説明

レーダ装置

【課題】応答性の劣化を抑制しつつ精度良く物標位置の算出を行うことのできる「レーダ装置」を提供する。
【解決手段】物標位置補正部24は、物標位置予測部23によって今回の予測相対位置Pftが予測されているときに、レーダ測位部10によって今回の計測相対位置として図中のPOtが算出されると、今回の相対位置Ptとして、計測相対位置POtと予測相対位置Pftとを結ぶ線分上の位置を算出する。ここで、物標位置補正部24は、計測相対位置POtまでの距離Qが小さいほど、また、物標の今までの追尾回数Rが少ないほど、また、計測相対位置POtの方向角と予測相対位置Pftの方向角の差dθの絶対値の今までの平均値φが大きいほど、計測相対位置POtよりの位置となるように相対位置Ptを算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーダ装置において物標の位置を算出する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
レーダ装置の技術としては、レーダを用いて複数回計測した物標の位置(レーダ装置に対する角度や距離)を平均化した値を、当該物標の位置として用いることにより、物標の位置の算出精度を向上する技術が知られている(たとえば、特許文献1、特許文献2)。
【特許文献1】特開2003-344534号公報
【特許文献2】特開2004-226120号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記レーダ装置で複数回計測した物標の位置を平均化した値を、当該物標の位置として用いる技術によれば、物標の位置の算出に、レーダによる物標の複数回の計測が必要となるため、応答性の優れた物標の位置の算出を行うことができない。
そこで、本発明は、応答性を劣化を抑制しつつ精度良く物標位置の算出を行うことのできるレーダ装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記課題達成のために、本発明は、レーダ装置を、レーダを用いて物標の位置を計測位置として計測するレーダ測位手段と、前記レーダ測位手段が前記計測位置を計測した物標を追尾する追尾手段と、前記追尾手段が追尾している物標の位置を、当該物標の過去の位置に基づいて予測位置として予測する予測手段と、前記レーダ測位手段が計測した計測位置と前記予測手段が予測した予測位置との間の位置に、物標の位置を算出する物標位置算出手段とを含めて構成したものである。
【0005】
そして、前記物標位置算出手段において、前記レーダ測位手段が計測した計測位置が示す物標までの距離が小さいほど、当該計測位置よりの位置となるように、当該物標の位置を算出するようにしたものである。
または、前記物標位置算出手段において、前記追尾手段が物標を追尾した回数が大きいほど、前記予測位置よりの位置となるように、当該物標の位置を算出するようにしたものである。
または、前記物標位置算出手段において、前記レーダ測位手段が計測した計測位置が示す物標の方向と前記予測手段が予測した予測位置が示す当該物標の方向との差の絶対値の、現在までの平均値が大きいほど、前記予測位置よりの位置となるように、当該物標の位置を算出するようにしたものである。
【0006】
ここで、以上のように本発明に係るレーダ装置では、レーダ測位手段が計測した計測位置を、前記予測手段が予測した予測位置を考慮して補正した位置を物標の位置として算出する。
そして、このような補正を、前記物標位置算出手段において、前記レーダ測位手段が計測した計測位置が示す物標までの距離が小さいほど、当該計測位置よりの位置となるように、当該物標の位置を算出することにより行えば、前記レーダ測位手段が計測した計測位置が示す物標までの距離が小さいほど、前記レーダ測位手段が計測した計測位置の信頼性が高いため、予測位置を考慮した適正な計測位置の補正が可能となる。