説明

レーザ装置

【課題】簡単な構造で光ファイバの折損を防止でき,操作性が良好なレーザ装置を提供する。
【解決手段】レーザ光源を有する装置本体2と,レーザ光源から出射されたレーザ光をレーザ光源側から先端側に伝送する光ファイバを有する導光部3とを備えたレーザ装置1において,導光部3は支持棒5に沿って支持され,支持棒5は,装置本体2側から先端側に向かうほど柔軟性が高くなる構成とした。これにより,導光部3を適切に湾曲させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,レーザ装置に関し,特に生体組織にレーザ光を照射する医療用のレーザ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ装置は,例えば歯科の治療において,歯牙の窩洞形成,歯石の除去等を行う際に用いられている。かかるレーザ装置は,レーザ光源を内蔵した装置本体を備え,装置本体には,光ファイバや配管を内蔵した細長い導光部が接続されている(例えば,特許文献1,2参照。)。導光部の先端には,レーザ光を照射するハンドピースが備えられている。歯牙の窩洞形成等を行う際には,操作者はハンドピースを把持して歯牙に近接させ,レーザ光の照射を行う。
【0003】
ところで,導光部内の光ファイバとして,例えばフッ化物系ファイバなどを用いた場合,光ファイバの曲げ剛性が弱いため,屈曲させると折損するおそれがあった。そのため,支持棒に沿って導光部を支持させることにより,適度な湾曲状態を維持し,導光部が局所的に屈曲することを防止できるようにしたものが提案されている。例えば,導光部が引っ張られると,導光部に伴って支持棒が傾斜するようにしたものがある(例えば,特許文献1参照。)。また,支持棒を複数の連接体と屈曲連接部によって構成したものが提案されている(例えば,特許文献2参照。)。この構成においては,各連接体を屈曲連接部において回転させ,支持棒を屈曲させたり延ばしたりすることができる。さらに,屈曲連接部同士は,連接体内に備えた弾性材によって連結されており,操作者が導光部から手を離すと,各連接体が弾性材の復元力により元の位置に向かって移動し,これに伴って導光部が戻るようになっている。また,連接体の端部にバランスウェイトを設け,バランスウェイトの重みにより,各連接体が復帰するようにしたものが提案されている(例えば,特許文献2参照。)。
【0004】
【特許文献1】特開平6−47054号公報
【特許文献2】特開平7−51285号公報
【0005】
しかしながら,従来のレーザ装置にあっては,屈曲連接部同士を弾性材によって連結する場合,支持棒の構造が複雑になる問題があった。また,屈曲連接部が多かったり,支持棒の構造が複雑であったりすると,支持棒が変形するときに振動が発生しやすく,振動がハンドピースに伝達して治療に悪影響を与える懸念があった。しかし,導光部や支持棒の変形の自由度をさらに高め,ハンドピースの操作性を向上させることが求められていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は,簡単な構造で光ファイバの折損を防止でき,操作性が良好なレーザ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題を解決するため,本発明によれば,レーザ光源を有する装置本体と,前記レーザ光源から出射されたレーザ光をレーザ光源側から先端側に伝送する光ファイバを有する導光部とを備えたレーザ装置であって,前記導光部を支持する支持棒を備え,前記導光部は,前記導光部又は支持棒に沿って移動可能に取り付けられた保持部材を介して前記支持棒に沿って支持され,前記支持棒は,装置本体側から先端側に向かうほど柔軟性が高くなる構成としたことを特徴とする,レーザ装置が提供される。
【0008】
この装置にあっては,前記支持棒は,装置本体側から先端側に向かう方向における柔軟性の上昇率が互いに異なる複数の柔軟性部分を有することとしても良い。前記先端側に向かうほど,柔軟性の上昇率が減少するようにしても良い。
【0009】
また,前記支持棒は,装置本体に取り付けられた第一の連接体と,前記第一の連接体に対して回転可能に取り付けられた第二の連接体とを備え,前記第一の連接体は剛体とし,前記第二の連接体は柔軟性を有し,装置本体側から先端側に向かうほど断面積が小さくなる構成にしても良い。
【0010】
