をなし、フレーム9上の台枠4よりも外側方に所在している。これら保定用押付板2は、エアシリンダで駆動されて左右方向に接近または離間し、基板0の側端面に当接して左右から基板0を挟持する。
【0023】
前記加工ノズル3は、XYステージ32に支持させてなる。このXYステージ32は、前後方向に延伸するY軸レール321と、このY軸レール321に案内されて前後方向に走行するとともに左右方向に拡張してその上部にX軸レール323を設けている前記X軸ユニット322と、X軸レール323に案内されて左右方向に移動する台車324とを備えてなる。台車324は、リニアサーボ可動子を駆動源とする。本実施形態では、X軸ユニット322に複数基の台車324を配し、各台車324にそれぞれ加工ノズル3を搭載している。加工ノズル3には、レーザ発振器から供給されるレーザ光を導く光ファイバ31を接続している。
【0024】
前記走行駆動機構Rは、前記ノズル支持ユニットSの下面のX軸方向中央部に設けたリニアサーボ可動子すなわちリニアモータ可動子R1と、前記架台8のX軸方向中央部に前後方向に延伸させて設けたリニアモータ固定子R2とを利用して構成しているリニアモータ式走行駆動機構である。そして、この走行駆動機構Rが作動することにより、前記X軸ユニット322がY軸方向に走行する。
【0025】
集塵ノズル5は、薄膜をパターニングすることで発生する粉塵を吸引するために存在する。集塵ノズル5は、加工ノズル3の上方に設けてなり、下向きに開口した吸引口を有する。本実施形態では、この集塵ノズル5が加工ノズル3に略同期してY軸方向に移動するようにしている。集塵ノズル5には、ダクトホース51を接続している。集塵ノズル5を介して吸引した粉塵は、ダクトホース51を経由して図示しない集塵機に集められる。
【0026】
前記リニアスケール6は、前記X軸ユニット322と前記加工ノズル3との間に設けられ前記加工ノズル3のX軸方向位置を検出する。具体的には、例えば、図示はしないが、前記加工ノズル3側、具体的には台車324に設けた光源と、前記X軸ユニット322に所定ピッチで設けた光透過孔と、前記光透過孔それぞれの下方に設けた受光素子とを利用して構成している。そして、前記受光素子により、各加工ノズル3を搭載した台車324にそれぞれ設けた前記光源からの光を前記受光素子がそれぞれ検知することにより、各加工ノズル3それぞれの位置を検知して制御装置Cに出力することができる。
【0027】
前記温度差検知手段7は、本実施形態では、前記X軸ユニット322の走行駆動機構R近傍の位置、より具体的にはリニアモータ可動子R1近傍の位置であるX軸方向中央部と、前記架台8のX軸方向端部とにそれぞれ第1、第2の電極71、72を設けた温度センサたる熱電対を利用して構成している。ここで、本実施形態では、前記架台8のX軸方向端部の温度を室温と見なし、前記走行駆動機構R近傍の位置の温度と室温との差を制御装置Sに出力する。
【0028】
前記制御装置Cは、図5に概略的に示すように、中央演算処理装置C1と、記憶装置C2と、入力インタフェースC3と、出力インタフェースC4とを具備する一般的なマイクロコンピュータシステムを利用して構成しているものであり、前記温度差検知手段7が検出した温度差に基づき前記リニアスケール6が検出した値に補正を加えながら前記加工ノズル3のピッチ送り方向位置すなわちX軸方向位置を制御する。
【0029】
より具体的には、入力インタフェースC3は、前記リニアスケール6から出力された各加工ノズル3それぞれの位置を示す信号、及び前記温度差検知手段7から出力された前記走行駆動機構R近傍の位置と室温との差を示す信号を受け付ける。
【0030】
出力インタフェースC4は、各加工ノズル3をX軸方向に移動させるための命令、及びレーザ出力をON/OFFする命令を少なくとも出力する。
【0031】
記憶装置C2には、予め実験により求めた前記温度差と、リニアスケール6が示す加工ノズル3の位置と実際の加工ノズル3の位置との間の変位の対応を記憶している図6に示すような補正マップと、前記リニアスケール6から出力された各加工ノズル3それぞれの位置、及び前記温度差をパラメータとしてこの補正テーブルを参照することにより実際の加工ノズル3それぞれの位置を決定するためのプログラムと、各加工ノズル3を所定ピッチだけX軸方向に移動させる制御を行うためのプログラムと、レーザ出力をON/OFFさせる制御を行うためのプログラムとを少なくとも記憶している。なお、前記温度差と、前記リニアスケール6が示す加工ノズル3の位置と実際の加工ノズル3の位置との間の変位は、図6に示すように略比例している。そこで、実際には、各加工ノズル3ごとに前記温度差をパラメータとした場合の前記変位を示す比例定数を記憶している。なお、前記図6においては、8個の加工ノズル3それぞれについて、一端側から数えて第1〜8番目に位置する加工ノズル3それぞれの前記変位に、符号31〜38をそれぞれ付している。
【0032】
