説明

レーザ装置

【課題】デジタル回路から発生するノイズがレーザモジュールに影響を与えることにより、レーザモジュールの出力レーザ光のスペクトル線幅が増大すること。
【解決手段】レーザモジュールと、レーザモジュールを駆動するアナログ回路と、レーザモジュールのレーザ出力を制御するデジタル回路と、アナログ回路およびデジタル回路が実装され、レーザモジュールに接続される基板とを備え、基板は、基板内においてアナログ回路に対向して設けられるアナログ用グランドパターンと、基板内においてデジタル回路に対向して設けられるデジタル用グランドパターンと、基板内に設けられ、レーザモジュールに接続されるレーザ用グランドパターンとを有するレーザ装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ装置に関する。特に、複数の半導体レーザ素子を有するレーザモジュールと、レーザモジュールを駆動するアナログ回路と、レーザ出力を制御するデジタル回路とを搭載して出力レーザ光の波長を制御する波長可変半導体レーザ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の半導体レーザ素子を有するレーザモジュールを備える波長可変半導体レーザ装置が知られている(特許文献1)。波長可変半導体レーザ装置は、レーザモジュールの他に、レーザモジュールを駆動するアナログ回路と、レーザ出力を制御するデジタル回路とを備える。
[特許文献]
[特許文献1] 特開2007−142110号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
高速伝送方式において、光送受信機の光源として使用されるレーザ装置は、出力レーザ光のスペクトル線幅が狭いことが求められる。しかし、回路から発生するノイズの影響により、レーザモジュールの出力レーザ光のスペクトル線幅を狭くするのが難しかった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の態様においては、レーザモジュールと、レーザモジュールを駆動するアナログ回路と、レーザモジュールのレーザ出力を制御するデジタル回路と、アナログ回路およびデジタル回路が実装され、レーザモジュールに接続される基板とを備え、基板は、基板内においてアナログ回路に対向して設けられるアナログ用グランドパターンと、基板内においてデジタル回路に対向して設けられるデジタル用グランドパターンと、基板内に設けられ、レーザモジュールに接続されるレーザ用グランドパターンとを有するレーザ装置を提供する。
【0005】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るレーザ装置の構成を示す。
【図2】第1の実施形態に係るレーザ装置の基板の分解斜視図を示す。
【図3】第1の実施形態に係るレーザモジュールの構成を示す。
【図4】図3のレーザモジュールの側面図を示す。
【図5】第1の実施形態に係るレーザ装置を制御する方法を示す。
【図6】第1の実施形態及び比較例に係るレーザ装置の出力レーザ光のスペクトル線幅を示す。
【図7】本発明の第2の実施形態に係るレーザ装置の基板の分解斜視図を示す。
【図8】本発明の第3の実施形態に係るレーザ装置の基板の分解斜視図を示す。
【図9】本発明の第4の実施形態に係るレーザ装置の基板の分解斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0008】
図1は、本発明の第1の実施形態に係るレーザ装置100の構成を示す。図1(a)はレーザ装置100の平面図を示す。図1(b)は、図1(a)のb−b'線における断面から観察したレーザ装置100の側面図を示す。
【0009】
レーザ装置100は、光送受信機等に搭載され、指定された波長帯域のレーザ光を出力する。レーザ装置100は、基板160と、レーザモジュール110と、光ファイバ138と、アナログ回路140と、デジタル回路150と、及び基台168とを備える。
【0010】
基板160は、アナログ回路及びデジタル回路を実装し、レーザモジュールに接続される。基板160は、これらの部材を電気的に接続するための配線が面上に形成される配線基板である。基板160は、内部にレーザ用グランドパターン、デジタル用グランドパターン、アナログ用グランドパターン、及び共通グランドパターンを有する。また、基板160は、レーザモジュール110を貫通する矩形の貫通孔182を有する。貫通孔182は、基板160の内側でなく、縁に形成されてもよい。その場合は、基板160はロの字型ではなく、コの字型になる。
【0011】
