レーダ装置及びレーダ装置の動作方法
【課題】検出性能向上と妨害波誤検出確率の低下を両立するレーダ装置及びレーダ装置の動作方法を提供する。
【解決手段】複数のレーダパルスを照射する送信部とレーダパルスに対応する複数の受信データを生成する受信部と目標物を探知する探知部において、受信部は前記複数の受信データをレンジセル毎に受信波のデータを生成し、前記探知部は、前記複数の受信データの全てを対象として、前記受信波のデータを積分し、全範囲積分部と前記複数の受信データを複数のグループに分割し、前記複数のグループそれぞれについて前記受信波のデータを積分し、前記複数のグループに関する積分結果を示す複数のグループ積分データを生成するグループ積分部と前記全範囲積分データと前記複数のグループ積分データとを比較することにより、目標物を示すレンジセルを検出し、検出結果データを生成する比較判定部とを備える。
【解決手段】複数のレーダパルスを照射する送信部とレーダパルスに対応する複数の受信データを生成する受信部と目標物を探知する探知部において、受信部は前記複数の受信データをレンジセル毎に受信波のデータを生成し、前記探知部は、前記複数の受信データの全てを対象として、前記受信波のデータを積分し、全範囲積分部と前記複数の受信データを複数のグループに分割し、前記複数のグループそれぞれについて前記受信波のデータを積分し、前記複数のグループに関する積分結果を示す複数のグループ積分データを生成するグループ積分部と前記全範囲積分データと前記複数のグループ積分データとを比較することにより、目標物を示すレンジセルを検出し、検出結果データを生成する比較判定部とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーダ装置及びレーダ装置の動作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
目標物を検出するために、レーダ装置が用いられる。レーダ装置は、レーダ波を目標物に照射し、反射波を受信する。反射波の受信結果(受信時刻等)に基づいて、目標物の距離や方向などが求められる。
【0003】
一般的に、レーダ装置は、必要な距離分解能に対応したパルス幅でビームを照射し、目標物にて反射された反射波を受信し、その受信波から目標検出や角度算出等の処理に用いる受信信号を生成する。また、レーダ装置は、レーダ装置の距離分解能に相当するレンジセル毎に受信信号をデジタル化し、受信信号をデジタルデータ(受信データ)化することが一般的である。また、レーダ装置は、一般的に受信信号(受信データ)の積分処理を実施して検出性能を向上している。受信信号(受信データ)の積分処理を行う為に、1信号処理周期内において複数のレーダパルスを照射し、各レーダパルスの照射後に、反射波を各レンジセル毎に受信する。各レンジセル毎に生成された受信データは、各レンジセル毎に判定される。また、各レンジセルは、各信号処理周期内で、複数パルス分を受信した後に積分する。すなわち、1信号処理周期毎に、受信データの総和が求められる。この積分処理は、PDI(Post Detection Integration)処理とも呼ばれる。受信データ積分結果の各レンジセルに対応する振幅強度と予め定められた閾値を比較することで、振幅強度が閾値以上であるレンジセルが検出される。すなわち、目標物が検出される。レーダ装置〜目標物間の距離は、検出されたレンジセルの位置に対応する距離を算出することで求められる。
【0004】
ここで、受信データ(又は受信信号)の積分回数が多いほど、探知確率が向上することが知られている。図1は、非特許文献1(RADAR PRINCIPLES(Jhon Wiley & Son, Inc, 1988))に記載されたグラフを示す図である。このグラフにおいて、横軸は、検知係数(探知に必要な受信電力とノイズとの比(S/N))を示し、縦軸は探知確率を示している。このグラフには、誤警報確率Pfaが10−8になるときの結果が示されている。また、このグラフには、積分回数(N)が1回、3回、10回、30回、及び100回であるときの結果がそれぞれ示されている。図1に示されるように、積分回数が多いほど、目標探知確率(例えば80%)を得る為に必要な検知係数(探知に必要な受信信号のS/N比)が小さくなる。すなわち、積分回数が多いほど、受信信号のS/N比が小さい状態で所定の誤警報確率において、探知確率が向上する(検出性能が向上する)と理解される。
【0005】
また、誤警報確率を悪化させてもよいならば、閾値(探知に必要な受信信号のS/N比)を下げることができ、探知確率を向上させることができるのは明らかである。
【0006】
レーダ装置に関連して、特許文献1(特公平7−18920号公報)には、ビデオ積分器が開示されている。このビデオ積分器は、レーダの受信ビデオを複数回入力し、距離対応で積分する積分回路を備え、信号のS/Nを改善するものである。このビデオ積分器は、一定時間の積分結果と、所定時間の開始以前の積分結果とを、これら積分結果の、距離区分に対応する時間軸の相対関係が異なる複数の状態で比較し、その相関性を検定し、上記複数の状態のうちの何れかを所定の相関性が得られる状態であるとしてこれを選択する相関回路と、上記一定時間の積分結果と、該所定時間の開始以前の積分結果とを、これら積分結果の時間軸を上記相関回路により選択された状態の時間軸のずれ分だけずらして合成する合成回路とを備えたことを特徴としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公平7−18920号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】RADAR PRINCIPLES(Jhon Wiley & Son, Inc, 1988
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
既述のように、受信データ(又は受信信号)の積分回数が多いほど、受信データ(又は受信信号)のS/N比が小さい状態で、所定の探知確率を得ることができることから、検出性能を向上できる。しかしながら、レーダ装置に対して妨害波が照射される可能性もあり、妨害波の発生頻度が一定である場合、受信データ(又は受信信号)の積分回数を増やす程、積分を行う受信データ(又は受信信号)のいずれかに妨害波が含まれる確率も高くなる。レーダ装置において妨害波が受信された場合、仮に、積分を行う複数の受信データ(又は受信信号)のうちの1つの受信データ(又は受信信号)のみに妨害波が含まれていたとしても、当該妨害波のレベルが十分に大きい場合は、積分後の受信データ(又は受信信号)に十分なレベルの妨害波が現れ、妨害波を目標物として誤検出する可能性がある。以下に、この点について説明する。
【0010】
図2は、検出動作の一例を説明するための説明図である。図2に示される例では、1つの信号処理周期内において、複数(N個)のレーダパルス(パルス1、パルス2、・・・パルスN)が、所定の時間間隔で照射されている。各パルスの照射後に受信波が受信され、N個の受信データが生成される。各受信データは、各レーダパルス照射後の反射波を距離(時間)毎に受信したことを示している。各レンジセル毎にN個の受信データを生成した後、N個の受信データに対して、積分(PDI)処理が行われ、1つの信号処理周期に対するPDI結果が得られる。PDI結果の各レンジセルに対応する振幅強度は予め設定された閾値(検出th)と比較され、振幅強度が閾値(検出th)を超えるレンジセルが目標物として検出される。ここで、図2に示される例においては、信号処理周期1の2番目のパルス2、及び、信号処理周期2のN番目のパルスNに対応する受信データに、十分に大きなレベルの妨害波が含まれている。その結果、信号処理周期1及び2に対するPDI結果に閾値(検出th)を超える振幅レベルの妨害波が現れ、妨害波が目標物として誤検出されている。すなわち、受信データの積分(PDI)を行う場合、信号処理周期内の複数の受信データのうちの一つにでも妨害波が含まれていると、その振幅レベルによっては、妨害波を誤検出する可能性がある。妨害波を誤検出した場合、目標捜索時には、実際には目標物が存在しない位置に目標物が存在すると判断される場合がある。また、目標追尾時には、追尾点が追尾中の目標物から妨害波に移動してしまい、目標物が見失われる場合がある。
【0011】
すなわち、妨害波の発生頻度が一定である場合、検出性能向上の為に受信データの積分(PDI)回数を増加すると、それに伴って、積分する受信データに妨害波が含まれる確率が高くなり、妨害波を誤検出してしまう可能性も増加する。すなわち、積分回数増加による検出性能向上に伴い、妨害波の誤検出確率も増加するという問題点があった。
【0012】
尚、特許文献1(特公平7−18920号公報)には、高速移動目標に対する積分結果のズレ防止について開示されているが、当該文献の技術では、積分(PDI)回数増加による検出確率向上と妨害波誤検出確率の低下について両立を図ることはできない。また、積分(PDI)回数が多い場合に妨害波が誤検出される可能性が高くなる点については、触れられていない。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係るレーダ装置は、目標物に向けて複数のレーダパルスを照射する送信部と、前記複数のレーダパルスの各々の照射後に受信波を受信し、前記複数のレーダパルスに対応する複数の受信データを生成する、受信部と、前記複数の受信データに基づいて、前記目標物を探知する、探知部とを具備する。前記受信部は、前記複数の受信データの各々として、レンジセル毎に前記受信波のデータを生成する。前記探知部は、前記複数の受信データの全てについて、前記レンジセル毎に前記受信波のデータを積分し、積分結果を示す全範囲積分データを生成する、全範囲積分部と、前記複数の受信データを、それぞれが複数の受信データを含む複数のグループに分割し、前記複数のグループそれぞれについて、前記レンジセル毎に前記受信波のデータを積分し、前記複数のグループに関する積分結果を示す複数のグループ積分データを生成する、グループ積分部と、前記複数のグループ積分データに基づいて、前記全範囲積分データ中における妨害波成分を除去し、検出結果データを生成する、比較判定部とを備える。
【0014】
本発明によれば、全範囲積分部により、全ての受信データに関する積分結果が、全範囲積分データとして生成される。また、グループ積分部により、各グループにおける積分結果が、グループ積分データとして生成される。ここで、各グループにおける積分は、全範囲積分部より検出性能が劣るため、目標物ありと判定する閾値を低めに設定する。既述のように、受信データの積分回数が多い場合には、検出性能が高く、低い誤警報確率において、高い探知性能を得ることができる。また、グループ積分は、閾値を低く設定することで、誤警報確率は悪化するが、全範囲積分部と同じ探知性能を得ることができる。従って、全範囲積分データを用いることにより、一定誤警報下で目標物を確実に検出することができる。一方で、全範囲積分に用いる複数の受信データのうちの一つにでも十分なレベルの妨害波成分が含まれていた場合には、全範囲積分データ中に妨害波成分が現れてしまう。これに対し、複数のグループ積分データを用いた場合、全範囲積分に用いる複数の受信データのうちの一つの受信データに含まれる妨害波は、複数のグループ積分データのうちのいずれか一つにしか反映されない。従って、複数のグループ積分データを用いることにより、全範囲積分データを用いた場合の検出結果が、目標物であるのか否かを判別することができ、妨害波を除去できる。これにより、積分(PDI)回数増加による検出性能向上と妨害波誤検出確率の低下を両立することができる。
【0015】
本発明に係るレーダ装置の動作方法は、目標物に向けて複数のレーダパルスを照射するステップと、前記複数のレーダパルスの各々の照射後に受信波を受信し、前記複数のレーダパルスに対応する複数の受信データを生成するステップと、前記複数の受信データに基づいて、前記目標物を探知するステップとを具備する。前記複数の受信データを生成するステップは、前記複数の受信データの各々として、レンジセル毎に前記受信波のデータを生成するステップを含む。前記探知するステップは、前記複数の受信データの全てについて、前記レンジセル毎に前記受信波のデータを積分し、積分結果を示す全範囲積分データを生成するステップと、前記複数の受信データを、それぞれが複数の受信データを含む複数のグループに分割し、前記複数のグループそれぞれについて、前記レンジセル毎に前記受信波のデータを積分し、前記複数のグループに関する積分結果を示す複数のグループ積分データを生成するステップと、前記複数のグループ積分データに基づいて、前記全範囲積分データ中における妨害波成分を除去し、検出結果データを生成するステップとを備える。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、受信データの積分(PDI)回数増加による検出性能向上と妨害波誤検出確率の低下を両立することができる、レーダ装置及びレーダ装置の動作方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】非特許文献1に記載されたグラフを示す図である
【図2】検出動作の一例を説明するための説明図である。
【図3】第1の実施形態に係るレーダ装置を示すブロック図である
【図4】レーダ装置の信号処理周期毎の動作方法の一例を示すフローチャートである。
【図5A】送受信処理を説明する為の説明図である。
【図5B】積分処理を説明する為の説明図である。
【図5C】検出処理を説明する為の説明図である。
【図5D】判定処理を説明するための説明図である。
【図6A】第2の実施形態における送受信処理を説明する説明図である。
【図6B】第2の実施形態における積分処理を説明する説明図である。
【図6C】第2の実施形態における検出処理を示す説明図である。
【図6D】第2の実施形態における判定処理を示す説明図である。
【図7A】第3の実施形態における送受信処理を説明する説明図である。
【図7B】第3の実施形態における積分処理を説明する説明図である。
【図7C】第3の実施形態における検出処理を示す説明図である。
【図7D】第3の実施形態における判定処理を示す説明図である。
【図8】第4の実施形態に係るレーダ装置を示すブロック図である。
【図9A】第4の実施形態におけるレーダ装置の動作方法の一例を示す説明図である。
【図9B】第4の実施形態におけるレーダ装置の動作方法の一例を示す説明図である。
【図9C】第4の実施形態におけるレーダ装置の動作方法の一例を示す説明図である。
【図9D】第4の実施形態におけるレーダ装置の動作方法の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、図面を参照しつつ、本発明の実施形態を説明する。
【0019】
(第1の実施形態)
図3は、本実施形態に係るレーダ装置1を示すブロック図である。図3に示されるように、レーダ装置1は、送信部2、受信部3、及び探知部4を備えている。
【0020】
送信部2は、図示しないアンテナを介して、レーダ波を目標物に照射する。送信部2は、レーダ波として、複数のレーダパルスを、複数の異なる周波数で目標物に照射する。
【0021】
受信部3は、図示しないアンテナを介して、受信波を受信し、受信データを生成する。受信データは、探知部4に通知される。受信部2は、各レーダパルスに対して、受信データを生成する。すなわち、複数のレーダパルスに対応して、複数の受信データが生成される。
