説明

レーザ装置、レーザシステムおよび極端紫外光生成装置

【課題】安定したレーザ光を出力する。
【解決手段】レーザ装置は、それぞれシード光を出力する複数のマスタオシレータと、前記複数のマスタオシレータから出力された複数のシード光を再生増幅し得る再生増幅器と、前記複数のシード光を前記再生増幅器に入射し、且つ、前記複数のシード光のうち少なくとも1つを他のシード光と異なる入射角度で前記再生増幅器に入射する光学系と、を備えてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レーザ装置、レーザシステムおよび極端紫外光生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体プロセスの微細化に伴って、半導体プロセスの光リソグラフィにおける転写パターンの微細化が急速に進展している。次世代においては、70nm〜45nmの微細加工、さらには32nm以下の微細加工が要求されるようになる。このため、たとえば32nm以下の微細加工の要求に応えるべく、波長13nm程度の極端紫外(EUV)光生成装置と縮小投影反射光学系とともに用いられる露光装置の開発が期待されている。
【0003】
EUV光生成装置としては、ターゲット物質にレーザ光を照射することによって生成されるプラズマを用いたLPP(Laser Produced Plasma:レーザ励起プラズマ)方式の装置と、放電によって生成されるプラズマを用いたDPP(Discharge Produced Plasma)方式の装置と、軌道放射光を用いたSR(Synchrotron Radiation)方式の装置との3種類の装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2010/193710号明細書
【概要】
【0005】
本開示の一態様によるレーザ装置は、それぞれシード光を出力する複数のマスタオシレータと、前記複数のマスタオシレータから出力された複数のシード光を再生増幅し得る再生増幅器と、前記複数のシード光を前記再生増幅器に入射し、且つ、前記複数のシード光のうち少なくとも1つを他のシード光と異なる入射角度で前記再生増幅器に入射する光学系と、を備えてもよい。
【0006】
本開示の他の態様によるレーザシステムは、上述のレーザ装置と、前記レーザ装置から出力された再生増幅後のレーザ光を増幅する1つ以上の増幅器と、を備えてもよい。
【0007】
本開示のさらに他の態様による極端紫外(EUV)光生成装置は、上述のレーザシステムと、前記レーザシステムから出力されたレーザ光を内部に導入するための少なくとも1つの入射口を備えるチャンバと、前記チャンバ内の所定の領域にターゲット物質を供給するターゲット供給部と、前記レーザ光の少なくとも一部を前記所定の領域に集光する集光光学系と、前記チャンバ内で前記レーザ光を前記ターゲット物質に照射して生成したプラズマから放射する極端紫外光を集光する極端紫外集光ミラーと、を備えてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本開示のいくつかの実施形態を、単なる例として、添付の図面を参照して以下に説明する。
【図1】図1は、本開示の実施の形態1による例示的なLPP方式のEUV光生成装置(極端紫外光生成装置)の概略構成を示す。
【図2】図2は、本開示の実施の形態2によるレーザ装置の概略構成を模式的に示す。
【図3】図3は、本開示の変形例1による光学系を含むレーザ装置の概略構成を模式的に示す。
【図4】図4は、本開示の変形例2による光学系を含むレーザ装置の概略構成を模式的に示す。
【図5】図5は、本開示の変形例3による光学系を含むレーザ装置の概略構成を模式的に示す。
【図6】図6は、本開示の変形例4による光学系を含むレーザ装置の概略構成を模式的に示す。
【図7】図7は、本開示の変形例による再生増幅器の概略構成を模式的に示す。
【図8】図8は、図7に示す再生増幅器の動作を示す。
【図9】図9は、本開示の他の変形例による再生増幅器の概略構成を模式的に示す。
【図10】図10は、図9の再生増幅器をシード光の入射ビーム軸方向から見た際の概略構成を模式的に示す。
【図11】図11は、少なくともCOガスを増幅媒体として含む増幅器が持つ増幅波長領域のゲイン特性を示す。
【図12】図12は、図11に示すゲイン特性に基づいて増幅されたレーザ光LLの光強度を示す。
【図13】図13は、増幅器におけるモードP(18)〜P(30)それぞれに対応する増幅波長領域のゲイン特性と、シード光の光強度とを示す。
【図14】図14は、図13に示すゲイン特性に基づいて増幅された各シード光の光強度を示す。
【図15】図15は、実施の形態2によるシード光の入力ビーム径および入力波面曲率と結合効率との関係を示すシミュレーション結果である。
【図16】図16は、実施の形態2によるシード光の水平方向の入射角度および入力オフセットと結合効率との関係を示すシミュレーション結果である。
【図17】図17は、実施の形態2によるシード光の垂直方向の入射角度および入力オフセットと結合効率との関係を示すシミュレーション結果である。
【図18】図18は、実施の形態2によるシード光の入力ビーム径および入力波面曲率と増幅後のレーザ光の出力ビーム径との関係を示すシミュレーション結果である。
【図19】図19は、実施の形態2による増幅後のレーザ光のビームプロファイルを示すシミュレーション結果である。
【実施の形態】
【0009】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。以下に説明される実施形態は、本開示の一例を示すものであって、本開示の内容を限定するものではない。また、各実施形態で説明される構成及び動作の全てが本開示の構成及び動作として必須であるとは限らない。なお、同一の構成要素には同一の参照符号を付して、重複する説明を省略する。なお、以下の説明では、下記目次の流れに沿って説明する。
【0010】
目次
1.概要
2.用語の説明
3.EUV光生成システムの全体説明(実施の形態1)
3.1 構成
3.2 動作
4.複数のマスタオシレータを含むレーザ装置(実施の形態2)
4.1 構成
4.2 動作
4.3 作用
5.シード光を再生増幅器において再生増幅可能な入射角度および入射位置で再生増幅器に入射させる光学系
5.1 複数の反射光学素子を含む光学系(変形例1)
5.2 屈折光学素子を含む光学系(変形例2)
6.シード光を拡散光に変換して再生増幅器に入射させる光学系
6.1 光ファイバを含む光学系(変形例3)
6.1.1 構成
6.1.2 動作
6.1.3 作用
6.2 ビーム拡散素子を含む光学系(変形例4)
6.2.1 構成
6.2.2 動作
6.2.3 作用
7.補足説明
7.1 再生増幅器の変形例
7.1.1 構成
7.1.2 動作
7.1.3 他の変形例
7.2 COガスを含む増幅器の特性とマルチライン増幅
7.2.1 COガスを含む増幅器の増幅波長領域
7.2.2 複数のマスタオシレータによるマルチライン増幅
7.3 許容入射範囲に関するシミュレーション
7.3.1 シミュレーション条件
7.3.2 シミュレーション結果
【0011】
1.概要
以下で例示する実施の形態によれば、シード光が、再生増幅可能な入射角度および入射位置内で再生増幅器に入射し得る。
【0012】
2.用語の説明
つぎに、本開示において使用される用語を、以下のように定義する。「ドロップレット」とは、溶融したターゲット物質の液滴である。したがって、その形状は、表面張力によって略球形となる。「プラズマ生成領域」とは、プラズマが生成される空間として予め設定された3次元空間である。「ビーム拡大」とは、ビーム断面が徐々に広がることをいう。「バースト運転」とは、所定の時間、所定繰返し周波数で、パルスレーザ光またはパルスEUV光を出力させ、所定の時間外ではパルスレーザ光またはパルスEUV光を出力させない状態を繰り返す運転と定義する。レーザ光の光路において、レーザ光の生成源側を「上流」とし、レーザ光の到達目標側を「下流」とする。また、「所定繰返し周波数」とは、略所定の繰返し周波数であればよく、必ずしも一定の繰返し周波数でなくてもよい。
【0013】
プリズムとは、三角柱またはそれに類似した形状を有し、レーザ光を含む光を透過または反射し得るものをいう。プリズムの底面および上面は、三角形またはそれに類似した形状であるとする。プリズムの底面および上面に対して略90°に交わる3つの面を側面という。直角プリズムの場合、これらの側面のうち他の2面と90°に交わらない面を斜面という。なお、プリズムの頂辺を削るなどして形状を変形したものについても、本説明におけるプリズムに含まれ得る。光路とは、レーザ光の進行方向に沿ってレーザ光のビーム断面の略中心を通る軸であってもよい。
