説明

レーダ信号処理装置

【課題】広帯域信号であっても繰り返し処理することなく、高速に、かつ、安定した、正確な補正を行う。
【解決手段】有限長の実部信号及び虚部信号を格納する信号格納部1110,1120と、実部信号及び虚部信号のスペクトルを求めるフーリエ変換部1310,1200と、それらの各スペクトルのうちの定められた帯域の信号のみを通過させる帯域通過処理部1320,1330と、帯域通過処理された信号を用いて補正係数を算出する補正係数算出部1340と、算出した補正係数により虚部信号のスペクトルを補正する補正処理部1400と、補正された虚部信号のスペクトルを時系列の虚部信号に戻す逆フーリエ変換手段と、逆フーリエ変換により得られた虚部信号を格納するq信号格納部1600を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はレーダ信号処理装置に関し、特に、地上に設置、もしくは、航空機や人工衛星等の移動体に搭載されたレーダの受信機や、レーダ以外の例えば無線通信などの電磁波を受信する受信機等に使用される、レーダ信号処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図11は、これらの受信機の一般的な回路図の一例を示したものである。レーダ中心周波数を中心とする周波数帯域を持つレーダ受信波は、まず、受信アンテナ1で受信され、一定の周波数を持つ安定化局部発振器2の信号と周波数ミキサ3で混合され、第1の帯域通過フィルタ(BPF−1)4を通過する。これにより、Intermediate Frequency(IF)を中心とする周波数帯域を持つIF信号に変換される。ただし、受信機によってはこれらの処理を省き、レーダ受信波をIF信号と見做した構成もありうる。
【0003】
次に、IF信号を2系統に分岐させる。分岐させた一方のIF信号は、まず、周波数ミキサ5でコヒーレント発振器6の信号と混合され、さらに、第2の帯域通過フィルタ(BPF−2)7を通過することで、中心周波数fcの周波数帯域を持つ同相(in-phase,i)信号(以下、i信号とする。)に変換される。中心周波数fcは任意である。
【0004】
分岐させた他方のIF信号は、周波数ミキサ9により、コヒーレント発振器6の信号をπ/2移相器10に通過させて得た信号と混合され、さらに、第3の帯域通過フィルタ(BPF−3)11を通過させることで、中心周波数fcの周波数帯域を持つ直交(quadrature,q)信号(以下、q信号とする。)に変換される。
【0005】
こうして得られたi信号(実部信号)とq信号(虚部信号)とは、それぞれ、アナログ/ディジタル変換器8,12で記録される。アナログ/ディジタル変換器8,12は、図12のように限られた有限長の時間に限り信号を記録する動作を繰り返す場合と、図13のように連続的に信号を記録する場合とが考えられる。前者の記録信号を第nパルス目の信号、後者の信号を連続した信号と呼ぶ。なお、ここで、nは、記録開始からの記録回数である。パルスとしては、図12に示したような時間幅の短いパルスの他、時間的に長いChirp信号(周波数が時間変化に伴い線形もしくは非線形に変化する信号)や、Dechirp-on-receive方式の信号(周波数が電波伝搬距離に比例する信号)などが考えられる。
【0006】
第2および第3の帯域通過フィルタ7,11、移相器10、及び/または、信号の伝送路に歪みが無い場合は、i信号とq信号とは位相が直交した信号となる。ここでの歪みとは、信号が通過または処理されることにより、信号の位相や振幅が変化することを表す。歪みが生じたことにより、i信号とq信号の位相が直交していない第nパルス目のi信号(i(t))及びq信号(q(t))は、一般に以下の式(1)でそれぞれ表される。
【0007】
【数1】

【0008】
ここで、上式(1)のi(t),q(t)は、時刻t(ただし、0≦t≦T、Tはパルスの長さ)での第nパルス目のi信号とq信号である。ただし、パルスの長さTはn毎に変わることも考えられる。上式(1)の右辺は、一般的な実関数を離散コサイン級数形式で表したものである。fは周波数、am,nはi(t)信号のfに関する展開係数、φm,nは展開の際の位相項である。g及びΔは、それぞれ振幅と位相の歪みを表す。ここでは、i(t)信号を基準としてq(t)信号を表しているが、逆に、q(t)信号を基準としてi(t)信号を表しても構わない。また、このことから、ここで述べる歪み補正は、一方の信号に対して他方が直交するように補正するので、i(t)信号とq(t)信号は可換である。
【0009】
これらの歪みは、特に帯域の広い信号を扱う場合には、ハードウェア設計上避けられないものである。歪みがある状態でレーダ信号処理すると、何もない場所でも物があるかのような結果が得られたり(虚像の発生)、レーダ分解能が劣化するなどの現象が生じる。特に、パルス同士の位相の変化を信号処理に使用する合成開口レーダなどのコヒーレント処理を行うレーダでは、歪みで生じる位相の誤差により、レーダ計測結果に大きな誤差が生じる。また、通信では伝送誤りが発生する。このため、図11の受信機やその他の装置で得られたi信号とq信号とが直交していない場合は、これを補正し、直交させた後にレーダ信号処理などを行う必要がある。
【0010】
