説明

レーザ顕微鏡とその制御方法

【課題】ビデオレート以上の走査速度で、顕微鏡観察に必要な視野数および開口数を達成し、かつ、簡易な構成で走査速度を変更する。
【解決手段】レーザ光源15と、該レーザ光源15から出射されるレーザ光を標本Aに対して走査する走査手段17と、該走査手段17により走査されたレーザ光を標本Aに集光させる対物レンズ5とを備え、走査手段17が、電流の注入により屈折率のグラデーションが誘起される電気光学結晶を備える電気光学偏向素子21,22を備えるレーザ顕微鏡1を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ顕微鏡とその制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ポイントスキャン方式のレーザ顕微鏡としては、走査手段としてガルバノミラーや音響光学素子あるいは電気光学素子を用いたものがある。
ガルバノミラーを用いたものは、レーザ光の十分な振り角を確保できる反面、その走査速度が遅いため、ビデオレートを達成できないという不都合がある。
【0003】
一方、ビデオレートを達成し得る速度でレーザ光を走査することができるレーザ顕微鏡として、音響光学素子を用いたもの(例えば、特許文献1。)および電気光学素子を用いたもの(例えば、特許文献2参照。)が知られている。
【0004】
【特許文献1】特開平8−327936号公報
【特許文献2】特開平10−288798号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、走査手段として音響光学素子を用いた場合には、レーザ光の振り角がせいぜい±1°程度であり、十分な視野数と開口数を確保するためには、レーザ光の光束径をガルバノミラーの場合の10倍程度に拡大する必要がある。このため、このように大きな光束径のレーザ光を入射可能な音響光学素子として、きわめて大きな音響光学素子結晶が必要となり、装置の大型化およびコストの増大の問題がある。
【0006】
また、音響光学素子に入射させるレーザ光の光束径が大きくなると、音響光学素子結晶内を伝播する音波が遅延する。このため、シリンドリカルレンズ効果によって音響光学素子結晶から出射されるレーザ光が1軸方向に広がってしまい、対物レンズで集光されたときに非点較差を生じて分解能が低下してしまうという不都合がある。
【0007】
特許文献1においては、音響光学素子結晶内を伝播する音波の遅延によるレーザ光の広がりを防止するために音響光学素子の後段にシリンドリカルレンズを配置している。しかしながら、音響光学素子から出射されるレーザ光の広がりは、音響光学素子によるレーザ光の走査速度に応じて変化するため、走査速度を切り替える都度にシリンドリカルレンズを切り替える必要があり、装置が大型化する不都合や高い光学精度で構成することが困難であるという不都合がある。
【0008】
また、走査手段として電気光学素子を使用する場合においても、振り角はせいぜい0.2°程度である。このため、特許文献2においては、電気光学素子結晶に設けた対向電極を光軸方向に直列に複数対設けることで、振り角を大きくすることが開示されている。
しかしながら、電気光学素子結晶の厚さは200μm程度ときわめて薄いため、入射可能なレーザ光の光束径が小さくなってしまい、十分な視野数と開口数を確保するためには、電気光学素子の出口で200°以上の振り角を達成しなければならないという不都合がある。
【0009】
本発明は上述した事情に鑑みてなされたものであって、ビデオレート以上の走査速度で、顕微鏡観察に必要な視野数および開口数を達成し、かつ、簡易な構成で走査速度を変更可能なレーザ顕微鏡とその制御方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明は、レーザ光源と、該レーザ光源から出射されるレーザ光を標本に対して走査する走査手段と、該走査手段により走査されたレーザ光を標本に集光させる対物レンズとを備え、前記走査手段が、電流の注入により屈折率のグラデーションが誘起される電気光学結晶を備える電気光学偏向素子を備えるレーザ顕微鏡を提供する。
【0011】
本発明によれば、電流の注入により屈折率のグラデーションが誘起される電気光学結晶を備えるので、小さい電圧で大きな偏向角が得られる。すなわち、この電気光学偏向素子では、電気光学結晶に入射したレーザ光は、電界の付与によって生じる屈折率勾配により、屈折による進行方向の変化が結晶中を進行するに伴って累積する。このようにして電気光学結晶に付与した電界の方向に大きな偏向角を得ることができる。
【0012】
なお、電界を付与しない場合には、レーザ光は結晶中を直進し、付与する電界の強度に応じて偏向角を自在に制御できる。また、音響光学素子にように音波(弾性波)を使用するのではなく、電界の付与によって屈折率勾配を生じさせるので、音響光学素子に比べて応答性が非常に高いから、音響光学素子よりもさらに高速に光の進行方向を制御することができる。また、小さな電圧で大きな偏向角が得られるので、結晶の電極間距離を大きくとっても実用的な電圧で実用的な偏向角を得ることができる。
【0013】