そして、中央演算処理装置C1が前記記憶装置C2に記憶したプログラムを実行する。
【0033】
以下、レーザ加工を実行する際の各部の作用について述べる。
【0034】
レーザ加工を実行するにあたっては、まず、薄膜を成膜した被加工面を上にした基板0を前方から搬入する。即ち、図示しない搬送ユニットを駆動して、基板0を台枠4上に送り込み、台枠4上に載置する。
【0035】
次いで、保定用押付板2を基板0の両側端面に押し付けて基板0を両側から挟持し、架台8に対して基板0を保定する。
【0036】
しかる後、加工ノズル3を所要の加工部位に移動させてレーザ光を上向きに発射し、基板0を透過させて被加工面にある薄膜に照射する。具体的には、X軸ユニット322を前後方向に走行させながらパルスレーザを連続的に照射して、前後方向に延伸した溝を薄膜に形成する。また、加工ノズル3を搭載した台車324をX軸方向にピッチ送り移動させ、溝の形成位置を遷移させる。同時に、レーザ光軸が台枠4に干渉しないよう、台車324に連動して台枠4をも左右方向に移動させる。このとき、基板0を支える台枠4が基板0に対して相対的に変位することになるが、基板0の下面と台枠4の上面との間に転動体45が介在しておりこれが回転するため、台枠4の移動は妨げられない。因みに、台車S2及び台枠4をともに左右方向に移動させながらパルスレーザを連続的に照射して、左右方向に延伸した溝を薄膜に形成することも可能である。
【0037】
ここで、加工ノズル3及び台車324を左右方向にピッチ送り移動させる際には、制御装置Cは、上述したように前記リニアスケール6から出力された各加工ノズル3それぞれの位置の検出値pj(jは第j番目の加工ノズル3を示す添字、j=1〜8の整数)を示す信号を受け取る。その一方で、これも上述したように、前記温度差検知手段7から出力された前記走行駆動機構R近傍の位置と室温との温度差δTを示す信号も受け取る。それから、前記温度差δTをパラメータとし、前記補正マップを参照しつつ以下の式(1)により補正量δpj(jは第j番目の加工ノズル3を示す添字、j=1〜8の整数)を計算する。
【0038】
δpj=Cj×δT (1)
ここで、(jは第j番目の加工ノズル3を示す添字、j=1〜8の整数)Cjは、予め実験に基づき各加工ノズル3ごとに求めた比例定数であり、制御装置Cの内部メモリに記憶している。
【0039】
その後、各加工ノズル3ごとに、補正後の位置pad_jを以下の式(2)により決定する。
【0040】
ad_j=pj−δpj (2)
ここで、各加工ノズル3それぞれの位置の検出値pj(jは第j番目の加工ノズル3を示す添字、j=1〜8の整数)の実測値からの変位の時間に対する変化を図7の(a)、各加工ノズル3の補正後の位置pad_jの実測値からの変位の時間に対する変化を同図の(b)に示す。なお、前記図7の(a)および(b)の時間及び前記変位のスケールは共通である。また、前記図7においても、一端側から数えて第1〜8番目に位置する加工ノズル3それぞれの前記変位に、符号31〜38をそれぞれ付している。
【0041】
なお、前記温度差δTは、例えば10分ないしそれ以内の予め設定した所定時間ごとに検出してそのつど更新するようにしている。
【0042】
そして、前記式(2)により求めた各加工ノズル3の補正後の位置pad_jがピッチ送り開始前から所定ピッチだけ変化しているか否かを判定し、この判定の結果が「真」となった時点で各加工ノズル3の移動を停止する。
【0043】
なお、レーザ加工の最中には、集塵ノズル5をレーザ照射点の直上に位置づけ、発生する粉塵を適宜吸引、集塵することが好ましい。
【0044】
レーザ加工が完了したら、基板0を搬出する。
【0045】
以上に述べたように、本実施形態に係るレーザ加工機1の構成によれば、温度差検知手段7によりX軸ユニット322の走行駆動機構R近傍の位置の温度と室温との温度差を検知し、この温度差に基づき制御装置Cが加工ノズル3の位置の検出値の補正量δpjを計算し、補正を行った結果である補正後の位置pad_jに基づき加工ノズル3の位置を制御するので、走行駆動機構Rが発熱し、この熱の伝達を受けてX軸ユニット322の温度が時間経過に伴い上昇することに伴う熱膨張による生じるリニアスケール6の測定誤差を補正できる。従って、走行駆動機構Rの発熱に影響されずに基板0に所定ピッチで溝を形成できる。
【0046】
また、リニアスケール6が、前記X軸方向に沿って複数配列した各加工ノズル3のX軸方向位置を検知可能であるとともに、前記制御装置Cが、各加工ノズル3ごとに前記リニアスケール6により検出された値を前記温度差検知手段7が検出した温度差に基づき補正を加えるので、各加工ノズル3それぞれについて、X軸ユニット322の熱膨張により生じるリニアスケール6の測定誤差を補正できる。
【0047】
さらに、各加工ノズル3ごとに、温度差に対する補正量を異ならせているので、ノズル支持ユニットSの熱膨張による各部位の変位がX軸ユニット322上の位置により異なることを反映してより正確に加工ノズル3の位置を知ることができる。
