説明

レーザ加工装置および加工対象物の位置検出方法

【課題】加工用レーザ光の光軸に直交する方向において、加工用レーザ光の焦点と加工対象物との位置合せを高精度で行うことが可能なレーザ加工装置を提供すること。
【解決手段】レーザ加工装置1は、ワーク2の加工を行うための加工用レーザ光とワーク2へ照射されるとともに加工用レーザ光よりも出力の小さな計測用レーザ光とを出射するレーザ光源3と、レーザ光源3に対して、Z方向で計測用レーザ光の焦点Fよりも離れた位置に配置され、計測用レーザ光を反射する反射板9と、レーザ光源3と反射板9との間でワーク2を保持する移動機構10と、反射板9で反射された計測用レーザ光を受光する撮像素子7とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ加工装置、および、レーザ加工装置における加工対象物の位置検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、加工対象物(ワーク)に対して加工用レーザ光で除去加工等の微細なレーザ加工を行うレーザ加工装置が利用されている。この種のレーザ加工装置として、加工用レーザ光を出射する加工用レーザ光源に加え、加工用レーザ光の焦点とワークとの位置合せを行うため、加工用レーザ光と波長の異なる計測用レーザ光を出射する計測用レーザ光源を有するレーザ加工装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載のレーザ加工装置では、計測用レーザ光源から出射されワークで反射された計測用レーザ光は、CCDカメラに入射する。そして、CCDカメラでの撮影結果に基づいて、計測用レーザ光の焦点とワークとの位置合せが行われる。
【0004】
【特許文献1】特開2005−161387号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のレーザ加工装置では、加工用レーザ光と計測用レーザ光とがそれぞれ異なる光源から出射されているため、ワークに照射されるレーザ光の光軸に直交する方向で、加工用レーザ光の焦点位置と計測用レーザ光の焦点位置とを一致させることは困難である。そのため、レーザ光の光軸に直交する方向において、計測用レーザ光の焦点の位置とワークとの位置合せが精度良く行われたとしても、加工用レーザ光の焦点と加工対象物との位置合せの精度が低下する。
【0006】
そこで、本発明の課題は、加工用レーザ光の光軸に直交する方向において、加工用レーザ光の焦点と加工対象物との位置合せを高精度で行うことが可能なレーザ加工装置を提供することにある。また、本発明の課題は、加工用レーザ光の光軸に直交する方向において、加工用レーザ光の焦点と加工対象物との位置合せを高精度で行うことが可能となる加工対象物の位置検出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明のレーザ加工装置は、加工対象物の加工を行うための加工用レーザ光と加工対象物へ照射されるとともに加工用レーザ光よりも出力の小さな計測用レーザ光とを出射するレーザ光出射手段と、レーザ光出射手段に対して、計測用レーザ光の光軸方向で計測用レーザ光の焦点よりも離れた位置に配置され、計測用レーザ光を反射する反射手段と、レーザ光出射手段と反射手段との間で加工対象物を保持する保持手段と、反射手段で反射された計測用レーザ光を受光する撮像手段とを備えることを特徴とする。
【0008】
