説明

レーザ印字装置、そのプログラム

【課題】 印字対象物が円筒形状等で回転するものであっても、問題なく明瞭に印字できるようにする。
【解決手段】 メインコントローラ24は、レーザ印字コントローラ23bに対して指示を送り、レーザ印字ヘッド23aからのレーザ光によりワーク3(円柱体)の周面にレーザ印字を行わせるが、その際、印字対象物の直径に応じて、焦点深度が所定値以下となる印字範囲である最適印字幅を算出し、更に印字する文字列の内容や回転速度その他の印字条件に応じて、移動体文字列の印字幅が上記最適印字幅の範囲内となるようにするスキャンスピードを算出して上記指示を送る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ印字装置に係わり、特に印字対象が曲面形状を有するものであっても問題なく印字できるレーザ印字装置、そのプログラム等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電子部品等の印字対象物に対して印字(文字以外(記号、図等)も含む)する方法として、一般的な印刷インクを用いる印刷法、捺印による方法等が用いられてきたが、近年、レーザ発振器からのレーザ光を利用した印字が行われるようになってきた。特に、ガルバノミラー系を用いたスキャン光学系による一筆書きによるレーザ印字方法は、プログラムにより簡単に印字内容を変更できるので、各種レーザ印字方法の中で最も多く使用されてきた。
【0003】
このようなレーザ印字(マーキング)を行うレーザ印字装置に関して、例えば特許文献1には、間欠搬送ベルト上を間欠移送されるICパッケージ等の被印字物に対して、レーザ発振器及びレーザヘッド(スキャン光学系+撮像光学系)とによってレーザ光を走査することで印字を行い、同時にレーザ光出射軸と同軸で被印字物の印字面を撮像することが記載されている。
【0004】
従来のレーザ印字装置では、ICパッケージ等のような印字面が平面の被印字物に対しては、特に問題なく印字を行える。しかし、例えばジュース缶、ビール缶等の缶やペットボトルのような円筒形状の被印字物(以下、円筒ワークと呼ぶ)に対しては、焦点距離の問題等により、上手く印字できない場合がある。勿論、これは、円筒形状に限らず、曲面を有するワーク全てに言えることであるが、曲面である故に、例えば曲面の頂点において焦点距離があっていても、そこから徐々に曲面に沿って距離が離れていくと、当然、どこかで焦点が合わなくなり、印字できなくなるか、そうでなくても印字品質は落ちることになる。
【0005】
従来では、この様な円筒ワークに対しては、例えば特許文献2記載のように、円筒ワークに対して直接レーザ光印字するのではなく、まずラベルに対してレーザ光印字を行い、このラベルを円筒ワークに貼り付ける方法が採られている。
【特許文献1】特開平9−220686号公報
【特許文献2】特開平6−166190号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、従来のレーザ印字装置では、被印字物が例えば円筒形状のように曲面を有するワークである場合には、焦点距離等の問題により上手く印字できないという問題があった。この問題は、ワーク移動方向に文字列を印字する場合(例えば円筒ワークを回転させる場合における横方向に文字列を印字する場合)に、特に顕著になる。
【0007】
また、円筒ワークには様々な種類があり、円筒の直径も様々である。この為、印字対象の円筒ワークを変更することで、その直径が変わると、当然、対応する焦点距離も変わることになるが、従来のレーザ印字装置ではレーザ装置が固定型であるものが多く、固定されたレーザ装置を、印字対象のワークの直径が変わる毎に、その都度取り替えを行い且つ焦点距離の調整を行う必要があった。現状では焦束点より3(mm)以上ずれると正常な印字が行えなくなる為、専門家が調整を行わなければならず、一般の作業員は調整を行えない。勿論、固定型ではない場合にも、焦点距離の調整を行う必要がある。
【0008】
本発明の課題は、レーザ印字装置において、被印字物が円筒等の曲面を有する形状であっても問題なく明瞭に印字できるようにし、又は被印字物が円筒の場合にその直径が変わっても焦点距離の調整を自動的に行え、更に当該焦点距離の調整がレーザマーカとカメラの両方を同時に行えるレーザ印字装置、そのプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のレーザ印字装置は、印字対象物が曲面を有し印字面が移動するものである場合に、焦点深度が所定値以下となる印字範囲である最適印字幅を算出する最適印字幅算出手段と、印字する任意の文字列に対応する移動体文字列の印字幅を、レーザマーカによるスキャンスピードの所定の基準スピードである基準スキャンスピードに基づいて算出する移動体文字列長算出手段と、前記移動体文字列の印字幅と前記最適印字幅とに基づいて、前記移動体文字列を印字する為の印字範囲が該最適印字幅以下となるようにするスキャンスピードを算出するスキャンスピード算出手段とを有するように構成する。
【0010】
レーザマーカは所定の印字範囲を有し、この印字範囲内に印字可能であるが、印字対象物が例えば円筒、円柱等のような曲面を有するものである場合、印字範囲内であっても焦点深度の関係で正常に印字できなくなるエリアが存在する。この為、上記最適印字幅算出手段により最適印字幅を算出している。そして、この最適印字幅の範囲内で移動体文字列を印字する為に必要なスキャンスピードを、上記スキャンスピード算出手段で算出し、レーザマーカはこの算出したスキャンスピードで印字を行うことになる。尚、移動体文字とは、移動する印字対象物に印字する為に用いる“くずし文字”である。
【0011】
また、上記レーザ印字装置において、例えば、前記印字対象物の径を求め、前記レーザマーカと該印字対象物との距離を、求めた径に基づいて調整することで焦点距離を合わせる調整手段を更に有するように構成してもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明のレーザ印字装置、そのプログラム等によれば、被印字物が円筒等の曲面を有する形状であっても問題なく明瞭に印字できるようにできる。また、被印字物が円筒の場合にその直径が変わっても焦点距離の調整を自動的に行え、更に当該焦点距離の調整がレーザマーカとカメラの両方を同時に行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
