説明

レーダ装置

【課題】方位方向に加えて仰角方向の角度誤差を測定でき、プラットフォームが移動していても角度誤差を測定できるレーダ装置を得る。
【解決手段】移動するプラットフォーム1に搭載され、基準目標3に対し電磁波ビームを放射し基準目標からの散乱波を観測する送受信アンテナ2、放射ビームを制御するビーム制御手段8、送受信アンテナに送信信号を送信すると共に、送受信アンテナにより受信される基準目標の信号強度の観測値を得る送受信機9、アンテナ利得の角度特性を記憶した第1のデータベース10、基準目標の座標と電気的特性を記憶した第2のデータベース11、ビーム制御手段による制御値、第1及び第2のデータベースの記憶値、プラットフォームの座標及び姿勢角に基づき基準目標からの信号電力を予測する予測手段12、信号強度の観測値と予予測値との照合に基づき送受信アンテナの取付誤差角度を推定する照合手段13を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、移動体搭載レーダにおいて、アンテナの取付角誤差を地上の基準点を利用して計測するレーダ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
レーダでは、一般に指向性を有するアンテナから電磁波を放射し、目標からの散乱波を観測する。この時、アンテナの指向方向に基づいて目標の方位あるいは仰角を知ることができる。従って、アンテナの取付角度に誤差が生じていると、目標の方位角あるいは仰角にこの誤差が重畳する。そこで、この角度誤差を予め測定しておくことが望まれる。また、電子走査アンテナにおいては、ビーム制御に不具合を生じている場合に、同様に角度のオフセット誤差を生じる場合がある。そこで、この角度誤差を測定しておくことが望まれる。
【0003】
従来、この種のレーダ装置として、プラットフォーム上の左右対称な基準点とプラットフォーム前方の地上の基準点との位置関係に基づいてアンテナの取付角度を調整するものがあった(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2004−3951号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のレーダ装置は、プラットフォーム前方の基準点と、プラットフォーム上の左右対称な点の幾何的な位置関係に基づいてアンテナの指向方向を調整しているので、仰角方向の角度誤差を測定することができなかった。また、プラットフォームの移動中に測定することができないという問題があった。
【0006】
この発明は上記のような問題点を解決するためになされたもので、方位方向に加えて仰角方向の角度誤差を測定できるレーダ装置を得ることを目的とする。また、プラットフォームが移動していても角度誤差を測定できるレーダ装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係るレーダ装置は、移動するプラットフォームに搭載されて、基準目標に対し電磁波ビームを放射し、基準目標からの散乱波を観測する送受信アンテナと、前記送受信アンテナを走査して放射ビームを制御するビーム制御手段と、前記送受信アンテナに送信信号を送信すると共に、前記送受信アンテナにより受信される基準目標の信号強度の観測値を得る送受信機と、前記送受信アンテナのアンテナ利得の角度特性を記憶した第1のデータベースと、前記基準目標の座標と電気的特性を記憶した第2のデータベースと、前記ビーム制御手段による制御値、前記第1及び第2のデータベースの記憶値、プラットフォームの座標及び姿勢角に基づいて基準目標からの信号電力を予測する予測手段と、前記送受信機からの基準目標の信号強度の観測値と前記予測手段からの信号強度の予測値との照合に基づいて前記送受信アンテナの取付誤差角度を推定する照合手段とを備えたものである。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、プラットフォームが移動中であっても送受信アンテナの取付誤差角度を推定でき、また、方位方向だけでなく仰角方向についても送受信アンテナの取付誤差角度を推定できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
実施の形態1.