本発明のレーザ加工装置は、レーザ光出射手段と反射手段との間で加工対象物を保持する保持手段と、計測用レーザ光を反射する反射手段で反射された計測用レーザ光を受光する撮像手段とを備えている。そのため、反射手段で反射された計測用レーザ光を用いて、計測用レーザ光の光軸に直交する方向(光軸直交方向)の加工対象物の端部を検出できる。したがって、光軸直交方向において、計測用レーザ光を用いて検出される計測用レーザ光の焦点の位置と、加工対象物の端部との距離の算出が可能になる。また、本発明のレーザ加工装置では、加工用レーザ光と計測用レーザ光とが共通のレーザ光出射手段から出射されている。そのため、加工用レーザ光の光軸に直交する方向(すなわち、光軸直交方向)において、加工用レーザ光の焦点の位置と計測用レーザ光の焦点の位置とを一致させることができる。したがって、算出された計測用レーザ光の焦点と加工対象物の端部との距離から、加工用レーザ光の焦点と加工対象物の端部との距離を精度良く求めることができる。その結果、光軸直交方向において、加工用レーザ光の焦点と加工対象物との位置合せを高精度で行うことが可能になる。
【0009】
ここで、加工対象物で反射された計測用レーザ光を用いて、光軸直交方向の加工対象物の端部を検出することも可能である。しかしながら、この場合には、光軸直交方向における加工対象物の端部と計測用レーザ光との位置合せが難しく、また、検出精度が低下する。本発明では、反射手段で反射された計測用レーザ光を用いて、光軸直交方向の加工対象物の端部を検出するため、容易にかつ精度良く加工対象物の端部を検出できる。
【0010】
本発明において、反射手段は、計測用レーザ光を乱反射させる乱反射面を備えることが好ましい。このように構成すると、計測用レーザ光の光軸に対する反射手段の傾きを精度良く調整しなくても、撮像手段で加工対象物の端部を検出することが可能になる。そのため、加工対象物の端部の検出が容易になる。
【0011】
また、上記の課題を解決するため、本発明は、加工用レーザ光を用いて加工対象物に加工を行うレーザ加工装置での加工対象物の位置検出方法において、加工用レーザ光および加工用レーザ光よりも出力の小さな計測用レーザ光を出射するレーザ光出射手段と、レーザ光出射手段に対して、計測用レーザ光の光軸方向で計測用レーザ光の焦点よりも離れた位置に配置され、計測用レーザ光を反射する反射手段との間に、かつ、光軸方向に直交する方向で焦点から外れた位置に加工対象物を配置する配置ステップと、計測用レーザ光を出射する出射ステップと、反射手段で反射された計測用レーザ光を受光して、加工対象物の光軸方向に直交する方向の端部を検出する端部検出ステップと、焦点と端部との距離を算出して、加工対象物の位置を検出する距離算出ステップとを備えることを特徴とする。
【0012】
本発明の加工対象物の位置検出方法では、端部検出ステップで、反射手段で反射された計測用レーザ光を受光して、加工対象物の光軸直交方向の端部を検出している。また、距離算出ステップで、計測用レーザ光の焦点と端部との距離を算出して、加工対象物の位置を検出している。また、本発明では、出射ステップで、加工用レーザ光を共通のレーザ光出射手段から計測用レーザ光を出射している。そのため、光軸直交方向において、加工用レーザ光の焦点の位置と計測用レーザ光の焦点の位置とを一致させることができる。したがって、計測用レーザ光の焦点と加工対象物の端部との距離から、加工用レーザ光の焦点と加工対象物の端部との距離を精度良く求めることができ、光軸直交方向において、加工用レーザ光の焦点と加工対象物との位置合せを高精度で行うことが可能になる。
【0013】
本発明において、配置ステップの前に、光軸方向における焦点の位置と、加工対象物の位置との位置合せを行う位置合せステップを備えることが好ましい。このように構成すると、受光ステップにおいて、撮像手段によって、加工対象物の端部より鮮明に撮影できる。そのため、端部検出ステップにおいて、加工対象物の端部をより精度良く検出できる。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明のレーザ加工装置では、加工用レーザ光の光軸に直交する方向において、加工用レーザ光の焦点と加工対象物との位置合せを高精度で行うことが可能になる。また、本発明の加工対象物の位置検出方法を用いると、加工用レーザ光の光軸に直交する方向において、加工用レーザ光の焦点と加工対象物との位置合せを高精度で行うことが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0016】