図1〜図3は本例のレーザ印字装置に係わる構成を示す図であり、図1は機構構造図、図2はコントロール装置の構成図、図3はその具体例の構成図である。
【0014】
まず、図1に示す機構構成図について説明する。図1において、印字対象物であるワーク3は、基本的には略円柱(又は円筒)形状のワーク(上記円筒ワークに相当)であり、不図示の搬送機構やハンド機構によって搬送及び持ち上げされて、ワークテーブル9上に載せられる。ワークテーブル9は、本例では円柱状の形状となっており、ワーク回転用サーボモータ7によって回転駆動される。ワーク回転用サーボモータ7は、後述する図2等に示すコントロール装置によって制御されることで、現在の印字対象ワーク3の径に応じて回転速度(rpm)を変えることで、ワーク3の径の大きさに係わらずラインスピードが一定になるように、ワークテーブル9を回転させる。
【0015】
ワークテーブル9の下方には軸10(サーボ軸)が水平に渡されており、軸10の両端には、それぞれ、任意の長さ分、雄ネジが切られている。また、左螺子ステージ4、右螺子ステージ5には、それぞれ、軸10の直径とほぼ同じ内径の孔4a、5aが設けられており、孔4a、5aの内側には雌ネジが切られており、上記軸10の雄ネジと嵌合するようになっている。これより、軸10の両端には、それぞれ、左螺子ステージ4、右螺子ステージ5が取り付けられると共に、焦点調整用サーボモータ6によって軸10を回転駆動すると、この軸10の回転によって左螺子ステージ4、右螺子ステージ5が軸10に沿う水平方向に移動することになる。
【0016】
更に、例えば図上右側から見て、軸10を時計回り方向に回転させた場合には、左螺子ステージ4、右螺子ステージ5は両方とも内側(ワーク3に向かう方向)に移動し、軸10を反時計回り方向に回転させた場合には、左螺子ステージ4、右螺子ステージ5は両方とも外側(ワーク3から離れる方向)に移動するようなネジの切り方となっている。そして、移動距離は同じとなるようになっている。
【0017】
左螺子ステージ4、右螺子ステージ5の上部には、それぞれ、レーザマーカ1、画像処理用カメラ2が取り付けられている。そして、これら各ステージ4、5の初期位置は、例えば後述するマスターワークを用いて調整されている。すなわち、レーザマーカ1、画像処理用カメラ2は、各々、後述するマスターワークの円筒頂点からの距離がその焦点距離となるように設置されている。尚、当然、ワーク3は、その中心軸がワークテーブル9の中心軸と一致する位置に載置されるようになっている。
【0018】
以上によって、焦点調整用サーボモータ6によって軸10を回転駆動することで、レーザマーカ1の焦点距離と、画像処理用カメラ2の焦点距離を、同時に調整することができる。換言すれば、レーザ焦点距離自動調整と画像焦点距離自動調整を同時に行うことができる。この調整制御は、図2等に示すコントロール装置によって行われ、詳しくは後述する。
【0019】
また、ワークテーブル9の裏側には位相角度が印されており、アブソリュート・エンコーダ8によってこれを検出することで、印字タイミングや撮像タイミングを判別する。図1の例では、画像処理用カメラ2は、ワークテーブル9の中心軸を基準にすると、レーザマーカ1から角度180°の位置にあるので、基本的には印字タイミングから略180°回転したタイミングで撮像を行うことになるが、後述するように遅れ分を先読みする処理を行う必要がある。詳しくは後述する。
【0020】
また、印字位置が任意である場合は上記の通りでよいが、印字位置が指定されている場合(例えば上流工程で製品名が印刷されており、本装置においてこの製品名の直ぐ後に製造年月日を印字する等)には、上記印字タイミングは、画像処理用カメラ2で印字指定場所の画像(上記例では製品名が印刷された場所の画像)を検出することで決定する。勿論、この場合、画像処理用カメラ2によって撮像した画像データを、文字認識装置等により認識して、認識結果が上記製品名と一致するか否かを判別している。
【0021】
また、図1には示していないが、バーコードリーダも備えられている。上記焦点距離自動調整は、ワーク3の径が変わる毎に行われるが、その為には、これから印字対象となるワーク3の径を認識する必要がある。これは、本装置の上流において例えば搬送中に直径を計測するセンサ等を用いて計測してもよいし、本装置の上流工程においてワーク3に印刷されているバーコードを、上記バーコードリーダによって光学的に読み取って判別してもよい。尚、これは、通常、各ワーク3毎に行う必要はなく、例えば1ロット単位で、そのロットの最初のワーク3について行えば済む。尚、バーコードリーダは、ハンディタイプでもよいし固定タイプでもよい。
【0022】
次に、図2、図3に示すコントロール装置の構成図、その具体例について説明する。
図2において、図1に示す構成と同一のものには同一符号を付してあり、その説明は省略する。
【0023】
図示のコントロール装置20は、画像処理コントローラ21、アブソリュート・コントローラ22、メインコントローラ24、主操作盤25、及び副操作盤26を有する。また、レーザマーカ1は、レーザ印字ヘッド23aとレーザ印字コントローラ23bとから成る。更に、図1では不図示であったバーコードリーダ11が主操作盤25に接続されている。
【0024】
メインコントローラ24は、画像処理用カメラ2、アブソリュート・エンコーダ8、及びレーザ印字ヘッド23aの制御に関しては、それぞれ、画像処理コントローラ21、アブソリュート・コントローラ22、レーザ印字コントローラ23に指示を送り、これら各コントローラにより制御を行わせる。ワークテーブル9の回転制御、焦点距離自動調整に関しては、直接、ワーク回転用サーボモータ7、焦点調整用サーボモータ6を駆動制御する。
【0025】
