説明

レーダ装置

【課題】複数のアンテナ素子を用いて検知範囲を広くとりつつ、受信感度の劣化を防ぐことが可能なレーダ装置を実現する。
【解決手段】給電部A、B及び給電部C、Dをそれぞれ有するアンテナ素子105、106と、信号の送信を行う送信部101と、信号の受信を行う受信部102と、アンテナ素子105、106の各給電部A又はCと送信部101とを選択的に接続するスイッチ素子103と、アンテナ素子105、106の各給電部B又はDと受信部102とを選択的に接続するスイッチ素子104と、スイッチ素子103及び104の接続を制御する制御部110とを備え、アンテナ素子105、106は互いに異なる指向性を有する、レーダ装置100。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のアンテナ素子を用いて選択的に切替励振することで、検知方向を切り替えることができるレーダ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両の周囲を監視する車載用レーダシステムにおいて、車両の全方位の障害物を検知するために、複数のレーダ装置を車両の前方や後方に設置する必要があり、システム構成が複雑になるため、コストが高くなるという課題がある。このような課題を改善するために、これまでアンテナの指向性を制御し、1つのレーダ装置で検知できる範囲を広くすることで、車両に搭載するレーダ装置数を削減する検討がなされている。
【0003】
これまで、この種のレーダシステムとして、フェーズドアレーアンテナを用いた車載用レーダシステムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この車載用レーダシステムに用いられるフェーズドアレーアンテナとは、複数のアンテナ素子及び位相器を用いて各アンテナ素子の位相量を制御することで指向性を切り替えるもので、検知範囲を広くすることができるとともに、障害物の方向を精度良く検知することができる。しかしながら、特許文献1記載の車載用レーダシステムは、アンテナのビーム方向を切り替えるために複数の位相器が必要となり、構造や制御が複雑になるという問題がある。
【0004】
そこで、位相器を用いることなくアンテナのビーム方向を切り替えることを可能としたレーダシステムとして、複数のアンテナ素子(例えば、パッチアンテナ)をそれぞれの指向方向が異なるように配置した車載用レーダ装置が提案されている(例えば、特許文献2参照)。この車載用レーダシステムは、使用するアンテナ素子数を制御することで、アンテナのビーム幅や検知方向を可変させることができるため、検知範囲を広くすることができるとともに、検知距離にかかわらず精度良く障害物を検知することができる。
【特許文献1】特開平2−287180号公報
【特許文献2】特開平8−334557号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献2記載の車載用レーダ装置は、パッチアンテナ等を用いた複数のアンテナ素子と送受信部との接続を、各アンテナ素子に対応した複数のスイッチのオンオフにより行っており、各アンテナ素子と送受信部との間の接続にはサーキュレータを用いているが、サーキュレータは損失分が増大し、受信感度が劣化するという問題がある。
【0006】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、複数のアンテナ素子を用いて検知範囲を広くとりつつ、受信感度の劣化を防ぐことが可能なレーダ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、第1の本発明は、
第1給電部及び第2給電部を有するアンテナ素子と、
信号の送信を行う送信部と、
信号の受信を行う受信部と、
複数の前記アンテナ素子の各前記第1給電部と前記送信部とを選択的に接続する第1アンテナ切替部と、
前記複数のアンテナ素子の各前記第2給電部と前記受信部とを選択的に接続する第2アンテナ切替部と、
前記第1アンテナ切替部及び前記第2アンテナ切替部の接続を制御する制御部とを備え、
前記複数のアンテナ素子の全部又は一部は互いに異なる指向性を有する、レーダ装置である。
【0008】
又、第2の本発明は、前記制御部は、いずれか一つの前記アンテナ素子の前記第1給電部が前記送信部に接続されると同時にいずれか他の一つの前記アンテナ素子の前記第2給電部が前記受信部に接続されるよう、前記第1アンテナ切替部及び前記第2アンテナ切替部の制御を行う、第1の本発明のレーダ装置である。
【0009】
又、第3の本発明は、
前記制御部は、
前記複数の前記アンテナ素子の前記第1給電部と前記送信部とを順次接続し、
前記第1給電部と前記送信部との順次接続に追従して前記複数の前記アンテナ素子の前記第2給電部と前記受信部を順次接続し、
前記第2給電部と前記受信部とが接続される前記アンテナ素子が、前記第1給電部と前記送信部との接続が完了した直後の前記アンテナ素子となるよう、
前記第1アンテナ切替部及び前記第2アンテナ切替部の制御を行う、第2の本発明のレーダ装置である。
【0010】
又、第4の本発明は、
前記制御部は、すべての前記アンテナ素子の前記第1給電部が前記送信部に順次接続された後、すべての前記アンテナ素子の前記第2給電部が前記受信部に順次接続されるよう、前記第1アンテナ切替部及び前記第2アンテナ切替部の制御を行う、第1の本発明のレーダ装置である。
【0011】
又、第5の本発明は、
前記アンテナ素子のそれぞれは、前記第1給電部又は前記第2給電部のいずれから給電されても、同一の指向性を有する、第1の本発明のレーダ装置である。
【0012】
又、第6の本発明は、
前記複数のアンテナ素子のそれぞれは、同一面上に配置される平面形状のアンテナであり、
前記アンテナ素子の形成された面と平行に所定の間隔を隔てて設けられた反射板を備えた、第1の本発明のレーダ装置である。
【0013】
又、第7の本発明は、
前記送信部及び前記受信部はパルス信号を送受信し、
前記制御部は、前記送信部の前記パルス信号の送信のタイミングで前記第1アンテナ切替部又は第2アンテナ切替部の制御を行う、第1の本発明のレーダ装置である。
【0014】
又、第8の本発明は、
前記複数のアンテナ素子は、第1のアンテナ素子及び第2のアンテナ素子の2つのアンテナ素子である、第1の本発明のレーダ装置である。
【0015】
又、第9の本発明は、
前記アンテナ素子は、
前記送信部及び前記受信部の使用周波数の1/4波長から3/8波長の長さを有する第1から第4の線状素子がひし形形状に配置され、かつ隣接する前記第1線状素子と前記第2線状素子が接続され、隣接する前記第3線状素子と前記第4線状素子が接続されたひし形アンテナ部と、
対向する一対の前記ひし形アンテナ部の、一方の前記ひし形アンテナ部の前記第2線状素子と他方の前記ひし形アンテナ部の前記第1線状素子とを接続し、前記一方の前記ひし形アンテナ部の前記第4線状素子と前記他方の前記ひし形アンテナ部の前記第3線状素子とを接続することにより、複数の前記ひし形アンテナ部を連結する、所定の長さを有する線状連結素子と、
前記連結された複数のひし形アンテナ部の一方の端部の前記ひし形アンテナ部の前記第1線状素子と前記第3線状素子との間、及び前記連結された複数のひし形アンテナ部の他方の端部の前記ひし形アンテナ部の前記第2線状素子と前記第4線状素子との間を、それぞれ接続する、全体が所定の長さを有する折り返し形状の線状迂回素子とを備え、
前記第1給電部及び第2給電部は、前記複数のひし形アンテナ部のいずれか2つのひし形アンテナ部の前記第1線状素子と前記第2線状素子の接続部にそれぞれ設けられている、
第6の本発明のレーダ装置である。
【0016】
又、第10の本発明は、
前記線状迂回素子の前記所定の長さ、及び前記アンテナ素子と前記反射板までの所定の間隔は、前記アンテナ素子の指向性に応じて、複数の前記アンテナ素子毎に異なっている、第9の本発明のレーダ装置である。
【0017】
又、第11の本発明は、
前記アンテナ素子は、
所定の誘電率を有する誘電体基板と、
前記誘電体基板上に形成された導体層と、
前記導体層に形成された、
前記送信部及び前記受信部の使用周波数の1/4波長から3/8波長の長さを有する第1から第4の線状スロットがひし形形状に配置され、かつ隣接する前記第1線状スロットと前記第2線状スロットが接続され、隣接する前記第3線状スロットと前記第4線状スロットが接続されたひし形アンテナスロット、
対向する一対の前記ひし形アンテナスロットの、一方の前記ひし形アンテナスロットの前記第2線状スロットと他方の前記ひし形アンテナスロットの前記第1線状スロットとを接続し、前記一方の前記ひし形アンテナスロットの前記第4線状スロットと前記他方の前記ひし形アンテナスロットの前記第3線状スロットとを接続することにより、複数の前記ひし形アンテナスロットを連結する、所定の長さを有する線状連結スロット、
前記連結された複数のひし形アンテナスロットの一方の端部の前記ひし形アンテナスロットの前記第1線状スロットと前記第3線状スロットとの間、及び前記連結された複数のひし形アンテナスロットの他方の端部の前記ひし形アンテナスロットの前記第2線状スロットと前記第4線状スロットとの間を、それぞれ接続する、全体が所定の長さを有する折り返し形状の線状迂回スロット、を有するアレイアンテナスロットと、