このため、従来技術においては、周波数毎に以下の(2)式に示す補正係数a,bを用いて、q(t)の歪みを補正して、歪みの無いq’(t)を得て対応していた(例えば、非特許文献1参照。)。
【0011】
【数2】

【0012】
【非特許文献1】M. Heqiang and P. Yingning,"An Approach to the Correction of I and Q Imbalance in Time Domain", 2001 CIE International Conference on Radar Proceedings, pp. 1006-1010, 2001
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上記の非特許文献1の方法では、周波数毎に歪みの補正を行う必要があるため、広帯域な信号の補正の場合は繰り返し補正を実施する必要が生じ、処理に時間を要するという問題点があった。また、係数a,bの分母が0に近づくと、正確に係数a,bを求めることが難しくなることから、正確な補正が出来なくなるという問題点があった。
【0014】
この発明はかかる問題点を解決するためになされたものであり、広帯域信号であっても繰り返し処理することなく、高速に、かつ、安定した、正確な補正を行うことが可能なレーダ信号処理装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この発明は、複素数として表した受信電波の実部と虚部とをそれぞれ時系列で記録した信号を処理するためのレーダ信号処理装置であって、有限長の実部信号および有限長の虚部信号を出力する信号格納手段と、前記信号格納手段から前記実部信号および前記虚部信号が入力され、前記実部信号のスペクトル及び前記虚部信号のスペクトルを求めるフーリエ変換手段と、前記フーリエ変換手段から前記実部信号のスペクトル及び前記虚部信号のスペクトルが入力され、各スペクトルのうち、定められた帯域の信号のみをそれぞれ通す帯域通過処理手段と、前記帯域通過処理手段を通過した帯域通過処理された各前記信号が入力されて、それらの信号を用いて補正係数を算出する補正係数算出手段と、前記補正係数算出手段によって得られた前記補正係数を用いて、前記虚部信号のスペクトルを補正する補正処理手段と、前記補正処理手段によって補正された前記虚部信号のスペクトルを時系列の虚部信号に変換して、補正された虚部信号を得る逆フーリエ変換手段と、前記逆フーリエ変換手段によって得られた、補正された虚部信号を格納する補正虚部信号格納手段とを備えたレーダ信号処理装置である。
【発明の効果】
【0016】
この発明は、複素数として表した受信電波の実部と虚部とをそれぞれ時系列で記録した信号を処理するためのレーダ信号処理装置であって、有限長の実部信号および有限長の虚部信号を出力する信号格納手段と、前記信号格納手段から前記実部信号および前記虚部信号が入力され、前記実部信号のスペクトル及び前記虚部信号のスペクトルを求めるフーリエ変換手段と、前記フーリエ変換手段から前記実部信号のスペクトル及び前記虚部信号のスペクトルが入力され、各スペクトルのうち、定められた帯域の信号のみをそれぞれ通す帯域通過処理手段と、前記帯域通過処理手段を通過した帯域通過処理された各前記信号が入力されて、それらの信号を用いて補正係数を算出する補正係数算出手段と、前記補正係数算出手段によって得られた前記補正係数を用いて、前記虚部信号のスペクトルを補正する補正処理手段と、前記補正処理手段によって補正された前記虚部信号のスペクトルを時系列の虚部信号に変換して、補正された虚部信号を得る逆フーリエ変換手段と、前記逆フーリエ変換手段によって得られた、補正された虚部信号を格納する補正虚部信号格納手段とを備えたレーダ信号処理装置であるので、広帯域信号であっても繰り返し処理することなく、高速に、かつ、安定した、正確な補正を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1によるレーダ信号処理装置を示す構成図である。なお、この発明に係るレーダ信号処理装置は、上述したような、レーダや無線通信等の種々の受信機に適用されるものである。
【0018】
図1に示すように、本実施の形態1によるレーダ信号処理装置は、第nパルス目のi信号格納部1110と、第nパルス目のq信号格納部1120と、q信号用フーリエ変換部1200と、補正係数演算部1300と、補正処理部1400と、逆フーリエ変換部1500と、補正した第nパルス目のq信号格納部1600とから構成されている。また、補正係数演算部1300には、i信号用フーリエ変換部1310と、i信号用帯域通過処理部1320と、q信号用帯域通過処理部1330と、補正係数算出部1340とが設けられている。
【0019】
以下に、図1に示す各構成について説明する。
図1に示す、第nパルス目のi信号格納部1110および第nパルス目のq信号格納部1120は、例えば、図11に示すような受信機によって受信され記録された第nパルス目のi信号(実部信号)と第nパルス目のq信号(虚部信号)とをそれぞれ格納するものである。ここで、格納される信号は、有限長のデータ(すなわち、所定時間範囲に受信されて記録された信号データ、あるいは、図12に示すパルスのうちの1つのパルス信号)であるが、その場合に限らず、無限長のデータからパルスを適宜切り出して、切り出した順に、第1パルス、第2パルス、・・・と名づけて利用しても良い。以下の説明においては、第nパルス目のi信号格納部1110および第nパルス目のq信号格納部1120を、簡略して、それぞれ、i信号格納部1110およびq信号格納部1120と呼ぶこととする。