上記各コントローラへの指示や直接制御は、バーコードリーダ11によって読み取った情報と予め登録されている情報に基づいて行う。また、上記指示は、例えば、バーコードにより識別した商品品種に対応するプログラム番号を送るものであり、各コントローラ21〜23は、指示されたプログラム番号のプログラムを実行する。
【0026】
図4に、上記予め登録されている情報の一例を示す。図示のデータテーブルは、例えばメインコントローラ24内の記憶部(メモリ等)に記憶されており、品種IDに対応付けて、フィーダ幅、ワーク直径、レーザマーカ・プログラムNo.、カメラ・プログラムNo.、アブソリュート・プログラムNo.が格納されている。
【0027】
バーコードの情報には、そのワークの品種(例えば、ミルクコーヒー、ブラックコーヒー、オレンジジュース等)を示す品種IDが含まれているものとする。そして、メインコントローラ24は、バーコードリーダ11によって読み取った品種IDを用いて上記データテーブルを検索することで、該当するレコードを抽出する。そして、該当するレコードのレーザマーカ・プログラムNo.、カメラ・プログラムNo.、アブソリュート・プログラムNo.を、それぞれ、各コントローラ21〜23に送るが、これと共に、該当するレコードのフィーダ幅、ワーク直径Dを用いて、フィーダ幅の調整、焦点距離の調整を行う。
【0028】
焦点距離の調整について説明する。メインコントローラ24は、焦点調整用サーボモータ6を駆動制御することで、レーザマーカ1及び画像処理用カメラ2の位置を、同時に移動させる。この位置は、ワークテーブル9の中心からの距離として決定している。ここで、焦点距離を調整するとは、ワーク3の直径が何であっても、ワーク3の円筒頂点からレーザマーカ1及び画像処理用カメラ2までの距離を、上記初期設定時の距離のまま一定とすることであり、例えば上記マスタワークに対応させて決定した初期位置から、マスタワークの半径と印字対象のワーク3の半径との差の分だけ移動させる。
【0029】
尚、印字対象のワーク3の直径(又は半径)は、上記のようにバーコード情報を読み取る例に限らず、例えばワークテーブル9へ向けての搬送中に又はワークテーブル9上でセンサにより計測するようにしてもよい。但し、通常、ワーク3の直径が1個毎に変わるようなことは無いので、例えば各ロット毎に、最初のワークのみ計測すればよい。これはバーコードを用いる場合も同じである。
【0030】
また、フィーダ幅の調整は、フィーダ幅≒ワーク直径Dとなるように調整する。特に図示していないが、フィーダは、ワークテーブル9に向けてワーク3を搬送する搬送路(ベルトコンベア等)上に設けられ、ワーク3の中心がワークテーブル9の中心と一致するようにガイドする為の構成である。
【0031】
画像処理コントローラ21は、レーザマーカ1によってワーク3の周面に印字された任意の文字列を画像処理用カメラ2により撮像させて、これを画像認識する。メインコントローラ24は、この認識結果としての文字列と上記レーザマーカ1での印字に用いた文字列(登録文字列)とを比較・検証して、両者が不一致である場合には印字ミスと判定する。
【0032】
レーザ印字コントローラ23は、予め印字情報が登録されており、この印字情報を用いて、上記メインコントローラ24から指示されたプログラム番号のプログラムを実行することにより、レーザ印字ヘッド23aによるワーク外周面へのレーザ印字を実現させる。
【0033】
アブソリュート・コントローラ22は、ワークテーブル9の回転位置をアブソリュート・エンコーダ8により検出させて、検出結果をメインコントローラ24、レーザ印字コントローラ23、画像処理コントローラ21に送る。
【0034】
主操作盤25は、例えばタッチパネルであり、オペレータによる運転、停止等の通常の操作に使用する他に、アブソリュート・コントローラ22の設定にも使用される。
副操作盤26は、例えばタッチパネルであり、レーザマーカ1の設定に用いる他に、画像処理用カメラ2で撮影した画像や画像認識結果を表示するモニタとして用いる。
【0035】
図3は、上記図2の構成を更に具体的に示したものであり、図1、図2に示す構成と同一のものには同一符号を付してあり、その説明は省略する。
図3において、シーケンサ30、アンプ31、32、コントローラ33は、上記メインコントローラ24に相当する具体例である。ハンディバーコードスキャナ34は、バーコードリーダ11の具体例であり、この例ではハンディタイプであるが、固定型であってもよい。シーケンサ30は、アンプ31を介して、焦点調整用サーボモータ6、ワーク回転用サーボモータ7を駆動制御する。また、アンプ32を介して、幅調モータ38を駆動制御する。尚、幅調モータ38は、ワーク3をワークテーブル9へ搬送してくる不図示のコンベヤ部においてワーク3の搬送位置をガイドするガイド部の幅を調整する為のモータである。また、コントローラ33は、終端ストッパーの位置を調整する。
【0036】
また、LED照明36は、レーザマーカ1によってワーク3の周面に印字された文字列を照らすことで、画像処理用カメラ2による撮像を補助するものであり、撮像された画像が、ビデオ入力ユニット35を介して副操作盤26に入力されてそのディスプレイに表示されることで、上記モニタが行われる。
【0037】
尚、特に図示しないが、シーケンサ30は、CPU/MPU等の演算プロセッサと、所定のアプリケーションプログラムやデータテーブルを格納してあるRAM、フラッシュメモリ等の記憶部と、計算結果を一時的に格納する各種レジスタを有している。各種レジスタとは、後述する運転用レジスタ、印字情報レジスタ、文字係数レジスタ、印字情報レジスタ、検査情報レジスタ等である。また、後述する(1)〜(8)で説明する各種処理は、上記演算プロセッサが、上記記憶部に記憶してあるアプリケーション・プログラムを読出し・実行する(その際、必要に応じて上記データテーブルや各種レジスタを参照する(又は書き込む))ことにより実現される。
【0038】