また、このような補正を、前記物標位置算出手段において、前記追尾手段が物標を追尾した回数が大きいほど、前記予測位置よりの位置となるように、当該物標の位置を算出することにより行えば、前記追尾手段が物標を追尾した回数が大きいほど、過去の物標の位置に基づいて行われる予測位置の予測の精度は高い蓋然性が大きいため、予測位置を考慮した適正な計測位置の補正が可能となる。また、このような補正を、前記物標位置算出手段において、前記レーダ測位手段が計測した計測位置が示す物標の方向と前記予測手段が予測した予測位置が示す当該物標の方向との差の絶対値の、現在までの平均値が大きいほど、前記予測位置よりの位置となるように、当該物標の位置を算出することにより行えば、前記平均値が小さい場合には、予測位置の精度が高い蓋然性が大きいため、予測位置を考慮した適正な計測位置の補正が可能となる。
【0007】
そして、このようにレーダ測位手段が計測した計測位置の、前記予測手段が予測した予測位置を考慮した適正な補正が行えるので、レーダ測位手段において、1回もしくは少数回計測した物標の位置を平均化した値を計測位置とするようにしても、適正な物標の位置の算出が可能となる。よって、応答性の劣化を抑制しつつ、精度良く物標の位置を算出することが可能となる。
【0008】
なお、前記物標位置算出手段は、前記レーダ測位手段が計測した計測位置と前記予測手段が予測した予測位置とを結ぶ線分上の位置に、物標の位置を算出するようにしても良いし、前記レーダ測位手段が計測した計測位置が示す物標の距離と同じ距離を有し、前記レーダ測位手段が計測した計測位置が示す物標の方向と前記予測手段が予測した予測位置が示す物標の方向との間の方向を有する位置に、物標の位置を算出するようにしてもよい。また、以上のレーダ装置は、自動車に搭載され、自動車周辺の物標の位置を算出する車載のレーダ装置であってよい。
【発明の効果】
【0009】
以上のように、本発明によれば、応答性を劣化を抑制しつつ精度良く物標位置の算出を行うことのできるレーダ装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、自動車に搭載されるレーダシステムへの適用を例にとり説明する。
図1に、本実施形態に係るレーダシステムの構成を示す。
図示するようにレーダシステムは、レーダ測位部1、物標検出部2、物標情報出力装置3、ECU4と含んで構成される。そして、レーダ測位部1は、アンテナ11と送受信機12とレーダ計測信号処理部13とよりなる。また、物標検出部2は、物標追尾部21、物標管理メモリ22、物標位置予測部23、物標位置補正部24とを含んで構成される。
【0011】
ここで、レーダシステムは、当該レーダシステムが搭載された自動車周辺または前方に設定したスキャン範囲内に存在する他車両を物標として検出するものである。
このような構成において、ECU4は、自動車の各状態の監視と制御を行う。レーダ計測信号処理部13は、送受信機12を介してアンテナ11を駆動し、定期的に、スキャン範囲内に存在する物標(他車両等)をスキャンし、スキャンの各回毎に、スキャンによって検出された各物標のレーダシステムに対する相対位置(相対距離、相対方向角)と相対速度を、計測相対位置と計測相対速度として計測し物標検出部2に出力する。ただし、レーダ計測信号処理部13は、複数回のスキャンの各回で計測された各物標のレーダシステムに対する相対位置と相対速度を平均した値を、各回の計測相対位置と計測相対速度として出力してもよい。
【0012】
一方、レーダ計測信号処理部13が行うスキャンの各回毎に、物標検出部2は、レーダ計測信号処理部13から入力する各物標の計測相対位置と計測相対速度に基づいて、スキャン範囲内に存在する各物標の追尾と、スキャン範囲内に存在する各物標の自車に対する相対位置や相対速度の算出とを行い、算出した各物標の相対位置や相対速度等を物標情報出力装置3に出力する。物標情報出力装置3は、物標検出部2から通知された各物標の相対位置を表示したり、物標検出部2から通知された各物標の位置に応じた警報(たとえば、接近警報)を出力したり、物標検出部2から通知された各物標の位置に応じたECU4の制御(たとえば、自動制動)などを行う。
【0013】
ここで、図2に、物標検出部2の物標管理メモリ22に保持する物標管理テーブルを示す。
