説明

レーダ判定装置、レーダ保全装置

【課題】レーダに付着した汚れの有無の誤判定を低減する、レーダ判定装置等を提供する。
【解決手段】車両1は、レーダ101、ACC(車間距離制御)制御ECU2を備える。ACC制御ECU2内に、その内部のマイクロコンピュータの機能部として構成する判定部20を備える。判定部20は、レーダ検知処理21、条件判定処理22、レーダ汚れ判定処理23を実行する。レーダ検知処理21では、レーダ101が所定時間、障害物を検知できないことを判定基準としてその汚れの存在を推定する。条件判定処理22では、ACC制御ECU2に接続された各種センサ類/各種ECU等3の情報を入力して、水分条件、地域条件を判定する。レーダ汚れ判定処理23では、レーダ検知処理21で汚れの存在を推定した場合でも、水分条件、地域条件が成立しない場合には、異常と判定せず、レーダ検知処理21の時間のカウントをリセットする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両周囲の障害物等を検知するレーダに関し、特に、レーダ表面(レーダがバンパー等で覆われている場合には当該バンパー等の表面)に付着した雨滴を含む汚れの有無を判定するレーダ判定装置、レーダ保全装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、運転者の運転操作等を支援するために、車両の前方、後方又は側方の障害物等を検知するレーダを搭載する車両が実用化されている。
【0003】
図1(A)のように、車両100のレーダ101F、101R(以下、レーダ101と総称する)は、電波等(光を含む)を発信し、障害物で反射した電波等を受信する。これにより、障害物102を検知する。レーダ101は、障害物との距離、障害物の速度を検知できるので、これによれば、車間距離を一定に保ったり、障害物への衝突を回避したり、衝突に備えて安全装置を作動させたりすることへ応用できる。
【0004】
ところで、レーダに雨滴、泥等の汚れが付着している場合には、レーダは、その障害物の検知精度が劣化する。特許文献1の段落29等には、物体検知できない状態が所定時間続く場合には、送受信部に汚れが付着したと判定するレーダ装置が開示されている。この検知には、通常走行時は、物体を検知できない状態が長く続くことは希であることを利用している。
【0005】
また、特許文献2の段落22等には、物体の情報を得る状況が悪状況であるか否かの判定に、ワイパの動作を加味して判定を行う物体認識装置が開示されている。
【特許文献1】特開2005−140696号公報
【特許文献2】特開2005−300307号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のレーダ装置のように、所定時間障害物を検知できないことをもって、レーダの検知精度が劣化していると判定すると、以下のような問題があった。図1(B)、図1(C)を用いて説明する。
【0007】
図1(B)のように、車両が混雑した道路を走行している場合には、レーダの前方には、必ず障害物が存在する。したがって、障害物を検知できないことは、上記精度が劣化していることに他ならないから、この精度の劣化を検知できる。
【0008】
しかし、図1(C)のように、まったく標識のない一本道を走行している場合には、レーダの検知精度が劣化しているのか、それとも、レーダに異常ないが障害物を検知できないだけなのか、レーダの出力だけからは判別できない。その結果、例えば、中近東、オーストラリア等の一部地域を走行中には、レーダの検知精度が劣化していないにもかかわらず、車両は警告の表示等をする。そうすると、頻繁に警告がなされ、運転者をいらいらさせるおそれがあった。
【0009】
本発明は、レーダに付着した汚れの有無の誤判定を低減するレーダ判定装置、レーダ保全装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明のレーダ判定装置は以下の構成を備えることができる。
【0011】
(1) 本発明は、
車両に設けられたレーダの汚れの有無を判定するレーダ判定装置であって、
上記レーダからの信号に基づいて、当該レーダが物体を検知したか否かを判定するレーダ検知手段と、
上記車両に設けられたセンサの出力または装置の設定に基づいて、上記レーダに水分が付着している可能性が高いか否かを判定するための水分条件と、上記車両が走行中の地域が所定地域内か否かまたは所定地域外か否かを判定するための地域条件のいずれか1以上の条件を判定する条件判定手段と、
上記レーダによって物体が検知されない状態が継続している無検知時間の長さに基づいて、上記レーダが汚れているか否かの汚れ判定を行う汚れ判定手段とを備え、
上記汚れ判定手段は、上記条件判定手段による上記水分条件および/または上記地域条件の判定結果に応じて、上記無検知時間の調整、または上記無検知時間の測定開始時期の調整、または上記無検知時間のリセットのいずれか1以上により、上記汚れ判定の判定方法を変更することを特徴とする、レーダ判定装置である。
【0012】
レーダが所定時間内に物体を検知できない場合には、レーダの汚れが推定されるが、必ずしもレーダが汚れているとは限らない。この構成では、汚れ判定手段は、車両内のセンサ、装置の情報に基づいて、所定の水分条件および/または地域条件(以下、単に条件という)を判定し、上記検知時間を調整するか、上記無検知時間の測定開始時期の調整、または無検知時間のリセットのいずれか1以上に関して、上記汚れ判定の処理を変更する。
【0013】
汚れ判定手段が上記無検知時間を調整すれば、水分条件および/または地域条件を判断して、レーダの汚れが汚れる要因がない、または可能性が少なければ、汚れ判定手段は、誤検知の回数を低減できる。無検知時間を長く調整すれば、その誤検知に基づくユーザの負担を低減できるし、短く調整すれば、上記条件を判定して、物体が確実に検知できる場合(例えば地域条件として市街地である場合)には、早期にユーザに知らせることができる。ここで、上記無検知時間の調整には、付加期間の設定も含む。すなわち、(A)汚れ判定手段による汚れ判定をする前または無検知時間が所定時間経過する前に、条件判定手段による条件判定をよりも判定してもよいし、(B)無検知時間が経過してから、条件判定を行い、これに基づいて、付加期間を設定してもよい。
【0014】
汚れ判定手段が、(C)上記開始時期を調整するか、または(D)無検知時間のリセットをすれば、無検知時間が経過することはない。ここで、汚れ判定手段は、無検知時間が経過しない限り、汚れ判定をしない。したがって、上記(C)または(D)によれば、上記条件の判定結果に応じて汚れ判定を変更するから、誤検知の回数を低減できる。ここで、上記開始時期を調整するとは、条件の成立如何によって、無検知時間の測定を開始することである。この開始時期の調整は、条件が成立しなくなってから測定を開始してもよいし、条件が成立する限り無検知時間をリセットし続け、条件不成立の場合に初めて無検知時間の測定を開始してもよい。また、無検知時間のリセットとは、予め定めた無検知時間のタイマを開始した後、またはその無検知時間が経過した後に、上記条件判定手段が条件の判定を行って、その判定結果如何によっては、無検知時間の経過を0とみなすということである。
【0015】
なお、この構成では、汚れていないと判定をすることは、必ずしも必要ではない。汚れ判定は、実装上、ビット、フラグで符号化されていてもよい。またこのような明示的な判定をしていなくても、汚れていることに応じてサブルーチンを呼び出すなどの処理をしていれば、実質的にこのサブルーチンを呼び出し、汚れていることを判定して、これに基づいて処理をしたことになるから、当該汚れの判定をしたことに含むものとする。
【0016】
(2) 上記汚れ判定手段は、上記条件判定手段によって上記レーダに水分が付着している可能性が高いと判定された場合であって、かつ、上記無検知時間が一定時間以上継続した場合にのみ、上記レーダが汚れていると判定するようにしてもよい。
【0017】
この構成では、レーダに水分が付着していないと判定した場合には、上記レーダが汚れていると判定しない。よって付着していないと判定した場合には、汚れ判定手段は、誤検知を低減できる。
【0018】
なお、この構成は、無検知時間の調整、または上記無検知時間の測定開始時期の調整、または無検知時間のリセットのいずれによっても可能である。また、この構成では、条件判定手段による上記条件の判定と、無検知時間の経過については、時間の先後を問わないし、条件判定手段は、無検知時間経過中に条件判定手段をしてもよい。このなお書きは、後述(4)についても同様に当てはまる。
【0019】
(3) 上記汚れ判定手段は、
少なくとも上記無検知時間の調整を用いて、上記汚れ判定の判定方法を変更するものであって、