レーザモジュール110は、貫通孔182の内部に配置され、指定された波長のレーザ光を出力する。レーザモジュール110は、複数の半導体レーザ素子が形成されたレーザチップを備え、指定された波長と対応する半導体レーザ素子からレーザ光を出力する。レーザモジュール110の詳細な構成については後述する。光ファイバ138は、レーザチップから出射されたレーザ光を伝播する。
【0012】
レーザモジュール110は、複数の端子154を有し、当該端子154を介して基板160の上面における貫通孔182の辺に沿って複数設けられた基板側の端子に電気的に接続される。また、複数の端子154の一部は、レーザモジュール110内で、複数の半導体レーザ素子にそれぞれ電気的に接続されている。
【0013】
複数の端子154の一部は、複数の半導体レーザ素子のグランド電極に電気的に接続されるレーザグランド用端子であってよい。複数の端子154の一部は、レーザモジュール内の温度調節素子、強度モニタ、波長モニタ、及び温度モニタ等の光電気部品と電気的に接続されてよい。
【0014】
アナログ回路140は、レーザモジュール110に電気的に接続され、レーザモジュール110を駆動する。アナログ回路140は、レーザモジュール110内の半導体レーザ素子に駆動電流及び/又は駆動電圧を供給する。
【0015】
デジタル回路150は、アナログ回路140に電気的に接続され、レーザモジュール110のレーザ出力を制御する。デジタル回路150は、高周波で動作するIC等のデバイスを含むので、ノイズを発生する。このため、デジタル回路150は、アナログ回路140と比較して、レーザモジュール110から離れた位置に配置される。
【0016】
基台168は、基板160の貫通孔182の下に設けられ、レーザモジュール110及び基板160を搭載する。基台168は、レーザモジュール110内に設けられた温度調整素子のヒートシンクとして機能する。
【0017】
図2は、第1の実施形態に係るレーザ装置の基板160の分解斜視図を示す。基板160は、表面層162、分離グランド層164、及び共通グランド層166を有する。
【0018】
表面層162は、基板160の表面に配置され、アナログ回路140及びデジタル回路150を搭載する絶縁層である。表面層162は、絶縁樹脂等から形成される。表面層162には、導電性ビアホール184、186、及び188が形成される。
【0019】
導電性ビアホール184は、表面層162上のデジタル回路150が搭載される位置に形成される。導電性ビアホール184は、デジタル回路150のグランド端子と接続される。
【0020】
導電性ビアホール186は、表面層162上のアナログ回路140が搭載される位置に形成される。導電性ビアホール186は、アナログ回路140のグランド端子と接続される。
【0021】
導電性ビアホール188は、表面層162上のレーザモジュール110の近傍に形成される。導電性ビアホール188は、端子154のレーザグランド用端子と電気的に接続される。
【0022】
分離グランド層164は、基板160内において表面層162の下面に設けられ、複数のグランドパターンにより、レーザ装置100のレーザモジュール110、アナログ回路140、デジタル回路150ごとの基準電位を等しくする。分離グランド層164は、絶縁層と、絶縁層上に設けられたレーザ用グランドパターン170、一例として、アナログ用グランドパターン174、及びデジタル用グランドパターン172を有する。絶縁層は、絶縁樹脂等から形成される。
【0023】
レーザ用グランドパターン170は、基板160内における貫通孔182の囲む領域に設けられ、導電性ビアホール188を介して、レーザモジュール110に電気的に接続される。レーザ用グランドパターン170は、単一の導電性ビアホール194が形成され、当該導電性ビアホール194を介して、共通グランドパターン180に電気的に接続される。第1の実施形態において、レーザ用グランドパターン170は、貫通孔182の囲むロの字型形状であるが、これに代えて、1箇所又は複数箇所に切れ目が入ったロの字型形状(Cの字に近い形状)であってもよい。一例として、レーザ用グランドパターン170は、貫通孔182におけるレーザ出力方向と平行な辺と隣接するパターン部分の切れ目を有してもよい。この切れ目は、当該辺上の中心付近に設けてもよい。
【0024】
導電性ビアホール194は、デジタル回路150からのノイズが伝達されにくい位置に配置される。例えば、導電性ビアホール194は、レーザ用グランドパターン170上において、デジタル回路150から離れた位置に配置される。
【0025】
アナログ用グランドパターン174は、基板160内においてアナログ回路140に対向して設けられ、導電性ビアホール186を介して、アナログ回路140と電気的に接続される。アナログ用グランドパターン174には、1つ以上の導電性ビアホール192が形成され、当該導電性ビアホール192を介して、共通グランドパターン180に電気的に接続される。