したがって、このような電気光学結晶を備える電気光学偏向素子を走査手段として使用することにより、ビデオレート以上での高速走査を可能とし、かつ、走査するレーザ光の十分な光束径と振り角とを確保して、顕微鏡観察に必要な視野数と開口数とを達成することができる。また、走査速度を変更してもレーザ光が広がることがなく、シリンドリカルレンズやその切替機構等の複雑な構成を必要とせず、装置の小型化および低コスト化を図ることができる。
【0014】
上記発明においては、前記電気光学偏向素子が、5×10−15/V以上のカー定数を有することとしてもよい。
また、上記発明においては、前記電気光学結晶が、KTa1−xNbであることとしえてもよい。
【0015】
また、上記発明においては、前記レーザ光が、その偏光方向を、前記電気光学偏向素子により発生するレーザ光の偏向に有効な所定の方向に合わせて前記電気光学偏向素子に入射されることとしてもよい。
電流の注入により屈折率のグラデーションが誘起される電気光学偏向素子には偏向依存性があるため、レーザ光の偏光方向を電気光学偏向素子によるその偏向に有効な所定の方向に合わせてレーザ光を電気光学偏向素子に入射させることにより、レーザ光を効率的に偏向させて、所望の振り角を確保することができる。
【0016】
また、上記発明においては、前記レーザ光が標本に対する光刺激用のレーザ光、または、レーザトラップ用のレーザ光であることとしてもよい。
電流の注入により屈折率のグラデーションが誘起される電気光学偏向素子には、波長依存性がある。このため、標本において発生したレーザ光とは異なる波長の蛍光を電気光学偏向素子を介して検出する共焦点観察には適しないが、光刺激用のレーザ光、レーザトラップ用のレーザ光については、電気光学偏向素子に戻す必要がなく、光学性能を低下させることなく、レーザ光を標本上で高速移動させることができる。
【0017】
また、上記発明においては、前記レーザ光が標本における反射光観察用のレーザ光であることとしてもよい。
標本において反射して戻るレーザ光は、標本に照射したレーザ光そのものであるので、波長が変化せず、電気光学偏向素子を介しても同一光路を辿らせることができる。したがって、反射光観察においては、光学性能を低下させることなく、レーザ光を標本上で高速走査させることができる。
【0018】
また、上記発明においては、前記レーザ光が、標本において多光子励起効果を発生させる超短パルスレーザ光であることとしてもよい。
超短パルスレーザ光であれば、標本の深さ方向の特定位置においてのみ多光子励起効果により蛍光を発生させることができ、電気光学偏向素子を介することなく検出して、鮮明な多光子蛍光画像を取得することができる。
【0019】
また、上記発明においては、前記電気光学偏向素子によりレーザ光の偏向方向を切り替えて、目的照射位置へのレーザ光の照射時間と、目的照射位置外へのレーザ光の照射時間とを調節する制御手段を備えることとしてもよい。
このようにすることで、制御手段の作動により、目的照射位置へのレーザ光の照射時間と、目的照射位置外へのレーザ光の照射時間との比率を調節し、別個の調光手段を用いることなく、目的照射位置に照射するレーザ光のパワーを調節することができる。
【0020】
また、上記発明においては、前記走査手段が、走査方向を90°異ならせて光軸方向に配列された2つの電気光学偏向素子を備え、これら電気光学偏向素子の間に、レーザ光の偏光方向を90°回転させる偏光方向回転手段を備えることとしてもよい。
光軸方向に配列された偏向方向が90°異なる2つの電気光学偏向素子にレーザ光を通過させることにより、レーザ光を直交する2方向にそれぞれ偏向させて、標本上において2次元的に走査させることができる。この場合において、偏光方向を偏向に有効な所定の方向に合わせて最初の電気光学偏向素子に入射させられ、当該最初の電気光学偏向素子により一方向に偏向されて出射されたレーザ光が、偏光方向回転手段を通過させられることにより、次の電気光学偏向素子に対しても、偏光方向が偏向に有効な所定の方向に合わせられた状態で入射される。したがって、レーザ光を効率的に直交する2方向に偏向させて、所望の振り角を確保することができる。
【0021】
また、上記発明においては、前記偏光方向回転手段が、アクロマティックなλ/2板からなることとしてもよい。
このようにすることで、レーザ光の偏光方向を簡易に90°回転させることができる。また、広い波長帯域においてレーザ光の偏向方向を高効率に回転させることができる。
【0022】
また、上記発明においては、前記2つの電気光学偏向素子が光軸方向に近接配置されていることとしてもよい。
また、この場合に、前記2つの電気光学偏向素子の間に、対物レンズの瞳と共役な位置が存在することが好ましい。
このようにすることで、対物レンズの瞳位置におけるレーザ光の変動を最小限に抑えることができる。
【0023】
また、上記発明においては、前記2つの電気光学偏向素子の間に、これら2つの電気光学偏向素子のそれぞれの偏向中心位置に対物レンズの瞳位置をリレーするリレーレンズが配置されていることとしてもよい。