(レーザ加工装置の概略構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかるレーザ加工装置1の概略構成を模式的に示す図である。図2は、図1に示すワーク2がX方向で計測用レーザ光の焦点Fから外れた位置にあるときの状態を示す図である。
【0017】
本形態のレーザ加工装置1は、所定の加工対象物(ワーク)2に対して除去加工や接合加工等の微細なレーザ加工を行うレーザ微細加工装置である。特に、本形態のレーザ加工装置1は、卓上への設置が可能な軽量かつ小型の加工装置である。このレーザ加工装置1は、図1に示すように、ワーク2の加工を行うための加工用レーザ光および加工用レーザ光の焦点とワーク2との位置合せ等を行うための計測用レーザ光を出射するレーザ光出射手段としてのレーザ光源3と、レーザ光源3から出射された計測用レーザ光の出射光量を測定するための出射光量測定手段としての第1受光素子4と、ワーク2で反射された計測用レーザ光の反射光量を測定するための反射光量測定手段としての第2受光素子5および遮蔽部材6と、計測用レーザ光の反射光を用いてワーク2を撮影可能な撮像手段としての撮像素子7と、レーザ光源3から出射された加工用レーザ光や計測用レーザ光の光路を形成するための光学系8とを備えている。また、レーザ加工装置1は、加工用レーザ光および計測用レーザ光の光軸方向で、レーザ光源3に対して、ワーク2よりも離れた位置に配置され、計測用レーザ光を反射する反射手段としての反射板9と、ワーク2を移動可能に保持する保持手段としての移動機構10と、レーザ加工装置1の各種の制御を行う制御部11とを備えている。
【0018】
なお、以下では、加工用レーザ光および計測用レーザ光をまとめて表す場合には「レーザ光」と表記する。また、以下では、図1の左右方向をX方向、紙面垂直方向をY方向、上下方向(すなわち、ワーク2に照射されるレーザ光の光軸方向)をZ方向と表記する。
【0019】
光学系8は、凹レンズ14および凸レンズ15を有するビームエキスパンダー16と、凹レンズ14と凸レンズ15との間に配置された第1ビームサンプラー17と、撮像素子7と第1ビームサンプラー17との間に配置された第2ビームサンプラー18と、ワーク2の配置位置とビームエキスパンダー16との間に配置された対物レンズ19とを備えている。
【0020】
ビームエキスパンダー16では、凹レンズ14がレーザ光源3側に配置され、凸レンズ15が対物レンズ19側に配置されている。このビームエキスパンダー16は、レーザ光源3から出射されるレーザ光の径を拡大する。第1ビームサンプラー17は、レーザ光源3から出射され、凹レンズ14を透過したレーザ光の大半を凸レンズ15に向かって透過させるとともに、その一部を第1受光素子4に向かって反射する。また、第1ビームサンプラー17は、ワーク2や反射板9で反射された計測用レーザ光の一部を撮像素子7に向かって反射する。第2ビームサンプラー18は、第1ビームサンプラー17で反射され撮像素子7へ向かう計測用レーザ光の一部を第2受光素子5に向かって反射する。対物レンズ19は、凸レンズ15を透過したレーザ光をワーク2に集光する。
【0021】
レーザ光源3は、たとえばファイバーレーザであり、上述のように、加工用レーザ光と計測用レーザ光とを出力する。計測用レーザ光の出力は、加工用レーザ光の出力よりも非常に小さくなっている。また、本形態のレーザ光源3は、ワーク2の適切な加工を行うため、出力の安定した加工用レーザ光を出射する。その一方で、レーザ光源3の特性上、加工用レーザ光よりも出力の非常に小さな計測用レーザ光のレーザ光源3からの出力は安定せず、計測用レーザ光の出力は、経時的に変動する。なお、本形態では、加工用レーザ光の波長と計測用レーザ光の波長とがほぼ等しくなっており、加工用レーザ光の焦点位置と計測用レーザ光の焦点位置とはほぼ一致する。