図示するように、物標管理テーブルは、レーダシステムが追尾している物標である追尾中物標毎に設けたエントリ(図の各行)を有する。そして、各エントリには、追尾中物標の識別子であるラベルが登録される。また、各エントリには、最終回のスキャン(t)から、n回前のスキャン(t-n)までの、各回のスキャンのそれぞれについて設けられたスキャン算出情報が登録される。そして、各スキャン算出情報には、当該回jのスキャンに対して算出された追尾中物標の相対位置P(j)と、当該回のスキャンに対して算出された追尾中物標の相対速度V(j)と、当該回のスキャンに対して後述するように物標位置予測部23が予測した追尾中物標の予測相対位置が示す相対方向角と当該回のスキャンにおいてレーダ計測信号処理部13から入力した物標の計測相対位置が示す相対方向角の差分dθが登録される。
【0014】
さて、物標検出部2における物標の追尾と位置の算出は以下のように行われる。
スキャンの各回毎に、物標位置予測部23は、物標管理テーブルにエントリが登録されている各追尾中物標について、当該エントリに登録されている過去の回のスキャン算出情報に登録されている相対位置P(j)、相対速度V(j)より、今回の追尾中物標の相対位置と相対速度を予測相対位置と予測相対速度として予測する。
【0015】
また、物標追尾部21は、以下の物標追尾処理を行う。
すなわち、物標追尾部21は、物標追尾処理において、レーダ計測信号処理部13から計測相対位置と計測相対速度が入力された各物標について、計測相対位置と近似する予測相対位置が物標位置予測部23によって予測されている追尾中物標を探索し、探索が成功した場合には、この物標は探索した追尾中物標と同一の物標であるとして、物標管理テーブルの探索した追尾中物標のエントリに今回tのスキャン算出情報の相対位置P(t)、相対速度V(t)として、レーダ計測信号処理部13から入力された計測相対位置と計測相対速度を仮登録する。また、物標追尾部21は、物標位置予測部23が予測した予測物標装置位置が示す方向角と、レーダ計測信号処理部13から入力した計測相対位置が示す方向角の差分dθを求め、追尾中物標のエントリの今回tのスキャン算出情報に登録する。
【0016】
一方、探索が失敗した場合には、この物標は新たなに検出されるようになった物標であるとして、物標管理テーブルに新たなエントリを生成し、生成したエントリに一意なラベルを生成して登録すると共に、生成したエントリに今回tのスキャン算出情報の相対位置P(t)、相対速度V(t)として、レーダ計測信号処理部13から入力された計測相対位置と計測相対速度を仮登録する。また、物標追尾部21は、物標位置予測部23が予測した予測物標装置位置が示す方向角と、レーダ計測信号処理部13から入力した計測相対位置が示す方向角の差分dθを求め、追尾中物標のエントリの今回tのスキャン算出情報に登録する。
【0017】
次に、物標位置算出部が行う物標位置補正処理について説明する。
図3に、この物標位置補正処理の手順を示す。
図示するように、この処理では、レーダ測位部1のスキャンが終了し、今回のスキャンについての物標追尾部21の物標追尾処理が終了したならば(ステップ302)、各追尾中物標、すなわち物標管理テーブルの対応するエントリの今回のスキャン算出情報に相対位置P(t)、相対速度V(t)が仮登録されている各物標について(ステップ304、322、324)、以下の処理を行う。
【0018】
すなわち、まず、物標管理テーブルの対応するエントリの今回tのスキャン算出情報に相対位置P(t)として仮登録されている追尾中物標の計測相対位置Poを取得する(ステップ306)。次に、その追尾中物標の今回のスキャン時の位置として物標位置予測部23が予測した予測相対位置Pfを取得する(ステップ308)。ただし、その追尾中物標が今回のスキャンで初めて物標管理テーブルに登録されたものである場合には、予測相対位置Pfとして、計測相対位置Poを用いる。
【0019】