このようにすることで、リレーレンズによって対物レンズの瞳位置を2つの電気光学偏向素子のそれぞれの偏向中心位置にリレーし、電気光学偏向素子の軸方向長さが長くなっても対物レンズの瞳位置におけるレーザ光の変動を最小限に抑えることができる。
【0024】
また、上記発明においては、前記走査手段が、前記電気光学偏向素子と、該電気光学偏向素子による偏向方向に対して、走査方向を90°異ならせた他の走査装置とを光軸方向に配列してなることとしてもよい。
このようにすることで、高速走査側に電気光学偏向素子を使用し、低速走査側に他の走査装置を使用して、ラスタスキャン方式により2次元的にレーザ光を走査させることができる。
【0025】
また、上記発明においては、前記他の走査装置が、ガルバノミラーまたは音響光学偏向素子であることとしてもよい。
このようにすることで、低速側にガルバノミラーまたは音響光学素子を用いて、低コストに2次元的な走査手段を構成することができる。
【0026】
また、上記発明においては、前記レーザ光源から出射されるレーザ光の波長を切り替える波長切替手段と、該波長切替手段により切り替えられた波長に応じて前記電気光学偏向素子に加える電圧を調節する制御手段とを備えることとしてもよい。
このようにすることで、波長切替手段の作動により、レーザ光の波長が切り替えられても、これに応じて制御手段を作動させ、電気光学偏向素子に加える電圧を調節することで、電気光学偏向素子から出射されるレーザ光の偏向方向が変化しないようにすることができる。
【0027】
また、上記発明においては、前記制御手段が、下式に従う電圧を電気光学偏向素子に加えることとしてもよい。
V=(nref/n)3/2 ×Vref
ここで、nrefは基準の波長のレーザ光に対して達成すべき屈折率、Vrefはそのときの電圧、nは制御したい波長のレーザ光に対して達成すべき屈折率、Vはそのときの電圧である。
このようにすることで、入射されるレーザ光の波長が切り替えられても電気光学偏向素子から出射されるレーザ光の偏向方向を変動させることなく同一走査範囲を走査することができる。
【0028】
また、上記発明においては、前記電気光学偏向素子によるレーザ光の偏向方向を制御する制御手段を備え、該制御手段が、一方向にバイアスされた電圧により電気光学偏向素子を制御することとしてもよい。
このようにすることで、電気光学偏向素子の特性において、加える電圧の変化に対する振り角の変化が大きな領域を使用することができ、少ない電圧変化で所望の走査範囲を走査することができる。
【0029】
また、上記発明においては、レーザ光を変調する光変調手段を備えることとしてもよい。
このようにすることで、光変調手段の作動により、レーザ光の強度の変更やオンオフ、あるいは波長の変更を行うことができる。
【0030】
また、本発明は、電流の注入により屈折率のグラデーションが誘起される電気光学結晶を備える電気光学偏向素子によりレーザ光を標本上において走査させるレーザ顕微鏡の制御方法であって、一方向にバイアスされた電圧により前記電気光学偏向素子を制御するレーザ顕微鏡の制御方法を提供する。
【0031】
本発明によれば、電気光学偏向素子の電気光学結晶に電圧を加え、電流の注入により電気光学結晶内に屈折率のグラデーションを誘起させ、通過するレーザ光を一方向に偏向することができる。この場合において、一方向にバイアスされた電圧を電気光学偏向素子に加えることにより、電気光学結晶の特性として電圧の変化に対する振り角の変化が大きな領域を利用することができ、少ない電圧変化でレーザ光を大きく走査させることができる。
【0032】
また、本発明は、電流の注入により屈折率のグラデーションが誘起される電気光学結晶を備える電気光学偏向素子によりレーザ光を標本上において走査させるレーザ顕微鏡の制御方法であって、前記電気光学偏向素子に入射させるレーザ光の波長に応じて、該電気光学偏向素子に加える電圧を変更するレーザ顕微鏡の制御方法を提供する。
本発明によれば、レーザ光の波長が切り替えられても、これに応じて電気光学偏向素子に加える電圧を調節することで、電気光学偏向素子から出射されるレーザ光の偏向方向が変化しないようにすることができる。
【0033】
上記発明においては、下式に従う電圧を電気光学偏向素子に加えることとしてもよい。
V=(nref/n)3/2 ×Vref
ここで、nrefは基準の波長のレーザ光に対して達成すべき屈折率、Vrefはそのときの電圧、nは制御したい波長のレーザ光に対して達成すべき屈折率、Vはそのときの電圧である。
このようにすることで、入射されるレーザ光の波長が切り替えられても電気光学偏向素子から出射されるレーザ光の偏向方向を変動させることなく同一走査範囲を走査することができる。
【0034】
また、本発明は、電流の注入により屈折率のグラデーションが誘起される電気光学結晶を備える電気光学偏向素子により多光子励起効果を発生させる超短パルスレーザ光を標本上において走査させるレーザ顕微鏡の制御方法であって、前記超短パルスレーザ光の繰り返しパルスに同期して、電気光学偏向素子の偏向角を変化させるレーザ顕微鏡の制御方法を提供する。
本発明によれば、レーザ光のスポットを標本上で引き摺ることなく離れた位置に移動させることができる。
【0035】