上記構成のレーザ印字装置は、印字対象物が略円柱体状のワークであっても良質な印字が行えることを第1の特徴とし、更にワークの直径が変わってもレーザ焦点距離と画像焦点距離を同時に自動的に調整できることを第2の特徴とし、また上記略円柱体状のワークへの印字結果を印字後直ちに撮像して正常/異常をチェックする為に、適切な撮像タイミング、撮像回数を自動的に算出することを第3の特徴とする。
【0039】
第2の特徴については、既に図4等において詳細に説明してあるので、以下、第1、第3の特徴について詳細に説明する。
まず、本装置では、円筒ワークに対する鮮明なレーザ印字を実現するために、印字面の周速(ラインスピード)が常に一定になるよう、ターンテーブルの回転数を制御する。このときの回転数RS(rpm)は、D=対象ワークの直径(mm)、V=周速(ラインスピード)(m/min)とすると、以下の(1)式を使用してシーケンサ30により自動計算され、計算結果は、運転用レジスタに自動登録される。
【0040】
RS=1000V/πD ・・・(1)式
ここで、直径Dは、バーコード(品種情報)に基づいて取得し、周速Vは、全品種共通の固定値として予め登録されている値を、例えばメモリ等から読み出す。
【0041】
本装置では、円筒ワークに対し鮮明なレーザ印字を実現するために、最適な印字条件を自動計算することで、オペレータの負担を軽減することができる。
(1)レーザ・キャリブレーション
まず、本装置の特徴である円筒印字を行う為の初期設定作業として、印字エリアの中心と円筒(ワーク3)の頂点とを合わせる作業を行う。また、この作業に伴って、焦点距離とサーボ軸との相対関係合わせも行う。この2つの作業を合わせて、レーザ・キャリブレーションと呼ぶものとする。
【0042】
図5(a)は、ワークテーブル9上にマスターワークが載せられた状態を示す斜視図である。マスターワークは、当該初期設定作業用に用意されている直径D=φ100(mm)のワークであり、その中心がワークテーブル9の中心と一致する位置に置いてある。マスターワークには0度ラインが設けられており、この0°ラインがレーザマーカに最も接近する位置へとワークテーブル9を旋回させる。
【0043】
そして、図5(b)に示すように、0度ラインにレーザポインタが当たるようにレーザマーカを取り付け調整する。更に、マスターワーク円筒頂点とレーザヘッドとの間の距離を、所定の焦点距離(ここでは145mm)となるように、軸10を回転させて調整する。調整完了したらテスト印字を行い、問題なかったら当該位置を直径D=φ100(mm)のマスターワークに対応する位置(基準位置)として記憶する。尚、このとき同時に、画像処理用カメラ2の初期位置調整も同様にして行う。
【0044】
次に、以下の(2)で説明する最適印字幅MLの自動計算を行う。ここでは、安定印字可能な焦点深度が2(mm)であるものとすると、図6(a)、(b)に示すように、最適印字幅MLは円筒頂点(0度ライン)を中心とした28(mm)の範囲となる。そして、算出した最適印字幅MLのエリア内にテスト印字を行い、当該エリアの両端(円筒頂点から+14(mm)と−14(mm)の位置)における印字が鮮明に印字されていることを確認したら、当該レーザ・キャリブレーション作業を終了する。
【0045】
但し、図6(c)に示すように、印字原点は印字エリア中心(=円筒頂点)となるので、そのままでは文字列は図示の通りエリア内の図上右側の領域にのみ印字されることになるので、後述するオフセット量の算出を行って印字開始位置を補正する必要がある。
(2)最適印字幅の自動計算
円筒の外周は曲面であり、印字中心から離れるほど焦点距離が伸びてしまい、印字品質が悪くなってしまい、鮮明な印字が行えない。この問題を解消するために、本装置では、実際の印字範囲が焦点深度が例えば上記2(mm)以下となる範囲内に収まる様に、最適印字幅MLを以下の(2)式を使用して自動計算する。すなわち、レーザマーカ1自体の機能による印字範囲は、図5(b)に示すように非常に広いものである為、この印字範囲をそのまま適用した場合、文字列の長さによっては焦点深度が2(mm)を越えるエリアにまで印字を行ってしまう(特に3mm以上となるのは問題となる)。この為、印字範囲を狭める必要があり、そのワークの径に応じて問題なく印字可能な印字範囲として上記最適印字幅MLを求めるものである。
【0046】
尚、計算結果は、印字情報レジスタに自動登録される。尚、以下の式において、r=D/2(つまり、対象ワークの半径)、LS=焦点深度である。焦点深度LSは、全品種共通の固定値として予め登録されている値を、例えばメモリ等から読出す。
【0047】
【数2】

【0048】
一例として、例えばワーク直径D=φ76(mm)である場合の最適印字幅MLは、上記の通り焦点深度が2(mm)であるとすると、以下の様に算出される(ML=24.33)。
【0049】
【数3】

【0050】
但し、このまま印字すると図6(c)で説明したように印字開始位置が円筒頂点となってしまう。つまり、図7(a)に示すようになってしまう為、本来の最適印字幅MLとしてのエリアの外に印字されてしまうことになる。よって、後述する(7)式によりオフセット量を算出することで、図7(b)示すように文字列の中心が円筒頂点にくるように印字開始位置を補正する。この例では、(7)式により、オフセット量=ML/2=24.33/2=12.165となる。
(3) 移動体文字のX・Y成分とその定義
移動体に印字する文字は、移動体の移動方向に沿った成分(ここではX成分とする)の多い文字は縮みやすく、移動体の移動方向に沿わない成分(Y成分)の多い文字は伸びやすい傾向にある。本装置では、予め、全ての印字可能文字に対してX成分、Y成分の実測を行い、この実測結果を係数化し、各文字ごとに、対応するX成分係数、Y成分係数として文字係数レジスタに登録してある。一例は以下の通りである。
【0051】
アルファベット大文字: A〜Z X成分26通り、Y成分26通り
アルファベット小文字:a〜z X成分26通り、Y成分26通り
数字 :0〜9 X成分10通り、Y成分10通り
その他、漢字や記号等についても同様である。
【0052】
AとBのみを例にして上記X成分係数、Y成分係数について更に詳しく説明する。