【0022】
第1受光素子4および第2受光素子5は、フォトダイオードやフォトトランジスタ等の素子で構成されている。第1受光素子4は、その受光量を電気量に変換することで、レーザ光源3から出射された計測用レーザ光の出射光量を測定する。また、第2受光素子5は、その受光量を電気量に変換することで、ワーク2で反射された計測用レーザ光の反射光量を測定する。
【0023】
遮蔽部材6には、第2ビームサンプラー18で反射された計測用レーザ光が通過する微小孔6aが形成されている。本形態では、ワーク2(具体的には、たとえば、図1のおけるワーク2の上面2a)が計測用レーザ光の焦点Fの位置にあるときに、ワーク2の反射光が結像する位置(合焦位置)が微小孔6aの形成位置となるように、遮蔽部材6が配置されている。すなわち、本形態の第2受光素子5は、出力が安定しにくい焦点外の余分な反射光を除去する共焦点効果を利用して、ワーク2で反射された計測用レーザ光の反射光量を測定する。
【0024】
撮像素子7は、CCDやCMOS等のイメージセンサである。この撮像素子7は、ワーク2が計測用レーザ光の焦点Fの位置にあるときに、ワーク2の反射光が結像する位置が撮像素子7の受光面となるように配置されている。
【0025】
上述のように、反射板9は、レーザ光源3に対して、Z方向でワーク2よりも離れた位置に配置されている。すなわち、反射板9は、レーザ光源3に対して、Z方向で計測用レーザ光の焦点Fよりも離れた位置に配置される。また、反射板9は、図2に示すように、ワーク2が、Z方向に直交する方向で計測用レーザ光の焦点Fから外れた位置にあるときに、計測用レーザ光を反射する。この反射板9は、後述のように、ワーク2のX、Y方向(Z方向に直交する方向)の端部を検出するために用いられる。本形態の反射板9は、セラミック部材や金属部材で形成されている。また、反射板9の反射面(図1の上面)9aは、入射された計測用レーザ光を乱反射させる乱反射面(粗面)となっている。すなわち、反射面9aには、粗面加工が施されている。
【0026】
移動機構10は、ワーク2を保持する保持部21と、保持部21を駆動する駆動部22とを備え、Z方向における対物レンズ19と反射板9との間でワーク2を移動可能に保持している。駆動部22は、保持部21をX、Y、Z方向の3軸方向へ駆動する。
【0027】
制御部11には、レーザ光源3と第1受光素子4と第2受光素子5と撮像素子7と移動機構10とが接続されている。制御部11は、上述のように、レーザ加工装置1の各種の制御を行う。たとえば、制御部11は、後述のように、第1受光素子4で測定された出射光量と第2受光素子5で測定された反射光量とに基づいて、計測用レーザ光の焦点FのZ方向位置を特定し、移動機構10を駆動させて焦点Fの位置までワーク2を移動する。
【0028】
(計測用レーザ光の焦点のZ方向位置の検出原理)
図3は、図1に示すワーク2のZ方向の位置と、第2受光素子5で測定される反射光量との関係を示すグラフである。
【0029】
本形態では、第1受光素子4で測定された計測用レーザ光の出射光量と、第2受光素子5で測定された計測用レーザ光の反射光量とに基づいて、計測用レーザ光の焦点FのZ方向位置が検出される。以下、本形態の計測用レーザ光の焦点のZ方向位置の検出原理を説明する。
【0030】
レーザ光源3から出射される計測用レーザ光の出力が一定である場合には、第2受光素子5で測定される計測用レーザ光の反射光量と、ワーク2のZ方向位置との関係は、図3の実線で示すグラフGのように略正規分布状になる。すなわち、Z方向で、ワーク2が計測用レーザ光の焦点Fの位置にあるときには、第2受光素子5で測定される反射光量は極大値Lとなり、ワーク2が焦点Fから対物レンズ19側または反射板9側に向かって離れるにしたがって、第2受光素子5で測定される反射光量は小さくなる。
【0031】
