説明

レーダー干渉信号の影響を低下させるためのシステムおよび方法

【課題】 干渉信号からの影響を最小にして、観測対象を正確かつ高信頼度で検出することができるレーダーシステムおよび方法を提供する。
【解決手段】 このレーダーシステムおよび方法では、干渉信号の周波数を確定し、次いで、干渉信号の周波数を避けるように、送信波の周波数掃引範囲を選択する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広義ではレーダーのシステムおよび方法に関し、より具体的には、レーダー戻り信号中に存在する干渉信号を低下させるか、または除去することができるレーダーのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
当技術分野において公知のように、周波数変調連続波(FMCW)レーダーは、連続的に変化する送信周波数で、RF(無線周波数)信号(本明細書において、レーダー信号とも呼ぶ)を送信する。観測対象までの距離を割り出すために、FMCWレーダーは、観測対象からのエコーとして戻ってきた受信レーダー信号と、送信信号との間の周波数差を測定する。この周波数差は、送信信号と受信信号との間の時間遅れ、すなわち、送信信号が観測対象に到達し、次いで、FMCWレーダーに戻るまでに要する時間に関係している。
【0003】
典型的なFMCWレーダーにおいては、送信されるFMCW信号の周波数は、例えばいわゆる「チャープ」信号として、第1の所定周波数から第2の所定周波数まで線形に増加する。チャープ信号は、ある反復率で反復されることが多い。FMCWレーダーは、感度が高く、送信電力が比較的低く、かつ距離分解能が良好であるという長所を有する。従来の、あるFMCWレーダーにおいては、チャープ信号は、約24.05〜約24.25GHzの範囲で、実質的に線形に変化している。
【0004】
従来のFMCWレーダーは、送信信号と受信信号とを混合(すなわち乗算)するミキサを用いている。ミキサの出力のうちの1つは、上述の、送信信号と受信信号との間の周波数差であり、本明細書においては、「ダウンコンバート信号」または「ビデオ信号」とも呼ばれ、「ビート周波数」を有する。ダウンコンバート信号は、送信信号や受信信号の周波数より十分に低い周波数において生じる。ダウンコンバート信号を、例えばアナログ−デジタル(A/D)コンバータを用いて時間サンプリングし、次いで、この時間サンプルを、例えば高速フーリエ変換(FFT)を用いて周波数領域に変換することによって、周波数スペクトルを得ることができる。この周波数スペクトルから、観測対象までの距離を割り出すために、種々の技術を用いることができる。このような技術のいくつかが、2003年6月10日に発行された特許文献1に記載されている。
【0005】
容易に理解されるように、周波数スペクトルは、観測対象までの距離に対応するダウンコンバート信号周波数を含むだけではなく、ノイズの周波数成分も含んでいる。ノイズは、限定するものではないが、電気的(すなわち熱的)なノイズ源、およびFMCWレーダーが用いられている周囲環境内に存在するレーダー信号ノイズ源を含む、種々のノイズ源に関係している。容易に理解されるように、レーダーシステムの観測領域内に、2つ以上の観測対象が存在する場合もある。したがって、ダウンコンバート信号の時間サンプルには、2つ以上のビート周波数が含まれる場合がある。
【0006】
周波数スペクトルから、観測対象までの距離を突き止めるために、周波数スペクトル内の周波数信号が割り出される。その周波数は、観測対象までの距離を指示する。しかしながら、いくつかのタイプの干渉レーダー信号が、周波数スペクトル内の、観測対象に関係する周波数信号を見出す可能性を大きく低下させる場合がある。例えば十分に高い電力レベルにあり、かつFMCWレーダーの掃引帯域内(すなわち、チャープ周波数範囲内)にある干渉レーダー信号は、生じた周波数スペクトルのレベルが、干渉レーダー信号のレベルより低くなり、したがって、観測対象に関係した周波数信号を周波数スペクトル内に見出すことができなくなるほどに、ダウンコンバート信号の時間サンプルを損ねる場合がある。
【0007】
ここで図1を参照すると、グラフ10の横軸は、FFT周波数ビンとして与えられる周波数であり、縦軸は、FFTのカウント(ダウンコンバート信号の時間サンプルのFFT処理によって得られる)のデシベル表示である。曲線12において、ピーク14は、ビート周波数f1を示しており、観測対象までの距離に対応している。曲線12には、ノイズ背景16も含まれている。曲線18には、観測対象を明確に指示する、はっきりとしたピークは存在しない。曲線18は、受信信号が干渉信号も含んでいるときに生じる、FFT周波数領域処理の出力を示している。
【0008】
容易に理解されるように、干渉信号が、単一の周波数でしか存在しない場合でも、上述のミキシング処理および上述のFFT処理を含む、FMCWレーダーシステムの処理を行うことによって、周波数スペクトル全域にわたって、その単一の干渉信号周波数のスミアリングが発生する。これは、ミキシング処理によって、短時間しか、干渉信号に対応するミキシング出力信号が生じないときに、特に当てはまる。周波数スペクトルのいくらかの帯域または全域にわたって、ノイズレベルが明白に増加すると、ピーク14の(すなわち観測対象の)信号対雑音比(SNR)が減少し、FMCWレーダーの検出能力が著しく低下する。曲線18においては、ピーク14を見つけることはできないか、もしくはピーク14を正確に見つけることはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第6577269号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
FMCWレーダーの特定の用途の1つに、自動車用レーダーシステム、例えば車両に隣接する死角内にある物体を検出するために用いられる自動車用レーダーシステムがある。自動車用レーダーは、例えば約24.05〜約24.25GHzの範囲にある、上述の周波数チャープを用いることが多い。例えば車両の速度を検出するために用いられている従来の警察のレーダーは、この帯域内で、例えば約24.197GHzで作動している。自動車の用途においては、干渉信号からの影響を最小にして、対象物、例えば他の車両を正確かつ高信頼度で検出することができるレーダーシステムを備える必要がある。
【0011】
自動車用レーダーシステムの正確性および信頼性は、非常に重要である。正確性および信頼性に影響する自動車用レーダーシステムの特性には、レーダーシステムの、干渉信号を含むノイズの影響の受け易さ、およびノイズおよび干渉信号の存在下で、対象物を検出するために受信無線周波数(RF)信号を処理する際の総合精度が含まれる。干渉信号を含むノイズの影響を受け易いと、自動車用レーダーシステムは、対象物を誤って検出する(すなわち、誤認警報率が上昇する)場合があり、かつ/または対象物の検出に失敗する(すなわち、検出の確率が低下する)場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様によれば、RF受信信号を受信するステップと、RF受信信号中に、干渉信号の存在を検出するステップとを含んでいるレーダー処理の方法が提供される。この方法は、さらに、干渉信号を回避するように掃引範囲を選択するステップと、この掃引範囲を含む周波数変調連続波(FMCW)RF信号を送信するステップとを含んでいる。
【0013】
本発明の別の一態様によれば、RF受信信号に関連付けられた時間サンプルを生成するステップと、時間サンプルに関連付けられた配列値を有する配列を生成するステップと、配列値に関連付けられた少なくとも1つの閾値を生成するステップと、配列値と、この少なくとも1つの閾値とを比較するステップとを含むレーダー処理の方法が提供される。
【0014】
本発明のさらなる別の一態様によれば、RF受信信号を受信するように適合化されており、かつRF受信信号に応答して、ダウンコンバート信号を供給するように適合化されているRF受信モジュールを備えるレーダーシステムが提供される。さらにこのシステムは、RF受信モジュールに接続されており、かつダウンコンバート信号に関連付けられた時間サンプルを生成するように適合化されているRF信号サンプリングモジュールを備えている。さらにこのシステムは、時間サンプルを受けるために配置されており、干渉信号を検出するように適合化されており、かつ干渉信号を避ける掃引範囲を選択するように適合化されている干渉検出器を備えている。さらにこのシステムは、この掃引範囲を含む周波数変調連続波(FMCW)RF信号を送信するように適合化されているRF送信モジュールを備えている。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】干渉信号が存在しない場合と、存在する場合との、周波数領域における、FMCWレーダーのダウンコンバート信号を示すグラフである。
【図2】本発明による、干渉信号を除外するように適合化されたFMCWレーダーシステムのブロック図である。
【図3】図2のFMCWレーダーシステムによって生成されるダウンコンバート信号の時間サンプルに関連付けられた最大予想勾配とレーダー断面積との関係を示すグラフである。
【図4】図2のFMCWレーダーシステムによって生成される、干渉信号が存在するダウンコンバート信号の時間サンプルに関連付けられた勾配の絶対値を示すグラフである。
