説明

レーザ加工装置及びレーザ加工方法

【課題】 高速で加工する。
【解決手段】 レーザビームを出射するレーザ光源と、レーザ光源から出射したレーザビームを少なくとも第1方向と第2方向に振り分けることのできる振り分け光学系と、振り分け光学系で第1方向、第2方向に振り分けられたレーザビームを偏向して出射することのできる第1偏向器を有し、第1偏向器は、振り分け光学系で第1方向に振り分けられたレーザビームの光路上に配置され、レーザビームを偏向して出射することのできる第1偏向素子と、振り分け光学系で第2方向に振り分けられたレーザビームの光路上に配置され、レーザビームを偏向して出射することのできる第2偏向素子と、第1偏向素子を経由したレーザビーム、及び、第2偏向素子を経由したレーザビームの光路上に配置され、入射するレーザビームを偏向して出射することのできる第3偏向素子とを含むレーザ加工装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工対象物にレーザビームを照射して加工を行うレーザ加工装置及びレーザ加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図18(A)〜(D)は、従来のレーザ加工装置を示す概略図である。
【0003】
図18(A)を参照する。レーザ光源10からパルスレーザビーム20が出射される。パルスレーザビーム20は、マスク11の透光領域を通過して断面形状を整形され、反射ミラー12で反射されて、ガルバノスキャナ14に入射する。ガルバノスキャナ14は2枚の揺動ミラー(ガルバノミラー14a、14b)を含んで構成され、入射するパルスレーザビーム20の進行方向を2次元方向に変化させて出射する。ガルバノスキャナ14で進行方向を変化されたパルスレーザビーム20は、fθレンズ17で集光されてワーク30に照射される。ワーク30は、たとえば銅層、樹脂層、銅層がこの順に積層されたプリント基板である。プリント基板の銅層にパルスレーザビーム20が照射されることにより、照射位置の銅層及び樹脂層を貫通する貫通孔が形成される。
【0004】
制御装置18は、ガルバノスキャナ14の動作、及びレーザ光源10からのパルスレーザビーム20の出射を制御する。ガルバノスキャナ14の動作(ガルバノミラー14a、14bの向きの変化)によって、ワーク30上におけるパルスレーザビーム20の照射位置(被加工位置)の位置決めが終了すると、ガルバノミラー14a、14bの静止を知らせる静止信号がガルバノスキャナ14から制御装置18に送信される。静止信号の受信後、制御装置18がレーザ光源10にレーザ発振指令(トリガ信号)を送信することで、パルスレーザビーム20が出射され、位置決めされた被加工位置にパルスレーザビーム20が入射して、ワーク30に対する加工が行われる。
【0005】
図18(B)に示すレーザ加工装置は、2枚のガルバノミラー14a、14b間のパルスレーザビーム20の光路上に、結像レンズ16を備える点において、図18(A)に示したレーザ加工装置と異なる。図18(A)に示したレーザ加工装置においては、ガルバノミラー14aがビームを偏向するため、ガルバノミラー14bのサイズが大きくなる。ガルバノミラー14a、14b間に結像レンズ16が配置される、図18(B)に示すレーザ加工装置においては、両ミラー14a、14bのサイズを等しくすることができる。イナーシャを小さくすることができるため、ガルバノスキャナの動作及び加工の高速化を実現することが可能である。
【0006】
図18(C)に示すレーザ加工装置は、マスク11の透光領域を通過したパルスレーザビーム20の光路上に、入射するパルスレーザビーム20を二分岐して出射する二分岐光学素子13が配置されている点で図18(A)のレーザ加工装置と相違する。二分岐光学素子13は、たとえば回折光学素子(diffractive optical element; DOE)やホログラフィック光学素子(holographic optical element; HOE)である。パルスレーザビーム20は二分岐光学素子13に入射し、パルスレーザビーム20a、20bに二分岐される。両ビーム20a、20bは、ともにガルバノミラー14a、14b、fθレンズ17を経由してワーク30に入射し、同時に2穴加工が行われる(たとえば、特許文献1及び2参照)。
【0007】
図18(D)に示すレーザ加工装置は、2枚のガルバノミラー15a、15bを含んで構成されるガルバノスキャナ15を有する点で、図18(C)のレーザ加工装置と異なる。二分岐光学素子13で分岐された一方のパルスレーザビーム20aは、ガルバノミラー15a、15bで偏向された後、更にガルバノミラー14a、14bで偏向され、fθレンズ17で集光されてワーク30に入射する。二分岐光学素子13で分岐された他方のパルスレーザビーム20bは、ガルバノミラー14a、14bで偏向された後、fθレンズ17を経由してワーク30に入射する(たとえば、特許文献3参照)。
【0008】
図18(C)及び(D)に示すレーザ加工装置においては、二分岐光学素子13でパルスレーザビーム20を二分岐するため、分岐されたパルスレーザビーム20a、20bのピークパワーは、パルスレーザビーム20のそれの半分となる。このため、ピークパワーの大きいパルスレーザビーム20を出射するレーザ光源10が必要となったり、加工可能な材料が限定される場合が生じる。たとえば特許文献3記載のレーザ加工装置は、専ら樹脂加工に用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−268600号公報
【特許文献2】特許4218209号公報
【特許文献3】国際公開第2003/041904号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、高速加工が可能なレーザ加工装置及びレーザ加工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一観点によると、レーザビームを出射するレーザ光源と、前記レーザ光源から出射したレーザビームを少なくとも第1方向と、第2方向とに振り分けることのできる振り分け光学系と、前記振り分け光学系で前記第1方向、前記第2方向に振り分けられたレーザビームを偏向して出射することのできる第1偏向器とを有し、前記第1偏向器は、前記振り分け光学系で前記第1方向に振り分けられたレーザビームの光路上に配置され、該レーザビームを偏向して出射することのできる第1偏向素子と、前記振り分け光学系で前記第2方向に振り分けられたレーザビームの光路上に配置され、該レーザビームを偏向して出射することのできる第2偏向素子と、前記第1偏向素子を経由したレーザビーム、及び、前記第2偏向素子を経由したレーザビームの光路上に配置され、入射するレーザビームを偏向して出射することのできる第3偏向素子とを含むレーザ加工装置が提供される。
【0012】
本発明の他の観点によると、レーザビームを出射するレーザ光源と、前記レーザ光源から出射したレーザビームを少なくとも第1方向と、第2方向とに振り分けることのできる振り分け光学系と、前記振り分け光学系で前記第1方向、前記第2方向に振り分けられたレーザビームを偏向して出射することのできる第1偏向器とを有し、前記第1偏向器は、前記振り分け光学系で前記第1方向に振り分けられたレーザビームの光路上に配置され、該レーザビームを偏向して出射することのできる第1偏向素子と、前記振り分け光学系で前記第2方向に振り分けられたレーザビームの光路上に配置され、該レーザビームを偏向して出射することのできる第2偏向素子と、前記第1偏向素子を経由したレーザビーム、及び、前記第2偏向素子を経由したレーザビームの光路上に配置され、入射するレーザビームを偏向して出射することのできる第3偏向素子とを含むレーザ加工装置を用いて行うレーザ加工方法であって、前記第1、第3偏向素子が静止し、前記第2偏向素子が偏向方向を変化させている状態で、前記レーザ光源からレーザビームを出射させ、該レーザビームを前記振り分け光学系で前記第1方向に振り分けることを特徴とするレーザ加工方法が提供される。
【0013】
また、本発明の他の観点によると、レーザビームを出射するレーザ光源と、前記レーザ光源から出射したレーザビームを少なくとも第1方向と、第2方向とに振り分けることのできる振り分け光学系と、前記振り分け光学系で前記第1方向、前記第2方向に振り分けられたレーザビームを偏向して出射することのできる第1偏向器とを有し、前記第1偏向器は、前記振り分け光学系で前記第1方向に振り分けられたレーザビームの光路上に配置され、該レーザビームを偏向して出射することのできる第1偏向素子と、前記振り分け光学系で前記第2方向に振り分けられたレーザビームの光路上に配置され、該レーザビームを偏向して出射することのできる第2偏向素子と、前記第1偏向素子を経由したレーザビーム、及び、前記第2偏向素子を経由したレーザビームの光路上に配置され、入射するレーザビームを偏向して出射することのできる第3偏向素子とを含むレーザ加工装置を用いて行うレーザ加工方法であって、前記第1〜第3偏向素子が静止している状態で、前記レーザ光源からレーザビームを出射させ、該レーザビームを前記振り分け光学系で前記第1方向及び前記第2方向に振り分けることを特徴とするレーザ加工方法が提供される。
【0014】
更に、本発明の他の観点によると、レーザビームを出射するレーザ光源と、前記レーザ光源から出射したレーザビームを第1〜第4方向に振り分けることのできる振り分け光学系と、前記振り分け光学系で前記第1方向、前記第2方向に振り分けられたレーザビームを偏向して出射することのできる第1偏向器と、前記振り分け光学系で前記第3方向、前記第4方向に振り分けられたレーザビームを偏向して出射することのできる第2偏向器とを有し、前記第1偏向器は、前記振り分け光学系で前記第1方向に振り分けられたレーザビームの光路上に配置され、該レーザビームを偏向して出射することのできる第1偏向素子と、前記振り分け光学系で前記第2方向に振り分けられたレーザビームの光路上に配置され、該レーザビームを偏向して出射することのできる第2偏向素子と、前記第1偏向素子を経由したレーザビーム、及び、前記第2偏向素子を経由したレーザビームの光路上に配置され、入射するレーザビームを偏向して出射することのできる第3偏向素子とを含み、前記第2偏向器は、前記振り分け光学系で前記第3方向に振り分けられたレーザビームの光路上に配置され、該レーザビームを偏向して出射することのできる第4偏向素子と、前記振り分け光学系で前記第4方向に振り分けられたレーザビームの光路上に配置され、該レーザビームを偏向して出射することのできる第5偏向素子と、前記第4偏向素子を経由したレーザビーム、及び、前記第5偏向素子を経由したレーザビームの光路上に配置され、入射するレーザビームを偏向して出射することのできる第6偏向素子とを含むレーザ加工装置を用いて行うレーザ加工方法であって、前記レーザ光源からのレーザビームの出射時に、前記第1〜第6偏向素子のうち、前記振り分け光学系によって振り分ける該レーザビームの光路に配置されない偏向素子の少なくとも一つの偏向方向を変化させることを特徴とするレーザ加工方法が提供される。
【0015】
また、本発明の他の観点によると、レーザビームを出射するレーザ光源と、前記レーザ光源から出射したレーザビームを第1〜第4方向に振り分けることのできる振り分け光学系と、前記振り分け光学系で前記第1方向、前記第2方向に振り分けられたレーザビームを偏向して出射することのできる第1偏向器と、前記振り分け光学系で前記第3方向、前記第4方向に振り分けられたレーザビームを偏向して出射することのできる第2偏向器とを有し、前記第1偏向器は、前記振り分け光学系で前記第1方向に振り分けられたレーザビームの光路上に配置され、該レーザビームを偏向して出射することのできる第1偏向素子と、前記振り分け光学系で前記第2方向に振り分けられたレーザビームの光路上に配置され、該レーザビームを偏向して出射することのできる第2偏向素子と、前記第1偏向素子を経由したレーザビーム、及び、前記第2偏向素子を経由したレーザビームの光路上に配置され、入射するレーザビームを偏向して出射することのできる第3偏向素子とを含み、前記第2偏向器は、前記振り分け光学系で前記第3方向に振り分けられたレーザビームの光路上に配置され、該レーザビームを偏向して出射することのできる第4偏向素子と、前記振り分け光学系で前記第4方向に振り分けられたレーザビームの光路上に配置され、該レーザビームを偏向して出射することのできる第5偏向素子と、前記第4偏向素子を経由したレーザビーム、及び、前記第5偏向素子を経由したレーザビームの光路上に配置され、入射するレーザビームを偏向して出射することのできる第6偏向素子とを含むレーザ加工装置を用いて行うレーザ加工方法であって、前記第1〜第6偏向素子が静止している状態で、前記レーザ光源からレーザビームを出射させ、該レーザビームを前記振り分け光学系で前記第1〜第4方向に振り分けることを特徴とするレーザ加工方法が提供される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、高速加工が可能なレーザ加工装置及びレーザ加工方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1の実施例によるレーザ加工装置を示す概略図である。
【図2】第1の実施例によるレーザ加工方法を示すタイミングチャートである。
【図3】第2の実施例によるレーザ加工方法を示すタイミングチャートである。
【図4】第3の実施例によるレーザ加工方法を示すタイミングチャートである。
【図5】第2の実施例によるレーザ加工装置を示す概略図である。
【図6】第4の実施例によるレーザ加工方法を示すタイミングチャートである。
【図7】第3の実施例によるレーザ加工装置を示す概略図である。
【図8】第4の実施例によるレーザ加工装置を示す概略図である。
【図9】第5の実施例によるレーザ加工方法を示すタイミングチャートである。
【図10】第6の実施例によるレーザ加工方法を示すタイミングチャートである。
【図11】第5の実施例によるレーザ加工装置を示す概略図である。
【図12】第7の実施例によるレーザ加工方法を示すタイミングチャートである。
【図13】第6の実施例によるレーザ加工装置を示す概略図である。
【図14】(A)〜(G)は、ガルバノミラーの加工エリアについて説明する概略図である。
【図15】(A)及び(B)は、ワークの被加工位置と加工可能範囲を示す概略的な平面図である。
【図16】(A)及び(B)は、ワークの被加工位置と加工可能範囲を示す概略的な平面図である。
【図17】変形例によるレーザ加工装置の一部を示す概略図である。
【図18】(A)〜(D)は、従来のレーザ加工装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、第1の実施例によるレーザ加工装置を示す概略図である。たとえばCOレーザ発振器を含んで構成されるレーザ光源40が、制御装置60からトリガパルス(トリガ信号)を受けて、パルスレーザビーム80を出射する。パルスレーザビーム80は、透光領域と遮光領域とを備えるマスク41の透光領域を通過することにより断面形状を整形され、音響光学偏向器(acousto-optic deflector; AOD)42に入射する。
【0019】
AOD42は、音響光学効果を利用した光偏向器であり、制御装置60から送信される制御信号を受けて、入射するパルスレーザビーム80の進行方向を変化させて出射することができる。AOD42を出射するパルスレーザビームの出射方向(偏向角)は、AOD42に印加する制御信号の周波数によって変化させることが可能である。制御装置60は、周波数の異なる制御信号をAOD42に印加し、パルスレーザビーム80を相互に異なる光路Aと光路Bとに沿って選択的に出射させる。
【0020】
偏向角の相対的に小さい光路Aに振り分けられたパルスレーザビーム80aは、ガルバノミラー43aに入射する。偏向角の相対的に大きい光路Bに振り分けられたパルスレーザビーム80bは、ガルバノミラー43bに入射する。パルスレーザビーム80a、80bは、それぞれガルバノミラー43a、43bで反射されて、ガルバノミラー44に入射する。ガルバノミラー44は、パルスレーザビーム80a、80bを反射し、fθレンズ45経由で、ステージ70上に保持されたワーク30に入射させる。fθレンズ45は、パルスレーザビーム80a、80bを集光し、マスク41の位置におけるビーム断面(透光領域の形状)をワーク30上に結像させる。