【0014】
本開示では、レーザ光の進行方向がZ方向と定義される。また、このZ方向と垂直な一方向がX方向と定義され、X方向およびZ方向と垂直な方向がY方向と定義される。レーザ光の進行方向がZ方向であるが、説明において、X方向とY方向は言及するレーザ光の位置によって変化する場合がある。例えば、レーザ光の進行方向(Z方向)がX−Z平面内で変化した場合、進行方向変化後のX方向は進行方向の変化に応じて向きを変えるが、Y方向は変化しない。一方、レーザ光の進行方向(Z方向)がY−Z平面内で変化した場合、進行方向変化後のY方向は進行方向の変化に応じて向きを変えるが、X方向は変化しない。なお、理解のために各図では、図示されている光学素子のうち、最上流に位置する光学素子に入射するレーザ光と、最下流に位置する光学素子から出射するレーザ光とのそれぞれに対して、座標系が適宜図示される。また、その他の光学素子に対して入射するレーザ光の座標系は、必要に応じて適宜図示される。
【0015】
反射型の光学素子に関し、光学素子に入射するレーザ光の光軸と該光学素子によって反射したレーザ光の光軸との双方を含む面を入射面とすると、「S偏光」とは、入射面に対して垂直な方向の偏光状態であるとする。一方、「P偏光」とは、光路に直交し、且つ入射面に対して平行な方向の偏光状態であるとする。
【0016】
「許容入射角度範囲」とは、再生増幅器の入射位置における設計光軸に対して、入射レーザ光の入射角度がずれても再生増幅器がレーザ光を再生増幅して出射できる許容角度の範囲である。許容入射角度範囲は、たとえば再生増幅器の入射位置における所定位置を中心とした立体角で規定されてもよい「許容オフセット範囲」とは、再生増幅器の入射位置における設計光軸に対して、入射レーザ光の入射位置が平行にオフセットしてずれても再生増幅器がレーザ光を再生増幅して出射できる許容オフセット量の範囲である。許容オフセット範囲は、たとえば再生増幅器の入射位置における平面領域の所定位置を中心とした2次元座標範囲で規定されてもよい。なお、設計光軸とは再生増幅器を設計、改造した際の想定光軸であってよい。あるいは、設計光軸は、再生増幅器を製作後、増幅シミュレーション等により最適動作実現のために定めた光軸であってもよい。また、所定位置は、再生増幅器のレーザ光入射位置において、設計光軸に直行する平面と設計光軸とが交わる位置であってよい。
【0017】
3.EUV光生成システムの全体説明(実施の形態1)
3.1 構成
図1に本開示の実施の形態1による例示的なLPP方式のEUV光生成装置1(極端紫外光生成装置)の概略構成を示す。EUV光生成装置1は、少なくとも1つのレーザ装置3と共に用いられてもよい(EUV光生成装置1及びレーザ装置3を含むシステムを、以下、EUV光生成システム11と称する)。図1に示し、かつ以下に詳細に説明されるように、EUV光生成装置1は、チャンバ2を含んでもよい。チャンバ2は、密閉可能であってもよい。EUV光生成装置1は、ターゲット供給装置(例えばドロップレット生成器26)を更に含んでもよい。ターゲット供給装置は、例えばチャンバ2に取り付けられていてもよい。ターゲット供給装置から供給されるターゲット物質の材料は、スズ、テルビウム、ガドリニウム、リチウム、キセノン、又はそれらのうちのいずれか2つ以上の組合せ等を含んでもよいが、これらに限定されない。
【0018】
チャンバ2の壁には、少なくとも1つの貫通孔が設けられてもよい。その貫通孔をレーザ装置3から出力されたパルスレーザ光32が通過してもよい。或いは、チャンバ2には、レーザ装置3から出力され、ビームデリバリーシステム340を経由したパルスレーザ光32が透過する少なくとも1つのウィンドウ21が設けられてもよい。チャンバ2の内部には例えば、回転楕円面形状の反射面を有するEUV集光ミラー23が配置されてもよい。EUV集光ミラー23は、第1及び第2の焦点を有し得る。EUV集光ミラー23の表面には例えば、モリブデンとシリコンとが交互に積層された多層反射膜が形成されていてもよい。EUV集光ミラー23は、例えば、その第1の焦点がプラズマ生成領域25に位置し、その第2の焦点が露光装置6の仕様によって規定される所望の集光位置(中間焦点(IF)292)に位置するように配置されるのが好ましい。EUV集光ミラー23の中央部には、パルスレーザ光33が通過することができる貫通孔24が設けられてもよい。
【0019】
EUV光生成装置1は、EUV光生成制御システム5を含んでもよい。また、EUV光生成装置1は、ターゲットセンサ4を含むことができる。ターゲットセンサ4は、ターゲット27の存在、軌道、位置等を検出してもよい。ターゲットセンサ4は、撮像機能を有してもよい。
【0020】
更に、EUV光生成装置1は、チャンバ2内部と露光装置6内部とを連通させる接続部29を含んでもよい。接続部29内部には、アパーチャが形成された壁291が設けられてもよい。壁291は、そのアパーチャがEUV集光ミラー23の第2の焦点位置に位置するように配置されてもよい。
【0021】
更に、EUV光生成装置1は、ビームデリバリーシステム340、レーザ集光光学系22、ターゲット27を回収するためのターゲット回収部28等を含んでもよい。ビームデリバリーシステム340は、レーザ光の進行方向を規定するための光学素子と、この光学素子の位置や姿勢等を調整するためのアクチュエータとを備えてもよい。
【0022】
3.2 動作
図1を参照すると、レーザ装置3から出力されたパルスレーザ光31は、ビームデリバリーシステム340を経て、パルスレーザ光32としてウィンドウ21を透過して、チャンバ2内に入射してもよい。パルスレーザ光32は、少なくとも1つのレーザ光経路に沿ってチャンバ2内に進み、レーザ集光ミラー22で反射されて、パルスレーザ光33として少なくとも1つのターゲット27に照射されてもよい。
【0023】
ドロップレット生成器26からは、ターゲット27がチャンバ2内部のプラズマ生成領域25に向けて出力されてもよい。ターゲット27には、パルスレーザ光33に含まれる少なくとも1つのパルスレーザ光が照射され得る。パルスレーザ光が照射されたターゲット27はプラズマ化し、そのプラズマからEUV光251が放射され得る。EUV光251は、EUV集光ミラー23によって集光されるとともに反射されてもよい。EUV集光ミラー23で反射されたEUV光252は、中間焦点(IF)292を通って露光装置6に出力されてもよい。なお、1つのターゲット27に、パルスレーザ光33に含まれる複数のパルスレーザ光が照射されてもよい。
【0024】
EUV光生成制御システム5は、EUV光生成システム11全体の制御を統括してもよい。EUV光生成制御システム5はターゲットセンサ4によって撮像されたターゲット27のイメージデータ等を処理してもよい。EUV光生成制御システム5は、例えば、ターゲット27を出力するタイミングやターゲット27の出力方向等を制御してもよい。また、EUV光生成制御システム5は、例えば、レーザ装置3のレーザ発振タイミングやパルスレーザ光32の進行方向やパルスレーザ光33の集光位置等を制御してもよい。上述の様々な制御は単なる例示に過ぎず、必要に応じて他の制御を追加することもできる。
【0025】
本開示は、高出力のパルスレーザ光を出力するレーザ装置3およびEUV光生成システム11、ならびにこのレーザ装置3とともに用いられるEUV光生成装置1に関する。
【0026】
4.複数のマスタオシレータを含むレーザ装置(実施の形態2)
つぎに、実施の形態2を、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明において、実施の形態1と同様の構成については、同一の符号を付し、その重複する説明を省略する。
【0027】
4.1 構成
図2は、実施の形態2によるレーザ装置3の概略構成を模式的に示す。図2に示すように、レーザ装置3は、複数のマスタオシレータ101−1〜101−4と、光学系102と、再生増幅器200と、1つ以上の増幅器301〜303とを含んでもよい。光学系102、再生増幅器200および1つ以上の増幅器301〜303は、複数のマスタオシレータ101−1〜101−4それぞれから出力されるシード光L1〜L4の光路上に、この順序で配置されてもよい。
【0028】
各マスタオシレータ101−1〜101−4は、シングル縦モードの量子カスケードレーザであってもよいし、シングル縦モードのCOガスレーザであってもよい。マスタオシレータ101−1〜101−4は、少なくともCOガスを増幅媒体として含む増幅器301〜303が増幅可能な波長帯域で発振してもよい。
【0029】