【図4A】図2のFMCWレーダーシステムによって生成される、干渉信号が存在するダウンコンバート信号の時間サンプルを示すグラフである。
【図5】図2のFMCWレーダーシステムによって生成される、干渉信号が除去されているダウンコンバート信号の時間サンプルを示すグラフである。
【図6】干渉信号が存在しない状態と、存在する状態とで本発明のシステムおよび方法を用いた場合、および干渉信号が存在する状態で本発明のシステムおよび方法を用いなかった場合の、周波数領域における、FMCWレーダーのダウンコンバート信号を示すグラフである。
【図7】図2のFMCWレーダーシステムによって生成される、干渉信号が存在するダウンコンバート信号の時間サンプル、およびそれに適用される重み付け関数を示すグラフである。
【図8】干渉信号を除去するプロセスを示すフローチャートである。
【図9】図8のプロセスの詳細を示すフローチャートである。
【図10】図8のプロセスの別の詳細を示すフローチャートである。
【図10A】図8のプロセスのさらなる別の詳細を示すフローチャートである。
【図10B】図10Aのプロセスの代替プロセスを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
添付図面を参照しながら以下の説明を読むことによって、本発明の上述の特徴および本発明そのものを、より完全に理解することができると思う。
【0017】
本発明のレーダーのシステムおよび方法について説明する前に、本明細書において用いられるいくつかの用語および概念について述べる。本明細書において用いられる限りでは、用語「周波数変調連続波(FMCW)レーダーシステム」は、開始周波数から終了周波数まで時間とともに変化する、本明細書において「チャープ」信号とも呼ばれるFMCW信号を送信する特定のタイプのレーダーシステムを意味している。FMCWレーダーシステムは、観測対象からの戻り信号(これもチャープ特性を有する)を受信して処理する。本明細書において用いられる限りでは、用語「ダウンコンバート信号」および「ビデオ信号」は、FMCWレーダーシステムの受信部で用いられているミキサ回路の出力を意味している。ダウンコンバート信号は、送信レーダー信号と観測対象からの戻りレーダー信号との間の周波数差に関する情報を内包している。ただ1つの観測対象から、十分な戻り信号が受信された場合には、ダウンコンバート信号は、ミキシング処理によって生成された最大振幅の周波数である、ただ1つの「ビート周波数」を有する。本明細書において用いられる限りでは、用語「レーダー信号」は、レーダーシステムによって送信または受信される無線周波数(RF)信号を意味している。
【0018】
後に説明する実施形態においては、勾配値を有する勾配(一次導関数)配列を生成するために、ダウンコンバートされた戻りレーダー信号の時間サンプルが処理される。勾配配列は、干渉信号の検出および干渉信号存在範囲の決定に用いられる。以下に説明する実施形態において、勾配値は絶対値で示される。しかしながら、本明細書において用いる限りでは、用語「勾配値」は、勾配の絶対値に関連する値に言及する場合にも、絶対値ではない勾配値に関連する値に言及する場合にも用いられる。以下に説明するように、いくつかの特定の勾配値が、上方勾配サンプル限界および下方勾配サンプル限界、および、干渉信号上方勾配サンプル極限および干渉信号下方勾配サンプル極限(例えば図4における)に関連付けられている。干渉信号の検出および干渉信号存在範囲の決定のために、以下の例示的な実施形態においては、勾配が用いられるが、容易に理解されるように、他のタイプの配列を用いることもできる。例えば別の一実施形態において、時間サンプルを処理して、電力値を有する電力配列を生成することができる。この場合には、上方電力サンプル限界および下方電力サンプル限界、および干渉信号上方電力サンプル極限および干渉信号下方電力サンプル極限が定められる。さらに、これらに代わるタイプの配列について後述する。
【0019】
ここで図2を参照すると、FMCWレーダーシステム50は、送信アンテナ54に接続されたFMCW送信システム64を備えている。FMCWレーダーシステム50は、さらに、受信アンテナ56に接続されたFMCW受信システム66を備えている。FMCW受信システム66は、ダウンコンバート信号73を供給するレーダー受信モジュール、すなわちダウンコンバータ68、およびダウンコンバート信号73に関連付けられた時間サンプル76を供給するレーダー信号サンプリングモジュール、すなわちアナログ−デジタル(A/D)コンバータ74を備えている。FMCWレーダーシステム50は、さらに、時間サンプル76を受け取り、かつ受け取った時間サンプル76を処理して、干渉信号を割り出す干渉検出器78(配列プロセッサ78aを有する)を備えている。FMCWレーダーシステム50は、さらに干渉信号存在範囲を決定する干渉存在範囲プロセッサ88(限界プロセッサ88aを有する)、およびレーダー戻り信号に関連付けられた時間サンプルから干渉信号を除去して、その干渉信号を除去された信号94を供給する干渉除去プロセッサ92(選択プロセッサ92aと重み付けプロセッサ92bとのうちの一方または両方を有する)を備えている。
【0020】
動作中、FMCWレーダーシステム50は、送信アンテナ54を介して、チャープ信号58を送信する。チャープ信号58は、観測対象52から反射されて、観測対象エコー60(本明細書においては、戻り信号とも呼ぶ)として戻り、受信アンテナ56によって受信される。受信アンテナ56は、送信アンテナ54と同じアンテナである場合もあるし、別のアンテナである場合もある。受信アンテナによって受信される干渉レーダー信号62を発生させる干渉体53が存在する場合がある。
【0021】
観測対象エコー60と干渉レーダー信号62との両方とも、ミキサ70およびチャープ発振器72によってダウンコンバートされて、ダウンコンバート信号73を供給する。ダウンコンバート信号は、アナログ−デジタル(A/D)コンバータ74によってサンプルされ、時間サンプル76が、干渉検出器78に供給される。時間サンプル76は、干渉レーダー信号62に伴う干渉信号を含んでいる場合がある。
【0022】
干渉検出器78の動作については、図4、図8、図9を参照して、後に、より詳細に説明する。要約すると、特定の一実施形態において、動作中、干渉検出器78は、時間サンプル76を処理して、時間サンプルに関連付けられた勾配配列値を有する勾配配列を生成し、次いで、それらの勾配配列値と少なくとも1つの閾値とを比較することによって、時間サンプル76内の干渉信号を検出する。
【0023】
干渉存在範囲プロセッサ88の動作については、図4A、図8、図10を参照して、後に、より詳細に説明する。要約すると、特定の一実施形態において、動作中、干渉存在範囲プロセッサ88は、少なくとも1つの閾値を超過する勾配配列値に対応する下方勾配サンプル限界および上方勾配サンプル限界を割り出す。干渉存在範囲プロセッサ88は、干渉信号の存在範囲(例えば時間範囲)を得るために、サンプル保護帯値を用いて、これらの限界を拡張する。
【0024】
干渉除去プロセッサ92の動作については、図5、図8、図10、図10Aを参照して、後に、より詳細に説明する。要約すると、干渉除去プロセッサは、時間サンプル76のなかから、干渉存在範囲プロセッサ88によって割り出された干渉信号存在範囲内の時間サンプルを含まない隣接時間サンプルグループを選択することができる。特定の一実施形態において、干渉除去プロセッサ92は、選択された時間サンプルにパディング、例えばゼロパディングを施すことができる。本質的に、隣接時間サンプルグループは、除去されることのない時間サンプルである。
【0025】
干渉検出器78が干渉信号を検出した場合には、レーダー戻り信号プロセッサ82は、干渉信号を除去された信号94を処理する。しかしながら、干渉検出器78が干渉信号を検出しなかった場合には、レーダー戻り信号プロセッサ82は、時間サンプル76と同じものである信号80を処理する。
【0026】
干渉信号を除去された信号94、またはそうでない場合には、干渉信号を含まない信号80は、例えばレーダー戻り信号プロセッサ82によって、レーダーシステムによる観測対象の検出および/または分類が実行されるように処理される(信号84によって表わされている)。
【0027】
いくつかの実施形態において、FMCW送信システム64は、固定掃引範囲、例えば約24.05〜約24.25GHzの範囲にわたって、レーダー周波数の掃引を実行するように適合化されている。しかしながら、他のいくつかの実施形態においては、FMCW送信システム64は、干渉信号に対応した範囲を除外された縮小掃引範囲にわたって、レーダー周波数の掃引を実行するように適合化されている。縮小掃引範囲については、以下において、より完全に検討する。
【0028】
ここで、図3を参照すると、グラフ100の横軸は、dBsm(1平方メートル当たりのデシベル)を単位とした、種々の観測対象サイズのレーダー断面積である。縦軸は、ダウンコンバート信号の時間サンプル(例えば図2の時間サンプル76)に関連付けられた最大予想勾配である。曲線102は、あらかじめ定められた距離限界内の任意の距離にある、種々のレーダー断面積を有する観測対象に対する最大予想勾配を示している。
【0029】
時間サンプル76(図2参照)に関連付けられた勾配の絶対値を、各時間サンプルj〔j=1、2、…、N−1(Nは、チャープ信号に関連付けられた時間サンプルの数)〕に対して、次式(数1)にしたがって算出することができる。
【数1】