【0022】
探知部4は、複数の受信データに基づいて、目標物を検出する機能を有している。図3に示されるように、探知部4は、全範囲積分部5、グループ積分部6、及び比較判定部10を備えている。比較判定部10は、全範囲検出部7、グループ検出部8、及び判定部9を備えている。
【0023】
全範囲積分部5は、全ての受信データを対象として積分処理を行い、全範囲積分データを生成する。全範囲積分データは、全範囲検出部7に通知される。全範囲検出部7は、全範囲積分データに基づいて、目標物を検出し、検出結果を示す第1検出結果データを生成する。第1検出結果データは、判定部9に通知される。
【0024】
グループ積分部6は、複数の受信データを、時刻に応じて、複数の時間グループに分割する。また、同様に、グループ積分部6は、複数の受信データを、周波数に応じて、複数の周波数グループに分割する。そして、グループ積分部6は、複数の時間グループのそれぞれについて、積分処理を行い、複数の時間グループ積分データを生成する。また、同様に、グループ積分部6は、複数の周波数グループのそれぞれについて、積分処理を行い、複数の周波数グループ積分データを生成する。複数の時間グループ積分データ及び複数の周波数グループ積分データは、グループ検出部8に通知される。グループ検出部8は、各時間グループ積分データおよび各周波数グループ積分データに対して、目標物の検出処理を行い、検出結果を示す第2検出結果データを生成する。すなわち、複数の時間グループ積分データ及び複数の周波数グループ積分データに対応して、複数の第2検出結果データが生成される。複数の第2検出結果データは、判定部9に通知される。
【0025】
判定部9は、第1検出結果データを、複数の第2検出結果データと比較する。そして、その比較結果に基づいて、妨害波成分を排除し、検出結果データを生成する。検出結果データは、本実施形態に係るレーダ装置1による検出結果として、外部の装置に出力される。
【0026】
本実施形態に係るレーダ装置1によれば、全ての受信データを積分した全範囲積分データに基づいて、目標物が検出され、第1検出結果データが生成される。全ての受信データを積分することにより、高い検出性能を得ることができる。しかしながら、既述のように、全ての受信データを用いて積分を行った場合には、妨害波が誤検出される可能性が高くなる。そこで、本実施形態では、第1検出結果データが、複数のグループ(時間グループ及び周波数グループ)における複数の検出結果(複数の第2検出結果データ)と比較される。既述のように、一の受信データに妨害波が含まれていた場合であっても、その妨害波は、複数のグループのうちの一のグループにしか反映されない。一方、目標物による反射波は、全てのグループに反映され易い。従って、複数の第2検出結果データと比較することにより、第1検出結果データにおける検出結果が妨害波であるのか否かを判断することができる。これにより、妨害波を排除することが可能になる。
【0027】
以下に、レーダ装置1の動作方法について説明する。図4は、レーダ装置1の動作方法の一例を示すフローチャートである。
【0028】
ステップS1、S2:送信、受信
まず、送信部2が、複数のレーダパルスを目標物に送信する(ステップS1)。そして、受信部3が、各レーダパルスの照射後に受信波を受信し、複数の受信データを生成する(ステップS2)。図5Aは、ステップS1及びS2における動作方法を説明する為の説明図である。
【0029】
図5Aには、送信信号(周波数領域)、送信信号(時間領域)、及び受信データが示されている。送信信号(周波数領域)は、各レーダパルスの周波数を示している。送信信号(時間領域)は、各レーダパルスの送信タイミングを示している。図5Aに示されるように、送信部2は、複数(N個)のレーダパルスを、異なるタイミングで照射する。ここで、送信部2は、周波数アジリティを実施する。すなわち、送信部2は、異なる周波数で、複数のレーダパルスを照射する。各レーダパルスの周波数は、周波数fg1、fg2、・・・fgkのうちのいずれかである。
【0030】
受信部3は、各レーダパルスの照射後に、対応する周波数の受信波を受信する。受信部3は、受信結果を示す受信データを生成する。受信データは、各レーダパルスに対応して生成されるので、N個のレーダパルスに対応して、N個の受信データが生成される。各受信データにおいては、レーダ装置の距離分解能に対応するレンジセル毎に、受信波のデータが示されている。受信部3が目標物によるレーダパルスの反射波を受信する時刻は、レーダ装置1から目標物までの距離に依存している。従って、各レンジセルは、距離に対応しているといえる。尚、図5Aに示される例においては、2番目の受信データにおいて、2番目のレンジセルに、妨害波が現れている。また、9番目の受信データにおいても、2番目のレンジセルに、妨害波が現れている。また、目標物による反射波は、各受信データにおける5番目及び6番目のレンジセルに現れている。
【0031】
ステップS3:積分処理
受信部3は、複数の受信データを、探知部4に通知する。探知部4では、全範囲積分部5及びグループ積分部6により、積分処理が行われる。図5Bは、積分処理を説明する為の説明図である。
【0032】
まず、図5B(a)に示されるように、グループ積分部6は、複数の受信データを整理する。具値的には、グループ積分部6は、複数の受信データを、時刻に応じて、それぞれが複数の受信データを含む複数の時間グループ(時間Gr)に分割する。すなわち、各受信データは、複数の時間グループ(tg1、tg2、・・・tgi)のいずれかに分類される。
【0033】
また、同様に、グループ積分部6は、複数の受信データを、周波数に応じて、それぞれが複数の受信データを含む複数の周波数グループ(周波数Gr)に分割する。すなわち、各受信データが、周波数グループfg1、fg2、・・・fgkのいずれかに分類される。
【0034】
次いで、図5B(b)に示されるように、全範囲積分部5が、全範囲積分データ11を生成する。具体的には、全範囲積分部5は、全ての受信データを対象として、受信波のデータを積分する。すなわち、全範囲積分部5は、全ての受信データにおいて、各レンジセルにおける受信波のデータの総和を求める。この際、図5Bに示される例では、妨害波を含む2番目及び9番目の受信データが、積分の対象に含まれている。従って、全範囲積分データ11には、2番目のレンジセルに、妨害波が反映されている。
【0035】
更に、グループ積分部6は、複数の時間グループ(tg1、tg2、・・・tgi)のそれぞれについて、受信波のデータを積分し、時間グループ積分データ12−1を生成する。これにより、複数の時間グループ(tg1、tg2、・・・tgi)に対応して、複数の時間グループ積分データ12−1(tg1、tg2、・・・tgi)が得られる。このとき、図5Bに示される例では、2番目の受信データに含まれる妨害波成分は、時間グループtg1に対応する時間グループ積分データ12−1(tg1)にのみ反映される。また、9番目の受信データに含まれる妨害波成分は、時間グループ積分データ12−1(tg3)にのみ反映される。
【0036】
更に、グループ積分部6は、時間グループと同様に、複数の周波数グループ(fg1、fg2、・・・fgk)のそれぞれについても、受信データを積分し、周波数グループ積分データ12−2を生成する。すなわち、複数の周波数グループ(fg1、fg2、・・・fgk)に対応して、複数の周波数グループ積分データ12−2(fg1、fg2、fg3、・・・fgk)が生成される。この際、2番目の受信データに含まれる妨害波成分は、周波数グループfg2に対応する周波数グループ積分データ12−2(fg2)にのみ反映される。また、9番目の受信データに含まれる妨害波成分も、周波数グループ積分12−2データ(fg2)にのみ反映される。
【0037】
ステップS4:検出処理
続いて、全範囲検出部7及びグループ検出部8が、全範囲積分データ11、複数の時間グループ積分データ12−1、及び複数の周波数グループ積分データ12−2に基づいて、目標物を検出する。図5Cは、検出処理を説明する為の説明図である。
【0038】
まず、図5C(a)に示されるように、全範囲検出部7が、全範囲積分データ11に基づいて、目標物を検出し、第1検出結果データ13を生成する。具体的には、全範囲検出部7は、全範囲積分データ11において、各レンジセルの受信波の強度を、予め設定された閾値(全範囲積分データ用閾値:検出th_a)と比較する。そして、受信波の強度が敷値を超えるレンジセルを、検出レンジセルとして検出し、検出レンジセルを示すデータを第1検出結果データ13として生成する。図5C(a)においては、2番目、5番目及び6番目のレンジセルにおいて、受信波の強度が閾値を超えている。従って、第1検出結果データ13において、2番目、5番目及び6番目のレンジセルが、検出レンジセルとして示されている。
【0039】
更に、図5C(b)に示されるように、グループ検出部8が、各時間グループ積分データ12−1について、各レンジセルの受信波の強度を、予め設定された閾値(グループ積分用閾値:検出th_t)と比較する。そして、受信波の強度が閾値を超えるレンジセルを検出し、検出結果を示す時間Gr検出結果データ14−1(第2検出結果データ14)を生成する。これにより、複数の時間グループ積分データ12−1(tg1、tg2、・・・tgi)に対応して、複数の時間Gr検出結果データ14−1(tg1、tg2、・・・tgi)が得られる。ここで、図5Cに示される例では、特定の時間グループ積分データ12−1(tg1、tg3)においてのみ、妨害波である2番目のレンジセルの受信波の強度が、閾値よりも大きい。従って、特定の時間Gr検出結果データ14−1(tg1及びtg3)においてのみ、妨害波である2番目のレンジセルが検出されている。
【0040】
更に、図5C(c)に示されるように、グループ検出部8は、各周波数グループ積分データ12−2について、受信波の強度を、予め設定された閾値(グループ積分用閾値:検出th_f)と比較する。そして、受信波の強度が閾値を超えるレンジセルを検出し、検出結果を示す周波数Gr検出結果データ14−2(第2検出結果データ14)を生成する。これにより、複数の周波数グループ積分データ12−2(fg1,fg2,・・・,fgk)に対応して、複数の周波数Gr検出結果データ14−2(fg1,fg2,・・・,fgk)が生成される。この際、図5Cに示される例では、特定の周波数Gr検出結果データ14−2(fg2)においてのみ、妨害波に対応する2番目のレンジセルが検出結果して示されている。
【0041】
ステップS5:判定処理
次いで、判定部9が、複数の第2検出結果データ14(14−1、14−2)に基づいて、第1検出結果データ13に示される検出結果(各検出レンジセル)が妨害波を示すのか否かを判定する。図5Dは、判定処理を説明するための説明図である。
【0042】
判定部9は、まず、図5D(a)に示されるように、第1検出結果データ13を、各時間Gr検出結果データ14−1(tg1、tg2、・・・tgi)と比較する。具体的には、判定部9は、各時間Gr検出結果データ14−1について、第1検出結果データ13との間でAND処理を行う。すなわち、各時間Gr検出結果データ14−1と第1検出結果データ13と双方において検出されたレンジセルが、AND処理による検出結果として求められる。これにより、複数の時間Gr検出結果データ14−1(tg1、tg2、・・・tgi)に対応して、複数のAND処理結果が得られる。次いで、判定部9は、各レンジセルについて、複数のAND処理結果において検出された回数、すなわち、時間Gr検出回数15−1を算出する。図5D(a)に示される例では、妨害波を示す2番目のレンジセルは、時間グループ(tg1及びtg3)に対応するAND処理結果において検出されている。すなわち、2番目のレンジセルの検出回数は、2回である。また、目標物を示す5番目及び6番目のレンジセルは、各時間グループに対応するAND処理結果において検出されている。すなわち、5番目及び6番目のレンジセルの検出回数は、それぞれ、i回である。その他のレンジセルの検出回数は、0回である。
【0043】
ここで、目標物を示す検出レンジセルは、検出回数が多くなる。一方、妨害波を示す検出レンジセルは、検出回数が少なくなる。そこで、判定部9は、時間Gr検出回数15−1の各レンジセルの検出回数を予め定められた閾値回数th_ctと比較し、検出回数が閾値回数th_ct以上であるレンジセルを、時間グループの比較結果として検出する。図5D(a)においては、閾値回数(th_ct)は、2回であるものとする。従って、2番目、5番目、及び6番目のレンジセルが、時間グループによる比較結果として検出されている。
【0044】
更に、判定部9は、周波数グループについても、時間グループと同様の処理を行う。すなわち、判定部9は、図5D(b)に示されるように、第1検出結果データ13、及び、各周波数Gr検出結果データ14−2(fg1、fg2、・・・fgk)に対して、AND処理を行う。その結果、複数のAND処理結果が得られる。そして、判定部9は、各レンジセルについて、複数のAND処理結果において検出された回数、すなわち、周波数Gr検出回数15−2を算出する。図5D(b)に示される例では、妨害波を示す2番目のレンジセルの検出回数は、1回である。また、目標物を示す5番目及び6番目のレンジセルの検出回数は、それぞれ、k回である。その他のレンジセルの検出回数は、0回である。
【0045】
その後、判定部9は、周波数Gr検出回数15−2の各レンジセルの検出回数を予め定められた閾値回数th_cf(図5D(b)においては、2回であるものとする。)と比較し、検出回数が閾値回数th_cf以上であるレンジセルを、周波数グループの比較結果として検出する。図5D(b)においては、5番目、及び6番目のレンジセルが、周波数グループによる比較結果として検出され、妨害波を示す2番目のレンジセルは、検出されない。
【0046】
次いで、判定部9は、図5D(c)に示されるように、時間グループによる比較結果と、周波数グループによる比較結果とに対してAND処理を行い、検出結果データ16を生成する。すなわち、判定部9は、双方で検出されたレンジセルを、目標物を示すレンジセルであると判断し、判断結果を示す検出結果データ16を生成する。一方でのみ検出されたレンジセルは、妨害波を示すレンジセルであると判断され、検出結果から排除される。図5Dにおいては、2番目のレンジセルが、時間グループによる比較結果においては検出されているものの、周波数グループによる比較結果においては検出されていない。従って、2番目のレンジセルは、妨害波を示す成分であるものと判断され、検出結果から排除される。すなわち、検出結果データ16として、5番目及び6番目のレンジセルを示すデータが生成される。
【0047】
ステップS6:結果出力
判定部9は、検出結果データ16を出力する。検出結果データ16は、目標物の探索及び追尾などに利用される。
【0048】