したがって、計測用レーザ光の出力が一定である場合には、移動機構10でZ方向にワーク2を移動させながら、第2受光素子5で計測用レーザ光の反射光量を測定して、極大点Mを特定し、極大点Mに対応するワーク2のZ方向位置を測定することで、計測用レーザ光の焦点FのZ方向位置が検出される。
【0032】
しかしながら、上述のように、本形態のレーザ光源3から出射される計測用レーザ光の出力は、経時的に変動する。そのため、第2受光素子5で測定される反射光量とワーク2のZ方向位置との関係は略正規分布状にはならず、たとえば、図3の二点鎖線で示すグラフG10のように変動する。したがって、第2受光素子5で測定される反射光量をそのまま用いて、計測用レーザ光の焦点FのZ方向位置を検出すると、計測用レーザ光の焦点FのZ方向位置の検出精度が低下する。
【0033】
そこで、本形態では、第1受光素子4で測定された計測用レーザ光の出射光量に基づいて、第2受光素子5で測定された反射光量を補正した補正光量が算出される。すなわち、第1受光素子4によって、計測用レーザ光の現状の出力を把握し、第2受光素子5で測定された反射光量から出力の変動分をキャンセルした補正光量が算出される。そして、この補正光量に基づいて計測用レーザ光の焦点FのZ方向位置が検出される。
【0034】
具体的には、第1受光素子4で測定される出射光量と計測用レーザ光の出力との関係(第1受光素子4の特性)、および、第2受光素子5で測定される反射光量と計測用レーザ光の出力との関係(第2受光素子5の特性)を予め求め、これらの関係から計測用レーザ光の出力の変動分をキャンセルした補正光量が算出される。そして、ワーク2のZ方向位置との関係で、この補正光量が極大となる点を特定し、この極大点に対応するワーク2のZ方向位置を測定することで、計測用レーザ光の焦点FのZ方向位置が検出される。なお、本形態では、補正光量の算出は制御部11で行われる。また、計測用レーザ光の焦点Fの位置の検出も制御部11で行われている。
【0035】
(ワークのX、Y方向端部の検出原理)
図4は、図1に示す反射板9で計測用レーザ光が反射されたときに撮像素子7で撮影される映像の一例を示す図である。
【0036】
本形態では、反射板9で反射された計測用レーザ光を用いて、ワーク2のX、Y方向の端部が検出される。以下、直方体状のワーク2のX方向端部2b(図2参照)が検出される場合を例に、本形態のワーク2のX、Y方向端部の検出原理を説明する。
【0037】
ワーク2のX方向端部2bの検出前に、まず、上述の方法で計測用レーザ光の焦点FのZ方向位置が検出され、ワーク2と焦点Fとの位置合せが行われる。すなわち、図1に示すように、Z方向で、ワーク2の上面2aと焦点Fとの位置合せが行われる。この状態で、撮像素子7によって撮影された映像上に、焦点Fに対応する焦点対応点F1が設定される(図4参照)。その後、図2に示すように、移動機構10によってワーク2がX方向へ移動され、X方向で焦点Fから外れた位置に配置される。
【0038】
ワーク2がX方向で焦点Fから外れると、撮像素子7によってたとえば、図4に示す映像が撮影される。すなわち、反射板9で乱反射された計測用レーザ光の一部がワーク2によって遮られるため、撮像素子7によって撮影された映像上の、ワーク2に対応するワーク対応エリア21が暗くなり、その他のエリアは明るくなる。また、Z方向で、ワーク2の上面2aと焦点Fとの位置合せが行われているため、ワーク2のX方向端部2bに対応する端部対応線211は、撮像素子7によって撮影された映像上で明確に特定される。すなわち、ワーク2のX方向端部2bが検出される。なお、ワーク2のX方向端部2bをより精度良く検出するためには、撮像素子7の前に拡大光学系を配置することが好ましい。
【0039】
端部対応線211が明確に特定されると、端部対応線211と焦点対応点F1とのX方向の距離X1が算出される。すなわち、X方向端部2bと焦点Fとの距離が算出される。また、X方向端部2bとワーク2の加工部位と距離は予め、設計上でわかっているため、焦点Fとワーク2の加工部位までのX方向の距離が算出される。同様に、ワーク2のY方向の端部も検出され、焦点Fとワーク2の加工部位までのY方向の距離が算出される。また、焦点Fとワーク2の加工部位までの距離の算出は、制御部11で行われている。