光学系102は、マスタオシレータ101−1〜101−4から出力されたシード光L1〜L4をそれぞれ反射させる高反射ミラー102−1〜102−4を含んでもよい。各高反射ミラー102−1〜102−4は、ウエッジ基板に高反射膜がコーティングされた構成を備えてもよい。ウエッジ基板の稜線はナイフエッジ形状であってもよい。ただし、ウェッジ基板の代わりに、平面ミラーが用いられてもよい。各高反射ミラー102−1〜102−4は、反射したシード光L1〜L4が所定の許容入射角度範囲Rin内且つ許容オフセット範囲内で再生増幅器200に入射するように、各マスタオシレータ101−1〜101−4および再生増幅器200に対して配置されてもよい。ここで、許容入射角度範囲Rinは、入射したレーザ光を再生増幅器200が増幅し得る角度範囲であればよい。許容オフセット範囲は、入射したレーザ光を再生増幅器200が増幅し得る範囲であればよい。なお、許容入射角度範囲Rinの中心軸が再生増幅器200の入射軸と称されてもよい。また、許容オフセット範囲の中心が再生増幅器200の入射位置の中心と称されてもよい。
【0030】
再生増幅器200は、折返しミラー201、λ/4板202、EOポッケルスセル203、偏光子204、スラブ増幅部205、偏光子206、EOポッケルスセル207、および折返しミラー208を含んでもよい。スラブ増幅部205の内部には、COガスなどの増幅媒体が充填されていてもよい。
【0031】
λ/4板202、EOポッケルスセル203、偏光子204、スラブ増幅部205、偏光子206、およびEOポッケルスセル207は、折返しミラー201および208で構成される光共振器の光路上に、この順序で配置されてもよい。説明のため、図2において、偏光子204および206は、それぞれの反射面が紙面に対して垂直となるように配置されているとする。しかしこの限りではなく、レーザ光と各光学素子への入射光の偏光方向とが後述する関係を保つように配置されることで、本説明と同様の効果を奏することができる。
【0032】
ここで、λ/4板202は、透過する光に90°の位相差を生じさせてもよい。偏光子204および206は、入射面に対して垂直な偏光であるS偏光を高反射し且つ他の偏光状態で入射した光を高透過率で透過する偏光ビームスプリッタであってもよい。スラブ増幅部205は、光が入出力するウィンドウ213および214を備えていてもよい。偏光子204とEOポッケルスセル203とλ/4板202とは、光を再生増幅器200内に導入するための入力カップリング部として機能してもよい。一方、偏光子206とEOポッケルスセル207とは、再生増幅器200で増幅された光を出力するための出力カップリング部として機能してもよい。
【0033】
各増幅器301〜303は、少なくともCOガスを増幅媒体として含んでもよい。増幅器301〜303は、再生増幅されたレーザ光31aの光路上に、この順序で配置されてもよい。
【0034】
4.2 動作
各々のマスタオシレータ101−1〜101−4から出力されたシード光L1〜L4は、直線偏光であってもよい。シード光L1〜L4は、光学系102の高反射ミラー102−1〜102−4でそれぞれ反射されてもよい。反射されたシード光L1〜L4は、シード光LLとして、再生増幅器200の偏光子204に入射してもよい。偏光子204あるいは206の入射面に対して垂直な偏光をS偏光とし、入射面と平行な偏光をP偏光とすると、シード光LLは、偏光子204の入射面に対してS偏光であってもよい。
【0035】
つづいて、再生増幅器200の動作について説明する。偏光子204の入射面に対してS偏光のシード光LLは、偏光子204で反射され得る。これにより、シード光LLが折返しミラー201および折返しミラー208で構成される光共振器中に入射し得る。入射したシード光LLは、電圧が印加されていないEOポッケルスセル203を、偏光状態を維持したまま透過してもよい。その後、シード光LLは、λ/4板202を透過することによって円偏光に変換されてもよい。この変換されたシード光LLは、折返しミラー201によって反射され、再びλ/4板202を透過することによって、偏光子204の入射面に対してP偏光に変換されてもよい。この変換されたシード光LLは、EOポッケルスセル203および偏光子204を透過し、ウィンドウ213を介してスラブ増幅部205に入射してもよい。
【0036】
スラブ増幅部205には、上述のように、COガスが増幅媒体として含まれ得る。スラブ増幅部205に入射したシード光LLは、スラブ増幅部205内の増幅媒体を通過することによって、偏光状態を維持したまま増幅され得る。増幅後のシード光LLは、ウィンドウ214を介してスラブ増幅部205から出射してもよい。出射したシード光LLaは、偏光子206の入射面に対してP偏光の状態で、偏光子206に入射してもよい。この入射したシード光LLaは、偏光子206を透過し得る。偏光子206を透過したシード光LLaは、高電圧が印加されていないEOポッケルスセル207を、偏光状態を維持したまま透過してもよい。その後、このシード光LLaは、折返しミラー208によって反射され、再び、EOポッケルスセル207および偏光子206を透過してもよい。そして、このシード光LLaは、再びウィンドウ214を介してスラブ増幅部205内に入射し、スラブ増幅部205内の増幅媒体によってさらに増幅されてもよい。このさらに増幅されたシード光LLbは、偏光子204を透過してもよい。
【0037】
ここで、EOポッケルスセル203には、電圧が印加されてもよい。再増幅後のシード光LLbは、電圧が印加されたEOポッケルスセル203を透過することによって、円偏光に変換されてもよい。この変換されたシード光LLbは、λ/4板202を透過することによって、偏光子204の入射面に対してS偏光に変換されてもよい。この変換されたシード光LLbは、折返しミラー201によって反射され、再びλ/4板202を透過することで、円偏光に変換されてもよい。この変換されたシード光LLbは、電圧が印加されたEOポッケルスセル203を透過することによって、偏光子204の入射面に対してP偏光に変換されてもよい。そして、この変換されたシード光LLbは、再び偏光子204を透過し、ウィンドウ213を介して、COガスを含むスラブ増幅部205に入射してもよい。
【0038】
以上のように、再生増幅器200に入射したシード光LLは、折返しミラー201および208で構成される光共振器内を所定回数往復することで、再生増幅されてもよい。
【0039】
シード光LLが光共振器内を所定回数往復後、EOポッケルスセル207には、電圧が印加されてもよい。これにより、偏光子206の入射面に対してP偏光であるシード光LLcは、電圧が印加されたEOポッケルスセル207を透過することで円偏光に変換されてもよい。この変換されたシード光LLcは、折返しミラー208によって反射されてもよい。そして、この円偏光のシード光LLcは、再び電圧が印加されたEOポッケルスセル207を透過することによって、偏光子206の入射面に対してS偏光に変換されてもよい。この変換されたシード光LLcは、偏光子206によって反射されることで、再生増幅されたレーザ光31aとして出力され得る。なお、レーザ光31aを出力後、EOポッケルスセル203および207への電圧の印加を停止し、次のシード光LLの入射を待機してもよい。
【0040】
以上のように、再生増幅器200に入射したシード光LLは、光共振器中を所定回数往復する過程で、光軸に近い一部の光束のみが再生増幅され得る。したがって、光学系102で反射したシード光LLは、再生増幅器200で再生増幅され得る光束成分を含むような条件(入射角度や入射位置のずれ等)で、再生増幅器200に入射するとよい。
【0041】
再生増幅されたレーザ光31aは、1つ以上の増幅器301〜303によってさらに増幅されてもよい。この増幅後のパルスレーザ光31は、EUV光生成装置1に導入されてもよい。
【0042】
4.3 作用
実施の形態2によれば、再生増幅器200によって増幅可能なシード光LLの入射条件となるように、光学系102が複数のマスタオシレータ101−1〜101−4と再生増幅器200との間の光路上に配置され得る。それにより、各々のマスタオシレータ101−1〜101−4から出力されるシード光L1〜L4を、1つの再生増幅器200によって再生増幅することが可能となる。さらに、実施の形態2によれば、複数のシード光L1〜L4の光路を一致させる素子(たとえば部分反射ミラーやグレーティングなど)が不要となるので、シード光LLの再生増幅器200への注入効率が改善され得る。
【0043】