以上説明したように、本実施形態によれば、全範囲積分データ11(図5C参照)を利用して、目標物が検出され、第1検出結果データ13が生成される。また、各時間グループ積分データ12ー1及び各周波数グループ積分データ12−2(図5C参照)を利用しても、目標物が検出される。そして、これらの検出結果が比較され、全範囲積分データ11に基づく検出結果(第1検出結果データ13)から妨害波が除去される。既述のように、全範囲積分データ11(図5C参照)に基づいて目標物を検出する場合には、積分回数が多いため、各時間グループ積分データ12−1及び各周波数グループ積分データ12−2に基づいて目標物を検出する場合よりも、高い検出性能が得られる。しかしながら、全範囲積分データ11(図5C参照)に基づいて目標物を検出する場合には、複数の受信データの一つに妨害波が混入した場合に、その妨害波が目標物として検出(誤検出)され易い。これに対して、複数の受信データを複数のグループ(時間グループ、周波数グループ)に分割した場合、一つの受信データに混入した妨害波は、複数のグループのうちのいずれかにしか反映されない。従って、複数のグループにおける検出結果(第2検出結果データ)を用いることにより、全範囲積分データ11による検出結果(第1検出結果データ)が妨害波であるのか否かを判定することができ、目標物だけを検出することが可能になる。すなわち、検出性能を向上させるために積分(PDI)回数を多くした場合であっても、本実施例を実施しない場合と比較すると、妨害波の誤検出確率を低減するができる。
【0049】
尚、本実施形態においては、ステップS5において、判定部9が、時間グループによる比較結果と周波数グループによる比較結果とのうちの一方でのみ検出されたレンジセルを、妨害波を示す成分であると判断する(図5D(c)参照)。すなわち、判定部9は、時間Grによる比較結果と周波数Grによる比較結果とに対してAND処理を行い、目標物を示すレンジセルを検出する。但し、判定部9は、必ずしもAND処理により目標物を検出する必要はなく、OR処理などによって目標物を検出してもよい。目標物の検出性能を向上させるのか、妨害波の除去性能を向上させるのかに応じて、適切な処理を採用することが可能である。
【0050】
また、本実施形態においては、ステップS5(図5D参照)において、閾値回数(th_ct、th_cf)が2回である場合について説明した。すなわち、時間Gr検出回数15−1及び周波数Gr検出回数15−2において検出レンジセルが2回以上検出されている場合に、当該検出レンジセルが比較結果において目標物と特定される(図5D参照)。しかしながら、閾値回数(th_ct、th_cf)等の設定値は、一般的に、以下に従って設定されることが望ましい。検出処理(ステップS4)において第1検出結果データ13の検出に使用される全範囲積分データ用閾値(検出th_a)は、全範囲積分データによって目標物を検出する場合の目標探知確率、及び誤警報確率が、所定の目標探知確率(Pd)、所定の誤警報確率(Pfa)を満足するように設定を行う。また、判定処理(ステップS5)における閾値回数(th_ct、th_cf)と検出処理(ステップS4)において第2検出結果データ14(各時間Gr検出結果データ14−1、又は、各周波数Gr検出結果データ14−2)の検出に使用されるグループ積分用閾値(検出th_t、検出th_f)については、検出結果データ16における目標検出確率が、所定の目標探知確率(Pd)に対して悪化しない様に、時間グループ積分データ又は周波数グループ積分データによって目標物を検出した場合に、時間Gr検出回数15−1又は周波数Gr検出回数15−2における目標検出数が閾値回数(th_ct、又は、th_cf)と同数となる確率と、所定の目標探知確率(Pd)が等しくなるように設定を行う。なお、このように設定を行った場合、一般的に、時間グループ積分データ又は周波数グループ積分データによって目標物を検出する場合の誤警報確率、すなわち、第2検出結果データ14(各時間Gr検出結果データ14−1、又は、各周波数Gr検出結果データ14−2)の検出における誤警報確率は悪化するものと考えられる。しかしながら、第1検出結果データ13の検出において所定の誤警報確率(Pfa)を満足するように全範囲積分データ用閾値(検出th_a)を設定すること、及び、判定処理(ステップS5)において、第1検出結果データ13と第2検出結果データ14(各時間Gr検出結果データ14−1、又は、各周波数Gr検出結果データ14−2)がAND処理され、第2検出結果データ14で誤検出されたレンジセルが第1検出結果データ13に基づいて排除されることから、検出結果データ16における誤警報確率は所定の誤警報確率(Pfa)に対して悪化しない。よって、問題はない。
【0051】
(第2の実施形態)
続いて、第2の実施形態について説明する。第1の実施形態では、複数の受信データが、複数の時間グループ及び複数の周波数グループに分割される場合について説明した。これに対して、本実施形態では、複数の受信データが、複数の時間グループにのみ分割される。それ以外の点は、第1の実施形態と同様である。
【0052】
図6Aは、本実施形態における送受信処理(ステップS1、S2)を説明する説明図である。図6Aに示されるように、本実施形態においても、送信部2が複数のレーダパルスを照射し、受信部3が複数の受信データを生成する。但し、本実施形態において、送信部2は、必ずしも周波数アジリティを実施する必要はない。また、第1の実施形態と同様に、2番目の受信データ及び9番目の受信データにおいて、それぞれ2番目のレンジセルに、妨害波が含まれているものとする。更に、目標物によるレーダパルスの反射波は、5番目及び6番目のレンジセルに含まれているものとする。
【0053】
図6Bは、本実施形態における積分処理(ステップS3)を説明する説明図である。図6B(a)に示されるように、グループ積分部6は、複数の受信データを、時刻に応じて、複数の時間グループに分割する。すなわち、各受信データは、複数の時間グループ(tg1,tg2,・・・tgi)のいずれかに分類される。
【0054】
そして、図6B(b)に示されるように、全範囲積分部5が、全ての受信データを用いて積分処理を行い、全範囲積分データ11を生成する。また、グループ積分部6は、各時間グループ(tg1,tg2,・・・tgi)について積分処理を行い、複数の時間グループ積分データ12(tg1,tg2,・・・tgi)を生成する。この際、全範囲積分データ11においては、妨害波が2番目のレンジセルに反映されている。一方、複数の時間グループ積分データ12においては、特定の時間グループ積分データ12(tg1、tg3)においてのみ、妨害波が2番目のレンジセルに反映されている。
【0055】
図6Cは、検出処理(ステップS4)を示す説明図である。図6C(a)に示されるように、全範囲検出部7が、全範囲積分データ11を閾値(検出th_a)と比較し、検出結果を示す第1検出結果データ13を生成する。一方、図6(b)に示されるように、グループ検出部8は、各時間グループ積分データ12を閾値(検出th_t)と比較し、複数の第2検出結果データ14(tg1,tg2,・・・tgi)を生成する。
【0056】
図6Dは、判定処理を示す説明図である。図6Dに示されるように、判定部9は、第1検出結果データ13を、複数の時間Gr検出結果データ14(tg1,tg2,・・・tgi)の各々と比較し、複数のAND処理結果を得る。そして、判定部9は、各レンジセルについて、複数のAND処理結果における検出回数、すなわち、時間Gr検出回数15を求める。図6Dに示される例では、妨害波を示す2番目のレンジセルの検出回数が2回であり、目標物を示す5番目及び6番目のレンジセルの検出回数は、それぞれi回である。
【0057】
その後、判定部9は、各レンジセルの検出回数を予め設定された閾値(th_ct)と比較する。本実施形態においては、閾値(th_ct)は、3回であるものとする。判定部9は、検出回数が閾値(th_ct)以上であるレンジセルを示すデータを、検出結果データ16として生成する。図6Dに示される例においては、2番目のレンジセルは妨害波として除去され、5番目及び6番目のレンジセルを示すデータが、検出結果データ16として生成されている。検出結果データは、第1の実施形態と同様、目標物の探索や追尾に用いられる。
【0058】
本実施形態においても、第1の実施形態と同様に、複数のグループにおける検出結果を用いることにより、全ての受信データを用いたときの検出結果から、妨害波を除去することが可能である。
【0059】
また、本実施形態においては、複数の受信データが、複数の時間グループにのみ分割される。そのため、第1の実施形態のほうが本実施形態よりも妨害波除去性能において優れていると考えられる。但し、本実施形態においては、複数の周波数グループに関する処理を行う必要がなく、第1の実施形態よりも処理負荷を少なくすることが可能である。
【0060】
(第3の実施形態)
続いて、第3の実施形態について説明する。第2の実施形態では、複数の受信データが、複数の時間グループに分割される場合について説明した。これに対して、本実施形態では、複数の受信データが、複数の周波数グループに分割される。それ以外の点は、第2の実施形態と同様である。
【0061】
図7Aは、本実施形態における送受信処理(ステップS1、S2)を説明する説明図である。図7Aに示されるように、本実施形態においても、送信部2が複数のレーダパルスを照射し、受信部3が複数の受信データを生成する。また、送信部2は、周波数アジリティを実施し、異なる周波数で複数のレーダパルスを照射する。また、既述の実施形態と同様に、2番目の受信データ及び9番目の受信データにおいて、それぞれ2番目のレンジセルに、妨害波が含まれているものとする。更に、目標物によるレーダパルスの反射波は、5番目及び6番目のレンジセルに含まれているものとする。
【0062】
図7Bは、本実施形態における積分処理(ステップS3)を説明する説明図である。図7B(a)に示されるように、グループ積分部6は、複数の受信データを、周波数に応じて、複数の周波数グループ(fg1、fg2、・・・fgk)に分割する。すなわち、各受信データは、複数の周波数グループ(fg1、fg2、・・・fgk)のいずれかに分類される。
【0063】
そして、図7B(b)に示されるように、全範囲積分部5が、全ての受信データを用いて積分処理を行い、全範囲積分データ11を生成する。また、グループ積分部6は、各周波数グループ(fg1、fg2、・・・fgk)について積分処理を行い、複数の周波数グループ積分データ12(fg1、fg2、・・・、fgk)を生成する。
【0064】
図7Cは、検出処理(ステップS4)を示す説明図である。図7C(a)に示されるように、全範囲検出部7が、全範囲積分データ11を閾値(検出th_a)と比較し、検出結果を示す第1検出結果データ13を生成する。一方、図7C(b)グループ検出部8は、各周波数グループ積分データ12(fg1、fg2、・・・、fgk)を閾値(検出th_f)と比較し、複数の第2検出結果データ14(fg1、fg2、・・・、fgk)(周波数Gr検出結果データ)を生成する。
【0065】
図7Dは、判定処理(ステップS5)を示す説明図である。図7Dに示されるように、判定部9は、第1検出結果データ13を、各周波数Gr検出結果データ14と比較し、複数のAND処理結果を得る。そして、判定部9は、各レンジセルについて、複数のAND処理結果における検出回数、すなわち、周波数Gr検出回数15を求める。図7Dに示される例では、妨害波を示す2番目のレンジセルの検出回数が1回であり、目標物を示す5番目及び6番目のレンジセルの検出回数は、それぞれk回である。
【0066】
その後、判定部9は、各レンジセルの検出回数を予め設定された閾値(th_cf)と比較する。本実施形態においては、この閾値(th_cf)は、2回であるものとする。判定部9は、検出回数が閾値(th_cf)以上であるレンジセルを示すデータを、検出結果データ16として生成する。図7Dに示される例においては、2番目のレンジセルが妨害波として除去され、5番目及び6番目のレンジセルを示すデータが、検出結果データとして生成されている。検出結果データ16は、既述の実施形態と同様、目標物の探索や追尾に用いられる。
【0067】
本実施形態においても、第2の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。すなわち、複数の時間グループに関する処理を行う必要がなく、第1の実施形態よりも処理負荷を少なくすることが可能である。
【0068】
(第4の実施形態)
続いて、第4の実施形態を説明する。図8は、本実施形態に係るレーダ装置1を示すブロック図である。本実施形態においては、第1の実施形態と異なり、比較判定部10に、グループ検出部8が設けられていない。グループ積分部6により生成されたグループ積分データ(時間グループ積分データ及び周波数グループ積分データ)は、そのまま判定部9に通知される。
【0069】
本実施形態においても、図4に示したように、送受信処理(ステップS1、S2)、積分処理(ステップS3)、検出処理(ステップS4)、判定処理(ステップS5)、及び結果出力(ステップS6)が実行される。
【0070】
図9A乃至図9Dは、本実施形態におけるレーダ装置1の動作方法の一例を示す説明図である。図9A乃至図9Dを参照して、レーダ装置1の動作方法を説明する。
【0071】
図9Aは、送受信処理(ステップS1、S2)を示す説明図である。第1の実施形態と同様に、送信部2は、レーダ波として、複数のレーダパルスを照射する。送信部2は、周波数アジリティを実施し、異なる周波数で複数のレーダパルスを照射する。また、受信部3は、各レーダパルスの照射後に受信波を受信し、複数の受信データを生成する。図9Aに示される例では、2番目及び9番目の受信データにおいて、2番目のレンジセルに妨害波が含まれている。また、目標物による反射波は、各受信データの6番目のレンジセルに含まれている。
【0072】
図9Bは、積分処理(ステップS3)を示す説明図である。図9B(a)に示されるように、グループ積分部6は、第1の実施形態と同様に、複数の受信データを、複数の時間グループ(tg1、tg2、・・tgi)、及び複数の周波数グループ(fg1、fg2、・・・fgk)に分割する。
【0073】
そして、図9B(b)に示されるように、全範囲積分部5が、全ての受信データに対して積分処理を行い、全範囲積分データ11を生成する。また、グループ積分部6は、各時間グループ及び各周波数グループに対して、積分処理を行い、複数の時間グループ積分データ12−1(tg1、tg2、・・・、tgi)及び複数の周波数グループ積分データ12−2(fg1、fg2、・・・、fgk)を生成する。この際、全範囲積分データ11においては、2番目のレンジセルに、妨害波が含まれている。一方、複数の時間グループ積分データ12−1においては、時間グループ積分データ12−1(tg1、tg3)においてのみ、2番目のレンジセルに妨害波が含まれている。また、複数の周波数グループ積分データ12−2においては、周波数グループ積分データ12−1(fg2)においてのみ、2番目のレンジセルに妨害波が含まれている。
【0074】
図9Cは、検出処理(ステップS4)を示す説明図である。全範囲検出部7が、第1の実施形態と同様に、全範囲積分データ11の受信強度(振幅)を閾値(検出th_a)と比較し、閾値(検出th_a)以上の受信強度を有するレンジセルを検出レンジセルとして検出する。そして、検出結果を示す第1検出結果データ13を生成する。尚、図9Cに示される例では、2番目及び6番目のレンジセルが、検出レンジセルとして検出されている。但し、第1の実施形態とは異なり、各時間グループ積分データ12−1及び各周波数グループ積分データ12−2については、検出処理が行われない。