【0021】
ステージ70は、ワーク30を移動可能に保持する、たとえばXYθステージである。ワーク30は、たとえば銅で形成される下層、ガラスクロスの入ったエポキシ樹脂で形成される樹脂層、銅で形成される上層がこの順に積層される積層構造を有するプリント基板である。パルスレーザビーム80a、80bは、上層(銅層)の表面からワーク30に入射し、上層及び樹脂層を貫通し、下層(銅層)に至る貫通孔を形成する。
【0022】
パルスレーザビーム80a、80bの照射は、たとえばサイクル法で行われる。巡回的に、ワーク30上に画定された複数の被加工位置の各々に、3〜5ショットのパルスレーザビーム80a、80bを入射させることで貫通孔が形成される。被加工位置に形成される穴のサイズは、たとえば等しい。
【0023】
ガルバノミラー43a、43b、44は、反射面の向きが変化可能な揺動鏡であり、入射したパルスレーザビーム80a、80bを偏向して出射する。制御装置60は、ガルバノミラー43a、43b、44の反射面の向きを変化させることによって、パルスレーザビーム80a、80bの出射方向(ワーク30上における入射位置)を制御することができる。ガルバノミラー43a、43bの反射面の向きの変化で、ワーク30上におけるパルスレーザビーム80a、80bのX軸方向に沿う入射位置を移動させることが可能である。また、ガルバノミラー44の反射面の向きの変化で、ワーク30上におけるパルスレーザビーム80a、80bのY軸方向に沿う入射位置を移動させることが可能である。
【0024】
ガルバノミラー43a、43bの反射面の向きの変化によって、ワーク30上におけるパルスレーザビーム80a、80bの入射位置(被加工位置)のX軸方向の位置決めが終了すると、ガルバノミラー43a、43bの静止を知らせる静止信号がガルバノミラー43a、43bから制御装置60に送信される。また、ガルバノミラー44の反射面の向きの変化によって、ワーク30上におけるパルスレーザビーム80a、80bの入射位置のY軸方向の位置決めが終了すると、ガルバノミラー44の静止を知らせる静止信号がガルバノミラー44から制御装置60に送信される。
【0025】
パルスレーザビームの入射位置の位置決め完了後、制御装置60がレーザ光源40にレーザ発振指令(トリガ信号)を送信することで、パルスレーザビーム80が出射され、被加工位置にパルスレーザビームが入射して、ワーク30に対する加工が行われる。
【0026】
ガルバノミラー43a、43b、44の反射面の向きを変化させることで、パルスレーザビーム80a、80bを照射することが可能な範囲(加工可能範囲)の加工が終了すると、ステージ70によってワーク30の未加工領域を、ガルバノミラー43a、43b、44の加工可能範囲に移動させる。ステージ70によるワーク30の移動は、制御装置60によって制御される。なお、加工可能範囲は、たとえば一辺が50mmの正方形領域である。
【0027】
第1の実施例によるレーザ加工装置は、入射するパルスレーザビームをそれぞれ偏向するガルバノミラー43a、43b、及びガルバノミラー43a、43bで偏向されたレーザビーム80を更に偏向するガルバノミラー44の、3枚のガルバノミラーを含んで構成されるガルバノスキャナを有する点に特徴を有する。
【0028】
図2は、第1の実施例によるレーザ加工方法を示すタイミングチャートである。第1の実施例によるレーザ加工方法は、第1の実施例によるレーザ加工装置を用い、制御装置60による制御のもとで実施される。タイミングチャートの横軸は時間を表す。「レーザビーム80」の段の縦軸は、レーザビーム80の出射、非出射の状態を示す。本図においては、レーザ光源40から出射されるパルスレーザビーム80の各レーザパルスを出射順にレーザパルスL1〜L9と表した。「ガルバノミラー43a」、「ガルバノミラー43b」、「ガルバノミラー44」の段の縦軸は、それぞれガルバノミラー43a、43b、44の移動及び静止の状態を示す。「AOD42」の段の縦軸は、AOD42に印加される制御信号の周波数を示す。相対的に低い周波数の制御信号が印加された状態のAOD42に入射したレーザビーム80は光路Aを進行し、相対的に高い周波数の制御信号が印加された状態のAOD42に入射したレーザビーム80は光路Bを進行する。
【0029】
レーザパルスL1は、ガルバノミラー44が静止し、更にガルバノミラー43aが静止した後に出射される。ガルバノミラー44は、レーザパルスL1の入射位置のY軸方向に沿う位置決めが終了(静止)すると、ガルバノ静止信号を制御装置60に送信する。同様に、ガルバノミラー43aは、レーザパルスL1の入射位置のX軸方向に沿う位置決めが終了すると、ガルバノ静止信号を制御装置60に送信する。制御装置60は、X軸方向及びY軸方向の双方について、レーザパルスL1の入射位置の位置決めが完了したことを示すガルバノ静止信号の受信後、レーザ光源40にトリガ信号を送信する。レーザ光源40は、これを受けてレーザパルスL1を出射する。制御装置60は、レーザ光源40へのトリガ信号の送信とともに、AOD42に対し、相対的に低い周波数の制御信号を印加して、ガルバノ静止信号の送信元であるガルバノミラー43a、44にレーザパルスL1を入射させる制御を行う。レーザパルスL1は、AOD42で偏向され、光路Aを進行してガルバノミラー43a、44、fθレンズ45を経由し、ワーク30の被加工位置に入射する。この期間、ガルバノミラー43bは、移動(反射面の向きの変化)を行う。
【0030】
レーザパルスL1の出射終了後、制御装置60は、ガルバノミラー43a、44のそれぞれに、以後の加工が行われる被加工位置にレーザパルスが入射するように、位置決めを行わせる制御信号を送信する。ガルバノミラー43a、44は、制御装置60からの制御信号を受信して、移動を開始する。制御装置60は、AOD42に印加する制御信号を解除するが、解除はレーザパルスL1の出射終了の前後を問わない。図2においては、すべてのレーザパルスの出射終了と同時に解除がなされるように示してある。なお、AOD42への制御信号の印加についても、レーザパルスL1の出射開始の前後を問わないが、本図においては、すべてのレーザパルスの出射開始と同時に印加されるように示してある。
【0031】
レーザパルスL2は、ガルバノミラー44が静止し、更にガルバノミラー43bが静止した後に出射される。ガルバノミラー44は、レーザパルスL2の入射位置のY軸方向に沿う位置決め終了を示す、ガルバノ静止信号を制御装置60に送信する。ガルバノミラー43bは、レーザパルスL2の入射位置のX軸方向に沿う位置決め終了を示す、ガルバノ静止信号を制御装置60に送信する。制御装置60は、これらを受けてレーザ光源40にトリガ信号を送信し、レーザ光源40からレーザパルスL2を出射させるとともに、AOD42に対し、相対的に高い周波数の制御信号を印加して、ガルバノミラー43b、44にレーザパルスL2を入射させる制御を行う。レーザパルスL2は、AOD42で偏向され、光路Bを進行してガルバノミラー43b、44、fθレンズ45を経由してワーク30の被加工位置に入射する。この期間、ガルバノミラー43aは移動を継続する。
【0032】
レーザパルスL2の出射終了後、制御装置60は、ガルバノミラー43b、44のそれぞれに、以後の加工が行われる被加工位置にレーザパルスが入射するように、位置決めを行わせる制御信号を送信し、ガルバノミラー43b、44は、制御装置60からの制御信号を受信して、移動を開始する。
【0033】
レーザパルスL3、L4は、レーザパルスL1と同様に、ガルバノミラー44、43aが静止した後出射され、ガルバノミラー43a、44を経由して、それぞれ所定の被加工位置に入射する。こうしてガルバノミラー43aを経由するレーザパルスにより、連続して2つの被加工位置の加工が行われる。この間、ガルバノミラー43bは移動を継続する。なお、レーザパルスL3、L4の出射終了後には、ガルバノミラー43a、44は移動を行う。
【0034】
ガルバノミラー43bが静止し、制御装置60に静止信号を送信する。更に、ガルバノミラー44の移動が終了して、静止信号が制御装置60に送信される。制御装置60は、最も遅く静止したガルバノミラー44の静止信号受信とともに、レーザパルスL5を出射させる。
【0035】
レーザパルスL5は、相対的に高い周波数の制御信号が印加されたAOD42で光路Bに振り分けられ、ガルバノミラー43b、44を経由して、ワーク30の被加工位置に入射する。レーザパルスL5の出射終了後、ガルバノミラー43b、44は移動を開始する。この間、ガルバノミラー43aは、移動を継続する。
【0036】
レーザパルスL6は、ガルバノミラー44、43aの静止信号を受信した制御装置60のトリガ信号に応じて出射され、ガルバノミラー43a、44を経て被加工位置に入射する。レーザパルスL6の出射終了後、ガルバノミラー43a、44は移動を開始する。レーザパルスL6による加工の間、ガルバノミラー43bは移動を継続する。
【0037】
ガルバノミラー43b、44による位置決めが完了し、制御信号60は、ガルバノミラー43b、44の双方から静止信号を受信する。しかし、レーザパルスの入射位置の位置決めが完了した場合であっても、位置決め完了時(最も遅く静止したガルバノミラーからの静止信号受信時)が、直前のレーザパルス出射時から、パルスレーザビーム80を出射(発振)可能な最短周期分の時間が経過していない時刻であることがある。その場合、制御装置60は、最短周期分の時間が経過した後、すなわちたとえば最短周期(レーザ光源40のレーザ発振周波数の上限)でパルスレーザビーム80を出射させる。
【0038】
制御信号60がガルバノミラー43b、44の双方から静止信号を受信した時点では、レーザパルスL6の出射時から最短周期分の時間が経過していない。このため、レーザパルスL7は、レーザパルスL6の出射時から、レーザビーム80の出射可能な最短周期分の時間の経過後、出射される。レーザパルスL7の出射終了後、ガルバノミラー43b、44は移動を開始する。レーザパルスL7による加工が行われる間、ガルバノミラー43aは、移動を継続する。
【0039】
レーザパルスL8は、制御装置60がガルバノミラー44、43aの双方から静止信号を受信した後に出射される。レーザパルスL8の出射終了後、ガルバノミラー43aは移動を開始する。ガルバノミラー44は、静止した状態を維持する。これは次のレーザパルスL9による被加工位置のY座標が、レーザパルスL8による被加工位置のY座標と等しいためである。レーザパルスL8による加工が行われる間、ガルバノミラー43bは移動を継続する。
【0040】
レーザパルスL9は、ガルバノミラー43bが静止した後、出射され、静止状態のガルバノミラー43b、44を経由して、ワーク30上の被加工位置に入射する。
【0041】
本例では、レーザパルスL8出射時からレーザパルスL9の出射終了まで、ガルバノミラー44が静止した状態であるが、レーザパルスL9による被加工位置のX座標が、レーザパルスL8による被加工位置のX座標と等しいときには、たとえばガルバノミラー43aを移動させない制御を行う。このように、次のレーザパルスによる被加工位置のX座標またはY座標が等しい場合は、ガルバノミラー43a、43b、44のいずれか一つ、もしくはガルバノミラー43a、43bの双方を移動させない制御を行うことが可能である。
【0042】
第1の実施例によるレーザ加工方法は、レーザ光源40から出射したパルスレーザビーム80の各レーザパルスを、1パルスごとにAOD42でガルバノミラー43a、43bのいずれか一方に時間的に振り分ける。レーザパルスは、ガルバノミラー43a、43bの一方、及びガルバノミラー44が静止した状態で出射され、静止しているガルバノミラーを経由してワーク30に照射される。2枚のガルバノミラー43a、43bを用い、一方のミラーが静止した状態で、パルスレーザビーム80を出射する間に、他方のミラーに、以後のレーザパルスの入射位置の位置決めのための移動を行わせることで、ワーク30に対するレーザ照射周波数を高くすることができる。第1の実施例によるレーザ加工方法によれば、ワーク30に照射される各レーザパルスのパルスエネルギ及びピークパワーを、レーザ光源40から出射したパルスレーザビーム80のそれと等しく保った状態で、加工速度を速くすることができる。
【0043】
図3は、第2の実施例によるレーザ加工方法を示すタイミングチャートである。第2の実施例によるレーザ加工方法は、第1の実施例によるレーザ加工装置を用い、制御装置60による制御のもとで実施される。タイミングチャートの横軸、及び各段の縦軸は、図2に示すタイミングチャートにおけるそれらと等しい。本図においては、レーザ光源40から出射されるパルスレーザビーム80の各レーザパルスを出射順にレーザパルスL1〜L7と表した。第2の実施例によるレーザ加工方法においては、AOD42を用い、レーザパルスL1〜L7の各々から、光路Aを進行するレーザパルスL1a〜L7a、及び、光路Bを進行するレーザパルスL1b〜L7bを、時間的に分割生成する。レーザパルスL1aとレーザパルスL1bのパルス幅は、たとえば等しい。レーザパルスL2a〜L7aとレーザパルスL2b〜L7bのパルス幅についても同様である。
【0044】
レーザパルスL1は、ガルバノミラー44、43aが静止し、更にガルバノミラー43bが静止した後に出射される。ガルバノミラー43a、43bは、それぞれレーザパルスL1a、L1bの入射位置のX軸方向に沿う位置決めが終了すると、ガルバノ静止信号を制御装置60に送信する。ガルバノミラー44は、レーザパルスL1a及びL1bの入射位置のY軸方向に沿う位置決めが終了すると、ガルバノ静止信号を制御装置60に送信する。制御装置60は、ガルバノミラー43a、43b、44からのガルバノ静止信号の受信後、レーザ光源40にトリガ信号を送信する。レーザ光源40は、レーザパルスL1を出射する。
【0045】
制御装置60は、レーザ光源40へのトリガ信号の送信とともに、AOD42に対し、相対的に低い周波数の制御信号、相対的に高い周波数の制御信号をこの順に連続的に印加する。相対的に低い周波数の制御信号の印加時間と、相対的に高い周波数の制御信号の印加時間とは相互に等しい。相対的に高い周波数の制御信号の印加は、たとえばレーザパルスL1の出射終了と同時に解除される。
【0046】
なお、本図においては、すべてのレーザパルスL1〜L7の出射開始と同時に、相対的に低い周波数の制御信号が印加され、出射終了と同時に相対的に高い周波数の制御信号が解除されるように示してあるが、制御信号印加の開始及び解除は、レーザパルスL1〜L7の出射開始及び出射終了に一致させる必要はない。
【0047】
相対的に低い周波数の制御信号が印加されている期間にAOD42に入射したレーザパルスL1からは、光路Aを進行するレーザパルスL1aが時間的に分割生成される。また、相対的に高い周波数の制御信号が印加されている期間にAOD42に入射したレーザパルスL1からは、光路Bを進行するレーザパルスL1bが時間的に分割生成される。レーザパルスL1aは、ガルバノミラー43a、ガルバノミラー44、及びfθレンズ45を経由してワーク30の被加工位置に入射する。レーザパルスL1bは、ガルバノミラー43b、ガルバノミラー44、及びfθレンズ45を経由してワーク30の被加工位置に入射する。レーザパルスL1aが入射する被加工位置のY座標と、レーザパルスL1bが入射する被加工位置のY座標とは等しい。
【0048】
制御装置60は、相対的に低い周波数の制御信号の印加終了とともに、ガルバノミラー43aに対し、所定の被加工位置に次のレーザパルスL2aが入射するように、位置決めを行わせる制御信号を送信する。ガルバノミラー43aは、制御装置60からの制御信号を受信して、レーザパルスL1bの被加工位置への入射終了前(光路Bへの振り分け終了前)に移動を開始する。また、制御装置60は、相対的に高い周波数の制御信号の印加終了(レーザパルスL1の出射終了)とともに、ガルバノミラー43b、44に対し、それぞれ所定の被加工位置に次のレーザパルスL2b、L2a及びL2bが入射するように、位置決めを行わせる制御信号を送信する。ガルバノミラー43b、44は、制御装置60からの制御信号を受けて、移動を開始する。
【0049】