上記発明においては、前記超短パルスレーザ光の繰り返しパルスの間に、電気光学偏向素子の偏向角の変化を完了させることとしてもよい。
このようにすることで、レーザ光のスポット位置の移動先の各位置において、一定の強度のレーザ光を標本に照射することができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、ビデオレート以上の走査速度で、顕微鏡観察に必要な視野数および開口数を達成し、かつ、簡易な構成で走査速度を変更することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
本発明の一実施形態に係るレーザ顕微鏡1とその制御方法について、図1および図2を参照して以下に説明する。
本実施形態に係るレーザ顕微鏡1は、図1に示されるように、観察用光学系2と、光刺激用光学系3と、これら光学系2,3を合流させるダイクロイックミラー4と、標本Aに対し、レーザ光を照射し、標本Aから発せられる蛍光を集光する対物レンズ5とを備えている。
【0038】
前記観察用光学系2は、レーザ光を出射する観察用レーザ光源6と、該レーザ光源6からのレーザ光を略平行光にするコリメータレンズ7と、該コリメータレンズ7により略平行光にされたレーザ光を2次元的に走査する走査手段8と、該走査手段8により走査されたレーザ光を集光して中間像を結像させる瞳投影レンズ9と、中間像を結像したレーザ光を集光して略平行光にする結像レンズ10とを備えている。
走査手段8は、例えば、相互に交差する2方向にそれぞれ揺動可能な2枚のガルバノミラーを近接して配置した、いわゆる近接ガルバノミラーである。
【0039】
また、観察用光学系2には、対物レンズ5により集光され、ダイクロイックミラー4、結像レンズ10、瞳投影レンズ9、走査手段8を介して戻る蛍光をレーザ光の光路から分岐するダイクロイックミラー11と、分岐された蛍光を集光させる集光レンズ12と、該集光レンズ12の焦点位置近傍に配置された共焦点ピンホール13と、該共焦点ピンホール13を通過した蛍光を検出する光検出器14とが設けられている。
【0040】
前記光刺激用光学系3は、レーザ光を出射する光刺激用レーザ光源15と、該レーザ光源15からのレーザ光の強度変調、オンオフあるいは波長変調等を行う光変調素子16と、該光変調素子16により変調されたレーザ光の2次元的な位置を調節する位置調節手段(走査手段)17と、該位置調節手段17により位置調節されたレーザ光を集光して中間像を結像させる瞳投影レンズ18と、中間像を結像したレーザ光を集光して略平行光にする結像レンズ19とを備えている。
【0041】
光変調素子16は、例えば、音響光学素子により構成されている。
光刺激用光学系3用の走査手段17を備えることにより、観察位置(観察用光学系2によって観察用レーザ光を照射する位置)とは独立した任意の位置に刺激用レーザ光を照射することができる。
【0042】
本実施形態において、光刺激用光学系3の位置調節手段17は、電流の注入により屈折率のグラデーションが誘起される電気光学結晶20(図7参照。)を備え、光軸方向に並んで配列された2つの電気光学偏向素子21,22と、これら電気光学偏向素子21,22の間に配置されたλ/2板(偏光方向回転手段)23と、前記電気光学偏向素子21,22の電気光学結晶を挟む対向電極24(図7参照。)に加える電圧を制御する制御部25とを備えている。前記電気光学結晶20は、例えば、カー定数が5×10−15/V以上のものであり、KTa1−xNbにより構成されている。このような電気光学結晶20は、例えば、次の文献に開示されたものを使用できる。
「Nakamura et al., Wide-angle, low-voltage
electro-optic beam deflection based on space-charge-controlled mode of
electrical conduction in KTa1-xNbxO3, Applied Physics
Letters 89,
131115,
2006」
【0043】
そして、この電気光学結晶20によれば、レーザ光を以下の式に従う振り角θで走査させることができるようになっている。
θ=−9/8×(L×n×sij/d)×(V/d)
ここで、Lは電気光学結晶20の長さ、nは屈折率、sijはカー係数、dは結晶厚、Vは電極間電圧である。
【0044】
光変調素子16の後段に隣接して配置されている第1の電気光学偏向素子21は、前記光変調素子16から出射されたレーザ光の偏光方向が、当該第1の電気光学偏向素子21の電気光学結晶20によるレーザ光の偏向に有効な所定の方向に一致させた状態となるように配置されている。上記電気光学結晶20は、偏光依存性を有するため、入射されるレーザ光の偏光方向が所定の方向に一致していないと、電圧を加えてもレーザ光を効率よく偏向させることができないが、本実施形態によればそのような不都合はない。
【0045】