図1は、この発明の観測のジオメトリを示す図である。図1において、レーダプラットフォーム1に送受信アンテナ2が搭載され、プラットフォーム1の外に基準目標3が設置されている。送受信アンテナ2の取付誤差が無い場合のアンテナ開口の基準ベクトル4は、実際のアンテナ開口の基準ベクトル5に対し、例えばアンテナ開口面の法線ベクトルとして示される。なお、6はアンテナビームの指向ベクトル、Δθは方位角方向のアンテナの取付誤差角、Δφは仰角方向のアンテナの取付誤差角、θは方位角方向のアンテナビームの指向角、φは仰角方向のアンテナビームの指向角、θは基準目標3の方位角、φは基準目標3の仰角である。角度θ、φ、θ、φは、いずれも基準ベクトル5を基準として定義している。
【0010】
図2は、この発明の実施の形態1に係るレーダ装置の構成を示すブロック図である。図2に示すレーダ装置は、移動するプラットフォーム1に搭載されて、基準目標3に対し電磁波ビームを放射し、基準目標3からの散乱波を観測する送受信アンテナ2と、送受信アンテナ2を走査して放射ビームを制御するビーム制御手段8と、送受信アンテナ2に送信信号を送信すると共に、送受信アンテナ2により受信される基準目標3の信号強度の観測値を得る送受信機9と、送受信アンテナ2のアンテナ利得の角度特性を記憶した第1のデータベースとしてのアンテナ利得データベース10と、基準目標3の座標と電気的特性を記憶した第2のデータベースとしての基準目標データベース11と、ビーム制御手段8による制御値、データベース10及び11の記憶値、プラットフォーム1の座標及び姿勢角に基づいて基準目標3からの信号電力を予測する予測手段12と、送受信機9からの基準目標3の信号強度の観測値と予測手段12からの信号強度の予測値との照合に基づいて送受信アンテナ2の取付誤差角度を推定する照合手段13とを備えている。
【0011】
ここで、予測手段12には、観測の際に、送信電力P、電波の波長λ、各種の損失係数Lが予め記憶されており、基準目標3の座標に基づいて送受信アンテナ2から基準目標3までの距離Rを演算する。
【0012】
また、図3は、アンテナパターンと基準目標3の角度θ、φの関係を示す模式図である。図3において、14はアンテナパターン、15は基準目標3の観測角の時間変化の計算値(軌跡)であり、また、15aは方位方向の取付誤差角Δθを仮定した計算値、15bは仰角方向の取付誤差角Δφを仮定した計算値である。
【0013】
また、図4は、照合手段13の入力データを表す模式図である。図4において、16は基準目標3の信号強度Prの計算値で、図3の計算値15に沿ったアンテナパターンの断面におよそ相当する。16aと16bは、それぞれ図3の計算値15aと15bから求めた基準目標3の信号強度Prの計算値である。また、17は基準目標3の信号強度Prの観測値である。
【0014】
次に、動作について説明する。この発明のレーダ装置は、図1に示すように移動するプラットフォーム1に搭載されており、特に、送受信アンテナ2は、ビーム制御手段8によって電気的に走査されるものとする。送受信アンテナ2は、未知の取付誤差角(Δθ、Δφ)でプラットフォーム1に取付られており、アンテナビームを角度(θ、φ)へ指向して基準目標3へ向けて電磁波を送信しエコー(散乱波)を受信する。ここで、角度θ、φは既知である。また、本実施の形態1では、角度(θ、φ)は観測中一定であるとする。また、基準目標3は、反射体としても良いし、トランスポンダあるいはアクティブレーダキャリブレータあるいはまたCW送信機等としても良い。
【0015】
一方、アンテナ利得データベース10は、送受信アンテナ2の利得の角度特性を記憶する。その値は予め測定されたものでも良いしあるいは信頼できる手段で計算されたものでも良いが、角度(θ、φ、θ、φ)毎に記録されていることが望ましい。また、基準目標データベース11は、基準目標3の座標と電気的特性を記録する。ここで、電気的特性とは、基準目標3が反射体の場合には散乱断面積の角度特性、基準目標3がトランスポンダあるいはアクティブレーダキャリブレータあるいはまたCW送信機等である場合には、放射電力の角度特性を指す。
【0016】
予測手段12は、これらのデータベース10及び11の記憶データと、ビーム制御手段8からの制御値、プラットフォーム1の座標および姿勢角に基づいて、基準目標3からの信号強度を計算(予測)する。その動作を、図3および図4を用いて説明する。
【0017】
図3は、角度(θ、φ)を指向した場合のアンテナ利得14を示している。いま、何らかの手段でプラットフォーム1の座標と姿勢角を連続的に知ることができたとすると、基準目標3の角度(θ、φ)の時間変化15を計算することが可能である。すなわち、ある時間における基準目標3の角度のアンテナ利得14を求めることができる。
【0018】