レーザパルスL2は、ガルバノミラー43b、44が静止し、更にガルバノミラー43aが静止した後に出射される。各ガルバノミラー43a、43b、44からは、ガルバノ静止信号が制御装置60に送信され、制御装置60は、最も遅く静止したガルバノミラー43aの静止信号受信とともに、レーザ光源40にトリガ信号を送信する。レーザ光源40は、レーザパルスL2を出射する。
【0050】
制御装置60は、レーザ光源40へのトリガ信号の送信とともに、AOD42に対し、相対的に低い周波数の制御信号、相対的に高い周波数の制御信号を、順に連続的に印加する。
【0051】
相対的に低い周波数の制御信号が印加されている期間にAOD42に入射したレーザパルスL2から、光路Aに沿って分割生成されるレーザパルスL2aは、ガルバノミラー43a、44、及びfθレンズ45を経由してワーク30の被加工位置に入射する。また、相対的に高い周波数の制御信号が印加されている期間にAOD42に入射したレーザパルスL2から、光路Bに沿って分割生成されるレーザパルスL2bは、ガルバノミラー43b、44、及びfθレンズ45を経由してワーク30の被加工位置に入射する。両レーザパルスL2a、L2bが入射する被加工位置のY座標は等しい。
【0052】
制御装置60は、相対的に低い周波数の制御信号の印加終了とともに、ガルバノミラー43aに対し、所定の被加工位置に次のレーザパルスL3aが入射するように、位置決めを行わせる制御信号を送信し、これを受けたガルバノミラー43aは、レーザパルスL2bの入射終了前に移動を開始する。また、制御装置60は、相対的に高い周波数の制御信号の印加終了とともに、ガルバノミラー43b、44に対し、それぞれ所定の被加工位置に次のレーザパルスL3b、L3a及びL3bが入射するように、位置決めを行わせる制御信号を送信し、これを受けたガルバノミラー43b、44は、移動を開始する。
【0053】
レーザパルスL3は、ガルバノミラー43a、43bが静止し、更にガルバノミラー44が静止した後に出射される。各ガルバノミラー43a、43b、44からは、ガルバノ静止信号が制御装置60に送信され、制御装置60は、最も遅く静止したガルバノミラー44の静止信号受信とともに、レーザ光源40にトリガ信号を送信し、レーザ光源40はこれに応じてレーザパルスL3を出射する。
【0054】
制御装置60は、レーザ光源40へのトリガ信号の送信とともに、AOD42に対し、相対的に低い周波数の制御信号、相対的に高い周波数の制御信号を、順に連続的に印加する。
【0055】
相対的に低い周波数の制御信号が印加されている期間にAOD42に入射したレーザパルスL3から、光路Aに沿って分割生成されるレーザパルスL3aは、ガルバノミラー43a、44、及びfθレンズ45を経由してワーク30の被加工位置に入射し、相対的に高い周波数の制御信号が印加されている期間にAOD42に入射したレーザパルスL3から、光路Bに沿って分割生成されるレーザパルスL3bは、ガルバノミラー43b、44、及びfθレンズ45を経由してワーク30の被加工位置に入射する。両レーザパルスL3a、L3bが入射する被加工位置のY座標は等しい。
【0056】
制御装置60は、相対的に低い周波数の制御信号の印加終了とともに、ガルバノミラー43aに対し、所定の被加工位置に次のレーザパルスL4aが入射するように、位置決めを行わせる制御信号を送信し、これを受けたガルバノミラー43aは、レーザパルスL3bの入射終了前に移動を開始する。また、制御装置60は、相対的に高い周波数の制御信号の印加終了とともに、ガルバノミラー43b、44に対し、それぞれ所定の被加工位置に次のレーザパルスL4b、L4a及びL4bが入射するように、位置決めを行わせる制御信号を送信し、これを受けたガルバノミラー43b、44は、移動を開始する。
【0057】
レーザパルスL4は、ガルバノミラー44、43bが静止し、更にガルバノミラー43aが静止した後に出射される。制御装置60は、最も遅く静止したガルバノミラー43aの静止信号受信とともに、レーザ光源40にトリガ信号を送信する。
【0058】
制御装置60は、レーザ光源40へのトリガ信号の送信とともに、AOD42に対し、相対的に低い周波数の制御信号、相対的に高い周波数の制御信号を、順に連続的に印加し、レーザパルスL4から光路AにレーザパルスL4a、光路BにレーザパルスL4bを切り出す。レーザパルスL4a、L4bは、ワーク30のY座標の等しい被加工位置に入射する。ガルバノミラー43a、43b、44は、制御装置60の制御により、次のレーザパルスL5a、L5bを所定の被加工位置に入射させるように、所定のタイミングで移動を開始する。
【0059】
位置決めが完了したガルバノミラー43b、43a、44から、制御装置60に静止信号が送信されるが、次のレーザパルスL5a、L5bの入射位置の位置決め完了時が、直前のレーザパルスL4出射時から、レーザパルスを出射可能な最短周期分の時間が経過していない時刻であるため、制御装置60は、最短周期分の時間が経過した後、レーザパルスL5を出射させるとともに、AOD42に対し、相対的に低い周波数の制御信号、相対的に高い周波数の制御信号を、順に連続的に印加し、レーザパルスL5から光路AにレーザパルスL5a、光路BにレーザパルスL5bを切り出す。レーザパルスL5a、L5bは、ワーク30のY座標の等しい被加工位置に入射する。ガルバノミラー43a、43b、44は、制御装置60の制御により、次のレーザパルスL6a、L6bを所定の被加工位置に入射させるように、所定のタイミングで移動を開始する。
【0060】
レーザパルスL6は、ガルバノミラー43b、44が静止し、更にガルバノミラー43aが静止した後に出射される。制御装置60は、最も遅く静止したガルバノミラー43aの静止信号受信とともに、レーザ光源40にトリガ信号を送信する。
【0061】
制御装置60は、レーザ光源40へのトリガ信号の送信とともに、AOD42に対し、相対的に低い周波数の制御信号、相対的に高い周波数の制御信号を、順に連続的に印加し、レーザパルスL6から光路AにレーザパルスL6a、光路BにレーザパルスL6bを切り出す。レーザパルスL6a、L6bは、ワーク30のY座標の等しい被加工位置に入射する。
【0062】
ガルバノミラー43aは、相対的に低い周波数の制御信号の印加終了とともに移動を開始し、ガルバノミラー43bは、相対的に高い周波数の制御信号の印加終了とともに移動を開始する。ガルバノミラー44は、レーザパルスL6bの入射後も静止した状態を維持する。これは次のレーザパルスL7a、L7bによる被加工位置のY座標が、レーザパルスL6a、L6bによる被加工位置のY座標と等しいためである。
【0063】
レーザパルスL7は、ガルバノミラー43a、43bが静止した後、出射される。AOD42によって、光路Aに切り出されたレーザパルスL7aは、静止状態のガルバノミラー43a、44を経由して、ワーク30上の被加工位置に入射する。光路Bに切り出されたレーザパルスL7bは、静止状態のガルバノミラー43b、44を経由して、ワーク30上の被加工位置に入射する。
【0064】
本例では、レーザパルスL6出射時からレーザパルスL7の出射終了まで、ガルバノミラー44が静止した状態であるが、レーザパルスL7aによる被加工位置のX座標が、レーザパルスL6aによる被加工位置のX座標と等しいときには、ガルバノミラー43aを移動させない制御を行う。また、レーザパルスL7bによる被加工位置のX座標が、レーザパルスL6bによる被加工位置のX座標と等しいときには、ガルバノミラー43bを移動させない制御を行う。このように、次のレーザパルスによる被加工位置のX座標またはY座標が等しい場合は、ガルバノミラー43a、43b、44のいずれか一つ、もしくはガルバノミラー43a、43bの双方を移動させない制御を行うことが可能である。
【0065】
第2の実施例によるレーザ加工方法は、レーザ光源40から出射したパルスレーザビーム80の各レーザパルスを、相互に異なる2方向(光路A及び光路B)に時間的に振り分ける。第2の実施例によるレーザ加工方法によれば、AOD42に印加する、相対的に低い周波数の制御信号の印加時間だけの時間差で、一辺が50mmの正方形領域である加工可能範囲に、2ショットのレーザパルスを入射させることができるため、加工速度を速くすることができる。ただし、第1の実施例によるレーザ加工方法においては、たとえばガルバノミラー43a、43bの一方とガルバノミラー44とが静止した状態でレーザパルスを出射したが、第2の実施例においては、3枚のガルバノミラー43a、43b、44のすべてが静止した状態でレーザパルスを出射するので、第1の実施例よりも加工速度が遅くなる場合もあるであろう。
【0066】
図4は、第3の実施例によるレーザ加工方法を示すタイミングチャートである。第3の実施例によるレーザ加工方法は、第1の実施例によるレーザ加工装置を用い、制御装置60による制御のもとで実施される。タイミングチャートの横軸、及び各段の縦軸は、図3に示すタイミングチャートにおけるそれらと等しい。
【0067】
第2の実施例によるレーザ加工方法においては、AOD42に対し、相対的に低い周波数の制御信号、相対的に高い周波数の制御信号の順に制御信号を印加し、すべてのレーザパルスL1〜L7から、レーザパルスL1a〜L7a、レーザパルスL1b〜L7bの順で光路A、Bにレーザパルスを切り出した。第3の実施例によるレーザ加工方法においては、今回と次回とで被加工位置間の距離が相対的に大きい被加工位置にレーザパルスを入射させるガルバノミラー43a、43bに、先にレーザパルスを切り出す制御を行う。
【0068】
レーザパルスL1は、ガルバノミラー44、43aが静止し、更にガルバノミラー43bが静止した後に出射される。ガルバノミラー43a、43bは、それぞれレーザパルスL1a、L1bの入射位置のX軸方向に沿う位置決めが終了すると、ガルバノ静止信号を制御装置60に送信する。ガルバノミラー44は、レーザパルスL1a及びL1bの入射位置のY軸方向に沿う位置決めが終了すると、ガルバノ静止信号を制御装置60に送信する。制御装置60は、ガルバノミラー43a、43b、44からのガルバノ静止信号の受信後、レーザ光源40にトリガ信号を送信する。レーザ光源40は、レーザパルスL1を出射する。
【0069】
制御装置60は、今回レーザパルスL1aが入射する被加工位置と次回レーザパルスL2aが入射する被加工位置との間の距離、及び、今回レーザパルスL1bが入射する被加工位置と次回レーザパルスL2bが入射する被加工位置との間の距離の大小に基いて、レーザパルスL1a、L1bのうち、次回の被加工位置までの距離が大きい今回被加工位置に入射するレーザパルスを、先にワーク30に入射させる。
【0070】
図4にタイミングチャートを示すレーザ加工においては、レーザパルスL1aが入射する被加工位置とレーザパルスL2aが入射する被加工位置との間の距離は、レーザパルスL1bが入射する被加工位置とレーザパルスL2bが入射する被加工位置との間の距離よりも大きい。このため、制御装置60は、レーザ光源40へのトリガ信号の送信とともに、AOD42に対し、相対的に低い周波数の制御信号を先に、相対的に高い周波数の制御信号を後に、連続的に印加する。
【0071】
相対的に低い周波数の制御信号が印加されている期間にAOD42に入射したレーザパルスL1からは、光路Aを進行するレーザパルスL1aが時間的に分割生成される。また、相対的に高い周波数の制御信号が印加されている期間にAOD42に入射したレーザパルスL1からは、光路Bを進行するレーザパルスL1bが時間的に分割生成される。レーザパルスL1aは、ガルバノミラー43a、ガルバノミラー44、及びfθレンズ45を経由してワーク30の被加工位置に入射する。また、レーザパルスL1bは、ガルバノミラー43b、ガルバノミラー44、及びfθレンズ45を経由してワーク30の被加工位置に入射する。レーザパルスL1aが入射する被加工位置のY座標と、レーザパルスL1bが入射する被加工位置のY座標とは等しい。
【0072】
制御装置60は、相対的に低い周波数の制御信号の印加終了とともに、ガルバノミラー43aに対し、所定の被加工位置に次のレーザパルスL2aが入射するように、位置決めを行わせる制御信号を送信する。ガルバノミラー43aは、制御装置60からの制御信号を受信して、レーザパルスL1bの入射終了前に移動を開始する。また、制御装置60は、相対的に高い周波数の制御信号の印加終了とともに、ガルバノミラー43b、44に対し、それぞれ所定の被加工位置に次のレーザパルスL2b、L2a及びL2bが入射するように、位置決めを行わせる制御信号を送信する。ガルバノミラー43b、44は、制御装置60からの制御信号を受けて、移動を開始する。
【0073】
レーザパルスL2は、ガルバノミラー43b、44が静止し、更にガルバノミラー43aが静止した後に出射される。各ガルバノミラー43a、43b、44からは、ガルバノ静止信号が制御装置60に送信され、制御装置60は、最も遅く静止したガルバノミラー43aの静止信号受信とともに、レーザ光源40にトリガ信号を送信し、レーザパルスL2を出射させる。
【0074】
レーザパルスL2bが入射する被加工位置とレーザパルスL3bが入射する被加工位置との間の距離は、レーザパルスL2aが入射する被加工位置とレーザパルスL3aが入射する被加工位置との間の距離よりも大きい。このため、制御装置60は、レーザ光源40へのトリガ信号の送信とともに、AOD42に対し、相対的に高い周波数の制御信号を先に、相対的に低い周波数の制御信号を後に、連続的に印加する。
【0075】
相対的に高い周波数の制御信号が印加されている期間にAOD42に入射したレーザパルスL2から、光路Bに沿って分割生成されるレーザパルスL2bは、ガルバノミラー43b、44、及びfθレンズ45を経由してワーク30の被加工位置に入射する。また、相対的に低い周波数の制御信号が印加されている期間にAOD42に入射したレーザパルスL2から、光路Aに沿って分割生成されるレーザパルスL2aは、ガルバノミラー43a、44、及びfθレンズ45を経由してワーク30の被加工位置に入射する。両レーザパルスL2b、L2aが入射する被加工位置のY座標は等しい。
【0076】
制御装置60は、相対的に高い周波数の制御信号の印加終了とともに、ガルバノミラー43bに対し、所定の被加工位置に次のレーザパルスL3bが入射するように、位置決めを行わせる制御信号を送信し、これを受けたガルバノミラー43bは、レーザパルスL2aの入射終了前に移動を開始する。また、制御装置60は、相対的に低い周波数の制御信号の印加終了とともに、ガルバノミラー43a、44に対し、それぞれ所定の被加工位置に次のレーザパルスL3a、L3a及びL3bが入射するように、位置決めを行わせる制御信号を送信し、これを受けたガルバノミラー43a、44は、移動を開始する。
【0077】
レーザパルスL3は、ガルバノミラー43a、43bが静止し、更にガルバノミラー44が静止した後に出射される。各ガルバノミラー43a、43b、44からは、ガルバノ静止信号が制御装置60に送信され、制御装置60は、最も遅く静止したガルバノミラー44の静止信号受信とともに、レーザ光源40にトリガ信号を送信し、レーザ光源40はこれに応じてレーザパルスL3を出射する。
【0078】
制御装置60は、レーザ光源40へのトリガ信号の送信とともに、AOD42に対し、相対的に低い周波数の制御信号、相対的に高い周波数の制御信号を、順に連続的に印加する。これは、レーザパルスL3aが入射する被加工位置とレーザパルスL4aが入射する被加工位置との間の距離は、レーザパルスL3bが入射する被加工位置とレーザパルスL4bが入射する被加工位置との間の距離よりも大きいためである。
【0079】
相対的に低い周波数の制御信号が印加されている期間にAOD42に入射したレーザパルスL3から、光路Aに沿って分割生成されるレーザパルスL3aは、ガルバノミラー43a、44、及びfθレンズ45を経由してワーク30の被加工位置に入射し、相対的に高い周波数の制御信号が印加されている期間にAOD42に入射したレーザパルスL3から、光路Bに沿って分割生成されるレーザパルスL3bは、ガルバノミラー43b、44、及びfθレンズ45を経由してワーク30の被加工位置に入射する。両レーザパルスL3a、L3bが入射する被加工位置のY座標は等しい。
【0080】