前記アレイアンテナスロットの、少なくとも一つの前記ひし形アンテナスロットの前記第1から第4線状スロットをそれぞれ分離するように設けられた接続導体とを備え、
前記第1給電部及び第2給電部は、前記複数のひし形アンテナスロットのいずれか2つのひし形アンテナスロットの前記第1線状スロットと前記第2線状スロットの接続部にそれぞれ設けられている、第6の本発明のレーダ装置である。
【0018】
又、第12の本発明は、
前記線状迂回スロットの前記所定の長さ、及び前記アンテナ素子と前記反射板までの所定の間隔は、前記アンテナ素子の指向性に応じて、複数の前記アンテナ素子毎に異なっている、第11の本発明のレーダ装置である。
【0019】
又、第13の本発明は、
前記誘電体基板の前記導体層が形成された面の反対側の面に設けられた、前記第1給電部及び前記第2給電部にそれぞれ配置されたマイクロストリップラインを備えた、第11の本発明のレーダ装置である。
【0020】
又、第14の本発明は、
前記反射板と前記誘電体基板とを接続するように設けられた導体板とを備えた、第11の本発明のレーダ装置である。
【0021】
又、第15の本発明は、
前記使用周波数の半波長以下の長さを有し、複数の前記アンテナ素子の同一面上に所定の間隔を隔てて形成された少なくとも1つの導波素子を備えた、第11の本発明のレーダ装置である。
【0022】
又、第16の本発明は、
前記使用周波数の半波長以下の長さを有し、複数の前記アンテナ素子の同一面上に所定の間隔を隔てて形成された少なくとも1つの反射素子を備えた、第11にの本発明のレーダ装置である。
【0023】
以上のような本発明によれば、例えば、2つのアンテナ素子を切り替える実施例としたことで、検知範囲を切り替えることができる平面構造でかつ生産性に優れたレーダ装置を実現することができる。又、それぞれのアンテナ素子に2つの給電点を設け、送受信回路を共用することにより、共用部品が不要となり受信感度を向上させることができる。
【0024】
又、この構成によれば、送受信回路に接続する給電部が異なっても、1つのアンテナ素子で検知できる検知範囲のロスが少なく、広い範囲で受信感度が良好なレーダ装置を実現することができる。
【0025】
又、近距離に存在する障害物を検知可能なレーダ装置を実現することができる。
【0026】
又、平面構造で、検知範囲を切り替えることができ、受信感度が良好なレーダ装置を実現することができる。
【0027】
又、平面構造で、検知範囲を切り替えることができ、受信感度が良好なレーダ装置を実現することができる。
【0028】
又、マイクロストリップラインの長さを調節することでインピーダンス整合をとることができ、給電が容易になるとともに、レーダ装置の生産性の向上を図ることができる。
【0029】
又、F/B比(メインローブとバックローブの比)が良好な指向性を有するレーダ装置を実現することができる。
【0030】
又、高利得で、かつF/B比が良好な指向性を有するレーダ装置を実現することができる。
【0031】
又、この構成によれば、高利得で、かつF/B比が良好な指向性を有するレーダ装置を実現することができる。
【発明の効果】
【0032】
以上のような本発明によれば、複数のアンテナ素子を用いて検知範囲を広くとりつつ、受信感度の劣化を防ぐことが可能なレーダ装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明の実施の形態に係るレーダ装置について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一の構成又は機能を有する構成要素及び相当部分には、同一の符号を付してその説明は省略する。以下、動作周波数を26GHzとして説明する。
【0034】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1に係るレーダ装置を図1から図5を用いて説明する。
【0035】
図1(a)(b)は、ビーム切替が可能なレーダ装置100を示す図である。図1(a)に示すように、レーダ装置100は、送信部101、受信部102、スイッチ素子103及び104、アンテナ素子105及び106、及び上記の送信部101、受信部102,スイッチ素子103及び104、アンテナ素子105及び106が設けられた基板120、及び反射板130とから構成される。反射板130は金属材料で形成されており、図1(b)に示すように、図1(a)に示した各部を配置した基板120から−Z方向にアンテナ素子105及び106が配置された平面と平行に1/4波長から1/2波長隔てて配置されている。
【0036】
まず、図1のように構成されたレーダ装置100の詳細な構成及び送受信の基本的な動作について説明する。送信部101は、パルス発生器107、発振器108、方向性結合器109から構成されている。パルス発生器107では、例えば、1nsのパルス信号を発生する。発生されたパルス信号により発振器108は、該パルス信号により駆動され、パルス信号を26GHzで発振させる。方向性結合器109は、26GHzのパルス信号をスイッチ素子103へ出力するとともに、受信部102のミキサ111に分配する。スイッチ素子103は、例えば、PINダイオード又はFETで構成されるSPDTスイッチである。スイッチ素子103は、スイッチ制御回路110により送信部101から出力されたパルス信号をアンテナ素子105又は106のいずれか一方に出力するように切替動作する。送信部101と接続されたアンテナ素子105又は106からパルス信号が送信される。
【0037】
受信部102に接続されたアンテナ素子105又は106は、受信アンテナとして動作し、障害物で反射したパルス信号を受信する。受信部102のミキサ111は、スイッチ素子104を介して入力された受信パルス信号と送信部101から分配されたパルス信号を混合し、ビート信号として信号処理部112に出力する。スイッチ素子104は、スイッチ素子103と同様にPINダイオード又はFETで構成されるSPDTスイッチである。信号処理部112は、入力されたビート信号を演算処理し、パルス信号が送信されてから受信されるまでの時間差から、障害物までの距離を算出する。
【0038】
さらに、スイッチ素子103及び104は、送信部101及び受信部102へのアンテナ素子105及び106の接続を選択的に切り替える。レーダ装置100の検知範囲は、アンテナ素子の指向性に応じた範囲となるので、異なる指向性のアンテナ素子を用いることで、自由に検知範囲や検知方向を設定することができる。
【0039】
次に、アンテナ素子105の構成を図2を用いて説明する。アンテナ素子106についてはアンテナ素子105と同様な構成であるため、説明は省略する。図2において、線状素子201a〜201d、202a〜202d、203a〜203dは、長さL1が約1/3波長、素子幅が0.2mmの直線形状の導体である。これらの線状素子は、図2に示すように、線状素子201a〜201d、線状素子202a〜202d及び線状素子203a〜203dの3組の各組において、長辺同士を等間隔で対向配置することにより正方形状をつくるよう配置される。なお、ここでは正方形状として構成したが、各組の線状素子の配置はひし形形状としてもよい。又、線状素子自体を円弧状の導体として構成することにより、各組を円形形状と構成してもよい。
【0040】
又、線状素子201cと201dの間、及び線状素子203cと203dの間は接続せずに、後述する給電部A及びBを接続できるように解放する。
【0041】
線状連結素子204a、204b又は205a、205bは、長さL2が約2/5波長、素子幅が0.2mmの直線形状の導体である。線状連結素子204aは、線状素子201bと202aを連結しており、線状連結素子204bは、線状素子201dと202cを連結している。又、線状連結素子205a及び205bは、線状素子202bと203a及び線状素子202dと203cをそれぞれ連結している。
【0042】
線状迂回素子206及び207は、長さL3が約1/5波長(全長が約2/5波長)、素子幅が0.2mmの折り返し形状の導体である。線状迂回素子206は、線状素子201aと201cとに接続され、線状迂回素子207は、線状素子203bと203dとの間に接続される。
【0043】
以上のように構成することにより、線状素子201a〜201d、202a〜202d、203a〜203d、線状連結素子204a、204b、205a、205b、線状迂回素子206、207は、ひし形形状のアンテナ素子(ひし形アンテナ部)を連結し、アレー構成としたアンテナ素子105を構成する。
【0044】
なお、上記の各構成において、アンテナ素子105及び106は本発明のアンテナ素子に相当する。又、送信部101は本発明の送信部に、受信部102は本発明の受信部にそれぞれ相当する。又、スイッチ素子103は本発明の第1アンテナ切替部に、スイッチ素子104は本発明の第2アンテナ切替部にそれぞれ相当する。又、スイッチ制御回路110は本発明の制御部に相当する。
【0045】
又、線状素子201a〜201d、202a〜202d、203a〜203dはそれぞれ本発明の第1〜第4線状素子に相当し、本発明のひし形アンテナ部を構成する。又、線状連結素子204a、204b、205a、205bは本発明の線状連結素子に相当し、線状迂回素子206、207は本発明の線状迂回素子に相当する。
【0046】
又、給電部A及び給電部Cは本発明の第1給電部に相当し、又、給電部B及び給電部Dは本発明の第2給電部に相当する。