(a)上記条件判定手段によって、上記レーダに水分が付着している可能性が高いと判定された場合であって、かつ、上記レーダによって物体が検知されない状態が第1の時間以上継続した場合には、上記レーダが汚れていると判定し、
(b)上記条件判定手段によって、上記レーダに水分が付着している可能性が高いと判定されなかった場合であって、かつ、上記レーダによって物体が検知されない状態が上記第1の時間よりも長い時間である第2の時間以上継続した場合には、上記レーダが汚れていると判定するようにしてもよい。
【0020】
この構成では、上記レーダに水分が付着している可能性が高いと判定された場合には、無検知時間を長くするよう変更しているので、付着していないと判定された場合には、レーダ判定装置は、誤判定の頻度を低減できる。車両がこの判定に基づいて、例えばアラームを出力しているのであれば、アラームの頻度を低減できる。
【0021】
なお、この構成では、条件判定手段による上記条件の判定と、無検知時間の経過については、時間の先後を問わないし、条件判定手段は、無検知時間経過中に条件判定をしてもよい。この点、後述の(4)〜(12)の構成も同様である。
(4) 上記条件判定手段は、少なくとも上記地域条件を判定し、
上記汚れ判定手段は、上記条件判定手段によって、上記地域条件として、上記レーダで検知され得る物体が少ない地域以外を走行中であると判定された場合であって、かつ、上記無検知時間が一定時間以上継続した場合には、上記レーダが汚れていると判定するようにしてもよい。
【0022】
地域によっては、例えば、標識がほとんどない地域が存在する。この構成では、上記レーダで検知され得る物体が少ない地域外を走行中に、上記レーダに水分が付着していると判定した場合には、汚れていると判定しないので、レーダ判定装置は、誤判定を低減できる。車両がこの判定に基づいて、例えばアラームを出力しているのであれば、アラームの頻度を低減できる。
【0023】
(5) 上記汚れ判定手段は、
少なくとも上記無検知時間の調整を用いて、上記汚れ判定を変更するものであって、
(c)上記条件判定手段によって、上記レーダで検知され得る物体が少ない地域以外を走行中であると判定された場合であって、かつ、上記レーダによって物体が検知されない状態が第1の時間以上継続した場合には、上記レーダが汚れていると判定し、
(d)上記条件判定手段によって、上記レーダで検知され得る物体が少ない地域以外を走行中であると判定されなかった場合であって、かつ、上記レーダによって物体が検知されない状態が上記第1の時間よりも長い時間である第2の時間以上継続した場合には、上記レーダが汚れていると判定するようにしてもよい。
【0024】
この構成では、上記レーダに水分が付着していると判定した場合には、無検知時間を長くするよう変更しているので、付着していないと判定した場合には、レーダ判定装置は、誤判定の頻度を低減できる。車両がこの判定に基づいて、例えばアラームを出力しているのであれば、アラームの頻度を低減できる。
【0025】
(6) 上記条件判定手段は、上記水分条件を、
(条件1)レインセンサから雨を検知した旨の信号を受信したか否か、
(条件2)過去の所定時間内にワイパが作動したか否か、
(条件3)エアコンのモードが除湿であるか否か、
(条件4)昼間において、ヘッドライトがオンになっているか否か、
(条件11)外気温が閾値未満か
(条件12)地域が降雪地域であるか否か、
(条件13)ソナーが障害物の情報を受信できなくなっているか否か、
(条件14)日時が冬であるか否か、
(条件15)エアコンヒータがオンの状態であるか否か、
(条件16)低車速であるか否か、
(条件21)車輪がスリップ状態であるか否か、
(条件22)トラクションコントロールがオンであるか、
(条件23)地域が乾燥地域または乾季のいずれでもないか、の少なくとも1つの条件に基づいて判定するようにしてもよい。
【0026】
(7) 上記条件判定手段は、上記地域条件を、
(条件311)上記走行中の地域が、市街地域内であるか否か、
(条件312)上記走行中の地域が、標識の少ない予め定めた地域内であるか否か、
の少なくとも1つの条件に基づいて判定するようにしてもよい。
【0027】
(8) 上記条件判定手段は、上記センサの出力または装置の設定に関する複数の所定条件の論理積および/または論理和を判定するようにしてもよい。
【0028】
この構成では、条件判定手段は、条件の論理積、論理和を組み合わせて判定するので、より高精度に判定できる。
【0029】
(9) 上記条件判定手段は、
上記水分条件および/または上記地域条件として、上記水分条件または地域条件が、確実に成立することを推定できる条件Xと、確実に成立しないことを推定できる条件Yと、上記水分条件または地域条件の成立の推定を強める条件Zを予め設定し、
(e)上記条件Xのいずれかが成立した場合には、上記水分条件および/または上記地域条件が成立すると判定し、
(f)上記条件Yがいずれかが成立しない場合には、上記水分条件および/または上記地域条件が成立しないと判定し、
(g)上記条件Zがすべて成立した場合には、上記水分条件および/または上記地域条件が成立すると判定するようにしてもよい。
【0030】
この構成では、条件判定手段は、条件を組み合わせて判定するので、より高精度に汚れ判定をすることができる。
【0031】
(10) 上記条件判定手段は、上記センサの出力または装置の設定に関する複数の上記所定条件の各々に予め点数を配分し、これらの所定条件の成立に応じて当該点数を加算し、当該加算した結果を所定の閾値と比較して、上記水分条件、または地域条件に該当するか否かを判定するようにしてもよい。
【0032】
この構成では、条件判定手段が、各条件の成立に応じて、点数を加算し、閾値を用いて判定するので、汚れ判定装置は、柔軟かつより高精度に汚れ判定をすることができる。
【0033】
(11) 上記条件判定手段は、上記地域条件として、現在の走行地域が、車両または標識を含む障害物の存在が想定される予め定めた地域であるか否か判定し、
上記汚れ判定手段は、上記無検知時間が一定時間以上継続した場合であって、かつ、上記地域条件が肯定の場合にのみ、上記レーダが汚れていると判定するようにしてもよい。
【0034】
例えば市街地を走行中であれば、標識等の障害物があり、物体を検知できるのが通常であるから、物体を何ら検知できないとすれば異常であると判定できる。この構成では、障害物が存在する市街地等において、汚れている旨を判定できるので、この場合には、汚れ判定装置を搭載する車両は、警告表示などができる。
【0035】
(12)本発明のレーダ保全装置は、
上記(1)〜(11)のいずれかに記載のレーダ判定装置と、
レーダの表面が汚れている旨の報知を行う報知手段、または上記レーダの洗浄を行う洗浄手段のいずれか1以上を備え、
上記汚れ判定手段が上記汚れていると判定した場合には、上記報知手段が上記報知をするか、または上記洗浄手段が洗浄を行うとしてもよい。
【0036】
このレーダ保全装置は、汚れている旨の判定に基づいて、警告、洗浄の所定の処理を行う。これにより安全性を確保できる。
【0037】
なお、報知とは、人間の五感の作用により知らせることができればよく、音声、ブザー、表示、振動等どのようなものでもよい。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、レーダの汚れの有無の誤判定を低減するレーダ判定装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下、図面を参照して、本発明に係るレーダ判定装置の実施形態について説明する。
【0040】
(第1実施形態)
図2は、本発明に係るレーダ判定装置を搭載した車両の一例(図2(A))および、車両1のうち、付着した汚れを判定する部分の構成を示している(図2(B))。
【0041】
図2(A)に示すように、車両1は、レーダの汚れの検知に関係する構成として、レーダ101F、R(以下、レーダ101と総称する)、ACC制御ECU2を備える。また、図2(B)に示すように、車両1は、各種センサ類/各種ECU等3を備える。なお、各種センサ類/各種ECU等3は、車両1内の各種のセンサ、各種のECU、各種の装置を総称するものとする。
【0042】
レーダ101F、101Rは、車両100の前方、後方にそれぞれ設けられている。レーダ101は、電波等(光を含む)を発信し、障害物で反射した電波等を受信する。これにより、車両の前方または後方の障害物を検知し、レーダ101は、障害物との距離、障害物の速度を検知できる。
【0043】