また、当該第1の電気光学偏向素子21の後段に、λ/2板23を挟んで配置されている第2の電気光学偏向素子22は、前段に配置されている第1の電気光学偏向素子21によるレーザ光の偏向方向に対して、その偏向方向を90°回転させて配置されている。これにより、入射されたレーザ光を第1の電気光学偏向素子21により一方向(例えば、X軸方向)に位置調節させ、その後、第2の電気光学偏向素子22の作動により、90°異なる他の方向(例えば、Y軸方向)にレーザ光を位置調節させることができるようになっている。すなわち、光変調素子16により変調されたレーザ光を2次元的に位置調節させることができるようになっている。
この場合において、2つの電気光学偏向素子21,22の中央に配置されたλ/2板23の位置が、対物レンズ5の瞳位置と光学的に共役な位置となるように設定されている。
【0046】
制御部25は、前記光変調素子16により調節されたレーザ光の波長情報を受けて、前記電気光学偏向素子21,22に加える電圧を、下式に従って制御するようになっている。
V=(nref/n)3/2 ×Vref
ここで、nrefは基準の波長のレーザ光に対して達成すべき屈折率、Vrefはそのときの電圧、nは制御したい波長のレーザ光に対して達成すべき屈折率、Vはそのときの電圧である。
【0047】
このように構成された本実施形態に係るレーザ顕微鏡1の作用について説明する。本実施形態に係るレーザ顕微鏡1を用いて蛍光観察を行うには、観察光学系2のレーザ光源6からレーザ光を出射させ、コリメータレンズ7により略平行光とされたレーザ光を、ガルバノミラーからなる走査手段8により2次元的に走査させる。
【0048】
そして、瞳投影レンズ9、結像レンズ10、ダイクロイックミラー4および対物レンズ5を介して標本Aに照射する。標本Aにおいては、レーザ光が照射されることにより、含有されている蛍光物質が励起されて蛍光が発生する。発生した蛍光は対物レンズ5により集められ、ダイクロイックミラー4、結像レンズ10、瞳投影レンズ9および走査手段8を介して戻り、ダイクロイックミラー11によりレーザ光の光路から分岐される。
【0049】
分岐された蛍光は、集光レンズ12により集光された後、共焦点ピンホール13を通過したもののみが光検出器14により検出される。光検出器14により検出された瞬間における走査手段8の各ガルバノミラーの振り角を、光検出器14により検出された蛍光の強度と対応づけて記憶しておくことにより、対物レンズ5の焦点面に沿う標本Aの2次元的な鮮明な蛍光画像を取得することができる。
【0050】
一方、光刺激用光学系3のレーザ光源15から出射されたレーザ光は、光変調素子16により、波長選択、オンオフあるいは強度変調された後、位置調節手段17により2次元的に位置調節され、瞳投影レンズ18、結像レンズ19、ダイクロイックミラー4、および対物レンズ5を介して標本Aに照射される。
【0051】
この場合において、本実施形態に係るレーザ顕微鏡1によれば、電流の注入により屈折率のグラデーションが誘起される電気光学結晶20を備える電気光学偏向素子21,22により位置調節されるので、光刺激用のレーザ光をビデオレート以上の速度で2次元的に移動させて標本Aの所望の位置に照射することができる。しかも、この電気光学偏向素子21,22によれば、十分に大きな振り角を達成して、十分な視野数と開口数とを確保でき、十分な強度のレーザ光によって標本Aを確実に光刺激することができる。
【0052】
また、本実施形態によれば、光軸方向に直列に配列されている2つの電気光学偏向素子21,22のいずれにおいても電気光学偏向素子21,22に入射させるレーザ光の偏光方向が、偏向に有効な所定の方向に一致させられているので、光刺激用のレーザ光を少ない電圧変化で効率的に偏向させることができる。
さらに、光変調素子16により選択された波長に応じて制御部25の作動により、電気光学偏向素子21,22に加える電圧が調節されるので、レーザ光の波長が切り替えられても、標本A上における光刺激用のレーザ光のスポット位置を変動させることなく、同一位置に異なる波長のレーザ光で光刺激を与えることができる。
【0053】
また、本実施形態によれば、光変調素子16が備えられているので、光変調素子16の作動により光刺激用のレーザ光をオンオフさせながら移動させることにより、図2に示されるように、標本A上の離れた異なる位置(例えば、図に示す例では照射ポイント1〜3)に、光刺激用のレーザ光を照射する、いわゆるランダムスキャン方式による光刺激を高速にかつ精度よく行うことができる。
【0054】
また、上記電気光学結晶20は、波長依存性を有し、波長が異なる場合には、振り角が異なることとなるため、通常のレーザ共焦点顕微鏡の走査手段として使用することは困難であるが、光刺激用光学系3は、標本Aに光刺激を与えるものであり、標本Aで発生した蛍光を位置調節手段17に戻す必要がないので、そのような不都合はない。なお、光刺激用のレーザ光に代えて、レーザトラップ用のレーザ光を用いる場合も同様である。
【0055】
なお、本実施形態においては、レーザ光の波長に応じて電気光学結晶20に加える電圧を変化させることとしたが、これに加えて、電気光学結晶20に加える電圧を一方向にバイアスさせることにしてもよい。電気光学結晶20の電圧に対する振り角は、図3に示されるように変化する特性を有する。図3に見ることができるように、電圧の変化量に対する振り角の変化量は、電圧値が高くなれば大きくなる。
【0056】