【0047】
次に、給電部A及びBからアンテナ素子105を励振する動作について、図1(a)及び図2を参照して説明する。
【0048】
給電部Aは線状素子203cと203dとに接続され、平衡−不平衡変換器113aを介してスイッチ素子103に接続され、給電部Bは線状素子201cと201dとに接続され、スイッチ素子104に平衡−不平衡変換器113bを介して接続される。給電部Aからアンテナ素子105を励振する場合、給電部Bは例えば、PINダイオードなどのスイッチング素子を用いることで短絡され、線状素子201cと201dは接続される。
【0049】
このとき、アンテナ素子105は、ループアンテナ素子として動作し、線状素子201aと201b、線状素子201cと201d、線状素子202aと202b、線状素子202cと202d、線状素子203aと203b、線状素子203cと203dのそれぞれの接続部において電流振幅がピーク値をとる。又、線状素子201aと201b、線状素子202aと202b、線状素子203aと203bの接続部における電流位相φ1は同位相となり、線状素子201cと201d、線状素子202cと202d、線状素子203cと203dの接続部における電流位相φ2が同位相となる。電流位相φ1とφ2は線状迂回素子206及び207が挿入されていることにより位相差が生じるため、アンテナ素子105の主ビーム方向は+Z方向から−X方向に傾くことになる。このとき、図1(b)に示すようにアンテナ素子105面に対して−Z方向側に所定の間隔を隔てて反射板130が配置されているため、主ビームは+Z側のみに放射するよう形成される。
【0050】
又、給電部Bからアンテナ素子105を励振する場合は、上述の給電部Aから励振する場合と同様に、アンテナ素子105の主ビーム方向は+Z方向から−X方向に傾くことになる。
【0051】
一方で、アンテナ素子106を給電部C及びDから励振する場合は、いずれの場合もアンテナ素子106の主ビーム方向は+Z方向から+X方向に傾くことになる。
【0052】
つまり、アンテナ素子105および106は、2つの給電部のいずれから励振しても主ビーム方向は、同じとなるため、図1(a)のように、アンテナ素子105と106をそれぞれの給電部が対向するように配置すれば、それぞれのアンテナ素子の主ビーム方向は、異なる方向(図1の+X方向と−X方向)に傾くことになる。
【0053】
以上のように構成されたレーダ装置100のビーム切替動作について、図3のタイミングチャートを用いてビーム切替動作について説明する。まず、図3において時間T1からT3までの一周期でのレーダ動作について説明する。
【0054】
送信部101のパルス発生器107は、時間T1から、例えば、パルス幅Tp=0.5ns〜1nsのパルス信号を周期Tt=100ns〜10μsの間隔で発生する。ここでの数値は一例であるが、パルス幅Tpを短くすることにより、障害物が複数存在する場合の分解能が向上し、高精度な識別が可能になる。又、周期Ttを短くすることにより、システム更新周期の間に、多くの受信データを蓄積することができるため、信号処理等により受信感度の向上が期待できる。パルス幅Tpと周期Ttは、システムの要求仕様に応じて選択すればよい。
【0055】
このとき、スイッチ素子103は、スイッチ制御回路110により制御され、制御電圧が正(+)のときはアンテナ素子105の給電部Aに接続され、制御電圧が負(−)のときはアンテナ素子106の給電部Cに接続されるように切替動作する。
【0056】
スイッチ制御回路110の出力は、パルス発生器107からパルス幅Tpのパルス信号が送信された直後、すなわち時間T2において、正(+)から負(−)へと制御される。
【0057】
図3に示すように、パルス信号が発生する時間T1からT2の間においては制御電圧が正(+)であることから、送信部101から出力された26GHzのパルス信号はアンテナ素子105の給電部Aへ出力され、アンテナ素子105が励振される。なお、ここでは、パルス発生器107からスイッチ素子103までの遅延時間については説明簡略化のため無視している。
【0058】
一方、スイッチ素子104もスイッチ素子103と同様に、スイッチ制御回路110により制御され、制御電圧が負(−)のときはアンテナ素子105の給電部Bに接続され、制御電圧が正(+)のときはアンテナ素子106の給電部Dに接続されるように切替動作する。このため、パルス信号が発生する時間T1からT2の間においては制御電圧が正(+)であることから、アンテナ素子106の給電部Dに接続されている。すなわち、アンテナ素子106は、受信部102と接続される。
【0059】
ここで、スイッチ素子104のアンテナ素子105の給電部B側の端子を、例えば短絡とし、給電部Bまでの長さを1/2波長の整数倍に設定することで、給電部Bを短絡した状態と等価とすることができる。この結果、アンテナ素子105は、スイッチ素子104が接続されている場合においてもスイッチ素子104の影響を受けずに前述したように主ビーム方向を+Z方向から−X方向に傾けることができるようになる。
【0060】
上述のように、アンテナ素子105からパルス信号が送信されたと同時に、つまり時間T2になると同時に、スイッチ制御回路110の制御電圧は負(−)となる。これにより、スイッチ素子103はアンテナ素子106の給電部Cに接続され、スイッチ素子104はアンテナ素子105の給電部Bに接続される。すなわち、アンテナ素子105は、受信部102と接続され、アンテナ素子106は、送信部101と接続される。
【0061】
このようにアンテナ素子105からパルス信号が送信された直後に、アンテナ素子105をスイッチ素子104を介してミキサ111に接続することにより、近距離の障害物から反射する反射波を受信できるようになり、近距離検知が可能となる。このとき、アンテナ素子105からパルス信号を送信するときのスイッチ素子103のように、スイッチ素子103の給電部A側の端子を短絡とし、給電部Aまでの長さを1/2波長の整数倍に設定すれば、スイッチ素子103の影響を低減することができる。
【0062】
以上のように、アンテナ素子105が、時間T1からT2までの期間は送信部101に接続され、時間T2以降の期間は受信部102に接続されることにより、送受信動作を時分割で行っていることになる。
【0063】
図3に示す時間T3以降に関しても、アンテナ素子105と106、スイッチ素子103と104は、上記の動作と同様にスイッチ制御回路110により制御される。つまり、スイッチ素子103と104は、制御電圧が正(+)のときはアンテナ素子105の給電部Aとアンテナ素子106の給電部Dに接続され、制御電圧が負(−)のときはアンテナ素子106の給電部Cとアンテナ素子105の給電部Bに接続されるように切替動作する。
【0064】
すなわち、アンテナ素子105が送信部101に接続されているときはアンテナ素子106が受信部102に接続され、アンテナ素子106が送信部101に接続されているときはアンテナ素子105が受信部102に接続されるように切り替えられる。
【0065】
図3の場合、アンテナ素子106は、レーダ装置100の動作開始時である時間T1からT2までの間は受信部102に接続されて動作するためレーダとして機能しないが、時間T2からT4までの間はスイッチ素子103によって送信部101と給電部Cとが接続され、かつ時間T3からT4までの間にパルス発生器107からパルス信号の入力を受けるため、周期Ttの時間差をおいてアンテナ素子105と同様に、時分割で送受信動作を開始する。
【0066】
したがって、アンテナ素子105と106がそれぞれ指向性が異なるように配置されていれば、各アンテナのビーム方向が交互に切替わる送受信動作が行われ、装置全体として検知範囲を広くとることが実現できている。
【0067】
以上のように、本実施の形態1のレーダ装置100によれば、互いに指向性が異なるアンテナ素子105及び106のそれぞれについて、送信用と受信用とで独立した給電部を設けた構成とし、パルス発生器107のパルス発生タイミングとスイッチ素子103及び104の切替タイミングを制御することにより、アンテナ素子105及びアンテナ素子106のそれぞれについて、送信と受信のタイミングがそれぞれ交互に入れ替わるように時分割した送受信動作を行うようにした。送信用と受信用の独立した給電部を設けたことにより送受信間のアイソレーションを確保することができるため、サーキュレータなどの共用器を用いずにアンテナ素子105及びアンテナ素子106をそれぞれ送受共用アンテナとして用いることができる。
【0068】
これにより、従来必要であったサーキュレータでの損失を低減できることになり、検知範囲を広くとりつつ、受信感度を向上することができる。
【0069】
ここで、図3のタイミングチャートに応じて、ビーム放射方向がどのように変化するかを、図4を用いて説明する。図4は、車両前方にレーダ装置100を搭載した車両401を真上から見た図であり、アンテナビームは前述のタイミングチャートに応じて放射されるものとする。なお、図4中の座標軸は、図1(b)のレーダ装置100の座標軸と対応しており、アンテナビームはX軸方向に放射することとする。
【0070】