ACC(車間距離制御)制御ECU2(=本発明のレーダ判定装置の一例に相当する)は、例えば、インストルメントパネル付近に搭載されている(図2(A)参照)。ACC制御ECU2は、レーダ101、および各種センサ類/各種ECU等3と通信可能に接続されている。ACC制御ECU2は、図略のマイクロコンピュータを備え、図略のROM(Read Only Memory)等に予め記憶された制御プログラムを実行させる。ACC制御ECU2は、判定部20を備える。レーダ汚れ判定部20は、実装上、ACC制御ECU2のマイクロコンピュータの機能部またはプログラムとして構成する。レーダ汚れ判定部20は、レーダの汚れ判定を行う。また、ACC制御ECU2は、レーダによる車間距離、速度の測定結果に基づいて、ACC(車間距離制御、Adaptive Cruise Control)、PCS(衝突判断、Pri−Crush Safety)を行う。レーダ汚れ判定部20が、レーダが汚れていると判定した時は、車両1は、ACC、PCSができないことを運転者に報知する。
【0044】
図2の各種センサ類/各種ECU等3には、例えばレインセンサ等のセンサ類、ワイパ制御ECU等のECU、ナビゲーション装置のECUなどを含む。ECU、各種装置は、ACC制御ECU2と同様、マイクロコンピュータを備え、各種設定情報を記憶している。これらの詳細は後述する。
【0045】
レーダ汚れ判定部20(以下判定部20と称する)は、判定部20を動作させるプログラムのサブルーチンとして実行するレーダ検知処理21、条件判定処理22、レーダ汚れ判定処理23の処理により、レーダ101表面(レーダの検知方向の表面)が汚れているか否か判定する。なお、レーダ検知処理21、条件判定処理22、レーダ汚れ判定処理23は、本発明のそれぞれレーダ検知手段、条件判定手段、レーダ汚れ判定手段に相当する。
【0046】
レーダ検知処理21では、判定部20は、レーダ101から入力する情報に基づいて、レーダ101が物体を検知できないか否か判定する。
【0047】
条件判定処理22では、判定部20は、各種センサ類/各種ECU等3の状態、設定情報に基づいて、レーダ101に水分が付着している可能性が高いか否かの水分条件(これは、本発明の水分条件に相当する)、地域が所定地域外(または所定地域内)か否かの地域条件を判定する。ここで、本願でいう水分には、液体の水のみならず、氷、雪、水蒸気を含み、本願でいう水分は、純粋な水分のみならず、泥など他の物質と混合した状態でもよいものとする。水分条件の判定は、より具体的には、現在天候が雨または雪であるか(雨雪条件)、および、路面に水分を含む状態であるか(路面条件)を含む。これら雨雪条件、路面条件は、それぞれ1または複数の条件からなる。雨雪条件は、例えば、レインセンサの出力やワイパの稼動状態から判定する。路面条件は、例えば、スリップ状態を検知することにより判定する。地域条件は、車両1内部の各種センサ類/各種ECU等3のマイクロコンピュータに記憶した地域情報、またはナビゲーション装置を搭載する場合にその現在位置情報を用いることができる。
【0048】
なお、水分条件と地域条件とは厳密に区別する必要はない。例えば、降雪地域であるかなどの地域条件は、雨雪条件でもある。この点、判定部20は、水分条件か地域条件かいずれかに分類される条件を判断すればよい。
【0049】
レーダ汚れ判定処理23では、判定部20は、レーダ101によって物体が検知されない状態が継続している無検知時間の長さに基づいて、上記レーダが汚れているか否かの汚れ判定を行う。無検知時間が所定時間を超えていれば、一応、レーダ101の表面が汚れていると推定できる。また、レーダ汚れ判定処理23では、判定部20は、レーダ検知処理21のみならず、条件判定処理22に基づいて、レーダ101が汚れているか否か判定する。これにより、より高精度に判定することが可能である。
【0050】
(水分条件を判定する理由)
ここで、レーダ101が物体を検知することができなくなる主な原因は水分の付着である。したがって、レーダ101に水分が付着する可能性が低い場合には、水分を媒介として泥、汚れが付着する可能性が低いから、レーダ101にレーダ検知処理21で物体を検知できなくとも、単に障害物が周囲にないだけである可能性が高い。そこで、判定部20は、水分条件を判定することにより、汚れ判定の誤判定を防ぐ。これにより、まったく雨または雪が降っておらず、かつ、図1(C)のような障害物がない場合に、レーダ101の汚れを誤判定して無駄な警告を表示するのを防ぐことができ、運転者をいらいらさせることを防ぐことができる。
【0051】
(地域条件を判定する理由)
また、障害物が周囲に全くない地域は限られているから、地域条件として、特定の地域を走行中であるか否かを判定することにより、汚れ検知の誤判定を防ぐことができる。これに対して、市街地を走行中は、レーダ101は、ほぼ確実に障害物を検知できるはずである。したがって、所定時間継続してレーダ101が物体を検知できなければ、確実に警告を出すことができ、安全性を確保できる。また、地域条件の判定で、地域が降雪地域である場合に、雪が降っている他の事実を各種センサ類/各種ECU等3から検知できれば、その事実の推定を強めることができる。
【0052】
図3、図4を参照して、ACC制御ECU2の周辺機器である各種センサ類/各種ECU等3について具体的に説明する。図3は、ACC制御ECU2に接続される各種センサ類/各種ECU等3のうち、判定部20に関係がある部分を例示したブロック図である。図4は、図3に示した構成の具体的な配置例である。図4(A)は、車両1の側面図を示す。図4(B)は、車両1の内装を運転席から示す。
【0053】
図3、図4に示すように、車両1は、各種センサ類/各種ECU等3として、例えば、レインセンサ31、メインボデーECU32、ワイパ制御ECU33、エアコン34、外気温センサ42、クロック43、ソナーECU44、スピードセンサ45、スキッドコントロールECU51、ナビECU52を備える。これらの構成は、条件判定処理22の判定に用いられる。31〜34の構成は、雨を判定するのに用いられる。32〜34、42〜45の構成は、雪を判定するのに用いられる。51〜52の構成は、雨/雪のいずれの判定にも用いられる。
【0054】
なお、以上の構成は必ずしもすべて備える必要はないが、これらの状態を検知できる数が多いほど、水分条件、地域条件の判定要素が増え、判定部20の判定精度が高まると期待できる。
【0055】
レインセンサ31は、例えば、車両1のフロントガラス104の上部に設けられ(図4(B)参照)、フロントガラスへの降雨の有無及び雨量を検知する。レインセンサ31は、降雨時にフロントガラスに付着した雨滴、泥等の汚れを除去する図略のワイパを自動的に作動させるために設けられている。また、レインセンサ31は、レインセンサ情報として、降雨の有無を示す信号または雨量を示す信号を判定部20へ出力する。
【0056】
メインボデーECU32は、例えば、インストルメントパネル付近に設けられ(図4(B)参照)、ヘッドライト(テールライトも同様、以下同じ)の点灯状態を制御する。また、メインボデーECU32は、ヘッドライトの点灯状態を記憶している。ECU32は、ヘッドライト情報(テールライト情報)として、その点灯状態を判定部20へ送信する。昼間の時間にヘッドライトが点灯している場合には、判定部20は、雨または雪の状態であることの推定を強めることができる。なお、メインボデーECU32が判定部20に対してヘッドライトの点灯状態を送信するときは、物理的にはACC制御ECU2のマイクロコンピュータに対して行う。この点は、以下の説明で、「判定部20へ信号を出力する」というときについても同様である。
【0057】
ワイパ制御ECU33は、例えば、ハンドルの近辺に設けられ、車両1のフロントガラス104に付着した雨滴、泥等の汚れを除去するワイパの動作を制御する。ワイパの動作は、運転者の操作に従って、例えば、高速連続動作、中速連続動作、低速連続動作、間欠動作、及び、動作停止のいずれかが選択可能に構成されている。また、ワイパ制御ECU33は、判定部20に対して、ワイパ作動情報として、ワイパが作動しているか否か、ワイパの速度を示す信号を出力する。
【0058】
エアコン34は、例えば助手席部分に設けられており(図4(B)参照)、車両1室内の温度、湿度を制御する。また、エアコン34内部のECUは、ユーザにより設定された温度制御状態(例えば、暖房/冷房/除湿、温度)などを記憶している。エアコン34は、その情報をエアコン動作情報として判定部20へ出力する。
【0059】
外気温センサ42は、例えば、車両1前方のエンジンへの空気取り入れ口に設けられ(図4(A)参照)、外気温を測定する。このセンサの情報は、雪が降っている事実の推定を強めることができる。
【0060】
クロック43は、例えば、車両1内部のコンポーネントに設けられ(図4(B)参照)、現在の時刻、日付を表示し、記憶する。このような日時情報により、現在、冬であるか、昼間であるかを判定でき、雨雪条件の判定要素とすることができる。
【0061】