【0048】
加えて、前記X軸ユニット322の前記走行駆動機構R近傍すなわちX軸方向中央部、及び前記本体Bの走行駆動機構Rから離間した位置すなわちX軸方向一端部にそれぞれ第1、第2の電極71、72を設けた熱電対を利用して前記温度差検知手段7を形成し、本体BのX軸方向一端部に設けた第2の熱電対72が検出した温度を室温と見なすことにより、レーザ加工機1内に温度差検知手段7を収納しつつ、室温の測定値に対する走行駆動機構Rの発熱の影響を抑制できる。
【0049】
さらに、前記走行駆動機構Rを、前記ノズル支持ユニットSに設けたリニアモータ可動子R1と、前記本体Bの架台8に設けたリニアモータ固定子R2とを利用して形成しているので、このような走行駆動機構Rを少ない設置スペースで設置できる。
【0050】
そして、前記走行駆動機構Rを、前記X軸ユニット322のX軸方向中央部に設けているので、前記図6に示すように、X軸ユニット322はX軸方向中央部から離間する方向に熱膨張する。従って、X軸ユニット322の一端部に走行駆動機構Rを設ける場合と比較して、発熱源である走行駆動機構Rからの最大距離を小さくでき、リニアスケール6の測定誤差を小さくすることができる。
【0051】
なお、本発明は以上に述べた実施形態に限られない。
【0052】
例えば、走行駆動機構の位置は任意に設定してよい。また、リニアモータ可動子とリニアモータ固定子との組み合わせに替えて、例えば、通常の回転式モータと、この回転式モータの出力軸に接続した転動子と、この転動子を添接させてなるレールとを利用して走行装置を構成してもよい。
【0053】
さらに、室温を検知する温度センサは、レーザ加工装置の本体に限らず、例えばレーザ加工装置の外部に設けてもよい。また、通信回線その他の方法で室温を示す信号を別途受け付けるようにしてもよい。
【0054】
また、リニアスケールは、光源と光透過孔と受光素子を利用したものに限らず、ノズル支持ユニット側に設けた永久磁石と加工ノズル側に設けた電磁石とを利用して形成した磁気式のものを採用してもよい。
【0055】
加えて、加工ノズルの数は任意であり、1個だけ設けるようにしてもよい。
【0056】
そして、各ノズルごとに補正量テーブルを用意する態様に替えて、リニアスケールが検出したノズル支持ユニット上の加工ノズルの位置の測定値と前記温度差から直接補正量を決定する態様を採用してもよい。
【0057】
その他、本発明の趣旨を損ねない範囲で種々に変更してよい。
【符号の説明】
【0058】
B…本体
3…加工ノズル
322…X軸ユニット(ノズル支持ユニット)
6…リニアスケール
7…温度差検知手段
R…走行駆動機構
C…制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工対象物を支持する本体と、
前記加工対象物の被加工面にレーザ光を照射して加工する加工ノズルと、
所定のピッチ送り方向に前記加工ノズルを移動可能に支持するノズル支持ユニットと、
このノズル支持ユニット及び前記加工ノズルを前記ピッチ送り方向とは交差した所定の走行方向に走行可能に支持する走行駆動機構と、
前記ノズル支持ユニットと前記加工ノズルとの間に設けられ前記加工ノズルの前記ピッチ送り方向位置を検出するためのリニアスケールと、
前記ノズル支持ユニットにおける前記走行駆動機構近傍の位置の温度と室温との温度差を検知するための温度差検知手段と、
この温度差検知手段が検出した温度差に基づき前記リニアスケールが検出した値に補正を加えながら前記加工ノズルのピッチ送り方向位置を制御する制御装置とを具備することを特徴とするレーザ加工機。
【請求項2】
前記加工ノズルを前記ピッチ送り方向に沿って複数配列し、各加工ノズルのピッチ送り方向位置を検知可能であるとともに、前記制御装置が、各加工ノズルごとに前記リニアスケールにより検出された値を前記温度差検知手段が検出した温度差に基づき補正を加える請求項1記載のレーザ加工機。
【請求項3】
各加工ノズルごとに、温度差に対する補正量を異ならせている請求項2記載のレーザ加工機。
【請求項4】
前記ノズル支持ユニットの前記走行駆動機構近傍の位置、及び前記本体の走行駆動機構から離間した位置にそれぞれ設けた温度センサを利用して前記温度差検知手段を形成している請求項1、2又は3記載のレーザ加工機。
【請求項5】
前記走行駆動機構を、前記ノズル支持ユニットに設けたリニアモータ可動子と、前記本体に設けたリニアモータ固定子とを利用して形成している請求項1、2、3又は4記載のレーザ加工機。
【請求項6】
前記走行駆動機構を、前記ノズル支持ユニットのピッチ送り方向中央部に設けている請求項1、2、3、4又は5記載のレーザ加工機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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