【0026】
デジタル用グランドパターン172は、基板160内においてデジタル回路150に対向して設けられ、導電性ビアホール184を介して、デジタル回路150と電気的に接続される。デジタル用グランドパターン172には、1つ以上の導電性ビアホール190が形成され、当該導電性ビアホール190を介して、共通グランドパターン180に電気的に接続される。これに代えて、デジタル用グランドパターン172は、共通グランドパターン180と電気的に分離されていてもよい。
【0027】
共通グランド層166は、基板160内において分離グランド層164の下面に設けられ、レーザ装置100の回路全体の基準電位を等しくする。共通グランド層166は、絶縁層と、絶縁層上に設けられた共通グランドパターン180を有する。絶縁層は、絶縁樹脂等から形成される。
【0028】
共通グランドパターン180は、分離グランド層164の各グランドパターンに対向して設けられ、導電性ビアホール190、192、及び194を介して、アナログ用グランドパターン174、デジタル用グランドパターン172、及びレーザ用グランドパターン170のそれぞれに電気的に接続される。また、共通グランドパターン180は、接地電位に接続される。
【0029】
共通グランドパターン180は、基板160内においてアナログ用グランドパターン174、デジタル用グランドパターン172、及びレーザ用グランドパターン170とは異なる層に設けられる。例えば、共通グランドパターン180は、レーザモジュール110が接続される基板160面に対してアナログ用グランドパターン174及びレーザ用グランドパターン170より離れた層に設けられる。
【0030】
ここで、共通グランドパターン180とデジタル用グランドパターン172が電気的に分離されている場合は、デジタル用グランドパターン172は、共通グランドパターン180と同じ層に形成されてもよい。
【0031】
共通グランドパターン180は、第1グランドパターン171、第2グランドパターン175、第3グランドパターン173、接続部176、及び接続部178を有する。第1グランドパターン171は、レーザ用グランドパターン170と略同一形状であり、レーザ用グランドパターン170と対向する。第2グランドパターン175は、アナログ用グランドパターン174と略同一形状であり、アナログ用グランドパターン174と対向する。第3グランドパターン173は、デジタル用グランドパターン172と略同一形状であり、デジタル用グランドパターン172と対向する。
【0032】
接続部176は、第1グランドパターン171と第2グランドパターン175とを電気的に接続するグランドパターンである。接続部178は、第2グランドパターン175と第3グランドパターン173とを電気的に接続するグランドパターンである。
【0033】
このように、図2で示したレーザ装置100のレーザ用グランドパターン170と、デジタル用グランドパターン172は、分離グランド層164内において、電気的に分離されて、それぞれ導電性ビアホール190、192、及び194を介して共通グランドパターンに接続される。従って、デジタル回路150から生じたノイズが、分離グランド層164内を伝播して、レーザモジュール110に入力されにくくなる。
【0034】
また、第1の実施形態に係るレーザ装置100においては、デジタル用グランドパターン172及びレーザ用グランドパターン170の間にアナログ用グランドパターン174を配置し、かつレーザ用グランドパターン170とアナログ用グランドパターン174が電気的に分離されているので、レーザモジュール110に、デジタル回路150で発生したノイズが入力されにくい。従って、図2で示したレーザ装置100は、デジタル回路150で発生するノイズの影響を低減させて、スペクトル線幅の狭いレーザ光を出力することができる。
【0035】
図3は、第1の実施形態に係るレーザモジュール110の構成を示す。図4は、図3のレーザモジュール110の側面図を示す。
【0036】
レーザモジュール110は、レーザチップ112と、温度モニタ128と、レーザキャリア130と、コリメートレンズ114と、ビームスプリッタ116と、強度モニタ118と、エタロンフィルタ120と、波長モニタ122と、光アイソレータ124と、集光レンズ126と、筐体136と、ベースプレート132と、温度調整素子134とを備える。
【0037】
レーザチップ112は、複数の半導体レーザ素子を搭載して、搭載した複数の半導体レーザ素子の1つからレーザ光を出力する。温度モニタ128は、レーザチップ112の近傍に配置され、半導体レーザ素子の周囲の温度を検出する。温度モニタ128は、検出した結果を、デジタル回路150内のMPUに送信してもよい。温度モニタ128は、例えばサーミスタである。レーザキャリア130は、レーザチップ112及び温度モニタ128を搭載する。