図8(a)に示す□1(mm)の文字Aを例にすると、X方向の移動距離を無視し、Aという文字を図示の左矢印方向より投影すると、1(mm)の縦線(縦投影線)が2本存在することになる。これより、Aという文字のY成分係数(MYAと記す。以下同様)は、2と定義する。
【0053】
同様に今度は、Y方向の移動距離を無視し、Aという文字を図示の上矢印方向より投影すると、図示の例では1(mm)の横線が1本と0.6(mm)の横線が1本(何れも横投影線)存在する。よって、AのX成分係数MXAは1.6と定義される。
【0054】
同様にして、図8(b)に示す□1(mm)の文字Bについても、Bという文字の縦投影線は2本で、両方とも1(mm)なので、BのY成分係数MYBは2.0と定義され、そのX成分係数は横投影線が3.3本でMXB=3.3と定義される。
(4)移動体文字列長さ
本装置では、上記登録されている各文字毎のX成分係数・Y成分係数を使用し、移動体文字列長さを自動計算する。移動体文字列長さは、以下の各式(3)〜(5)を使用してシーケンサ30によって自動算出され、計算結果は、印字情報レジスタに自動登録される。
【0055】
尚、以下の各式において、SC=基準スキャンスピードであり、全品種共通の固定値として予め登録されている。尚、スキャンスピードとは、レーザ光による走査速度(線を引く速度)である。
【0056】
また、以下の各式において、MX=印字文字列のX成分係数の総和、MY=印字文字列のY成分係数の総和、IX=X成分より算出される移動体文字列の長さ、IY=Y成分より算出される移動体文字列の長さ、IM=移動体文字列の長さである。また、MT=印字文字高さ、MW=印字文字幅であり、これらはユーザ等が手入力する。
【0057】
IX=(SC−V)×MX×MW/SC ・・・(3)式
IY=V×MY×MT/SC ・・・(4)式
IM=IX+IY ・・・(5)式
上記移動体文字列長さ算出について、以下、具体例を用いて詳細に説明する。
【0058】
まず最初に、移動体文字について図9を参照して説明する。図9(a)には、通常の文字による文字列(これを固定文字列と呼ぶ)ABCを示す。印字対象物が印字中に静止している場合には、この固定文字列をそのまま印字すればよいが、印字対象物が印字中に移動する場合には、固定文字列を用いては正常に印字できない。この為、図9(b)に示すようなくずれ文字を用いることになり、これを移動体文字と呼ぶ。この移動体文字より成る文字列(移動体文字列)の、印字対象物の移動方向(この例では円筒体ワークの回転方向であるのでX方向となる)における長さ(図9(b)に示す)が、移動体文字列長さIMである。換言すれば、IMとは、その移動体文字列を印字する為に必要な印字範囲を意味することにもなる。よって、もしIM>MLとなると、焦点距離2(mm)を越えてしまうエリアにまで印字してしまうことになる。これに対応する方法は後に説明する。
【0059】
この移動体文字列を用いて印字すると、もし印字対象物が印字中に静止している場合には図9(b)に示す通りに印字されるが、印字対象物が移動している場合には結果的に図9(a)の固定文字列の形状が印字されることになる。
【0060】
各移動体文字の形状データは、基準となるものが予めメインコントローラ24内のメモリに格納されているが、印字対象物の移動速度(ラインスピード)に応じて移動体文字は、基本的には図9(c)に示すように、ラインスピードが速くなるほど文字が崩れるように(つまり、移動体文字長さが長くなるように)する必要がある。しかし、これは、ラインスピードのみに影響されるのではなく、上記X成分係数、Y成分係数にも影響される。
【0061】
よって、本例のようにラインスピードを一定としている場合でも、X成分係数、Y成分係数に応じて、移動体文字長さが変わってくる。但し、これは、スキャンスピードにも影響され、スキャンスピードは速くなれば移動体文字列長さIMは短くなる。これより、本例では、上記登録されている各文字のX成分係数、Y成分係数を用いて、上記(3)式〜(5)式によって、移動体文字列長さIMを求めている。尚、ここでは、移動体文字列長さIMは、印字する文字列を構成する各文字の移動体文字長さを合計したものとし、各文字間の空白部分は考慮しないものとする。
【0062】
上記(3)式、(4)式、(5)式について、更に詳細に説明する。
図10(a)は、X成分により算出される移動体文字長さを説明する為の図である。
ここでは、単純化して、ライン流れ方向(=ワークの移動方向。図上、左→右)に線を1本引く場合を例にし、スキャンスピードSCが0.1(m/sec)、ラインスピードVが0.166(m/sec)であるとすると、IXは「SC−V」時の印字長さとして求められる。
【0063】
これは、比率計算により、
SC:MX×MW=(SC−V):IX
と表せるので、
SC×IX=MW×(SC−V)×MX
となり、(3)式が得られることになる。
【0064】
図8(a)に示す□1(mm)の文字Aを例にし、これを上記条件のもと印字文字幅MW=5(mm)、印字文字高さMT=5(mm)で印字する場合、
IX=5×1.6×(0.1−0.166)/0.1=−5.28
となり、文字列を5.28短くする成分であると計算される。
【0065】
上記と同じ条件で、Y成分により算出される移動体文字長さを説明すると、図10(b)に示すように、ラインスピードが0であればライン流れ方向と直交する方向に1本の線が引かれる印字を行う場合、印字文字高さMTが変わらないようにすれば、当然、線はライン流れ方向で伸びることになる(図示のIY)。
【0066】
これは、比率計算により、
SC:MY×MT=V:IY
と表せるので、
SC×IY=V×MY×MT
となり、(4)式が得られることになる。
【0067】
上記と同様、図8(a)に示す□1(mm)の文字Aを上記条件で印字する場合、
IY=0.166×2×5/0.1=16.6(mm)
となり、文字列を16.6(mm)伸ばす成分であると計算される。
【0068】
移動体文字長さIMは、IXとIYの和なので、
IM=16.6+(−5.28)=11.32となる。