したがって、電気光学結晶20に加える電圧としては、0V付近で変化させるよりも、一方向、例えば、プラス方向にバイアスさせた、例えば、150V付近で変化させた方が、より少ない電圧変化で、より大きな振り角を達成することができる。その結果、駆動電源として小型の電源を使用することができるという利点がある。
【0057】
また、本実施形態においては、2つの電気光学偏向素子21,22を備える位置調節手段17を光刺激用光学系3に備えたレーザ顕微鏡1を例示して説明した。しかし、ラスタスキャン方式のような場合には、高速側の走査手段と低速側の走査装置とが存在するため、高速側の走査装置として上記電気光学偏向素子21(22)を採用し、低速側の走査装置としては、音響光学素子あるいはガルバノミラーを採用することにしてもよい。
【0058】
また、図4に示されるように、反射光観察用のレーザ顕微鏡1′の走査手段17′として上記2つの電気光学偏向素子21,22とλ/2板23とを採用してもよい。反射光観察用のレーザ顕微鏡1′の場合には、標本Aに照射するレーザ光と、標本Aからの反射光であるレーザ光とは同一の波長を有しているので、電気光学偏向素子21,22において同一の経路を往復させることができる。
【0059】
また、共焦点レーザ顕微鏡1に代えて、図5に示されるように、多光子励起型レーザ顕微鏡1″の走査手段17″として、上記2つの電気光学偏向素子21,22とλ/2板23とを採用してもよい。図中、符号26は分散補償器である。
多光子励起型レーザ顕微鏡1″の場合、対物レンズ5の焦点面近傍でのみ多光子励起効果により蛍光を発生させるので、走査手段17″の手前で分岐して光検出器14により検出し鮮明な蛍光画像を取得することができる。したがって、上記のような波長依存性のある電気光学偏向素子21,22を走査手段17″に用いることができ、十分な視野数と開口数とを確保しつつ、ビデオレート以上の走査速度で蛍光観察を行うことができる。
【0060】
また、上記実施形態においては、光軸に沿って直列に配列された2つの電気光学偏向素子21,22の中央位置を対物レンズ5の瞳位置と光学的に共役な位置に設定したが、これに代えて、図6に示されるように、λ/2板23を挟んで両側にリレーレンズ27,28を配置することにより、2つの電気光学偏向素子21,22のそれぞれの偏向中心Bとなる位置を対物レンズ5の瞳位置と光学的に共役な位置となるように設定してもよい。このようにすることで、電気光学偏向素子21,22によりレーザ光を走査しても対物レンズ5の瞳位置におけるレーザ光の変動が最小限となるようにすることができる。特に、電気光学偏向素子21,22の光軸に沿う方向の長さ寸法が大きくなる場合に有効である。
【0061】
また、図7に示されるように、電気光学結晶20の出射側端面20aをレーザ光の偏向方向とは逆方向に傾斜させることとしてもよい。このようにすることで、電気光学結晶20の出射側端面20aから出射されるレーザ光の出射角度を増大させることができ、より広い振り角を達成できる。
【0062】
また、本実施形態においては、電気光学偏向素子21の前段に光変調素子16を設け、レーザ光のオンオフあるいは強度変調を行うこととした。これに代えて、レーザ光がパルスレーザ光である場合に、光変調素子16を設けることなく、図8(a)、(c)に示されるように、パルスPとパルスPとの間で、電気光学偏向素子21,22に加える電圧を変化させ、レーザ光のスポット位置を移動させることにしてもよい。
このようにすることで、レーザ光のスポットを標本A上で引き摺ることなく離れた位置に移動させることができる。
【0063】
また、図8(b)に示されるように、レーザ光源6の出力を調節することにより、レーザ光の標本Aへの照射強度を調節することにしてもよい。この場合においても、図8(c)に示されるように、パルスPとパルスPとの間でレーザ光源6の出力を切り替えることにより、走査手段17によるレーザ光のスポット位置の移動先の各位置において、一定の強度のレーザ光を標本Aに照射することができる。
【0064】
また、パルスレーザ光を標本A上において走査する際に、図9に示されるように、例えば、一方の電気光学偏向素子21(22)に加える電圧を切り替えることにより、標本Aへの照射強度を調節することとしてもよい。例えば、図9(b)に示されるように、一方の電気光学偏向素子(例えば、X軸)21に加える電圧を切り替えて、パルスレーザ光のスポットを視野外(目的照射位置外)に移動させることとし、各画素に対応する目的照射位置への照射時間aと、目的照射位置外への照射時間bとの比率(図9(b)では50%)を調節することにより、標本Aへの照射強度を調節することができる。
【0065】
この場合においても、目的照射位置から目的照射位置外への移動をパルスPとパルスPとの間で行うことにより、レーザ光のスポットを標本A上において引き摺ることなく、照射強度を調節することができる。
【0066】
ここで、電気光学結晶20の空間電荷制御モードによる電気光学結晶20内の屈折率分布(以下、空間電荷制御モード電気光学効果という。)を使用することにより得られる効果について説明する。
対物レンズ5の瞳径dは、
d=2NA×FOB=2NA×FTL/β ・・・(1)