さらに,前記第一の連接体に対して第二の連接体を回転させた際,前記第二の連接体を元の位置に戻すように復元力を与える復元機構を備えても良い。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば,支持棒を装置本体側から先端側に向かうほど柔軟性が高くなる構成としたことにより,支持棒を湾曲させることができる。支持棒によって導光部を支持することにより,導光部を適切に湾曲させた状態を維持でき,導光部内の光ファイバが屈曲して折損することを防止できる。また,支持棒の構造を簡単にすることができ,操作性も良好である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下,本発明の好ましい実施の形態を,歯科用のレーザ装置に基づいて説明する。図1に示すように,本実施の形態にかかるレーザ装置1は,装置本体2と,可撓性を有する細長い導光部3と,導光部3を支持する支持棒5とを備えている。装置本体2の内部には,例えば波長2.94μmのEr:YAGレーザ光を供給するレーザ光源,給水機等(図示せず)が備えられている。また,装置本体2の上面には,導光部3の先端に設けられたハンドピース6を保持するためのハンドピース保持部7,各種の操作ボタンを有する操作パネル等が備えられている。
【0013】
導光部3の基端部は,装置本体2の上面に対して縦方向に向けて取り付けられている。また,導光部3は,後述する5個の保持部材51〜55を介して支持棒5に沿って支持されている。導光部3の内部には,レーザ光を伝送する光ファイバが通されている。
【0014】
支持棒5は,装置本体2に取り付けられた第一の連接体11と,第一の連接体11の先端に対して回転可能に取り付けられた第二の連接体12とを備えている。第一の連接体11と第二の連接体12との間には,屈曲連接部13が設けられている。第一の連接体11と屈曲連接部13は剛体であり,第二の連接体12は柔軟性を有する弾性体である。なお,支持棒5全体の長さは,導光部3の長さより短くなっている。
【0015】
第一の連接体11は,装置本体2を水平面に置いたときに略鉛直方向に向かうように立設されている。第一の連接体11の基端部は,装置本体2の上面に突設された保持部15によって保持され,装置本体2に対して固定されている。保持部15及び第一の連接体11は,装置本体2の上面において導光部3の基端部より後方に配置されている。また,第一の連接体11は略円管状,即ち,基端側(装置本体2側)から先端側に向かう方向において一定の外径及び内径を有する直管状に形成されている。さらに,通常の使用時ではたわみが発生しないように剛性を備えている。第一の連接体11の材質としては,例えばSUS等の金属等を使用することが好ましい。
【0016】
図2に示すように,第一の連接体11の内側の空洞には,例えばバネなどの弾性体15,及び,弾性体15を支持する線材状の接続部材16,17が設けられている。弾性体15の一端は,接続部材16の先端部に接続され,接続部材16の基端部は第一の連接体11の基端底部に固定されている。弾性体15の他端は,接続部材17の基端部に接続され,接続部材17の先端部は後述するように屈曲連接部13に接続されている。
【0017】
図3及び図4は,屈曲連接部13の概略縦断面図を示している。屈曲連接部13は,第一の連接体11の先端部に固定された屈曲連接部本体20と,屈曲連接部本体20に対して回転可能に支持された回転部材21とを備えている。なお,屈曲連接部本体20と回転部材21は剛性を有し,例えばSUS,アルミニウム合金等の金属等によって形成されている。
【0018】
図3に示すように,屈曲連接部本体20は,互いに対向するように設けられた円板部22A,22B,回転部材21の回転中心となる軸体23,及び,回転部材21の回転角度を制限するためのストッパー24を備えている。円板部22A,22Bは,略鉛直方向に向けられており,円板部22A,22Bの間には,回転部材21を配置する隙間が設けられている。軸体23は,円板部22A,22Bに対してほぼ直交するように,略水平方向に向けて設けられ,両端部が各円板部22A,22Bの中央部に固定されている。ストッパー24は,軸体23の上方かつ後方に設けられ,両端部が各円板部22A,22Bに固定されている。
【0019】
屈曲連接部本体20の下部には,第一の連接体11を結合させる結合部25が,下方に突出するように設けられている。第一の連接体11の先端部は,結合部25の下面に開口された結合孔26に挿入されている。第一の連接体11の先端は開口になっており,円板部22A,22Bの間の隙間に連通している。
【0020】