【0075】
図9Dは、判定処理(ステップS5)を示す説明図である。本実施形態においては、判定部9が、第1検出結果データ13における各検出レンジセル(目標物と検出されたレンジセル)について、サンプルデータ17を生成する。具体的には、判定部9は、複数の時間グループ積分データ12−1(tg1、tg2、・・・、tgi)を、第1検出結果データ13のうちの各検出レンジセルと同じレンジセル毎に抽出して分類したデータ、すなわち、サンプルデータ17−1を生成する。また、判定部9は、複数の周波数グループ積分データ12−2(fg1、fg2、・・・、fgk)を、第1検出結果データ13のうちの各検出レンジセルと同じレンジセル毎に抽出して分類したデータ、すなわち、サンプルデータ17−2を生成する。
【0076】
図9Dに示される例では、検出レンジセルは、2番目及び6番目のレンジセルである。従って、2番目及び6番目のレンジセルに関して、それぞれ、時間グループに関するサンプルデータ17−1、及び、周波数グループに関するサンプルデータ17−2が生成されている。
【0077】
次いで、判定部9は、図9Dに示されるように、時間グループに関するサンプルデータ17−1における振幅の最大値と最小値とを求める。そして、判定部9は、求めた最大値と最小値との差分を算出する。この差分が大きい場合には、対応する検出レンジセルは妨害波によって検出されているものと考えられる。一方、差分が小さい場合には、対応する検出レンジセルは目標物によって検出されているものと考えられる。従って、判定部9は、その差分を予め定められた閾値(判定スレッショルド)と比較し、差分が閾値(判定スレッショルド)以上である場合には、その検出レンジセルを妨害波であると判定する。また、判定部9は、同様の処理を、周波数グループに関するサンプルデータ17−2についても実施する。すなわち、判定部9は、周波数グループに関するサンプルデータの最大値と最小値との差分を算出し、その差分を閾値と比較し、その検出レンジセルが妨害波であるか否かを判定する。
【0078】
更に、判定部9は、時間グループに関するサンプルデータ17−1に基づく判定結果、及び、周波数グループに関するサンプルデータ17−2に基づく判定結果に対して、OR処理を行い、当該検出レンジセルが妨害波であるか否かを判定する。すなわち、いずれかの判定結果が妨害波である場合には、判定部9は、当該検出レンジセルは妨害波によるものであると判断し、第1検出結果データ13から当該検出レンジセルを除去する。
【0079】
図9Dに示される例では、2番目のレンジセルにおいて、時間グループに関するサンプルデータ17−1の差分が、閾値(判定スレッショルド)よりも大きい。従って、時間グループに関するサンプルデータ17−1に基づく判定結果は、妨害波になる。また、2番目の検出レンジセルにおいて、周波数グループに関するサンプルデータ17−2の差分は、閾値よりも大きい。従って、周波数グループに関するサンプルデータ17−2に基づく判定結果も、妨害波になる。両者の判定結果が妨害波であるため、判定部9は、最終的な判断結果として、2番目のレンジセルは妨害波であるものと判断し、2番目のレンジセルは未検出のレンジセルであると判断する。
【0080】
一方、6番目の検出レンジセルにおいては、時間グループに関するサンプルデータ17−1の差分が閾値よりも小さい。また、周波数グループに関するサンプルデータ17ー2の差分も閾値よりも小さい。従って、判定部9は、6番目のレンジセルは目標物によるものであると判断する。その結果、判断部9は、6番目のレンジセルを検出結果として示すデータを、検出結果データ16として出力する。
【0081】
以上説明したように、本実施形態よれば、各サンプルデータ17における最大値と最小値との差分に基づいて、検出レンジセルが妨害波であるか否かが判断される。従って、既述の実施形態と同様に、全ての受信データの積分結果を利用した検出結果(第1検出結果データ13)において妨害波が含まれていたとしても、各サンプルデータ17によって妨害波を排除することができる。受信データの積分(PDI)回数を増やした場合であっても、妨害波を誤検出する確率を低減できる。
【0082】
尚、本実施形態では、判定部9が、各サンプルデータ17における最大値と最小値との差分データを閾値と比較する場合について説明した(図9D参照)。但し、別の手法で各サンプルデータ17を評価し、妨害波であるか否かを判定することも可能である。例えば、判定部9は、各サンプルデータ17の分散値を算出し、算出された分散値を予め定められた閾値を比較することにより、妨害波であるか否かを判定してもよい。また、判定部9は、AIC(赤池情報量基準)等の情報量基準を用いて、予め定められた目標物の統計モデルと各サンプルデータ17の一致度を評価し、その評価結果に基づいて妨害波であるか否かを判定してもよい。
【0083】
また、本実施形態では、判定部9が、時間グループに関するサンプルデータ17−1に基づく判定結果と、周波数グループに関するサンプルデータ17−2に基づく判定結果とのうちのいずれかの結果が妨害波である場合に、当該検出レンジセルを妨害波であると判断する場合について説明した。すなわち、判定部9は、OR処理を行い、妨害波であるか否かを判定する。但し、判定部9は、OR処理ではなく、AND処理を行い、妨害波であるか否かを判定してもよい。すなわち、時間グループに関するサンプルデータ17−1に基づく判定結果が妨害波であり、周波数グループに関するサンプルデータ17−2に基づく判定結果も妨害波である場合にのみ、当該検出レンジセルが妨害波であると判断してもよい。OR処理を用いた場合には、妨害波が除去され易くなり、AND処理を用いた場合には、目標物が検出され易くなる。
【0084】
また、本実施形態では、複数の受信データが、複数の時間グループ及び複数の周波数グループに分割される場合について説明した。但し、第2の実施形態と同様に、複数の受信データは、複数の時間グループにのみ分割され、時間グループに関するサンプルデータのみに基づいて、妨害波であるか否かの判定が行なわれてもよい。また、第3の実施形態と同様に、複数の受信データが、複数の周波数グループにのみ分割され、周波数グループに関するサンプルデータのみに基づいて、妨害波であるか否かの判定が行なわれてもよい。
【0085】
以上、本発明について、第1乃至第4の実施形態を用いて説明した。尚、これらの実施形態は互いに独立するものではなく、矛盾のない範囲内で組み合わせて用いることも可能である。
【符号の説明】
【0086】
1 レーダ装置
2 送信部
3 受信部
4 探知部
5 全範囲積分部
6 グループ積分部
7 全範囲検出部
8 グループ検出部
9 判定部
10 比較判定部
11 全範囲積分データ
12 グループ積分データ
12−1 時間グループ積分データ
12−2 周波数グループ積分データ
13 第1検出結果データ
14 第2検出結果データ
14−1 時間Gr検出結果データ
14−2 周波数Gr検出結果データ
15−1 時間Gr検出回数
15−2 周波数Gr検出回数
16 検出結果データ
17 サンプルデータ
17−1 時間グループに関するサンプルデータ
17−2 周波数グループに関するサンプルデータ
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーダ装置及びレーダ装置の動作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
目標物を検出するために、レーダ装置が用いられる。レーダ装置は、レーダ波を目標物に照射し、反射波を受信する。反射波の受信結果(受信時刻等)に基づいて、目標物の距離や方向などが求められる。
【0003】
一般的に、レーダ装置は、必要な距離分解能に対応したパルス幅でビームを照射し、目標物にて反射された反射波を受信し、その受信波から目標検出や角度算出等の処理に用いる受信信号を生成する。また、レーダ装置は、レーダ装置の距離分解能に相当するレンジセル毎に受信信号をデジタル化し、受信信号をデジタルデータ(受信データ)化することが一般的である。また、レーダ装置は、一般的に受信信号(受信データ)の積分処理を実施して検出性能を向上している。受信信号(受信データ)の積分処理を行う為に、1信号処理周期内において複数のレーダパルスを照射し、各レーダパルスの照射後に、反射波を各レンジセル毎に受信する。各レンジセル毎に生成された受信データは、各レンジセル毎に判定される。また、各レンジセルは、各信号処理周期内で、複数パルス分を受信した後に積分する。すなわち、1信号処理周期毎に、受信データの総和が求められる。この積分処理は、PDI(Post Detection Integration)処理とも呼ばれる。受信データ積分結果の各レンジセルに対応する振幅強度と予め定められた閾値を比較することで、振幅強度が閾値以上であるレンジセルが検出される。すなわち、目標物が検出される。レーダ装置〜目標物間の距離は、検出されたレンジセルの位置に対応する距離を算出することで求められる。
【0004】
ここで、受信データ(又は受信信号)の積分回数が多いほど、探知確率が向上することが知られている。図1は、非特許文献1(RADAR PRINCIPLES(Jhon Wiley & Son, Inc, 1988))に記載されたグラフを示す図である。このグラフにおいて、横軸は、検知係数(探知に必要な受信電力とノイズとの比(S/N))を示し、縦軸は探知確率を示している。このグラフには、誤警報確率Pfaが10−8になるときの結果が示されている。また、このグラフには、積分回数(N)が1回、3回、10回、30回、及び100回であるときの結果がそれぞれ示されている。図1に示されるように、積分回数が多いほど、目標探知確率(例えば80%)を得る為に必要な検知係数(探知に必要な受信信号のS/N比)が小さくなる。すなわち、積分回数が多いほど、受信信号のS/N比が小さい状態で所定の誤警報確率において、探知確率が向上する(検出性能が向上する)と理解される。
【0005】
また、誤警報確率を悪化させてもよいならば、閾値(探知に必要な受信信号のS/N比)を下げることができ、探知確率を向上させることができるのは明らかである。
【0006】
レーダ装置に関連して、特許文献1(特公平7−18920号公報)には、ビデオ積分器が開示されている。このビデオ積分器は、レーダの受信ビデオを複数回入力し、距離対応で積分する積分回路を備え、信号のS/Nを改善するものである。このビデオ積分器は、一定時間の積分結果と、所定時間の開始以前の積分結果とを、これら積分結果の、距離区分に対応する時間軸の相対関係が異なる複数の状態で比較し、その相関性を検定し、上記複数の状態のうちの何れかを所定の相関性が得られる状態であるとしてこれを選択する相関回路と、上記一定時間の積分結果と、該所定時間の開始以前の積分結果とを、これら積分結果の時間軸を上記相関回路により選択された状態の時間軸のずれ分だけずらして合成する合成回路とを備えたことを特徴としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公平7−18920号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】RADAR PRINCIPLES(Jhon Wiley & Son, Inc, 1988
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
既述のように、受信データ(又は受信信号)の積分回数が多いほど、受信データ(又は受信信号)のS/N比が小さい状態で、所定の探知確率を得ることができることから、検出性能を向上できる。しかしながら、レーダ装置に対して妨害波が照射される可能性もあり、妨害波の発生頻度が一定である場合、受信データ(又は受信信号)の積分回数を増やす程、積分を行う受信データ(又は受信信号)のいずれかに妨害波が含まれる確率も高くなる。レーダ装置において妨害波が受信された場合、仮に、積分を行う複数の受信データ(又は受信信号)のうちの1つの受信データ(又は受信信号)のみに妨害波が含まれていたとしても、当該妨害波のレベルが十分に大きい場合は、積分後の受信データ(又は受信信号)に十分なレベルの妨害波が現れ、妨害波を目標物として誤検出する可能性がある。以下に、この点について説明する。
【0010】
図2は、検出動作の一例を説明するための説明図である。図2に示される例では、1つの信号処理周期内において、複数(N個)のレーダパルス(パルス1、パルス2、・・・パルスN)が、所定の時間間隔で照射されている。各パルスの照射後に受信波が受信され、N個の受信データが生成される。各受信データは、各レーダパルス照射後の反射波を距離(時間)毎に受信したことを示している。各レンジセル毎にN個の受信データを生成した後、N個の受信データに対して、積分(PDI)処理が行われ、1つの信号処理周期に対するPDI結果が得られる。PDI結果の各レンジセルに対応する振幅強度は予め設定された閾値(検出th)と比較され、振幅強度が閾値(検出th)を超えるレンジセルが目標物として検出される。ここで、図2に示される例においては、信号処理周期1の2番目のパルス2、及び、信号処理周期2のN番目のパルスNに対応する受信データに、十分に大きなレベルの妨害波が含まれている。その結果、信号処理周期1及び2に対するPDI結果に閾値(検出th)を超える振幅レベルの妨害波が現れ、妨害波が目標物として誤検出されている。すなわち、受信データの積分(PDI)を行う場合、信号処理周期内の複数の受信データのうちの一つにでも妨害波が含まれていると、その振幅レベルによっては、妨害波を誤検出する可能性がある。妨害波を誤検出した場合、目標捜索時には、実際には目標物が存在しない位置に目標物が存在すると判断される場合がある。また、目標追尾時には、追尾点が追尾中の目標物から妨害波に移動してしまい、目標物が見失われる場合がある。
【0011】
すなわち、妨害波の発生頻度が一定である場合、検出性能向上の為に受信データの積分(PDI)回数を増加すると、それに伴って、積分する受信データに妨害波が含まれる確率が高くなり、妨害波を誤検出してしまう可能性も増加する。すなわち、積分回数増加による検出性能向上に伴い、妨害波の誤検出確率も増加するという問題点があった。
【0012】
尚、特許文献1(特公平7−18920号公報)には、高速移動目標に対する積分結果のズレ防止について開示されているが、当該文献の技術では、積分(PDI)回数増加による検出確率向上と妨害波誤検出確率の低下について両立を図ることはできない。また、積分(PDI)回数が多い場合に妨害波が誤検出される可能性が高くなる点については、触れられていない。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係るレーダ装置は、目標物に向けて複数のレーダパルスを照射する送信部と、前記複数のレーダパルスの各々の照射後に受信波を受信し、前記複数のレーダパルスに対応する複数の受信データを生成する、受信部と、前記複数の受信データに基づいて、前記目標物を探知する、探知部とを具備する。前記受信部は、前記複数の受信データの各々として、レンジセル毎に前記受信波のデータを生成する。前記探知部は、前記複数の受信データの全てについて、前記レンジセル毎に前記受信波のデータを積分し、積分結果を示す全範囲積分データを生成する、全範囲積分部と、前記複数の受信データを、それぞれが複数の受信データを含む複数のグループに分割し、前記複数のグループそれぞれについて、前記レンジセル毎に前記受信波のデータを積分し、前記複数のグループに関する積分結果を示す複数のグループ積分データを生成する、グループ積分部と、前記複数のグループ積分データに基づいて、前記全範囲積分データ中における妨害波成分を除去し、検出結果データを生成する、比較判定部とを備える。