まず、時間T1からT2までのパルス発生タイミングにおいて、レーダ装置100は、給電部Aを介して送信部101に接続されたアンテナ素子105を介してパルス信号の送信を行うため、−X方向に傾いたビーム402が放射される。時間T2からT3までは、スイッチ制御回路110の制御電圧が負(−)になり、アンテナ素子105は給電部Bを介して受信部102に接続され、先に送信したパルス信号の反射信号を受信する。
【0071】
同様に、時間T3からT4までのパルス発生タイミングにおいて、レーダ装置100は、給電部Cを介して送信部101に接続されたアンテナ素子106を介してパルス信号の送信を行うため、+X方向に傾いたビーム403が放射される。時間T4以降、次のパルス発生タイミングまでは、スイッチ制御回路110の制御電圧が負(−)になり、アンテナ素子106は給電部Dを介して受信部102に接続され、先に送信したパルス信号の反射信号を受信する。
【0072】
このように、パルス発生タイミングに応じて、レーダ装置100のビーム方向を切替ることにより、検知方向を切替えて、広い検知範囲を得ることができる。
【0073】
次に、アンテナ素子105及び106の指向性に関して詳しく説明する。図5は、アンテナ素子105を給電部Aから励振した場合の指向性及びアンテナ素子106を給電部Cから励振した場合の指向性を示す図であり、図5(a)は垂直(XZ)面の指向性、図5(b)は仰角θが70度における円錐面の指向性を示している。図5において、指向性501及び503は、アンテナ素子105を給電部Aから励振した場合の水平偏波Eφ成分の指向性を示しており、主ビームが−X方向へ向いていることが確認できる。このとき、主ビームの指向性利得は13.2dBiである。
【0074】
又、指向性502及び504は、アンテナ素子106を給電部Cから励振した場合の水平偏波Eφ成分の指向性を示しており、主ビームが+X方向へ向いていることが確認できる。
【0075】
このように、アンテナ素子105及び106を切替励振することにより主ビーム方向が2方向に切り替えられ、検知方向を切り替えることができる。
【0076】
図6は、アンテナ素子105を給電部Bから励振した場合の指向性及びアンテナ素子106を給電部Dから励振した場合の指向性を示す図であり、図6(a)は垂直(XZ)面の指向性、図6(b)は仰角θが70度における円錐面の指向性を示している。
【0077】
図6において、指向性601及び603はアンテナ素子105を給電部Bから励振した場合の水平偏波Eφ成分の指向性、指向性602及び604はアンテナ素子106を給電部Dから励振した場合の水平偏波Eφ成分の指向性を示している。
【0078】
このように、上記で説明したレーダ装置100を、例えば、図1における−Y方向を地面側に配置するように自動車のバンパー内に搭載することで、水平方向に主ビームを切り替えることができるため、1つのレーダ装置100で検知範囲を広くとることができる。
【0079】
以上のように、本実施の形態のレーダ装置100によれば、どちらを用いて励振させた場合でも同一の指向性が得られるような2つの給電部を備えたアンテナ素子105及び106を、互いに異なる指向性となるよう配置し、スイッチ素子103及び104の切り替え及びパルス発生のタイミングを調整することで、時分割して送信、受信を行わせることにより、送信部101及び受信部102が1つのアンテナ素子を共用して動作する構成を実現した。
【0080】
このため、これまで送信部及び受信部がアンテナ素子を共用するために必要であったサーキュレータなどの共用器が不要となり、共用器での損失を低減できるため受信感度が向上するとともに、低コストで平面構造のレーダ装置100を実現することができる。
【0081】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2に係るレーダ装置を図7から図9を用いて説明する。
【0082】
本実施の形態2によるレーダ装置は、送信及び受信の制御のための構成は実施の形態1と同様であり、アンテナ素子の構造を異ならせたことを特徴とする。したがって同一又は相当部には、同一符号を付し詳細な説明は省略する。
【0083】
図7(a)(b)(c)は、実施の形態1と同様に、それぞれレーダ装置の構成を示す図である。各図に示すように、本実施の形態のレーダ装置150は、送信部101、受信部102、スイッチ素子103及び104、アンテナ素子701及び702とから構成される。
【0084】
図7(a)において、アンテナ素子701及び702は、導体層704を切削して形成されたスロットアンテナ素子である。実施の形態1のアンテナ素子105及び106と同様に、ひし形形状のスロットアンテナ素子(以下、ひし形スロットアンテナ部と称する)を連結した構成をしており、721a〜721d、722a〜722d及び723a〜723dは直線形状のスロット素子、724a、724b、725a及び725bは直線形状のスロット連結素子、726a、726bは折り返し形状のスロット迂回素子である。
【0085】
スロット素子721a〜721d、722a〜722d及び723a〜723dは実施の形態1のアンテナ素子105の線状素子201a〜201d、202a〜202d、203a〜203dに対応した形状を有し、同様に、スロット連結素子724a、724b、725a及び725bは線状連結素子204a、204b、205a、205bに対応した形状を有し、スロット迂回素子726a、726bは線状迂回素子206及び207に対応した形状を有する。
【0086】
ただし、実施の形態1とは異なり、スロット素子721cと721dとの間、スロット素子723cと723dとの間はスロットを連通させた構成とする。
【0087】
基板703は、例えば、比誘電率εrが3.45で、厚さが0.26mmの誘電体である。導体層704は、基板703の+Z側面に接着された銅箔である。
【0088】
次に、図7(c)に示すように、導体層705には、例えば、マイクロストリップラインで構成された送信部101及び受信部102、スイッチ素子103及び104が、アンテナ素子701と702との間に形成される。又、図7(b)に示すように、反射板706は、アンテナ素子701及び702が配置された面から、例えば0.43波長だけ−Z側に離れた位置に配置される。
【0089】
再び図7(a)を参照して、接続導体707a〜707d、708a〜708dは、導体層704と同一面上に例えば、銅箔により形成され、アンテナ素子701及び702の中央に配置されているひし形スロットアンテナ部の各辺のほぼ中央に、各スロットを分断するようにアンテナ素子701及び702の内部の導体層と外部の導体層を接続している。
【0090】
このように、接続導体707a〜707d、708a〜708dによりスロットを分断することで、スロット上に分布する磁界の振幅と位相を調整し、かつ、スロット迂回素子726a及び726bの挿入により位相差を発生させ、アンテナ素子701の主ビームは+Z方向から−X方向に形成され、アンテナ素子702の主ビームは+Z方向から+X方向に形成されることになる。
【0091】
なお、接続導体707a〜707d、708a〜708dはアンテナ素子701、702の列から見て上下対称となる配置であれば個数に限定されない。図7の場合は真ん中のみであるが、給電部F、Eがそれぞれ設けられたひし形スロットアンテナ部に設けるようにしてもよい。
【0092】
又、接続導体の位置を調整することによって位相差、又は周波数を調整するようにしてもよい。
【0093】
次に、図7(c)を参照して、マイクロストリップライン709〜712は、基板703の−Z側面に銅箔により形成される。マイクロストリップライン709及び710は、アンテナ素子701の頂点の給電部E及びFをそれぞれ通過するようにX方向に沿って形成され、スイッチ素子103及び104にそれぞれ接続される。マイクロストリップライン711及び712は、アンテナ素子702のひし形スロットアンテナ部の給電部G及びHをそれぞれ通過するようにX方向に沿って形成され、スイッチ素子103及び104にそれぞれ接続される。マイクロストリップライン709〜712は、例えば、幅が0.6mmであり、その特性インピーダンスは50Ωに設定される。又、それぞれのマイクロストリップライン709〜712の先端と、スロット素子の頂点の給電部E〜Hとのそれぞれの距離L4は例えば、2mmに設定される。
【0094】
以上のように構成することにより、マイクロストリップライン709及び710はアンテナ素子701と、マイクロストリップライン711及び712はアンテナ素子702と電磁界的に結合されるため、送信部101から出力された送信信号はスイッチ素子103を介してアンテナ素子701又は702に供給され、アンテナ素子701又は702で受信された受信信号はスイッチ素子104を介して受信部102に入力される。このとき、距離L4を適切な長さに設定することで、インピーダンス整合をとることができる。このように、マイクロストリップラインで構成された送信部101又は受信部102からの給電が容易となり、生産性の向上を図ることができる。
【0095】
なお、上記の構成において、スロット素子721a〜721d、722a〜722d及び723a〜723dはそれぞれ本発明の第1〜第4線状スロットに相当し、本発明のひし形アンテナスロットを構成する。又、スロット連結素子724a、724b、725a及び725bは本発明の線状連結スロットに相当し、スロット迂回素子726a、726bは本発明の線状迂回スロットに相当し、これら各スロットは本発明のアレイアンテナスロットを構成する。又、接続導体707a〜707d、708a〜708dは本発明の接続導体に相当し、各スロットが形成された導体層704及び誘電体基板703を含めたアンテナ素子701及び702は本発明のアンテナ素子に相当する。