制御装置60は、相対的に低い周波数の制御信号の印加終了とともに、ガルバノミラー43aに対し、所定の被加工位置に次のレーザパルスL4aが入射するように、位置決めを行わせる制御信号を送信し、これを受けたガルバノミラー43aは、レーザパルスL3bの入射終了前に移動を開始する。また、制御装置60は、相対的に高い周波数の制御信号の印加終了とともに、ガルバノミラー43b、44に対し、それぞれ所定の被加工位置に次のレーザパルスL4b、L4a及びL4bが入射するように、位置決めを行わせる制御信号を送信し、これを受けたガルバノミラー43b、44は、移動を開始する。
【0081】
レーザパルスL4は、ガルバノミラー44、43bが静止し、更にガルバノミラー43aが静止した後に出射される。制御装置60は、最も遅く静止したガルバノミラー43aの静止信号受信とともに、レーザ光源40にトリガ信号を送信する。
【0082】
制御装置60は、レーザ光源40へのトリガ信号の送信とともに、AOD42に対し、相対的に低い周波数の制御信号、相対的に高い周波数の制御信号を連続的に印加し、レーザパルスL4から光路AにレーザパルスL4a、光路BにレーザパルスL4bを、この順に切り出す。これは、レーザパルスL4aが入射する被加工位置とレーザパルスL5aが入射する被加工位置との間の距離が、レーザパルスL4bが入射する被加工位置とレーザパルスL5bが入射する被加工位置との間の距離よりも大きいためである。
【0083】
レーザパルスL4a、L4bは、ワーク30のY座標の等しい被加工位置に入射する。ガルバノミラー43a、43b、44は、制御装置60の制御により、次のレーザパルスL5a、L5bを所定の被加工位置に入射させるように、所定のタイミングで移動を開始する。
【0084】
位置決めが完了したガルバノミラー43b、43a、44から、制御装置60に静止信号が送信されるが、次のレーザパルスL5a、L5bの入射位置の位置決め完了時が、直前のレーザパルスL4出射時から、レーザパルスを出射可能な最短周期分の時間が経過していない時刻であるため、制御装置60は、最短周期分の時間が経過した後、レーザパルスL5を出射させるとともに、AOD42に対し、相対的に低い周波数の制御信号、相対的に高い周波数の制御信号を連続的に印加し、レーザパルスL5から光路AにレーザパルスL5a、光路BにレーザパルスL5bを、この順に切り出す。レーザパルスL5aが入射する被加工位置とレーザパルスL6aが入射する被加工位置との間の距離は、レーザパルスL5bが入射する被加工位置とレーザパルスL5bが入射する被加工位置との間の距離よりも大きいためである。
【0085】
レーザパルスL5a、L5bは、ワーク30のY座標の等しい被加工位置に入射する。ガルバノミラー43a、43b、44は、制御装置60の制御により、次のレーザパルスL6a、L6bを所定の被加工位置に入射させるように、所定のタイミングで移動を開始する。
【0086】
レーザパルスL6は、ガルバノミラー43b、44が静止し、更にガルバノミラー43aが静止した後に出射される。制御装置60は、最も遅く静止したガルバノミラー43aの静止信号受信とともに、レーザ光源40にトリガ信号を送信する。
【0087】
制御装置60は、レーザ光源40へのトリガ信号の送信とともに、AOD42に対し、相対的に高い周波数の制御信号、相対的に低い周波数の制御信号を連続的に印加し、レーザパルスL6から光路BにレーザパルスL6b、光路AにレーザパルスL6aを、この順に切り出す。レーザパルスL6bが入射する被加工位置とレーザパルスL7bが入射する被加工位置との間の距離は、レーザパルスL6aが入射する被加工位置とレーザパルスL7aが入射する被加工位置との間の距離よりも大きいためである。
【0088】
レーザパルスL6b、L6aは、ワーク30のY座標の等しい被加工位置に入射する。ガルバノミラー43bは、相対的に高い周波数の制御信号の印加終了とともに移動を開始し、ガルバノミラー43aは、相対的に低い周波数の制御信号の印加終了とともに移動を開始する。ガルバノミラー44は、レーザパルスL6aの入射後も静止した状態を維持する。これは次のレーザパルスL7a、L7bによる被加工位置のY座標が、レーザパルスL6a、L6bによる被加工位置のY座標と等しいためである。
【0089】
レーザパルスL7は、ガルバノミラー43a、43bが静止した後、出射される。レーザパルスL7bが入射する被加工位置とレーザパルスL8bが入射する被加工位置との間の距離は、レーザパルスL7aが入射する被加工位置とレーザパルスL8aが入射する被加工位置との間の距離よりも大きいため、AOD42に対しては、相対的に高い周波数の制御信号、相対的に低い周波数の制御信号の順で印加が行われる。光路Bに切り出されたレーザパルスL7bは、静止状態のガルバノミラー43b、44を経由して、ワーク30上の被加工位置に入射する。光路Aに切り出されたレーザパルスL7aは、静止状態のガルバノミラー43a、44を経由して、ワーク30上の被加工位置に入射する。
【0090】
第3の実施例によるレーザ加工方法によれば、次回の被加工位置までの距離が大きい今回被加工位置に入射するレーザパルスを、先にワーク30に入射させ、移動時間(位置決め時間)の長いガルバノミラーの移動を先に行うことで、第2の実施例よりも加工を高速に行うことができる。
【0091】
なお、たとえばガルバノミラー43aを経由するレーザパルスL1a、L2aが入射する被加工位置間の距離と、ガルバノミラー43bを経由するレーザパルスL1b、L2bが入射する被加工位置間の距離とが等しく、ガルバノミラー43a、43bの移動時間が相互に等しい場合には、レーザパルスL1a、L1bのいずれを先にワーク30に入射させてもかまわない。
【0092】
図5は、第2の実施例によるレーザ加工装置を示す概略図である。第2の実施例によるレーザ加工装置は、パルスレーザビーム80を選択的に光路Aまたは光路Bに振り分けるAOD42を備えず、レーザパルスを分岐(エネルギ分割)し、光路Aと光路Bとに同時に振り分ける偏光ビームスプリッタ46を有する点で第1の実施例によるレーザ加工装置と相違する。
【0093】
偏光ビームスプリッタ46は、レーザ光源40から出射されたパルスレーザビーム80の一部、たとえば半分を透過して光路Aに沿って進行させ、残部を反射して光路Bに沿って進行させる。光路A、Bを進行するパルスレーザビーム80a、80bはそれぞれ、必要に応じて固定的に配置される折り返しミラー47a、47bで反射されてガルバノミラー43a、43bに入射し、ガルバノミラー43a、43b及びガルバノミラー44で、X軸方向及びY軸方向(2次元方向)に出射方向を変化され、fθレンズ45で集光された後、ワーク30の被加工位置に入射する。ワーク30に入射するパルスレーザビーム80a、80bのパルスエネルギ及びピークパワーは、第1の実施例によるレーザ加工装置の場合のたとえば半分である。
【0094】
図6は、第4の実施例によるレーザ加工方法を示すタイミングチャートである。第4の実施例によるレーザ加工方法は、第2の実施例によるレーザ加工装置を用い、制御装置60による制御のもとで実施される。タイミングチャートの横軸、及び各段の縦軸は、図2に示すタイミングチャートにおいて対応するそれらと等しい。本図においては、レーザ光源40から出射されるパルスレーザビーム80の各レーザパルスを出射順にレーザパルスL1〜L7と示した。また、レーザパルスL1〜L7が、偏光ビームスプリッタ46で光路A、Bに分岐(エネルギ分割)された後のレーザパルスを、それぞれレーザパルスL1a〜L7a、L1b〜L7bと表した。
【0095】
レーザパルスL1は、ガルバノミラー44、43aが静止し、更にガルバノミラー43bが静止した後に出射される。ガルバノミラー43a、43bは、それぞれレーザパルスL1a、L1bの入射位置のX軸方向に沿う位置決めが終了すると、ガルバノ静止信号を制御装置60に送信する。ガルバノミラー44は、レーザパルスL1a及びL1bの入射位置のY軸方向に沿う位置決めが終了すると、ガルバノ静止信号を制御装置60に送信する。制御装置60は、ガルバノミラー43a、43b、44からのガルバノ静止信号の受信後(最も遅く静止したガルバノミラー43bからの静止信号受信とともに)、レーザ光源40にトリガ信号を送信し、レーザ光源40は、それに応じてレーザパルスL1を出射する。レーザパルスL1は偏光ビームスプリッタ46で、光路Aを進行するレーザパルスL1aと、光路Bを進行するレーザパルスL1bとに分けられ、レーザパルスL1a、L1bはそれぞれガルバノミラー43a、43b及びガルバノミラー44を経由してワーク30のY座標の等しい被加工位置に同時に入射する。
【0096】
レーザパルスL1の出射終了後、制御装置60は、ガルバノミラー43a、43b、44にそれぞれ次の被加工位置にレーザパルスが入射するように、位置決めを行わせる制御信号を送信する。ガルバノミラー43a、43b、44は、制御装置60からの制御信号を受信して、移動を開始する。
【0097】
レーザパルスL2は、ガルバノミラー43b、44が静止し、更にガルバノミラー43aが静止した後に出射される。レーザパルスL2は、偏光ビームスプリッタ46で光路A、Bを進行するレーザパルスL2a、L2bとに分けられ、各レーザパルスL2a、L2bはガルバノミラー43a、43b及びガルバノミラー44を経由してワーク30のY座標の等しい被加工位置に同時に入射する。
【0098】
レーザパルスL2の出射終了後、制御装置60は、ガルバノミラー43a、43b、44にそれぞれ次の被加工位置にレーザパルスが入射するように、新たな位置決めを行わせる制御信号を送信し、ガルバノミラー43a、43b、44は、制御装置60からの制御信号を受信して、移動を開始する。
【0099】
レーザパルスL3は、ガルバノミラー43a、43bが静止し、更にガルバノミラー44が静止した後に出射される。レーザパルスL3が偏光ビームスプリッタ46で光路A、Bに分けられたレーザパルスL3a、L3bは、それぞれガルバノミラー43a、43b及びガルバノミラー44を経由してワーク30のY座標の等しい被加工位置に同時に入射する。
【0100】
レーザパルスL3の出射終了後、制御装置60は、ガルバノミラー43a、43b、44にそれぞれ次の被加工位置にレーザパルスが入射するように、新たな位置決めを行う制御信号を送信し、ガルバノミラー43a、43b、44は、制御装置60からの制御信号を受信して、移動を開始する。
【0101】
レーザパルスL4は、ガルバノミラー44、43b、43aの静止信号を受信した制御装置60のトリガ信号に応じて出射され、偏光ビームスプリッタ46でレーザパルスL4a、L4bに分けられる。レーザパルスL4a、L4bは、それぞれガルバノミラー43a、43b及びガルバノミラー44を経由してワーク30のY座標の等しい被加工位置に同時に入射する。レーザパルスL4の出射終了後、ガルバノミラー43a、43b、44は移動を開始する。
【0102】
ガルバノミラー43a、43b、44によるレーザパルス入射位置の位置決めが完了し、制御信号60は、ガルバノミラー43a、43b、44から静止信号を受信する。しかしガルバノミラー43a、43b、44の位置決め完了時が、レーザパルスL4出射時から、レーザパルスを出射可能な最短周期分の時間が経過していない時刻であるため、レーザパルスL5は、最短周期分の時間が経過した後に出射される。レーザパルスL5は、偏光ビームスプリッタ46でレーザパルスL5a、L5bに分けられ、レーザパルスL5a、L5bは、それぞれガルバノミラー43a、43b及びガルバノミラー44を経由してワーク30のY座標の等しい被加工位置に同時に入射する。レーザパルスL5の出射終了後、ガルバノミラー43a、43b、44は移動を開始する。
【0103】
レーザパルスL6は、制御装置60がガルバノミラー43b、44、43aから静止信号を受信した後に出射され、レーザパルスL6が偏光ビームスプリッタ46で分けられたレーザパルスL6a、L6bは、それぞれガルバノミラー43a、43b及びガルバノミラー44を経由してワーク30のY座標の等しい被加工位置に同時に入射する。
【0104】
レーザパルスL6の出射終了後、ガルバノミラー43a、43bは移動を開始する。ガルバノミラー44は、静止した状態を維持する。これは次のレーザパルスL7a、L7bによる被加工位置のY座標が、レーザパルスL6a、L6bによる被加工位置のY座標と等しいためである。
【0105】
レーザパルスL7は、ガルバノミラー43a、43bが静止した後、出射され、偏光ビームスプリッタ46で分けられたレーザパルスL7a、L7bが、それぞれガルバノミラー43a、43b及びガルバノミラー44を経由してワーク30のY座標の等しい被加工位置に同時に入射する。レーザパルスL7の出射終了後、ガルバノミラー43a、43b、44は移動を開始する。
【0106】
本例では、レーザパルスL6出射時からレーザパルスL7の出射終了まで、ガルバノミラー44が静止した状態であるが、レーザパルスL7aによる被加工位置のX座標が、レーザパルスL6aによる被加工位置のX座標と等しいときには、ガルバノミラー43aを移動させない制御を行う。また、レーザパルスL7bによる被加工位置のX座標が、レーザパルスL6bによる被加工位置のX座標と等しいときには、ガルバノミラー43bを移動させない制御を行う。このように、次のレーザパルスによる被加工位置のX座標またはY座標が等しい場合は、ガルバノミラー43a、43b、44のいずれか一つ、もしくはガルバノミラー43a、43bの双方を移動させない制御を行うことが可能である。
【0107】
第4の実施例によるレーザ加工方法によれば、たとえば一辺が50mmの正方形領域である加工可能範囲に、同時に2ショットのレーザパルスを入射させることができるため、加工速度を速くすることができる。ただし、第1の実施例によるレーザ加工方法においては、たとえばガルバノミラー43a、43bの一方とガルバノミラー44とが静止した状態でレーザパルスを出射したが、第4の実施例によるレーザ加工方法においては、3枚のガルバノミラー43a、43b、44のすべてが静止した状態でレーザパルスを出射するので、第1の実施例よりも加工速度が遅くなる場合もあるであろう。
【0108】
図7は、第3の実施例によるレーザ加工装置を示す概略図である。第3の実施例によるレーザ加工装置を用い、2枚のワーク31、32の同時加工を行う。ワーク31、32は、たとえばワーク30と同様のプリント基板である。振り分け光学系48は、AOD、偏光ビームスプリッタ等、入射するレーザビーム80を相互に異なる2つの光路A、Bに選択的に、または同時に振り分けることのできる光学系である。振り分け光学系48により光路Aに振り分けられたパルスレーザビーム80aは、ガルバノミラー43a、44、及びfθレンズ45を経由してワーク31の被加工位置に入射し、ワーク31の穴開け加工が行われる。振り分け光学系48により光路Bに振り分けられたパルスレーザビーム80bは、ガルバノミラー43b、44、及びfθレンズ45を経由してワーク32の被加工位置に入射し、ワーク32の穴開け加工が行われる。ワーク31、32の加工パターン(穴パターン)は、等しくても異なっていてもよい。第3の実施例によるレーザ加工装置を用い、たとえば第1〜第4の実施例によるレーザ加工方法を実施して、2枚のワーク31、32に高速に穴開け加工を行うことが可能である。
【0109】
図8は、第4の実施例によるレーザ加工装置を示す概略図である。第1〜第3の実施例によるレーザ加工装置は、3枚のガルバノミラー43a、43b、44、及びfθレンズ45を含み、2つの加工軸で加工を行う、1fθ、2軸のレーザ加工装置であった。第4の実施例によるレーザ加工装置は、3枚のガルバノミラーとfθレンズを含んで構成される2軸加工部を2組有する、2fθ、4軸のレーザ加工装置である。
【0110】
制御装置60からのトリガ信号に応じてレーザ光源40から出射されたパルスレーザビーム80は、マスク41の透光領域を通過することで断面形状を整形され、AOD42に入射する。制御装置60は、相互に異なる4つの周波数α〜δの制御信号をAOD42に印加することにより、パルスレーザビーム80を、偏向角の小さい方から順に光路A〜Dに振り分けることができる。本図においては、光路A〜Dを進行するレーザビームをそれぞれパルスレーザビーム81a、81b、82a、82bと表した。なお、周波数の小さい方から順にα、β、γ、δである。
【0111】
パルスレーザビーム81a、81b、82a、82bはそれぞれガルバノミラー51a、51b、54a、54bに入射して偏向され、その後、パルスレーザビーム81a、81bは、ガルバノミラー52、fθレンズ53を経由してステージ71に保持されたワーク33に入射し、パルスレーザビーム82a、82bは、ガルバノミラー55、fθレンズ56を経由してステージ72に保持されたワーク34に入射する。ステージ71、72は、たとえばXYθステージである。ワーク33、34は、たとえばワーク30と同様のプリント基板である。