【0014】
本発明によれば、全範囲積分部により、全ての受信データに関する積分結果が、全範囲積分データとして生成される。また、グループ積分部により、各グループにおける積分結果が、グループ積分データとして生成される。ここで、各グループにおける積分は、全範囲積分部より検出性能が劣るため、目標物ありと判定する閾値を低めに設定する。既述のように、受信データの積分回数が多い場合には、検出性能が高く、低い誤警報確率において、高い探知性能を得ることができる。また、グループ積分は、閾値を低く設定することで、誤警報確率は悪化するが、全範囲積分部と同じ探知性能を得ることができる。従って、全範囲積分データを用いることにより、一定誤警報下で目標物を確実に検出することができる。一方で、全範囲積分に用いる複数の受信データのうちの一つにでも十分なレベルの妨害波成分が含まれていた場合には、全範囲積分データ中に妨害波成分が現れてしまう。これに対し、複数のグループ積分データを用いた場合、全範囲積分に用いる複数の受信データのうちの一つの受信データに含まれる妨害波は、複数のグループ積分データのうちのいずれか一つにしか反映されない。従って、複数のグループ積分データを用いることにより、全範囲積分データを用いた場合の検出結果が、目標物であるのか否かを判別することができ、妨害波を除去できる。これにより、積分(PDI)回数増加による検出性能向上と妨害波誤検出確率の低下を両立することができる。
【0015】
本発明に係るレーダ装置の動作方法は、目標物に向けて複数のレーダパルスを照射するステップと、前記複数のレーダパルスの各々の照射後に受信波を受信し、前記複数のレーダパルスに対応する複数の受信データを生成するステップと、前記複数の受信データに基づいて、前記目標物を探知するステップとを具備する。前記複数の受信データを生成するステップは、前記複数の受信データの各々として、レンジセル毎に前記受信波のデータを生成するステップを含む。前記探知するステップは、前記複数の受信データの全てについて、前記レンジセル毎に前記受信波のデータを積分し、積分結果を示す全範囲積分データを生成するステップと、前記複数の受信データを、それぞれが複数の受信データを含む複数のグループに分割し、前記複数のグループそれぞれについて、前記レンジセル毎に前記受信波のデータを積分し、前記複数のグループに関する積分結果を示す複数のグループ積分データを生成するステップと、前記複数のグループ積分データに基づいて、前記全範囲積分データ中における妨害波成分を除去し、検出結果データを生成するステップとを備える。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、受信データの積分(PDI)回数増加による検出性能向上と妨害波誤検出確率の低下を両立することができる、レーダ装置及びレーダ装置の動作方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】非特許文献1に記載されたグラフを示す図である
【図2】検出動作の一例を説明するための説明図である。
【図3】第1の実施形態に係るレーダ装置を示すブロック図である
【図4】レーダ装置の信号処理周期毎の動作方法の一例を示すフローチャートである。
【図5A】送受信処理を説明する為の説明図である。
【図5B】積分処理を説明する為の説明図である。
【図5C】検出処理を説明する為の説明図である。
【図5D】判定処理を説明するための説明図である。
【図6A】第2の実施形態における送受信処理を説明する説明図である。
【図6B】第2の実施形態における積分処理を説明する説明図である。
【図6C】第2の実施形態における検出処理を示す説明図である。
【図6D】第2の実施形態における判定処理を示す説明図である。
【図7A】第3の実施形態における送受信処理を説明する説明図である。
【図7B】第3の実施形態における積分処理を説明する説明図である。
【図7C】第3の実施形態における検出処理を示す説明図である。
【図7D】第3の実施形態における判定処理を示す説明図である。
【図8】第4の実施形態に係るレーダ装置を示すブロック図である。
【図9A】第4の実施形態におけるレーダ装置の動作方法の一例を示す説明図である。
【図9B】第4の実施形態におけるレーダ装置の動作方法の一例を示す説明図である。
【図9C】第4の実施形態におけるレーダ装置の動作方法の一例を示す説明図である。
【図9D】第4の実施形態におけるレーダ装置の動作方法の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、図面を参照しつつ、本発明の実施形態を説明する。
【0019】
(第1の実施形態)
図3は、本実施形態に係るレーダ装置1を示すブロック図である。図3に示されるように、レーダ装置1は、送信部2、受信部3、及び探知部4を備えている。
【0020】
送信部2は、図示しないアンテナを介して、レーダ波を目標物に照射する。送信部2は、レーダ波として、複数のレーダパルスを、複数の異なる周波数で目標物に照射する。
【0021】
受信部3は、図示しないアンテナを介して、受信波を受信し、受信データを生成する。受信データは、探知部4に通知される。受信部2は、各レーダパルスに対して、受信データを生成する。すなわち、複数のレーダパルスに対応して、複数の受信データが生成される。
【0022】
探知部4は、複数の受信データに基づいて、目標物を検出する機能を有している。図3に示されるように、探知部4は、全範囲積分部5、グループ積分部6、及び比較判定部10を備えている。比較判定部10は、全範囲検出部7、グループ検出部8、及び判定部9を備えている。
【0023】
全範囲積分部5は、全ての受信データを対象として積分処理を行い、全範囲積分データを生成する。全範囲積分データは、全範囲検出部7に通知される。全範囲検出部7は、全範囲積分データに基づいて、目標物を検出し、検出結果を示す第1検出結果データを生成する。第1検出結果データは、判定部9に通知される。
【0024】
グループ積分部6は、複数の受信データを、時刻に応じて、複数の時間グループに分割する。また、同様に、グループ積分部6は、複数の受信データを、周波数に応じて、複数の周波数グループに分割する。そして、グループ積分部6は、複数の時間グループのそれぞれについて、積分処理を行い、複数の時間グループ積分データを生成する。また、同様に、グループ積分部6は、複数の周波数グループのそれぞれについて、積分処理を行い、複数の周波数グループ積分データを生成する。複数の時間グループ積分データ及び複数の周波数グループ積分データは、グループ検出部8に通知される。グループ検出部8は、各時間グループ積分データおよび各周波数グループ積分データに対して、目標物の検出処理を行い、検出結果を示す第2検出結果データを生成する。すなわち、複数の時間グループ積分データ及び複数の周波数グループ積分データに対応して、複数の第2検出結果データが生成される。複数の第2検出結果データは、判定部9に通知される。
【0025】
判定部9は、第1検出結果データを、複数の第2検出結果データと比較する。そして、その比較結果に基づいて、妨害波成分を排除し、検出結果データを生成する。検出結果データは、本実施形態に係るレーダ装置1による検出結果として、外部の装置に出力される。
【0026】
本実施形態に係るレーダ装置1によれば、全ての受信データを積分した全範囲積分データに基づいて、目標物が検出され、第1検出結果データが生成される。全ての受信データを積分することにより、高い検出性能を得ることができる。しかしながら、既述のように、全ての受信データを用いて積分を行った場合には、妨害波が誤検出される可能性が高くなる。そこで、本実施形態では、第1検出結果データが、複数のグループ(時間グループ及び周波数グループ)における複数の検出結果(複数の第2検出結果データ)と比較される。既述のように、一の受信データに妨害波が含まれていた場合であっても、その妨害波は、複数のグループのうちの一のグループにしか反映されない。一方、目標物による反射波は、全てのグループに反映され易い。従って、複数の第2検出結果データと比較することにより、第1検出結果データにおける検出結果が妨害波であるのか否かを判断することができる。これにより、妨害波を排除することが可能になる。
【0027】
以下に、レーダ装置1の動作方法について説明する。図4は、レーダ装置1の動作方法の一例を示すフローチャートである。
【0028】
ステップS1、S2:送信、受信
まず、送信部2が、複数のレーダパルスを目標物に送信する(ステップS1)。そして、受信部3が、各レーダパルスの照射後に受信波を受信し、複数の受信データを生成する(ステップS2)。図5Aは、ステップS1及びS2における動作方法を説明する為の説明図である。
【0029】
図5Aには、送信信号(周波数領域)、送信信号(時間領域)、及び受信データが示されている。送信信号(周波数領域)は、各レーダパルスの周波数を示している。送信信号(時間領域)は、各レーダパルスの送信タイミングを示している。図5Aに示されるように、送信部2は、複数(N個)のレーダパルスを、異なるタイミングで照射する。ここで、送信部2は、周波数アジリティを実施する。すなわち、送信部2は、異なる周波数で、複数のレーダパルスを照射する。各レーダパルスの周波数は、周波数fg1、fg2、・・・fgkのうちのいずれかである。
【0030】
受信部3は、各レーダパルスの照射後に、対応する周波数の受信波を受信する。受信部3は、受信結果を示す受信データを生成する。受信データは、各レーダパルスに対応して生成されるので、N個のレーダパルスに対応して、N個の受信データが生成される。各受信データにおいては、レーダ装置の距離分解能に対応するレンジセル毎に、受信波のデータが示されている。受信部3が目標物によるレーダパルスの反射波を受信する時刻は、レーダ装置1から目標物までの距離に依存している。従って、各レンジセルは、距離に対応しているといえる。尚、図5Aに示される例においては、2番目の受信データにおいて、2番目のレンジセルに、妨害波が現れている。また、9番目の受信データにおいても、2番目のレンジセルに、妨害波が現れている。また、目標物による反射波は、各受信データにおける5番目及び6番目のレンジセルに現れている。
【0031】
ステップS3:積分処理
受信部3は、複数の受信データを、探知部4に通知する。探知部4では、全範囲積分部5及びグループ積分部6により、積分処理が行われる。図5Bは、積分処理を説明する為の説明図である。
【0032】
まず、図5B(a)に示されるように、グループ積分部6は、複数の受信データを整理する。具値的には、グループ積分部6は、複数の受信データを、時刻に応じて、それぞれが複数の受信データを含む複数の時間グループ(時間Gr)に分割する。すなわち、各受信データは、複数の時間グループ(tg1、tg2、・・・tgi)のいずれかに分類される。
【0033】
また、同様に、グループ積分部6は、複数の受信データを、周波数に応じて、それぞれが複数の受信データを含む複数の周波数グループ(周波数Gr)に分割する。すなわち、各受信データが、周波数グループfg1、fg2、・・・fgkのいずれかに分類される。
【0034】
次いで、図5B(b)に示されるように、全範囲積分部5が、全範囲積分データ11を生成する。具体的には、全範囲積分部5は、全ての受信データを対象として、受信波のデータを積分する。すなわち、全範囲積分部5は、全ての受信データにおいて、各レンジセルにおける受信波のデータの総和を求める。この際、図5Bに示される例では、妨害波を含む2番目及び9番目の受信データが、積分の対象に含まれている。従って、全範囲積分データ11には、2番目のレンジセルに、妨害波が反映されている。
【0035】
更に、グループ積分部6は、複数の時間グループ(tg1、tg2、・・・tgi)のそれぞれについて、受信波のデータを積分し、時間グループ積分データ12−1を生成する。これにより、複数の時間グループ(tg1、tg2、・・・tgi)に対応して、複数の時間グループ積分データ12−1(tg1、tg2、・・・tgi)が得られる。このとき、図5Bに示される例では、2番目の受信データに含まれる妨害波成分は、時間グループtg1に対応する時間グループ積分データ12−1(tg1)にのみ反映される。また、9番目の受信データに含まれる妨害波成分は、時間グループ積分データ12−1(tg3)にのみ反映される。
【0036】
更に、グループ積分部6は、時間グループと同様に、複数の周波数グループ(fg1、fg2、・・・fgk)のそれぞれについても、受信データを積分し、周波数グループ積分データ12−2を生成する。すなわち、複数の周波数グループ(fg1、fg2、・・・fgk)に対応して、複数の周波数グループ積分データ12−2(fg1、fg2、fg3、・・・fgk)が生成される。この際、2番目の受信データに含まれる妨害波成分は、周波数グループfg2に対応する周波数グループ積分データ12−2(fg2)にのみ反映される。また、9番目の受信データに含まれる妨害波成分も、周波数グループ積分12−2データ(fg2)にのみ反映される。
【0037】
ステップS4:検出処理
続いて、全範囲検出部7及びグループ検出部8が、全範囲積分データ11、複数の時間グループ積分データ12−1、及び複数の周波数グループ積分データ12−2に基づいて、目標物を検出する。図5Cは、検出処理を説明する為の説明図である。
【0038】
まず、図5C(a)に示されるように、全範囲検出部7が、全範囲積分データ11に基づいて、目標物を検出し、第1検出結果データ13を生成する。具体的には、全範囲検出部7は、全範囲積分データ11において、各レンジセルの受信波の強度を、予め設定された閾値(全範囲積分データ用閾値:検出th_a)と比較する。そして、受信波の強度が敷値を超えるレンジセルを、検出レンジセルとして検出し、検出レンジセルを示すデータを第1検出結果データ13として生成する。図5C(a)においては、2番目、5番目及び6番目のレンジセルにおいて、受信波の強度が閾値を超えている。従って、第1検出結果データ13において、2番目、5番目及び6番目のレンジセルが、検出レンジセルとして示されている。
【0039】
更に、図5C(b)に示されるように、グループ検出部8が、各時間グループ積分データ12−1について、各レンジセルの受信波の強度を、予め設定された閾値(グループ積分用閾値:検出th_t)と比較する。そして、受信波の強度が閾値を超えるレンジセルを検出し、検出結果を示す時間Gr検出結果データ14−1(第2検出結果データ14)を生成する。これにより、複数の時間グループ積分データ12−1(tg1、tg2、・・・tgi)に対応して、複数の時間Gr検出結果データ14−1(tg1、tg2、・・・tgi)が得られる。ここで、図5Cに示される例では、特定の時間グループ積分データ12−1(tg1、tg3)においてのみ、妨害波である2番目のレンジセルの受信波の強度が、閾値よりも大きい。従って、特定の時間Gr検出結果データ14−1(tg1及びtg3)においてのみ、妨害波である2番目のレンジセルが検出されている。