図4に示すように,回転部材21は,略円板状に形成されており,中央部には軸体23を通す軸穴31が設けられている。また,軸穴31の上方には,ストッパー24に沿って移動可能な溝状のガイド部32が形成されている。ガイド部32は,軸穴31を中心として略円弧状に湾曲した形状をなしている。回転部材21の下部には,回転部材21の外周面から中心部に向かって溝33が形成されており,溝33の内側には,前述した接続部材17の端部を支持する支持ピン34が備えられている。支持ピン34は,軸穴31の下方かつ後方に配置されている。支持ピン34の両端部は,溝33内の両側面によって支持されている。
【0021】
回転部材21の上部外周面には,第二の連接体12を結合させるための結合部35が,上方に突出して設けられている。結合部35の上面に開口された孔36には,第二の連接体12の基端部を保持した基端保持部材37が挿入されている。基端保持部材37は,剛性を有する材質,例えばSUS等の金属等によって形成されている。
【0022】
回転部材21は,屈曲連接部本体20における円板部22A,22Bの間において,軸穴31に軸体23を通し,ガイド部32内にストッパー24を通した状態で組み込まれている。また,前述した接続部材17は,第一の連接体11の先端開口,円板部22A,22Bの間の隙間,及び,回転部材21の溝33内に通されており,先端が支持ピン34に接続されている。
【0023】
かかる構成において,回転部材21は軸体23を中心として回転可能である。回転部材21を回転させると,基端保持部材37は,回転部材21の結合部35と一体的に,略鉛直面に沿って回転する。また,ガイド部32はストッパー24に対して移動する。回転部材21の回転角度は,ガイド部32がストッパー24に対して移動可能な範囲に制限される。即ち,ガイド部32の上端かつ前端の端部32aにストッパー24が当接した初期状態(図4)と,ガイド部32の下端かつ後端の端部32bにストッパー24が当接した最大回転状態(図5において実線)との間でのみ回転部材21を回転させることができる。図4に示すように,初期状態では,回転部材21の結合部35,基端保持部材37及び第二の連接体12の基端部は,鉛直方向において軸体23の上方に配置される。また,第二の連接体12の基端部が第一の連接体11と同軸上に配置される。即ち,第一の連接体12の中心軸と第二の連接体12の基端部における中心軸が,ほぼ同じ直線上に並んだ状態となる。図5に示すように,最大回転状態では,結合部35,基端保持部材37及び第二の連接体12の基端部は,軸体23より前方に移動する。第二の連接体12の基端部は,第一の連接体12に対して前方かつ上方に向かって傾斜した状態となる。最大回転状態における第一の連接体12に対する第二の連接体12の基端部の傾斜角度は,90°以下,例えば約35°程度にしても良い。このように,基端保持部材37と第二の連接体12の基端部は,回転部材21の回転に伴い,ストッパー24及びガイド部32により制限された範囲において,軸体23を中心として略鉛直面内において回転可能であり,軸体23より下方や後方には移動しないようになっている。
【0024】
また,初期状態(図4)においては,支持ピン34は軸体23より後方かつ下方に位置し,接続部材17に接続された弾性体15は,適度に伸張している。従って,接続部材17には,接続部材17を下方に引っ張る弾性体15の弾性力が働いており,回転部材21には,接続部材17を介して,支持ピン34を下方に移動させようとする力が働く。これにより,回転部材21は初期状態に維持される。一方,ガイド部32をストッパー24に対して前方(図4においては左方)に移動させるようにして,回転部材21を前方に回転させると,支持ピン34が後方かつ上方に移動して,接続部材17が上方に引っ張られる。すると,接続部材17によって弾性体15が引っ張られてさらに伸張し,弾性体15の弾性力が強くなる。従って,支持ピン34を下方に移動させようとする力,即ち,回転部材21を初期状態に戻そうとする力が強くなる。そして,回転部材21を前方に回転させるモーメントが弱まると,弾性体15の弾性力により,接続部材17が下方に引っ張られ,回転部材21が初期状態(図4)に自動的に戻るようになっている。即ち,弾性体15の弾性力は,第二の連接体12の基端部を元の初期状態における位置に戻すように働く復元力として作用し,弾性体15及び接続部材16,17によって,かかる復元力を与える復元機構40が構成されている。
【0025】