ソナーECU44は、例えばインストルメントパネル付近に設けられている(図4(B)参照)。ソナーECU44は、車両の前方または後方に設けられたソナー441F、441Rを制御し、その情報を取得する。ソナー441F、441Rは超音波を発し、その発信面前方の障害物に反射して戻ってきた超音波を受信して障害物の検知を行う。ソナーECU44は、レーダ101と同様に障害物を検知するものであるから、その作動状態も雨雪条件を判定するのに用いることができる。
【0062】
スピードセンサ45は、車速を検知するセンサであって、車速を示す信号を車速情報として判定部20へ出力する。スピードセンサ45は、ソナー441の作動確認にも用いることができる。すなわち、ソナー441は、レーダ101と同様、障害物の検知を行うから、ソナー441が障害物を検知できるにもかかわらず、レーダ101が障害物を検知できない場合には、判定部20は、レーダ101が異常であると判定できる。しかし、ソナー441が機能するのは低速の場合であるから、判定部20が、このようなソナー441を用いたレーダ101の異常判定をするには、車両1が低車速であることが前提になる。
【0063】
さらに、スピードセンサ45は、各車輪に設けることもでき(図4(A)のスピードセンサ45FR、45FL、45RR、45RL参照。)、この場合には、後述のスキッドコントロールECU51は、各車輪の速度差の情報に基づいて、車輪がスリップしているか否かの情報を取得できる。
【0064】
スキッドコントロールECU51は、例えばボンネット付近に設けられ(図4(A)参照)、各車輪に設けられたスピードセンサ45の速度に基づいて、スリップしているかどうか判定し、その判定結果であるスリップ情報を記憶する。また、運転者によってTRC(トラクションコントロール)がオンに設定された場合には、スキッドコントロールECU51は、スリップ情報に基づいて各車輪のブレーキを制御して、スリップを防止するよう制御する。スキッドコントロールECU51内部のマイクロコンピュータは、上記スリップ情報およびTRCオン/オフの情報を記憶している。
【0065】
ナビECU52(=ナビゲーション装置の一部に相当する)は、例えば、車両内部中央のディスプレイ61の背後に設けられ、ナビゲーション装置を制御する。ナビECU52は、地図情報を記憶しており、GPS(Global Positioning System)等を介して、車両1の地図上の位置である車両位置を検知し、地図上の車両位置をディスプレイに表示する。また、車両1の現在位置の情報を出力する。ナビゲーション52が記憶する情報は地域条件の判定に用いる。
【0066】
次に、図5〜図12を用いて、判定部20の判定フローについて説明する。ここで、図5〜図8は、判定フローの実施例1〜3を表す。図9〜図12は、実施例1〜3の応用である実施例4〜実施例7を表す。いずれのフローも車両1が走行開始した時点をフローの開始としている。
【0067】
(実施例1)
図5を参照して、実施例1について説明する。判定部20は、ST7でレーダに汚れがあると判定するまでST2〜ST6を繰り返し実行する。なお、図5中、2点鎖線で示す参照番号は、実施例1の応用である実施例4〜実施例7の説明として流用する。各ステップの詳細は以下の通りである。
【0068】
ST1において、判定部20は、上記無検知時間を計測するためのタイマ(無検知時間タイマ)を開始する。
【0069】
ST2、ST3では、判定部20は、所定時間(A分間、例えば1分)物体を検知できないことを判定基準として、レーダ101に異常があると推定する。ST2において、判定部20は、タイマ開始後、無検知時間の閾値であるA分間が経過したか否か判定する。A分間経過した場合には(ST2のYES)、処理はST4に進む。A分間経過していない場合には(ST2のNO)、処理はST3に進む。
【0070】
ST3において、判定部20は、レーダ101から物体(障害物を含む。以下物体というときは同じ。)を検知した旨の信号を受信したかどうか判定する。ST2、ST3のステップにより、無検知時間が閾値のA分を超えているか判定できる。ST3のYESへ分岐する場合には、A分経過する前に物体検知できた場合である。ST2のYESへ分岐する場合には、無検知時間がA分以上の場合である。A分間経過するか、物体の検知があるまでST2〜ST3の判定を継続する(ST2のNO、ST3のNO)。物体を検知した旨の信号を受信した場合には(ST3のYES)、処理はST5に進み、判定部20は、レーダ101の異常がないと判定する。
【0071】
ST4は、条件判定処理22に対応する。ここでは、判定部20は、水分条件が成立しているか否かを判定する。例えば、レインセンサ31の検知状況を判定し、雨か否か判定する。雨または雪であれば(ST4のYES)、レーダ101が汚れていると判定できる(ST7)。つまり、ST4へは、一定時間(A分間)レーダ101が物体を検知できない場合(ST2のYES)に分岐するから、判定部20は、この時点でレーダ101が汚れていると推定できる。しかし、レーダ101に水分が付着しえない場合には、この推定のみに基づく汚れ判定は、誤判定の場合もありうる。そこで、判定部20は、ST4の水分条件が成立すると判定した場合に、レーダ101が汚れていると判定する。
【0072】
他方、ST4で、判定部は、水分条件が成立していないと判定すれば(ST4のNO)、レーダ101が汚れていないと判定できる(ST5)。つまり、この場合には、レーダ101が物体を検知できないのは水分の付着が原因で汚れているからではないと判定できる。
【0073】
ST5、ST7は、レーダ汚れ判定処理23に対応する。判定部20は、以上のST2〜ST4に基づいてレーダ101が異常であるか否かを判定する。なお、ST5は、説明上付したステップであり、実装上はなんらの出力やフラグのセットもしなくてもよい。すなわち、判定部20が、レーダ101が汚れていると判定せず、ST6でタイマをリセットすれば、ST5の実質的な効果が生じる。この点は、以下のすべての実施例、実施形態2も同様である。また、ST7でこのような明示的な判定をしていなくても、異常であることに応じてサブルーチン(例えば、警告処理、洗浄処理等)を呼び出すなどの処理をしてもよい。このサブルーチンを呼び出しが、実質的に異常を判定をしていることに相当する。この点についても、以下のすべての実施例、実施形態2も同様である。
【0074】
ST6において、判定部20は、無検知時間タイマをリセットして、新たにA分間の計測を開始する。この点は、本発明の「無検知時間のリセット」に相当する。
【0075】
以上のとおり、図5のフローは、ST4の判定および上記リセットにより、上記ST2、ST3の汚れの推定に基づく汚れ判定の処理を変更している。そして、図5のフローによれば、判定部20は、障害物を検知するか(ST3のYES)、障害物を検知できなくとも水分条件が成立しないと判定する場合には(ST4のNO)、レーダ101が異常であると判定することはない。すなわち、車両1が運転者に警告を出すことがない。したがって、仮に図1(C)のような障害物のない路面を走行中でも、ワイパが動作していない場合(すなわち雨や雪が降っていないと推定される場合)には運転者に警告が出されることがないので、警告が誤作動する可能性を低減できる。
【0076】
ST8について説明する。ST1〜ST7で判定部20の処理は完結している。しかし、ACC制御ECU2は、単に汚れ検知するのではなく、運転者に警報するのが望ましい。さらに、図5の点線部のように、この処理は、車両1が移動中は、常時繰り返し行われるのが望ましい。そのため、判定部20は、ST7でレーダ101に異常ありと判定された後、その異常が解消された場合には、タイマをリセットし、ST2へ復帰するようにしてもよい。異常を解消するためには、例えば、判定部20は、ST7の後、レーダ101の自動洗浄等を行ってもよい(ST8)。
【0077】
(実施例2)
図6は、実施例2を表す。実施例2は、実施例1において、レーダ検知処理21、条件判定処理22の判定順序を置き換えたものである。対応関係については、それぞれ、ST11はST1、ST12はST4、ST13はST2、ST14はST7、ST15はST8、ST16はST3、ST17はST6がそれぞれ対応している。図6の各処理については、対応する実施例1の処理の説明を準用し、図6のフローの流れの要点を以下に説明する。なお、実施例2の応用例のフロー239については後述する。
【0078】
ST12について、判定部20は、ST12の水分条件の判定が否定であれば(ST12のNO)、タイマをリセットし(ST17)、レーダ異常なしと判定する(ST18)。判定部20は、このST12の判定を繰り返し行うから、判定部20は、水分条件の判定が否定である限り、タイマをリセットしつづけ、実質的にタイマは開始しない。タイマが開始しないと、判定部20は、ST14の汚れ判定をすることがない。したがって、判定部20は、水分条件が成立しないと判定する場合には、レーダ101が無検知と判定しても、判定部20が誤判定する可能性を軽減できる。