なお、実施の形態2では、光学系102が少なくとも1つの高反射ミラー102−1〜102−4を用いて構成された場合を例示した。ただし、本開示はこれに限定されない。たとえば、高反射ミラー、屈折プリズム、および高反射プリズムのうち少なくとも1つの光学素子を用いて、光学系を構成することも可能である。すなわち、本開示では、再生増幅器200が再生増幅可能な入射条件(入射角度や入射位置のずれ等)で少なくとも1つのシード光を再生増幅器200に入射させ得る光学系であればよい。
【0044】
5.シード光を再生増幅器において再生増幅可能な入射角度および入射位置で再生増幅器に入射させる光学系
つづいて、上述した光学系102の他の例を、以下に変形例として、図面を用いて詳細に説明する。
【0045】
5.1 複数の反射光学素子を含む光学系(変形例1)
図3は、変形例1による光学系112を含むレーザ装置3Aの概略構成を模式的に示す。図3に示すように、変形例1によるレーザ装置3Aは、図2に示すレーザ装置3と同様の構成を備えてもよい。ただし、レーザ装置3Aでは、レーザ装置3における光学系102が、光学系112に置き換えられてもよい。また、レーザ装置3Aでは、レーザ装置3におけるマスタオシレータ101−1〜101−4の配置が、光学系102から光学系112への置き換えにともなって変更されていてもよい。
【0046】
光学系112は、高反射ミラー112−1および112−3と、高反射プリズム112−2とを含んでもよい。高反射ミラー112−1および112−3は、それぞれウエッジ基板に高反射膜がコーティングされた構成を備えてもよい。ウエッジ基板の稜線はナイフエッジ形状であってもよい。高反射プリズム112−2は、ウエッジ基板に高反射膜がコーティングされた構成を備えてもよい。さらに好ましくは、高反射プリズム112−2はその頂角がナイフエッジ形状のプリズムであってもよい。その上で、高反射プリズム112−2の頂角を挟む2面には、高反射膜がコーティングされていてもよい。
【0047】
高反射ミラー112−1および112−3は、マスタオシレータ101−1および101−4から出力されたシード光L1およびL4をそれぞれ再生増幅器200へ反射するように、配置されてもよい。高反射プリズム112−2は、マスタオシレータ101−2および101−3から出力されたシード光L2およびL3を再生増幅器200へ反射するように、配置されてもよい。
【0048】
複数の高反射ミラー112−1、112−3、および高反射プリズム112−2は、反射したシード光L1〜L4が所定の許容入射角度範囲Rin内且つ所定の許容オフセット範囲内で再生増幅器200に入射するように、各マスタオシレータ101−1〜101−4および再生増幅器200に対して配置されてもよい。複数のマスタオシレータ101−1〜101−4および光学系112に含まれる光学素子は、再生増幅器200に対するシード光L1〜L4の入射対称軸AAを軸として略線対称になるように配置されてもよい。
【0049】
変形例1によれば、光学系112を構成する光学素子の数を低減させ得る。
【0050】
5.2 屈折光学素子を含む光学系(変形例2)
図4は、変形例2による光学系122を含むレーザ装置3Bの概略構成を模式的に示す。図4に示すように、変形例2によるレーザ装置3Bは、図2に示すレーザ装置3と同様の構成を備えてもよい。ただし、レーザ装置3Bでは、レーザ装置3における光学系102が、光学系122に置き換えられてもよい。また、レーザ装置3Bでは、レーザ装置3におけるマスタオシレータ101−1〜101−4の配置が、光学系102から光学系122への置き換えにともなって変更されていてもよい。
【0051】
光学系122は、高反射ミラー122−1および122−3と、屈折プリズム122−2とを含んでもよい。高反射ミラー122−1および122−3は、それぞれウエッジ基板に高反射膜がコーティングされた構成を備えてもよい。ウエッジ基板の稜線はナイフエッジ形状であってもよい。屈折プリズム122−2は、ウエッジ基板に反射防止膜がコーティングされた構成を備えてもよい。さらに好ましくは、屈折プリズム122−2は、その頂角がナイフエッジ形状のプリズムであってもよい。その上で、屈折プリズム122−2の頂角を挟む2面には、反射防止膜がコーティングされていてもよい。
【0052】
高反射ミラー122−1および122−3は、マスタオシレータ101−1および101−4から出力されたシード光L1およびL4をそれぞれ再生増幅器200へ反射するように、配置されてもよい。屈折プリズム122−2は、マスタオシレータ101−2から出力されたシード光L2を再生増幅器200へ向けて屈折するように、配置されてもよい。なお、マスタオシレータ101−3から出力されたシード光L3は、再生増幅器200へ直接入射してもよい。
【0053】
複数の高反射ミラー122−1、122−3、および屈折プリズム122−2は、反射または屈折したシード光L1、L2、およびL4が所定の許容入射角度範囲Rin内且つ所定の許容オフセット範囲内で再生増幅器200に入射するように、各マスタオシレータ101−1、101−2、101−4、および再生増幅器200に対して配置されてもよい。マスタオシレータ101−3は、シード光L3が所定の許容入射角度範囲Rin内且つ所定の許容オフセット範囲内で再生増幅器200に入射するように、再生増幅器200に対して配置されてもよい。
【0054】
変形例2によれば、変形例1と同様に、光学系122を構成する光学素子の数を低減させ得る。
【0055】
6.シード光を拡散光に変換して再生増幅器に入射させる光学系
つづいて、上述した光学系102のさらなる他の例を、以下に変形例として、図面を用いて詳細に説明する。
【0056】
6.1 光ファイバを含む光学系(変形例3)
複数のマスタオシレータ101−1〜101−nから出力されたシード光L1〜Lnの束(シード光LL)は、拡散光LL1であってもよい。この拡散光LL1は、収束光LL2に変換されてもよい。この収束光LL2は、再生増幅器200で再生増幅され得る光束成分を含んでいればよい。
【0057】
6.1.1 構成
図5は、変形例3による光学系132を含むレーザ装置3Cの概略構成を模式的に示す。図5に示すように、変形例3によるレーザ装置3Cは、図2に示すレーザ装置3と同様の構成を備えてもよい。ただし、レーザ装置3Cでは、レーザ装置3における光学系102が、光学系132に置き換えられてもよい。また、レーザ装置3Cでは、レーザ装置3におけるマスタオシレータ101−1〜101−4の配置が、光学系102から光学系132への置き換えにともなって変更されていてもよい。さらに、レーザ装置3Cでは、シード光LLの代わりに収束光LL2が再生増幅器200に入射してもよい。
【0058】
光学系132は、光導波部(たとえば光ファイバ132−1)と、集光レンズ132−4とを含んでもよい。光ファイバ132−1は、シード光L1〜Lnを導波するとともに拡散光LL1に変換する変換光学素子であってもよい。
【0059】
マスタオシレータ101−1〜101−nは、それぞれから出力されるシード光L1〜Lnが光ファイバ132−1の光入力部132−2に入射するように、配置されてもよい。光入力部132−2は、光ファイバ132−1のピグテールであってもよい。マスタオシレータ101−1〜101−nは、光ファイバ132−1のNAの範囲内になる角度で各シード光L1〜Lnが光入力部132−2に入射するように、配置されるとよい。光ファイバ132−1のNAの範囲内になる角度で光入力部132−2に入射したシード光L1〜Lnは、光ファイバ132−1中を伝播し得る。
【0060】
光ファイバ132−1は、入射したシード光L1〜Lnを拡散光LL1に変換して、光出力部132−3から出射してもよい。光出力部132−3は、光ファイバ132−1のピグテールであってもよい。
【0061】
集光レンズ132−4は、光出力部132−3から出射した拡散光LL1が集光され、収束光LL2に変換されてから、再生増幅器200に入射するように、配置されてもよい。この際、光出力部132−3および集光レンズ132−4は、この変換された収束光LL2が所定の許容入射角度範囲Rin内且つ所定の許容オフセット範囲内で再生増幅器200に入射するように、それぞれ再生増幅器200に対して配置されてもよい。この集光レンズ132−4は、省略されてもよい。集光レンズ132−4を省略する場合は、拡散光LL1のうち所定の許容入射角度範囲Rin内且つ所定の許容オフセット範囲にある光束のみが再生増幅器される。
【0062】
なお、光ファイバ132−1は、少なくともCOガスを増幅媒体とした再生増幅器200が増幅可能な波長成分を伝播可能であるとよい。光ファイバ132−1の材料は、ポリエーテル・エーテル・ケトン樹脂(PolyEthylEthelKethone:PEEK)等であってもよい。光ファイバ132−1のコアは、たとえばハロゲン化銀等でもよい。光ファイバ132−1の代わりに、内側面に高反射膜がコーティングされた中空のライトパイプが用いられてもよい。なお、光ファイバ132−1は偏波面保持光ファイバであると好ましい。