【0020】
図1に示す、q信号用フーリエ変換部1200は、q信号格納部1120に格納された第nパルス目のq信号のスペクトル(周波数分布)を算出するものである。
【0021】
図1に示す、補正係数演算部1300は、上述の通り、i信号用フーリエ変換部1310、i信号用帯域通過処理部1320、q信号用帯域通過処理部1330、および、補正係数算出部1340からなり、i信号格納部1110に格納された第nパルス目のi信号と、q信号用フーリエ変換部1200から出力される第nパルス目のq信号のスペクトルとが入力されて、q信号のスペクトルを補正するための補正係数を求めるものである。
【0022】
補正係数演算部1300に設けられた、i信号用フーリエ変換部1310は、i信号格納部1110に格納された第nパルス目のi信号のスペクトルを算出する。算出の方法は、上記のq信号用フーリエ変換部1200と同じである。また、i信号用帯域通過処理部1320は、i信号用フーリエ変換部1310で得たi信号のスペクトルを入力とし、i信号のスペクトルを帯域制限したものを出力とする。一方、q信号用帯域通過処理部1330は、q信号用フーリエ変換部1200で得たq信号のスペクトルを入力とし、q信号のスペクトルを帯域制限したものを出力とする。補正係数算出部1340は、i信号用帯域通過処理部1320とq信号用帯域通過処理部1330の出力を入力とし、これらの入力に基づいて補正係数を算出する。
【0023】
図1に示す、補正処理部1400は、補正係数算出部1340から出力された補正係数とq信号用フーリエ変換部1200から出力されたq信号のスペクトルとを入力とし、補正係数算出部1340によって得られた補正係数を用いてq信号のスペクトルを補正し、補正後の信号を出力するものである。
【0024】
また、図1に示す、逆フーリエ変換部1500は、補正処理部1400から出力された補正されたq信号のスペクトルに対して、q信号用フーリエ変換部1200で行ったフーリエ変換の逆変換を行って、補正された第nパルス目のq信号を得るものである。すなわち、逆フーリエ変換を行って、時間領域で表現された信号に変換する。
【0025】
また、図1に示す、補正した第nパルス目のq信号格納部1600は、逆フーリエ変換部1500の出力結果である、補正された第nパルス目のq信号を格納するものである。
【0026】
次に、本実施の形態1に係るレーダ信号処理装置の動作について説明する。図2は、本実施の形態1に係るレーダ信号処理装置の処理の流れを示すフローチャートである。本実施の形態1に係るレーダ信号処理装置においては、図2に示すように、まず、ステップST1200で、q信号用フーリエ変換部1200により、第nパルス目のq信号、q(t)信号のスペクトルを算出する。スペクトルの算出方法としては、フーリエ変換、高速フーリエ変換、ウェブレット変換などの直交変換などが挙げられる。例えば、q(t)信号をフーリエ変換して、スペクトルQ(f)を求めた場合、次式(3)となる。
【0027】
【数3】

【0028】
ここで、δ[f]はディラックのデルタ関数である。また、fは、図11の第1の帯域通過フィルタ(BPF−1)4などのハードウェアの制約から、周波数の上限fと下限fとによって、f<f<fとなるように限定される。
【0029】
上式(3)で示したように、実数関数のスペクトルは周波数0に対称な振幅分布で、周波数が正のスペクトルと負のスペクトルの位相分布は複素共役の関係となる。
【0030】
次に、ステップST1310では、i信号用フーリエ変換部1310により、第nパルス目のi信号、i(t)信号のスペクトルを算出する。スペクトルの算出方法は、上述のステップST1200と等価のスペクトルが得られるスペクトル算出法を用いる(すなわち、ステップST1200と同じ算出方法を用いる。)。例えば、ステップST1200で、q(t)信号をフーリエ変換してスペクトルQ(f)を求めた場合には、ここでも、i(t)信号をフーリエ変換してスペクトルI(f)を求めることとし、その場合には、次式(4)となる。
【0031】
【数4】

【0032】
続くステップST1320では、i信号用帯域通過処理部1320により、スペクトルI(f)の周波数が正の部分(もしくは負の部分)を取得する。取得の方法は、帯域通過処理等が考えられる。このとき、周波数fに対して−fの信号が存在すると、周波数の正の部分と負の部分とを分離できないので、ここではどちらかの部分のみある場合を示す。混入している場合の補正方法については、後述の実施の形態5に示す。ここで、例えば、スペクトルI(f)の周波数が正の部分I(f)を取得した場合を示すと、次式(5)となる。
【0033】
【数5】

【0034】
ステップST1330では、q信号用帯域通過処理部1330により、ステップST1320のスペクトルI(f)に対する処理と同じ処理を、スペクトルQ(f)について行う。スペクトルQ(f)の周波数が正の部分Q(f)を取得すると、次式(6)となる。
【0035】
【数6】

【0036】