【0030】
容易に理解されるように、数1における数2は、配列値を有する配列、より詳細には、時間サンプル76に関連付けられた勾配値を有する勾配配列である。勾配配列(数2)内の勾配値の数は、時間サンプル76(図2参照)の数と同じである場合もあるし、異なる場合もある。特定の一実施形態において、勾配配列(数2)内の勾配値の数は、時間サンプル76の数より少ない。
【数2】

【0031】
次のようにして、曲線102を導出することができる。時間サンプルに関連付けられた最大周波数(最大観測対象距離に対応する)は、次式(数3)にしたがって算出することができる。
【数3】

ここで、Rmaxは最大観測対象距離、cは光速、Δtは周波数掃引時間、fmaxは最大受信周波数、Bは周波数掃引の帯域幅である。
【0032】
逆に、fmaxより低い周波数の各々に対応する観測対象距離Rは、次式(数4)にしたがって算出することができる。
【数4】

【0033】
各観測対象距離(すなわち各周波数)における、自由空間での距離損失は、次式(数5)にしたがって算出することができる。
【数5】

【0034】
受信増幅器、例えば図2のダウンコンバータ68と組み合わされた受信増幅器の周波数依存利得(数6)は、システムに依存する。いくつかの実施形態において、受信増幅器の周波数依存利得(数6)は、上述の自由空間での距離損失を逆補償するように選択される。
【数6】

【0035】
時間サンプルに関連付けられた最大予想勾配は、全ての可能な周波数〈すなわち観測対象距離)にわたって、次式(数7)にしたがって算出することができる。
【数7】

【0036】
上式において、jは、1から、最小周波数から最大周波数までの周波数の数〈FFT周波数ビンの数)に等しい数までの自然数である。数7における数8は、サンプルレートとサンプル時間とのシステムパラメータに基づくj番目の観測対象距離に一致する距離における、受信信号の最大勾配配列である。最大勾配配列(数8)のj番目の要素を見出すために用いられる周波数は、上記の式〈fmaxに対する)のRmaxを、j番目の観測対象距離の値に置き換えることによって得られる。RCSは、観測対象のレーダー断面積である。
【数8】

【0037】
最大予想勾配配列(数9)に対する上記の式は、最大予想勾配値を有する最大予想勾配配列を与える式である。各観測対象距離における勾配を表わす最大予想勾配値のいずれも、曲線102に示されている、所定のレーダー断面積に伴う最大勾配値(数10)になり得る。容易に理解されるように、最大勾配値(数10)は、増幅器の周波数依存利得(数6)に依存するため、いかなる観測対象距離(すなわち、いかなる周波数)にある観測対象に対しても生じる可能性があり、必ずしも最も近い観測対象に対して生じるわけではない。
【数9】

【数10】

【0038】
最大予想勾配配列(数9)から選択された最大勾配値(数10)を、勾配配列値と比較する閾値として用いることができることは、以下に述べるように明白である。
【0039】
ここで、図4を参照すると、グラフ120の横軸は、勾配サンプル番号である。勾配サンプル番号は、勾配配列(数2)に対する上記の式にしたがって、時間サンプル76(図2参照)に関係している。特定の一実施形態においては、255個の勾配サンプル(および256個の時間サンプル)が存在する。しかし、別の実施形態においては、勾配サンプルの数は、255個より少ない場合もあるし、逆に多い場合もある。また、時間サンプルの数は、256個より少ない場合もあるし、逆に多い場合もある。グラフ120の縦軸は、勾配配列(数2)に対する上記の式にしたがって算出される勾配の絶対値である。
【0040】
曲線126は、勾配配列(数2)に対する上記の式にしたがって算出された、時間サンプル76(図2参照)に関連付けられた勾配の絶対値を示している。曲線126は、勾配配列(数2)の個々の勾配配列値すなわち勾配サンプル(個別には示されていない)をつなぎ合わせたものである。曲線126は、相対的に小さな勾配を有する時間サンプル76に対応する、曲線の一部分126aおよび126b、および相対的に大きな勾配を有する時間サンプル76に対応する、曲線の一部分126cを含んでいる。曲線の一部分126cが、干渉信号の存在を示していることは明白である。
【0041】
第1の閾値122(本明細書において、最大勾配閾値と呼ばれる)は、上述のようにして割り出された最大勾配値(数10)と一致している。上述のように、最大勾配値(数10)は、あらかじめ定められたレーダー断面積を有する観測対象に対して、観測対象距離がどうあれ最大勾配が得られる最大予想勾配である。したがって、干渉信号が存在する場合を除いて、明らかに、曲線126が、最大勾配閾値122を超過することはほとんどない。
【0042】
第2の閾値124(本明細書において、平均勾配閾値と呼ばれる)は、曲線の一部分126cを含む曲線126の全体にわたる、係数Kによって重み付けされた平均勾配を示している。平均勾配閾値は、例えば次式(数11)にしたがって算出することができる。
【数11】