【0038】
コリメートレンズ114は、レーザチップ112が出射するレーザ光の光路においてレーザチップ112の下流側に配置され、レーザチップ112が出力したレーザ光を平行光に変換する。ビームスプリッタ116は、レーザチップ112が出射するレーザ光の光路においてコリメートレンズ114の下流側に配置され、レーザ光の一部を反射して、残りを透過する。
【0039】
強度モニタ118は、ビームスプリッタ116が反射した光の一部を受光して、レーザ光の強度を検出するフォトダイオードである。強度モニタ118は、検出した強度に応じた電気信号を、デジタル回路150内のMPUに送信する。
【0040】
エタロンフィルタ120は、ビームスプリッタ116が反射した光の一部のうち、一定波長間隔ことに周期的に現れる通過波長帯域に含まれる光を通過させる。エタロンフィルタ120の通過波長帯域は、エタロンフィルタ120の温度により変化する。
【0041】
波長モニタ122は、エタロンフィルタ120を通過した光を受光して、レーザ光のうちエタロンフィルタ120を通過する波長成分の強度を検出するフォトダイオードである。波長モニタ122は、検出した強度に応じた電気信号を、デジタル回路150内のMPUに送信する。
【0042】
光アイソレータ124は、ビームスプリッタ116から入射した光を、そのまま透過する。一方で、光アイソレータ124は、レーザモジュール110の出力端側から入射する戻り光がレーザチップ112の方向に進行するのを防ぐ。
【0043】
集光レンズ126は、レーザチップ112が出射するレーザ光の光路において光アイソレータ124の下流側に配置され、入射した平行光を光ファイバ138へと集光する。筐体136は、レーザモジュール110に含まれる各光部品を収納して、各光部品を外部の衝撃、及び温度変化等から保護する。
【0044】
ベースプレート132は、レーザキャリア130と、コリメートレンズ114と、ビームスプリッタ116と、強度モニタ118と、エタロンフィルタ120と、波長モニタ122と、光アイソレータ124とを搭載する基板状の台である。
【0045】
温度調整素子134は、ベースプレート132の下に配置され、レーザモジュール110とエタロンフィルタ120の温度を予め定められた一定の温度に保つ。温度調整素子134は、デジタル回路150のMPUから温度制御信号を受信する。
【0046】
温度調整素子134は、レーザモジュール110を、レーザチップ112が有する半導体レーザ素子が出力すべき波長に応じた温度に保つことで、半導体レーザ素子から出力するレーザ光の波長を制御する。また、温度調整素子134は、エタロンフィルタ120の通過波長帯域がモニタすべき光の波長を含むようにエタロンフィルタ120の温度を保ってもよい。温度調整素子134は、例えば、ペルチェ素子である。
【0047】
この様に、図3、4に示したレーザモジュール110は、レーザチップ112に出力させたレーザ光の強度及び波長をモニタしながら、レーザ光を光ファイバ138へ伝播する。
【0048】
図5には、第1の実施形態に係るレーザ装置100を制御する方法を示す。以下説明するように、レーザモジュール110の動作は、アナログ回路140及びデジタル回路150によって制御される。
【0049】
アナログ回路140は、電流制御回路144、電流モニタ回路145、温度モニタ回路147、波長モニタ回路148及び強度モニタ回路149を有する。電流制御回路144は、出力選択回路142を介して、レーザチップ112の半導体レーザ素子に駆動電流を供給する。電流制御回路144は、駆動電流の値を制御する電流制御信号をMPU152から受信して、出力選択回路142に電流制御信号に応じた値の駆動電流を供給する。
【0050】
電流モニタ回路145は、電流制御回路144が半導体レーザ素子に供給する駆動電流値をモニタして、その結果をデジタル信号に変換してMPU152に送信する。温度モニタ回路147は、温度モニタ128から受信した、レーザモジュール110内の温度に関するアナログ信号を、デジタル信号に変換してMPU152に送信する。波長モニタ回路148は、波長モニタ122から受信した、レーザチップ112が出力するレーザの波長に関するアナログ信号を、デジタル信号に変換してMPU152に送信する。強度モニタ回路149は、強度モニタ118から受信した、レーザチップ112が出力するレーザの光強度に関するアナログ信号を、デジタル信号に変換してMPU152に送信する。
【0051】
デジタル回路150は、出力選択回路142、温度制御回路146、及びMPU152を有する。出力選択回路142は、レーザ光の出力に用いる半導体レーザ素子を選択する。
【0052】