ステップST1340では、補正係数算出部1340により、上記のステップST1320およびステップST1330でそれぞれ取得した正の部分I(f)およびQ(f)を基に、次式(7)にて、周波数fごとに補正係数Cm,nを求める。
【0037】
【数7】

【0038】
ただし、f<f<fの関係から、mはスペクトルが値を持つ領域に限る。補正係数Cm,nの振幅の逆数は振幅歪みgを表し、補正係数Cm,nの共役複素数の位相は位相歪みΔを表すので、補正係数から歪みを導出することが出来る。このため、システムの温度変化による歪みの変化などを、補正係数を監視することで把握できる。補正係数Cm,nは、上式(7)をそのまま用いるほか、加工を加えることも可能である。例えば、周波数fに対する補正係数Cm,nが連続な関数になるようにする方法や、補正係数Cm,nの分散値や標準偏差値がより少ないように変化させるなどの、統計的な手法などが考えられる。また、歪みに関する既知情報から、補正係数Cm,nを補正する手法などが考えられる。
【0039】
ステップST1400では、補正処理部1400により、次式(8)のように、補正係数Cm,nをスペクトルQn(f)に乗じて、スペクトルQn(f)の歪みを補正し、補正後の信号スペクトルQn’(f)を得る。
【0040】
【数8】

【0041】
なお、上式(8)の*は複素共役を示す。
【0042】
最後に、ステップST1500では、逆フーリエ変換部1500により、スペクトルで表現された信号Qn’(f)に、上記のステップST1200で行った処理の逆処理を行い、時間領域で表現された信号qn’(f)を得る。例えば、ステップST1200でフーリエ変換を用いた場合は、逆フーリエ変換がそれに相当する。ただし、出力結果としてスペクトルが必要な場合は、ステップST1500を省く。
【0043】
以上のように、本実施の形態1に係るレーダ信号処理装置においては、信号の歪みの補正を、周波数ごとではなく、周波数領域において一度に行うので、広帯域信号でも演算回数を大幅に増加させること無く補正することが出来、従来の方法よりも高速に処理することができる。また、係数の演算はハードウェアとして定められる帯域に限り算出することで、安定して求めることが出来るので、安定した補正処理を実現することができる。
【0044】
実施の形態2.
上述の実施の形態1ではパルス信号毎に補正係数Cm,nを算出して、高精度に、q(t)信号の歪みを補正する実施形態について説明したが、本実施の形態2では、第nパルス目のi(t)信号およびq(t)信号から算出した補正係数Cm,nを、それ以降の信号の補正係数Cm,n+N(N≧0)として使用し、高精度で、かつ、演算量が少ない補正を実現する実施形態について説明する。
【0045】
図3は、本実施の形態2の装置の構成図である。図3において、実施の形態1と同一のものには同一の符号を付し、ここではそれらの説明を省く。図1との構成の違いは、図3においては、更新判断情報保持部2100と、係数更新判断部2200と、補正係数格納部2300とが追加されている点である。
【0046】
図3の更新判断情報保持部2100は、後述の係数更新判断部2200が参照するための情報を保持する。更新判断情報保持部2100に格納される情報としては、例えば、パルスの記録回数n、補正係数、補正係数から算出した標準偏差などの統計量、受信機内に設置された温度センサなどで取得された情報、及び/または、歪みに関する既知情報などが挙げられ、これらのうちの少なくとも1つが格納されている。
【0047】
係数更新判断部2200は、i信号格納部1110に格納されている第nパルス目のi信号と、q信号用フーリエ変換部1200により得られた第nパルス目のq信号のスペクトルと、更新判断情報保持部2100に格納されている情報とを入力とし、それらを基に、予め設定されている“補正係数の更新条件”を満たしているか否かを判断する。“補正係数の更新条件”としては、例えば、「パルスの記録回数nがn=1の時のみ補正係数を更新する」、あるいは、「補正係数の標準偏差が閾値dstdより大きい場合のみ補正係数を更新する」、あるいは、「受信機内に設けられた温度センサの測定温度もしくは所定時間における温度変化が閾値dtempより大きい場合のみ補正係数を更新する」等が考えられ、これらのうちの少なくとも1つが“補正係数の更新条件”として予め設定されている。
【0048】
補正係数格納部2300は、補正係数算出部1340の出力を格納し、保持する。
【0049】
次に、本実施の形態2の動作について説明する。図4は、本実施の形態2の処理の流れを示すフローチャートである。図4において、上記の実施の形態1と同一のものには同一の符号を付し、ここではそれらの説明を省く。
【0050】