以上より、図11(a)に示す5mm×5mmの文字Aを、スキャンスピードSC=0.1(m/sec)、ラインスピードV=0.166(m/sec)の条件でワークに印字したい場合には、移動体文字の幅を図11(b)のように11.32(mm)とした文字データを用いることになる。
(5)最適スキャンスピードの算出
上記(3)〜(5)式によって算出した移動体文字列長さIMは、基準となる所定のスキャンスピード(上記の例では0.1(m/sec))にて計算された値である。これより、上記算出された移動体文字列長さIMの文字列を、上記最適印字幅MLのエリア内に収める形で印字にするために、本装置では、以下の(6)式を使用して最適スキャンスピードSSを自動計算する。
【0069】
尚、上記計算結果は、印字情報として、レーザマーカと運転用レジスタに自動登録される。
SS=100×IM/ML ・・・(6)式
ここで、本装置では、印字すべき文字列の文字の数が多くても少なくても関係なく、印字すべき文字列全てを最適印字幅MLのエリア内で印字するようにしている。よって、上述してある通り、移動体文字長さIMが最適印字幅MLより大きい場合には問題がある。但し、上記移動体文字長さIMは、基準となる所定のスキャンスピードで計算されているだけなので、IM>MLであった場合には、例えばIM=MLとなるようなスキャンスピードを算出して、このスキャンスピードで印字を行うようにすればよい。
【0070】
上記例ではIM=11.32(mm)であるので、仮に最適印字幅ML=10(mm)であったとすると、スキャンスピードと印字幅とは反比例関係にあるので上記(6)式を用いるのであり、本例において(6)式を適用すると、
SS=100(mm/sec)×11.32/10=113.2(mm/sec)
が算出される。
【0071】
これより、上記の例では、スキャンスピードを113.2(mm/sec)にすれば、印字幅=10(mm)の印字範囲で上記移動体文字を印字することになり、焦点深度が2(mm)を越えない範囲内で印字を行うことができるので、印字品質が悪くなってしまうことはなく、鮮明な印字が行える。勿論、この例では、結果的に円筒ワーク周面には5mm×5mmの文字Aが印字されていることになる。
(6)オフセット量の算出
本装置では、装置構成の性質上、印字の基点を円筒の頂点より開始するようにセッティングする。したがって最適印字を考慮すると文字列長さの半分の長さを装置上流側にシフトしなくてはならない。このシフト量(オフセット量)OSは、以下の(7)式により自動計算し、レーザマーカと運転用レジスタに自動登録する。
【0072】
OS=ML/2 ・・・(7)式
以上自動算出した各値を設定値として、円筒ワークに対してレーザ光により印字を行うことで、ユーザの手間が掛かることなく、最適な設定値のもと、所定の焦点深度を越えない範囲で文字を印字でき、明瞭な印字を行うことができる。更に、ワーク3の直径が変わっても、自動的に、レーザマーカの焦点距離を調整することができ、ユーザの手間が省けるようになる。
【0073】
次に、本装置では、上記の通り、印字後に直ちに、正しく印字されたか否かを、画像撮像・画像認識を行って確認するが、本装置では、円周に対し360度の印字が可能であるため、文字検査においても、360度の円周を全て検査する必要がある。ただし、タクトタイム短縮のため、作業者の選択により、ワンショット検査も行える機能も同時に有する。
【0074】
本装置では、一般的なエリアカメラを使用するため、撮像範囲が円周より短く、360度検査を行うためには、オーバーラップ分も含め複数回の撮像をしなくてはならない。
このときの、各々の検査方法に対応するトリガー信号の発信角度は、以下の(8)、(9)式を使用してシーケンサ30によって自動算出し、この計算結果は、検査情報レジスタとアブソリュート・コントローラ22に自動登録する。
(7)ワンショット検査トリガー角度の算出
本装置では、印字開始角度は必ずロータリーエンコ−ダーの0度位置になるよう設定されているものとする。レーザマーカとカメラの相対角度関係は、180度であるため、ワンショットトリガー角度STθ(°)は、まず、以下の(8)式によって遅れ角度Δθ(°)を算出し、これより(9)式によって算出する。尚、以下の式において、ΔL=遅れ長さ(mm)であり、全品種共通の固定値として予め登録されている。
【0075】
Δθ=ΔL/πD×360 ・・・(8)式
STθ=180−Δθ ・・・(9)式
ここで、上記遅れ角度Δθ(°)を算出する意味について説明する。上記の通り、本例では、レーザマーカ1の180°反対側に画像処理用カメラ2が設けられているので、もしワークを静止させた状態で印字、検査するのであれば、仮に0°で印字された文字を撮像するならば、ワークテーブル9を180°回転させて停止させて撮像すれば済む。しかしながら、本手法では、停止せずに常時回転させている中で印字、撮像を行う為、通信速度、シーケンサスキャン速度を考慮すると、ラインスピードに比例する一定の値分を先読みしなければならない。先読みしなければ、もし水平方向の移動を例にするならば、図12に示す“遅れ長さ”分、撮像するタイミングが遅れることになるので、装置に登録する撮像タイミングは、この遅れ長さ分早めたものとする必要がある。
【0076】
本装置は、水平移動ではなく回転であるので、上記遅れ長さを角度換算する必要があり、この角度換算式が上記(8)式である。そして、上記(9)式により、180°から遅れ分を先読みするタイミングを算出する。
(8)360度検査トリガー分割角度の算出
本装置では、印字開始角度は必ずロータリーエンコ−ダーの0度位置になるよう設定されているものとする。レーザマーカとカメラの相対角度関係は、180度であるため、360度検査トリガー分割角度RTθ(°)は、まず、以下の(10)式によって撮像回数Nを算出し、これより(11)式によって算出する。尚、以下の式において、CMW=検査カメラの水平視野幅(mm)、OL=検査エリアオーバーラップ量(mm)であり、これらは全品種共通の固定値として予め登録しておく。
【0077】
N=πD/(CMW−OL) (小数点以下切り上げ) ・・・(10)式
RTθ=360/N (小数点以下四捨五入) ・・・(11)式
