説明

レーザ治療装置

【解決手段】 レーザ治療装置1は、レーザ光Lを発振するレーザ光発振手段5と、内部に導光手段6を備えた腕部3と、該腕部3の先端に設けられるとともに、上記導光手段6によって導光されたレーザ光Lを照射するハンドピース4とを備えている。
レーザ光発振手段5から発振されたレーザ光Lは、ホモジナイザ31を透過した後に長焦点距離レンズからなる第1集光レンズ32によって集光され、腕部3内を上記導光手段6によってハンドピース4まで導光される。
上記第1集光レンズ32の焦点位置は上記ハンドピース4内に設けられた第2集光レンズ14近傍に設定されており、強度分布が均一化されたレーザ光Lが患者の患部に照射される。
【効果】 耐久性が高く、また高出力なレーザ光を用いた治療が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はレーザ治療装置に関し、詳しくはレーザ光を発振するレーザ光発振手段と、内部に導光手段を備えた腕部と、該腕部の先端に設けられてレーザ光を出射するハンドピースとを備えたレーザ治療装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、患者の皮膚に発生したアザ等を治療するため、レーザ光を発振するレーザ光発振手段と、内部に導光手段を備えた腕部と、該腕部の先端に設けられるとともに、上記導光手段によって導光されたレーザ光をその先端から出射するハンドピースとを備えたレーザ治療装置が用いられている。
またこのようなレーザ治療装置では、患部が均一に治療されるように患部に照射されるレーザ光の強度分布が均一となるようにしており、このレーザ光の強度分布を均一にする手段として上記ハンドピースにカライドスコープを設け、該カライドスコープの内面に形成された反射面でレーザ光が反射を繰り返すようにしたレーザ治療装置が知られている。(特許文献1)
【特許文献1】特許3512840号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら上記特許文献1のようにカライドスコープによってレーザ光の強度分布を均一化する場合、カライドスコープにレーザ光を導光するため、カライドスコープの入射部分にレーザ光を集光する必要があるが、その際レーザ光の集光された位置で気中放電が発生し、カライドスコープの反射面を損傷してしまう恐れがあるため、カライドスコープの耐久性が低いという問題があり、レーザ光の出力を高くすると、耐久性がさらに低下してしまうという問題もあった。
このような問題に鑑み、本発明は高出力なレーザ光を用いても高い耐久性を有するレーザ治療装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
すなわち、本発明に係るレーザ治療装置は、レーザ光を発振するレーザ光発振手段と、内部に導光手段を備えた腕部と、該腕部の先端に設けられるとともに、上記導光手段によって導光されたレーザ光を出射するハンドピースとを備えたレーザ治療装置において、
上記レーザ光発振手段が発振したレーザ光の光軸断面方向の強度分布を均一化する透過型ホモジナイザと、該ホモジナイザを透過したレーザ光を集光する第1集光レンズと、上記ハンドピースに設けられて上記第1集光レンズが集光したレーザ光をさらに集光する第2集光レンズとを備え、
上記第1集光レンズによるレーザ光の焦点位置を、上記ハンドピースに設けられた上記第2集光レンズの近傍とすることを特徴としている。
【発明の効果】
【0005】
上記本発明によれば、レーザ光発振手段から発振されたレーザ光の強度分布を透過型ホモジナイザによって均一化するため、強度分布の均一化されたレーザ光によって患者の患部を治療することができる。
また上記第1集光レンズによって腕部を隔てたハンドピース内にレーザ光の焦点を位置させることで、長い腕部を導光しても拡散によるレーザ光の出力低下が抑えられ、またレーザ光の導光路中に気中放電が発生するほどレーザ光が集束されることはないので、高出力のレーザ光を用いることができると共に、焦点位置に設けられた第2集光レンズが損傷することはなく、高い耐久性を維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下図示実施例について説明すると、図1は本発明にかかるレーザ治療装置1を示し、操作パネル2a等の設けられた本体部2と、上記本体部2に設けられた腕部3と、該腕部3の先端に設けられたハンドピース4とから構成されている。
また図2は上記レーザ治療装置1の内部を簡略化して表示したものであり、上記本体部2にはレーザ光Lを発振するレーザ光発振手段5が設けられ、また上記腕部3には上記レーザ光発振手段5から発振されたレーザ光Lを上記ハンドピース4まで導光する導光手段6が設けられている。