【0096】
次に、送受信時の動作について説明する。送信部101から出力された送信パルス信号がスイッチ素子103及びマイクロストリップライン709を介してアンテナ素子701から送信される。このとき、スイッチ素子104に接続されているマイクロストリップライン710の影響によりアンテナ素子701の特性が劣化しないように、スイッチ素子104はマイクロストリップライン710に接続しないように動作する。例えば、スイッチ素子104のオフ状態におけるインピーダンスがショートである場合、スイッチ素子104からマイクロストリップライン710までの長さL5を1/4波長の奇数倍とすることで、マイクロストリップライン710の影響を無くすことができる。又、スイッチ素子104のオフ状態におけるインピーダンスがオープンである場合は、長さL5を1/2波長の偶数倍とすればよい。
【0097】
又、スイッチ素子103及び104は、実施の形態1と同様に図3で示したタイミングチャートのようにスイッチ制御回路110により制御され、送信パルス信号の送信直後にスイッチ素子103はマイクロストリップライン709から711に接続するように切り替えられ、またスイッチ素子104はマイクロスストリップライン712から710に接続するように切り替えられる。したがってアンテナ素子701は受信状態となる一方、アンテナ素子702はパルス発生器107のタイミングに応じてパルス信号を送信する。
【0098】
このとき、送信時と同様に、送信側のマイクロストリップラインがアンテナ素子701の特性に影響を与えないように、スイッチ素子103からマイクロストリップライン709までの長さL6は、スイッチ素子103のオフ状態におけるインピーダンスがショートである場合、1/4波長の奇数倍に設定される。
【0099】
上記と同様に、アンテナ素子702での送受信時には、マイクロストリップライン711及び712がアンテナ素子702の特性に影響を与えないように、スイッチ素子104、103からのそれぞれの長さL7及びL8は上記で示したように設定される。
【0100】
次に、上記のように構成されたアンテナ素子701及び702の指向性について説明する。図8は、アンテナ素子701をマイクロストリップライン709により給電部Eから励振した場合の指向性及びアンテナ素子702をマイクロストリップライン711により給電部Gから励振した場合の指向性を示す図であり、図8(a)は垂直(XZ)面の指向性、図8(b)は仰角θが50度における円錐面の指向性を示している。ここで、スイッチ素子104からのマイクロストリップライン710及び712のそれぞれの長さL5及びL7は、1/4波長で、終端はショートに設定されている。
【0101】
図8において、指向性801及び803は、アンテナ素子701を給電部Eから励振した場合の垂直偏波Eθ成分の指向性を示しており、主ビームが−X方向へ向いていることが確認できる。このとき、主ビームの指向性利得は13dBiである。
【0102】
又、指向性802及び804は、アンテナ素子702を給電部Gから励振した場合の垂直偏波Eθ成分の指向性を示しており、主ビームが+X方向へ向いていることが確認できる。
【0103】
このように、アンテナ素子701及び702を切り替て交互に送信、受信を行うことにより主ビーム方向を2方向に切り替えられ、検知範囲を広くとることができる。
【0104】
図9は、アンテナ素子701をマイクロストリップライン710により給電部Fから励振した場合の指向性及びアンテナ素子702をマイクロストリップライン712により給電部Hから励振した場合の指向性を示す図であり、図9(a)は垂直(XZ)面の指向性、図9(b)は仰角θが50度における円錐面の指向性を示している。ここで、マイクロストリップライン709及び711のそれぞれの長さL6及びL8は、1/4波長で、終端はショートに設定されている。
【0105】
図9において、指向性901及び903はアンテナ素子701を給電部Fから励振した場合の垂直偏波Eθ成分の指向性、指向性902及び904はアンテナ素子702を給電部Hから励振した場合の垂直偏波Eθ成分の指向性を示している。
【0106】
以上のように、本実施の形態のレーダ装置150によれば、誘電体基板703の表面にスロット素子を設けることにより構成されたアンテナ素子701及び702を用いて、実施の形態1と同様、スイッチ素子103及び104の切り替え及びパルス発生のタイミングを調整することで、時分割して送信、受信を行わせることにより、送信部101及び受信部102が1つのアンテナ素子を共用して動作する構成を実現し、サーキュレータなどの共用器が不要となり、損失を低減して受信感度が向上するとともに、低コストで平面構造のレーダ装置150を実現することができる。
【0107】
又、本実施の形態のアンテナ素子701及び702は、誘電体基板703の裏面に配置されたマイクロストリップライン709〜712を用いて容易にアンテナ素子を励振することができ、かつマイクロストリップライン長を変化させるだけでインピーダンス整合が可能となる。
【0108】
なお、本実施の形態では、各スロット素子を誘電体基板703上の銅箔パターンによって形成したが、例えば、導体板704に空隙を設けて各スロット素子を形成しても同様の効果が得られる。
【0109】
又、本実施の形態では、接続導体707a〜707d、708a〜708dを各スロット素子内に銅箔パターンで形成し、スロット素子のほぼ中央で分断するようにスロット素子の内側の導体層と外側の導体層を接続するとして説明したが、接続導体707a〜707d、708a〜708dをマイクロストリップライン709〜712と同一平面上に形成し、スルーホールを介して内側の導体層と外側の導体層を接続しても同様の効果が得られる。
【0110】
又、各スロット素子の形状や配置は、実施の形態1と同様に変更してもよく、各ひし形スロットアンテナ部のスロット素子721a〜721d、722a〜722d及び723a〜723dの配置はひし形形状としてもよい。又、スロット素子自体を円弧状のスロットを有する導体として構成することにより、外形が円形の円形スロットアンテナ部を構成してもよい。
【0111】
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3に係るレーダ装置を図10から図12を用いて説明する。ただし、実施の形態1及び2と同一又は相当部には、同一符号を付し詳細な説明は省略する。
【0112】
図10(a)(b)(c)は、実施の形態2の構成に、導体板1001及び1002をさらに追加した構成を有する本実施の形態のレーダ装置160を示す図である。導体板1001は、アンテナ素子701から+X方向側、つまり主ビーム方向の反対側に距離L9隔ててアンテナ素子面に対して垂直に基板703と反射板706の間に配置される。導体板1002は、アンテナ素子から−X方向側に距離L9隔ててアンテナ素子面に対して垂直に基板703と反射板706の間に配置される。ここで、例えば、距離L9は2.2mmに設定される。又、導体板1001及び1002は、マイクロストリップライン709〜712の位置では送受信信号に影響がないように切削されている。
【0113】
以上のように構成することにより、アンテナ素子701から−Z側に放射された電波は、導体板1001によって遮られることで+X方向に伝搬できなくなる。また同様に、アンテナ素子702から−Z側に放射された電波は、導体板1002によって遮られることで−X方向に伝搬できなくなる。このため、アンテナ素子701及び702からはそれぞれ−X方向及び+X方向に主に放射されることになり、F/B比が向上することになる。
【0114】
図11は、図10においてアンテナ素子701をマイクロストリップライン709により給電部Eから励振した場合の指向性及びアンテナ素子702をマイクロストリップライン711により給電部Gから励振した場合の指向性を示す図である。図11(a)は、垂直(XZ)面の指向性、図11(b)は仰角θが50度における円錐面の指向性を示している。
【0115】
図11において、指向性1101及び1103は、アンテナ素子701を給電部Eから励振した場合の垂直偏波Eθ成分の指向性を示しており、主ビームが−X方向へ向いていることが確認できる。このときの主ビームの指向性利得は13.3dBiである。
【0116】
又、指向性1102及び1104は、アンテナ素子702を給電部Gから励振した場合の垂直偏波Eθ成分の指向性を示しており、主ビームが+X方向へ向いていることが確認できる。このように、アンテナ素子701及び702を切替励振することにより主ビーム方向を2方向に切り替えられ、検知範囲を切り替えることができるとともに、図11(b)と図8(b)に示す指向性を比較すると、導体板1001及び1002を挿入することで、バックローブが低減でき、F/B比が向上していることが確認できる。
【0117】
図12は、アンテナ素子701をマイクロストリップライン710により給電部Fから励振した場合の指向性及びアンテナ素子702をマイクロストリップライン712により給電部Hから励振した場合の指向性を示す図であり、図12(a)は垂直(XZ)面の指向性、図12(b)は仰角θが50度における円錐面の指向性を示している。