【0043】
特定の一実施形態において、係数Kの値は3である。係数Kは、誤警報率を低くするように、すなわち、曲線126が平均勾配閾値124と交差する率を低くするように選択される。係数Kは、さらに、検出確率を高くするように、すなわち、干渉信号の存在が、以下に説明される技術によってほとんど完全に検出されるように選択される。明らかに、干渉信号が存在する場合を除いて、曲線126が、平均勾配閾値124を超過することはほとんどない。
【0044】
平均勾配閾値124は、最大勾配閾値122より小さいように示されているが、その逆も可能である。一代替実施形態においては、平均勾配閾値は、曲線の一部分126cを除外して、例えば勾配サンプルが最大勾配閾値とちょうど交差する範囲までで計算される。
【0045】
干渉信号は、曲線126、および、最大勾配閾値122および平均勾配閾値124を生成することができる、例えば図2の干渉検出器78によって割り出される。特定の一実施形態では、干渉信号の検出は、曲線126が、最大勾配閾値122と平均勾配閾値124との両方に交差する(すなわち、超過する)ことによってなされる。別の一実施形態においては、干渉信号の検出は、曲線126が、最大勾配閾値122と交差する(すなわち、超過する)ことだけによってなされる。さらに別の一実施形態においては、干渉信号の検出は、曲線126が、平均勾配閾値124と交差する(すなわち、超過する)ことだけによってなされる。
【0046】
別の実施形態においては、干渉信号の検出は、曲線126が、最大勾配閾値122と平均勾配閾値124との両方を超過することによってではなく、等しくなることによってなされる。別の実施形態においては、干渉信号の検出は、曲線126が、最大勾配閾値122を超過することだけによってではなく、等しくなることだけによってなされる。別の実施形態においては、干渉信号の検出は、曲線126が、平均勾配閾値124を超過することだけによってではなく、等しくなることだけによってなされる。別の実施形態においては、干渉信号の検出は、曲線126が、最大勾配閾値122を超過することだけによってなされるのではなく、最大勾配閾値122に等しくなり、かつ平均勾配閾値124を超過することによってなされる。別の実施形態においては、干渉信号の検出は、曲線126が、平均勾配閾値124を超過することだけによってなされるのではなく、平均勾配閾値124と等しくなり、かつ最大勾配閾値122を超過することによってなされる。本明細書において用いる限りでは、曲線および閾値に言及するときの用語「到達(する)」は、曲線が閾値に等しくなるか、または超過することを意味する。
【0047】
いくつかの構成においては、干渉信号の割り出しを、所定の数の勾配値が、最大勾配閾値122および平均勾配閾値124を超過する(または等しくなる)ことによってなすことができる。所定の数とは、2以上のいかなる数であってもよい。例えば特定の一実施形態において、干渉信号を検出するために、少なくとも2つの勾配値(最初と最後の勾配値)が、最大勾配閾値122および平均勾配閾値124を超過しなければ(または等しくならなければ)ならない。いくつかの実施形態においては、最大勾配閾値122および平均勾配閾値124を超過する(または等しくなる)勾配値の数は、動的に決定される。
【0048】
曲線126が、最大勾配閾値122と平均勾配閾値124とのうちのいずれか一方または両方に到達することによって、干渉信号が検出されると、干渉信号の存在範囲が、例えば図2の干渉存在範囲プロセッサ88によって決定される。この干渉信号の存在範囲の決定のために、閾値への到達を、平均勾配閾値124への曲線126(すなわち勾配)の到達として、割り出すことができる。
【0049】
干渉信号の勾配を表わす、曲線の一部分126cは、2つの点130、132において平均勾配閾値124と交差し、さらに場合によっては、それらの中間の点(点143はその単なる一例である)でも交差する。点130は、時間的に先に交差する勾配サンプルであり、本明細書においては、下方勾配サンプル限界と呼ばれる。同様に点132は、時間的に遅れて交差する勾配サンプルであり、本明細書においては、上方勾配サンプル限界と呼ばれる。
【0050】
所定の勾配サンプル数からなる第1のサンプル保護帯値が、下方勾配サンプル限界130から差し引かれて、本明細書において干渉信号下方勾配サンプル極限と呼ばれる点136が得られる。所定の勾配サンプル数からなる第2のサンプル保護帯値が、上方勾配サンプル限界132に足し合わされて、本明細書において干渉信号上方勾配サンプル極限と呼ばれる点138が得られる。特定の一実施形態において、第1と第2のサンプル保護帯値は同じ値を有し、例えば5サンプルである。しかしながら、別の実施形態においては、第1および第2のサンプル保護帯値は、5サンプルより大きいこともあるし、小さいこともある。またそれらは、同じ値を有することもあるし、異なる値を有することもある。いくつかの実施形態においては、第1および第2のサンプル保護帯値は、動的に、例えば曲線の一部分126cの形状に応じて決定される。動的な選択については、後に、図10を参照して、より完全に説明する。
【0051】
第1および第2のサンプル保護帯値は、干渉信号下方勾配サンプル極限136と干渉信号上方勾配サンプル極限138との間の勾配サンプルに対応する時間サンプルが十分に除去されるように選択される。第1および第2のサンプル保護帯値は、曲線の一部分126cのいかなる残留部分(例えば平均勾配閾値124より小さい、曲線の一部分126cの立ち上がりエッジおよび立ち下がりエッジ)に対応する時間サンプルも、以下に説明するように、時間サンプル全体からの除去の後に残らないように選択される。
【0052】
下方勾配サンプル限界130、上方勾配サンプル限界132、干渉信号下方勾配サンプル極限136、干渉信号上方勾配サンプル極限138、および点143は、平均勾配閾値124への到達(すなわち、等しくなること、または超過すること)に関連付けて説明したが、別の実施形態においては、到達は、最大勾配閾値122への到達として決定される。
【0053】
曲線126は、勾配値、より詳細には勾配の絶対値を有する勾配配列を表わしているが、別の配列値を有する別のタイプの配列を用いることもできる。後にさらに説明するように、配列、およびそれを構成している配列値には、限定するものではないが、勾配値(図4に示されている勾配の絶対値)を有する勾配(すなわち一次導関数)配列、高次導関数値を有する高次導関数配列、電力値を有する電力配列、および時間サンプルの絶対値を有する時間サンプル絶対値配列を含ませることができる。各配列タイプにおいて、最大勾配閾値122および平均勾配閾値124に相当する対応閾値を、ほとんど上述と同じように設定して、用いることができる。例えば高次導関数配列を用いる別の一実施形態において、最大勾配閾値122および平均勾配閾値124に代えて、最大高次導関数閾値および平均高次導関数閾値を用いることができる。電力配列を用いるさらなる別の一実施形態において、最大勾配閾値122および平均勾配閾値124に代えて、最大電力閾値および平均電力閾値を用いることができる。時間サンプル絶対値配列を用いるさらなる別の一実施形態において、最大勾配閾値122および平均勾配閾値124に代えて、最大時間サンプル絶対値閾値および平均時間サンプル絶対値閾値を用いることができる。したがって、いかなる配列タイプにおいても、上方勾配サンプル限界132および下方勾配サンプル限界130に、それぞれ相当するサンプル限界、および干渉信号上方勾配サンプル極限138および干渉信号下方勾配サンプル極限136に、それぞれ相当する干渉信号サンプル極限を割り出すことができる。
【0054】
曲線126は、勾配の絶対値として説明した勾配値と対応しているが、容易に理解されるように、別の構成において、勾配値は、そうではなくて、正または負の値をとることができる絶対値ではない勾配値であってもよい。
【0055】
ここで、図4Aを参照すると、グラフ150の横軸は、時間サンプル番号である。この時間サンプル番号は、時間サンプル76(図2参照)に伴うものである。図示されている限りでは、256個の時間サンプルが存在する。しかしながら、別の実施形態において、時間サンプルの数は、256個より少ない場合もあるし、多い場合もある。さらに、グラフ150の縦軸は、例えば図2のアナログ−デジタル(A/D)コンバータ74によって供給されるデジタルカウントによって表わされる時間サンプル76(図2参照)の振幅である。