【0063】
6.1.2 動作
各々のマスタオシレータ101−1〜101−nから出力されたシード光L1〜Lnは、光ファイバ132−1の光入力部132−2に入射してもよい。各シード光L1〜Lnの光入力部132−2に対する入射角度は、光ファイバ132−1のNAの範囲内であるとよい。光ファイバ132−1のNAの範囲内になる角度で各シード光L1〜Lnを光入力部132−2に入射させることで、シード光L1〜Lnが光ファイバ132−1内に入射し得る。たとえば光ファイバ132−1の材料にPEEKを用い、光ファイバ132−1の直径を1mmとした場合、この光ファイバ132−1のNAは、0.25程度となり得る。
【0064】
光ファイバ132−1に入射したシード光L1〜Lnは、光ファイバ132−1中を通過する過程で光ファイバ132−1のコアとクラッドの境界面で何回も反射されることで混合されつつ、光ファイバ132−1の光出力部132−3に到達してもよい。この混合されたシード光L1〜Lnは、光出力部132−3のNAで拡散されつつ拡散光LL1として出力されてもよい。
【0065】
光ファイバ132−1の光出力部132−3から出力された拡散光LL1は、集光レンズ132−4によって集光され、収束光LL2に変換されてもよい。この収束光LL2は、再生増幅器200の偏光子204に入射してもよい。ここで、収束光LL2は、再生増幅器200が再生増幅可能な光束成分を含んでいればよい。また、各々のマスタオシレータ101−1〜101−nから出力されたシード光L1〜Lnが直線偏光であり、かつ光ファイバ132−1が偏波面保持光ファイバである場合、シード光L1〜Lnの偏光状態が収束光LL2において保持されてもよい。よって、収束光LL2が偏光子204によって反射される際に、反射光の光量が低下することを抑制できてもよい。
【0066】
再生増幅器200に入射した収束光LL2のうち再生増幅器200が再生増幅可能な光束成分は、シード光LLと同様に、再生増幅器200の光共振器内を所定の回数往復することで再生増幅され得る。その後、再生増幅されたレーザ光31aが偏光子206から出力されてもよい。
【0067】
6.1.3 作用
変形例3によれば、光ファイバ132−1の光入力部132−2の位置を再生増幅器200への光入射位置に対して比較的自由に設定できる。そのため、レーザ装置3Cの設計自由度を向上できる。また、各々のシード光L1〜Lnは、光ファイバ132−1内で混合された後、光ファイバ132−1の光出力部132−3から拡散光LL1として出力され得る。その拡散光LL1は、集光レンズ132−4を介することで、収束光LL2に変換され、再生増幅可能な光束成分を含むように、再生増幅器200に入射され得る。その結果、複数のマスタオシレータ101−1〜101−nから再生増幅器200までの光路上に配置される光学素子のアライメントが容易となり得る。
【0068】
変形例3では、光導波路として光ファイバを使用した場合を例示した。ただし、この形態に限定されない。たとえば、光ファイバ132−1の代わりに、中空のライトパイプが用いられてもよい。また、光ファイバ132−1の代わりに、シード光L1〜Lnを透過させ得る円柱状の光学素子が用いられてもよい。この円柱状の光学素子の材料は、たとえばZnSeであってもよい。さらに、光ファイバ132−1の代わりに、中空のミラー基板の内側面にシード光L1〜Lnを高反射させ得る膜がコーティングされた高反射ミラーが用いられてもよい。集光レンズ132−4は、集光ミラーに置き換えることもできる。
【0069】
6.2 ビーム拡散素子を含む光学系(変形例4)
また、シード光L1〜Lnを拡散光LL2に変換する素子として、光ファイバ132−1に代えて、拡散板を用いてもよい。
【0070】
6.2.1 構成
図6は、変形例4による光学系142を含むレーザ装置3Dの概略構成を模式的に示す。図6に示すように、変形例4による光学系142は、図2に示すレーザ装置3と同様の構成を備えてもよい。ただし、レーザ装置3Dでは、レーザ装置3における光学系102が、光学系142に置き換えられてもよい。また、レーザ装置3Dでは、レーザ装置3におけるマスタオシレータ101−1〜101−nの配置が、光学系102から光学系142への置き換えにともなって変更されていてもよい。さらに、レーザ装置3Dでは、シード光LLの代わりに収束光LL2が再生増幅器200に入射してもよい。
【0071】
光学系142は、拡散板142−1と、集光レンズ142−2とを含んでもよい。拡散板142−1は、シード光L1〜Lnを拡散光LL1に変換する変換光学素子であってもよい。
【0072】
マスタオシレータ101−1〜101−nは、それぞれから出力されるシード光L1〜Lnが拡散板142−1に入射するように、配置されてもよい。
【0073】
集光レンズ142−2は、拡散板142−1から出射した拡散光LL1が集光され、収束光LL2に変換されてから、再生増幅器200に入射するように、配置されてもよい。この際、集光レンズ142−2は、収束光LL2が所定の許容入射角度範囲Rin内且つ所定の許容オフセット範囲内で再生増幅器200に入射するように、再生増幅器200に対して配置されてもよい。この集光レンズ142−2は、省略されてもよい。この場合は、拡散光LL1の光束成分のうち所定の許容入射角度範囲Rin内且つ所定の許容オフセット範囲内で再生増幅器200に入射した光が再生増幅されてもよい。
【0074】
なお、拡散板142−1は、少なくともCOガスを増幅媒体とした再生増幅器200が増幅可能な波長成分を透過可能であるとよい。拡散板142−1の材料は、ZnSe等であってもよい。拡散板142−1の表面には、入射したシード光L1〜Lnを拡散する微小の凹凸が無数に形成されていてもよい。この凹凸は、サンドブラスト等で形成されてもよい。拡散板142−1の代わりに、マイクロフライアイレンズやフレネルレンズなどを組み合わせたディフラクティブオプティカルエレメント(DOE)が用いられてもよい。
【0075】
6.2.2 動作
各々のマスタオシレータ101−1〜101−nから出力されたシード光L1〜Lnは、拡散板142−1の所定の領域に入射してもよい。各シード光L1〜Lnの入射角度および入射位置は、拡散板142−1によって拡散され集光レンズ142−2によって集光される収束光LL2の光束成分の一部でも、所定の許容入射角度範囲Rin内且つ所定の許容オフセット範囲内で再生増幅器200に入射するような角度および位置であればよい。望ましくは、各シード光L1〜Lnの入射角度および入射位置は、所定の許容入射角度範囲Rin内且つ所定の許容オフセット範囲内で再生増幅器200に入射する光量が最大となるような前記角度および前記位置であってもよい。
【0076】
シード光L1〜Lnは、拡散板142−1によって拡散され、混合されて、拡散板142−1から拡散光LL1として出力され得る。拡散光LL1は、集光レンズ142−2によって集光され、収束光LL2に変換されてから、再生増幅器200の偏光子204に入射してもよい。ここで、収束光LL2は、再生増幅器200が再生増幅可能な光束成分を含んでいればよい。
【0077】
再生増幅器200に入射した収束光LL2のうち再生増幅器200が再生増幅可能な光束成分は、シード光LLと同様に、再生増幅器200の光共振器内を所定の回数往復することで再生増幅され得る。その後、再生増幅されたレーザ光31aが偏光子206から出力されてもよい。
【0078】
6.2.3 作用
変形例4によれば、拡散板142−1を利用して複数のシード光L1〜Lnを拡散し混合した後、収束光LL2に変換して再生増幅器200に入射され得る。その結果、複数のマスタオシレータ101−1〜101−nから再生増幅器200までの光路上に配置される光学素子のアライメントが容易となり得る。
【0079】
また、シード光L1〜Lnを拡散する拡散素子に、マイクロフライアイレンズやフレネルレンズなどを組み合せたDOEを用いてもよい。この場合、光束の拡散立体角を調整することができる。この結果、たとえば表面に砂目を持つ拡散板142−1を使用した場合と比較して、それぞれのシード光L1〜Lnの再生増幅器200への注入光量を増大し得る。
【0080】
なお、変形例4では、透過型の拡散素子を用いたが、これに限定されない。たとえば、反射型の拡散素子を用いてもよい。同様に集光レンズ142−2は集光ミラーであってもよい。
【0081】
7.補足説明
以下に、上述した実施の形態に対する補足の説明をする。
【0082】
7.1 再生増幅器の変形例
まず、上述した再生増幅器200の変形1を説明する。
【0083】
7.1.1 構成