【0118】
図12において、指向性1201及び1203はアンテナ素子701を給電部Fから励振した場合の垂直偏波Eθ成分の指向性、指向性1202及び1204はアンテナ素子702を給電部Hから励振した場合の垂直偏波Eθ成分の指向性を示しており、図11のときと同様に、図9(b)に比べF/B比が向上していることが確認できる。
【0119】
以上のように、本実施の形態のレーダ装置160によれば、導体板1001、1002をアンテナ素子701及び702の主ビーム方向の反対側に所定の間隔を隔てて、誘電体基板703と反射板706との間にアンテナ素子面と垂直に配置することで、F/B比が良好な指向性を有するレーダ装置を実現することができる。このため、主ビーム方向以外の障害物から反射してくる電波の受信レベルを低減させることができ、検知精度を向上することができる。
【0120】
(実施の形態4)
本発明の実施の形態4に係るレーダ装置を図13から図15を用いて説明する。ただし、実施の形態1及び2と同一又は相当部には、同一符号を付し詳細な説明は省略する。
【0121】
図13(a)(b)(c)は、実施の形態2の構成に、スロット導波素子1301a〜1301c及び1302a〜1302c、スロット反射素子1303a〜1303c及び1304a〜1304cをさらに追加した構成を有する本実施の形態のレーダ装置170を示す図である。スロット導波素子1301a〜1301cは、アンテナ素子701を構成するひし形形状のアンテナ素子の端部から−X方向側、つまり主ビーム方向側に距離L10隔てて、導体層704を切削して形成される。同様に、スロット導波素子1302a〜1302cは、アンテナ素子702を構成するひし形形状のアンテナ素子の端部から主ビーム方向(+X方向)側に距離L10隔てて、導体層704を切削して形成される。ここで、例えば、スロット導波素子長は3.2mm(1/2波長以下)、スロット導波素子幅は0.2mm、距離L10は1.5mmに設定される。
【0122】
スロット反射素子1303a〜1303cは、アンテナ素子701を構成するひし形形状のアンテナ素子の端部から+X方向側、つまり主ビームの反対方向側に距離L11隔てて、導体層704を切削して形成される。このとき、スロット反射素子1303a及び1303cは、給電ラインであるマイクロストリップライン710及び709とそれぞれ交わらないように、距離L12だけY方向にずらして配置される。同様に、スロット反射素子1304a〜1304cは、アンテナ素子702を構成するひし形形状のアンテナ素子の端部から主ビームの反対方向(−X方向)側に距離L11隔てて形成され、スロット反射素子1304a及び1304cは、マイクロストリップライン712及び711とそれぞれ交わらないように、距離L12だけY方向にずらして配置される。ここで、例えば、スロット反射素子長は3.6mm(1/2波長以上)、スロット反射素子幅は0.2mm、距離L11及びL12はそれぞれ1mm及び3mmに設定される。
【0123】
なお、スロット導波素子1301a〜1301c及び1302a〜1302cは本発明の導波素子に、又、スロット反射素子1303a〜1303c及び1304a〜1304cは本発明の反射素子にそれぞれ相当する。
【0124】
以上のように構成することにより、アンテナ素子701及び702から放射された電波は、スロット導波素子1301a〜1301c及び1302a〜1302c、スロット反射素子1303a〜1303c及び1304a〜1304cにより、さらに主ビーム方向側へ向けられるため、利得及びF/B比を向上させることができる。
【0125】
図14は、図13においてアンテナ素子701をマイクロストリップライン709により給電部Eから励振した場合の指向性及びアンテナ素子702をマイクロストリップライン711により給電部Gから励振した場合の指向性を示す図である。図14(a)は、垂直(XZ)面の指向性、図14(b)は仰角θが50度における円錐面の指向性を示している。
【0126】
図14において、指向性1401及び1403は、アンテナ素子701を給電部Eから励振した場合の垂直偏波Eθ成分の指向性を示しており、主ビームが−X方向へ向いていることが確認できる。このときの主ビームの指向性利得は14dBiである。
【0127】
又、指向性1402及び1404は、アンテナ素子702を給電部Gから励振した場合の垂直偏波Eθ成分の指向性を示しており、主ビームが+X方向へ向いていることが確認できる。このように、アンテナ素子701及び702を切替励振することにより主ビーム方向を2方向に切り替えられ、検知範囲を切り替えることができるとともに、図14(b)と図8(b)に示す指向性を比較すると、スロット導波素子1301a〜1301c及び1302a〜1302c、スロット反射素子1303a〜1303c及び1304a〜1304cを装荷することで、利得とF/B比が向上していることが確認できる。
【0128】
図15は、アンテナ素子701をマイクロストリップライン710により給電部Fから励振した場合の指向性及びアンテナ素子702をマイクロストリップライン712により給電部Hから励振した場合の指向性を示す図であり、図15(a)は垂直(XZ)面の指向性、図15(b)は仰角θが50度における円錐面の指向性を示している。
【0129】
図15において、指向性1501及び1503はアンテナ素子701を給電部Fから励振した場合の垂直偏波Eθ成分の指向性、指向性1502及び1504はアンテナ素子702を給電部Hから励振した場合の垂直偏波Eθ成分の指向性を示しており、図9(b)に比べ利得及びF/B比が向上していることが確認できる。
【0130】
以上のように、本実施の形態によれば、スロット導波素子及びスロット反射素子をアンテナ素子701及び702の主ビーム方向側及び主ビームの反対方向側にそれぞれ所定の間隔を隔てて、アンテナ素子と同一面に配置することで、高利得でF/B比が良好な指向性を有するレーダ装置を実現することができる。このため、検知距離を長くすることができるとともに、主ビーム方向以外の障害物から反射してくる電波の受信レベルを低減させることでき、検知精度を向上することができる。
【0131】
なお、本実施の形態では、スロット素子構成として説明したが、実施の形態1で説明した線状素子構成においても線状導波素子及び線状反射素子を用いることにより、同様の効果が得られる。
【0132】
又、本実施の形態では、導波素子と反射素子をそれぞれ複数用いて説明したが、少なくともいずれか1素子以上用いることで、同様の効果が得られる。
【0133】
なお、上記の各実施の形態では、一つのアンテナ素子について、ひし形形状のアンテナ素子又はひし形スロットアンテナ部を3素子連結させた構成について説明したが、連結する素子数は2素子以上であれば個数に限定されない。又、給電部を複数備え、互いに指向性の異なる配置が可能なアンテナ素子であれば、検知範囲に合わせて採用することが可能である。
【0134】
又、上記の各実施の形態においては、2つのアンテナ素子を備えた構成として説明を行ったが、本発明は、3つ以上のアンテナ素子を備えた構成としてもよい。
【0135】
ここで図16(a)(b)は、アンテナ素子105とアンテナ素子106との間に3番目のアンテナ素子181を備えた構成としたレーダ装置180の構成図である。ただし図1、2と同一又は相当部には、同一符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0136】
レーダ装置180において、アンテナ素子181は、アンテナ素子105又は106と同様に3つのひし形形状のアンテナ素子を縦列接続した構成を有するが、両端部のひし形形状のアンテナ素子にそれぞれ設けられた線状迂回素子の長さはアンテナ素子105又は106より短いものとする。さらに、図16(b)に示すように、凹状の反射板190を設け、アンテナ素子181が配置されている部分Rに関してのみ、反射板190までの距離を1/2波長以上に設定する。これにより、アンテナ素子181の左右両側の位相差は小さくなり、主ビーム方向を、アンテナ素子106の主ビーム方向より+Z方向の近い位置に傾けることができる。なお、図16(a)において給電部Jは本発明の第1給電部に相当し、又、給電部Iは本発明の第2給電部に相当する。
【0137】
このような構成のレーダ装置180は、+Z方向から−X方向に傾いた主ビーム方向を有するアンテナ素子105、+Z方向から+X方向に傾いた主ビーム方向を有するアンテナ素子106、及び+Z方向に近い方向に傾いた主ビーム方向を有するアンテナ素子181とを備えたことにより、図17に示すように、アンテナ素子105及び106の主ビーム方向の死角となる正面方向の検知範囲もカバーすることが可能となる。
【0138】
又、本実施の形態のレーダ装置180はスイッチ素子103、104に代えてスイッチ素子182、183を、スイッチ制御回路110に代えてスイッチ制御回路184をそれぞれ備えている。スイッチ素子182は、スイッチ制御回路184の制御に基づきアンテナ素子105、106及び181の給電部A、C及びJと送信部101とを選択的に接続し、スイッチ素子183は、アンテナ素子105、106及び181の給電部B、D及びIと受信部102とを選択的に接続する。又、スイッチ素子182及び183は、スイッチ制御回路184の制御に基づき動作する。
【0139】
次に、図18のタイミングチャートを参照して、レーダ装置180のビーム切替動作について説明する。