そして上記ハンドピース4からレーザ光Lを患者の皮膚に照射することで、皮膚に発生したアザなどの治療を行うことができるようになっている。
【0007】
最初に上記腕部3について説明すると、図1,図2に示すように、上記腕部3はレーザ光Lを通過させる複数の導光管11と、該導光管11の接続部に設けられる関節機構12とから構成され、各関節機構12の内部には上記導光手段6として反射ミラー6aが設けられている。
上記導光管11は中空の管状部材となっており、関節機構12は導光管11の中心軸を回転中心として各導光管11を回転可能に保持している。そして各関節機構12内に設けられている反射ミラー6aの角度は、隣接する導光管11の中心軸に一致する方向にレーザ光Lを反射させるようになっている。なお、反射ミラー6aはレーザ光の拡散を防止するために凹面鏡とすることも可能である。
このような構成により、上記本体部2に設けられたレーザ光発振手段5より発振されたレーザ光Lは、上記導光管11を通過して関節機構12内の反射ミラー6aによって反射すると、隣接する他の導光管11を通過して他の関節機構12内の反射ミラー6aでさらに反射する。このようにして反射を繰り返すことにより、レーザ光Lは最終的に上記ハンドピース4まで導光されるようになっている。
なお、このような構成を有する腕部3および導光手段6はあくまで一例であり、その他従来公知の構成を有する腕部3および導光手段6を用いることも可能である。
【0008】
図3は上記ハンドピース4の拡大断面図を示しており、上記腕部3の先端に設けられた上記関節機構12に接続され、先端に向けて徐々に小径となる複数の管状部材13を相互に接続した構成を有している。
管状部材13の先端には開口部13aが形成されており、当該開口部13aよりも先端側にはリング状部13bが形成されている。
また所要の管状部材13には第2集光レンズ14が設けられており、上記腕部3内を導光手段6によって導光されたレーザ光Lはこの第2集光レンズ14によって集光され、上記開口部13aから出射されてリング状部13b内を通過するようになっている。
そして上記レーザ光Lの光軸は上記リング状部13bの中央付近となるように設定されており、その焦点位置はリング状部13bよりも遠くに設定されている。
このような構成により、医師は当該リング状部13bを患者の皮膚に接触させることによって、常にレーザ光の照射径を所定の大きさに保ちながら治療を行うことができ、またリング状部13bの内側に位置する患部を観察しながら治療を行うことができる。
【0009】
次に本体部2に設けられているレーザ光発振手段5について説明すると、本実施例ではルビーレーザ発振器を用いており、図4に示すように、中央に配置されたレーザロッド21と、その両側に配置された励起用のフラッシュランプ22と、これらレーザロッド21およびフラッシュランプ22を保持するとともに内面が反射鏡となっている断面小判型のハウジング23とを備えている。
また上記レーザロッド21を挟んでレーザ光Lをレーザロッド21に向けて全反射させる反射鏡24と、所定の出力に達したレーザ光Lを透過させ、その他のレーザ光Lをレーザロッド21に反射させるハーフミラーからなる出力鏡25とが設けられ、共振器を構成している。
レーザロッド21と出力鏡25との間にはQスイッチ素子26が設けられており、Qスイッチ素子26に所定の電圧を印可することによって、Qスイッチパルス発振をすることができるようになっている。またQスイッチ素子26に電圧を印可せず、フラッシュランプ22でレーザロッド21をパルス励起することで、ノーマルパルス発振をすることができるようになっている。
上記出力鏡25は、該出力鏡25を透過したレーザ光Lの径を拡径するレンズとなっており、レーザ光発振手段5が発振するレーザ光Lは当該出力鏡25によって拡径された状態で発振されるようになっている。
また上記レーザ光発振手段5は本体部2に設けられた操作パネル2aによって、レーザ光Lの出力を変更することができるようになっており、例えば上記フラッシュランプ22による励起光の強度を変更したり、Qスイッチパルス発振またはノーマルパルス発振を切りかえることが可能となっている。
図5は上記構成を有するレーザ光発振手段5がQスイッチパルス発振するレーザ光Lの出力を変化させ、その当該レーザ光Lの強度分布を測定した結果を示したものであり、レーザ光Lの出力によってレーザ光Lの強度分布が変化していることが理解できる。なおQスイッチパルス発振したレーザ光Lと、ノーマルパルス発振したレーザ光Lとでも、強度分布が変化する。
【0010】