【0112】
ガルバノミラー51a、54a、ガルバノミラー51b、54b、ガルバノミラー52、55、fθレンズ53、56は、それぞれ第1〜第3の実施例におけるガルバノミラー43a、ガルバノミラー43b、ガルバノミラー44、fθレンズ45に対応し、等しい機能を有する。
【0113】
パルスレーザビーム81a、81b、82a、82bが入射することにより、ワーク33、34に、マスク41の透光領域の形状に対応する形状を備える穴が形成される。
【0114】
図9は、第5の実施例によるレーザ加工方法を示すタイミングチャートである。第5の実施例によるレーザ加工方法は、第4の実施例によるレーザ加工装置を用い、制御装置60による制御のもとで実施される。タイミングチャートの横軸、及び各段の縦軸は、図2に示すタイミングチャートにおけるそれらと同様である。本図においては、レーザ光源40から出射されるパルスレーザビーム80の各レーザパルスを出射順にレーザパルスL1〜L8と表した。
【0115】
第5の実施例によるレーザ加工方法においては、AOD42を用い、レーザパルスLn(n=1〜8)の各々から、光路A〜Dのいずれか2つを進行するレーザパルスを時間的に分割生成する。光路A、B、C、Dに切り出されるレーザパルスLnの一部を、それぞれLna、Lnb、Lnc、Lndと表す。各レーザパルスLnから切り出される2つのレーザパルスのパルス幅は、たとえば相互に等しい。
【0116】
第5の実施例においては、一例として、各レーザパルスLnから2つのレーザパルスを時間的に分割生成し、一方をfθレンズ53を経由する加工可能範囲、他方をfθレンズ56を経由する加工可能範囲に入射させる。更に、一方を光路A(ガルバノミラー51a)に振り分けるとき、他方を光路C(ガルバノミラー54a)に振り分け、一方を光路B(ガルバノミラー51b)に振り分けるとき、他方を光路D(ガルバノミラー54b)に振り分ける。
【0117】
レーザパルスL1は、ガルバノミラー55、52、51aが静止し、更にガルバノミラー54aが静止した後に出射される。ガルバノミラー51a、54aは、それぞれレーザパルスL1a、L1cの入射位置のX軸方向に沿う位置決めが終了すると、ガルバノ静止信号を制御装置60に送信する。ガルバノミラー52、55は、それぞれレーザパルスL1a、L1cの入射位置のY軸方向に沿う位置決めが終了すると、ガルバノ静止信号を制御装置60に送信する。制御装置60は、最も遅く静止したガルバノミラー54aからのガルバノ静止信号の受信とともに、レーザ光源40にトリガ信号を送信する。レーザ光源40は、レーザパルスL1を出射する。
【0118】
制御装置60は、レーザ光源40へのトリガ信号の送信とともに、AOD42に対し、周波数αの制御信号、周波数γの制御信号をこの順に連続的に印加する。周波数γの制御信号の印加は、たとえばレーザパルスL1の出射終了と同時に解除される。
【0119】
なお、本図においては、すべてのレーザパルスL1〜L8の出射開始と同時に、相対的に低い周波数の制御信号が印加され、出射終了と同時に相対的に高い周波数の制御信号が解除されるように示してあるが、制御信号印加の開始及び解除は、レーザパルスL1〜L8の出射開始及び出射終了に一致させる必要はない。
【0120】
周波数αの制御信号が印加されている期間にAOD42に入射したレーザパルスL1からは、光路Aを進行するレーザパルスL1aが時間的に分割生成される。また、周波数γの制御信号が印加されている期間にAOD42に入射したレーザパルスL1からは、光路Cを進行するレーザパルスL1cが時間的に分割生成される。レーザパルスL1aは、ガルバノミラー51a、ガルバノミラー52、及びfθレンズ53を経由してワーク33の被加工位置に入射する。また、レーザパルスL1cは、ガルバノミラー54a、ガルバノミラー55、及びfθレンズ56を経由してワーク34の被加工位置に入射する。
【0121】
制御装置60は、周波数αの制御信号の印加終了とともに、ガルバノミラー51a、52に対し、位置決めを行わせる制御信号を送信する。ガルバノミラー51a、52は、制御装置60からの制御信号を受信して、レーザパルスL1cの入射終了前に移動を開始する。また、制御装置60は、周波数γの制御信号の印加終了とともに、ガルバノミラー54a、55に対し、位置決めを行わせる制御信号を送信する。ガルバノミラー54a、55は、制御装置60からの制御信号を受けて、移動を開始する。レーザパルスL1から生成されるレーザパルスL1a、L1cが入射しないガルバノミラー51b、54bは、レーザパルスL1a、L1cがワーク33、34に照射される間、移動する。
【0122】
レーザパルスL2は、ガルバノミラー55、51b、52が静止し、更にガルバノミラー54bが静止した後に出射される。各ガルバノミラー55、51b、52、54bからは、ガルバノ静止信号が制御装置60に送信され、制御装置60は、最も遅く静止したガルバノミラー54bの静止信号受信とともに、レーザ光源40にトリガ信号を送信する。レーザ光源40は、レーザパルスL2を出射する。
【0123】
制御装置60は、レーザ光源40へのトリガ信号の送信とともに、AOD42に対し、周波数βの制御信号、周波数δの制御信号を、順に連続的に印加する。
【0124】
周波数βの制御信号が印加されている期間にAOD42に入射したレーザパルスL2から、光路Bに沿って分割生成されるレーザパルスL2bは、ガルバノミラー51b、52、及びfθレンズ53を経由してワーク33の被加工位置に入射する。また、周波数δの制御信号が印加されている期間にAOD42に入射したレーザパルスL2から、光路Dに沿って分割生成されるレーザパルスL2dは、ガルバノミラー54b、55、及びfθレンズ56を経由してワーク34の被加工位置に入射する。
【0125】
制御装置60は、周波数βの制御信号の印加終了とともに、ガルバノミラー51b、52に対し、位置決めを行わせる制御信号を送信し、これを受けたガルバノミラー51b、52は、レーザパルスL2dの入射終了前に移動を開始する。また、制御装置60は、周波数δの制御信号の印加終了とともに、ガルバノミラー54b、55に対し、位置決めを行わせる制御信号を送信し、これを受けたガルバノミラー54b、55は、移動を開始する。レーザパルスL2から生成されるレーザパルスL2b、L2dが入射しないガルバノミラー51a、54aは、レーザパルスL2b、L2dがワーク33、34に照射される間、移動する。
【0126】
レーザパルスL3は、ガルバノミラー51a、54a、55が静止し、更にガルバノミラー52が静止した後に出射される。各ガルバノミラー51a、54a、55、52からは、ガルバノ静止信号が制御装置60に送信され、制御装置60は、最も遅く静止したガルバノミラー52の静止信号受信とともに、レーザ光源40にトリガ信号を送信し、レーザ光源40はこれに応じてレーザパルスL3を出射する。
【0127】
制御装置60は、レーザ光源40へのトリガ信号の送信とともに、AOD42に対し、周波数αの制御信号、周波数γの制御信号を、順に連続的に印加する。
【0128】
周波数αの制御信号が印加されている期間にAOD42に入射したレーザパルスL3から、光路Aに沿って分割生成されるレーザパルスL3aは、ガルバノミラー51a、52、及びfθレンズ53を経由してワーク33の被加工位置に入射し、周波数γの制御信号が印加されている期間にAOD42に入射したレーザパルスL3から、光路Cに沿って分割生成されるレーザパルスL3cは、ガルバノミラー54a、55、及びfθレンズ56を経由してワーク34の被加工位置に入射する。
【0129】
制御装置60は、周波数αの制御信号の印加終了とともに、ガルバノミラー51a、52に対し、位置決めを行わせる制御信号を送信し、これを受けたガルバノミラー51a、52は、レーザパルスL3cの入射終了前に移動を開始する。また、制御装置60は、周波数γの制御信号の印加終了とともに、ガルバノミラー54a、55に対し、位置決めを行わせる制御信号を送信し、これを受けたガルバノミラー54a、55は、移動を開始する。レーザパルスL3から生成されるレーザパルスL3a、L3cが入射しないガルバノミラー51b、54bは、レーザパルスL3a、L3cがワーク33、34に照射される間、移動する。
【0130】
レーザパルスL4は、ガルバノミラー52、51b、55が静止し、更にガルバノミラー54bが静止した後に出射される。制御装置60は、最も遅く静止したガルバノミラー54bの静止信号受信とともに、レーザ光源40にトリガ信号を送信する。
【0131】
制御装置60は、レーザ光源40へのトリガ信号の送信とともに、AOD42に対し、周波数βの制御信号、周波数δの制御信号を、順に連続的に印加し、レーザパルスL4から光路BにレーザパルスL4b、光路DにレーザパルスL4dを切り出す。ガルバノミラー51b、52、54b、55は、制御装置60の制御により所定のタイミングで移動を開始する。レーザパルスL4から生成されるレーザパルスL4b、L4dが入射しないガルバノミラー51a、54aは、レーザパルスL4b、L4dがワーク33、34に照射される間、移動する。
【0132】
位置決めが完了したガルバノミラー51a、54a、52、55から、制御装置60に静止信号が送信されるが、次のレーザパルスL5a、L5cの入射位置の位置決め完了時が、直前のレーザパルスL4出射時から、レーザパルスを出射可能な最短周期分の時間が経過していない時刻であるため、制御装置60は、最短周期分の時間が経過した後、レーザパルスL5を出射させるとともに、AOD42に対し、周波数αの制御信号、周波数γの制御信号を、順に連続的に印加し、レーザパルスL5から光路AにレーザパルスL5a、光路CにレーザパルスL5cを切り出す。ガルバノミラー51a、52、54a、55は、制御装置60の制御により所定のタイミングで移動を開始する。レーザパルスL5から生成されるレーザパルスL5a、L5cが入射しないガルバノミラー51b、54bは、レーザパルスL5a、L5cがワーク33、34に照射される間、移動する。
【0133】
レーザパルスL6は、ガルバノミラー51b、52、55が静止し、更にガルバノミラー54bが静止した後に出射される。制御装置60は、最も遅く静止したガルバノミラー54bの静止信号受信とともに、レーザ光源40にトリガ信号を送信する。
【0134】
制御装置60は、レーザ光源40へのトリガ信号の送信とともに、AOD42に対し、周波数βの制御信号、周波数δの制御信号を、順に連続的に印加し、レーザパルスL6から光路BにレーザパルスL6b、光路DにレーザパルスL6dを切り出す。レーザパルスL6b、L6dは、それぞれワーク33、34の被加工位置に入射する。
【0135】
ガルバノミラー51bは、周波数βの制御信号の印加終了とともに移動を開始するが、ガルバノミラー52は、レーザパルスL6bの入射後も静止した状態を維持する。これは次のレーザパルスL7からfθレンズ53の加工可能範囲に振り分けられるレーザパルスL7aによる被加工位置のY座標が、レーザパルスL6bによる被加工位置のY座標と等しいためである。ガルバノミラー54b、55は、周波数δの制御信号の印加終了とともに移動を開始する。レーザパルスL6から生成されるレーザパルスL6b、L6dが入射しないガルバノミラー51a、54aは、レーザパルスL6b、L6dがワーク33、34に照射される間、移動する。
【0136】
レーザパルスL7は、ガルバノミラー54a、55、51aが静止した後、出射される。AOD42によって、光路Aに切り出されたレーザパルスL7aは、静止状態のガルバノミラー51a、52を経由して、ワーク33の被加工位置に入射する。光路Cに切り出されたレーザパルスL7cは、ガルバノミラー54a、55を経由して、ワーク34上の被加工位置に入射する。ガルバノミラー51a、52、54a、55は、制御装置60の制御により、所定のタイミングで移動を開始する。レーザパルスL7から生成されるレーザパルスL7a、L7cが入射しないガルバノミラー51b、54bは、レーザパルスL7a、L7cがワーク33、34に照射される間、移動する。
【0137】
レーザパルスL8は、ガルバノミラー52、55、54aが静止し、更にガルバノミラー51aが静止した後出射され、AOD42で光路A、Cに振り分けられた後、ガルバノミラー51a、54aを経由して、それぞれ所定の被加工位置に入射する。この間、ガルバノミラー51b、54bは移動を継続する。加工が連続して、ガルバノミラー51a、54aを経由するレーザパルスにより行われる。
【0138】
第5の実施例によるレーザ加工方法においては、レーザパルスの出射時に、AOD42によってレーザパルスが振り分けられない光路A〜D上にあるガルバノミラー51a、51b、54a、54bの少なくとも一つが、位置決めのために移動する。たとえばAOD42に入射する1つのレーザパルスから時間的に分割生成された2つのレーザパルスを光路Aと光路Cとに振り分けて加工を行う間に、ガルバノミラー51b、54bの少なくとも一方を移動して、以後のレーザパルスの位置決めを行い、AOD42に入射する1つのレーザパルスから時間的に分割生成された2つのレーザパルスを光路Bと光路Dとに振り分けて加工を行う間には、ガルバノミラー51a、54aの少なくとも一方を移動して、以後のレーザパルスの位置決めを行う。このため、加工速度を速くすることができる。なお、第5の実施例によるレーザ加工方法においては、ワーク33、34に照射される各レーザパルスのピークパワーは、レーザ光源40から出射されるパルスレーザビーム80のそれと等しい。
【0139】
第5の実施例によるレーザ加工方法においては、AOD42に対し、相対的に低い周波数の制御信号、相対的に高い周波数の制御信号の順に制御信号を印加しているが、第3の実施例によるレーザ加工方法のように、今回の被加工位置と次回の被加工位置との間の距離が相対的に大きい今回被加工位置に向けて先にレーザパルスを切り出してもよい。
【0140】
第5の実施例によるレーザ加工方法においては、レーザパルスL1〜L8のそれぞれを時間的に分割して、fθレンズ53の加工可能範囲と、fθレンズ56の加工可能範囲との双方に振り分けたが、各レーザパルスL1〜L8を時間的に分割せず、選択的にfθレンズ53の加工可能範囲、fθレンズ56の加工可能範囲のいずれか一方の一軸、すなわち光路A〜Dのいずれか1つに振り分けるレーザ加工方法も可能である。その場合、レーザパルスの出射時に、AOD42によってレーザパルスが振り分けられないfθレンズ側にある3枚のガルバノミラー、レーザパルスが振り分けられるfθレンズ側にあるがレーザパルスが振り分けられない光路上にあるガルバノミラー51a、51b、54a、54bのうちの少なくとも一つが、位置決めのために移動する。このレーザ加工方法(第5の実施例によるレーザ加工方法の変形例)によれば、各レーザパルスのパルスエネルギ及びピークパワーを、レーザ光源40から出射されるパルスレーザビーム80のそれと等しくして、加工を行うことができる。
【0141】
図10は、第6の実施例によるレーザ加工方法を示すタイミングチャートである。第6の実施例によるレーザ加工方法は、第4の実施例によるレーザ加工装置を用い、制御装置60による制御のもとで実施される。タイミングチャートの横軸、及び各段の縦軸は、図2に示すタイミングチャートにおけるそれらと同様である。
【0142】
第5の実施例によるレーザ加工方法においては、各レーザパルスLnから2つのレーザパルスを時間的に分割生成し、一方をfθレンズ53を経由する加工可能範囲、他方をfθレンズ56を経由する加工可能範囲に入射させたが、第6の実施例によるレーザ加工方法では、各レーザパルスLnから時間的に分割生成された2つのレーザパルスの双方を、レーザパルスLnごとに、fθレンズ53を経由する加工可能範囲、fθレンズ56を経由する加工可能範囲のいずれか一方に選択的に入射させる。
【0143】
レーザパルスL1は、ガルバノミラー52、51aが静止し、更にガルバノミラー51bが静止した後に出射される。ガルバノミラー51a、51bは、それぞれレーザパルスL1a、L1bの入射位置のX軸方向に沿う位置決めが終了すると、ガルバノ静止信号を制御装置60に送信する。ガルバノミラー52は、レーザパルスL1a、L1bの入射位置のY軸方向に沿う位置決めが終了すると、ガルバノ静止信号を制御装置60に送信する。制御装置60は、最も遅く静止したガルバノミラー51bからのガルバノ静止信号の受信とともに、レーザ光源40にトリガ信号を送信する。レーザ光源40は、レーザパルスL1を出射する。