さらに、予測手段12は、アンテナと基準目標3の距離による減衰を考慮して基準目標3の信号強度の計算値(予測値)16を生成する。これらの説明を計算式として以下に示す。
【0019】
まず、基準目標3が反射体の場合には、信号強度Pr16は、レーダ方程式として良く知られる次の式(1)となる。但し、Pは送信電力、Gは送受信アンテナの利得、λは電波の波長、σは基準目標3の散乱断面積、Rはアンテナから基準目標3までの距離、Lは各種の損失係数である。また、(θ’、φ’)は基準目標3を基準としたアンテナの角度である。さらに、明示していないが、R以外の変数も時刻tによって一般に変化する。
【0020】
【数1】

【0021】
次に、基準目標3がトランスポンダあるいはアクティブレーダキャリブレータあるいはまたはCW送信機等である場合には、信号強度Pr16は次の式(2)となる。但し、Pは基準目標3の送信電力、Gは基準目標3の送信アンテナの利得である。
【0022】
【数2】

【0023】
ところで、図4の信号強度Prの計算値(予測値)16は、このようにして計算されるが、送受信アンテナ2は取付誤差角度が存在するので、信号強度Prの計算値16は、信号強度の観測値17と一般に一致しない。そこで、予測手段12は、任意の取付誤差角度(Δθ、Δφ)を仮定して信号強度16aあるいは16bを計算する。その計算式は、基準目標3が反射体の場合には、式(3)で表され、基準目標3がトランスポンダあるいはアクティブレーダキャリブレータあるいはまたCW送信機等である場合には式(4)で表される。
【0024】
【数3】

【0025】
照合手段13は、式(3)または式(4)で計算された信号強度の予測値P(t、Δθ、Δφ)を、観測された信号強度の観測値P(t)と照合して、最もよく一致したものを選択するので、取付誤差角度(Δθ、Δφ)を知ることができる。照合の規範には、例えば信号強度の差を時間で積分した値として次式(5)のものなどを使うことができる。
【0026】
【数4】

【0027】
すなわち、この実施の形態1に係るレーダ装置では、プラットフォーム1が移動中であってもアンテナの取付誤差角度を推定できる特長がある。また、方位方向だけでなく仰角方向についてもアンテナの取付誤差角度を推定できる特長がある。
【0028】
実施の形態2.
ここでは、ビーム制御手段8により、観測中にアンテナの仰角方向の指向角度を積極的に変化させる観測方法の実施の形態を示す。この実施の形態2における装置の構成は図2と同一である。
【0029】
図5は、このような場合の観測のジオメトリを示す図である。図5において、図1と同一部分は同一符号を付す。2’は一定時間後にプラットフォーム1が移動した位置における送受信アンテナ、6’は送受信アンテナ2’におけるアンテナビームの指向ベクトル、18は指向ベクトル6と6’の差にあたる仰角変化である。
【0030】
図6は、アンテナビームの指向ベクトルの仰角の時間変化を表す図であり、19は実施の形態1における仰角、19’はこの実施の形態2における仰角の例である。
【0031】
図7は、予測手段12の動作を示す図であり、14は図3と同様にアンテナパターンである。但し、この実施の形態2では、時間と共に変化しており、20はその中心角度(θ、φ)の軌跡である。15は図3と同様に基準目標3の角度(θ、φ)の時間変化である。
【0032】
図8は、照合手段13の入力データを表す模式図である。図8において、21は基準目標3の信号強度の計算値で、図7の計算値15に沿ったアンテナパターンの断面におよそ相当する。21bは図7の計算値15bから求めた基準目標3の信号強度の計算値である。
【0033】
次に、動作について説明する。前述した実施の形態1では、観測中にアンテナの指向角度を変えない場合を前提として説明した。この場合、図3の15、あるいは図6の19に示すように、基準目標3の仰角φはほとんど変化しない。このため、仰角方向の取付誤差Δφに対する信号強度の変化が小さく、Δφの推定精度が劣化する場合がある。
【0034】
そこで、この実施の形態2では、ビーム制御手段8により、観測中に送受信アンテナ2の仰角を変えることにより、基準目標3の仰角φを変化させて、仰角方向の取付誤差Δφに対する信号強度の変化を大きくする。図6の19’では、観測中に仰角を1往復半させる場合を模式的に示す。すると図7に示すように、アンテナパターン14に対する基準目標3の仰角が大きく変化し、その結果、図8の21に示すように、信号強度の計算値は大きく変化するので、アンテナの取付誤差によって生じる基準目標3の信号強度の計算値21bとの差が明確になる。
【0035】
すなわち、この実施の形態2に係るレーダ観測方法では、仰角方向についての取付誤差角度を、より高い精度で推定できる特長がある。
【0036】
実施の形態3.