次に、計測相対位置Poが示す追尾中物標までの距離Qを算出する(ステップ310)。また、その追尾中物標が、過去一定期間に追尾された回数Rを取得する(ステップ312)。この回数Rは、物標管理テーブルの、当該追尾物標のラベルが登録されているエントリのスキャン情報のうちから、より後に登録したものより一定数抽出したスキャン算出情報のうちの、相対位置P(j)と相対速度V(j)とが設定されているスキャン算出情報の数として求められる。
【0020】
次に、追尾中物標について求められた過去一定期間に行われたスキャンの各回において物標追尾で求められた物標位置予測部23が予測した予測物標装置位置が示す方向角とレーダ計測信号処理部13から入力した計測相対位置が示す方向角との差分dθの絶対値の平均値Φを算出する(ステップ314)。このΦは、物標管理テーブルの、当該追尾物標のラベルが登録されているエントリのスキャン情報のうちから、より後に登録したものより一定数抽出したスキャン算出情報に登録されている各dθの絶対値の平均値として求まる。
【0021】
そして、今回tの追尾中物標の相対位置P(t)を、ステップ306で取得した計測相対位置Poと、ステップ306で取得した予測相対位置Pfと、ステップ310で取得した距離Qとステップ312で取得した回数Rとステップ314で取得した平均Φとに基づいて算出する(ステップ316)。
【0022】
ここで、相対位置P(t)は、位置または方向に関して測相対位置Poと予測相対位置Pfの間の位置として算出する。また、距離Qが小さいほど計測相対位置Poよりの位置となり、回数Rが多いほど予測相対位置Pfよりの位置となり、平均Φが小さいほど予測相対位置Pfよりの位置となるように算出する。これは、距離Qが小さいほど、レーダ計測信号処理部13で計測された物標の方向角の精度が高く、従って、計測相対位置Poの信頼性が高いと考えられるからである。また、追尾中物標を今までに追尾した回数Rが多いほど、予測相対位置Pfの予測精度は高い水準で推移していると考えられるからである。また、平均Φが小さいほど、計測相対位置Poと予測相対位置Pfの誤差が小さいので、予測相対位置Pfの精度が高いと考えられるからである。
【0023】
より具体的には、相対位置P(t)は、たとえば、
{(aQ + bR)Pf+(cΦ)PO}/(aq + bR + cΦ)
などとして、計測相対位置Poと予測相対位置Pfとを結ぶ線分上の位置として、求めることができる。ここで、a,b,cは、チューニングのための係数である。
【0024】
さて、以上のようにして、今回tの追尾中物標の相対位置P(t)を求めたならば、物標管理テーブルの、追尾中物標に対応するエントリの今回tのスキャン算出情報に仮登録されている相対位置P(t)を、ステップ316で求めた相対位置P(t)に書き換える(ステップ318)。また、このとき、対応するエントリの今回tのスキャン算出情報に仮登録されている相対速度V(t)も、ステップ316で求めた相対位置P(t)と前回t-1のスキャン算出情報に登録されている相対位置P(t-1)間の移動距離より求まる相対速度に書き換えるようにしてもよい。
【0025】
そして、追尾中物標のエントリに今回tのスキャン算出情報に登録した相対位置P(t)と相対速度V(t)を、物標情報出力装置3に出力する(ステップ320)。
以上、物標位置補正部24が行う物標位置補正処理について説明した。
ここで、図4に、このような物標位置補正処理による追尾中物標の相対位置P(t)の算出例を示す。
いま、前々回の物標位置補正処理によって相対位置Pt-2が、前回の物標位置補正処理によって相対位置Pt-1が算出されているものとする。この場合、この相対位置Pt-2、相対位置Pt-1に基づいて、物標位置予測部23によって今回の予測相対位置Pftが予測される。このような状態において、今回のレーダ計測信号処理部13によって今回の計測相対位置として図中のPOtが算出されると、物標位置補正処理によって、今回の相対位置Ptとしては、計測相対位置POtと予測相対位置Pftとを結ぶ線分上の位置が算出される。ここで、この今回の相対位置Ptと計測相対位置POtとの距離をD1とし、今回の相対位置Ptと予測相対位置Pftとの距離D2とすると、前述のように、計測相対位置POtまでの距離Qが小さいほどD1が小さくD2が大きくなるように、すなわち、計測相対位置POtよりの位置となるように相対位置Ptは算出される。また、この物標の今までの追尾回数Rが多いほど、D1が大きくD2が小さくなるように、すなわち、予測相対位置Pftよりの位置となるように相対位置Ptは算出される。また、図中に示した計測相対位置POtの方向角と予測相対位置Pftの方向角の差dθの絶対値の今までの平均値が小さいほど、D1が大きくD2が小さくなるように、すなわち、予測相対位置Pftよりの位置となるように相対位置Ptは算出される。