図6に示す第二の連接体12は,弾性を有する材質によって形成され,断面形状が略円形をなす細長い棒状をなし,また,基端側から先端側に向かうほど断面積が小さくなり,柔軟性が高くなる形状になっている。第二の連接体12の基端部は,前述した基端保持部材37に取り付けられている。さらに,第二の連接体12は,基端側から先端側に向かう方向における柔軟性の上昇率が互いに異なる2つの柔軟性部分12a,12bを有する。柔軟性部分12aは,基端保持部材37から長さL1の部分であり,柔軟性部分12bは,柔軟性部分12aとの境界12cから先端までの間の部分である。各柔軟性部分12a,12bは,それぞれ基端保持部材37からの距離に比例して外径が小さくなるように形成されているが,柔軟性部分12bにおける外径の減少率は,柔軟性部分12aにおける外径の減少率より,小さくなっている。即ち,柔軟性部分12bの基端側から先端側に向かう方向における柔軟性の上昇率は,柔軟性部分12aの基端側から先端側に向かう方向における柔軟性の上昇率より,小さくなっている。なお,第二の連接体12は,例えばグラスファイバ等によって形成しても良い。また,例えばグラスファイバとカーボンファイバを混合して形成しても良い。
【0026】
図1に示すように,第一の連接体11には,導光部3を保持する第一の保持部材51が取り付けられている。また,第二の連接体12の基端側には,導光部3に沿って移動可能に取り付けられた第二の保持部材52が取り付けられている。導光部3には,第二の連接体12に沿って移動可能に取り付けられた第三,第四の保持部材53,54が取り付けられている。第三の保持部材53は,第二の保持部材52よりも先端側に設けられており,第四の保持部材54は,第三の保持部材53よりもさらに先端側に設けられている。そして,第二の連接体12の先端部には,導光部3に沿って移動可能に取り付けられた第五の保持部材55が取り付けられている。
【0027】
図7に示すように,第一の保持部材51は,第一の連接体11を通して保持する保持穴61,及び,導光部3を通して保持する保持穴62を備えている。保持穴61,62の間には,所定の間隔が形成されている。第一の連接体11,導光部3は,それぞれ保持穴61,62に固定されている。従って,導光部3は,第一の保持部材51を介して第一の連接体11に対して固定支持され,第一の連接体11の前方において,第一の連接体11から離隔させた状態で,第一の連接体11に沿って縦方向に向けて支持されている。なお,第一の保持部材51の材質としては,例えばアセタール・コポリマー(POM)等の樹脂等を使用しても良い。
【0028】
図8に示すように,第二の保持部材52は,基端保持部材37を通して保持する保持穴65,及び,導光部3を通して保持する保持穴66を備えている。保持穴65,66の間には,所定の間隔が形成されている。基端保持部材37は保持穴65に固定されている。保持穴66は長孔状に形成されており,長手方向を前後方向に向けて備えられている。保持穴66の幅は,導光部3の外径より大きく形成されている。従って,導光部3は保持穴66内で前後方向,軸方向等に移動可能になっている。なお,第二の保持部材52の材質としては,例えばアセタール・コポリマー(POM)等の樹脂等を使用しても良い。
【0029】
図9に示すように,第三の保持部材53は,第二の連接体12を保持する保持筒71と,導光部3及び保持筒71を保持する接続具72とを備えている。保持筒71は,略円筒状に形成されている。保持筒71の内径は,第二の保持部材52よりも先端側に移動した部分における第二の連接体12の外径より,大きく形成されている。接続具72は,断面が略S字形状をなし,一方の湾曲部72aの内側には保持筒71が固定され,他方の湾曲部72bの内側には導光部3が固定されている。第二の連接体12は保持筒71の内側に通されている。従って,保持筒71は第二の連接体12に沿って移動可能になっている。保持筒71の材質としては,例えばフッ素樹脂等を使用しても良い。接続具72の材質としては,例えばSUS等の金属等を用いても良い。なお,第四の保持部材54は,第三の保持部材53とほぼ同様の構成であるため,説明を省略する。
【0030】
図10に示すように,第五の保持部材55は,第二の連接体12の先端に被せるように固定された保持部材本体75と,導光部3を保持する円環状のリング76とを備えている。リング76は,保持部材本体75の外周面に固定されている。リング76の内径は,導光部3の外径より大きく形成されている。導光部3はリング76に通され,リング76に対して軸方向に移動可能に保持されている。保持部材本体75の材質としては,例えばアセタール・コポリマー(POM)等の樹脂等を使用しても良い。リング76の材質としては,例えばSUS等の金属等を用いても良い。
【0031】