ステップST2200では、係数更新判断部2200により、補正係数Cm,nの更新条件を満たしているか否かを判断し、満たしていれば、ステップST1310からステップST1340までの処理を行って補正係数Cm,nを更新し、ステップST2310に進む。一方、更新条件を満たさなければ、補正係数Cm,nの更新を行わないため、ステップST2320に進む。すなわち、係数更新判断部2200は、i信号格納部1110に格納されている第nパルス目のi信号と、q信号用フーリエ変換部1200により得られた第nパルス目のq信号のスペクトルと、更新判断情報格納部2100に格納されている情報(例えば、パルスの記録回数n、補正係数、補正係数から算出した標準偏差などの統計量、受信機内の温度センサなどで取得された情報、あるいは、歪みに関する既知情報などの情報のうちの少なくとも1つ)を入力とし、それらに基づき、補正係数Cm,nの更新条件として予め設定されている条件(例えば、パルスの記録回数n=1のみ更新、補正係数の標準偏差が閾値dstdより大きい場合のみ更新、あるいは、受信機内の温度センサの温度もしくは温度変化が閾値dtempより大きい場合のみ更新などの更新条件のうちの少なくとの1つ)が満たされているか否かにつき、判断する。なお、当然のことながら、更新判断情報格納部2100に格納されている情報は、上記に示した例のすべてではなく、補正係数Cm,nの更新条件として予め設定されている条件に対して必要な情報のみでもよいこととする。
【0051】
ステップST2310においては、ST1340で補正係数算出部1340によって算出された補正係数Cm,nを、補正係数格納部2300に格納し保持する。
【0052】
ステップST2320では、ステップST2310で格納した補正係数を読み出す。なお、ステップST2200の判断において、補正係数の更新条件を満たさず、補正係数の更新を今回行なわなかった場合は、過去の処理で得られた補正係数Cm,n−N’(N’≧1)が補正係数格納部2300に格納されているので、それを読み出して、Cm,n=Cm,n−N’と置き換える。
【0053】
以降は、実施の形態1におけるステップST1400以降の動作を行う。
【0054】
以上のように、本実施の形態2においては、実施の形態1と同様に、周波数領域にて補正を一度に行うので、広帯域信号でも演算回数を大幅に増加させること無く補正することが出来、従来の方法より高速に処理できる。また、本実施の形態2においては、補正係数Cm,nの更新条件を満たしているかを判断し、満たしていない場合には、過去に算出した補正係数Cm,n−N’を用いて算出するようにしたので、パルスごとに補正係数を算出することなく、従来の方法よりもさらに高速に処理できる。また、係数の演算はハードウェアとして定められる帯域に限り算出することで、安定して求めることが出来るので、安定した補正処理を実現する。
【0055】
実施の形態3.
上記の実施の形態1及び2では、ある第nパルス目のi信号およびq信号のみを用いて補正係数Cm,nを算出し、高精度にq(t)信号の歪みを補正する実施形態について説明したが、本実施の形態3では、補正係数Cm,nを、Cm,n−1、Cm,n−2などの過去の補正係数の履歴も加味して補正係数Cm,nを定めることで、システム熱雑音などによる補正係数Cm,nの誤差を除き、より安定した高精度な歪み補正を行う実施形態につき説明する。
【0056】
図5は、本実施の形態3の装置の構成図である。図5において、実施の形態1及び2と同一のものには同一の符号を付し、ここではそれらの説明を省く。図5の構成と図1の構成との違いは、図5においては、図1の構成に、補正係数履歴格納部3100と補正係数平均部3200とが追加されている点である。
【0057】
図5の補正係数履歴格納部3100は、補正係数算出部1340の出力Cm,nを順次格納していき、それまでに算出した補正係数の履歴である、補正係数Cm,l(l=1,2,・・・,n)のすべて(あるいは、その一部)を出力する。
【0058】
補正係数平均部3200は、補正係数履歴格納部3100の出力を入力とし、当該入力を基に、それらを平均化して、平均化された補正係数Cm,nを得て、更新した補正係数Cm,nとして、それを出力する。平均化の方法としては、保存された過去の補正係数Cm,l(l=1,2,・・・,n)の平均値を求めるか、あるいは、保存された過去の補正係数Cm,l(l=1,2,・・・,n)の中から数データを選んでm毎の重み付き平均値を求めるなどの、統計量を用いた方法が例として挙げられる。
【0059】
次に、本実施の形態3の動作について説明する。図6は、実施の形態3の処理の流れを示すフローチャートである。図6において、実施の形態1及び2と同一のものには同一の符号を付し、ここではそれらの説明を省く。
【0060】
ステップST3100は、補正係数算出部1340により、ST1340で算出された補正係数Cm,nを、補正係数履歴格納部3100に格納し、過去の補正係数である、第l’パルス目(l’=1,2,・・・,n−1)の補正係数Cm,l’と共に保存する。
【0061】
ステップST3200では、補正係数平均部3200により、ステップST3100で保存された補正係数Cm,l(l=1,2,・・・,n)を用いて、それらの平均化処理を行って、得られた補正係数Cm,nにより、補正係数Cm,nを更新する。
【0062】
以降は、実施の形態1におけるステップST1400以降の動作を行う。
【0063】
以上のように、本実施の形態3においては、実施の形態1および2と同様に、周波数領域にて補正を一度に行うので、広帯域信号でも演算回数を大幅に増加させること無く、補正することが出来、従来の方法より高速に処理できる。また、係数の演算はハードウェアとして定められる帯域に限り算出することで、安定して求めることが出来るので、安定した補正処理を実現する。さらに、本実施の形態3においては、過去の補正係数の履歴を参照して補正係数を決定して補正を実施するようにしたので、雑音等の影響をより受けにくくし、安定した補正を実現することができる。
【0064】
実施の形態4.