このようにしてレーザ光発振手段5が発振するレーザ光Lは、図5に示すように強度分布が不均一となっているため、このレーザ光Lをそのまま患者に照射しても、患部を均一に治療することができない。このため、本体部2にはレーザ光Lの強度分布を均一化するための手段が設けられている。
本体部2には、図2に示すように上記レーザ光発振手段5が発振したレーザ光Lの強度分布を均一化するホモジナイザ31と、上記レーザ光Lを集光する第1集光レンズ32と、ホモジナイザ31を保持すると共に、レーザ光発振手段5から発振されるレーザ光Lに応じてホモジナイザ31を交換したり、その位置の調整を行う調整交換機構33を備えている。
最初に、上記ホモジナイザ31は透過するレーザ光Lの強度分布を均一化する回折型光学部品であり、表面に形成された微細な凹凸により入射するレーザ光Lを回折させ、レーザ光Lの強度分布を均一化するものとなっている。
次に、上記第1集光レンズ32は長焦点距離レンズとなっており、ホモジナイザ31によって強度分布の均一化されたレーザ光Lを集光し、上記腕部3に設けられた導光手段6によって導光されたレーザ光Lの焦点位置が、上記ハンドピース4に設けられた上記第2集光レンズ14の近傍となるように設定されている。
上記長焦点距離レンズは焦点距離が長く、焦点位置でのレーザ光Lの径をあまり小さくすることができないため、上記第1集光レンズ32を用いることで、長い導光距離を有する腕部3であっても、ホモジナイザ31を透過したレーザ光Lを拡散させずに上記第2集光レンズ14まで導光させることができ、また気中放電によるレーザ光Lの出力低下や、レーザ光Lの集束による上記第2集光レンズ14の損傷を防止することができる。
図6は上記レーザ光発振手段5が発振したレーザ光Lがホモジナイザ31を通過し、上記第1集光レンズ32によって集光されたレーザ光Lの焦点位置における強度分布を示したものであり、上記ホモジナイザ31および第1集光レンズ32によってレーザ光Lが断面円形で強度分布が均一化にされていることが理解できる。
なお、上記ホモジナイザ31として、治療の内容によりレーザ光Lの断面形状を図6に示すような円形ではなく、四角形や六角形などにするホモジナイザを用いることも可能である。
【0011】
しかしながら、上記レーザ光発振手段5が発振したレーザ光Lをホモジナイザ31および第1集光レンズ32を透過させただけでは、ハンドピース4における第2集光レンズ14近傍に設定された焦点位置において、図6のようにレーザ光Lの強度分布が均一化された状態を得ることはできない。
そこで本実施例のレーザ治療装置1には上記調整交換機構33が設けられており、当該調整交換機構33によってレーザ光Lの出力やレーザ光Lの強度分布の形状に応じて、最適なホモジナイザ31を選択し、その位置や回転角度を調整できるようになっている。
上記調整交換機構33は、複数種類の異なるホモジナイザ31を保持する保持機構と、各ホモジナイザ31を回転させる回転機構と、所要のホモジナイザ31をレーザ光Lの光路上に位置させる切替え機構と、ホモジナイザ31をレーザ光Lの光軸方向に移動させる移動機構とを備えている。
上記保持機構はホモジナイザ31の中心軸の角度とレーザ光発振手段5が発振するレーザ光Lの光軸とが微妙に異なるよう、ホモジナイザ31を保持しており、これによりホモジナイザ31によるレーザ光Lの反射光がレーザ光発振手段5に入射してレーザ光発振手段5が損傷するのを防止するようになっている。
また上記ホモジナイザ31を回転させる回転機構や、複数のホモジナイザ31を交換する切替え機構、ホモジナイザ31を移動させる移動機構などの各機構は、それぞれ従来公知の技術を用いることができるため、詳細な説明を省略する。
なお、使用するホモジナイザ31の種類、回転角度、位置等を自動的に設定することも可能であり、この場合発振可能なレーザ光L毎に、焦点位置でのレーザ光Lの強度分布が均一となるよう、最適なホモジナイザ31およびその回転角度と位置を実験により求めておき、レーザ治療装置1により治療を行う際には、上記操作パネル2aで設定した出力条件のレーザ光Lに応じて、最適なホモジナイザ31が自動的に選択され、その回転角度と位置が自動的に調整されるようにすることもできる。
【0012】
以下、本実施例に係る上記レーザ治療装置1を用いたアザの治療手順について説明する。
最初に、患者の患部の状態を診た医師は、本体部2に設けられた操作パネル2aを操作して、レーザ光発振手段5から発振されるレーザ光Lの出力や照射時間等の設定を行う。
すると、本体部2では上記調整交換機構33を操作し、切替え機構により最適なホモジナイザ31がレーザ光Lの光路上に載置され、また回転機構および移動機構によりホモジナイザ31の回転角度および位置が調整される。