導光部3は,上述した第一〜第五の保持部材51〜55によって,支持棒5に沿って支持されている。また,第二の保持部材52,及び,第五の保持部材55は,第二の連接体12に対して固定されているが,導光部3に沿って移動可能である。その他の第三の保持部材53,及び,第四の保持部材54は,導光部3に対して固定されているが,第二の連接体12に沿って移動可能である。従って,導光部3は第二の連接体12に沿って移動できるように支持されている。
【0032】
なお,第三の保持部材53,第四の保持部材54,第五の保持部材55において,第二の連接体12と導光部3との間の距離は,なるべく小さくすることが好ましい。即ち,第二の連接体12の基端部を除く大部分と導光部3とは,なるべく近接させることが好ましい。これにより,図11において実線で示したように,ハンドピース6をハンドピース保持部7に保持させたとき,レーザ装置1の高さを抑え,レーザ装置1をコンパクトにすることができる。
【0033】
次に,レーザ装置1を扱う方法について説明する。先ず,レーザ装置1を使用しないときは,図11において実線で示すように,ハンドピース6をハンドピース保持部7に保持させておく。この状態では,屈曲連接部13は,図4に示す初期状態になっている。接続部材17は弾性体15の弾性力により下方に引っ張られている。従って,回転部材21には,回転部材21を後方に回転させようとする力が働いているが,ガイド部32の端部32aがストッパー24に当接することにより,回転部材21が後方に回転しないようになっている。また,第二の連接体12は導光部3の重さによって前方に向かってたわむ。導光部3は,第一の連接体11の前方,第二の連接体12の前方から下方に沿って支持され,上に向かって凸状に湾曲し,第二の連接体12の先端部からハンドピース保持部7に向かって垂れ下がる。
【0034】
なお,第二の連接体12は,先端側ほど断面積が小さく柔軟なので大きく変形するが,基端側は断面積が大きく変形しにくいので,基端側では第一の連接体11とほぼ同軸上に立設した状態になる。この場合,第二の連接体12の基端側が倒れすぎず,第二の連接体12の先端側及び導光部3を高い位置に持ち上げ,装置本体2の上方にバランス良く確実に支持することができる。また,回転部材21には,基端保持部材37,第二の連接体12,導光部3,第一〜第五の保持部材51〜55等の重みによって,回転部材21を前方に回転させようとする力が働くことが考えられるが,第二の連接体12の基端側がたわみすぎず,また,弾性体15の弾性力が働いていることにより,回転部材21が前方に回転することを防止できる。従って,支持棒5が屈曲することを防止して,導光部3を装置本体2の上方にコンパクトに支持することができる。また,柔軟性部分12bの基端側から先端側に向かう方向における柔軟性の上昇率は,柔軟性部分12aの基端側から先端側に向かう方向における柔軟性の上昇率より小さくなっていることにより,柔軟性部分12bが過剰にたわむことを防止できる。これにより,導光部3を柔軟性部分12bに沿って下方に緩やかに湾曲させることができる。
【0035】
レーザ光を用いた治療を行う際,操作者は,ハンドピース6をハンドピース保持部7から取り外し,導光部3と第二の連接体12を引きながら,ハンドピース6を患部に近接させる。そして,ハンドピース6からレーザ光を照射し,歯牙の窩洞形成,歯石の除去等の治療を行う。装置本体2内のレーザ光源から出射されたレーザ光は,導光部3内の光ファイバによって,レーザ光源側から先端側に伝送され,ハンドピース6の先端から出射される。
【0036】
図11には,ハンドピース6を前方に引っ張った状態(一点差線)が示されている。導光部3は,ハンドピース6に引っ張られ変形する。第二の連接体12も,導光部3に引っ張られて変形する。また,導光部3,第二の連接体12が前方に引っ張られることにより,屈曲連接部13の回転部材21を前方に回転させようとするモーメントが大きくなる。回転部材21が前方に回転すると,結合部35,基端保持部材37及び第二の連接体12の基端部が,前方に傾斜する。こうして,第二の連接体12を第一の連接体11に対して回転させることにより,導光部3をさらに前方に移動させることができ,ハンドピース6がより遠くまで届くようになる。回転部材21は最大回転状態(図5)まで回転させることができる。
【0037】
前方に移動したときも,導光部3は,第二の連接体12に沿って上に向かって凸状に湾曲する。また,第二の連接体12の先端から操作者によって把持されたハンドピース6までの間の部分も,適度に湾曲した状態にすることができる。従って,導光部3を引っ張ったときも,導光部3を局部的に屈曲させることなく,適度に湾曲させることができる。