上記の実施の形態1、2、3では、i信号格納部1110およびq信号格納部1120に、それぞれ、第nパルス目のi信号およびq信号(すなわち、有限長のi信号およびq信号)が格納されている実施形態について説明したが、本実施の形態4においては、無限長のi信号およびq信号が格納されている実施形態について説明する。
【0065】
図7は、本実施の形態4の装置の構成図である。図7において、実施の形態1〜3と同一のものには同一の符号を付し、ここではそれらの説明を省く。図7の構成と図1の構成との違いは、図7においては、図1のi信号格納部1110およびq信号格納部1120の代わりに、連続したi信号格納部4100と、連続したq信号格納部4200と、i信号用データ切り出し部4300と、q信号用データ切り出し部4400と、第nパルス目のi信号格納部4500とが設けられている点と、図1の補正した第nパルス目のq信号格納部1600の代わりに、補正した第nパルス目のq信号格納部4600が設けられている点である。
【0066】
図7の、連続したi信号格納部4100(以下、i信号格納部4100と呼ぶ。)は、無限長のi信号を格納する。
【0067】
図7の、連続したq信号格納部4200(以下、q信号格納部4200と呼ぶ。)は、無限長のq信号を格納する。
【0068】
i信号用データ切り出し部4300は、i信号格納部4100に格納されている無限長のi信号を有限長のi信号に切り出す。切り出し方法としては、例えば、無限長のi信号から適宜切り出して、切り出した順に、第1パルス目のi信号、第2パルス目のi信号、・・・と名づけて、それらのうちの1つを以降の処理で用いるか、あるいは、無限長のi信号から適宜1つだけ切り出して、第nパルス目のi信号として以降の処理で用いるようにする。
【0069】
q信号用データ切り出し部4400は、i信号用データ切り出し部4300と同様の処理を行って、q信号格納部4200に格納されている無限長のq信号を有限長のq信号に切り出す。
【0070】
第nパルス目のi信号格納部4500は、i信号用データ切り出し部4300で切り出した有限長のi信号を格納する。
【0071】
補正した第nパルス目のq信号格納部4600は、逆フーリエ変換部1500の出力結果である、補正された第nパルス目のq信号を格納する。
【0072】
次に、本実施の形態4の動作について説明する。図8は、実施の形態4の処理の流れを示すフローチャートである。図8において、実施の形態1〜3と同一のものには同一の符号を付し、ここではそれらの説明を省く。
【0073】
ステップST4300では、i信号用データ切り出し部4300により、i信号格納部4100に格納されている無限長のi信号から有限長のi信号を切り出して、それを、補正係数演算部1300のi信号用フーリエ変換部1310に対して出力するとともに、第nパルス目のi信号格納部4500に格納する。
【0074】
ステップST4400では、q信号用データ切り出し部4400により、i信号用データ切り出し部4300と同様の処理を、q信号格納部4200に格納されている無限長のq信号に対して行って、有限長のq信号を切り出し、それを、q信号用フーリエ変換部1200に対して出力する。
【0075】
以降は、実施の形態1におけるステップST1200以降の動作を行う。但し、本実施の形態4においては、補正係数演算部1300に、i信号用データ切り出し部4300からの出力と、q信号用フーリエ変換部1200からの出力とが入力される点が、実施の形態1と異なる。
【0076】
以上のように、本実施の形態4においては、上記の実施の形態1と同様に、周波数領域にて補正を一度に行うので、広帯域信号でも演算回数を大幅に増加させること無く補正することが出来、従来の方法より高速に処理することができる。また、係数の演算はハードウェアとして定められる帯域に限り算出することで、安定して求めることが出来るので、安定した補正処理を実現することができる。さらに、本実施の形態4においては、連続したi信号およびq信号から、有限長のi信号およびq信号を切り出すための構成を備えるようにしたので、無限長の受信データを受信する種々の受信機にも適用でき、さらに利便性および汎用性が向上する。
【0077】
実施の形態5.