出力選択回路142は、レーザチップ112内の複数の半導体レーザ素子に、端子154を介して接続された複数の経路を有する。また、出力選択回路142は、MPU152から出力選択信号を受信する。出力選択回路142は、電流制御回路144から入力された駆動電流を、出力選択信号に応じた経路に出力するように、内部のスイッチを切り換える。このように、出力選択回路142は、駆動電流が出力される経路に接続された半導体レーザ素子にレーザ光を出力させる。
【0053】
温度制御回路146は、レーザモジュール110内に設けられた温度調整素子134の温度を制御する。温度制御回路146は、レーザチップ112に設定されるべき温度に関する温度設定信号をMPU152から受信して、レーザチップ112を設定温度に保つための温度制御信号を、温度調整素子134に供給する。例えば、温度制御信号は、PWM(パルス幅変調)制御によりパルス幅が調節された矩形状のパルス波であってよい。
【0054】
MPU152は、レーザモジュール110内の出力に用いる半導体レーザ素子を指定する出力選択信号、レーザ光の強度を指定する電流制御信号、及びレーザモジュール110内の温度をそれぞれ制御する温度制御信号を、各制御回路に送信する。
【0055】
MPU152は、出力させるべきレーザ光のレーザ波長と、波長モニタ回路148から受信した電気信号から算出されるレーザ波長を比較して、出力選択信号を演算する。MPU152は、演算した出力選択信号を、出力選択回路142に送信する。
【0056】
MPU152は、出力させるべきレーザ光のレーザ強度と、強度モニタ回路149から受信した電気信号から算出されるレーザ強度を比較して、電流制御信号を演算する。MPU152は、演算した電流制御信号を、電流制御回路144に送信する。
【0057】
MPU152は、温度モニタ回路147から受信した温度信号から算出される半導体レーザ素子周囲の温度と、設定すべき温度とを比較して、温度制御信号を演算する。MPU152は、演算した温度制御信号を、温度制御回路146に送信する。
【0058】
図6は、12個の半導体レーザ素子を有するレーザ装置の出力レーザ光のスペクトル線幅を示したグラフである。本グラフは、横軸をレーザモジュールのピン番号(半導体レーザ素子の番号)とし、縦軸をスペクトル線幅をとした。黒四角で示したグラフは、第1の実施形態に係るレーザ装置100から出力させたレーザ光のスペクトル線幅を測定した結果を示す。白三角で示したグラフは、比較例として、従来のレーザ装置から出力させたレーザ光のスペクトル線幅を測定した結果を示す。
【0059】
ここで、スペクトル線幅は、レーザモジュールピン番号1の半導体レーザ素子の出力レーザ光を基準とした。より具体的には、レーザモジュールピン番号1の半導体レーザ素子を、基板160を用いずに、直接駆動した場合の出力レーザ光のスペクトル線幅を基準とした。
【0060】
比較例に係るレーザ装置は、第1の実施形態のレーザモジュール110と比べて、分離グランド層164においてアナログ用グランドパターン174とレーザ用グランドパターン170が一体化されて形成されている点が異なる。
【0061】
第1の実施形態に係るレーザモジュール110のレーザモジュールピン番号1の半導体レーザ素子のスペクトル線幅は略1なので、基板160にレーザモジュール110を搭載する前後でスペクトル線幅にほとんど変動がないことが分かる。これより、レーザモジュール110のレーザモジュールピン番号1の半導体レーザ素子は、ノイズの影響をほとんど受けていないことが分かる。
【0062】
また、第1の実施形態のレーザモジュール110のレーザモジュールピン番号1以外の各半導体レーザ素子も、出力レーザ光のスペクトル線幅がノイズの影響を受けて増大しておらず、かつ各半導体レーザ素子間のスペクトル線幅の個体差が小さいことが分かる。
【0063】
一方で、比較例のレーザモジュール110の各半導体レーザ素子は、いずれもスペクトル線幅が基準に対し1.5〜2前後であり、デジタル回路150のノイズの影響を受けて出力光のスペクトル線幅が全体的に増大していることが分かる。さらに、比較例のレーザモジュール110のスペクトル線幅は、各半導体レーザ素子間の個体差が大きくなっている。
【0064】
このように、第1の実施形態に係るレーザ装置100によれば、デジタル回路150のノイズの影響を低減させ、出力レーザ光のスペクトル線幅を小さくすることができる。また、第1の実施形態に係るレーザ装置100によれば、レーザモジュール110内の各半導体レーザ素子間の個体差を小さくすることができる。
【0065】
図7は、本発明の第2の実施形態に係るレーザ装置200の基板160の分解斜視図を示す。第2の実施形態においては、アナログ回路とデジタル回路が1つのチップに集積されて基板160上に配置される。
【0066】