【0038】
なお,第二の連接体12の先端は,治療中のハンドピース6の高さに対して,下がりすぎないようにすることが好ましい。即ち,第二の連接体12の先端からハンドピース6までの間において,導光部3のたるみが大きくなりすぎないようにすることが好ましい。そうすれば,ハンドピース6を持つ操作者の手にかかる負荷を小さくすることができ,操作性が向上する。第二の連接体12の先端位置は,回転部材21の回転角度の範囲,弾性体15の弾性,第二の連接体12の弾性や長さ等を適切に設計することで調整できる。
【0039】
また,導光部3は,第二〜第五の保持部材52〜55を介して支持されることにより,第二の連接体12に沿った軸方向に移動できるようになっている。そのため,導光部3及び第二の連接体12が変形するとき,導光部3は,第二の連接体12に沿って移動しながら円滑に変形することができる。第二の連接体12も,導光部3に沿って移動しながら,円滑に変形することができる。従って,ハンドピース6を円滑に移動させることができ,操作性が良好である。また,第一の保持部材51,第二の保持部材52においては,導光部3が第一の連接体11,第二の連接体12から適度に離れた位置に保持されており,さらに,第二の保持部材52においては,導光部3が第二の連接体12に対して前後に移動可能になっているため,屈曲連接部13において第二の連接体12が回転しても,導光部3は屈曲連接部13から離れ,緩やかに湾曲することができる。従って,導光部3が第一の保持部材51と第二の保持部材52との間で屈曲することを防止できる。
【0040】
レーザ光による治療が終了したら,また,中断するときは,操作者は,ハンドピース6をハンドピース保持部7に戻す。ハンドピース6を戻すとき,第二の連接体12は,第二の連接体12の弾性力によって,後方かつ上方に戻ろうとする。導光部3は,第二の連接体12により後方かつ上方に引っ張られる。また,回転部材21が前方に回転していた場合においては,弾性体15の弾性力により,接続部材17を下方に引っ張る力が働くので,回転部材21は接続部材17に引かれて後方へ回転し,初期状態(図4)に戻る。即ち,弾性体15の弾性力を利用することで,第二の連接体12の基端部を,元の位置に容易に復帰させることができる。従って,第二の連接体12,導光部3を元の待機中の姿勢に容易に戻すことができる。また,このようにハンドピース6を戻すときも,第二の連接体12,導光部3は互いに沿って移動することができるので,第二の連接体12,導光部3を元の姿勢に円滑に戻すことができる。
【0041】
また,図11において二点鎖線で示すように,ハンドピース6が操作者によって保持されず,ハンドピース保持部7にも保持されていない状態のとき,導光部3が支持棒5に支持されながら,装置本体2の前方に垂れ下がり,ハンドピース6が装置本体2にも床にも接触することなく,装置本体2の前方に宙吊りになった状態で,釣り合いがとれるようにしても良い。このようにすると,例えば操作者がハンドピース6をハンドピース保持部7に戻すことを怠った場合に,ハンドピース6が装置本体2や床に接触することを防止できる。また,例えば治療中に操作者が不意にハンドピース6から手を離した場合にも,ハンドピース6が床に落下することを防止できる。従って,ハンドピース6の汚染や破損を抑止できる。なお,ハンドピース6の落下防止という観点では,第二の連接体12の先端からハンドピース6までの間の長さは短いほうが良いが,操作性を良好にするためには,適切な長さを確保することが好ましい。
【0042】
かかるレーザ装置1によれば,第二の連接体12において,柔軟性が基端側から先端側に向かうほど高くなるようにしたことにより,第二の連接体12を適度に湾曲させることができる。また,第二の連接体12及び導光部3を円滑に変形させることができ,操作性が良好である。支持棒5によって導光部3を支持することにより,治療中も非使用時も,導光部3を緩やかに湾曲させた状態を維持でき,導光部3内の光ファイバが局所的に屈曲して折損することを防止できる。支持棒3の構造は,第一の連接体11,第二の連接体12,屈曲連接部13からなる簡単な構造であり,装置本体2をコンパクトにすることができる。また,第二の連接体12の柔軟性を利用して支持部5を変形させるので,支持部5を変形させる際に振動が発生するおそれを軽減することができる。従って,振動がハンドピースに伝達して治療に悪影響を与えるおそれが少ない。
【0043】