上記の実施の形態1〜4においては、受信信号の周波数fに対して−fの信号が存在する場合には、補正することが出来ない構成であるが、本実施の形態5では、そのような場合にも補正を実施することが可能な方法について示す。
【0078】
図9は、本実施の形態5の装置の構成図である。図9において、実施の形態1〜4と同一のものには同一の符号を付し、ここではそれらの説明を省く。図1との違いは、図9においては、図1の補正係数演算部1300の内部構成のうち、i信号用フーリエ変換部1310だけを残して、他を設けなかった点と、図1の補正処理部1400と逆フーリエ変換部1500の代わりに、iq歪み情報保持部5100と、重複信号補正処理部5200と、逆フーリエ変換部5300と、実虚分割部5400と、補正した第nパルス目のi信号格納部5500とが設けられた点である。
【0079】
図9の、iq歪み情報保持部5100は、前もって計測したハードウェア固有の情報として、i、q信号の歪みの周波数特性を格納し、保持する。
【0080】
重複信号補正処理部5200は、iq歪み情報保持部5100の情報と、i信号用フーリエ変換部1310により得られたi信号のスペクトルと、q信号用フーリエ変換部1200により得られたq信号のスペクトルとを入力とし、重複のないスペクトルを出力する。なお、この処理については、詳細を後述する。
【0081】
逆フーリエ変換部5300は、重複信号補正処理部5200から出力されたスペクトルに対して、q信号用フーリエ変換部1200で行った処理の逆変換をすることで、時間領域で表現された信号に変換し、補正された時間信号を得る。
【0082】
実虚分割部5400は、逆フーリエ変換部5300による逆フーリエ変換により得られた、補正した時間信号を実部と虚部に分割する。実虚分割部5400は、分割により得られた実部を、補正した第nパルス目のi信号格納部5500に対して出力し、同じく、虚部を、補正した第nパルス目のq信号格納部1600に対して出力する。
【0083】
補正した第nパルス目のi信号格納部5500は、実虚分割部5400によって分割された実部を格納し保持する。同様に、補正した第nパルス目のq信号格納部1600は、実虚分割部5400によって分割された虚部を格納し保持する。
【0084】
次に、本実施の形態5の動作について説明する。図10は、本実施の形態5の処理を示すフローチャートである。図10において、実施の形態1〜4と同一のものには同一の符号を付し、ここではそれらの説明を省く。
【0085】
ステップST5200は、i信号をスペクトル変換した結果とq信号をスペクトル変換した結果に加えて、前もって計測した歪みの周波数特性を用いて補正する。以下に、補正した、i信号およびq信号のスペクトルI(f)、Q(f)を示す。
【0086】
【数9】

【0087】
これは、一つの点の周波数スペクトルが、f=fだけでなく、f=−fに立つことを示す。このため、f=fとf=−fのスペクトルを分離できない。そのため、本実施の形態5では、各周波数fにおいて、これらの重複したスペクトルを分離し、かつ、歪みを解消する。ある周波数f=fにおいて、I(f)には、f=fのスペクトルXのほかに、f=−fのスペクトルYが重なる。また、Qn(f)には、f=fのスペクトルX1のほかに、f=−fのスペクトルY1が重なる。なお、ここで、X1およびY1は、次式(10)で与えられる。
【0088】
【数10】

【0089】
ここで、上式(10)において、g(fa)およびΔ(fa)、並びに、g(−fa)およびΔ(−fa)はそれぞれ振幅及び位相歪みであり、ここでは、それぞれ事前計測につき既知の値であるとする。
【0090】
このため、I(f)、Q(f)は次式(11)となる。
【0091】
【数11】

【0092】
これらの式から重複を解き、補正してスペクトルXだけを取り出せばよく、その結果得られるスペクトルXは、次式(12)となる。
【0093】
【数12】

【0094】
これを周波数毎に実施してスペクトル全体を補正する。
【0095】
ステップST5300では、ステップST5200の処理により補正された結果を逆フーリエ変換して時間領域の信号に戻す。
【0096】
ステップST5400では、ステップST5300の結果の実部をi信号、虚部をq信号として分離する。
【0097】
以上のように、本実施の形態5においては、上記の実施の形態1と同様に、周波数領域にて補正を一度に行うので、広帯域信号でも演算回数を大幅に増加させること無く補正することが出来、従来の方法より高速に処理することができる。また、係数の演算はハードウェアとして定められる帯域に限り算出することで、安定して求めることが出来るので、安定した補正処理を実現することができる。さらに、本実施の形態5においては、受信信号の周波数fに対して−fの信号が存在する場合にも補正することが出来、より安定した補正処理を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】この発明の実施の形態1に係るレーダ信号処理装置の構成を示したブロック図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係るレーダ信号処理装置の処理の流れを示したフローチャートである。
【図3】この発明の実施の形態2に係るレーダ信号処理装置の構成を示したブロック図である。
【図4】この発明の実施の形態2に係るレーダ信号処理装置の処理の流れを示したフローチャートである。
【図5】この発明の実施の形態3に係るレーダ信号処理装置の構成を示したブロック図である。
【図6】この発明の実施の形態3に係るレーダ信号処理装置の処理の流れを示したフローチャートである。
【図7】この発明の実施の形態4に係るレーダ信号処理装置の構成を示したブロック図である。
【図8】この発明の実施の形態4に係るレーダ信号処理装置の処理の流れを示したフローチャートである。
【図9】この発明の実施の形態5に係るレーダ信号処理装置の構成を示したブロック図である。
【図10】この発明の実施の形態5に係るレーダ信号処理装置の処理の流れを示したフローチャートである。