【0040】
(ワークの位置合せ方法)
図5は、図1に示すレーザ加工装置1でのワーク2の位置合せの手順を示すフローチャートである。以上のように構成されたレーザ加工装置1では、以下のように、ワーク2の位置合せを行う。
【0041】
まず、移動機構10によって、ワーク2をX、Y方向へ移動させて、レーザ光源3から出射されるレーザ光が照射される位置にワーク2を配置する(ステップS1)。その後、レーザ光源3から計測用レーザ光を出射し(ステップS2)、第1受光素子4で出射光量を測定するとともに、第2受光素子5で反射光量を測定する(ステップS3)。
【0042】
その後、第1受光素子4で測定された出射光量と第2受光素子5で測定された反射光量とから、補正光量を算出して記憶する(ステップS4)。その後、ワーク2をZ方向の所定範囲に配置して、各配置位置で出射光量および反射光量を測定したか否かを判断する(ステップS5)。具体的には、ステップS5では、Z方向で計測用レーザ光の焦点Fの位置を含む所定範囲にワーク2を配置して、各配置位置で出射光量および反射光量を測定したか否かを判断する。所定範囲で測定が行われていない場合には、ステップS3へ戻る。
【0043】
一方、所定範囲で出射光量および反射光量を測定している場合には、ステップS4で算出、記憶された補正光量から計測用レーザ光の焦点FのZ方向位置を検出する(ステップS7)。具体的には、ワーク2の各位置に対応する補正光量から近似曲線を作成し、ワーク2のZ方向位置との関係で補正光量が極大となる点を特定して、焦点FのZ方向位置を検出する。
【0044】
計測用レーザ光の焦点FのZ方向位置を検出すると、移動機構10でワーク2をZ方向へ移動させ、Z方向で、検出された焦点Fとワーク2との位置合せを行う(ステップS8)。その後、移動機構10でワーク2をX、Y方向へ移動させ、X、Y方向で焦点Fから外れた位置にワーク2を配置する(ステップS9)。この状態で、反射板9からの反射光を用いて、撮像素子7によって、ワーク2の端部を検出する(ステップS10)。その後、ワーク2の端部と焦点Fとの距離を算出するとともに、ワーク2の加工部位と焦点Fとの距離を算出して、焦点Fに対するワーク2の位置を検出する(ステップS11)。そして、移動機構10によって、X、Y方向で加工部位と焦点Fとの位置合せを行い(ステップS12)、ワーク2の位置合せが終了する。また、ワーク2の位置合せ後には、レーザ光源3から加工用レーザ光を出射してワーク2のレーザ加工を行う。
【0045】
なお、本形態では、ステップS9は、レーザ光源3と反射板9との間に、かつ、X、Y方向で、焦点Fから外れた位置にワークを配置ステップであり、ステップS2は、計測用レーザ光を出射する出射ステップであり、ステップS10は、反射板9で反射された計測用レーザ光を撮像素子7が受光して、X、Y方向の端部を検出する端部検出ステップであり、ステップS11は、ワーク2の端部と焦点Fとの距離を算出して、ワーク2の位置を検出する距離算出ステップである。また、本形態では、ステップS3〜S8は、配置ステップであるステップS9の前に、Z方向における焦点Fの位置とワーク2の位置との位置合せを行う位置合せステップである。
【0046】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、反射板9で反射された計測用レーザ光を撮像素子7で受光して、ワーク2のX、Y方向の端部を検出している。また、計測用レーザ光の焦点Fとワーク2の端部との距離を算出して、ワーク2の焦点Fに対する位置を検出している。また、本形態では、波長がほぼ等しい加工用レーザ光と計測用レーザ光とが共通のレーザ光源3から出射されている。そのため、加工用レーザ光の焦点と計測用レーザ光の焦点Fとがほぼ一致する。すなわち、X、Y方向で加工用レーザ光の焦点と計測用レーザ光の焦点Fとがほぼ一致する。したがって、計測用レーザ光の焦点Fとワーク2の端部との距離から、加工用レーザ光の焦点とワーク2の端部との距離を精度良く求めることができ、X、Y方向において、加工用レーザ光の焦点とワーク2との位置合せを高精度で行うことが可能になる。