【0040】
更に、図5C(c)に示されるように、グループ検出部8は、各周波数グループ積分データ12−2について、受信波の強度を、予め設定された閾値(グループ積分用閾値:検出th_f)と比較する。そして、受信波の強度が閾値を超えるレンジセルを検出し、検出結果を示す周波数Gr検出結果データ14−2(第2検出結果データ14)を生成する。これにより、複数の周波数グループ積分データ12−2(fg1,fg2,・・・,fgk)に対応して、複数の周波数Gr検出結果データ14−2(fg1,fg2,・・・,fgk)が生成される。この際、図5Cに示される例では、特定の周波数Gr検出結果データ14−2(fg2)においてのみ、妨害波に対応する2番目のレンジセルが検出結果して示されている。
【0041】
ステップS5:判定処理
次いで、判定部9が、複数の第2検出結果データ14(14−1、14−2)に基づいて、第1検出結果データ13に示される検出結果(各検出レンジセル)が妨害波を示すのか否かを判定する。図5Dは、判定処理を説明するための説明図である。
【0042】
判定部9は、まず、図5D(a)に示されるように、第1検出結果データ13を、各時間Gr検出結果データ14−1(tg1、tg2、・・・tgi)と比較する。具体的には、判定部9は、各時間Gr検出結果データ14−1について、第1検出結果データ13との間でAND処理を行う。すなわち、各時間Gr検出結果データ14−1と第1検出結果データ13と双方において検出されたレンジセルが、AND処理による検出結果として求められる。これにより、複数の時間Gr検出結果データ14−1(tg1、tg2、・・・tgi)に対応して、複数のAND処理結果が得られる。次いで、判定部9は、各レンジセルについて、複数のAND処理結果において検出された回数、すなわち、時間Gr検出回数15−1を算出する。図5D(a)に示される例では、妨害波を示す2番目のレンジセルは、時間グループ(tg1及びtg3)に対応するAND処理結果において検出されている。すなわち、2番目のレンジセルの検出回数は、2回である。また、目標物を示す5番目及び6番目のレンジセルは、各時間グループに対応するAND処理結果において検出されている。すなわち、5番目及び6番目のレンジセルの検出回数は、それぞれ、i回である。その他のレンジセルの検出回数は、0回である。
【0043】
ここで、目標物を示す検出レンジセルは、検出回数が多くなる。一方、妨害波を示す検出レンジセルは、検出回数が少なくなる。そこで、判定部9は、時間Gr検出回数15−1の各レンジセルの検出回数を予め定められた閾値回数th_ctと比較し、検出回数が閾値回数th_ct以上であるレンジセルを、時間グループの比較結果として検出する。図5D(a)においては、閾値回数(th_ct)は、2回であるものとする。従って、2番目、5番目、及び6番目のレンジセルが、時間グループによる比較結果として検出されている。
【0044】
更に、判定部9は、周波数グループについても、時間グループと同様の処理を行う。すなわち、判定部9は、図5D(b)に示されるように、第1検出結果データ13、及び、各周波数Gr検出結果データ14−2(fg1、fg2、・・・fgk)に対して、AND処理を行う。その結果、複数のAND処理結果が得られる。そして、判定部9は、各レンジセルについて、複数のAND処理結果において検出された回数、すなわち、周波数Gr検出回数15−2を算出する。図5D(b)に示される例では、妨害波を示す2番目のレンジセルの検出回数は、1回である。また、目標物を示す5番目及び6番目のレンジセルの検出回数は、それぞれ、k回である。その他のレンジセルの検出回数は、0回である。
【0045】
その後、判定部9は、周波数Gr検出回数15−2の各レンジセルの検出回数を予め定められた閾値回数th_cf(図5D(b)においては、2回であるものとする。)と比較し、検出回数が閾値回数th_cf以上であるレンジセルを、周波数グループの比較結果として検出する。図5D(b)においては、5番目、及び6番目のレンジセルが、周波数グループによる比較結果として検出され、妨害波を示す2番目のレンジセルは、検出されない。
【0046】
次いで、判定部9は、図5D(c)に示されるように、時間グループによる比較結果と、周波数グループによる比較結果とに対してAND処理を行い、検出結果データ16を生成する。すなわち、判定部9は、双方で検出されたレンジセルを、目標物を示すレンジセルであると判断し、判断結果を示す検出結果データ16を生成する。一方でのみ検出されたレンジセルは、妨害波を示すレンジセルであると判断され、検出結果から排除される。図5Dにおいては、2番目のレンジセルが、時間グループによる比較結果においては検出されているものの、周波数グループによる比較結果においては検出されていない。従って、2番目のレンジセルは、妨害波を示す成分であるものと判断され、検出結果から排除される。すなわち、検出結果データ16として、5番目及び6番目のレンジセルを示すデータが生成される。
【0047】
ステップS6:結果出力
判定部9は、検出結果データ16を出力する。検出結果データ16は、目標物の探索及び追尾などに利用される。
【0048】
以上説明したように、本実施形態によれば、全範囲積分データ11(図5C参照)を利用して、目標物が検出され、第1検出結果データ13が生成される。また、各時間グループ積分データ12ー1及び各周波数グループ積分データ12−2(図5C参照)を利用しても、目標物が検出される。そして、これらの検出結果が比較され、全範囲積分データ11に基づく検出結果(第1検出結果データ13)から妨害波が除去される。既述のように、全範囲積分データ11(図5C参照)に基づいて目標物を検出する場合には、積分回数が多いため、各時間グループ積分データ12−1及び各周波数グループ積分データ12−2に基づいて目標物を検出する場合よりも、高い検出性能が得られる。しかしながら、全範囲積分データ11(図5C参照)に基づいて目標物を検出する場合には、複数の受信データの一つに妨害波が混入した場合に、その妨害波が目標物として検出(誤検出)され易い。これに対して、複数の受信データを複数のグループ(時間グループ、周波数グループ)に分割した場合、一つの受信データに混入した妨害波は、複数のグループのうちのいずれかにしか反映されない。従って、複数のグループにおける検出結果(第2検出結果データ)を用いることにより、全範囲積分データ11による検出結果(第1検出結果データ)が妨害波であるのか否かを判定することができ、目標物だけを検出することが可能になる。すなわち、検出性能を向上させるために積分(PDI)回数を多くした場合であっても、本実施例を実施しない場合と比較すると、妨害波の誤検出確率を低減するができる。
【0049】
尚、本実施形態においては、ステップS5において、判定部9が、時間グループによる比較結果と周波数グループによる比較結果とのうちの一方でのみ検出されたレンジセルを、妨害波を示す成分であると判断する(図5D(c)参照)。すなわち、判定部9は、時間Grによる比較結果と周波数Grによる比較結果とに対してAND処理を行い、目標物を示すレンジセルを検出する。但し、判定部9は、必ずしもAND処理により目標物を検出する必要はなく、OR処理などによって目標物を検出してもよい。目標物の検出性能を向上させるのか、妨害波の除去性能を向上させるのかに応じて、適切な処理を採用することが可能である。
【0050】
また、本実施形態においては、ステップS5(図5D参照)において、閾値回数(th_ct、th_cf)が2回である場合について説明した。すなわち、時間Gr検出回数15−1及び周波数Gr検出回数15−2において検出レンジセルが2回以上検出されている場合に、当該検出レンジセルが比較結果において目標物と特定される(図5D参照)。しかしながら、閾値回数(th_ct、th_cf)等の設定値は、一般的に、以下に従って設定されることが望ましい。検出処理(ステップS4)において第1検出結果データ13の検出に使用される全範囲積分データ用閾値(検出th_a)は、全範囲積分データによって目標物を検出する場合の目標探知確率、及び誤警報確率が、所定の目標探知確率(Pd)、所定の誤警報確率(Pfa)を満足するように設定を行う。また、判定処理(ステップS5)における閾値回数(th_ct、th_cf)と検出処理(ステップS4)において第2検出結果データ14(各時間Gr検出結果データ14−1、又は、各周波数Gr検出結果データ14−2)の検出に使用されるグループ積分用閾値(検出th_t、検出th_f)については、検出結果データ16における目標検出確率が、所定の目標探知確率(Pd)に対して悪化しない様に、時間グループ積分データ又は周波数グループ積分データによって目標物を検出した場合に、時間Gr検出回数15−1又は周波数Gr検出回数15−2における目標検出数が閾値回数(th_ct、又は、th_cf)と同数となる確率と、所定の目標探知確率(Pd)が等しくなるように設定を行う。なお、このように設定を行った場合、一般的に、時間グループ積分データ又は周波数グループ積分データによって目標物を検出する場合の誤警報確率、すなわち、第2検出結果データ14(各時間Gr検出結果データ14−1、又は、各周波数Gr検出結果データ14−2)の検出における誤警報確率は悪化するものと考えられる。しかしながら、第1検出結果データ13の検出において所定の誤警報確率(Pfa)を満足するように全範囲積分データ用閾値(検出th_a)を設定すること、及び、判定処理(ステップS5)において、第1検出結果データ13と第2検出結果データ14(各時間Gr検出結果データ14−1、又は、各周波数Gr検出結果データ14−2)がAND処理され、第2検出結果データ14で誤検出されたレンジセルが第1検出結果データ13に基づいて排除されることから、検出結果データ16における誤警報確率は所定の誤警報確率(Pfa)に対して悪化しない。よって、問題はない。
【0051】
(第2の実施形態)
続いて、第2の実施形態について説明する。第1の実施形態では、複数の受信データが、複数の時間グループ及び複数の周波数グループに分割される場合について説明した。これに対して、本実施形態では、複数の受信データが、複数の時間グループにのみ分割される。それ以外の点は、第1の実施形態と同様である。
【0052】
図6Aは、本実施形態における送受信処理(ステップS1、S2)を説明する説明図である。図6Aに示されるように、本実施形態においても、送信部2が複数のレーダパルスを照射し、受信部3が複数の受信データを生成する。但し、本実施形態において、送信部2は、必ずしも周波数アジリティを実施する必要はない。また、第1の実施形態と同様に、2番目の受信データ及び9番目の受信データにおいて、それぞれ2番目のレンジセルに、妨害波が含まれているものとする。更に、目標物によるレーダパルスの反射波は、5番目及び6番目のレンジセルに含まれているものとする。
【0053】
図6Bは、本実施形態における積分処理(ステップS3)を説明する説明図である。図6B(a)に示されるように、グループ積分部6は、複数の受信データを、時刻に応じて、複数の時間グループに分割する。すなわち、各受信データは、複数の時間グループ(tg1,tg2,・・・tgi)のいずれかに分類される。
【0054】
そして、図6B(b)に示されるように、全範囲積分部5が、全ての受信データを用いて積分処理を行い、全範囲積分データ11を生成する。また、グループ積分部6は、各時間グループ(tg1,tg2,・・・tgi)について積分処理を行い、複数の時間グループ積分データ12(tg1,tg2,・・・tgi)を生成する。この際、全範囲積分データ11においては、妨害波が2番目のレンジセルに反映されている。一方、複数の時間グループ積分データ12においては、特定の時間グループ積分データ12(tg1、tg3)においてのみ、妨害波が2番目のレンジセルに反映されている。
【0055】
図6Cは、検出処理(ステップS4)を示す説明図である。図6C(a)に示されるように、全範囲検出部7が、全範囲積分データ11を閾値(検出th_a)と比較し、検出結果を示す第1検出結果データ13を生成する。一方、図6(b)に示されるように、グループ検出部8は、各時間グループ積分データ12を閾値(検出th_t)と比較し、複数の第2検出結果データ14(tg1,tg2,・・・tgi)を生成する。
【0056】
図6Dは、判定処理を示す説明図である。図6Dに示されるように、判定部9は、第1検出結果データ13を、複数の時間Gr検出結果データ14(tg1,tg2,・・・tgi)の各々と比較し、複数のAND処理結果を得る。そして、判定部9は、各レンジセルについて、複数のAND処理結果における検出回数、すなわち、時間Gr検出回数15を求める。図6Dに示される例では、妨害波を示す2番目のレンジセルの検出回数が2回であり、目標物を示す5番目及び6番目のレンジセルの検出回数は、それぞれi回である。
【0057】
その後、判定部9は、各レンジセルの検出回数を予め設定された閾値(th_ct)と比較する。本実施形態においては、閾値(th_ct)は、3回であるものとする。判定部9は、検出回数が閾値(th_ct)以上であるレンジセルを示すデータを、検出結果データ16として生成する。図6Dに示される例においては、2番目のレンジセルは妨害波として除去され、5番目及び6番目のレンジセルを示すデータが、検出結果データ16として生成されている。検出結果データは、第1の実施形態と同様、目標物の探索や追尾に用いられる。
【0058】
本実施形態においても、第1の実施形態と同様に、複数のグループにおける検出結果を用いることにより、全ての受信データを用いたときの検出結果から、妨害波を除去することが可能である。
【0059】
また、本実施形態においては、複数の受信データが、複数の時間グループにのみ分割される。そのため、第1の実施形態のほうが本実施形態よりも妨害波除去性能において優れていると考えられる。但し、本実施形態においては、複数の周波数グループに関する処理を行う必要がなく、第1の実施形態よりも処理負荷を少なくすることが可能である。
【0060】
(第3の実施形態)
続いて、第3の実施形態について説明する。第2の実施形態では、複数の受信データが、複数の時間グループに分割される場合について説明した。これに対して、本実施形態では、複数の受信データが、複数の周波数グループに分割される。それ以外の点は、第2の実施形態と同様である。
【0061】
図7Aは、本実施形態における送受信処理(ステップS1、S2)を説明する説明図である。図7Aに示されるように、本実施形態においても、送信部2が複数のレーダパルスを照射し、受信部3が複数の受信データを生成する。また、送信部2は、周波数アジリティを実施し、異なる周波数で複数のレーダパルスを照射する。また、既述の実施形態と同様に、2番目の受信データ及び9番目の受信データにおいて、それぞれ2番目のレンジセルに、妨害波が含まれているものとする。更に、目標物によるレーダパルスの反射波は、5番目及び6番目のレンジセルに含まれているものとする。
【0062】
図7Bは、本実施形態における積分処理(ステップS3)を説明する説明図である。図7B(a)に示されるように、グループ積分部6は、複数の受信データを、周波数に応じて、複数の周波数グループ(fg1、fg2、・・・fgk)に分割する。すなわち、各受信データは、複数の周波数グループ(fg1、fg2、・・・fgk)のいずれかに分類される。