【図11】この発明の実施の形態1〜5に係るレーダ信号処理装置を適用可能な受信機の構成を示したブロック図である。
【図12】図11の受信機における、有限長の時間に限り信号を記録した場合の信号強度の変化をグラフで示した説明図である。
【図13】図11の受信機における、連続的に信号を記録した場合の信号強度の変化をグラフで示した説明図である。
【符号の説明】
【0099】
1 受信アンテナ、2 安定化局部発振器、3 周波数ミキサ、4 第1の帯域通過フィルタ、5 周波数ミキサ、6 コヒーレント発振器、7 第2の帯域通過フィルタ、8 アナログ/ディジタル変換器、9 周波数ミキサ、10 π/2位相器、11 第3の帯域通過フィルタ、12 アナログ/ディジタル変換器、1110 第nパルス目のi信号格納部、1120 第nパルス目のq信号格納部、1200 q信号用フーリエ変換部、1300 補正係数演算部、1310 i信号用フーリエ変換部、1320 i信号用帯域通過処理部、1330 q信号用帯域通過処理部、1340 補正係数算出部、1400 補正処理部、1500 逆フーリエ変換部、1600 補正した第nパルス目のq信号格納部、2100 更新判断情報保持部、2200 係数更新判断部、2300 補正係数格納部、3100 補正係数履歴格納部、3200 補正係数平均部、4100 連続したi信号格納部、4200 連続したq信号格納部、4300 i信号用データ切り出し部、4400 q信号用データ切り出し部、4500 第nパルス目のi信号格納部、4600 補正した第nパルス目のq信号格納部、5100 iq歪み情報保持部、5200 重複信号補正処理部、5300 逆フーリエ変換部、5400 実虚分割部、5500 補正した第nパルス目のi信号格納部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複素数として表した受信電波の実部と虚部とをそれぞれ時系列で記録した信号を処理するためのレーダ信号処理装置であって、
有限長の実部信号および有限長の虚部信号を出力する信号格納手段と、
前記信号格納手段から前記実部信号および前記虚部信号が入力され、前記実部信号のスペクトル及び前記虚部信号のスペクトルを求めるフーリエ変換手段と、
前記フーリエ変換手段から前記実部信号のスペクトル及び前記虚部信号のスペクトルが入力され、各スペクトルのうち、定められた帯域の信号のみをそれぞれ通す帯域通過処理手段と、
前記帯域通過処理手段を通過した帯域通過処理された各前記信号が入力されて、それらの信号を用いて補正係数を算出する補正係数算出手段と、
前記補正係数算出手段によって得られた前記補正係数を用いて、前記虚部信号のスペクトルを補正する補正処理手段と、
前記補正処理手段によって補正された前記虚部信号のスペクトルを時系列の虚部信号に変換して、補正された虚部信号を得る逆フーリエ変換手段と、
前記逆フーリエ変換手段によって得られた、補正された虚部信号を格納する補正虚部信号格納手段と
を備えたことを特徴とするレーダ信号処理装置。
【請求項2】
前記信号格納手段から前記実部信号が入力され、前記フーリエ変換手段から前記虚部信号のスペクトルが入力されて、それらの値に基づいて、前記補正処理手段で用いる前記補正係数を更新するか否かを判断する係数更新判断手段と、
過去の処理において前記補正係数算出手段により得られた過去の補正係数を格納する補正係数格納手段と
をさらに備え、
前記係数更新判断手段によって前記補正係数の更新を行うと判断された場合には、前記補正係数算出手段によって新たに補正係数の算出を行い、今回算出した補正係数を用いて前記補正処理手段による前記補正を行い、
前記係数更新判断手段によって前記補正係数の更新を行わないと判断された場合には、前記補正係数格納手段に格納されている過去の補正係数を用いて前記補正処理手段による前記補正を行う
ことを特徴とする請求項1に記載のレーダ信号処理装置。
【請求項3】
前記補正係数算出手段は、
前記補正係数格納手段に格納されている過去の補正係数に基づいて、それらの補正係数を平均化処理した新たな補正係数を算出する補正係数平均手段を
備えていることを特徴とする請求項1または2に記載のレーダ信号処理装置。
【請求項4】
前記信号格納手段は、
無限長の実部信号および無限長の虚部信号を格納する連続信号格納手段と、
前記無限長の実部信号から有限長の実部信号を切り出す実部信号切り出し手段と、
前記無限長の虚部信号から有限長の虚部信号を切り出す虚部信号切り出し手段と
を備えていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のレーダ信号処理装置。
【請求項5】
複素数として表した受信電波の実部と虚部とをそれぞれ時系列で記録した信号を処理するためのレーダ信号処理装置であって、
有限長の実部信号および有限長の虚部信号を出力する信号格納手段と、
前記信号格納手段から前記実部信号および前記虚部信号が入力され、前記実部信号のスペクトル及び前記虚部信号のスペクトルを求めるフーリエ変換手段と、
前記フーリエ変換手段から前記実部信号のスペクトルおよび虚部信号のスペクトルが入力され、これらのスペクトルの重複を解いて、補正されたスペクトルを得る重複信号補正処理手段と、
前記重複信号補正処理手段により得られた補正されたスペクトルを逆フーリエ変換する逆フーリエ変換手段と、
前記逆フーリエ変換手段によって得られた逆フーリエ変換結果を実部と虚部とに分ける実虚分割手段と、
前記実虚分割手段によって得られた前記実部および前記虚部をそれぞれ格納する補正信号格納手段と
を備えたことを特徴とするレーダ信号処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−276247(P2009−276247A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−128751(P2008−128751)
【出願日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】