【0079】
以上のとおり、図6のフローでは、判定部20は、ST12の判定およびST17のリセットにより、無検知時間の測定開始時期の調整し、上記ST13、ST16の汚れの推定に基づく汚れ判定を変更している。ST17は、本発明の「上記無検知時間の測定開始時期の調整」に相当する。
【0080】
ST16で、判定部20が物体を検知できない場合(ST16のNO)には、タイマの時刻が進む。判定部20が物体を検知できないままA分経過した場合には(ST13のYES)、判定部20は、汚れ判定を行う(ST14)。即ち、判定部20は、ST12の水分条件の判定が肯定(ST12のYES)、かつ、判定部20が物体を検知できる場合(ST16のYES)場合に限り、汚れ判定を行う(ST14)。
【0081】
実施例2の応用例1として、ST12のNOに分岐する場合に、応用フロー239に示すように、ST17でなくST16に分岐してもよい。この場合には、A分経過した後も、ST11のカウントが加算されることがありうる。
【0082】
また、実施例2の応用例2として、判定部20は、ST11の処理を、ST12のYESの後ろで実行してもよい。この場合も、上記実施例2と同様、水分条件が成立するまでタイマが開始しないようにすることができる。実施例2と、応用例2とは、厳密には異なり、実施例2は、タイマ進行中に水分条件を判断するに対し、応用例2は、タイマ開始前に水分条件を判断する。以上の実施例1、2、およびその応用例2に示すように、水分条件の判定、無検知時間の計測はいずれが先でもよく、無検知時間を計測中に水分条件を判定してもよい。いずれにせよ、判定部20は、レーダが誤判定する可能性を軽減できる。
【0083】
(実施例3)
図7は、実施例3を表す。実施例3は、実施例2において、ST11を行う前に地域条件を判定する(ST21)。予め定めた地域条件が成立する場合には(ST21のYES)、判定部20は、レーダ汚れ判定処理23を無効化する設定を行い(ST22)、図7のフローは終了する。この地域条件は、例えば「中近東、オーストラリア等の標識も対向車もほとんどない地域である」とすることができる。また、この条件と「走行地域が乾燥地域であること」の論理積を地域条件としてもよい。また、地域条件が成立しない場合には(ST21のNO)、判定部20は、図6に示すST11以下を実行する。
【0084】
(実施例4〜実施例7)
以下の実施例4〜実施例7は、実施例1〜3の応用例である。実施例4〜実施例7では、ST4以外は、実施例1と同じであり、実施例1の説明を準用する。また、以下の実施例4〜実施例7の説明で、図5をこれらの実施例の一部として参照して説明する。実施例4〜実施例7は、ST4の応用例であり、図5の外部参照番号1で分岐し、外部参照番号2、3で図5に戻る。なお、実施例4〜実施例7の実施例2、3に対する応用については後述する。
【0085】
(実施例4)
図8に示す実施例4は、ST4で判定する条件1の具体例である。図8の表は、図8(A)、図8(B)、図8(C)、図8(D)とも、欄の左から、条件番号、判定基準、この判定基準の判定の基礎となる情報を出力する検知装置等を表している。実施例1は、図8(A)、図8(B)、図8(C)、図8(D)に示す条件のいずれか、またはこれらの論理積(and)または論理和(or)のいずれか、またはこれらの組み合わせによって代替して実施することができる。
【0086】
図8(A)は、雨を判定する条件を示す。
【0087】
条件1は、レインセンサがオンであることである。具体的には、条件1は、レインセンサ31から雨を検知した旨の信号(レインセンサオン)を受信したことである。なお、条件1を0を超える雨量の情報を受信したこととしてもよい。
【0088】
条件2は、過去n秒間でワイパ作動したことである。具体的には、条件2は、ワイパ制御ECU33からワイパが作動している旨の信号を過去n秒間に受信したことである。つまり、判定部20は、現在雨が降っている状態、もしくは雨が止んでからそれほど時間が経っていない状態か否かを判定する(雨が降っている間や、雨が止んでからしばらくの間は、レーダ101に水分が付着しやすいため)。なお、条件2の変形例として、今回の走行中(すなわち、エンジンをスタートさせてから現在までの走行期間)にワイパが1度でも作動したこと(すなわち雨が降ったこと)を判定するようにしてもよい。これを判定するためには、ワイパが作動したときに、その旨を示す情報を、エンジンが停止されるまでの期間、記憶装置に保持しておけばよい。
【0089】
条件3は、エアコンのモードが除湿であることである。具体的には、条件3は、エアコン34から受信したエアコンの状態が除湿であることである。この条件の成立は、多湿状態であることの推定を強める。
条件4は、昼間においてヘッドライト(テールライト)がオンであることである。具体的には、条件4は、メインボデーECU32から、テールライトがオンである旨の信号を受信し、かつ、クロック43から受信した時刻が昼間であることである。この条件が成立すると、昼間にもかかわらず周囲が暗いことになり、雨、雪の推定を強める。
【0090】
図8(B)は、雪を判定する条件を示す。
【0091】
条件11は、外気温<閾値であることである。具体的には、条件11は、外気温センサから受信した外気温が閾値未満(以下でもよい)であることである。
条件12は、地域が降雪地域であることである。具体的には、条件12は、ナビECU52から受信した地域情報が、降雪地域であることである。
条件13は、ソナー凍結時であることである。具体的には、条件13は、ソナー441が凍結して、障害物の情報を受信できなくなっていることである。
条件14は、日時が冬であることである。具体的には、条件14は、クロック43から受信した月日が冬季であることである。
条件15は、エアコンヒータがオンの状態であることである。具体的には、条件15は、エアコン34から受信したエアコンの状態が、エアコンヒータがオンの状態であることである。
条件16は、低車速であることである。具体的には、条件16は、スピードセンサ45から受信した車速が所定の閾値未満であることである。つまり、雪が降っているような場合、運転者は車速を低車速にするから、判定部20は、これを判定する。
条件17は、過去n秒間でワイパ作動したことである。条件17は、条件2と同様である。
条件18は、昼間においてヘッドライト(テールライト)がオンであることである。条件18は、条件4と同様である。
図8(C)は、上記路面判定条件、即ち路面が湿っている状態を判定する条件を示している。
【0092】
条件21は、車輪がスリップ状態であることである。具体的には、条件21は、スキッドコントロールECU51が各車輪のスピードセンサ45に基づいて判定して、車輪がスリップ状態であることである。つまり、車輪がスリップ状態であれば、路面が凍結しているか、水溜りが発生していると推定できる。雨、雪が止んでいても、氷があり高湿度の状態にあるか、または水溜りの水がレーダ101に降りかかっているおそれがあるので、判定部20は、条件21を判定する。
【0093】
条件22は、トラクションコントロール(TRC)がオンであることである。具体的には、条件22は、スキッドコントロールECU51に設定されたトラクションコントロール(TRC)のモードがオンであることである。条件22の意義は、条件21と同様である。
【0094】
条件23は、地域が乾燥地域(乾季を含む)以外であることである。具体的には、条件23は、ナビECU52から入力した地域(車両1の現在位置)が乾燥地域以外であることである。また、クロック43から入力した季節条件を加えるならば、条件23を乾季に該当することとしてもよい。乾燥地域であれば、レーダ101には、そもそも水分によって汚れが付着することはない。
【0095】
条件31は、地域が所定地域内/所定地域以外であることである。具体的には、条件31は、ナビECU52から入力した地域(車両1の現在位置)が所定地域に該当すること(または所定地域以外であること)である。
【0096】
条件31は、例えば、条件311(市街地地域を走行中である。)、条件312(即ち、中近東、オーストラリア等の地域以外である。)のいずれか1以上の条件とすることができる。条件311(市街地地域を走行中)が成立する場合に、レーダ101が物体を検知できないとすれば、他の条件を判定するまでもなく、レーダ101が異常であると判定できる。中近東、オーストラリア等の標識も対向車もほとんどない地域を走行中であれば、レーダ101が物体を検知できないとしても、レーダ101が異常でないとの推定を強めることができる。また、図8に示す条件を複数判断する場合には、レーダ異常なしと判定する前提として、このような中近東、オーストラリア等の所定地域を走行中であることを条件にしてもよい。