以上,本発明にかかる実施の形態の好適な例を示したが,本発明はここで説明した形態に限定されない。例えば,本実施の形態では,歯科用のレーザ装置1について説明したが,本発明は歯科用の装置に限定されず,また,ヒトの歯牙に対する窩洞形成,ヒトの歯石除去等の治療を行うための装置に限定されない。本発明は,レーザ光を照射することにより,各種の生体組織に対して蒸散,切開,凝固,止血など様々な処置を行うレーザ装置に適用することができる。例えば外科,眼科,その他の様々な分野において使用されるレーザ装置に適用可能である。また,Er:YAGレーザ光を用いるレーザ装置に限定されず,例えばCOレーザ光等を用いるものであっても良い。
【0044】
また,本実施の形態では,装置本体2の上面に対して導光部3の基端部が縦方向に取り付けられた装置に基づいて説明したが,本発明はかかる構造の装置には限定されない。例えば,装置本体2に対して導光部3の基端部が横方向に取り付けられた装置に本発明を適用することもできる。
【0045】
また,第一の連接体11,第二の連接体12の各形状は,円管状,断面略円形状には限定されない。例えば,第一の連接体11,第二の連接体12の各形状を,楕円管状,断面略楕円状にしても良い。基端側から先端側に向かう方向における柔軟性部分12a,12bの外径の減少率は,基端側からの距離に比例してそれぞれ一定としたが,かかる減少率は,基端側からの距離に比例させなくても良い。また,柔軟性部分12bの外径は,基端側から先端側に向かう方向において減少させず,一定にしても良い。
【0046】
本実施の形態では,第二の連接体12において,基端側から先端側に向かうほど断面積が小さくなるようにすることで,基端側から先端側に向かうほど柔軟性が高くなるようにしたが,例えば基端側と先端側とで材質,密度,断面形状等を変えることで,基端側から先端側に向かうほど断面二次モーメントの値が小さくなるように,即ち,柔軟性が高くなるようにすることもできる。
【0047】
本実施の形態では,第二の連接体12は,基端側から先端側に向かう方向における柔軟性の上昇率が互いに異なる2つの柔軟性部分12a,12bを有することとしたが,このような柔軟性部分の数は,3以上であっても良い。また,第二の連接体12に複数の柔軟性部分を設けず,第二の連接体12の全長に渡って,基端側から先端側に向かう方向における柔軟性の上昇率を一定にしても良い。
【0048】
支持棒5は第一の連接体11,第二の連接体12,屈曲連接部13からなる構造としたが,屈曲連接部の個数は,実施の形態に示した1個だけに限定されず,また,連接体の個数も2個に限定されない。例えば,屈曲連接部13を設けず,支持棒5を一つの棒状の部材とし,支持棒5の全部を,基端側(装置本体2側)から先端側に向かうほど柔軟性が高くなる構成にしても良い。この場合,支持棒5の構造を簡略化することができる。また,支持棒5に3以上の連接体を備え,各連接体同士の間に屈曲連接部を設け,合計で2以上の屈曲連接部を備えても良い。第一の連接体11が装置本体2に対して傾斜できるようにしても良い。
【0049】
本実施の形態では,第二の保持部材52,及び,第五の保持部材55は,第二の連接体12に対して固定され,導光部3に沿って移動可能であり,第三の保持部材53,及び,第四の保持部材54は,導光部3に対して固定され,第二の連接体12に沿って移動可能であるとしたが,保持部材の形態はかかるものに限定されない。例えば,第三の保持部材53,第四の保持部材54は,第二の連接体12に対して固定し,導光部3に沿って移動可能にしても良い。即ち,例えば,第三の保持部材53,及び,第四の保持部材54において,湾曲部72bに第二の連接体12を固定し,保持筒71に導光部3を通して移動可能にしても良い。また,第二の連接体12にも導光部3にも固定された保持部材を設けても良い。第一の保持部材51を導光部3又は第一の連接体11に対して移動可能にしても良い。さらに,導光部3は,5個の保持部材51〜55を介して支持棒5に沿って支持されていることとしたが,導光部3と支持棒5とを連結する保持部材の個数は,5個に限定されない。各保持部材を設ける位置や形状も,実施の形態に示したものに限定されない。
【0050】
本実施の形態においては,第二の連接体12に復元力を与える復元機構として,弾性体15及び接続部材16,17からなる構成を例示したが,復元機構はかかるものに限定されない。例えば,弾性体15及び接続部材16,17に代えて,伸縮性を有するゴム製の紐状弾性材を備え,この紐状弾性材の両端を,第一の連接体11の基端底部,屈曲連接部13の支持ピン34にそれぞれ連結し,回転部材21の初期状態において伸張した状態にする。この場合も,紐状弾性材の弾性力により,第二の連接体12に復元力を与えることができる。また,接続部材117の下端に,弾性体15及び接続部材16に代えて,錘を取り付け,この錘の荷重を利用して,第二の連接体12が復元するようにしても良い。さらにまた,復元機構を第一の連接体11の内部でなく,外側に設けることもできる。