【0144】
制御装置60は、レーザ光源40へのトリガ信号の送信とともに、AOD42に対し、周波数αの制御信号、周波数βの制御信号をこの順に連続的に印加する。周波数βの制御信号の印加は、たとえばレーザパルスL1の出射終了と同時に解除される。
【0145】
周波数αの制御信号が印加されている期間にAOD42に入射したレーザパルスL1からは、光路Aを進行するレーザパルスL1aが時間的に分割生成される。また、周波数βの制御信号が印加されている期間にAOD42に入射したレーザパルスL1からは、光路Bを進行するレーザパルスL1bが時間的に分割生成される。レーザパルスL1aは、ガルバノミラー51a、ガルバノミラー52、及びfθレンズ53を経由して、また、レーザパルスL1bは、ガルバノミラー51b、ガルバノミラー52、及びfθレンズ53を経由して、それぞれワーク33の被加工位置に入射する。両レーザパルスL1a、L1bが入射する被加工位置のY座標は相互に等しい。
【0146】
制御装置60は、周波数αの制御信号の印加終了とともに、ガルバノミラー51aに対し、位置決めを行わせる制御信号を送信する。ガルバノミラー51aは、制御装置60からの制御信号を受信して、レーザパルスL1bの入射終了前に移動を開始する。また、制御装置60は、周波数βの制御信号の印加終了とともに、ガルバノミラー51b、52に対し、位置決めを行わせる制御信号を送信する。ガルバノミラー51b、52は、制御装置60からの制御信号を受けて、移動を開始する。レーザパルスL1から生成されるレーザパルスL1a、L1bが入射しないガルバノミラー54a、54b、55は、レーザパルスL1a、L1bがワーク33に照射される間、移動する。
【0147】
レーザパルスL2は、ガルバノミラー55、54aが静止し、更にガルバノミラー54bが静止した後に出射される。各ガルバノミラー55、54a、54bからは、ガルバノ静止信号が制御装置60に送信され、制御装置60は、最も遅く静止したガルバノミラー54bの静止信号受信とともに、レーザ光源40にトリガ信号を送信する。レーザ光源40は、レーザパルスL2を出射する。
【0148】
制御装置60は、レーザ光源40へのトリガ信号の送信とともに、AOD42に対し、周波数γの制御信号、周波数δの制御信号を、順に連続的に印加する。
【0149】
周波数γの制御信号が印加されている期間にAOD42に入射したレーザパルスL2から、光路Cに沿って分割生成されるレーザパルスL2cは、ガルバノミラー54a、55、及びfθレンズ56を経由して、また、周波数δの制御信号が印加されている期間にAOD42に入射したレーザパルスL2から、光路Dに沿って分割生成されるレーザパルスL2dは、ガルバノミラー54b、55、及びfθレンズ56を経由して、それぞれワーク34の被加工位置に入射する。両レーザパルスL2c、L2dが入射する被加工位置のY座標は相互に等しい。
【0150】
制御装置60は、周波数γの制御信号の印加終了とともに、ガルバノミラー54aに対し、位置決めを行わせる制御信号を送信し、これを受けたガルバノミラー54aは、レーザパルスL2dの入射終了前に移動を開始する。また、制御装置60は、周波数δの制御信号の印加終了とともに、ガルバノミラー54b、55に対し、位置決めを行わせる制御信号を送信し、これを受けたガルバノミラー54b、55は、移動を開始する。レーザパルスL2から生成されるレーザパルスL2c、L2dが入射しないガルバノミラー51a、51b、52は、レーザパルスL2c、L2dがワーク34に照射される間、移動する。
【0151】
レーザパルスL3は、ガルバノミラー51a、51bが静止し、更にガルバノミラー52が静止した後に出射される。各ガルバノミラー51a、51b、52からは、ガルバノ静止信号が制御装置60に送信され、制御装置60は、最も遅く静止したガルバノミラー52の静止信号受信とともに、レーザ光源40にトリガ信号を送信し、レーザ光源40はこれに応じてレーザパルスL3を出射する。
【0152】
制御装置60は、レーザ光源40へのトリガ信号の送信とともに、AOD42に対し、周波数αの制御信号、周波数βの制御信号を、順に連続的に印加する。
【0153】
周波数αの制御信号が印加されている期間にAOD42に入射したレーザパルスL3から、光路Aに沿って分割生成されるレーザパルスL3aは、ガルバノミラー51a、52、及びfθレンズ53を経由して、また、周波数βの制御信号が印加されている期間にAOD42に入射したレーザパルスL3から、光路Bに沿って分割生成されるレーザパルスL3bは、ガルバノミラー51b、52、及びfθレンズ53を経由して、それぞれワーク33の被加工位置に入射する。
【0154】
制御装置60は、周波数αの制御信号の印加終了とともに、ガルバノミラー51aに対し、位置決めを行わせる制御信号を送信し、これを受けたガルバノミラー51aは、レーザパルスL3bの入射終了前に移動を開始する。また、制御装置60は、周波数βの制御信号の印加終了とともに、ガルバノミラー51b、52に対し、位置決めを行わせる制御信号を送信し、これを受けたガルバノミラー51b、52は、移動を開始する。レーザパルスL3から生成されるレーザパルスL3a、L3bが入射しないガルバノミラー54a、54b、55は、レーザパルスL3a、L3bがワーク33に照射される間、移動する。
【0155】
レーザパルスL4は、ガルバノミラー55、54aが静止し、更にガルバノミラー54bが静止した後に出射される。制御装置60は、最も遅く静止したガルバノミラー54bの静止信号受信とともに、レーザ光源40にトリガ信号を送信する。
【0156】
制御装置60は、レーザ光源40へのトリガ信号の送信とともに、AOD42に対し、周波数γの制御信号、周波数δの制御信号を順に連続的に印加し、レーザパルスL4から光路CにレーザパルスL4c、光路DにレーザパルスL4dを切り出す。ガルバノミラー54a、54b、55は、制御装置60の制御により所定のタイミングで移動を開始する。レーザパルスL4から生成されるレーザパルスL4c、L4dが入射しないガルバノミラー51a、51b、52は、レーザパルスL4c、L4dがワーク34に照射される間、移動する。
【0157】
位置決めが完了したガルバノミラー51b、52、51aから、制御装置60に静止信号が送信されるが、次のレーザパルスL5a、L5bの入射位置の位置決め完了時が、直前のレーザパルスL4出射時から、レーザパルスを出射可能な最短周期分の時間が経過していない時刻であるため、制御装置60は、最短周期分の時間が経過した後、レーザパルスL5を出射させるとともに、AOD42に対し、周波数αの制御信号、周波数βの制御信号を順に連続的に印加し、レーザパルスL5から光路AにレーザパルスL5a、光路BにレーザパルスL5bを切り出す。ガルバノミラー51a、51bは、制御装置60の制御により所定のタイミングで移動を開始するが、ガルバノミラー52は、レーザパルスL5bの入射後も静止した状態を維持する。これは次にガルバノミラー51a、51bにレーザパルスL7a、L7bを入射させて加工を行う際の被加工位置のY座標が、レーザパルスL5a、L5bによる被加工位置のY座標と等しいためである。
レーザパルスL5から生成されるレーザパルスL5a、L5bが入射しないガルバノミラー54a、54b、55は、レーザパルスL5a、L5bがワーク33に照射される間、移動する。
【0158】
レーザパルスL6は、ガルバノミラー55、54aが静止し、更にガルバノミラー54bが静止した後に出射される。制御装置60は、最も遅く静止したガルバノミラー54bの静止信号受信とともに、レーザ光源40にトリガ信号を送信する。
【0159】
制御装置60は、レーザ光源40へのトリガ信号の送信とともに、AOD42に対し、周波数γの制御信号、周波数δの制御信号を、順に連続的に印加し、レーザパルスL6から光路CにレーザパルスL6c、光路DにレーザパルスL6dを切り出す。レーザパルスL6c、L6dは、それぞれワーク34の被加工位置に入射する。
【0160】
ガルバノミラー54a、54b、55は、所定のタイミングで移動を開始する。レーザパルスL6から生成されるレーザパルスL6c、L6dが入射しないガルバノミラー51a、51bは、レーザパルスL6c、L6dがワーク34に照射される間、移動する。
【0161】
レーザパルスL7は、ガルバノミラー51bが静止し、更にガルバノミラー51aが静止した後、出射される。AOD42によって、光路Aに切り出されたレーザパルスL7aは、静止状態のガルバノミラー51a、52を経由して、また、光路Bに切り出されたレーザパルスL7bは、ガルバノミラー51b、52を経由して、それぞれワーク33上の、Y座標が等しい被加工位置に入射する。ガルバノミラー51a、51b、52は、制御装置60の制御により、所定のタイミングで移動を開始する。レーザパルスL7から生成されるレーザパルスL7a、L7bが入射しないガルバノミラー54a、54b、55は、レーザパルスL7a、L7bがワーク33に照射される間、移動する。
【0162】
レーザパルスL8は、ガルバノミラー52、51bが静止し、更にガルバノミラー51aが静止した後出射され、AOD42で光路A、Bに振り分けられた後、ガルバノミラー51a、51bを経由して、それぞれ所定の被加工位置に入射する。この間、ガルバノミラー54a、54bは移動を継続する。本図に示す例においては、ガルバノミラー55はレーザパルスL8の出射途中で静止する。レーザパルスL7、L8はともにfθレンズ53の加工可能範囲に伝搬され、fθレンズ53の加工可能範囲内の被加工位置の加工が連続して行われる。
【0163】
たとえばレーザパルスL7の出射時に、ガルバノミラー54a、54b、55の少なくとも一つは移動中であり、その中の少なくとも一つがレーザパルスL8の出射時にも移動中のとき、レーザパルスL7、L8は、続けてfθレンズ53の加工可能範囲に伝搬される。
【0164】
第6の実施例によるレーザ加工方法においては、レーザパルスの出射時に、AOD42によってそのレーザパルスが振り分けられないfθレンズ側にある3つのガルバノミラーのうちの少なくとも1つは移動する。このため加工速度を速くすることができる。なお、第6の実施例によるレーザ加工方法においても、今回の被加工位置と次回の被加工位置との間の距離が相対的に大きい今回被加工位置に向けて先にレーザパルスを切り出すことが可能である。
【0165】
図11は、第5の実施例によるレーザ加工装置を示す概略図である。第5の実施例によるレーザ加工装置は、パルスレーザビームを分岐(エネルギ分割)し、二つの光路に同時に振り分ける偏光ビームスプリッタ、及び偏光ビームスプリッタで振り分けられたパルスレーザビームの光路上に各々配置される2つのAODを含む。2つのAODはそれぞれ、入射したパルスレーザビームを、各レーザパルスごとに二つの光路の一方に選択的に、またはわずかな時間差で双方に振り分けて出射することができる。偏光ビームスプリッタ及び2つのAODを含んで、パルスレーザビームを4方向に振り分けることのできる振り分け光学系が構成される。
【0166】
レーザ光源40から出射したパルスレーザビーム80は、マスク41の透光領域を通過し、偏光ビームスプリッタ46に入射する。偏光ビームスプリッタ46は、レーザ光源40から出射されたパルスレーザビーム80の一部、たとえば半分を反射して光路Aに沿って進行させ、残部を透過して光路Bに沿って進行させる。光路A、Bを進行するパルスレーザビーム80A、80Bはそれぞれ、AOD42a、42bに入射する。
【0167】
AOD42aは、パルスレーザビーム80Aを、光路Aaと光路Abとに振り分けることができる。光路Aaに振り分けるときには、相対的に低い周波数の制御信号、光路Abに振り分けるときには、相対的に高い周波数の制御信号をAOD42aに印加する。
【0168】
AOD42bは、パルスレーザビーム80Bを、光路Baと光路Bbとに振り分けることができる。光路Baに振り分けるときには、相対的に低い周波数の制御信号、光路Bbに振り分けるときには、相対的に高い周波数の制御信号をAOD42bに印加する。光路Aa、Ab、Ba、Bbを進行するパルスレーザビームを、それぞれパルスレーザビーム80Aa、80Ab、80Ba、80Bbと表記する。
【0169】
AOD42aによって光路Aaに振り分けられたパルスレーザビーム80Aaは、ガルバノミラー51a、ガルバノミラー52で偏向され、fθレンズ53で集光されてステージ71に保持されたワーク33の被加工位置に入射する。同様に、AOD42aで光路Abに振り分けられたパルスレーザビーム80Abは、ガルバノミラー51b、52、fθレンズ53を経由してワーク33の被加工位置に入射する。
【0170】
AOD42bによって光路Baに振り分けられたパルスレーザビーム80Baは、ガルバノミラー54a、ガルバノミラー55で偏向され、fθレンズ56で集光されてステージ72に保持されたワーク34の被加工位置に入射する。同様に、AOD42bで光路Bbに振り分けられたパルスレーザビーム80Bbは、ガルバノミラー54b、55、fθレンズ56を経由してワーク34の被加工位置に入射する。
【0171】
図12は、第7の実施例によるレーザ加工方法を示すタイミングチャートである。第7の実施例によるレーザ加工方法は、第5の実施例によるレーザ加工装置を用い、制御装置60による制御のもとで実施される。タイミングチャートの横軸、及び各段の縦軸は、図2に示すタイミングチャートにおけるそれらと同様である。本図においては、レーザ光源40から出射されるパルスレーザビーム80の各レーザパルスを出射順にレーザパルスL1〜L8と表した。
【0172】
第7の実施例によるレーザ加工方法においては、偏向ビームスプリッタ46、AOD42a、42bを用い、レーザパルスLn(n=1〜8)の各々から、光路Aa、Ab、Ba、Bbのいずれか2つを進行するレーザパルスを生成する。光路Aa、Ab、Ba、Bbに沿って進行するレーザパルスLnの一部を、それぞれLnAa、LnAb、LnBa、LnBbと表す。
【0173】
第5の実施例においては、各レーザパルスLnを2つのレーザパルスに等エネルギ分割し、一方をfθレンズ53を経由する加工可能範囲、他方をfθレンズ56を経由する加工可能範囲に入射させる。更に、一方を光路Aa(ガルバノミラー51a)に振り分けるとき、他方を光路Ba(ガルバノミラー54a)に振り分け、一方を光路Ab(ガルバノミラー51b)に振り分けるとき、他方を光路Bb(ガルバノミラー54b)に振り分ける。
【0174】
レーザパルスL1は、ガルバノミラー55、52、54aが静止し、更にガルバノミラー51aが静止した後に出射される。制御装置60は、最も遅く静止したガルバノミラー51aの静止信号の受信とともに、レーザ光源40にトリガ信号を送信する。レーザ光源40は、これを受けてレーザパルスL1を出射する。制御装置60は、レーザ光源40へのトリガ信号の送信とともに、AOD42a、42bに対し、相対的に低い周波数の制御信号を印加する。偏向ビームスプリッタ46で光路A、Bに沿って等エネルギ分割され、AOD42a、42bに入射したレーザパルスは、それぞれ光路Aa、Baに振り分けられる。レーザパルスL1Aaは、ガルバノミラー51a、52、fθレンズ53を経由してワーク33の被加工位置に入射する。レーザパルスL1Baは、ガルバノミラー54a、55、fθレンズ56を経由してワーク34の被加工位置に入射する。レーザパルスL1が出射される期間、レーザパルスL1Aa、L1Baの入射しないガルバノミラー51b、54bは、移動を行う。
【0175】
レーザパルスL1の出射終了とともに、制御装置60は、AOD42a、42bに対する制御信号の印加を解除し、更に、ガルバノミラー51a、52、54a、55に位置決めを行わせる制御信号を送信する。ガルバノミラー51a、52、54a、55は、制御装置60からの制御信号を受信して、移動を開始する。
【0176】