【0056】
曲線152は、ダウンコンバート信号73(図2参照)に関連付けられた時間サンプル76を示している。曲線152は、個々に示されていない時間サンプルをつなぎ合わせたものである。曲線152は、干渉信号を含んでいない時間サンプル76を示している、曲線の一部分152a、152b、および干渉信号を含んでいる時間サンプル76を示している、曲線の一部分152cを有している。
【0057】
曲線の一部分152cが、図4の曲線の一部分126cと概ね位置が揃っていることは明白である。すなわち、曲線の一部分152cによって、時間変化として表わされている干渉信号は、図4においては、相対的に大きな勾配を有する、曲線の一部分126cによって表わされている。したがって、勾配サンプルの場合の干渉信号下方勾配サンプル極限136、および干渉信号上方勾配サンプル極限138は、それぞれ時間サンプルの場合の点162および164に対応している。本明細書においては、点162は、干渉信号下方時間サンプル極限と呼ばれ、点164は、干渉信号上方時間サンプル極限と呼ばれる。
【0058】
上述のように、干渉信号下方勾配サンプル極限136、および干渉信号上方勾配サンプル極限138は、サンプル保護帯値を適用されている。したがって、干渉信号下方時間サンプル極限162、干渉信号上方時間サンプル極限164は、干渉信号を囲む境界160a、160bを有する領域160を画定している。領域160の外側に、干渉信号が残存することはない。
【0059】
以下の検討から明らかになるように、干渉信号下方時間サンプル極限162と、干渉信号上方時間サンプル極限164との間の時間サンプルを、さらなる処理に先立って、256個の時間サンプルのグループから除去することができる。
【0060】
ここで、図5(図4Aの要素と同様の要素には、同一の符号が付されている)を参照すると、グラフ180の横軸は、時間サンプル番号である。時間サンプル番号は、時間サンプル76(図2参照)に対応している。図示されている限りでは、256個の時間サンプルが存在する。しかしながら、他の実施形態においては、時間サンプルの数は、256個より少ない場合もあるし、多い場合もある。グラフ180の縦軸は、例えば図2のアナログ−デジタル(A/D)コンバータ74によって供給されるデジタルカウントによって表わされる時間サンプル76(図2参照)の振幅である。
【0061】
曲線152として、曲線の一部分152aしか示されていない。干渉信号下方時間サンプル極限162によって、曲線152は、図4Aの曲線の一部分152cおよび152bを完全に除去されて、境界160aにおいて途切れている。干渉信号下方時間サンプル極限162から、少なくとも時間サンプル番号255まで、曲線152は、ゼロ値182で拡張されている。いくつかの実施形態においては、FFT処理のための、より多くのデータ点を設けるために、曲線152は、さらにゼロ値で拡張される。曲線152に加えられるゼロ値は、本明細書において「ゼロパディング」と呼ばれる。別の実施形態においては、曲線152は、ゼロ以外の値(本明細書において、より一般的に「パディング」と呼ばれる)で拡張される場合もある。
【0062】
ここで、図6(図1の要素と同様の要素には、同一の符号が付されている)を参照すると、グラフ200の横軸は、FFT周波数ビンとして与えられる周波数であり、縦軸は、FFTのカウント(ダウンコンバート信号73(図2参照)の時間サンプル76(図2参照)のFFT処理によって与えられる)のデシベル表示である。上述のように、曲線12は、ビート周波数f1を表わしており、観測対象までの距離に対応しているピーク14を有する周波数領域信号を示している。曲線12には、ノイズ背景16も含まれている。曲線18には、はっきりとしたピークは存在しない。曲線18は、受信信号が干渉信号も含んでいるときに生じる、FFT周波数領域処理の結果を表わす周波数領域信号を示している。曲線18においては、ピーク14を見つけることはできないか、もしくはピーク14を正確に見つけることはできない。
【0063】
曲線204は、図4、図4A、図5に示されている上述の技術によって与えられる周波数領域信号の結果を示している。曲線204を作成するために用いた時間サンプルは、曲線18を計算するために用いた時間サンプルと同じである。しかしながら、曲線204においては、干渉信号に対応する時間サンプルは、上述の技術によって除去されている。
【0064】
曲線204には、ピーク208が存在する。曲線204には、さらに、ノイズ背景212が存在する。観測対象が存在し、かつ干渉信号が存在しない状態で得られた曲線12と、観測対象と干渉信号との両方が存在する状態で得られた後、干渉信号が上述の技術によって除去された曲線204とを比較すると、ピーク208は、ピーク14と実質的に同じ周波数に存在するが、より広くなっていることがわかる。さらに、ノイズ背景212は、ノイズ背景16より大きいことがわかる。ピーク208がより広く、かつノイズ背景212がより大きくなるために、観測対象と干渉信号との両方が存在する状態で得られた後、干渉信号が除去された場合にFMCWレーダーシステムによって得られた曲線204は、観測対象が存在し、かつ干渉信号が存在しない場合にFMCWレーダーシステムによって得られた曲線12に比して、その正確性が低くなり勝ちであることが理解される。しかしながら、同時に曲線204においては、観測対象までの距離を表わすピーク208を割り出すことができるのに対して、観測対象と干渉信号との両方が存在する状態で得られた後、干渉信号が上述の技術によって除去されなかった曲線18においては、対応するピークを割り出すことができないことも理解される。したがって、上述の技術は、観測対象と干渉信号との両方が存在する状態におけるFMCWレーダーシステムの正確性を大幅に改善することができる。
【0065】
ここで、図7(図4Aの要素と同様の要素には、同一の符号が付されている)を参照すると、グラフ220の横軸は、時間サンプル番号である。時間サンプル番号は、時間サンプル76(図2参照)に対応している。さらにグラフ220の縦軸は、例えば図2のアナログ−デジタル(A/D)コンバータ74によって供給されるデジタルカウントによって表わされる時間サンプル76(図2参照)の振幅である。
【0066】
上述のように、曲線152は、ダウンコンバート信号73(図2参照)に関連付けられた時間サンプル76を示している。曲線152は、干渉信号を含んでいない時間サンプル76を示す曲線の一部分152a、152b、および干渉信号を含んでいる時間サンプル76を示している、曲線の一部分152cを有している。
【0067】
干渉信号下方時間サンプル極限162、および干渉信号上方時間サンプル極限164は、領域160を画定している。
【0068】
凹部222aを有する曲線222は、時間サンプルに適用することができる数学的な重み付け関数を示している。容易に理解されるように、曲線222が、曲線152によって示されている時間サンプルに適用されると、領域160内の時間サンプル、すなわち干渉信号を表わす、曲線の一部分152cは一般的に小さくなる。それでも、時間窓内の256個の時間サンプルは、依然として残っている。いくつかの実施形態においては、その後のFFT処理において用いるためのさらなる時間サンプルを与えるために、例えば256個の別の値を、時間窓内の256個の時間サンプルにパディングする場合がある。
【0069】
曲線222は、用いることができる重み付け関数の一例を示しているにすぎない。他の重み付け関数を用いることもできる。例えばいくつかの実施形態において、窓関数の組合せに基づいて、重み付け関数を生成することができる。例えば256個の時間サンプル(例えば図2の時間サンプル76)のグループが、干渉信号によって損ねられた50個の時間サンプルを含んでいる特定の一実施形態において、256サンプルのハミング窓関数に、50個の損ねられた時間サンプルの領域の(1−余弦)重み付け関数を乗じることによって、重み付け関数を構築することができる。別の一実施形態においては、重み付け関数は、他の窓関数と組み合わされていない、50個の損ねられた時間サンプルの領域の(1−余弦)重み付け関数である場合もある。