【0026】
ただし、このような物標位置補正処理による追尾中物標の相対位置P(t)の算出は、計測相対位置Potの示す物標の方向角に比べ計測相対位置Potの示す物標の距離は信頼性が高いことを考慮して、次のように行うようにしてもよい。
すなわち、追尾中物標の相対位置P(t)までの距離は、計測相対位置POtまでの距離と同じ距離とする。そして、相対位置P(t)の方向角を、計測相対位置POtの方向角と、予測相対位置Pftの方向角の間の方向角とする。また、この相対位置P(t)の方向角と計測相対位置POtの方向角との差分ψ1と、相対位置P(t)の方向角と予測相対位置Pftの方向角との差分ψ2は、計測相対位置Potまでの距離Qが小さいほどψ1が小さくψ2が大きくなるように、すなわち、計測相対位置POtよりの方向となるように相対位置Ptを算出する。また、この物標の今までの追尾回数Rが多いほど、ψ1が大きくψ2が小さくなるように、すなわち、予測相対位置Pftよりの方向となるように相対位置Ptを算出する。また、図中に示した計測相対位置Potの方向角と予測相対位置Pftの方向角の差dθの絶対値の今までの平均値φが小さいほど、ψ1が大きくψ2が小さくなるように、すなわち、予測相対位置Pftよりの方向となるように相対位置Ptを算出する。
【0027】
なお、物標位置補正処理による追尾中物標の相対位置P(t)の算出は、以上示したアルゴリズム以外のアルゴリズムによって行うようにしてもよい。ただし、計測相対位置POtまでの距離Qが小さいほど、計測相対位置POtよりの位置または方向となるように相対位置Ptは算出する。また、この物標の今までの追尾回数Rが多いほど、予測相対位置Pftよりの位置または方向となるように相対位置Ptは算出する。また、計測相対位置POtの方向角と予測相対位置Pftの方向角の差dθの絶対値の今までの平均値φが小さいほど、予測相対位置Pftよりの位置または方向となるように相対位置Ptは算出する。
【0028】
以上、本発明の実施形態について説明した。
以上のように本実施形態によれば、レーダ計測信号処理部13が計測した計測相対位置を、物標位置予測部23が予測した予測相対位置を考慮して、物標位置補正部24で補正した位置を物標の位置として算出する。
そして、このような補正を、計測相対位置が示す物標までの距離や、物標追尾手段が物標を追尾した回数や、計測相対位置と予測相対位置の方向角との差の絶対値の現在までの平均値を考慮して、計測相対位置と予測相対位置の信頼性の比を定め、定めた信頼性の比に応じた計測相対位置と予測相対位置の間の位置に、物標の位置を算出することにより行う。したがって、本実施形態によれば、計測相対位置の、予測相対位置を考慮した適正な計測位置の補正が可能となる。そして、このように適正な補正が行えるので、レーダ計測信号処理部13において、1回もしくは少数回計測した物標の相対位置を平均化した値を計測相対位置とするようにしても、適正な物標の位置の算出が可能となる。よって、応答性の劣化を抑制しつつ、精度良く物標の位置を算出することが可能となる。
なお、本実施形態は、自動車に搭載する車載のレーダシステム以外の任意のレーダシステムに同様に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施形態に係るレーダシステムの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態に係る物標管理メモリに格納する物標管理テーブルを示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係る物標位置補正部が行う物標位置補正処理を示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施形態に係る物標位置補正処理の処理例を示す図である。