と表される。ここで、FTLは結像レンズ19の焦点距離、FOBは対物レンズ5の焦点距離、βは対物レンズ5の倍率、NAは対物レンズ5の開口数である。
【0067】
対物レンズ5の瞳をレーザ光の光束が満たす条件は、
d=FTL/FPL×D ・・・(2)
と表される。ここで、FPLは瞳投影レンズ18の焦点距離、Dは電気光学偏向素子21,22に入射するレーザ光の光束径である。
【0068】
電気光学結晶20による片側振り角θと、視野数Nとの関係は、
PL×2×sinθ=N ・・・(3)
である。
【0069】
上記式(1)〜(3)により、
D×sinθ=NA×N/β ・・・(4)
となる。
【0070】
走査型のレーザ顕微鏡1において、最も重要な要素は解像度であり、つまり、開口数NAが大きな対物レンズ5が要求される。高解像度を得るためには、細胞に適した視野を有する対物レンズ5として油浸60倍の対物レンズ5が一般的に知られている。そして、本実施形態においては、この油浸60倍の対物レンズ5の瞳を満たし、視野数18mmを得る必要がある。すなわち、NA=1.35、N=18、β=60を式(4)に代入して、
sinθ×D>0.41 ・・・(5)
を満足する必要がある。
【0071】
本実施形態に係る電気光学偏向素子21,22を用いた場合に、結晶厚:dc、電極間電圧:V、結晶長:L、入射光束径:D、カー定数:Sijとすると、例えば、dc=2mm、V=±2000V、L=4.1mm、Sij=5×10−15/Vのとき、空間電荷制御モード電気光学効果による振り角θeoeff=±7.8°=15.6°となる。
この場合には、光束径D=1.4mm以下であれば、レーザ光束が曲がっても結晶の出射面でけられることがない。
【0072】
さらに、電気光学結晶20の出射端面において、スネルの法則によりさらに広角になる方向にレーザ光が偏向する。電気光学結晶20の屈折率を2.28とすると、電気光学偏向素子21,22の出射時の全振り角θeo=±18.1°となる。
入射光束径Dが対物レンズ5の瞳を満たした上で、視野を十分に確保するには、上記式(5)により、光束径D=1.4mmのときに、θeo=±17.9°以上振ればよいので、上記条件(電気光学結晶20自体の特性であるカー定数Sij=5×10−15/V以上)である場合には、十分に対物レンズ5の瞳を満たした上で、視野を十分に確保した走査が可能である。
【0073】
逆に、カー定数Sij=5×10−15/V以下の場合には、視野が限定されるか、もしくは、解像度が低下してしまい、走査型のレーザ顕微鏡1としての性能を十分に得ることができないという不都合がある。
このような計算例から、走査型のレーザ顕微鏡1の走査手段として用いる電気光学偏向素子21,22の電気光学結晶20としては、カー定数Sij=5×10−15/V以上であることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の一実施形態に係るレーザ顕微鏡の全体構成を示す模式図である。
【図2】図1のレーザ顕微鏡により、標本としての細胞の樹状突起に対し、ランダムスキャン方式による光刺激を行う場合を説明する図である。
【図3】図1のレーザ顕微鏡に用いられる電気光学結晶の電圧−振り角特性を示すグラフである。
【図4】図1のレーザ顕微鏡の第1の変形例であって、反射光を観察するためのレーザ顕微鏡の全体構成を示す模式図である。
【図5】図1のレーザ顕微鏡の第2の変形例であって、多光子蛍光を観察するための多光子励起型レーザ顕微鏡の全体構成を示す模式図である。
【図6】図1のレーザ顕微鏡の第3の変形例であって、対物の瞳位置をリレーするリレーレンズを有する場合を示す模式図である。
【図7】図1のレーザ顕微鏡に用いられる電気光学偏向素子とその変形例を示す説明図である。
【図8】図1のレーザ顕微鏡によりランダムスキャン方式によりレーザ光のスポット位置を移動させる場合の電気光学偏向素子に加える電圧値および標本への照射強度の時間変化の一例を示す図である。
【図9】図1のレーザ顕微鏡において、光変調素子を用いることなく標本に照射するレーザ光の強度を調節する方法について説明する図である。
【符号の説明】
【0075】
a,b 照射時間
A 標本
B 偏向中心
1,1′,1″ レーザ顕微鏡
5 対物レンズ
6,15 レーザ光源
16 光変調素子(波長切替手段、光変調手段)
17 位置調節手段(走査手段)
17′,17″ 走査手段
20 電気光学結晶
21,22 電気光学偏向素子
23 λ/2板(偏光方向回転手段)
25 制御部(制御手段)
27,28 リレーレンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光源と、
該レーザ光源から出射されるレーザ光を標本に対して走査する走査手段と、
該走査手段により走査されたレーザ光を標本に集光させる対物レンズとを備え、
前記走査手段が、電流の注入により屈折率のグラデーションが誘起される電気光学結晶を備える電気光学偏向素子を備えるレーザ顕微鏡。
【請求項2】
前記電気光学偏向素子が、5×10−15/V以上のカー定数を有する請求項1に記載のレーザ顕微鏡。
【請求項3】