【0070】
図8〜図10Bは、FMCWレーダーシステム50(図2参照)において実施され、かつ以下で検討する技術に関するフローチャートを示している。本明細書において「処理ブロック」と呼ばれる矩形ブロック(図8のブロック252に代表される)は、コンピュータソフトウェア命令または命令群を表わす。本明細書において「判断ブロック」」と呼ばれる菱形ブロック(図8のブロック258に代表される)は、処理ブロックでなされるコンピュータソフトウェア命令の実行に影響を与えるコンピュータソフトウェア命令または命令群を表わす。
【0071】
それに代えて、処理ブロックおよび判断ブロックは、デジタル信号プロセッサ回路、または特定用途向け集積回路(ASIC)などの機能的に等価な回路によって実行されるステップを表わす場合もある。フローチャートは、いかなる特定のプログラミング言語のシンタックスも表わすものではない。そうではなくて、フローチャートは、特定の装置に必要とされる処理を実行するための回路の作製、またはコンピュータソフトウェアの作成のために必要な機能的情報を、当業者に示すためのものである。ループおよび数値変数の初期化、および一時的な数値変数の使用などの多くのルーチンプログラムのブロックは示されていないことに注意されたい。特に断らない限り、記述される一連の特定のブロックは、例示的なものであるにすぎず、本発明の精神から逸脱することなく変形可能であることは、当業者には明らかである。したがって、特に断らない限り、以下に記述されるブロックの順序は特別の意味を持たず、可能であれば、いかなる好都合な、または所望の順序で、それらのステップを実行することができる。
【0072】
ここで図8を参照すると、プロセス250は、ブロック252で開始する。ブロック252において、レーダーRF信号が、例えば図2のFMCW受信システム66によって受信される。
【0073】
ブロック253において、受信されたレーダーRF信号は処理され、ダウンコンバートされたレーダー信号、例えば図2のダウンコンバート信号73が供給される。
【0074】
ブロック254において、ダウンコンバート信号73が、例えば図2のアナログ−デジタル(A/D)コンバータ74によって時間サンプルされて、時間サンプル76(図2参照)が供給される。
【0075】
上述のように、時間サンプル内には、干渉信号が存在する場合がある。ブロック256において、干渉信号を検出するために、例えば図2の干渉検出器78によって、時間サンプルが処理される。例えば図4および図4Aを参照して説明した技術を用いて、時間サンプルを処理することができる。時間サンプルの処理については、後に、図9を参照して、さらに説明する。
【0076】
判断ブロック258において、干渉信号が検出されたか否かについて判断がなされる。ブロック258において干渉信号が検出された場合には、プロセスはブロック260に進んで、干渉信号存在範囲が、例えば図2の干渉存在範囲プロセッサ88によって決定される。例えば図4および図4Aを参照して説明した技術を用いて、この決定を行うことができる。この決定については、後に図10を参照して、さらに説明する。
【0077】
ブロック262において、ブロック260で割り出された干渉信号が、例えば図2の干渉除去プロセッサ92によって、ブロック254で生成された時間サンプルから除去される。例えば図5および/または図7を参照して説明した技術を用いて、この除去を行うことができる。この除去については、後に図10Aおよび図10Bを参照して、さらに説明する。
【0078】
ブロック264において、レーダーシステムによる観測対象の検出および/または分類が実行されるように、例えば図2のレーダー戻り信号プロセッサ82によって、干渉信号を除去された信号94(図2参照)が処理される(図2の信号84によって表わされている)。ブロック264における処理には、例えば周波数領域変換(例えばFFT)を含めることができる。
【0079】
特定の一実施形態において、レーダーシステムによる観測対象の検出および/または分類を、例えば2003年6月10日に発行された特許文献1に記載されている車両側部物体検出システムに関連付けることができる。しかしながら、上述のシステムおよび技術は、車両への適用に限定されない。
【0080】
ここで図9を参照すると、例えば図2の干渉検出器78によって実行することができるプロセス300が、ブロック302で開始する。ブロック302において、図8のブロック254で生成された時間サンプルに基づいて、勾配配列値を有する勾配配列が生成される。勾配配列は、例えば図4の曲線126によって表わされている。
【0081】
ブロック304において、第1の閾値が生成される。特定の一実施形態において、第1の閾値は、図4の最大勾配閾値122である。ブロック306において、第2の閾値が生成される。特定の一実施形態において、第2の閾値は、図4の平均勾配閾値124である。
【0082】
ブロック308において、ブロック302で生成された勾配配列値が、ブロック304、306で、それぞれ生成された第1および/または第2の閾値と比較される。
【0083】
判断ブロック310において、ブロック302で生成された勾配配列値のうちの少なくとも所定の数が、第1および第2の閾値の両方に到達した場合には、ブロック312において、干渉信号の存在が割り出される。すなわち、干渉信号が検出される。所定の数は、2以上の任意の数であってよい。特定の一実施形態においては、所定の数は2である。いくつかの実施形態においては、所定の数は動的に決定される。
【0084】
図4を参照して説明したように、図示の特定の実施形態においては、干渉信号の検出は、勾配配列値(図4の曲線126)が、ブロック304および306において生成された第1および第2の閾値すなわち最大勾配閾値122および平均勾配閾値124の両方に到達する(超過する、または等しくなる)ことによってなされる。別の一実施形態においては、干渉信号の検出は、勾配配列値が、第1の閾値すなわち最大勾配閾値122に到達する(超過する、または等しくなる)ことだけによってなされる。さらなる別の一実施形態においては、干渉信号の検出は、勾配配列値が、第2の閾値、すなわち平均勾配閾値124に到達する(超過する、または等しくなる)ことだけによってなされる。
【0085】
判断ブロック310において、勾配配列値のいずれもが、第1および第2の閾値に到達しなかった場合には、ブロック314において、干渉信号が検出されない。
【0086】
容易に理解されるように、例えば1つのチャープ信号のデータに対して、プロセス300を実行することができ、また連続チャープ信号の連続する各チャープ信号のデータに対して、または連続チャープ信号のうちの所定の回数のチャープ信号のデータに対して、プロセス300を繰り返すことができる。
【0087】
上述の説明においては、勾配値を有する勾配配列、それに対応する最大勾配閾値および平均勾配閾値に関連付けて、プロセス300を説明した。しかし、例えば図4に関連して説明したように、別の実施形態においては、別のタイプの配列値を有する別のタイプの配列を、それらの別のタイプの配列値に対応する最大閾値および平均閾値とともに用いることができる。
【0088】
ここで図10を参照すると、例えば図2の干渉存在範囲プロセッサ88によって実行することができるプロセス350が、ブロック352で開始する。ブロック352において、干渉信号に基づいて、下方勾配サンプル限界が割り出される。ブロック354において、上方勾配サンプル限界が割り出される。下方勾配サンプル限界および上方勾配サンプル限界は、例えば図4上の点である下方勾配サンプル限界130、上方勾配サンプル限界132によって、それぞれ示されている。
【0089】
ブロック356において、第1のサンプル保護帯値が選択される。また、ブロック358において、第2のサンプル保護帯値が選択される。サンプル保護帯値の選択については、図4および図4Aを参照して上述されている。サンプル保護帯値の選択は、静的である場合もあるし、動的である場合もある。