【実施例】
【0051】
本発明者らは,実施の形態に示したレーザ装置1を試作し,評価を行った。第一の連接体11の長さは約350mm,外径は約10mmとした。また,第二の連接体12において,基端保持部材37から先端までの全長を約750mmとし,柔軟性部分12aの長さL1=約500mm,柔軟性部分12bの長さL2=約250mm,即ち,L1:L2=2:1とした。各柔軟性部分12a,12bは,それぞれ基端側からの距離に比例して外径が小さくなるようにした。柔軟性部分12aの基端の外径は約5mm,境界12cにおける外径は約2.2mm,柔軟性部分12bの先端の外径は約2mmとした。即ち,柔軟性部分12aの基端側から先端側に向かう方向における外径の減少率は約0.56%,柔軟性部分12bの基端側から先端側に向かう方向における外径の減少率は約0.08%とした。第二の連接体12の材質にはグラスファイバを用いた。屈曲連接部13については,最大回転状態での第一の連接体12に対する第二の連接体12の基端部及び基端保持部材37の傾斜角度を,約35°とした。その結果,本発明の効果が良好に得られることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は,例えば歯科治療,生体組織の切開等を行う医療用のレーザ装置に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】レーザ装置の概略を示した斜視図である。
【図2】第一の連接体の縦断面図である。
【図3】屈曲連接部の概略縦断面図である。
【図4】図3におけるA−A線による概略縦断面図である。
【図5】回転部材の最大回転状態を示した概略縦断面図である。
【図6】第二の連接体を示した説明図である。
【図7】第一の保持部材の斜視図である。
【図8】第二の保持部材の斜視図である。
【図9】第三の保持部材の斜視図である。
【図10】第五の保持部材の斜視図である。
【図11】ハンドピースをハンドピース保持部に保持させた状態,ハンドピースを引っ張った状態,及び,ハンドピースを自然に垂下させた状態を示した側面図である。
【符号の説明】
【0054】
1 レーザ装置
2 装置本体
3 導光部
5 支持棒
6 ハンドピース
7 ハンドピース保持部
11 第一の連接体
12 第二の連接体
13 屈曲連接部
15 弾性体
16,17 接続部材
21 回転部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光源を有する装置本体と,前記レーザ光源から出射されたレーザ光をレーザ光源側から先端側に伝送する光ファイバを有する導光部とを備えたレーザ装置であって,
前記導光部を支持する支持棒を備え,
前記導光部は,前記導光部又は支持棒に沿って移動可能に取り付けられた保持部材を介して前記支持棒に沿って支持され,
前記支持棒は,装置本体側から先端側に向かうほど柔軟性が高くなる構成としたことを特徴とする,レーザ装置。
【請求項2】
前記支持棒は,装置本体側から先端側に向かう方向における柔軟性の上昇率が互いに異なる複数の柔軟性部分を有することを特徴とする,請求項1に記載のレーザ装置。
【請求項3】
前記先端側に向かうほど,柔軟性の上昇率が減少することを特徴とする,請求項2に記載のレーザ装置。
【請求項4】
前記支持棒は,装置本体に取り付けられた第一の連接体と,前記第一の連接体に対して回転可能に取り付けられた第二の連接体とを備え,
前記第一の連接体は剛体とし,
前記第二の連接体は柔軟性を有し,装置本体側から先端側に向かうほど断面積が小さくなる構成としたことを特徴とする,請求項1,2又は3に記載のレーザ装置。
【請求項5】
前記第一の連接体に対して第二の連接体を回転させた際,前記第二の連接体を元の位置に戻すように復元力を与える復元機構を備えたことを特徴とする,請求項4に記載のレーザ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−254986(P2006−254986A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−73410(P2005−73410)
【出願日】平成17年3月15日(2005.3.15)
【出願人】(505095774)HOYAフォトニクス株式会社 (1)
【Fターム(参考)】