【0063】
そして、図7B(b)に示されるように、全範囲積分部5が、全ての受信データを用いて積分処理を行い、全範囲積分データ11を生成する。また、グループ積分部6は、各周波数グループ(fg1、fg2、・・・fgk)について積分処理を行い、複数の周波数グループ積分データ12(fg1、fg2、・・・、fgk)を生成する。
【0064】
図7Cは、検出処理(ステップS4)を示す説明図である。図7C(a)に示されるように、全範囲検出部7が、全範囲積分データ11を閾値(検出th_a)と比較し、検出結果を示す第1検出結果データ13を生成する。一方、図7C(b)グループ検出部8は、各周波数グループ積分データ12(fg1、fg2、・・・、fgk)を閾値(検出th_f)と比較し、複数の第2検出結果データ14(fg1、fg2、・・・、fgk)(周波数Gr検出結果データ)を生成する。
【0065】
図7Dは、判定処理(ステップS5)を示す説明図である。図7Dに示されるように、判定部9は、第1検出結果データ13を、各周波数Gr検出結果データ14と比較し、複数のAND処理結果を得る。そして、判定部9は、各レンジセルについて、複数のAND処理結果における検出回数、すなわち、周波数Gr検出回数15を求める。図7Dに示される例では、妨害波を示す2番目のレンジセルの検出回数が1回であり、目標物を示す5番目及び6番目のレンジセルの検出回数は、それぞれk回である。
【0066】
その後、判定部9は、各レンジセルの検出回数を予め設定された閾値(th_cf)と比較する。本実施形態においては、この閾値(th_cf)は、2回であるものとする。判定部9は、検出回数が閾値(th_cf)以上であるレンジセルを示すデータを、検出結果データ16として生成する。図7Dに示される例においては、2番目のレンジセルが妨害波として除去され、5番目及び6番目のレンジセルを示すデータが、検出結果データとして生成されている。検出結果データ16は、既述の実施形態と同様、目標物の探索や追尾に用いられる。
【0067】
本実施形態においても、第2の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。すなわち、複数の時間グループに関する処理を行う必要がなく、第1の実施形態よりも処理負荷を少なくすることが可能である。
【0068】
(第4の実施形態)
続いて、第4の実施形態を説明する。図8は、本実施形態に係るレーダ装置1を示すブロック図である。本実施形態においては、第1の実施形態と異なり、比較判定部10に、グループ検出部8が設けられていない。グループ積分部6により生成されたグループ積分データ(時間グループ積分データ及び周波数グループ積分データ)は、そのまま判定部9に通知される。
【0069】
本実施形態においても、図4に示したように、送受信処理(ステップS1、S2)、積分処理(ステップS3)、検出処理(ステップS4)、判定処理(ステップS5)、及び結果出力(ステップS6)が実行される。
【0070】
図9A乃至図9Dは、本実施形態におけるレーダ装置1の動作方法の一例を示す説明図である。図9A乃至図9Dを参照して、レーダ装置1の動作方法を説明する。
【0071】
図9Aは、送受信処理(ステップS1、S2)を示す説明図である。第1の実施形態と同様に、送信部2は、レーダ波として、複数のレーダパルスを照射する。送信部2は、周波数アジリティを実施し、異なる周波数で複数のレーダパルスを照射する。また、受信部3は、各レーダパルスの照射後に受信波を受信し、複数の受信データを生成する。図9Aに示される例では、2番目及び9番目の受信データにおいて、2番目のレンジセルに妨害波が含まれている。また、目標物による反射波は、各受信データの6番目のレンジセルに含まれている。
【0072】
図9Bは、積分処理(ステップS3)を示す説明図である。図9B(a)に示されるように、グループ積分部6は、第1の実施形態と同様に、複数の受信データを、複数の時間グループ(tg1、tg2、・・tgi)、及び複数の周波数グループ(fg1、fg2、・・・fgk)に分割する。
【0073】
そして、図9B(b)に示されるように、全範囲積分部5が、全ての受信データに対して積分処理を行い、全範囲積分データ11を生成する。また、グループ積分部6は、各時間グループ及び各周波数グループに対して、積分処理を行い、複数の時間グループ積分データ12−1(tg1、tg2、・・・、tgi)及び複数の周波数グループ積分データ12−2(fg1、fg2、・・・、fgk)を生成する。この際、全範囲積分データ11においては、2番目のレンジセルに、妨害波が含まれている。一方、複数の時間グループ積分データ12−1においては、時間グループ積分データ12−1(tg1、tg3)においてのみ、2番目のレンジセルに妨害波が含まれている。また、複数の周波数グループ積分データ12−2においては、周波数グループ積分データ12−1(fg2)においてのみ、2番目のレンジセルに妨害波が含まれている。
【0074】
図9Cは、検出処理(ステップS4)を示す説明図である。全範囲検出部7が、第1の実施形態と同様に、全範囲積分データ11の受信強度(振幅)を閾値(検出th_a)と比較し、閾値(検出th_a)以上の受信強度を有するレンジセルを検出レンジセルとして検出する。そして、検出結果を示す第1検出結果データ13を生成する。尚、図9Cに示される例では、2番目及び6番目のレンジセルが、検出レンジセルとして検出されている。但し、第1の実施形態とは異なり、各時間グループ積分データ12−1及び各周波数グループ積分データ12−2については、検出処理が行われない。
【0075】
図9Dは、判定処理(ステップS5)を示す説明図である。本実施形態においては、判定部9が、第1検出結果データ13における各検出レンジセル(目標物と検出されたレンジセル)について、サンプルデータ17を生成する。具体的には、判定部9は、複数の時間グループ積分データ12−1(tg1、tg2、・・・、tgi)を、第1検出結果データ13のうちの各検出レンジセルと同じレンジセル毎に抽出して分類したデータ、すなわち、サンプルデータ17−1を生成する。また、判定部9は、複数の周波数グループ積分データ12−2(fg1、fg2、・・・、fgk)を、第1検出結果データ13のうちの各検出レンジセルと同じレンジセル毎に抽出して分類したデータ、すなわち、サンプルデータ17−2を生成する。
【0076】
図9Dに示される例では、検出レンジセルは、2番目及び6番目のレンジセルである。従って、2番目及び6番目のレンジセルに関して、それぞれ、時間グループに関するサンプルデータ17−1、及び、周波数グループに関するサンプルデータ17−2が生成されている。
【0077】
次いで、判定部9は、図9Dに示されるように、時間グループに関するサンプルデータ17−1における振幅の最大値と最小値とを求める。そして、判定部9は、求めた最大値と最小値との差分を算出する。この差分が大きい場合には、対応する検出レンジセルは妨害波によって検出されているものと考えられる。一方、差分が小さい場合には、対応する検出レンジセルは目標物によって検出されているものと考えられる。従って、判定部9は、その差分を予め定められた閾値(判定スレッショルド)と比較し、差分が閾値(判定スレッショルド)以上である場合には、その検出レンジセルを妨害波であると判定する。また、判定部9は、同様の処理を、周波数グループに関するサンプルデータ17−2についても実施する。すなわち、判定部9は、周波数グループに関するサンプルデータの最大値と最小値との差分を算出し、その差分を閾値と比較し、その検出レンジセルが妨害波であるか否かを判定する。
【0078】
更に、判定部9は、時間グループに関するサンプルデータ17−1に基づく判定結果、及び、周波数グループに関するサンプルデータ17−2に基づく判定結果に対して、OR処理を行い、当該検出レンジセルが妨害波であるか否かを判定する。すなわち、いずれかの判定結果が妨害波である場合には、判定部9は、当該検出レンジセルは妨害波によるものであると判断し、第1検出結果データ13から当該検出レンジセルを除去する。
【0079】
図9Dに示される例では、2番目のレンジセルにおいて、時間グループに関するサンプルデータ17−1の差分が、閾値(判定スレッショルド)よりも大きい。従って、時間グループに関するサンプルデータ17−1に基づく判定結果は、妨害波になる。また、2番目の検出レンジセルにおいて、周波数グループに関するサンプルデータ17−2の差分は、閾値よりも大きい。従って、周波数グループに関するサンプルデータ17−2に基づく判定結果も、妨害波になる。両者の判定結果が妨害波であるため、判定部9は、最終的な判断結果として、2番目のレンジセルは妨害波であるものと判断し、2番目のレンジセルは未検出のレンジセルであると判断する。
【0080】
一方、6番目の検出レンジセルにおいては、時間グループに関するサンプルデータ17−1の差分が閾値よりも小さい。また、周波数グループに関するサンプルデータ17ー2の差分も閾値よりも小さい。従って、判定部9は、6番目のレンジセルは目標物によるものであると判断する。その結果、判断部9は、6番目のレンジセルを検出結果として示すデータを、検出結果データ16として出力する。
【0081】
以上説明したように、本実施形態よれば、各サンプルデータ17における最大値と最小値との差分に基づいて、検出レンジセルが妨害波であるか否かが判断される。従って、既述の実施形態と同様に、全ての受信データの積分結果を利用した検出結果(第1検出結果データ13)において妨害波が含まれていたとしても、各サンプルデータ17によって妨害波を排除することができる。受信データの積分(PDI)回数を増やした場合であっても、妨害波を誤検出する確率を低減できる。
【0082】
尚、本実施形態では、判定部9が、各サンプルデータ17における最大値と最小値との差分データを閾値と比較する場合について説明した(図9D参照)。但し、別の手法で各サンプルデータ17を評価し、妨害波であるか否かを判定することも可能である。例えば、判定部9は、各サンプルデータ17の分散値を算出し、算出された分散値を予め定められた閾値を比較することにより、妨害波であるか否かを判定してもよい。また、判定部9は、AIC(赤池情報量基準)等の情報量基準を用いて、予め定められた目標物の統計モデルと各サンプルデータ17の一致度を評価し、その評価結果に基づいて妨害波であるか否かを判定してもよい。
【0083】
また、本実施形態では、判定部9が、時間グループに関するサンプルデータ17−1に基づく判定結果と、周波数グループに関するサンプルデータ17−2に基づく判定結果とのうちのいずれかの結果が妨害波である場合に、当該検出レンジセルを妨害波であると判断する場合について説明した。すなわち、判定部9は、OR処理を行い、妨害波であるか否かを判定する。但し、判定部9は、OR処理ではなく、AND処理を行い、妨害波であるか否かを判定してもよい。すなわち、時間グループに関するサンプルデータ17−1に基づく判定結果が妨害波であり、周波数グループに関するサンプルデータ17−2に基づく判定結果も妨害波である場合にのみ、当該検出レンジセルが妨害波であると判断してもよい。OR処理を用いた場合には、妨害波が除去され易くなり、AND処理を用いた場合には、目標物が検出され易くなる。
【0084】
また、本実施形態では、複数の受信データが、複数の時間グループ及び複数の周波数グループに分割される場合について説明した。但し、第2の実施形態と同様に、複数の受信データは、複数の時間グループにのみ分割され、時間グループに関するサンプルデータのみに基づいて、妨害波であるか否かの判定が行なわれてもよい。また、第3の実施形態と同様に、複数の受信データが、複数の周波数グループにのみ分割され、周波数グループに関するサンプルデータのみに基づいて、妨害波であるか否かの判定が行なわれてもよい。
【0085】
以上、本発明について、第1乃至第4の実施形態を用いて説明した。尚、これらの実施形態は互いに独立するものではなく、矛盾のない範囲内で組み合わせて用いることも可能である。
【符号の説明】
【0086】
1 レーダ装置
2 送信部
3 受信部
4 探知部
5 全範囲積分部
6 グループ積分部
7 全範囲検出部
8 グループ検出部
9 判定部
10 比較判定部
11 全範囲積分データ
12 グループ積分データ
12−1 時間グループ積分データ
12−2 周波数グループ積分データ
13 第1検出結果データ
14 第2検出結果データ
14−1 時間Gr検出結果データ
14−2 周波数Gr検出結果データ
15−1 時間Gr検出回数
15−2 周波数Gr検出回数
16 検出結果データ
17 サンプルデータ
17−1 時間グループに関するサンプルデータ
17−2 周波数グループに関するサンプルデータ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
目標物に向けて複数のレーダパルスを照射する送信部と、
前記複数のレーダパルスの各々の照射後に受信波を受信し、前記複数のレーダパルスに対応する複数の受信データを生成する、受信部と、
前記複数の受信データに基づいて、前記目標物を探知する、探知部と、
を具備し、
前記受信部は、前記複数の受信データの各々として、レンジセル毎に前記受信波のデータを生成し、
前記探知部は、
前記複数の受信データの全てを対象として、前記受信波のデータを積分し、積分結果を示す全範囲積分データを生成する、全範囲積分部と、
前記複数の受信データを、それぞれが複数の受信データを含む複数のグループに分割し、前記複数のグループそれぞれについて、前記受信波のデータを積分し、前記複数のグループに関する積分結果を示す複数のグループ積分データを生成する、グループ積分部と、
前記全範囲積分データと前記複数のグループ積分データとを比較することにより、目標物を示すレンジセルを検出し、検出結果を示す検出結果データを生成する、比較判定部と、
を備える
レーダ装置。
【請求項2】
請求項1に記載されたレーダ装置であって、
前記グループ積分部は、前記複数の受信データを、照射時刻に応じて、前記複数のグループに分割する
レーダ装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載されたレーダ装置であって、
前記送信部は、前記複数のレーダパルスを互いに異なる周波数で照射し、
前記グループ分割部は、前記複数の受信データを、周波数に応じて、複数のグループに分割する
レーダ装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載されたレーダ装置であって、
前記比較判定部は、
全範囲積分データに基づいて、前記受信波の強度が予め定められた全範囲積分データ用閾値よりも大きいレンジセルを全範囲検出レンジセルとして検出し、前記検出レンジセルを示す第1検出結果データを生成する、全範囲検出部と、
前記複数のグループ積分データのそれぞれについて、前記受信波の強度が予め定められたグループ積分用閾値よりも大きいレンジセルを検出し、前記複数のグループ積分データに対する検出結果を示す複数の第2検出結果データを生成する、グループ検出部と、
前記第1検出結果データと前記複数の第2検出結果データとを比較することにより、各レンジセルが目標物を示すのか否かを判定する、判定部とを備えている
レーダ装置。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれかに記載されたレーダ装置であって、