【0140】
送信部101のパルス発生器107は、実施の形態1と同様、時間T1から、例えば、パルス幅Tp=0.5ns〜1nsのパルス信号を周期Tt=100ns〜10μsの間隔で発生する。
【0141】
このとき、スイッチ素子182は、制御電圧A、B及びCがそれぞれ正(+)から負(−)、又は負(−)から正(+)に切り替わるタイミングで、アンテナ素子105の給電部A、アンテナ素子181の給電部J、及びアンテナ素子106の給電部Cが逐次切り替えて接続されるように切り替え動作する。このとき、給電部Cの次に切り替えられる対象は給電部Aとなり、次いで給電部Jに切り替えられる。
【0142】
スイッチ制御回路184の制御電圧Aは、パルス発生器107からパルス幅Tpのパルス信号が送信された直後、すなわち時間T2において、正(+)から負(−)へと制御される。同時に、スイッチ制御回路184の制御電圧Bは、負(−)から正(+)へ制御される。このとき、制御電圧Cは負(−)の状態のままである。
【0143】
図18に示すように、上記制御を行うことにより、パルス信号が発生する時間T1からT2の間においては、送信部101から出力された26GHzのパルス信号はアンテナ素子105の給電部Aへ出力される状態にあるため、アンテナ素子105が励振される。
【0144】
次に、時間T3に発生したパルス信号が送信された直後、すなわち時間T4において、スイッチ制御回路184の制御電圧Bは、正(+)から負(−)へと制御され、制御電圧Cは、負(−)から正(+)へと制御される。このとき、制御電圧Aは負(−)の状態のままである。
【0145】
すなわち、2つ目のパルス信号が発生する時間T3からT4の間においては、送信部101から出力された26GHzのパルス信号はアンテナ素子181の給電部Jへ出力される状態にあるため、アンテナ素子181が励振される。
【0146】
さらに、時間T5に発生したパルス信号が送信された直後、すなわち時間T6において、スイッチ制御回路184の制御電圧Cは、正(+)から負(−)へと制御され、制御電圧Aは、負(−)から正(+)へと制御される。このとき、制御電圧Bは負(−)の状態のままである。
【0147】
したがって、3つ目のパルス信号が発生する時間T5からT6の間においては、送信部101から出力された26GHzのパルス信号はアンテナ素子106の給電部Cへ出力される状態にあるため、アンテナ素子106が励振される。
【0148】
一方、スイッチ素子183もスイッチ素子103と同様に、スイッチ制御回路184により制御され、制御電圧A、B及びCがそれぞれ正(+)から負(−)、又は負(−)から正(+)に切り替わるタイミングで、アンテナ素子105の給電部B、アンテナ素子181の給電部I、及びアンテナ素子106の給電部Dが逐次切り替えて接続されるように切り替え動作する。このとき、給電部Dの次に切り替えられる対象は給電部Bとなり、次いで給電部Iに切り替えられる。
【0149】
図18の場合、パルス信号が発生する時間T1からT2の間においては、スイッチ素子183は、アンテナ素子106の給電部Dに接続されている。すなわち、アンテナ素子106は、受信部102と接続され、アンテナ素子105は送信部101と接続される。
【0150】
又、2つ目のパルス信号が発生する時間T3からT4の間においては、スイッチ素子183は、アンテナ素子105の給電部Bに接続されている。すなわち、アンテナ素子105は受信部102と接続され、アンテナ素子181は送信部101と接続される。
【0151】
さらに、3つ目のパルス信号が発生する時間T5からT6の間においては、スイッチ素子183は、アンテナ素子181の給電部Iに接続されている。すなわち、アンテナ素子181は受信部102と接続され、アンテナ素子106は送信部101と接続される。
【0152】
以下、パルス発生器107がパルス信号を発生するタイミングでスイッチ制御回路184の制御電圧A、B及びCが切り替わるたびにスイッチ素子182及び183が切り替え動作を行い、アンテナ素子105、181、106はそれぞれ周期Ttの時間差をおいて時分割で送受信動作を行う。図17に示したように、レーダ装置180はビーム402、404、403の順番で検知方向を順次切り替えることができ、広範かつ漏れのない検知範囲を得ることができる。
【0153】
なお、上記の説明においては、実施の形態1のレーダ装置100に基づく構成としたが、実施の形態2〜4の構成に基づくものとしてもよい。
【0154】
又、上記の説明においては、スイッチ素子182及び183は、各アンテナ素子と送信部101又は受信部102との接続が常に隣接したアンテナ素子間で行われるように切り替えを行うとして説明を行ったが、例えば、アンテナ素子105、106及び108の順番で切り替える等、離隔したアンテナ素子間で切り替えを行うようにしてもよい。
【0155】
すなわち、各アンテナ素子と送信部101との切り替えを追従するように各アンテナ素子と受信部102との切り替えが行われ、かつ、送信部101に接続された直後のアンテナ素子が次に受信部に接続されるように切り替えが行われれば、各アンテナ素子の切り替えの順序によって本発明は限定されるものではない。
【0156】
又、上記の説明においては、アンテナ素子105、106及び181の3つのアンテナ素子を用いるものとしたが、さらにアンテナ素子を増加させる時は、各アンテナ素子を並列に配置し、線状迂回素子の長さ及び反射板までの距離を変更することで、各アンテナ素子の検知方向を分散させて全体として広い検知範囲を得ることが可能となる。
【0157】
又、上記の各実施の形態においては、各アンテナ素子の主ビーム方向はいずれも異なるものとして説明を行ったが、少なくとも一部が異なっており、一部は同一方向である構成としても良い。この場合、同一主ビーム方向の複数のアンテナ素子の一部が故障しても、他のアンテナ素子によって検知方向をカバーできる。
【0158】
又、上記の各実施の形態においては、図3、18のタイムチャートに示すように、あるアンテナ素子に対する送信部101による送信動作と、他のアンテナ素子に対する受信部102による受信動作とは同一時間帯において並行的に行われるものとしたが、回路内の遅延時間等を考慮して、一部時間帯においてのみ平行的に行われるものであってもよい。
【0159】
又、上記の各実施の形態においては、同一平面状に配置される平面形状のアンテナとしてのアンテナ素子を用いるものとしたが、本発明は、車載用として十分小型なものであれば、立体形状を有するアンテナを用いて実現してもよい。要するに、アンテナ素子の具体的な形状、構成によって限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0160】
本発明にかかるレーダ装置は、複数のアンテナ素子を用いて検知範囲を広くとりつつ、受信感度の劣化を防ぐことが可能な効果を有し、例えば車載用等のレーダ装置に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0161】
【図1】(a)本発明の実施の形態1に係るレーダ装置の構成を示す図(b)本発明の実施の形態1に係るレーダ装置の構成を示す図
【図2】本発明の実施の形態1に係るレーダ装置におけるアンテナ素子の構成図
【図3】本発明の実施の形態1に係るレーダ装置のパルス発生器、スイッチ制御回路及びスイッチ素子のタイミングチャートを示す図
【図4】本発明の実施の形態1に係るレーダ装置のパルス発生タイミングに応じたビーム放射方向を示す図
【図5】本発明の実施の形態1に係るレーダ装置の、(a)垂直(XZ)面の指向性を示す図、(b)仰角θが70度における円錐面の指向性を示す図
【図6】本発明の実施の形態1に係るレーダ装置の、(a)垂直(XZ)面の指向性を示す図、(b)仰角θが70度における円錐面の指向性を示す図
【図7】(a)本発明の実施の形態2に係るレーダ装置の構成図(b)本発明の実施の形態2に係るレーダ装置の構成図(c)本発明の実施の形態2に係るレーダ装置の構成図
【図8】本発明の実施の形態2に係るレーダ装置の、(a)垂直(XZ)面の指向性を示す図、(b)仰角θが50度における円錐面の指向性を示す図
【図9】本発明の実施の形態2に係るレーダ装置の、(a)垂直(XZ)面の指向性を示す図、(b)仰角θが50度における円錐面の指向性を示す図
【図10】(a)本発明の実施の形態3に係るレーダ装置の構成図(b)本発明の実施の形態3に係るレーダ装置の構成図(c)本発明の実施の形態3に係るレーダ装置の構成図
【図11】本発明の実施の形態3に係るレーダ装置の、(a)垂直(XZ)面の指向性を示す図、(b)仰角θが50度における円錐面の指向性を示す図
【図12】本発明の実施の形態3に係るレーダ装置の、(a)垂直(XZ)面の指向性を示す図、(b)仰角θが50度における円錐面の指向性を示す図
【図13】(a)本発明の実施の形態4に係るレーダ装置の構成図(b)本発明の実施の形態4に係るレーダ装置の構成図(c)本発明の実施の形態4に係るレーダ装置の構成図
【図14】本発明の実施の形態4に係るレーダ装置の、(a)垂直(XZ)面の指向性を示す図、(b)仰角θが50度における円錐面の指向性を示す図
【図15】本発明の実施の形態4に係るレーダ装置の、(a)垂直(XZ)面の指向性を示す図、(b)仰角θが50度における円錐面の指向性を示す図