第2の実施形態のレーザ装置200は、デジタル−アナログ混載チップ240を備える。レーザ装置200の説明において、第1の実施形態と略同一の部材には同一の符号を付して、説明を省略する。
【0067】
デジタル−アナログ混載チップ240は、基板160上に搭載され、デジタル回路、アナログ回路、アナログ用グランド端子242及びデジタル用グランド端子244を有する。デジタル−アナログ混載チップ240内のデジタル回路とアナログ回路はそれぞれ異なる領域に形成されてよい。
【0068】
デジタル用グランド端子244は、デジタル用グランドパターン172に対向して設けられて、デジタル−アナログ混載チップ240のデジタル回路とデジタル用グランドパターン172に電気的に接続される。また、アナログ用グランド端子242は、アナログ用グランドパターン174に対向して設けられて、デジタル−アナログ混載チップ240のアナログ回路とアナログ用グランドパターン174に電気的に接続される。
【0069】
このように、図7に係るレーザ装置200においては、デジタル回路とアナログ回路を有するデジタル−アナログ混載チップ240を用いた場合に、デジタル用グランド端子244とアナログ用グランド端子242を分離して、それぞれ別のグランドに接続することにより、レーザモジュール110がデジタル回路のノイズの影響を受けることを防ぐことができる。
【0070】
図8は、本発明の第3の実施形態に係るレーザ装置300の基板360の分解斜視図を示す。第3の実施形態においては、基板360は、ベタパターン状の共通グランドパターンを有する。レーザ装置300の説明において、第1の実施形態と略同一の部材には同一の符号を付して、説明を省略する。
【0071】
基板360は、表面層162、分離グランド層164、及び共通グランド層366が積層されてなる。共通グランド層366は、基板360内において分離グランド層164の下面に設けられ、レーザ装置300の回路全体の基準電位を等しくする。共通グランド層366は、絶縁層と、絶縁層上に設けられた共通グランドパターン380とを有する。
【0072】
共通グランドパターン380は、基板360内においてアナログ用グランドパターン174、デジタル用グランドパターン172、及びレーザ用グランドパターン170とは異なる層に設けられる。例えば、共通グランドパターン380は、レーザモジュール110が接続される基板360面に対してアナログ用グランドパターン174及びレーザ用グランドパターン170より離れた層に設けられる。共通グランドパターン380は、共通グランド層366の略全面を覆うように形成されている。
【0073】
共通グランドパターン380は、分離グランド層164の各グランドパターンに対向して設けられ、導電性ビアホール190、192、及び194を介して、アナログ用グランドパターン174、デジタル用グランドパターン172、及びレーザ用グランドパターン170のそれぞれに電気的に接続される。また、共通グランドパターン380は、接地電位に接続される。
【0074】
このように、第3の実施形態によれば、共通グランドパターン380の面積を共通グランド層366層上でより大きくすることで、レーザ装置300は、回路全体の基準電位をより安定にすることができる。
【0075】
図9は、本発明の第4の実施形態に係るレーザ装置400の基板460の分解斜視図を示す。基板460は、表面層162、分離グランド層164、共通グランド層166、及び別の共通グランド層468が積層されてなる。表面層162、分離グランド層164、及び共通グランド層166は、第1の実施形態に係る基板160と略同一である。
【0076】
共通グランド層468は、基板460内において共通グランド層166の下面に設けられ、レーザ装置400の回路全体の基準電位を等しくする。共通グランド層468は、絶縁層と、絶縁層上に設けられた共通グランドパターン480とを有する。
【0077】
共通グランドパターン480は、共通グランド層166の共通グランドパターン180に対向して設けられ、導電性ビアホール496、導電性ビアホール498、及び導電性ビアホール499を介して、共通グランドパターン180に電気的に接続される。また、共通グランドパターン480は、接地電位に接続される。
【0078】
共通グランドパターン480は、基板460内において分離グランド層164及び共通グランド層166とは異なる層に設けられる。例えば、共通グランドパターン480は、レーザモジュール110が接続される基板460面に対して分離グランド層164及び共通グランド層166より離れた層に設けられる。共通グランドパターン480は、共通グランド層468の略全面を覆うように形成されている。
【0079】
このように、第4の実施形態によれば、レーザ装置400は、共通グランド層166層に加えて共通グランド層468を備えるので、回路全体の基準電位をより安定にすることができる。