【0047】
特に、本形態では、Z方向における計測用レーザ光の焦点Fの位置と、ワーク2の位置との位置合せを行った後に、反射板9で反射された計測用レーザ光を用いて、ワーク2のX、Y方向の端部を検出している。そのため、撮像素子7によって、ワーク2の端部より鮮明に撮影でき、その結果、ワーク2の端部をより精度良く検出できる。
【0048】
本形態では、反射板9の反射面9aは、計測用レーザ光を乱反射させる乱反射面となっている。そのため、計測用レーザ光の光軸に対する反射板9の傾きを精度良く調整しなくても、撮像素子7で容易にワーク2の端部を検出できる。
【0049】
(他の実施の形態)
上述した形態では、ワーク2で反射された計測用レーザ光の反射光量は、第2受光素子5で測定されているが、計測用レーザ光の反射光量は、撮像素子7で測定されても良い。また、計測用レーザ光の反射光量は、第2受光素子5と撮像素子7との両者で測定されても良い。ここで、撮像素子7に入射する反射光は、図6の実線で示すように、反射光の中心部が一番明るく、中心部から離れるにしたがって次第に暗くなる。そして、撮像素子7で撮影される反射光の映像において、所定の閾値t以上の明るさを有する領域が反射光のスポットとして特定され、特定されたスポットの明るさの総和が撮像素子7で測定される計測用レーザ光の反射光量となる。また、第2受光素子5で反射光量が測定される場合と同様に、移動機構10でZ方向にワーク2を移動させながら、撮像素子7で計測用レーザ光の反射光量を測定して、ワーク2のZ方向位置との関係で、反射光量の極大点を特定することで、計測用レーザ光の焦点FのZ方向位置の検出が可能である。
【0050】
この場合にも、計測用レーザ光の出力が経時的に変動すると、ワーク2のZ方向の位置が一定であっても、撮像素子7で測定される反射光量は変動する。たとえば、図6の二点鎖線で示すように、計測用レーザ光の出力が低下すると、撮像素子7に入射する反射光の明るさも低下して、スポットが小さくなり、その結果、測定される反射光量も低下する。そのため、上述した形態と同様に、第1受光素子4での測定結果から、出射光量の変動を考慮して撮像素子7で測定される反射光量を補正することで、計測用レーザ光の焦点FのZ方向位置を高精度で検出できる。
【0051】
なお、撮像素子7のみで反射光量を測定する場合には、図7に示すように、第2受光素子5、遮蔽部材6および第2ビームサンプラー18が不要となるため、レーザ加工装置1の構成を簡素化できる。また、図7に示すように、レーザ加工装置1は、必ずしも、第1受光素子4を備えていなくても良い。すなわち、第1受光素子4を備えていないレーザ加工装置1であっても、X、Y方向において、加工用レーザ光の焦点とワーク2との位置合せを高精度で行うことが可能である。
【0052】
上述した形態では、反射板9の反射面9aは、乱反射面となっている。この他にもたとえば、反射面9aは鏡面であっても良い。この場合には、端部対応線211が撮像素子7によって撮影された映像上に現れるように、反射面9aの傾きを調整すれば良い。
【0053】
なお、加工用レーザ光の出力が非常に大きく、第1ビームサンプラー17で反射された加工用レーザ光によって、第1受光素子4が破壊されるおそれがある場合、あるいは、ワーク2等で反射された加工用レーザ光によって、第2受光素子5や撮像素子7が破壊されるおそれがある場合には、第1ビームサンプラー17と第1受光素子4との間や、第1ビームサンプラー17と第2ビームサンプラー18との間に、シャッタ、減光用フィルムあるいは、減光を目的としたビームサンプラーを配置することが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の実施の形態のレーザ加工装置の概略構成を模式的に示す図。