【図16】(a)本発明の実施の形態1に係るレーダ装置の他の構成例の構成を示す図(b)本発明の実施の形態1に係るレーダ装置の他の構成例の構成を示す図
【図17】本発明の実施の形態1に係る係るレーダ装置の他の構成例のパルス発生タイミングに応じたビーム放射方向を示す図
【図18】本発明の実施の形態1に係るレーダ装置の他の構成例のパルス発生器、スイッチ制御回路及びスイッチ素子のタイミングチャートを示す図
【符号の説明】
【0162】
101 送信部
102 受信部
103、104、182、183 スイッチ素子
105、106、181、701、702 アンテナ素子
107 パルス発生器
108 発振器
109 方向性結合器
100、150、160、170、180 レーダ装置
110、184 スイッチ制御回路
111 ミキサ
112 信号処理部
113a〜113d 平衡−不平衡変換器
130、190 反射板
201a〜201d、202a〜202d、203a〜203d 線状素子
204a、204b、205a、205b 線状連結素子
206、207 線状迂回素子
401 車両
402、403、404 ビーム
721a〜721d、722a〜722d、723a〜723d スロット素子
724a、724b、725a、725b スロット連結素子
726a、726b スロット迂回素子
1301a〜1301c、1302a〜1302c スロット導波素子
1303a〜1303c、1304a〜1304c スロット反射
A、B、C、D、E、F、G、H、I、J 給電部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1給電部及び第2給電部を有するアンテナ素子と、
信号の送信を行う送信部と、
信号の受信を行う受信部と、
複数の前記アンテナ素子の各前記第1給電部と前記送信部とを選択的に接続する第1アンテナ切替部と、
前記複数のアンテナ素子の各前記第2給電部と前記受信部とを選択的に接続する第2アンテナ切替部と、
前記第1アンテナ切替部及び前記第2アンテナ切替部の接続を制御する制御部とを備え、
前記複数のアンテナ素子の全部又は一部は互いに異なる指向性を有する、レーダ装置。
【請求項2】
前記制御部は、いずれか一つの前記アンテナ素子の前記第1給電部が前記送信部に接続されると同時にいずれか他の一つの前記アンテナ素子の前記第2給電部が前記受信部に接続されるよう、前記第1アンテナ切替部及び前記第2アンテナ切替部の制御を行う、請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記複数の前記アンテナ素子の前記第1給電部と前記送信部とを順次接続し、
前記第1給電部と前記送信部との順次接続に追従して前記複数の前記アンテナ素子の前記第2給電部と前記受信部を順次接続し、
前記第2給電部と前記受信部とが接続される前記アンテナ素子が、前記第1給電部と前記送信部との接続が完了した直後の前記アンテナ素子となるよう、
前記第1アンテナ切替部及び前記第2アンテナ切替部の制御を行う、請求項2に記載のレーダ装置。
【請求項4】
前記制御部は、すべての前記アンテナ素子の前記第1給電部が前記送信部に順次接続された後、すべての前記アンテナ素子の前記第2給電部が前記受信部に順次接続されるよう、前記第1アンテナ切替部及び前記第2アンテナ切替部の制御を行う、請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項5】
前記アンテナ素子のそれぞれは、前記第1給電部又は前記第2給電部のいずれから給電されても、同一の指向性を有する、請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項6】
前記複数のアンテナ素子のそれぞれは、同一面上に配置される平面形状のアンテナであり、
前記アンテナ素子の形成された面と平行に所定の間隔を隔てて設けられた反射板を備えた、請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項7】
前記送信部及び前記受信部はパルス信号を送受信し、
前記制御部は、前記送信部の前記パルス信号の送信のタイミングで前記第1アンテナ切替部又は第2アンテナ切替部の制御を行う、請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項8】
前記複数のアンテナ素子は、第1のアンテナ素子及び第2のアンテナ素子の2つのアンテナ素子である、請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項9】
前記アンテナ素子は、
前記送信部及び前記受信部の使用周波数の1/4波長から3/8波長の長さを有する第1から第4の線状素子がひし形形状に配置され、かつ隣接する前記第1線状素子と前記第2線状素子が接続され、隣接する前記第3線状素子と前記第4線状素子が接続されたひし形アンテナ部と、
対向する一対の前記ひし形アンテナ部の、一方の前記ひし形アンテナ部の前記第2線状素子と他方の前記ひし形アンテナ部の前記第1線状素子とを接続し、前記一方の前記ひし形アンテナ部の前記第4線状素子と前記他方の前記ひし形アンテナ部の前記第3線状素子とを接続することにより、複数の前記ひし形アンテナ部を連結する、所定の長さを有する線状連結素子と、
前記連結された複数のひし形アンテナ部の一方の端部の前記ひし形アンテナ部の前記第1線状素子と前記第3線状素子との間、及び前記連結された複数のひし形アンテナ部の他方の端部の前記ひし形アンテナ部の前記第2線状素子と前記第4線状素子との間を、それぞれ接続する、全体が所定の長さを有する折り返し形状の線状迂回素子とを備え、
前記第1給電部及び第2給電部は、前記複数のひし形アンテナ部のいずれか2つのひし形アンテナ部の前記第1線状素子と前記第2線状素子の接続部にそれぞれ設けられている、
請求項6に記載のレーダ装置。
【請求項10】
前記線状迂回素子の前記所定の長さ、及び前記アンテナ素子と前記反射板までの所定の間隔は、前記アンテナ素子の指向性に応じて、複数の前記アンテナ素子毎に異なっている、請求項9に記載のレーダ装置。
【請求項11】
前記アンテナ素子は、
所定の誘電率を有する誘電体基板と、
前記誘電体基板上に形成された導体層と、
前記導体層に形成された、
前記送信部及び前記受信部の使用周波数の1/4波長から3/8波長の長さを有する第1から第4の線状スロットがひし形形状に配置され、かつ隣接する前記第1線状スロットと前記第2線状スロットが接続され、隣接する前記第3線状スロットと前記第4線状スロットが接続されたひし形アンテナスロット、
対向する一対の前記ひし形アンテナスロットの、一方の前記ひし形アンテナスロットの前記第2線状スロットと他方の前記ひし形アンテナスロットの前記第1線状スロットとを接続し、前記一方の前記ひし形アンテナスロットの前記第4線状スロットと前記他方の前記ひし形アンテナスロットの前記第3線状スロットとを接続することにより、複数の前記ひし形アンテナスロットを連結する、所定の長さを有する線状連結スロット、
前記連結された複数のひし形アンテナスロットの一方の端部の前記ひし形アンテナスロットの前記第1線状スロットと前記第3線状スロットとの間、及び前記連結された複数のひし形アンテナスロットの他方の端部の前記ひし形アンテナスロットの前記第2線状スロットと前記第4線状スロットとの間を、それぞれ接続する、全体が所定の長さを有する折り返し形状の線状迂回スロット、を有するアレイアンテナスロットと、
前記アレイアンテナスロットの、少なくとも一つの前記ひし形アンテナスロットの前記第1から第4線状スロットをそれぞれ分離するように設けられた接続導体とを備え、
前記第1給電部及び第2給電部は、前記複数のひし形アンテナスロットのいずれか2つのひし形アンテナスロットの前記第1線状スロットと前記第2線状スロットの接続部にそれぞれ設けられている、請求項6に記載のレーダ装置。
【請求項12】
前記線状迂回スロットの前記所定の長さ、及び前記アンテナ素子と前記反射板までの所定の間隔は、前記アンテナ素子の指向性に応じて、複数の前記アンテナ素子毎に異なっている、請求項11に記載のレーダ装置。
【請求項13】
前記誘電体基板の前記導体層が形成された面の反対側の面に設けられた、前記第1給電部及び前記第2給電部にそれぞれ配置されたマイクロストリップラインを備えた、請求項11に記載のレーダ装置。
【請求項14】
前記反射板と前記誘電体基板とを接続するように設けられた導体板とを備えた、請求項11に記載のレーダ装置。
【請求項15】
前記使用周波数の半波長以下の長さを有し、複数の前記アンテナ素子の同一面上に所定の間隔を隔てて形成された少なくとも1つの導波素子を備えた、請求項11に記載のレーダ装置。
【請求項16】
前記使用周波数の半波長以下の長さを有し、複数の前記アンテナ素子の同一面上に所定の間隔を隔てて形成された少なくとも1つの反射素子を備えた、請求項11に記載のレーダ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2008−145423(P2008−145423A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−292528(P2007−292528)
【出願日】平成19年11月9日(2007.11.9)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】