【符号の説明】
【0030】
1…レーダ測位部、2…物標検出部、3…物標情報出力装置、4…ECU、11…アンテナ、12…送受信機、13…レーダ計測信号処理部、21…物標追尾部、22…物標管理メモリ、23…物標位置予測部、24…物標位置補正部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーダを用いて物標の位置を計測位置として計測するレーダ測位手段と、
前記レーダ測位手段が前記計測位置を計測した物標を追尾する追尾手段と、
前記追尾手段が追尾している物標の位置を、当該物標の過去の位置に基づいて予測位置として予測する予測手段と、
前記レーダ測位手段が計測した計測位置と前記予測手段が予測した予測位置との間の位置に、物標の位置を算出する物標位置算出手段とを有し、
前記物標位置算出手段は、前記レーダ測位手段が計測した計測位置が示す物標までの距離が小さいほど、当該計測位置よりの位置となるように、当該物標の位置を算出することを特徴とするレーダ装置。
【請求項2】
レーダを用いて物標の位置を計測位置として計測するレーダ測位手段と、
前記レーダ測位手段が前記計測位置を計測した物標を追尾する追尾手段と、
前記追尾手段が追尾している物標の位置を、当該物標の過去の位置に基づいて予測位置として予測する予測手段と、
前記レーダ測位手段が計測した計測位置と前記予測手段が予測した予測位置との間の位置に、物標の位置を算出する物標位置算出手段とを有し、
前記物標位置算出手段は、前記追尾手段が物標を追尾した回数が大きいほど、前記予測位置よりの位置となるように、当該物標の位置を算出することを特徴とするレーダ装置。
【請求項3】
レーダを用いて物標の位置を計測位置として計測するレーダ測位手段と、
前記レーダ測位手段が前記計測位置を計測した物標を追尾する追尾手段と、
前記追尾手段が追尾している物標の位置を、当該物標の過去の位置に基づいて予測位置として予測する予測手段と、
前記レーダ測位手段が計測した計測位置と前記予測手段が予測した予測位置との間の位置に、物標の位置を算出する物標位置算出手段とを有し、
前記物標位置算出手段は、前記レーダ測位手段が計測した計測位置が示す物標の方向と前記予測手段が予測した予測位置が示す当該物標の方向との差の絶対値の、現在までの平均値が大きいほど、前記予測位置よりの位置となるように、当該物標の位置を算出することを特徴とするレーダ装置。
【請求項4】
請求項1、2または3記載のレーダ装置であって、
前記物標位置算出手段は、前記レーダ測位手段が計測した計測位置と前記予測手段が予測した予測位置とを結ぶ線分上の位置に、物標の位置を算出することを特徴とするレーダ装置。
【請求項5】
請求項1、2または3記載のレーダ装置であって、
前記物標位置算出手段は、前記レーダ測位手段が計測した計測位置が示す物標の距離と同じ距離を有し、前記レーダ測位手段が計測した計測位置が示す物標の方向と前記予測手段が予測した予測位置が示す物標の方向との間の方向を有する位置に、物標の位置を算出することを特徴とするレーダ装置。
【請求項6】
請求項1、2、3、4または5記載のレーダ装置であって、
当該レーダ装置は、自動車に搭載され、自動車周辺の物標の位置を算出する車載のレーダ装置であることを特徴とするレーダ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−349603(P2006−349603A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−179030(P2005−179030)
【出願日】平成17年6月20日(2005.6.20)
【出願人】(000101732)アルパイン株式会社 (2,424)
【Fターム(参考)】