【0090】
動的な選択は、種々の要因に依存し得る。例えばいくつかの実施形態において、相対的に小さな存在範囲を有する干渉信号に対して、相対的に小さなサンプル保護帯値を選択する場合があり、また相対的に大きな存在範囲を有する干渉信号に対して、相対的に大きなサンプル保護帯値を選択する場合がある。別のいくつかの実施形態においては、相対的に小さな配列値を有する干渉信号に対して、相対的に小さなサンプル保護帯値を選択する場合があり、また、相対的に大きな配列値を有する干渉信号に対して、相対的に大きなサンプル保護帯値を選択する場合がある。
【0091】
ブロック360において、干渉信号下方勾配サンプル極限を得るために、第1のサンプル保護帯値が、下方勾配サンプル限界から差し引かれる。同様に、ブロック362において、干渉信号上方勾配サンプル極限を得るために、第2のサンプル保護帯値が、上方勾配サンプル限界に加えられる。干渉信号上方勾配サンプル極限、および干渉信号下方勾配サンプル極限は、例えば図4上の点である、干渉信号上方勾配サンプル極限138、および干渉信号下方勾配サンプル極限136によって、それぞれ示されている。
【0092】
ブロック364において、干渉信号下方時間サンプル極限は、干渉信号下方勾配サンプル極限に基づいて割り出される。同様に、ブロック366において、干渉信号上方時間サンプル極限は、干渉信号上方勾配サンプル極限に基づいて割り出される。干渉信号上方時間サンプル極限および干渉信号下方時間サンプル極限は、例えば図4A上の点である干渉信号上方時間サンプル極限164および干渉信号下方時間サンプル極限162によって、それぞれ示されている。それらは、図4の、干渉信号上方勾配サンプル極限138および干渉信号下方勾配サンプル極限136に、それぞれ対応している。
【0093】
容易に理解されるように、例えば1つのチャープ信号のデータに対して、プロセス350を実行することができ、また連続チャープ信号の連続する各チャープ信号のデータに対して、または連続チャープ信号のうちの所定の回数のチャープ信号のデータに対して、プロセス350を繰り返すことができる。
【0094】
上述の説明においては、勾配サンプル限界、および干渉信号勾配サンプル極限に関連付けて、プロセス350を説明した。しかしながら、例えば図4に関連して説明したように、別の実施形態においては、別のタイプの配列値を有する別の配列に対応するサンプル限界および干渉信号サンプル極限を用いることができる。
【0095】
ここで図10Aを参照すると、例えば図2の干渉除去プロセッサ92によって実行することができるプロセス400が、ブロック402で開始される。ブロック402において、図2の時間サンプル76の中から、図10のブロック364および366で割り出された干渉信号下方時間サンプル極限と、干渉信号上方時間サンプル極限との間の時間サンプルを除いた隣接時間サンプルグループが選択される。選択された隣接時間サンプルグループは、例えば図4Aおよび図5の曲線の一部分152aに一致している場合がある。そうではなくて、選択された隣接時間サンプルグループは、例えば図4Aの曲線の一部分152bに一致している場合がある。いくつかの実施形態においては、選択された隣接時間サンプルグループは、干渉信号下方時間サンプル極限と干渉信号上方時間サンプル極限との間の時間サンプルを除いた隣接時間サンプルグループの中の最大のもの(例えば曲線の一部分152a)である。
【0096】
ブロック404において、ブロック402で選択された隣接時間サンプルグループが、例えば図5に示されているゼロパディング182でパディングされる。しかしながら、別の実施形態においては、選択された隣接時間サンプルグループは、0以外の値でパディングされる。さらなる別の実施形態においては、選択された隣接時間サンプルグループは、パディングされない。
【0097】
次いで、ゼロパディングされた隣接時間サンプルグループを、例えば図2のレーダー戻り信号プロセッサ82によって、さらに処理することができる。レーダー戻り信号プロセッサ82は、ゼロパディングされた隣接時間サンプルグループに対して、例えばFFTを実行することができる。しかしながら、特定の一実施形態において、FFT処理に先立って、ブロック406において、例えばハニング窓関数やハミング窓関数などの従来の窓関数を用いて、ゼロパディングされた隣接時間サンプルグループに重み付けすることができる。
【0098】
容易に理解されるように、例えば1つのチャープ信号のデータに対して、プロセス400を実行することができる。また、連続チャープ信号の連続する各チャープ信号のデータに対して、または連続チャープ信号のうちの所定の回数のチャープ信号のデータに対して、プロセス400を繰り返すことができる。
【0099】
上述の説明においては、勾配配列に関連付けて、プロセス400を説明した。しかしながら、例えば図4に関連して説明したように、別の実施形態においては、別のタイプの配列を用いることができる。
【0100】
ここで図10Bを参照すると、例えば図2の干渉除去プロセッサ92によって実行することができるプロセス450は、図10Aの方法に対する一代替方法を示している。プロセス450は、ブロック452で開始する。ブロック452において、従来通りの、または従来通りではない重み付け関数が、図10のブロック364および366で割り出された干渉信号下方時間サンプル極限、および干渉信号上方時間サンプル極限に関連付けて生成される。重み付け関数は、例えば図7の曲線222と一致していてもよい。重み付け関数は、それが、時間サンプル(図2の時間サンプル76)に適用されたときに、干渉信号を減少させるように選択される。
【0101】
ブロック454において、干渉信号下方時間サンプル極限と、干渉信号上方時間サンプル極限との間の時間サンプルを含む時間サンプルに、重み付け関数を作用させる(すなわち、時間サンプルに重み付け関数を乗じる)。
【0102】
次いで、例えば図2のレーダー戻り信号プロセッサ82によって、重み付けされた時間サンプルを、さらに処理することができる。レーダー戻り信号プロセッサ82は、ブロック454で生成された、重み付けされた時間サンプルに対して、例えばFFTを実行することができる。
【0103】
容易に理解されるように、例えば1つのチャープ信号のデータに対して、プロセス450を実行することができ、また連続チャープ信号の連続する各チャープ信号のデータに対して、または連続チャープ信号のうちの所定の回数のチャープ信号のデータに対して、プロセス450を繰り返すことができる。
【0104】
上述の説明においては、勾配配列に関連付けて、プロセス450を説明した。しかしながら、例えば図4に関連して説明したように、別の実施形態においては、別のタイプの配列を用いることができる。
【0105】
上述の干渉除去の方法は、連続波(CW)干渉信号が含まれたレーダー戻り信号に適用可能であるだけではなく、送信波と同じ帯域内にあるいかなる干渉信号が含まれたレーダー戻り信号にも適用可能である。上述のシステムおよび方法は、いかなる周波数およびいかなる帯域幅において作動するいかなるFMCWレーダーシステムにおいても、任意のタイプの干渉信号を含んでいる、時間サンプルされたレーダー戻り信号から、損ねられたデータサンプルを除去することを可能にする。1チャープ戻り信号毎に、干渉信号を割り出して、除去することができるのであるから、干渉信号は、全チャープ戻り信号にわたって同一の周波数を有していなければならないということもなければ、同一の特性を有していなければならないということもないことは明白である。さらに、1チャープ戻り信号内に、2つ以上の干渉信号が存在していてもよい。
【0106】
上述のように、本発明の実施形態においては、勾配配列値を有する勾配配列について説明がなされているが、配列およびその配列値には、限定するものではないが、例えば数1によって記述される、勾配値(図4に示されている勾配の絶対値)を有する勾配(すなわち一次導関数)配列、高次導関数値を有する高次導関数配列、例えば数12によって記述される、電力値を有する電力配列、および例えば数13によって記述される、時間サンプルの絶対値を有する時間サンプル絶対値配列を含めることができる。
【数12】