【0080】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0081】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0082】
100 レーザ装置、110 レーザモジュール、112 レーザチップ、114 コリメートレンズ、116 ビームスプリッタ、118 強度モニタ、120 エタロンフィルタ、122 波長モニタ、124 光アイソレータ、126 集光レンズ、128 温度モニタ、130 レーザキャリア、132 ベースプレート、134 温度調整素子
136 筐体、138 光ファイバ、140 アナログ回路、142 出力選択回路
144 電流制御回路、145 電流モニタ回路、146 温度制御回路、147 温度モニタ回路、148 波長モニタ回路、149 強度モニタ回路、150 デジタル回路
152 MPU、154 端子、160 基板、162 表面層、164 分離グランド層、166 共通グランド層、168 基台、170 レーザ用グランドパターン
171 第1グランドパターン、172 デジタル用グランドパターン、173 第3グランドパターン、174 アナログ用グランドパターン、175 第2グランドパターン
176 接続部、178 接続部、180 共通グランドパターン、182 貫通孔
184 導電性ビアホール、186 導電性ビアホール、188 導電性ビアホール
190 導電性ビアホール、192 導電性ビアホール、194 導電性ビアホール
200 レーザ装置、240 デジタル−アナログ混載チップ、242 アナログ用グランド端子、244 デジタル用グランド端子、300 レーザ装置、360 基板
366 共通グランド層、380 共通グランドパターン、400 レーザ装置
460 基板、468 共通グランド層、480 共通グランドパターン、496 導電性ビアホール、498 導電性ビアホール、499 導電性ビアホール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザモジュールと、
前記レーザモジュールを駆動するアナログ回路と、
前記レーザモジュールのレーザ出力を制御するデジタル回路と、
前記アナログ回路および前記デジタル回路が実装され、前記レーザモジュールに接続される基板と、
を備え、
前記基板は、
前記基板内において前記アナログ回路に対向して設けられるアナログ用グランドパターンと、
前記基板内において前記デジタル回路に対向して設けられるデジタル用グランドパターンと、
前記基板内に設けられ、前記レーザモジュールに接続されるレーザ用グランドパターンと、
を有する
レーザ装置。
【請求項2】
前記基板内において前記アナログ用グランドパターンおよび前記レーザ用グランドパターンとは異なる層に設けられ、前記アナログ用グランドパターンおよび前記レーザ用グランドパターンのそれぞれに接続される共通グランドパターンを更に備える請求項1に記載のレーザ装置。
【請求項3】
前記共通グランドパターンは、前記レーザモジュールが接続される基板面に対して前記アナログ用グランドパターンおよび前記レーザ用グランドパターンより離れた層に設けられる請求項2に記載のレーザ装置。
【請求項4】
前記レーザ用グランドパターンは、単一の導電性ビアホールを介して前記共通グランドパターンと接続される請求項2または3に記載のレーザ装置。
【請求項5】
前記基板は、前記レーザモジュールを貫通する矩形の貫通孔を有し、
前記レーザモジュールは、前記基板の上面における前記貫通孔の辺に沿って設けられた端子に接続され、
前記レーザ用グランドパターンは、前記基板内における前記貫通孔の囲む領域に設けられる請求項2から4のいずれか一項に記載のレーザ装置。
【請求項6】
前記基板上に搭載された、前記デジタル回路および前記アナログ回路を有するデジタル−アナログ混載チップを更に備え、
前記アナログ用グランドパターンは、前記デジタル−アナログ混載チップのアナログ用グランド端子に対向して設けられて前記アナログ用グランド端子に接続され、
前記デジタル用グランドパターンは、前記デジタル−アナログ混載チップのデジタル用グランド端子に対向して設けられて前記デジタル用グランド端子に接続される
請求項2から5のいずれか一項に記載のレーザ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−21099(P2013−21099A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−152656(P2011−152656)
【出願日】平成23年7月11日(2011.7.11)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】