そして医師はハンドピース4先端のリング状部材13bを患部に対してほぼ垂直となるように接触させながら、レーザ光Lが発振されるように操作する。
発振されたレーザ光Lは出力鏡25によって拡径された状態でホモジナイザ31に入射するようになっており、これによりホモジナイザ31の広い面積を用いて効率的にレーザ光Lの強度分布を均一化することができる。
ホモジナイザ31によって強度分布が均一化されたレーザ光Lは第1集光レンズ32によって集光され、その後腕部3の導光管11を通過すると共に、関節機構12に設けられた導光手段6としての反射ミラー6aに反射することで、ハンドピース4まで導光される。
上記第1集光レンズ32はレーザ光Lの焦点位置がハンドピース4の第2集光レンズ14近傍となるようにレーザ光Lを集光するようになっており、当該焦点位置において、図6に示すようなレーザ光Lの強度分布が均一となる。
このようにして第1集光レンズ32によって集光されたレーザ光Lは第2集光レンズ14によってさらに集光され、ハンドピース4の開口部13aから出射され、リング状部13bの中央を通過して患部に照射される。ここで上記第2集光レンズ14は強度分布が均一化されたレーザ光Lを集光するので、レーザ光Lの照射された範囲は均一に治療されるようになっている。
【0013】
なお、上記ホモジナイザ31を用いることで、強度分布が均一化された矩形やライン状のビーム形成も可能であり、また非球面型ホモジナイザを用いることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施例に係るレーザ治療装置の外観を示す図。
【図2】上記レーザ治療装置の内部構造を示す図。
【図3】ハンドピースについての拡大断面図。
【図4】レーザ光発振手段についての断面図。
【図5】レーザ光発振手段が照射するレーザ光の強度分布を示した図。
【図6】均一化されたレーザ光の強度分布を示した図。
【符号の説明】
【0015】
1 レーザ治療装置 2 本体部
3 腕部 4 ハンドピース
5 レーザ光発振手段 6 導光手段
14 第2集光レンズ 31 ホモジナイザ
32 第1集光レンズ 33 調整交換機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を発振するレーザ光発振手段と、内部に導光手段を備えた腕部と、該腕部の先端に設けられるとともに、上記導光手段によって導光されたレーザ光を出射するハンドピースとを備えたレーザ治療装置において、
上記レーザ光発振手段が発振したレーザ光の光軸断面方向の強度分布を均一化する透過型ホモジナイザと、該ホモジナイザを透過したレーザ光を集光する第1集光レンズと、上記ハンドピースに設けられて上記第1集光レンズが集光したレーザ光をさらに集光する第2集光レンズとを備え、
上記第1集光レンズによるレーザ光の焦点位置を、上記ハンドピースに設けられた上記第2集光レンズの近傍とすることを特徴とするレーザ治療装置。
【請求項2】
上記腕部はレーザ光を通過させる複数の導光管と、該導光管の接続部に設けられる関節機構とを備え、上記導光手段は上記関節機構内に設けられた複数の反射ミラーを備え、
上記レーザ光発振手段が発振したレーザ光は、上記導光管を通過すると共に上記反射ミラーに反射して、上記ハンドピースまで導光されることを特徴とする請求項1に記載のレーザ治療装置。
【請求項3】
上記第1集光レンズによって集光されたレーザ光の光軸断面方向の強度分布が上記第2集光レンズの位置で均一になるように、上記ホモジナイザの位置が調整可能であることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載のレーザ治療装置。
【請求項4】
上記レーザ光発振手段とホモジナイザとの間に、レーザ光発振手段より発振されたレーザ光の径を拡大するための光学レンズを設けることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のレーザ治療装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−319475(P2007−319475A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−153888(P2006−153888)
【出願日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【出願人】(000253019)澁谷工業株式会社 (503)
【出願人】(592057330)株式会社ニーク (3)
【Fターム(参考)】