【0097】
(実施例5)
図9に実施例5を示す。実施例5は、実施例4の応用である。実施例5のフローは、図5のST4の代わりに外部参照番号1〜3で図9に分岐するステップで構成される。
【0098】
図9の実施例5では、図8に示す条件1〜条件4、条件11〜条件18、条件21〜条件23、条件312(地域が中近東、オーストラリア等の所定地域外であること)のいずれか1つでも成立する場合(図10中の条件判定の各ステップのYES)には、フローは、図5の外部参照番号2に分岐する。すなわち、レーダ101が異常であると判定する(ST7)。
【0099】
これとは逆に図9中の条件判定の各ステップがすべてNOである場合には、図5の外部参照番号3に分岐する(すなわち、レーダ101が異常なしと判定する)。
【0100】
なお、実施例5の応用として、車両1の装備に応じて、または設計に応じて、図9の条件のうちのいずれか複数の条件を適宜選択してもよい。以下の実施例6〜実施例7も同様である。
【0101】
(実施例6)
図10に実施例6を示す。この実施例は、実施例4の応用である。この実施例は、図8に示す条件を「確実に異常であると推定可能な条件X_i(i=1〜m)」と、「確実に異常なしであると推定可能な条件Y_j(j=1〜n)」、「推定を強める間接事実を用いた判定Z_k(k=1〜2)」に分けて、これらの条件を論理積(and)、論理和(or)で結合して判定する。
【0102】
条件X_iのいずれか1つでも成立すれば(ST44i(i=1〜m)のYES)、他の条件を判定せずに、図5の外部参照番号2に移動する。すなわち、レーダ101が異常であると判定する(ST7)。条件X_iの例としては、例えば、図9の「地域が市街地であるか(条件311)」、「レインセンサがオンである(条件1)」、「過去n秒間でワイパが作動した(条件2、条件17)」、「ソナーが凍結時である(条件13)」などがあげられる。条件311が成立する場合、レーダ101前方の障害物が多いにもかかわらずこれを検知できないとすれば、レーダ101が異常であると確実に判定できる。また、条件2、条件3、条件13は雨、雪をほぼ確実に推定できる。したがって、条件Xのうち、1つの条件が成立すると他の条件を判定するまでもなく、レーダ101が異常であると判定する(ただし、無検知時間の経過を条件とする。)。
【0103】
条件Y_jのいずれかが不成立であれば(ST45j(j=1〜n)のNO)、他の条件を判定せずに、図5の外部参照番号3に移動する。すなわち、レーダ101が異常でないと判定する(ST5)。条件Y_jの例としては、例えば、「地域が乾燥地域(乾季の地域を含む)以外である」が挙げられる。この場合には、レーダ101が水分により汚れが付着する恐れが少ないので、異常なしと推定する(図5のST5)。
【0104】
さらに、雨、雪の推定を強める間接事実の条件Z_1、Z_2のいずれかが成立した場合に限り(ST461、ST462のYES)、レーダが異常であると判定する(ST7)。条件Z_1は、例えば、条件1〜4のうち、条件3、条件4を論理積(and)で結合したものである。条件Z_2は、例えば、条件11〜条件18のうち、条件13、条件17以外のすべて(またはいずれか2以上)を論理積(and)で結合したものである。したがって、ST461、ST462では、これらのステップで判定すべき間接事実がいずれか1つでも成立しなければ(ST461のNO、ST462のNO)、異常なしと判定する(ST5)。逆に、雨、雪のいずれかの間接事実がすべて成立すれば、レーダが汚れていると判定する(ST7)。
【0105】
なお、実施例6において、Z_1、Z_2の判断では、いずれも、路面判定条件のうち条件21〜22を論理積(and)または論理和(or)でさらに結合して判断してもよい。
【0106】
(実施例7)
図11、図12を用いて、実施例7について説明する。図11に示すように、実施例7では、実施例4の応用として、図8記載の所定条件の各々に予め点数を配分されている。そして、判定部20は、これらの所定条件の成立に応じて、当該点数を加算し、所定の閾値と比較して、上記水分条件、または地域条件に該当するか否かを判定する。図11は、水分条件の判定方法を表している。図11(A)の条件に該当するものを加算した合計点数S1と、図11(B)の条件に該当するものを加算した合計点数S2と、図11(C)の条件に該当するものを加算した合計点数S3を算出する。判定部20は、雨、雪をそれぞれ別々に判定する。例えば、
「合計点数S1+S3>閾値K1」が成立する場合には「雨」、
「合計点数S1+S3<閾値K2(ただし閾値K2<閾値K1)」が成立する場合には「雨ではない」、
「閾値K2≦合計点数S1+S3≦閾値K1」が成立する場合には「雨か否か不明」、
「合計点数S2+S3>閾値K3」が成立する場合には「雪」、
「合計点数S2+S3<閾値K4(ただし閾値K4<閾値K3)」が成立する場合には「雪ではない」、
「閾値K4≦合計点数S2+S3≦閾値K3」が成立する場合には「雪か否か不明」、
と判定することができる(図11(D))。また、閾値は、設計により決定すべきであるが、例えば、Y1=100、Y2=30、Y3=150、Y4=40とすることができる。
【0107】
以上の図11(D)の判定により、判定部20は、最終的な判定結果を「雨または雪」/「晴れ」/「不明」のいずれかに分類する。以下では、図11(D)の判定により「雨ではない」かつ「雪ではない」と判定された場合、判定部20は、最終的に「雨でも雪でもない」と判定する。図11(D)の判定により「雨か否か不明」かつ「雪か否か不明」と判定された場合には、判定部20は、最終的に「不明」と判定する。図11(D)の判定により「雨ではない」かつ「雪か否か不明」と判定された場合や、「雨か否か不明」かつ「雪ではない」と判定された場合にも、判定部20は、最終的に「不明」と判定する。なお、これらの判定結果について、実装上は、ACC制御ECU2がコードやビットで分類できればよい。
【0108】
図12は、図11の判定方法を用いた場合のフローを示す。
【0109】
ST471において、判定部20は、合計点数S1、S3を計算し、加算する。
【0110】
ST472では、判定部20は、合計点数S2、S3を計算し、加算する。ST472は、ST471と同時、または前後してもよい。
【0111】
ST473において、判定部20は、図11(D)で示した閾値との比較に基づいて、「雨または雪」、「雨でも雪でもない」、「不明」に分類する。「雨または雪」の場合には、処理は外部参照番号2に移動する(レーダが異常であると判定する。)。「晴れ」の場合には、処理は外部参照番号3に移動する(レーダが異常ないと判定する。)。「不明」の場合には、処理はST474に移動する。
【0112】
ST474、ST475、ST476について説明する。ST474では、判定部20は、ST476を通過した回数を示すカウントが閾値K5を超えているかどうか判定する。このカウントの意義は、雨または雪が不明のまま(ST473の不明)、ST2のA分間に渡る物体検知ができない状態(ST2のYES)が何回続いているかをカウントするものである。この状態が閾値K5を超えて続いている場合には(ST474のYES)、判定部20は、カウントをリセットした後(ST475)、外部参照番号2に移動する(レーダ101が汚れていると判定する。)。カウントが閾値K5を超えていない場合には(ST474のNO)、ST476において、判定部20は、ST474の判定で用いるカウントをインクリメントして、外部参照番号3に移動する(異常なしと判定する)。
【0113】
(実施例7の応用)
なお、以上の実施例7では、説明の容易のため、ST473において水分条件だけを「雨または雪」/「晴れ」/「不明」の判定の条件とした。しかし、ST473において、「雨または雪」であるとの判定を、図11で判定した雨判定の条件または雪判定の条件に対して、実施例6の「確実に異常であると推定可能な条件X_i(i=1〜m)」をor結合で加えてもよい。特に、地域条件の「市街地内である(条件311)」が満たされる場合には、他の条件を判定するまでもなく、異常と判定できる。また、ST473において「晴れ」であるとの判定を、図11で判定した雨判定の条件または雪判定の条件に対して、実施例6の「確実に異常なしであると推定可能な条件Y_j(j=1〜n)」をor結合で加えてもよい。特に、「地域が乾燥地域(乾季の地域を含む)以外であるか(条件23)」が否定の場合には、他の条件を判定するまでもなく、レーダが異常ないと判定できる。
【0114】
また、実施例7について、「不明」という判断をせず、「雨または雪」/「晴れ」に分類して判断してもよい。
【0115】