図7は、変形例による再生増幅器200Aの概略構成を模式的に示す。図7に示すように、再生増幅器200Aは、折返しミラー201と、λ/4板202と、EOポッケルスセル203と、偏光子204と、スラブ増幅部205と、偏光子206と、EOポッケルスセル207と、折返しミラー208とを備えてもよい。折返しミラー201および208は、光共振器を構成してもよい。λ/4板202、EOポッケルスセル203、偏光子204、スラブ増幅部205、偏光子206、およびEOポッケルスセル207は、一対の折返しミラー201および208で構成される光共振器の光路上に、折返しミラー201側から順に、この順序で配列されてもよい。
【0084】
スラブ増幅部205は、凹面高反射ミラー211と、増幅領域215と、凹面高反射ミラー212とを内部に備えていてもよい。増幅領域215は、一対の放電電極(たとえば図10の放電電極215aおよび215b参照)間の領域であってもよい。この増幅領域215には、COガスなどの増幅媒体が充填されていてもよい。
【0085】
凹面高反射ミラー211および212は、スラブ増幅部205内の増幅領域215をシード光が複数回通過するマルチパスC2を形成してもよい。凹面高反射ミラー211および212の反射面は、たとえば、入射側の光路C1上のシード光LLの像(これを入力ビーム像という)Iaを出射側の光路C3上の何れかの位置に転写ビーム像Ibとして転写し得るように、球面の凹面形状を設計していてもよい。入射ビーム像Iaの位置は、光路C1上のいずれであってもよい。
【0086】
このように、光路C1上の入力ビーム像Iaを光路C3上に転写ビーム像Ibとして転写する構成としてもよい。これにより、マルチパス(zigzag)を形成することで光共振器の光路長を長くした場合でも、入射したシード光LLのビーム軸のずれに対するレーザ光31aのビーム軸および出射位置のずれの増大を抑制することができる。
【0087】
なお、図7では、入射ビーム像Iaの位置を、入射側の光路C1と凹面高反射ミラー212の反射面の中央部に接する面とが交わる位置としている。また、転写ビーム像Ibの位置を、出射側の光路C3と凹面高反射ミラー211の反射面の中央部に接する面とが交わる位置としている。ただし、本開示はこれに限られない。たとえば、折返しミラー201の位置でのシード光LLの入力ビーム像Iaが、折返しミラー208の位置に、転写ビーム像Ibとして転写されてもよい。また、偏光子204の位置でのシード光LLの入力ビーム像Iaが、偏光子206の位置に、転写ビーム像Ibとして転写されてもよい。
【0088】
7.1.2 動作
つづいて、図7に示す再生増幅器200Aの動作を、図8を用いて詳細に説明する。なお、図8では、再生増幅器200Aに入射したシード光LLが折返しミラー201および208が形成する光共振器中を1往復半する場合の動作を説明する。図8において、図8(a)は、図7に示す再生増幅器200Aの光路を入力ビームの進行に沿って模式的に説明するための図である。図8(b)は、図7に示す再生増幅器200Aにおけるスラブ増幅器205内の各位置におけるビーム転写像を概略的に示す光学システム図である。図8(c)〜(f)は、図7に示す再生増幅器200Aの概略動作を示すタイミングチャートである。
【0089】
図8に示すように、シード光LLは、タイミングt1(図8(c)参照)で、偏光子204(図8(a)参照)に入射してもよい。入射したシード光LLのうち偏光子204の入射面に対してS偏光の成分は、偏光子204によって高反射され、再生増幅器200A内に入射し得る。入射したシード光LLは、まず、電圧Vaが印加されていない状態(図8(d)参照)のEOポッケルスセル203を位相変化なく透過した後、λ/4板202を透過してもよい。シード光LLは、λ/4板202を透過する際、90°の位相差が生じることで、円偏光に変換されてもよい。次に、シード光LLは、折返しミラー201で高反射した後、再びλ/4板202を透過してもよい。λ/4板202を透過する際、シード光LLは、偏光子204の入射面に対してP偏光に変換されてもよい。次にシード光LLは、電圧Vaが印加されていない状態(図8(d)参照)のEOポッケルスセル203を位相変化なく透過し、さらに、偏光子204を反射されることなく透過し得る。その後、シード光LLは、タイミングt2(図8(a)参照)にてスラブ増幅器205に入射してもよい。スラブ増幅器205に入射したシード光LLは、図8(b)のタイミングt3において凹面高反射ミラー211で反射され、次に、図8(b)のタイミングt4において凹面高反射ミラー212で反射されてもよい。それにより、シード光LLは、凹面高反射ミラー211および212間を1往復半通過してもよい。これに限らず、シード光LLは、凹面高反射ミラー211および212間を1回以上往復してもよい。この結果、シード光LLがマルチパス増幅され得る。
【0090】
その後、マルチパス増幅されたシード光LLaは、タイミングt5で、スラブ増幅器205から出射してもよい。出射したシード光LLaは、偏光子206を透過し得る。そして、シード光LLaは、電圧Vbが印加されていない状態(図8(e)参照)のEOポッケルスセル207を位相変化なく透過した後、折返しミラー208で高反射されてもよい。高反射されたシード光LLaは、電圧Vbが印加されていない状態(図8(e)参照)のEOポッケルスセル207を透過し、さらに偏光子206を透過してもよい。そして、シード光LLaは、タイミングt6(図8(a)参照)で、再びスラブ増幅器205内に入射してもよい。スラブ増幅器205に入射したシード光LLaは、図8(b)のタイミングt7において凹面高反射ミラー212で反射され、次に図8(b)のタイミングt8において凹面高反射ミラー211で反射されてもよい。それにより、シード光LLaは、凹面高反射ミラー212および211間を1往復半通過してもよい。これに限らず、シード光LLは、凹面高反射ミラー212および211間を1回以上往復してもよい。この結果、シード光LLaが再度、マルチパス増幅され得る。
【0091】
その後、再度マルチパス増幅されたシード光LLbは、タイミングt9で、スラブ増幅器205から出射してもよい。出射したシード光LLbは、偏光子204を透過した後、所定の値の電圧Vaが印加された状態(図8(d)参照)のEOポッケルスセル203を通過してもよい。図8に示す例では、EOポッケルスセル203に電圧Vaを印加する期間はt2〜t13の期間のうちで、破線で示した少なくともt9〜t10の期間であってもよい。電圧Vaが印加された状態のEOポッケルスセル203は、透過するシード光LLbに90°の位相差を生じさせてもよい。これにより、シード光LLbが円偏光に変換されてもよい。つづいて、この変換されたシード光LLbは、λ/4板202を透過することで偏光子204の入射面に対してS偏光に変換されてもよい。次に、シード光LLbは、折返しミラー201で高反射された後、再びλ/4板202を透過することで、円偏光に変換されてもよい。つづいて、この変換されたシード光LLbは、電圧Vaが印加された状態(図8(d)参照)のEOポッケルスセル203を透過することで、再び偏光子204の入射面に対してP偏光に変換されてもよい。次に、シード光LLbは、偏光子204を反射されることなく透過した後、タイミングt10(図8(a)参照)で、再びスラブ増幅器205に入射してもよい。入射したシード光LLbは、図8(b)のタイミングt11において凹面高反射ミラー211で反射され、図8(b)のタイミングt12において凹面高反射ミラー212で反射され、凹面高反射ミラー211および212間を1往復半通過してもよい。これに限らず、シード光LLは、凹面高反射ミラー211および212間を1回以上往復してもよい。この結果、シード光LLbがさらにマルチパス増幅され得る。
【0092】
その後、さらにマルチパス増幅されたシード光LLcは、タイミングt13で、スラブ増幅器205から出射してもよい。出射したシード光LLcは、偏光子206を透過した後、電圧Vbが印加された状態(図8(e)参照)のEOポッケルスセル207を透過することで、円偏光に変換されてもよい。なお、図8に示す例では、EOポッケルスセル207に電圧Vbを印加する期間をタイミングt6〜t15の期間のうちで、少なくともt13〜t15の期間としてもよく、電圧Vbの印加を停止するタイミングは再生増幅器200Aから再生増幅後のレーザ光31aが出力された後としてもよい。
【0093】
つづいて、円偏光に変換されたシード光LLcは、折返しミラー208で高反射された後、再び電圧Vbが印加された状態(図8(e)参照)のEOポッケルスセル207を透過することで、偏光子206の入射面に対してS偏光に変換されてもよい。この変換されたシード光LLcは、偏光子206で高反射され得る。これにより、マルチパスで再生増幅されたシード光LLcが、タイミングt14(図8(f)参照)以降、レーザ光31aとして再生増幅器200Aから出力され得る。