【数13】

【0107】
勾配配列(例えば図4の曲線126)と異なるタイプの配列を用いた場合には、第1および第2の閾値(例えば図4の最大勾配閾値122および平均勾配閾値124に相当する)が、勾配値に関連付けられることはなく、またサンプル限界、および干渉信号サンプル極限(例えば図4の下方勾配サンプル限界130、上方勾配サンプル限界132、干渉信号下方勾配サンプル極限136、干渉信号上方勾配サンプル極限138に相当する)が、勾配サンプル番号に関連付けられることはないことは明白である。そうではなくて、第1および第2の閾値は、用いているタイプの配列の最大配列値および平均配列値に、それぞれ関連付けられる。同様に、サンプル限界および干渉信号サンプル極限は、用いているタイプの配列のサンプル番号に関連付けられる。
【0108】
上述のシステムおよび技術は、干渉信号(例えば図2の干渉レーダー信号62)の検出と、時間サンプル(例えば図2の時間サンプル76)からの干渉信号の除去との両方の能力を備えている。しかしながら、干渉信号が検出されると、その干渉信号を除去することもできるが、以下に説明する別の仕方で、干渉信号を回避することもできる。
【0109】
上述のように、FMCWレーダーの特定の用途の1つに、自動車用レーダーシステム、例えば車両に隣接する死角内にある物体を検出するために用いられる自動車用レーダーシステムがある。自動車用レーダーは、例えば約24.05〜約24.25GHzの範囲にある周波数チャープ、すなわち、約200MHzの周波数掃引を用いることができる。このような取り決めの下で、時間サンプル(例えば図2の時間サンプル76)が、FFTまたは同様の技術によって周波数領域に変換されると、生じた周波数領域における観測対象の検出によって、観測対象までの距離が検出される。観測対象検出のための方法および装置は、例えば2003年6月10日に発行された特許文献1に記載されている。特許文献1に記載されている処理においては、200MHzの掃引範囲にわたるFMCW周波数掃引が用いられており、1FFT周波数ビン当たり、0.6メートルよりも良好な観測対象距離分解能(すなわち0.6メートルの距離分解能)が得られている。
【0110】
例えば車両速度を検出するために用いられる従来の警察レーダーは、上述の自動車用FMCWレーダーの掃引範囲内にある、例えば約24.197GHzで動作する。したがって、送信器が24.197GHz近傍のレーダー波を放射しているときに収集される時間サンプル76は、この干渉信号によって、極めて大きな作用を及ぼされる。この干渉信号は、FFTによる処理を施されると、多数のFFT周波数ビンに広がりがちである。
【0111】
1つの構成として、干渉信号が検出されたとき、通常は約24.05〜約24.25GHzの範囲で掃引する周波数掃引を、それと異なる掃引範囲、例えばより狭い掃引範囲を掃引するように変更する。例えば特定の一実施形態において、約24.05〜約24.195GHzの範囲、すなわち約145MHzの総掃引幅で掃引するように、周波数掃引が変更される。このような構成においては、容易に理解されるように、約24.197GHzの警察レーダーからの干渉信号は完全に回避されて、時間サンプル76には現れない、すなわち、時間サンプル76を周波数領域に変換したときにFFTスペクトルに現われない。
【0112】
容易に理解されるように、上述のように、送信されるFMCW信号の掃引範囲を縮小することによって、1FFT周波数ビン当たりの観察対象距離幅の値が、より大きくなる、すなわち、距離分解能が、より粗くなる。縮小FMCW掃引範囲を用いながら、元の距離分解能を得るために、FMCW掃引範囲が縮小されている場合のFFT周波数ビンの値に補間を施すことができる。それによって、元の周波数掃引を用いているときの元の距離分解能と同等の良好な、改善された距離分解能を得ることができる。
【0113】
いくつかの実施形態において、縮小掃引範囲は、静的に選択される。言い換えると、何らかの干渉信号が検出されると、システムは、あらかじめ定められた期間、あらかじめ定められた縮小掃引範囲を送信するように変化する。しかしながら、別の実施形態においては、縮小掃引範囲は、干渉信号の検出された周波数に応じて選択される。
【0114】
なおさらなる実施形態においては、送信RF信号を用いずに、干渉信号が、受動的に検出されることがある。上述の実施形態と同様に、いくつかの実施形態において、干渉信号の検出に応答して、縮小掃引範囲が、静的に選択される。言い換えると、何らかの干渉信号が検出されると、システムは、あらかじめ定められた期間、あらかじめ定められた縮小掃引範囲を送信するように変化する。しかしながら、別の実施形態においては、縮小掃引範囲は、受動的に検出された干渉信号の周波数に応じて選択される。いくつかの実施形態においては、複数の縮小掃引範囲が存在してもよい。それらの各々は、検出された干渉信号から割り出された周波数に応じた開始周波数および終了周波数を有する。
【0115】
本明細書において引用した文献は、その全体が、参照のためとして本明細書に組み込まれる。以上、本発明の好適な実施形態について説明してきたが、それらの概念を取り入れた別の実施形態を考えることもできることは、当業者には明白である。したがって、本発明の範囲は、上に記載した実施形態に限定されるべきではなく、請求項の精神および範囲によってのみ限定されるべきである。
【符号の説明】
【0116】
10、100、120、150、180、200、220 グラフ
12、18、102、126、152、204、222 曲線
14、208 ピーク
16、212 ノイズ背景
50 FMCWレーダーシステム
52 観測対象
53 干渉体
54 送信アンテナ
56 受信アンテナ
58 チャープ信号
60 観測対象エコー
62 干渉レーダー信号
64 FMCW送信システム
66 FMCW受信システム
68 ダウンコンバータ
70 ミキサ
72 チャープ発振器
73 ダウンコンバート信号
74 アナログ−デジタル(A/D)コンバータ
76 時間サンプル
78 干渉検出器
78a 配列プロセッサ
80、84 信号
82 レーダー戻り信号プロセッサ
88 干渉存在範囲プロセッサ
88a 限界プロセッサ
92 干渉除去プロセッサ
92a 選択プロセッサ
92b 重み付けプロセッサ
94 干渉信号を除去された信号
122 最大勾配閾値
124 平均勾配閾値
126a、126b、126c、152a、152b、152c 曲線の一部分
130 下方勾配サンプル限界
132 上方勾配サンプル限界
136 干渉信号下方勾配サンプル極限
138 干渉信号上方勾配サンプル極限
143 点
160 領域
160a、160b 境界
162 干渉信号下方時間サンプル極限
164 干渉信号上方時間サンプル極限
182 ゼロパディング
222a 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
RF(無線周波数)受信信号を受信するステップと、
前記RF受信信号中に、干渉信号の存在を検出するステップと、
前記干渉信号を回避するように、掃引範囲を選択するステップと、
前記掃引範囲を含む周波数変調連続波(FMCW)RF信号を送信するステップとを
含むレーダー処理の方法。
【請求項2】
前記干渉信号の周波数を検出するステップであって、前記掃引範囲は、前記干渉信号の周波数を避けるように選択されるステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
干渉信号の存在を検出する前記ステップは、
前記RF受信信号に関連付けられた時間サンプルを生成するステップと、
前記時間サンプルに関連付けられた配列値を有する配列を生成するステップと、
前記配列値に関連付けられた少なくとも1つの閾値を生成するステップと、
前記配列値と、前記少なくとも1つの閾値とを比較するステップとを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも所定の数の配列値が、前記少なくとも1つの閾値に到達することによって、前記干渉信号の存在の検出がなされるステップをさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記配列値は、勾配値、高次導関数値、時間サンプルの絶対値、電力値のうちから選択された1つを有する、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも1つの閾値を生成する前記ステップは、最大予想配列値に関連付けられた第1の閾値と、平均配列値に関連付けられた第2の閾値とのうちの少なくとも一方を生成するステップを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
RF受信信号を受信するように適合化されており、かつ該RF受信信号に応答してダウンコンバート信号を供給するように適合化されているRF受信モジュールと、
前記RF受信モジュールに接続されており、かつ前記ダウンコンバート信号に関連付けられた時間サンプルを生成するように適合化されているRF信号サンプリングモジュールと、
前記時間サンプルを受けるために配置されており、干渉信号の存在を検出するように適合化されており、かつ該干渉信号を回避する掃引範囲を選択するように適合化されている干渉検出器と、
前記掃引範囲を含む周波数変調連続波(FMCW)RF信号を送信するように適合化されているRF送信モジュールとを備えてなるレーダーのシステム。
【請求項8】
前記干渉検出器は、前記時間サンプルに関連付けられた配列値を有する配列を生成するように適合化されており、該配列値に関連付けられた少なくとも1つの閾値を生成するように適合化されており、かつ該配列値と該少なくとも1つの閾値とを比較するように適合化されている配列プロセッサを備えている、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記配列プロセッサは、さらに少なくとも所定の数の配列値が、前記少なくとも1つの閾値に到達することによって、前記干渉信号の存在の検出がなされるように適合化されている、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記配列値は、勾配値、高次導関数値、時間サンプルの絶対値、電力値のうちから選択された1つを有する、請求項8に記載のシステム。
【請求項11】
前記少なくとも1つの閾値は、最大予想配列値に関連付けられた第1の閾値と、平均配列値に関連付けられた第2の閾値とのうちの少なくとも一方を有する、請求項8に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図4A】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図10A】
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【図10B】
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【公表番号】特表2010−515061(P2010−515061A)
【公表日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−544190(P2009−544190)
【出願日】平成19年12月19日(2007.12.19)
【国際出願番号】PCT/US2007/088063
【国際公開番号】WO2008/082973
【国際公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(509181747)ヴァレオ レイテオン システムズ インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】