また、実施例6の応用として、間接事実の推定(条件Z1、Z2)についてのみ、実施例7のように点数加算して閾値と比較するようにしてもよい。
【0116】
なお、以下の実施例4〜実施例7、その応用例について、図5を基にして応用例を示したが、図5から分岐する実施例4〜実施例7の外部参照番号を、番号11〜13、番号21〜23のいずれかに置き換えることにより、実施例4〜実施例7を実施例2、3に対しても応用できる。また、実施例4〜実施例7で挙げた地域条件を、実施例2、3のST11の地域条件に適用してもよい。
【0117】
(第2実施形態)
次に、図15、図16を用いて、第1実施形態の応用に係る第2実施形態のレーダ汚れ判定部について説明する。基本的構成は、第1実施形態と同じであり、図5のST4等に用いるA分の時間調整、時間設定のみが異なる。それ以外の点は第1実施形態の説明を準用する。
【0118】
(実施例1)
第2実施形態の実施例1については、基本的な処理は、図5の実施例1と同様であり、その説明を準用する。以下、実施例2で付加している部分について説明する。
【0119】
ST4において、水分条件が成立しない場合には(ST4のNO)、ST48、ST49において、更に付加期間α分を設けて、時間α分内にレーダ101が物体を検知したか判定する。α分経過する前にレーダ101が物体を検知した場合には、ST5に移動する(レーダ101が異常なしと判定する。)。レーダ101が物体を検知できずに、無検知時間が更にα分経過した場合には、ST5に移動する(レーダ101が汚れていると判定する。)。
【0120】
これにより、例えば乾燥地域を走行中であるなど、レーダ101が汚れる要因がない場合には、判定部20は、警告をする間隔を長くすることができる。つまり、水分条件が不成立の場合には(ST4のNO)、ST2で判定する間隔を長くした方が、レーダが汚れていると判定される頻度が低下するので、誤判定の頻度が減る。
【0121】
(実施例1の応用)
実施例1に対する応用として、ST4の判断基準について、実施例5〜実施例8を適用できる。特にST4について、水分条件の代わりに、地域条件を代替的に適用するのが好ましい。この場合、乾燥地域や、標識がほとんどない地域を走行中であれば、ACC制御ECU2は、警告を出す回数を軽減できるメリットがある。また、ST4またはST48のA分の代わりに、実施例7の図9において説明した加算した点数の結果に応じて、B分を設定することも可能である。この場合には、B>Aでなくてもよい。また、ST4のYESに分岐した場合には、ST4をA分より短いC分に設定することも可能である。
【0122】
また、ST4を通過する度にβずつ段階的に大きくするようにしてもよい。この場合、Aの値が大きくなり過ぎないように、Aの値が取り得る上限値(例えば「A+β」)を設けておいてもよい。
【0123】
(第2実施形態の実施例2)
実施例2は、第1実施形態の実施例2の応用であり、実施例2と同じ処理については、同じ処理番号を付してその説明を準用する。以下、異なる点について説明する。
【0124】
ST22は、ST12と対応する。ST22では、ST12の代わりに、判定部20は、物体が少ない地域であるか否か判定する。物体が少ない地域でなければ(ST21のNO)、ST13以下の処理は、図6と同様である。物体が少ない地域でなければ(物体が多い地域であれば)(ST21のYES)、ST13の代わりに、判定部20は、B分(B>A)以上経過したか判定する。その後の処理は、ST13以下と同様である。この実施例においても、レーダ101が汚れる要因がない場合には、判定部20は、警告をする間隔を長くすることができる。
【0125】
(実施例2の応用)
実施例2に対する応用として、ST4の判断基準について、実施例5〜実施例8を適用できる。例えば、ST22の地域条件の代替として、水分条件を適用してもよい。
【0126】
次に、図15を用いて、第1、第2実施形態の応用として、判定部20の判定後の処理について説明する。図15(A)は、その処理に関する構成のブロック図であり、図15(B)は、その構成の配置例を示している。
【0127】
判定部20が、レーダが汚れている旨の判定をした場合には、報知(警報)、または、レーダ101の洗浄を行うのが望ましい。報知するための構成としては、ディスプレイ61、メータ62、警告ブザー63のいずれか1以上を備えるのが望ましい。
【0128】
図15(B)に示すように、ディスプレイ61は、運転席の前方下側に設けられたLCD(Liquid Crystal Display)等からなり、ナビECU52からの指示に従って地図上の車両位置を表示する。判定部20が、レーダが異常と判定した後は、汚れている旨を示すアイコンを表示したり、「レーダ表面が汚れています。」、「ACC(車間距離制御)不能です。」、または、「衝突防止システムの作動を停止します。」などのメッセージを表示したりすることができる。
【0129】
メータ62は、速度メータ類からなり、判定部20が異常と判定した後は、汚れている旨を示す警告灯(LED)を点灯させる。
【0130】
警告ブザー63は、運転者に警告を出すブザーであり、運転席周囲に設けられる。判定部20が異常と判定した後は、音声で警報する。また、上記のようなメッセージをスピーカ64から音声で出力してもよい。
【0131】
レーダ洗浄装置65は、レーダ101に付着した雨滴、泥等の汚れを除去する。汚れ除去の方法としては、例えば、レーダ101の表面に洗浄液を噴射したり、エアブローを吹き付けたり、ワイパを設けて汚れをこそぎとるなどの方法をとることができる。
【0132】
なお、ACC制御ECU2および以上の61〜65のいずれか1以上の構成は、本発明のレーダ保全装置に相当する。
【0133】
また、上記した報知とは、人間の五感の作用により知らせることができればよく、以上の61〜64の構成のほか、人体に振動を与えるものでもよい。また、報知のほか、ACC制御ECU2は、判定部20を利用するACC(車間距離制御)、衝突防止システムの作動を停止するように、その内部または各部を制御してもよい。
【0134】
以上の実施形態について、以下に補足する。
【0135】
図2、図3の説明では、機能ごとに分離したブロックで説明したが、実装上は、これらの機能のうち、いずれか複数の機能を一体として構成してもよいし、一つのブロックを複数に分離して構成してもよい。以上の説明で、処理のフローで大小比較をしている説明の中に、「≦」、「<」(以上、以下、未満、越えている)という意味の説明があるとすれば、相互に読み替えて適用してもよい。即ち、閾値により判断していればよく、「≦」か「<」かいずれを適用すべきかについて技術的な意味はない。
【0136】
以上の構成では、ACC制御ECU2に判定部20を設けているが、判定部20は車両1内の任意の箇所に設けられていてもよい。例えば、衝突防止装置に設けられていてもよい。また、以上の図4、図12で示した配置は単なる例示であり、可能な限り、別の位置に設けていてもよい。
【0137】
以上の実施形態で示した条件が成立するか否かの判定は、実質的にその判定に基づく処理をしていればよい。形式的には、判定条件を「成立しないか否か」に置き換えて処理をしていても、これらの条件が成立する場合に同じ処理をしていれば、実質同一の効果を奏する。
【0138】
また、以上の説明の図8などでは、図3の構成の存在を前提とした条件を示している。しかし、図3の構成の一部を備えない車両については、その構成について判定しないものとして、以上の実施形態を適用できる。
【0139】
また、図3では、各構成がACC制御ECU2と直接接続している図を記載しているが、実装上は直接的でなくても間接的にACC制御ECU2へ情報を伝達できればよい。上記ACC、PCSは、レーダ101による物体検知を用いた場合の応用例であり、本発明の実施には必須ではない。本発明の実施形態としては、車両1は、ただ単に運転者に物体の存在を伝達するだけでもよい。また、ACC制御ECU2と別のECCが、上記測定結果に基づいてPCSを行ってもよい。
【0140】
また、レーダ検知処理21、図5のST3において、レーダ101から受信する信号は、物体検知の有無自体でなくてもよく、障害物の速度、距離の情報でもよい。判定部20は、物体検知の有無以外の情報から間接的にでも物体検知を確認できればよい。
【0141】
また、レーダ101は、少なくとも物体の有無を検知できればよく、必ずしも物体の速度、物体の距離まで測定する必要はない。
【産業上の利用可能性】
【0142】
本発明は、例えば、車両周囲の障害物等を検知するレーダのレーダ表面に付着した雨滴を含む汚れの検知、判定、その判定装置、判定装置を搭載したレーダ、車両に応用できる。
【図面の簡単な説明】
【0143】
【図1】従来技術、解決課題を説明するための図
【図2】本発明の第1実施形態に係るレーダ汚れ判定に関係する構成
【図3】本発明の第1実施形態に係るレーダ汚れ判定に関係する構成