そして、上記算出結果に基づいて、1回目からN回目までの個々の撮像のトリガー角度RTθ1、RTθ2、・・・RTθNを、以下の(12)式によって求める。
【0078】
RTθ1=180−Δθ
RTθ2=RTθ1+RTθ
RTθ3=RTθ2+RTθ



RTθN=RTθ(N−1)+RTθ ・・・(12)式
尚、上記水平視野幅CMWは、図13に示すように、画像処理用カメラ2の例えばCCDに写る、被写体の水平寸法のことである。
【0079】
また、図14に示す例のように、直径D=φ100(mm)の円筒ワークを例にして、仮に水平視野幅CMW=42.6(mm)であり、検査エリアオーバーラップ量OL=2(mm)に設定したとすると、円筒ワークの円周長さは約314.16(mm)であるので、上記(10)式よりN=7.73(小数点以下切り上げ)=8となる。これより、図14に示すように、2(mm)ずつオーバーラップしながら、8回撮像されることになる。
【0080】
上記印字文字列は、副操作盤においてオペレータ等が任意に設定できる。図15は、文字設定画面の一例である。上述した説明では横1行の文字列のみを示したが、図15に示すように、横1行の文字列を複数行印字させることもできる。この場合、1行印字したら、次の行はワーク3が1回転するまで待って印字することになる。図16は、印字条件設定画面の一例であり、文字高さ、文字幅、X/Y位置、文字間隔、行間隔等を、オペレータに設定・入力させるものである。
【0081】
最後に、レーザ印字装置の動作全体について概略的に説明しておく。図17は、レーザ印字装置の動作フローチャート図である。
図17において、運転準備状態から印字動作をスタートさせる場合、まず、段取り換えが終了しているか否かを判定する(ステップS1)。これは、例えば新たなロットについて印字する場合に、当該ロットのワークに対する様々な準備設定を完了済みであるか否かを判定するものである。
【0082】
もし、段取り換えが終了していない場合には(ステップS1、NO)、オペレータ等に、上記設定画面上で所望の設定情報を手入力させる。この手動入力情報は、例えば印字内容、文字高さ、文字幅、ラインスピード、レーザパワー、撮像方式選択、カメラ視野サイズ等である。もし入力が未完了である場合には(ステップS18,NO)、エラー表示を行う(ステップS19)。
【0083】
入力完了したら(ステップS18,YES)、オペレータ等に、バーコードリーダ11を用いて当該ロットのワークに関するバーコードを読み取らせる(ステップS20)。そして、上述した通り、読み取った情報中の品種ID等に基づいて、上記データテーブルからワーク直径、フィード幅等を取得したうえで、自動段取り換え処理を開始する(ステップS21)。
【0084】
これは、まず、上述してある様にワークテーブル9の回転速度を自動計算し(ステップS22)、計算結果を旋回情報データレジスタに格納する(ステップS23)。更に、上述してある様に、最適スキャンスピードやオフセット量等の印字条件を自動計算し(ステップS24)、計算結果を印字情報データレジスタに格納する(ステップS25)。
【0085】
また、オペレータ等に検査方式(撮像方式)を選択させ、ワンショット検査が選択された場合には(ステップS26,YES)、上述してある様にワンショット検査トリガー角を自動計算し(ステップS27)、計算結果を検査情報データレジスタに格納する(ステップS29)。一方、360度検査が選択された場合には(ステップS26,NO)、上述した様に360度検査トリガー角を自動計算し(ステップS28)、計算結果を検査情報データレジスタに格納する(ステップS29)。
【0086】
最後に上記フィーダ幅を用いて搬送路上に設けられるガイドの間隔を自動調整し(ステップS30)、段取り換え処理は終了する。
上記段取り換え処理が完了済みの状態で印字開始が指示されると(ステップS1,YES)、レーザ印字装置の自動運転がスタートされる(ステップS2)。まず、フィードインコンベアを旋回させ(ステップS3)、これによってワーク3がワークテーブル9上に移載されたら(ステップS4)、ステップS23でレジスタに格納した回転速度を読み出して、旋回条件が成立するか否かを判定し(ステップS5)、成立しない場合にはエラー表示し(ステップS6)、成立する場合にはワークテーブル回転を開始する(ステップS7)。
【0087】
次に、ステップS18で手入力したりステップS24で自動計算した各種印字情報をレジスタから読み出して、印字条件が成立するか否かを判定し(ステップS8)、成立しない場合にはエラー表示し(ステップS9)、成立する場合にはレーザマーカ1によるワーク3周面への印字を開始する(ステップS10)。
【0088】
次に、ステップS26〜S29の処理によってレジスタに格納されている各種画像文字検査情報(撮像方式、トリガー発信角度、その他、別途設定されている検査内容等)を読み出して、画像文字検査条件が成立するか否かを判定し(ステップS11)、成立しない場合にはエラー表示し(ステップS12)、成立する場合には印字内容を撮像・認識して基準文字との比較チェックを行うことで印字検査を行い、印字及び検査が終了したら(ステップS13)、ステップS14以降の処理に移る。
【0089】
ステップS14では、ワークテーブル9上のワーク3を、フィードアウトコンベアに移載し(ステップS14)、上記印字検査結果が不合格であった場合には(ステップS15,NO)、ワーク3のNG排出を行う(ステップS16)。合格であった場合には(ステップS15,YES)、フィードアウトコンベアを旋回させて、ワーク3を正常排出する(ステップS17)。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本例のレーザ印字装置に係わる機構構造図である。
【図2】本例のレーザ印字装置におけるコントロール装置の構成図である。
【図3】図2の構成の具体例である。
【図4】登録されているデータテーブルの一例である。
【図5】(a)はワークテーブル上のマスターワークの斜視図、(b)はレーザマーカの取付調整作業を説明する為の図である。
【図6】(a)、(b)はマスターワークに関する最適印字幅ML、(c)は印字エリアにおける印字位置を示す図である。