【図2】図1に示すワークがX方向で計測用レーザ光の焦点から外れた位置にあるときの状態を示す図。
【図3】図1に示すワークのZ方向の位置と、第2受光素子で測定される反射光量との関係を示すグラフ。
【図4】図1に示す反射板で計測用レーザ光が反射されたときに撮像素子で撮影される映像の一例を示す図。
【図5】図1に示すレーザ加工装置でのワークの位置合せの手順を示すフローチャート。
【図6】図1に示すワークで反射された反射光の明るさと反射光の中心部からの距離との関係を示す図。
【図7】本発明の他の形態にかかるレーザ加工装置の概略構成を模式的に示す図。
【符号の説明】
【0055】
1 レーザ加工装置
2 ワーク(加工対象物)
3 レーザ光源(レーザ光出射手段)
7 撮像素子(撮像手段)
9 反射板(反射手段)
9a 反射面(乱反射面)
10 移動機構(保持手段)
F 焦点
S2 出射ステップ
S3〜S8 位置合せステップ
S9 配置ステップ
S10 端部検出ステップ
S11 距離算出ステップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工対象物の加工を行うための加工用レーザ光と上記加工対象物へ照射されるとともに上記加工用レーザ光よりも出力の小さな計測用レーザ光とを出射するレーザ光出射手段と、上記レーザ光出射手段に対して、上記計測用レーザ光の光軸方向で上記計測用レーザ光の焦点よりも離れた位置に配置され、上記計測用レーザ光を反射する反射手段と、上記レーザ光出射手段と上記反射手段との間で上記加工対象物を保持する保持手段と、上記反射手段で反射された上記計測用レーザ光を受光する撮像手段とを備えることを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項2】
前記反射手段は、前記計測用レーザ光を乱反射させる乱反射面を備えることを特徴とする請求項1記載のレーザ加工装置。
【請求項3】
加工用レーザ光を用いて加工対象物に加工を行うレーザ加工装置での加工対象物の位置検出方法において、
上記加工用レーザ光および上記加工用レーザ光よりも出力の小さな計測用レーザ光を出射するレーザ光出射手段と、上記レーザ光出射手段に対して、上記計測用レーザ光の光軸方向で上記計測用レーザ光の焦点よりも離れた位置に配置され、上記計測用レーザ光を反射する反射手段との間に、かつ、上記光軸方向に直交する方向で上記焦点から外れた位置に上記加工対象物を配置する配置ステップと、
上記計測用レーザ光を出射する出射ステップと、
上記反射手段で反射された上記計測用レーザ光を受光して、上記加工対象物の上記光軸方向に直交する方向の端部を検出する端部検出ステップと、
上記焦点と上記端部との距離を算出して、上記加工対象物の位置を検出する距離算出ステップとを備えることを特徴とする加工対象物の位置検出方法。
【請求項4】
前記配置ステップの前に、前記光軸方向における前記焦点の位置と、前記加工対象物の位置との位置合せを行う位置合せステップを備えることを特徴とする請求項3記載の加工対象物の位置検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−30092(P2008−30092A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−206067(P2006−206067)
【出願日】平成18年7月28日(2006.7.28)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成18年度、経済産業省委託研究(地域新生コンソーシアム研究開発事業)、産業再生法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】