【図4】本発明の第1実施形態に係るレーダ汚れ判定に関係する構成の配置例
【図5】本発明の第1実施形態に係るレーダ汚れ判定部のフローの実施例1
【図6】本発明の第1実施形態に係るレーダ汚れ判定部のフローの実施例2
【図7】本発明の第1実施形態に係るレーダ汚れ判定部のフローの実施例3
【図8】本発明の第1実施形態に係るレーダ汚れ判定部のフローの実施例4
【図9】本発明の第1実施形態に係るレーダ汚れ判定部のフローの実施例5
【図10】本発明の第1実施形態に係るレーダ汚れ判定部のフローの実施例6
【図11】本発明の第1実施形態に係るレーダ汚れ判定部のフローの実施例7のための条件判定方法
【図12】本発明の第1実施形態に係るレーダ汚れ判定部の処理フローの実施例7
【図13】本発明の第2実施形態に係るレーダ汚れ判定部の処理フローの実施例1
【図14】本発明の第2実施形態に係るレーダ汚れ判定部の処理フローの実施例2
【図15】本発明の第1、第2実施形態の応用に係るACC制御ECUのブロック図
【符号の説明】
【0144】
1 車両
2 ACC制御ECU
20 レーダ汚れ判定部(判定部と略す)
21 レーダ検知処理
22 条件判定処理
23 レーダ汚れ判定処理
3 各種センサ類/各種ECU等
31 レインセンサ
32 メインボデーECU
33 ワイパ制御ECU
34 エアコン
42 外気温センサ
43 クロック
44 ソナーECU
441F、R ソナー
45 スピードセンサ
51 スキッドコントロールECU
52 ナビECU
61 ディスプレイ
62 メータ
63 警告ブザー
64 スピーカ
65 レーダ洗浄装置
101 レーダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設けられたレーダの汚れの有無を判定するレーダ判定装置であって、
前記レーダからの信号に基づいて、当該レーダが物体を検知したか否かを判定するレーダ検知手段と、
前記車両に設けられたセンサの出力または装置の設定に基づいて、前記レーダに水分が付着している可能性が高いか否かを判定するための水分条件と、前記車両が走行中の地域が所定地域内か否かまたは所定地域外か否かを判定するための地域条件のいずれか1以上の条件を判定する条件判定手段と、
前記レーダによって物体が検知されない状態が継続している無検知時間の長さに基づいて、前記レーダが汚れているか否かの汚れ判定を行う汚れ判定手段とを備え、
前記汚れ判定手段は、前記条件判定手段による前記水分条件および/または前記地域条件の判定結果に応じて、前記無検知時間の調整、または前記無検知時間の測定開始時期の調整、または前記無検知時間のリセットのいずれか1以上により、前記汚れ判定の判定方法を変更することを特徴とする、レーダ判定装置。
【請求項2】
前記汚れ判定手段は、前記条件判定手段によって前記レーダに水分が付着している可能性が高いと判定された場合であって、かつ、前記無検知時間が一定時間以上継続した場合にのみ、前記レーダが汚れていると判定することを特徴とする、請求項1に記載のレーダ判定装置。
【請求項3】
前記汚れ判定手段は、
少なくとも前記無検知時間の調整を用いて、前記汚れ判定の判定方法を変更するものであって、
(a)前記条件判定手段によって、前記レーダに水分が付着している可能性が高いと判定された場合であって、かつ、前記レーダによって物体が検知されない状態が第1の時間以上継続した場合には、前記レーダが汚れていると判定し、
(b)前記条件判定手段によって、前記レーダに水分が付着している可能性が高いと判定されなかった場合であって、かつ、前記レーダによって物体が検知されない状態が前記第1の時間よりも長い時間である第2の時間以上継続した場合には、前記レーダが汚れていると判定することを特徴とする、請求項1に記載のレーダ判定装置。
【請求項4】
前記条件判定手段は、少なくとも前記地域条件を判定し、
前記汚れ判定手段は、前記条件判定手段によって、前記地域条件として、前記レーダで検知され得る物体が少ない地域以外を走行中であると判定された場合であって、かつ、前記無検知時間が一定時間以上継続した場合には、前記レーダが汚れていると判定することを特徴とする、請求項1に記載のレーダ判定装置。
【請求項5】
前記汚れ判定手段は、
少なくとも前記無検知時間の調整を用いて、前記汚れ判定を変更するものであって、
(c)前記条件判定手段によって、前記レーダで検知され得る物体が少ない地域以外を走行中であると判定された場合であって、かつ、前記レーダによって物体が検知されない状態が第1の時間以上継続した場合には、前記レーダが汚れていると判定し、
(d)前記条件判定手段によって、前記レーダで検知され得る物体が少ない地域以外を走行中であると判定されなかった場合であって、かつ、前記レーダによって物体が検知されない状態が前記第1の時間よりも長い時間である第2の時間以上継続した場合には、前記レーダが汚れていると判定することを特徴とする、請求項1に記載のレーダ判定装置。
【請求項6】
前記条件判定手段は、前記水分条件を、
(条件1)レインセンサから雨を検知した旨の信号を受信したか否か、
(条件2)過去の所定時間内にワイパが作動したか否か、
(条件3)エアコンのモードが除湿であるか否か、
(条件4)昼間において、ヘッドライトがオンになっているか否か、
(条件11)外気温が閾値未満か
(条件12)地域が降雪地域であるか否か、
(条件13)ソナーが障害物の情報を受信できなくなっているか否か、
(条件14)日時が冬であるか否か、
(条件15)エアコンヒータがオンの状態であるか否か、
(条件16)低車速であるか否か、
(条件21)車輪がスリップ状態であるか否か、
(条件22)トラクションコントロールがオンであるか、
(条件23)地域が乾燥地域または乾季のいずれでもないか、の少なくとも1つの条件に基づいて判定することを特徴とする、請求項1に記載のレーダ判定装置。
【請求項7】
前記条件判定手段は、前記地域条件を、
(条件311)前記走行中の地域が、市街地域内であるか否か、
(条件312)前記走行中の地域が、標識の少ない予め定めた地域内であるか否か、
の少なくとも1つの条件に基づいて判定することを特徴とする、請求項1に記載のレーダ判定装置。
【請求項8】
前記条件判定手段は、前記センサの出力または装置の設定に関する複数の所定条件の論理積および/または論理和を判定することを特徴とする、請求項1に記載のレーダ判定装置。
【請求項9】
前記条件判定手段は、
前記水分条件および/または前記地域条件として、前記水分条件または地域条件が、確実に成立することを推定できる条件Xと、確実に成立しないことを推定できる条件Yと、前記水分条件または地域条件の成立の推定を強める条件Zを予め設定し、
(e)前記条件Xのいずれかが成立した場合には、前記水分条件および/または前記地域条件が成立すると判定し、
(f)前記条件Yがいずれかが成立しない場合には、前記水分条件および/または前記地域条件が成立しないと判定し、
(g)前記条件Zがすべて成立した場合には、前記水分条件および/または前記地域条件が成立すると判定することを特徴とする、請求項1に記載のレーダ判定装置。
【請求項10】
前記条件判定手段は、前記センサの出力または装置の設定に関する複数の前記所定条件の各々に予め点数を配分し、これらの所定条件の成立に応じて当該点数を加算し、当該加算した結果を所定の閾値と比較して、前記水分条件、または地域条件に該当するか否かを判定することを特徴とする、請求項1に記載のレーダ判定装置。
【請求項11】
前記条件判定手段は、前記地域条件として、現在の走行地域が、車両または標識を含む障害物の存在が想定される予め定めた地域であるか否か判定し、
前記汚れ判定手段は、前記無検知時間が一定時間以上継続した場合であって、かつ、前記地域条件が肯定の場合にのみ、前記レーダが汚れていると判定することを特徴とする、請求項1に記載のレーダ判定装置。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1つに記載のレーダ判定装置と、
レーダの表面が汚れている旨の報知を行う報知手段、または前記レーダの洗浄を行う洗浄手段のいずれか1以上を備え、
前記汚れ判定手段が前記汚れていると判定した場合には、前記報知手段が前記報知をするか、または前記洗浄手段が洗浄を行うことを特徴とするレーダ保全装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−91386(P2010−91386A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−260966(P2008−260966)
【出願日】平成20年10月7日(2008.10.7)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】