【図7】(a)、(b)はオフセットについて説明する為の図である。
【図8】(a)、(b)はそれぞれ文字A、文字Bを例にしてX、Y成分係数を求め方を説明する為の図である。
【図9】(a)は固定文字列、(b)は移動体文字列、(c)はラインスピードに応じて移動体文字列がくずれる様子を示す図である。
【図10】(a)、(b)は、それぞれ、X成分、Y成分により算出される移動体文字長さを説明する為の図である。
【図11】(a)は固定文字の一例、(b)はこの固定文字を移動体に印字させる為の移動体文字の一例である。
【図12】遅れ長さを説明する為の図である。
【図13】水平視野幅を説明する為の図である。
【図14】360°撮像方法の一例を示す図である。
【図15】文字設定画面例である。
【図16】印字条件設定画面例である。
【図17】レーザ印字装置の全体処理フローチャート図である。
【符号の説明】
【0091】
1 レーザマ−カ
2 画像処理用カメラ
3 ワーク(円柱体)
4 左螺子ステージ
5 右螺子ステージ
6 焦点調整用サーボモータ
7 ワーク回転用サーボモータ
8 アブソリュート・エンコーダ
9 ワークテーブル
10 軸(サーボ軸)
21 画像処理コントローラ
22 アブソリュート・コントローラ
23a レーザ印字ヘッド
23b レーザ印字コントローラ
25 主操作盤
26 副操作盤
30 シーケンサ
31 アンプ
32 アンプ
33 コントローラ
34 ハンディ・バーコードスキャナ
35 ビデオ入力ユニット
36 LED照明
37 終端ストッパー
38 幅調モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印字対象物が曲面を有し印字面が移動するものである場合に、焦点深度が所定値以下となる印字範囲である最適印字幅を算出する最適印字幅算出手段と、
印字する任意の文字列に対応する移動体文字列の印字幅を、レーザマーカによるスキャンスピードの所定の基準スピードである基準スキャンスピードに基づいて算出する移動体文字列長算出手段と、
前記移動体文字列の印字幅と前記最適印字幅とに基づいて、前記移動体文字列を印字する為の印字範囲が該最適印字幅以下となるようにするスキャンスピードを算出するスキャンスピード算出手段と、
を有することを特徴とするレーザ印字装置。
【請求項2】
前記曲面を有する印字対象物は、略円筒又は略円柱形状であり、回転することで印字面が移動するものであり、
最適印字幅算出手段は、該円筒又は円柱の半径をr、前記焦点深度をLSとすると、以下の式により前記最適印字幅を算出する
【数1】

ことを特徴とする請求項1記載のレーザ印字装置。
【請求項3】
予め各文字毎に、その文字のX方向成分、Y方向成分をそれぞれ係数化して成るX成分係数、Y成分係数を求めて登録しておき、
前記移動体文字列長算出手段は、前記印字する任意の文字列を構成する各文字の前記X成分係数、Y成分係数と、前記基準スキャンスピードと、任意の印字条件とに基づいて、前記移動体文字列の印字幅を算出することを特徴とする請求項1又は2記載のレーザ印字装置。
【請求項4】
前記移動体文字列長算出手段は、前記印字する任意の文字列を構成する各文字の前記X成分係数の総和と前記Y成分係数の総和を求め、それぞれMX、MYとし、前記基準スキャンスピードをSCとし、前記任意の印字条件として前記印字対象物の移動速度V、印字文字高さMT、印字文字幅MWとすると、以下の式により前記移動体文字列の印字幅IMを算出する
IX=(SC−V)×MX×MW/SC
IY=V×MY×MT/SC
IM=IX+IY
ことを特徴とする請求項3記載のレーザ印字装置。
【請求項5】
前記印字対象物の径を求め、前記レーザマーカと該印字対象物との距離を、求めた径に基づいて調整することで焦点距離を合わせる調整手段を更に有することを特徴とする請求項2〜4の何れかに記載のレーザ印字装置。
【請求項6】
前記印字対象物を挟んで前記レーザマーカの略反対側に撮像装置を設け、
該レーザマーカと撮像装置は、同一の軸に沿って該軸の回転に伴って移動する構成となっており、
前記調整手段は、該軸を回転駆動制御することで、前記レーザマーカの焦点距離と該撮像装置の焦点距離を同時に調整することを特徴とする請求項5記載のレーザ印字装置。
【請求項7】
略円筒又は略円柱形状の印字対象物にレーザマーカにより印字するレーザ印字装置において、
前記印字対象物の径を求め、前記レーザマーカと該印字対象物との距離を、求めた径に基づいて調整することで焦点距離を合わせる調整手段を有することを特徴とするレーザ印字装置。
【請求項8】
略円筒又は略円柱形状の印字対象物にレーザマーカにより印字するレーザ印字装置における、該レーザマーカによる印字制御を実行するコンピュータに、
焦点深度が所定値以下となる印字範囲である最適印字幅を算出する機能と、
印字する任意の文字列に対応する移動体文字列の印字幅を、レーザマーカによるスキャンスピードの所定の基準スピードである基準スキャンスピードに基づいて算出する機能と、
前記移動体文字列の印字幅と前記最適印字幅とに基づいて、前記移動体文字列を印字する為の印字範囲が該最適印字幅以下となるようにするスキャンスピードを算出する機能と、
を実現させる為のプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図16】
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【図17】
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【図15】
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【公開番号】特開2006−75897(P2006−75897A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−266049(P2004−266049)
【出願日】平成16年9月13日(2004.9.13)
【出願人】(591016253)発紘電機株式会社 (23)
【Fターム(参考)】