レーザパルスL2は、ガルバノミラー52、55、51bが静止し、更にガルバノミラー54bが静止した後に出射される。制御装置60は、最も遅く静止したガルバノミラー54bの静止信号の受信とともに、レーザ光源40にトリガ信号を送信し、AOD42a、42bに対し、相対的に高い周波数の制御信号を印加する。偏向ビームスプリッタ46で光路A、Bに沿って等エネルギ分割され、AOD42a、42bに入射したレーザパルスは、それぞれ光路Ab、Bbに振り分けられる。レーザパルスL2Abは、ガルバノミラー51b、52、fθレンズ53を経由してワーク33の被加工位置に入射する。レーザパルスL2Bbは、ガルバノミラー54b、55、fθレンズ56を経由してワーク34の被加工位置に入射する。レーザパルスL2が出射される期間、レーザパルスL2Ab、L2Bbの入射しないガルバノミラー51a、54aは移動を行う。
【0177】
レーザパルスL2の出射終了とともに、制御装置60は、AOD42a、42bに対する制御信号の印加を解除し、更に、ガルバノミラー51b、52、54b、55に位置決めを行わせる制御信号を送信する。ガルバノミラー51b、52、54b、55は、制御装置60からの制御信号を受信して移動を開始する。
【0178】
レーザパルスL3は、レーザパルスL1と同様に、ガルバノミラー51a、52、54a、55が静止した後に出射される。AOD42a、42bに対しては、相対的に低い周波数の制御信号が印加される。偏向ビームスプリッタ46で光路A、Bに沿って等エネルギ分割されたレーザパルスは、それぞれ光路Aa、Baに振り分けられ、それぞれワーク33、34の被加工位置に入射する。レーザパルスL3が出射される期間、レーザパルスL3Aa、L3Baの入射しないガルバノミラー51b、54bは移動を行う。
【0179】
レーザパルスL3の出射終了とともに、制御装置60は、AOD42a、42bに対する制御信号の印加を解除し、更に、ガルバノミラー51a、52、54a、55に移動を開始させる。
【0180】
レーザパルスL4は、レーザパルスL2と同様に、ガルバノミラー51b、52、54b、55が静止した後に出射される。AOD42a、42bに対しては、相対的に高い周波数の制御信号が印加される。偏向ビームスプリッタ46で光路A、Bに沿って等エネルギ分割されたレーザパルスは、それぞれ光路Ab、Bbに振り分けられ、それぞれワーク33、34の被加工位置に入射する。レーザパルスL4が出射される期間、レーザパルスL4Ab、L4Bbの入射しないガルバノミラー51a、54aは移動を行う。
【0181】
レーザパルスL4の出射終了とともに、制御装置60は、AOD42a、42bに対する制御信号の印加を解除し、更に、ガルバノミラー51b、52、54b、55に移動を開始させる。
【0182】
ガルバノミラー51a、52、54a、55によるレーザパルスL5Aa、L5Baの入射位置の位置決めが完了し、制御信号60は、各ガルバノミラー51a、52、54a、55から静止信号を受信する。しかし位置決め完了時は、直前のレーザパルスL4出射時から、レーザパルスを出射可能な最短周期分の時間が経過していない時刻である。したがって、制御装置60は、最短周期分の時間が経過した後、レーザパルスL5を出射させるとともに、AOD42a、42bに対し、相対的に低い周波数の制御信号を印加する。レーザパルスL5Aa、L5Baが、それぞれワーク33、34の被加工位置に入射する。レーザパルスL5が出射される期間、レーザパルスL5Aa、L5Baの入射しないガルバノミラー51b、54bは移動を行う。レーザパルスL5の出射終了後、ガルバノミラー51a、52、54a、55は移動を開始する。
【0183】
レーザパルスL6は、ガルバノミラー52、55、51bが静止し、更に、ガルバノミラー54bが静止した後に出射される。レーザパルスL6の出射とともに、AOD42a、42bに対し、相対的に高い周波数の制御信号が印加される。偏向ビームスプリッタ46で光路A、Bに沿って等エネルギ分割されたレーザパルスは、それぞれ光路Ab、Bbに振り分けられ、それぞれワーク33、34の被加工位置に入射する。レーザパルスL6が出射される期間、レーザパルスL6Ab、L6Bbの入射しないガルバノミラー51a、54aは移動を行う。
【0184】
レーザパルスL6の出射終了とともに、制御装置60は、AOD42a、42bに対する制御信号の印加を解除する。また、ガルバノミラー51b、54bに移動を開始させる。しかし、ガルバノミラー52、55には静止した状態を維持させる。これは次のレーザパルスL7Aa、L7Baによる被加工位置のY座標が、それぞれレーザパルスL6Ab、L6Bbによる被加工位置のY座標と等しいためである。
【0185】
レーザパルスL7は、ガルバノミラー54aが静止し、更にガルバノミラー51aが静止した後に出射される。出射とともに、AOD42a、42bに対し、相対的に低い周波数の制御信号が印加される。偏向ビームスプリッタ46で光路A、Bに沿って等エネルギ分割されたレーザパルスは、それぞれ光路Aa、Baに振り分けられる。光路Aaを進行するレーザパルスL7Aaは、静止状態のガルバノミラー51a、52、及びfθレンズ53を経由してワーク33の被加工位置に入射する。光路Baを進行するレーザパルスL7Baは、静止状態のガルバノミラー54a、55、及びfθレンズ56を経由してワーク34の被加工位置に入射する。レーザパルスL7が出射される期間、レーザパルスL7Aa、L7Baの入射しないガルバノミラー51b、54bは、移動を行う。
【0186】
レーザパルスL7の出射終了とともに、制御装置60は、AOD42a、42bに対する制御信号の印加を解除し、更に、ガルバノミラー51a、52、54a、55に移動を開始させる。
【0187】
レーザパルスL8は、ガルバノミラー51a、52、54a、55が静止した後に出射される。AOD42a、42bに対しては、相対的に低い周波数の制御信号が印加される。偏向ビームスプリッタ46で光路A、Bに沿って等エネルギ分割されたレーザパルスは、それぞれ光路Aa、Baに振り分けられ、それぞれワーク33、34の被加工位置に入射する。レーザパルスL8が出射される期間、レーザパルスL8Aa、L8Baの入射しないガルバノミラー51b、54bは、移動を行っている。
【0188】
このようにたとえばレーザパルスL7の出射時に、ガルバノミラー51b、54bのうちの少なくとも一方が移動中であり、その中の少なくとも1つがレーザパルスL8の出射時にも移動中の場合には、レーザパルスL7、L8を分割したレーザパルスは、連続してガルバノミラー51a、54a経由でワーク33、34の被加工位置に入射する。
【0189】
レーザパルスL8の出射終了とともに、制御装置60は、AOD42a、42bに対する制御信号の印加を解除し、更に、ガルバノミラー51a、52、54a、55に移動を開始させる。
【0190】
第7の実施例によるレーザ加工方法においては、レーザパルスの出射時、AOD42a、42bによってレーザパルスが振り分けられない光路上にあるガルバノミラー51a、51b、54a、54bのうちの少なくとも一つが移動し、以後のレーザパルスの入射位置の位置決めが行われる。このため、加工速度を速くすることができる。
【0191】
第7の実施例によるレーザ加工方法では、パルスレーザビーム80のエネルギの一部を光路A、残部を光路Bに振り分け、更に光路A、Bのそれぞれにおいて、レーザパルスを2つの光路のうちの一方に選択的に進行させた。たとえば図3、図4にタイミングチャートを示した第2、第3の実施例によるレーザ加工方法のように、光路A、Bのそれぞれにおいて、1つのレーザパルスから2つの光路を進行するレーザパルスを時間的に分割生成し、わずかな時間差で4軸加工を行うことも可能である。この場合、6つのガルバノミラー51a、51b、52、54a、54b、55のすべてが位置決めのために静止した後、レーザ光源40からパルスレーザビーム80が出射される。
【0192】
図13は、第6の実施例によるレーザ加工装置を示す概略図である。第5の実施例によるレーザ加工装置においては、偏光ビームスプリッタ46で振り分けられるパルスレーザビームの光路上にAOD42a、42bが配置されたが、第6の実施例によるレーザ加工装置では、AOD42で振り分けられるパルスレーザビームの光路上に偏光ビームスプリッタ46a、46bが配置される。AOD42、偏光ビームスプリッタ46a、46bを含んで、パルスレーザビームを4方向に振り分けることができる振り分け光学系が構成される。
【0193】
レーザ光源40から出射したパルスレーザビーム80は、マスク41の透光領域を通過し、AOD42に入射する。AOD42は、パルスレーザビーム80を、光路Aと光路Bとに選択的に振り分けることができる。光路Aに振り分けるときには、AOD42に制御信号を印加しない。光路Bに振り分けるときには、AOD42に制御信号を印加する。
【0194】
光路Aに振り分けられたパルスレーザビーム80aは、偏光ビームスプリッタ46aで2つのレーザパルスにたとえば等エネルギ分割され、分割されたレーザパルスはそれぞれガルバノミラー51a、51bで偏向され、ガルバノミラー52、fθレンズ53を経由してステージ71に保持されたワーク33の被加工位置に入射する。
【0195】
同様に、光路Bに振り分けられたパルスレーザビーム80bは、偏光ビームスプリッタ46bで2つのレーザパルスにたとえば等エネルギ分割され、分割されたレーザパルスはそれぞれガルバノミラー54a、54bで偏向され、ガルバノミラー55、fθレンズ56を経由してステージ72に保持されたワーク34の被加工位置に入射する。
【0196】
第6の実施例によるレーザ加工装置を用い、たとえばAOD42で1パルスごとに光路A、Bのうちの一方に選択的にレーザパルスを振り分け、ワーク33の2つの被加工位置の穴開け加工を行う間(レーザパルス出射時)に、ガルバノミラー54a、54b、55のうちの少なくとも1つを移動してワーク34に照射されるレーザパルスの位置決めをし、ワーク34の2つの被加工位置の穴開け加工の間(レーザパルス出射時)には、ガルバノミラー51a、51b、52のうちの少なくとも1つを移動してワーク33に照射されるレーザパルスの位置決めをするレーザ加工方法(第8の実施例によるレーザ加工方法)を実施することができる。
【0197】
また、たとえば図3、図4にタイミングチャートを示した第2、第3の実施例によるレーザ加工方法のように、AOD42で、1つのレーザパルスから2つの光路A、Bに沿うレーザパルスを時間的に分割生成し、わずかな時間差で4軸加工を行うことも可能である。この場合、6つのガルバノミラー51a、51b、52、54a、54b、55のすべてが位置決めのために静止した後、レーザ光源40からパルスレーザビーム80が出射される。
【0198】
第6の実施例によるレーザ加工装置は、レーザパルスを2つの光路に振り分けて2fθ、4軸の加工を行うが、AOD42に更に異なる周波数の制御信号を印加してもよい。相互に異なるn種類の周波数の制御信号を用いて、(n+1)fθ、2×(n+1)軸の加工を行うことができる。
【0199】
以下、加工可能範囲に関して述べる。
【0200】
図14(A)〜(G)を参照し、ガルバノミラーの加工エリアについて説明する。図14(A)に示すように、たとえばAODやビームスプリッタを含んで構成される振り分け器に入射するレーザパルスは、レーザパルスごとに二つの光路の一方に選択的に、またはわずかな時間差で双方に、更には2つの光路に同時に振り分けられる。2つの光路の一方には、入射するレーザパルスを偏向して出射することのできる第1偏向素子、たとえばガルバノミラー43a、51a、54aが配置される。他方には、入射するレーザパルスを偏向して出射することのできる第2偏向素子、たとえばガルバノミラー43b、51b、54bが配置される。第1、第2偏向素子を経由したレーザパルスは、入射するレーザパルスを偏向して出射することのできる第3偏向素子、たとえばガルバノミラー44、52、55に入射する。第1〜第3偏向素子を含んで、入射するレーザパルスを偏向して出射することのできる偏向器、たとえばガルバノスキャナが構成される。第3偏向素子を出射したレーザパルスは、fθレンズ(集光レンズ)で集光されてワークの被加工位置に入射する。偏向器でレーザパルスを偏向することによって、加工可能範囲内でレーザパルスの入射位置を移動させ、ワークに対するレーザ加工が行われる。たとえば第1及び第2偏向素子はX軸方向に沿って、第3偏向素子はY軸方向に沿って、レーザパルスのワーク上の入射位置を移動させることができる。
【0201】
図14(B)に示すように、たとえば50mmの辺がX軸方向、Y軸方向に沿う正方形状である加工可能範囲は、第1偏向素子の加工エリアと第2偏向素子の加工エリアとに分けられる。第1偏向素子の加工エリアは、偏向器に入射するレーザパルスを第1偏向素子と第3偏向素子とで偏向することによって、照射することができるエリアであり、第2偏向素子の加工エリアは、偏向器に入射するレーザパルスを第2偏向素子と第3偏向素子とで偏向することによって、照射することができるエリアである。第1、第2偏向素子の加工エリアは、たとえばX軸方向に沿う長さが25mm、Y軸方向に沿う長さが50mmの合同な矩形状である。
【0202】
しかし被加工位置の数や配置によっては、第1、第2偏向素子の加工エリアのサイズや形状を、たとえば図14(C)〜(F)に示すように変更してもよい。図14(C)に示す例においては、第1、第2偏向素子の加工エリアは、長辺の長さが等しく、短辺の長さが異なる矩形状である。図14(D)に示す例においては、両加工エリアは合同な直角二等辺三角形状である。図14(E)に示す例においては、第1偏向素子の加工エリアが直角二等辺三角形状で、第2偏向素子の加工エリアが五角形状である。図14(F)に示す例においては、第1、第2偏向素子の加工エリアは、正方形の対向する辺間を折れ線で分割した合同な凹六角形状である。
【0203】
また、図14(G)に示すように、第1、第2偏向素子の加工エリアを、X軸方向に沿う長さが50mm、Y軸方向に沿う長さが25mmの合同な矩形状とすることもできる。第1、第2偏向素子の加工エリアにおいて、第1、第2偏向素子が入射位置を移動させる方向(X軸方向)に沿う長さを、第3偏向素子が入射位置を移動させる方向(Y軸方向)に沿う長さよりも長くすることで、加工速度を速くすることができる。ただし、たとえば図3にタイミングチャートを示した第2の実施例によるレーザ加工方法のように、一つのレーザパルスから第1、第2偏向素子を経由するレーザパルスを時間的に分割生成し、Y座標が等しい被加工位置に入射させるレーザ加工方法を実施する場合には、図14(G)に示す加工エリア設定を採用することはできない。
【0204】
図15(A)、(B)、及び、図16(A)、(B)は、ワークの被加工位置と加工可能範囲を示す概略的な平面図である。
【0205】
図15(A)及び(B)を参照する。ワークは、被加工位置の配置に応じて、たとえば加工が最短時間で行えるようにステージ上に保持される。一例として、被加工位置と加工可能範囲とが、図15(A)に示す相対的位置関係にあるとき、θステージを用い、ワークとガルバノスキャナとを相対的に回転移動させて、図15(B)に示す態様に、加工可能範囲内に被加工位置を配置する。
【0206】
図16(A)及び(B)を参照する。加工可能範囲(各加工エリア)内における被加工位置へのレーザパルス照射順序(加工順序)は、たとえば第1〜第3偏向素子の移動速度や被加工位置の配置に応じ、加工時間が最短となるように、セールスマン巡回問題などで最適化する。一例として、図16(A)に示すように、Y軸方向に往復しながら全体としてX軸正方向に加工を行うのではなく、図16(B)に示すように、Y軸方向の移動距離(第3偏向素子の移動角度、偏向量)が全体として最小となるように加工順序を設定し、制御装置60により、その加工順序でレーザパルスを各加工エリア内の複数の被加工位置に入射させる。
【0207】
以上実施例に沿って本発明を説明したが、本発明はこれらに制限されるものではない。
【0208】
たとえば、実施例においては、ステージを静止した状態で加工可能範囲の加工を行い、その終了後、ワークの未加工領域を、ガルバノスキャナの加工可能範囲に移動させる、いわゆるステップアンドリピートの加工を行うが、ステージ移動とガルバノスキャナによるレーザパルスの入射位置の移動とを同期させ、ステージ移動を行いながらワークにレーザパルスを入射させてもよい。
【0209】
また、実施例においては、第1偏向素子を経由して照射されるレーザパルスで形成される穴のサイズと、第2偏向素子を経由して照射されるレーザパルスで形成される穴のサイズとを等しくしたが、異なるサイズや形状とすることも可能である。