前記電気光学結晶が、KTa1−xNbである請求項1に記載のレーザ走査型顕微鏡。
【請求項4】
前記レーザ光が、その偏光方向を、前記電気光学偏向素子により発生するレーザ光の偏向に有効な所定の方向に合わせて前記電気光学偏向素子に入射される請求項1に記載のレーザ顕微鏡。
【請求項5】
前記レーザ光が標本に対する光刺激用のレーザ光、または、レーザトラップ用のレーザ光である請求項1に記載のレーザ顕微鏡。
【請求項6】
前記レーザ光が標本における反射光観察用のレーザ光である請求項1に記載のレーザ顕微鏡。
【請求項7】
前記レーザ光が、標本において多光子励起効果を発生させる超短パルスレーザ光である請求項1に記載のレーザ顕微鏡。
【請求項8】
前記電気光学偏向素子によりレーザ光の偏向方向を切り替えて、目的照射位置へのレーザ光の照射時間と、目的照射位置外へのレーザ光の照射時間とを調節する制御手段を備える請求項7に記載のレーザ顕微鏡。
【請求項9】
前記走査手段が、走査方向を90°異ならせて光軸方向に配列された2つの電気光学偏向素子を備え、
これら電気光学偏向素子の間に、レーザ光の偏光方向を90°回転させる偏光方向回転手段を備える請求項4に記載のレーザ顕微鏡。
【請求項10】
前記偏光方向回転手段が、アクロマティックなλ/2板からなる請求項9に記載のレーザ顕微鏡。
【請求項11】
前記2つの電気光学偏向素子が光軸方向に近接配置されている請求項9に記載のレーザ顕微鏡。
【請求項12】
前記2つの電気光学偏向素子の間に、対物レンズの瞳と共役な位置が存在する請求項9に記載のレーザ顕微鏡。
【請求項13】
前記2つの電気光学偏向素子の間に、これら2つの電気光学偏向素子のそれぞれの偏向中心位置に対物レンズの瞳位置をリレーするリレーレンズが配置されている請求項9に記載のレーザ顕微鏡。
【請求項14】
前記走査手段が、前記電気光学偏向素子と、該電気光学偏向素子による偏向方向に対して、走査方向を90°異ならせた他の走査装置とを光軸方向に配列してなる請求項1に記載のレーザ顕微鏡。
【請求項15】
前記他の走査装置が、ガルバノミラーまたは音響光学偏向素子である請求項14に記載のレーザ顕微鏡。
【請求項16】
前記レーザ光源から出射されるレーザ光の波長を切り替える波長切替手段と、
該波長切替手段により切り替えられた波長に応じて前記電気光学偏向素子に加える電圧を調節する制御手段とを備える請求項1に記載のレーザ顕微鏡。
【請求項17】
前記制御手段が、下式に従う電圧を電気光学偏向素子に加える請求項16に記載のレーザ顕微鏡。
V=(nref/n)3/2 ×Vref
ここで、nrefは基準の波長のレーザ光に対して達成すべき屈折率、Vrefはそのときの電圧、nは制御したい波長のレーザ光に対して達成すべき屈折率、Vはそのときの電圧である。
【請求項18】
前記電気光学偏向素子によるレーザ光の偏向方向を制御する制御手段を備え、
該制御手段が、一方向にバイアスされた電圧により電気光学偏向素子を制御する請求項1に記載のレーザ顕微鏡。
【請求項19】
レーザ光を変調する光変調手段を備える請求項1に記載のレーザ顕微鏡。
【請求項20】
電流の注入により屈折率のグラデーションが誘起される電気光学結晶を備える電気光学偏向素子によりレーザ光を標本上において走査させるレーザ顕微鏡の制御方法であって、
一方向にバイアスされた電圧により前記電気光学偏向素子を制御するレーザ顕微鏡の制御方法。
【請求項21】
電流の注入により屈折率のグラデーションが誘起される電気光学結晶を備える電気光学偏向素子によりレーザ光を標本上において走査させるレーザ顕微鏡の制御方法であって、
前記電気光学偏向素子に入射させるレーザ光の波長に応じて、該電気光学偏向素子に加える電圧を変更するレーザ顕微鏡の制御方法。
【請求項22】
下式に従う電圧を電気光学偏向素子に加える請求項21に記載のレーザ顕微鏡の制御方法。
V=(nref/n)3/2 ×Vref
ここで、nrefは基準の波長のレーザ光に対して達成すべき屈折率、Vrefはそのときの電圧、nは制御したい波長のレーザ光に対して達成すべき屈折率、Vはそのときの電圧である。
【請求項23】
電流の注入により屈折率のグラデーションが誘起される電気光学結晶を備える電気光学偏向素子により多光子励起効果を発生させる超短パルスレーザ光を標本上において走査させるレーザ顕微鏡の制御方法であって、
前記超短パルスレーザ光の繰り返しパルスに同期して、前記電気光学偏向素子による長短パルスレーザ光の偏向角を変化させるレーザ顕微鏡の制御方法。
【請求項24】
前記超短パルスレーザ光の繰り返しパルスの間に、前記電気光学偏向素子による長短パルスレーザ光の偏向角の変化を完了させる請求項23に記載のレーザ顕微鏡の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−158325(P2008−158325A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−347892(P2006−347892)
【出願日】平成18年12月25日(2006.12.25)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】