【0094】
以上のように、再生増幅器200Aに入射したシード光LLは、折返しミラー201および208が形成する光共振器内を往復する際にスラブ増幅器205内の増幅領域215を複数回通過することで、マルチパス増幅され得る。なお、再生増幅器200A内に入射したシード光LLは、所望する光強度以上に再生増幅されるまで、光共振器内を往復してもよい。
【0095】
以上の構成によれば、スラブ増幅器205内を往復するマルチパスの入力側の光学像(入力ビーム像Ia)がそのままマルチパスの出力側に転写ビーム像Ibとして転写され得る。そのため、マルチパス増幅光路を形成して再生増幅器の光共振器光路長を長くした場合でも、入射側のシード光LLのビーム軸のずれに伴う出射側のレーザ光31aのビーム軸のずれが、光路長の長さに応じて増大することを低減し得る。この結果、再生増幅器200Aから出力されたレーザ光31aのビーム軸の安定化が可能となる。
【0096】
7.1.3 他の変形例
また、図8に示した再生増幅器200Aは、図9および図10に示すようにも変形することができる。すなわち、図8では、凹面高反射ミラー211および212が、増幅領域215を1往復半するマルチパスC2を形成する場合を例示した。ただし、これに限らず、図9および図10に示すように、凹面高反射ミラー211および212が増幅領域215をより多く往復するマルチパスC22を形成してもよい。なお、図9は、他の変形例による再生増幅器200Bの概略構成を模式的に示す。図10は、図9の再生増幅器200Bをシード光LLの入射ビーム軸方向から見た際の概略構成を模式的に示す。
【0097】
7.2 COガスを含む増幅器の特性とマルチライン増幅
つぎに、少なくともCOガスを増幅媒体として含む増幅器について補足説明する。なお、少なくともCOガスを増幅媒体として含む増幅器は、再生増幅器200(再生増幅器200Aおよび200Bを含む)に限らず、増幅器301〜303などが含まれてもよい。
【0098】
7.2.1 COガスを含む増幅器の増幅波長領域
まず、増幅器の増幅波長帯域について説明する。図11は、少なくともCOガスを増幅媒体として含む増幅器が持つ増幅波長帯域のゲイン特性を示す。図12は、図11に示すゲイン特性に基づいて増幅されたレーザ光LLの光強度を示す。COガスなどの増幅媒体は、複数の増幅波長帯域(例:モードP(18)、P(20)、P(22)、P(24)、P(26)、P(28)、P(30)等)S1〜S7を備え得る。各々の増幅波長帯域S1〜S7の幅Δλは、たとえば約0.0016μmであり得る。また、増幅波長帯域S1〜S7のゲイン特性は、それぞれ異なり得る。
【0099】
ここで、図11の破線に示すように、シード光LLの波長スペクトルプロファイルS10が、モードP(20)からP(30)までをカバーする程度にブロードなスペクトルプロファイルであると仮定する。この場合、図12に示すように、COガスを含む増幅媒体によって増幅されたシード光LLは、各々の増幅波長帯域S2〜S7のゲイン特性に応じた光強度を持つ波長スペクトルプロファイルS12〜S17のレーザ光として、増幅器から出力され得る。
【0100】
7.2.2 複数のマスタオシレータによるマルチライン増幅
つぎに、増幅器によるマルチライン増幅について説明する。なお、以下では、3つのマスタオシレータ101−1〜101−3を用いた場合を例に挙げる。図13は、増幅器におけるモードP(18)〜P(30)それぞれに対応する増幅波長帯域S1〜S7のゲイン特性と、シード光L1〜L3の光強度とを示す。図14は、図13に示すゲイン特性に基づいて増幅された各シード光L1〜L3の光強度を示す。
【0101】
複数のマスタオシレータから各々出力される各シード光の光強度は、たとえばモードP(18)〜P(30)それぞれに対応する増幅波長帯域S1〜S7のゲイン特性の比に対応して調節されてもよい。図13においては、シード光L1〜L3の光強度は増幅波長帯域S2〜S4のゲイン特性の比に対応して調節されている場合を示す。この場合、図14に示すように、各増幅波長帯域S2〜S4で増幅されたレーザ光L11〜L31の光強度が略等しくなるように、シード光L1〜L3を複数の増幅波長帯域を用いたマルチライン増幅することが可能となる。
【0102】
マルチライン増幅によれば、シード光L1〜L3がモードP(20)のシングルラインのみで増幅した場合に比べて、増幅効率が約1.0〜1.5倍に改善され得る。
【0103】
なお、この説明では、シングル縦モードのマスタオシレータ101−1〜101−3の発振波長が全て異なり、且つ、各マスタオシレータ101−1〜101−3から出力されたシード光L1〜L3が異なる増幅波長帯域S2〜S4で増幅される場合を例示する。ただし、これに限定されない。たとえば、複数のマスタオシレータのうち少なくとも2つが同じ増幅波長帯域に含まれる波長で発振してもよい。また、複数のマスタオシレータのうち少なくとも1つがマルチ縦モード発振してもよい。
【0104】
7.3 許容入射範囲に関するシミュレーション
つぎに、再生増幅器にシード光を入射する場合の、所定の許容入射角度範囲および所定の許容オフセット範囲について例示する。シード光の入射許容範囲を、上述した実施の形態2に対して、シミュレーションを行って算出した。以下では、図9および図10に示した再生増幅器200Bに対して、シミュレーションを行った場合を説明する。
【0105】
7.3.1 シミュレーション条件
ここでは、以下に示す条件の下でシミュレーションを行うものとする。
(シミュレーション条件)
・凹面高反射ミラー211から凹面高反射ミラー212までの距離は、1000mm
・光路が増幅領域215を通過する回数は、9回
・入力ビーム像Iaの位置から折返しミラー201までの距離は、300mm
・転写ビーム像Ibの位置から折返しミラー208までの距離は、300mm
・放電電極215aおよび215b間の距離は、3mm
・再生増幅器のラウンドトリップ回数は、10回
・基準となるシード光LLの入射ビーム径は、3mm
・基準となるシード光LLの入射波面曲率半径は、無限大
【0106】
また、シミュレーションにおいては、シード光LLの光路軸の基準が以下のように定義されている。図10に示すように、平板状の放電電極215aと215bとの中間面内であって、凹面高反射ミラー211および212とウィンドウ213および214とを除く各光学素子の略中心を通過する軸を再生増幅器200Bの中心軸とする。その上で、シード光LLの光路が、再生増幅器200Bの中心軸と一致する場合のシード光LLの光路軸の中心が基準(=0)と定義される。また、再生増幅器200B内の光軸と平行な方向が水平方向(図10のX方向)と定義され、再生増幅器200Bの光軸を含む面に対して垂直な方向が垂直方向(図10のY方向)と定義されている。また、図10における座標系の矢印方向が+方向と定義され、それと反対方向が−方向と定義されている。
【0107】
7.3.2 シミュレーション結果
シミュレーションの結果を、図15〜図20に示す。図15は、シード光LLの入力ビーム径および入力波面曲率と結合効率との関係を示すシミュレーション結果である。図16は、シード光LLの水平方向の入射角度および入力オフセットと結合効率との関係を示すシミュレーション結果である。図17は、シード光LLの垂直方向の入射角度および入力オフセットと結合効率との関係を示すシミュレーション結果である。図18は、シード光LLの入力ビーム径および入力波面曲率と増幅後のレーザ光31aの出力ビーム径との関係を示すシミュレーション結果である。図19は、増幅後のレーザ光31aのビームプロファイルを示すシミュレーション結果である。
【0108】
図15に示すように、入力波面曲率が−1.6m(=1/−0.6 1/m)から1m(=1/1 1/m)程度の範囲では、入力波面曲率の変化に対して結合効率がほとんど変化しないという結果が得られた。また、入力ビーム径が1mmから2mm程度の範囲では、入力ビーム径の増加に伴い、結合効率が0.6程度から徐々に上昇するという結果が得られた。一方、入力ビーム径が2mmから4mm程度の範囲では、入力ビーム径の変化に対して結合効率が略1を維持するという結果が得られた。
【0109】