【0210】
更に、図17に示す変形例のように、第1、第2偏向素子におけるレーザパルスの像をそれぞれ第3偏向素子に結像させる2つの結像レンズを、第1、第2偏向素子と第3偏向素子との間の光路上に配置する構成としてもよい。偏向器の動作及び加工の速度を向上させることができる。
【0211】
また、実施例の偏向器においては、二つの偏向素子(第1、第2偏向素子)で偏向したレーザパルスを、一つの偏向素子(第3偏向素子)に入射させる構成としたが、三つ以上の偏向素子で偏向したレーザパルスを、一つの偏向素子に入射させる構成としてもよい。更に、複数の偏向素子で偏向したレーザパルスを、複数の偏向素子に入射させる構成とすることもできる。
【0212】
更に、たとえば第5〜第8の実施例によるレーザ加工方法や、第5の実施例によるレーザ加工方法の変形例は、レーザパルスが経由しないガルバノミラーを少なくとも一つ存在させ、そのうちの少なくとも一つを、レーザ光源からのレーザパルス出射時に移動させるレーザ加工方法の例と考えることができる。
【0213】
その他、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者には自明であろう。
【産業上の利用可能性】
【0214】
レーザビームを照射して行う穴開け加工のほか、マーキング、パターニング、アニール、溶接等、レーザ加工一般に利用可能である。パルス波に限らず連続波のレーザビームを出射するレーザ光源を用いることもできる。
【符号の説明】
【0215】
10 レーザ光源
11 マスク
12 反射ミラー
13 二分岐光学素子
14、15 ガルバノスキャナ
14a、14b、15a、15b ガルバノミラー
16 結像レンズ
17 fθレンズ
18 制御装置
20 レーザビーム
30〜34 ワーク
40 レーザ光源
41 マスク
42、42a、42b AOD
43a、43b、44 ガルバノミラー
45 fθレンズ
46、46a、46b 偏光ビームスプリッタ
47a〜47f 折り返しミラー
48 振り分け光学系
51a、51b、52 ガルバノミラー
53 fθレンズ
54a、54b、55 ガルバノミラー
56 fθレンズ
60 制御装置
70〜72 ステージ
80、80A、80B、80Aa、80Ab、80Ba、80Bb、80a、80b、81a、81b、82a、82b レーザビーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザビームを出射するレーザ光源と、
前記レーザ光源から出射したレーザビームを少なくとも第1方向と、第2方向とに振り分けることのできる振り分け光学系と、
前記振り分け光学系で前記第1方向、前記第2方向に振り分けられたレーザビームを偏向して出射することのできる第1偏向器と
を有し、
前記第1偏向器は、
前記振り分け光学系で前記第1方向に振り分けられたレーザビームの光路上に配置され、該レーザビームを偏向して出射することのできる第1偏向素子と、
前記振り分け光学系で前記第2方向に振り分けられたレーザビームの光路上に配置され、該レーザビームを偏向して出射することのできる第2偏向素子と、
前記第1偏向素子を経由したレーザビーム、及び、前記第2偏向素子を経由したレーザビームの光路上に配置され、入射するレーザビームを偏向して出射することのできる第3偏向素子と
を含むレーザ加工装置。
【請求項2】
前記第1偏向器はガルバノスキャナであり、前記第1〜第3偏向素子は反射面の向きが変化可能なガルバノミラーである請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項3】
更に、前記レーザ光源からのレーザビームの出射、前記振り分け光学系によるレーザビームの振り分け、及び、前記第1〜第3偏向素子によるレーザビームの偏向方向を制御する制御装置を備え、
前記制御装置は、前記第1、第3偏向素子が静止し、前記第2偏向素子が偏向方向を変化させている状態で、前記レーザ光源からレーザビームを出射させ、該レーザビームを前記振り分け光学系で前記第1方向に振り分ける請求項1または2に記載のレーザ加工装置。
【請求項4】
更に、前記レーザ光源からのレーザビームの出射、前記振り分け光学系によるレーザビームの振り分け、及び、前記第1〜第3偏向素子によるレーザビームの偏向方向を制御する制御装置を備え、
前記制御装置は、前記第1〜第3偏向素子が静止している状態で、前記レーザ光源からレーザビームを出射させ、該レーザビームを前記振り分け光学系で前記第1方向及び前記第2方向に振り分ける請求項1または2に記載のレーザ加工装置。
【請求項5】
前記制御装置は、レーザビームを前記振り分け光学系で前記第1方向、前記第2方向の順に振り分け、レーザビームを前記第2方向に振り分け終わる前に、前記第1偏向素子の偏向方向を変化させる請求項4に記載のレーザ加工装置。
【請求項6】
前記制御装置は、前記第1、第2偏向素子のうち、今回と次回とで被加工位置間の距離が相対的に大きい被加工位置にレーザビームを入射させる偏向素子が配置される光路に、先にレーザビームを振り分ける請求項4に記載のレーザ加工装置。
【請求項7】
前記制御装置は、前記第1方向と前記第2方向とに同時にレーザビームを振り分ける請求項4に記載のレーザ加工装置。
【請求項8】
前記第1偏向器に入射するレーザビームを前記第1偏向素子と前記第3偏向素子とで偏向することによって、レーザビームを照射することができるエリア、及び、前記第1偏向器に入射するレーザビームを前記第2偏向素子と前記第3偏向素子とで偏向することによって、レーザビームを照射することができるエリアの、前記第1、第2偏向素子がレーザビームの入射位置を移動させる方向に沿う長さが、前記第3偏向素子がレーザビームの入射位置を移動させる方向に沿う長さよりも長い請求項1〜3のいずれか1項に記載のレーザ加工装置。
【請求項9】
前記制御装置は、前記第3偏向素子の全体としての偏向量が最小となる順序で、前記第1偏向器に入射するレーザビームを前記第1偏向素子と前記第3偏向素子とで偏向することによって、レーザビームを照射することができるエリア、及び、前記第1偏向器に入射するレーザビームを前記第2偏向素子と前記第3偏向素子とで偏向することによって、レーザビームを照射することができるエリア内の複数の被加工位置に、レーザビームを入射させる請求項1〜8のいずれか1項に記載のレーザ加工装置。
【請求項10】
前記振り分け光学系は、前記レーザ光源から出射したレーザビームを、第3方向と、第4方向にも振り分けることができ、
更に、前記振り分け光学系で前記第3方向、前記第4方向に振り分けられたレーザビームを偏向して出射することのできる第2偏向器と
を備え、
前記第2偏向器は、
前記振り分け光学系で前記第3方向に振り分けられたレーザビームの光路上に配置され、該レーザビームを偏向して出射することのできる第4偏向素子と、
前記振り分け光学系で前記第4方向に振り分けられたレーザビームの光路上に配置され、該レーザビームを偏向して出射することのできる第5偏向素子と、
前記第4偏向素子を経由したレーザビーム、及び、前記第5偏向素子を経由したレーザビームの光路上に配置され、入射するレーザビームを偏向して出射することのできる第6偏向素子と
を含む請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項11】
更に、前記レーザ光源からのレーザビームの出射、前記振り分け光学系によるレーザビームの振り分け、及び、前記第1〜第6偏向素子によるレーザビームの偏向方向を制御する制御装置を備え、
前記制御装置は、前記レーザ光源からのレーザビームの出射時に、前記第1〜第6偏向素子のうち、前記振り分け光学系によって振り分ける該レーザビームの光路に配置されない偏向素子の少なくとも一つの偏向方向を変化させる請求項10に記載のレーザ加工装置。
【請求項12】
更に、前記レーザ光源からのレーザビームの出射、前記振り分け光学系によるレーザビームの振り分け、及び、前記第1〜第6偏向素子によるレーザビームの偏向方向を制御する制御装置を備え、
前記制御装置は、前記第1〜第6偏向素子が静止している状態で、前記レーザ光源からレーザビームを出射させ、該レーザビームを前記振り分け光学系で前記第1〜第4方向に振り分ける請求項10に記載のレーザ加工装置。
【請求項13】
レーザビームを出射するレーザ光源と、前記レーザ光源から出射したレーザビームを少なくとも第1方向と、第2方向とに振り分けることのできる振り分け光学系と、前記振り分け光学系で前記第1方向、前記第2方向に振り分けられたレーザビームを偏向して出射することのできる第1偏向器とを有し、前記第1偏向器は、前記振り分け光学系で前記第1方向に振り分けられたレーザビームの光路上に配置され、該レーザビームを偏向して出射することのできる第1偏向素子と、前記振り分け光学系で前記第2方向に振り分けられたレーザビームの光路上に配置され、該レーザビームを偏向して出射することのできる第2偏向素子と、前記第1偏向素子を経由したレーザビーム、及び、前記第2偏向素子を経由したレーザビームの光路上に配置され、入射するレーザビームを偏向して出射することのできる第3偏向素子とを含むレーザ加工装置を用いて行うレーザ加工方法であって、
前記第1、第3偏向素子が静止し、前記第2偏向素子が偏向方向を変化させている状態で、前記レーザ光源からレーザビームを出射させ、該レーザビームを前記振り分け光学系で前記第1方向に振り分けることを特徴とするレーザ加工方法。
【請求項14】
前記第1偏向器に入射するレーザビームを前記第1偏向素子と前記第3偏向素子とで偏向することによって、レーザビームを照射することができるエリア、及び、前記第1偏向器に入射するレーザビームを前記第2偏向素子と前記第3偏向素子とで偏向することによって、レーザビームを照射することができるエリアの、前記第1、第2偏向素子がレーザビームの入射位置を移動させる方向に沿う長さが、前記第3偏向素子がレーザビームの入射位置を移動させる方向に沿う長さよりも長い請求項13に記載のレーザ加工方法。
【請求項15】
レーザビームを出射するレーザ光源と、前記レーザ光源から出射したレーザビームを少なくとも第1方向と、第2方向とに振り分けることのできる振り分け光学系と、前記振り分け光学系で前記第1方向、前記第2方向に振り分けられたレーザビームを偏向して出射することのできる第1偏向器とを有し、前記第1偏向器は、前記振り分け光学系で前記第1方向に振り分けられたレーザビームの光路上に配置され、該レーザビームを偏向して出射することのできる第1偏向素子と、前記振り分け光学系で前記第2方向に振り分けられたレーザビームの光路上に配置され、該レーザビームを偏向して出射することのできる第2偏向素子と、前記第1偏向素子を経由したレーザビーム、及び、前記第2偏向素子を経由したレーザビームの光路上に配置され、入射するレーザビームを偏向して出射することのできる第3偏向素子とを含むレーザ加工装置を用いて行うレーザ加工方法であって、
前記第1〜第3偏向素子が静止している状態で、前記レーザ光源からレーザビームを出射させ、該レーザビームを前記振り分け光学系で前記第1方向及び前記第2方向に振り分けることを特徴とするレーザ加工方法。
【請求項16】
レーザビームを前記振り分け光学系で前記第1方向、前記第2方向の順に振り分け、レーザビームを前記第2方向に振り分け終わる前に、前記第1偏向素子の偏向方向を変化させる請求項15に記載のレーザ加工方法。
【請求項17】
前記第1、第2偏向素子のうち、今回と次回とで被加工位置間の距離が相対的に大きい被加工位置にレーザビームを入射させる偏向素子が配置される光路に、先にレーザビームを振り分ける請求項15に記載のレーザ加工方法。
【請求項18】
前記第1方向と前記第2方向とに同時にレーザビームを振り分ける請求項15に記載のレーザ加工方法。
【請求項19】
前記第3偏向素子の全体としての偏向量が最小となる順序で、前記第1偏向器に入射するレーザビームを前記第1偏向素子と前記第3偏向素子とで偏向することによって、レーザビームを照射することができるエリア、及び、前記第1偏向器に入射するレーザビームを前記第2偏向素子と前記第3偏向素子とで偏向することによって、レーザビームを照射することができるエリア内の複数の被加工位置に、レーザビームを入射させる請求項13〜18のいずれか1項に記載のレーザ加工方法。
【請求項20】
レーザビームを出射するレーザ光源と、前記レーザ光源から出射したレーザビームを第1〜第4方向に振り分けることのできる振り分け光学系と、前記振り分け光学系で前記第1方向、前記第2方向に振り分けられたレーザビームを偏向して出射することのできる第1偏向器と、前記振り分け光学系で前記第3方向、前記第4方向に振り分けられたレーザビームを偏向して出射することのできる第2偏向器とを有し、前記第1偏向器は、前記振り分け光学系で前記第1方向に振り分けられたレーザビームの光路上に配置され、該レーザビームを偏向して出射することのできる第1偏向素子と、前記振り分け光学系で前記第2方向に振り分けられたレーザビームの光路上に配置され、該レーザビームを偏向して出射することのできる第2偏向素子と、前記第1偏向素子を経由したレーザビーム、及び、前記第2偏向素子を経由したレーザビームの光路上に配置され、入射するレーザビームを偏向して出射することのできる第3偏向素子とを含み、前記第2偏向器は、前記振り分け光学系で前記第3方向に振り分けられたレーザビームの光路上に配置され、該レーザビームを偏向して出射することのできる第4偏向素子と、前記振り分け光学系で前記第4方向に振り分けられたレーザビームの光路上に配置され、該レーザビームを偏向して出射することのできる第5偏向素子と、前記第4偏向素子を経由したレーザビーム、及び、前記第5偏向素子を経由したレーザビームの光路上に配置され、入射するレーザビームを偏向して出射することのできる第6偏向素子とを含むレーザ加工装置を用いて行うレーザ加工方法であって、
前記レーザ光源からのレーザビームの出射時に、前記第1〜第6偏向素子のうち、前記振り分け光学系によって振り分ける該レーザビームの光路に配置されない偏向素子の少なくとも一つの偏向方向を変化させることを特徴とするレーザ加工方法。
【請求項21】
レーザビームを出射するレーザ光源と、前記レーザ光源から出射したレーザビームを第1〜第4方向に振り分けることのできる振り分け光学系と、前記振り分け光学系で前記第1方向、前記第2方向に振り分けられたレーザビームを偏向して出射することのできる第1偏向器と、前記振り分け光学系で前記第3方向、前記第4方向に振り分けられたレーザビームを偏向して出射することのできる第2偏向器とを有し、前記第1偏向器は、前記振り分け光学系で前記第1方向に振り分けられたレーザビームの光路上に配置され、該レーザビームを偏向して出射することのできる第1偏向素子と、前記振り分け光学系で前記第2方向に振り分けられたレーザビームの光路上に配置され、該レーザビームを偏向して出射することのできる第2偏向素子と、前記第1偏向素子を経由したレーザビーム、及び、前記第2偏向素子を経由したレーザビームの光路上に配置され、入射するレーザビームを偏向して出射することのできる第3偏向素子とを含み、前記第2偏向器は、前記振り分け光学系で前記第3方向に振り分けられたレーザビームの光路上に配置され、該レーザビームを偏向して出射することのできる第4偏向素子と、前記振り分け光学系で前記第4方向に振り分けられたレーザビームの光路上に配置され、該レーザビームを偏向して出射することのできる第5偏向素子と、前記第4偏向素子を経由したレーザビーム、及び、前記第5偏向素子を経由したレーザビームの光路上に配置され、入射するレーザビームを偏向して出射することのできる第6偏向素子とを含むレーザ加工装置を用いて行うレーザ加工方法であって、
前記第1〜第6偏向素子が静止している状態で、前記レーザ光源からレーザビームを出射させ、該レーザビームを前記振り分け光学系で前記第1〜第4方向に振り分けることを特徴とするレーザ加工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−121038(P2012−121038A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−272390(P2010−272390)
【出願日】平成22年12月7日(2010.12.7)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】