前記比較判定部は、
全範囲積分データに基づいて、前記受信波の強度が予め定められた全範囲積分データ用閾値よりも大きいレンジセルを検出レンジセルとして検出し、前記検出レンジセルを示す第1検出結果データを生成する、全範囲検出部と、
前記複数のグループ積分データを前記検出レンジセルに対応したレンジセル毎に抽出及び分類したサンプルデータを生成し、前記第1検出結果データ及び前記サンプルデータに基づいて、前記検出レンジセルが妨害波に対応するか否かを判定する、判定部とを備えている
レーダ装置。
【請求項6】
請求項5に記載されたレーダ装置であって、
前記判定部は、前記サンプルデータにおける、前記検出レンジセルにおける前記受信波の強度の最大値と、前記検出レンジセルにおける前記受信波の強度の最小値との差分を算出し、前記差分に基づいて、前記検出レンジセルが妨害波に対応するか否かを判定する
レーダ装置。
【請求項7】
請求項5に記載されたレーダ装置であって、
前記判定部は、前記サンプルデータの分散値を計算し、前記分散値に基づいて、前記検出レンジセルが妨害波に対応するか否かを判定する
レーダ装置。
【請求項8】
請求項5に記載されたレーダ装置であって、
前記判定部は、予め定めた目標物の統計モデルと前記サンプルデータの一致度を情報量基準により算出し、前記一致度に基づいて、前記検出レンジセルが妨害波に対応するか否かを判定するレーダ装置。
【請求項9】
目標物に向けて複数のレーダパルスを照射するステップと、
前記複数のレーダパルスの各々の照射後に受信波を受信し、前記複数のレーダパルスに対応する複数の受信データを生成するステップと、
前記複数の受信データに基づいて、前記目標物を探知するステップと、
を具備し、
前記複数の受信データを生成するステップは、前記複数の受信データの各々として、レンジセル毎に前記受信波のデータを生成するステップを含み、
前記探知するステップは、
前記複数の受信データの全てについて、前記レンジセル毎に前記受信波のデータを積分し、積分結果を示す全範囲積分データを生成するステップと、
前記複数の受信データを、それぞれが複数の受信データを含む複数のグループに分割し、前記複数のグループそれぞれについて、前記レンジセル毎に前記受信波のデータを積分し、前記複数のグループに関する積分結果を示す複数のグループ積分データを生成するステップと、
前記複数のグループ積分データに基づいて、前記全範囲積分データ中における妨害波成分を除去し、検出結果データを生成するステップと、
を備える
レーダ装置の動作方法。
【請求項10】
請求項9に記載されたレーダ装置の動作方法であって、
前記複数のグループ積分データを生成するステップは、前記複数の受信データを、照射時刻に応じて、前記複数のグループに分割するステップを含んでいる
レーダ装置の動作方法。
【請求項11】
請求項9又は10に記載されたレーダ装置の動作方法であって、
前記送信するステップは、前記複数のレーダパルスを互いに異なる周波数で照射するステップを含み、
前記複数のグループ積分データを生成するステップは、前記複数の受信データを、周波数に応じて、複数のグループに分割するステップを含んでいる
レーダ装置の動作方法。
【請求項12】
請求項9乃至11のいずれかに記載されたレーダ装置の動作方法であって、
前記検出結果データを生成するステップは、
前記全範囲積分データに基づいて、前記受信波の強度が予め定められた全範囲積分データ用閾値よりも大きいレンジセルを検出レンジセルとして検出し、前記検出レンジセルを示す第1検出結果データを生成するステップと、
前記複数のグループ積分データのそれぞれについて、前記受信波の強度が予め定められたグループ積分用閾値よりも大きいレンジセルを検出し、前記複数のグループ積分データにおける検出結果を示す複数の第2検出結果データを生成するステップと、
前記複数の第2検出結果データにおいて、前記検出レンジセルが検出された回数を算出し、算出された回数に基づいて、前記検出レンジセルが妨害波に対応するか否かを判定するステップと、を備えている
レーダ装置の動作方法。
【請求項13】
請求項9乃至11のいずれかに記載されたレーダ装置の動作方法であって、
前記検出結果データを生成するステップは、
全範囲積分データに基づいて、前記受信波の強度が予め定められた全範囲積分データ用閾値よりも大きいレンジセルを検出レンジセルとして検出し、前記検出レンジセルを示す第1検出結果データを生成するステップと
前記複数のグループ積分データを前記検出レンジセルに対応するレンジセル毎に抽出及び分類したサンプルデータを生成し、前記第1検出結果データ及び前記サンプルデータに基づいて、前記検出レンジセルが妨害波に対応するか否かを判定するステップと、を備えている
レーダ装置の動作方法。
【請求項14】
請求項13に記載されたレーダ装置の動作方法であって、
前記判定するステップは、前記サンプルデータにおける、前記検出レンジセルにおける前記受信波の強度の最大値と、前記検出レンジセルにおける前記受信波の強度の最小値との差分を算出し、前記差分に基づいて、前記検出レンジセルが妨害波に対応するか否かを判定するステップを含んでいる
レーダ装置の動作方法。
【請求項15】
請求項13に記載されたレーダ装置の動作方法であって、
前記判定するステップは、前記サンプルデータの分散値を計算し、前記分散値に基づいて、前記検出レンジセルが妨害波に対応するか否かを判定するステップを含んでいる
レーダ装置の動作方法。
【請求項16】
請求項13に記載されたレーダ装置の動作方法であって、
前記判定するステップは、予め定めた目標物の統計モデルと前記サンプルデータの一致度を情報量基準により算出し、前記一致度に基づいて、前記検出レンジセルが妨害波に対応するか否かを判定するステップを含んでいる
レーダ装置の動作方法。
【請求項17】
請求項9乃至16のいずれかに記載されたレーダ装置の動作方法をコンピュータにより実現するための、レーダ装置の動作プログラム。
【請求項1】
目標物に向けて複数のレーダパルスを照射する送信部と、
前記複数のレーダパルスの各々の照射後に受信波を受信し、前記複数のレーダパルスに対応する複数の受信データを生成する、受信部と、
前記複数の受信データに基づいて、前記目標物を探知する、探知部と、
を具備し、
前記受信部は、前記複数の受信データの各々として、レンジセル毎に前記受信波のデータを生成し、
前記探知部は、
前記複数の受信データの全てを対象として、前記受信波のデータを積分し、積分結果を示す全範囲積分データを生成する、全範囲積分部と、
前記複数の受信データを、それぞれが複数の受信データを含む複数のグループに分割し、前記複数のグループそれぞれについて、前記受信波のデータを積分し、前記複数のグループに関する積分結果を示す複数のグループ積分データを生成する、グループ積分部と、
前記全範囲積分データと前記複数のグループ積分データとを比較することにより、目標物を示すレンジセルを検出し、検出結果を示す検出結果データを生成する、比較判定部と、
を備える
レーダ装置。
【請求項2】
請求項1に記載されたレーダ装置であって、
前記グループ積分部は、前記複数の受信データを、照射時刻に応じて、前記複数のグループに分割する
レーダ装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載されたレーダ装置であって、
前記送信部は、前記複数のレーダパルスを互いに異なる周波数で照射し、
前記グループ分割部は、前記複数の受信データを、周波数に応じて、複数のグループに分割する
レーダ装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載されたレーダ装置であって、
前記比較判定部は、
全範囲積分データに基づいて、前記受信波の強度が予め定められた全範囲積分データ用閾値よりも大きいレンジセルを全範囲検出レンジセルとして検出し、前記検出レンジセルを示す第1検出結果データを生成する、全範囲検出部と、
前記複数のグループ積分データのそれぞれについて、前記受信波の強度が予め定められたグループ積分用閾値よりも大きいレンジセルを検出し、前記複数のグループ積分データに対する検出結果を示す複数の第2検出結果データを生成する、グループ検出部と、
前記第1検出結果データと前記複数の第2検出結果データとを比較することにより、各レンジセルが目標物を示すのか否かを判定する、判定部とを備えている
レーダ装置。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれかに記載されたレーダ装置であって、
前記比較判定部は、
全範囲積分データに基づいて、前記受信波の強度が予め定められた全範囲積分データ用閾値よりも大きいレンジセルを検出レンジセルとして検出し、前記検出レンジセルを示す第1検出結果データを生成する、全範囲検出部と、
前記複数のグループ積分データを前記検出レンジセルに対応したレンジセル毎に抽出及び分類したサンプルデータを生成し、前記第1検出結果データ及び前記サンプルデータに基づいて、前記検出レンジセルが妨害波に対応するか否かを判定する、判定部とを備えている
レーダ装置。
【請求項6】
請求項5に記載されたレーダ装置であって、
前記判定部は、前記サンプルデータにおける、前記検出レンジセルにおける前記受信波の強度の最大値と、前記検出レンジセルにおける前記受信波の強度の最小値との差分を算出し、前記差分に基づいて、前記検出レンジセルが妨害波に対応するか否かを判定する
レーダ装置。
【請求項7】
請求項5に記載されたレーダ装置であって、
前記判定部は、前記サンプルデータの分散値を計算し、前記分散値に基づいて、前記検出レンジセルが妨害波に対応するか否かを判定する
レーダ装置。
【請求項8】
請求項5に記載されたレーダ装置であって、
前記判定部は、予め定めた目標物の統計モデルと前記サンプルデータの一致度を情報量基準により算出し、前記一致度に基づいて、前記検出レンジセルが妨害波に対応するか否かを判定するレーダ装置。
【請求項9】
目標物に向けて複数のレーダパルスを照射するステップと、
前記複数のレーダパルスの各々の照射後に受信波を受信し、前記複数のレーダパルスに対応する複数の受信データを生成するステップと、
前記複数の受信データに基づいて、前記目標物を探知するステップと、
を具備し、
前記複数の受信データを生成するステップは、前記複数の受信データの各々として、レンジセル毎に前記受信波のデータを生成するステップを含み、
前記探知するステップは、
前記複数の受信データの全てについて、前記レンジセル毎に前記受信波のデータを積分し、積分結果を示す全範囲積分データを生成するステップと、
前記複数の受信データを、それぞれが複数の受信データを含む複数のグループに分割し、前記複数のグループそれぞれについて、前記レンジセル毎に前記受信波のデータを積分し、前記複数のグループに関する積分結果を示す複数のグループ積分データを生成するステップと、
前記複数のグループ積分データに基づいて、前記全範囲積分データ中における妨害波成分を除去し、検出結果データを生成するステップと、
を備える
レーダ装置の動作方法。
【請求項10】
請求項9に記載されたレーダ装置の動作方法であって、
前記複数のグループ積分データを生成するステップは、前記複数の受信データを、照射時刻に応じて、前記複数のグループに分割するステップを含んでいる
レーダ装置の動作方法。
【請求項11】
請求項9又は10に記載されたレーダ装置の動作方法であって、
前記送信するステップは、前記複数のレーダパルスを互いに異なる周波数で照射するステップを含み、
前記複数のグループ積分データを生成するステップは、前記複数の受信データを、周波数に応じて、複数のグループに分割するステップを含んでいる
レーダ装置の動作方法。
【請求項12】
請求項9乃至11のいずれかに記載されたレーダ装置の動作方法であって、
前記検出結果データを生成するステップは、
前記全範囲積分データに基づいて、前記受信波の強度が予め定められた全範囲積分データ用閾値よりも大きいレンジセルを検出レンジセルとして検出し、前記検出レンジセルを示す第1検出結果データを生成するステップと、
前記複数のグループ積分データのそれぞれについて、前記受信波の強度が予め定められたグループ積分用閾値よりも大きいレンジセルを検出し、前記複数のグループ積分データにおける検出結果を示す複数の第2検出結果データを生成するステップと、
前記複数の第2検出結果データにおいて、前記検出レンジセルが検出された回数を算出し、算出された回数に基づいて、前記検出レンジセルが妨害波に対応するか否かを判定するステップと、を備えている
レーダ装置の動作方法。
【請求項13】
請求項9乃至11のいずれかに記載されたレーダ装置の動作方法であって、
前記検出結果データを生成するステップは、
全範囲積分データに基づいて、前記受信波の強度が予め定められた全範囲積分データ用閾値よりも大きいレンジセルを検出レンジセルとして検出し、前記検出レンジセルを示す第1検出結果データを生成するステップと
前記複数のグループ積分データを前記検出レンジセルに対応するレンジセル毎に抽出及び分類したサンプルデータを生成し、前記第1検出結果データ及び前記サンプルデータに基づいて、前記検出レンジセルが妨害波に対応するか否かを判定するステップと、を備えている
レーダ装置の動作方法。
【請求項14】
請求項13に記載されたレーダ装置の動作方法であって、
前記判定するステップは、前記サンプルデータにおける、前記検出レンジセルにおける前記受信波の強度の最大値と、前記検出レンジセルにおける前記受信波の強度の最小値との差分を算出し、前記差分に基づいて、前記検出レンジセルが妨害波に対応するか否かを判定するステップを含んでいる
レーダ装置の動作方法。
【請求項15】
請求項13に記載されたレーダ装置の動作方法であって、
前記判定するステップは、前記サンプルデータの分散値を計算し、前記分散値に基づいて、前記検出レンジセルが妨害波に対応するか否かを判定するステップを含んでいる
レーダ装置の動作方法。
【請求項16】
請求項13に記載されたレーダ装置の動作方法であって、
前記判定するステップは、予め定めた目標物の統計モデルと前記サンプルデータの一致度を情報量基準により算出し、前記一致度に基づいて、前記検出レンジセルが妨害波に対応するか否かを判定するステップを含んでいる
レーダ装置の動作方法。
【請求項17】
請求項9乃至16のいずれかに記載されたレーダ装置の動作方法をコンピュータにより実現するための、レーダ装置の動作プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図9D】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図9D】
【公開番号】特開2013−33004(P2013−33004A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−169905(P2011−169905)
【出願日】平成23年8月3日(2011.8.3)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月3日(2011.8.3)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】
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