図16に示すように、水平方向の入射角度が−2mradから+2mrad程度の範囲では、結合効率が0.6以上という良好な結果が得られた。とくに水平方向の入射角度が−1.5mradから+1.5mrad程度の範囲では、結合効率が0.8以上という、極めて良好な結果が得られた。また、水平方向の入力オフセット(中心からのずれ)が−1.3mmから+1.3mm程度の範囲では、結合効率が0.6以上という良好な結果が得られた。とくに水平方向の入力オフセットが−0.5mmから+0.5mm程度の範囲では、結合効率が0.8以上という、極めて良好な結果が得られた。同様に、図17に示すように、垂直方向の入射角度が−2mradから+2mrad程度の範囲では、結合効率が0.6以上という良好な結果が得られた。とくに垂直方向の入射角度が−1.8mradから+1.8mrad程度の範囲では、結合効率が0.8以上という、極めて良好な結果が得られた。また、垂直方向の入力オフセット(中心からのずれ)が−1.2mmから+1.2mm程度の範囲では、結合効率が0.6以上という良好な結果が得られた。とくに垂直方向の入力オフセットが−0.5mmから+0.5mm程度の範囲では、結合効率が0.8以上という、極めて良好な結果が得られた。
【0110】
図18に示すように、入力ビーム径が1mmから4mmの範囲では、入力ビーム径の変化に対してレーザ光31aの出力ビーム径が略3.3mmを維持するという結果が得られた。また、入力波面曲率が−1.6m(=1/−0.6 1/m)から1m(=1/1 1/m)程度の範囲では、入力波面曲率の変化に対してレーザ光31aの出力ビーム径が略3.3mmを維持するという結果が得られた。すなわち、レーザ光31aの出力ビーム径は、シード光LLの入力ビーム径および入力波面曲率が変化しても略一定であるという結果が得られた。
【0111】
また、図19から読み取れるように、レーザ光31aの出力面におけるビームプロファイルとしては、以下のような結果が得られた。
(レーザ光31aのビームプロファイル)
・ビーム径:1.63mm×1.69mm
・波面曲率半径RoC:−3.65m×−1.82m(収束)
・ビーム質M:1.14×1.34
・ビームウエスト半径:1.60mm×1.60mm
・ビームウエスト位置:0.126m×0.198m(出力面に対する相対位置)
【0112】
以上のことから、以下のようなシミュレーション結果が、シード光LLに対する許容値として得られた。
(シミュレーション結果)
・ビーム径の許容範囲:3.0mm±50%
・ビームの波面の許容曲率半径範囲:1m〜無限大
・ビーム軸の許容入射角度範囲Rin(水平方向):±2mrad
・ビーム軸の許容入射角度範囲Rin(垂直方向):±3mrad
・ビーム軸の許容オフセット範囲:±1.5mm
【0113】
上記の説明は、制限ではなく単なる例示を意図したものである。従って、添付の特許請求の範囲を逸脱することなく本開示の実施形態に変更を加えることができることは、当業者には明らかであろう。
【0114】
本明細書及び添付の特許請求の範囲全体で使用される用語は、「限定的でない」用語と解釈されるべきである。例えば、「含む」又は「含まれる」という用語は、「含まれるものとして記載されたものに限定されない」と解釈されるべきである。「有する」という用語は、「有するものとして記載されたものに限定されない」と解釈されるべきである。また、本明細書、及び添付の特許請求の範囲に記載される不定冠詞「1つの」は、「少なくとも1つ」又は「1又はそれ以上」を意味すると解釈されるべきである。
【符号の説明】
【0115】
1 EUV光生成装置
11 EUV光生成システム
3、3A、3B、3C、3D レーザ装置
4 ターゲットセンサ
5 EUV光生成制御システム
6 露光装置
2 チャンバ
21 ウィンドウ
22 レーザ集光ミラー
23 EUV集光ミラー
24 貫通孔
25 プラズマ生成領域
26 ドロップレット生成器
27 ドロップレット(ドロップレットターゲット)
28 ターゲット回収器
29 接続部
291 壁
292 中間焦点(IF)
31〜33 パルスレーザ光
340 ビームデリバリーシステム
101−1〜101−n マスタオシレータ
102、112、122、132、142 光学系
102−1〜102−4、112−1、112−3、122−1、122−3 高反射ミラー
112−2 高反射プリズム
122−2 屈折プリズム
132−1 光ファイバ
132−2 光入力部
132−3 光出力部
132−4、142−2 集光レンズ
142−1 拡散板
200、200A、200B 再生増幅器
201、208 折返しミラー
202 λ/4板
203、207 EOポッケルスセル
204、206 偏光子
205 スラブ増幅器
211、212 凹面高反射ミラー
213、214 ウィンドウ
215 増幅領域
215a、215b 放電電極
301〜303 増幅器
31a レーザ光
C1、C3 光路
C2、C22 マルチパス
L1〜Ln、LL シード光
LL1 拡散光
LL2 収束光
Rin 許容入射角度範囲
S1〜S7 増幅波長帯域
S10、S12〜S17 波長スペクトルプロファイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれシード光を出力する複数のマスタオシレータと、
前記複数のマスタオシレータから出力された複数のシード光を再生増幅し得る再生増幅器と、
前記複数のシード光を前記再生増幅器に入射し、且つ、前記複数のシード光のうち少なくとも1つを他のシード光と異なる入射角度で前記再生増幅器に入射する光学系と、
を備えるレーザ装置。
【請求項2】
前記光学系は、前記複数のシード光のうち少なくとも1つを前記再生増幅器の入射軸に対して傾いた入射角度で当該再生増幅器に入射する、請求項1記載のレーザ装置。
【請求項3】
前記光学系は、前記複数のシード光のうち少なくとも1つを前記再生増幅器の入射位置の中心から外れた位置で当該再生増幅器に入射する、請求項1記載のレーザ装置。
【請求項4】
前記光学系は、前記複数のシード光のすべてが前記再生増幅器で再生増幅され得る入射角度および入射位置で、前記複数のシード光を前記再生増幅器に入射する、請求項1記載のレーザ装置。
【請求項5】
前記光学系は、前記複数のシード光のうち少なくとも1つを前記再生増幅器へ反射する1つ以上の反射光学素子を含む、請求項1記載のレーザ装置。
【請求項6】
前記光学系は、前記複数のシード光のうち少なくとも1つを前記再生増幅器へ向けて屈折する1つ以上の屈折光学素子を含む、請求項1記載のレーザ装置。
【請求項7】
前記光学系は、前記複数のシード光のうち少なくとも1つを前記再生増幅器に向けて導波する光導波部を含む、請求項1記載のレーザ装置。
【請求項8】
前記光導波部は、光ファイバである、請求項7記載のレーザ装置。
【請求項9】
前記光学系は、前記光導波部から出射した前記複数のシード光を集光させつつ前記再生増幅器へ入射する集光光学素子をさらに含む、請求項7記載のレーザ装置。
【請求項10】
前記光学系は、前記複数のシード光を拡散する拡散素子を含む、請求項1記載のレーザ装置。
【請求項11】
前記光学系は、前記拡散素子で拡散された前記複数のシード光を集光させつつ前記再生増幅器へ入射する集光光学素子をさらに含む、請求項10記載のレーザ装置。
【請求項12】
前記再生増幅器は、
前記複数のシード光を再生増幅し得る増幅領域と、
前記複数のシード光に前記増幅領域を1往復以上通過させる光学素子と、
を含む、請求項1記載のレーザ装置。
【請求項13】
前記複数のマスタオシレータのうち少なくとも1つは、他のマスタオシレータと異なる波長帯域のシード光を出力し得る、請求項1記載のレーザ装置。
【請求項14】
前記複数のマスタオシレータのうち少なくとも1つは、他のマスタオシレータと同じ波長帯域のシード光を出力し得る、請求項1記載のレーザ装置。
【請求項15】
請求項1記載のレーザ装置と、
前記レーザ装置から出力された再生増幅後のレーザ光を増幅する1つ以上の増幅器と、
を備えるレーザシステム。
【請求項16】
請求項15記載のレーザシステムと、
前記レーザシステムから出力されたレーザ光を内部に導入するための少なくとも1つの入射口を備えるチャンバと、
前記チャンバ内の所定の領域にターゲット物質を供給するターゲット供給部と、
前記レーザ光の少なくとも一部を前記所定の領域に集光する集光光学系と、
前記チャンバ内で前記レーザ光が前記ターゲット物質に照射されることで放射する極端紫外光を集光する極端紫外集光ミラーと、
を備える、極端紫外光生成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2013−21293(P2013−21293A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−284289(P2011−284289)
【出願日】平成23年12月26日(2011.12.26)
【出願人】(300073919)ギガフォトン株式会社 (227)
【Fターム(参考)】