ここでは、ビーム制御手段8により、観測中にアンテナの方位方向の指向角度を積極的に変化させる観測方法の実施の形態を示す。この実施の形態3における装置の構成は図2と同一である。
【0037】
図9は、このような場合の観測のジオメトリを示す図である。図9において、図1と同一部分は同一符号を付す。2’は一定時間後にプラットフォーム1が移動した位置における送受信アンテナ、6”は送受信アンテナ2’におけるアンテナビームの指向ベクトル、22は指向ベクトル6と6”の差にあたる方位角変化である。
【0038】
図10は、アンテナビームの指向ベクトルの方位角の時間変化を表す図であり、23は実施の形態1における方位角、23’はこの実施の形態3における方位角である。
【0039】
図11は、照合手段13の入力データを表す模式図である。図11において、16’は基準目標3の信号強度の計算値、17’は基準目標3の信号強度の観測値である。
【0040】
次に、動作について説明する。前述した実施の形態1では、観測中にアンテナの指向角度を変えない場合を暗黙の前提として説明した。この場合、図3に示すように、プラットフォーム1の移動によって、基準目標3の指向角θがアンテナのビームパターン14を横切るまで観測を継続する必要があった。
【0041】
そこで、この実施の形態3では、ビーム制御手段8により、観測中に送受信アンテナ2の指向ベクトルの方位角を変えることにより、観測時間を短縮する。図10の23’では、観測中に方位角をプラットフォーム1の移動方向の正の向きへ振る場合を模式的に示す。すると、ビーム指向方位角θに対する基準目標3の方位角が早く変化し、その結果、図11に示すように信号強度も早く変化する。
【0042】
すなわち、この実施の形態3に係るレーダ観測方法では、アンテナの取付誤差角度を、より早く推定できる特長がある。
【0043】
実施の形態4.
ここでは、ビーム制御手段8により、観測中にアンテナの方位方向の指向角度を、特にプラットフォーム1の進行方向と逆方向に回転させる観測方法の実施の形態を示す。この実施の形態4における装置の構成も図2と同一である。
【0044】
図12は、このような場合のアンテナビームの指向ベクトルの時間変化を表す図である。(a)と(b)はそれぞれ方位角と仰角の時間変化を表す。23は実施の形態1における方位角、23’は実施の形態3における方位角、23”はこの実施の形態4における方位角である。また、19は実施の形態1における仰角、19”はこの実施の形態4における仰角である。
【0045】
図13は、予測手段12の動作を示す図であり、14は図3と同様にアンテナパターンである。但し、この実施の形態4では時間と共に変化しており、20’はその中心角度(θ、φ)の軌跡である。15は図3と同様に基準目標3の角度(θ、φ)の時間変化である。
【0046】
図14は、照合手段13の入力データを表す模式図である。図14において、16”は基準目標3の信号強度の計算値で、図13の計算値15’に沿ったアンテナパターンの断面に相当する。17”は基準目標3の信号強度の観測値である。
【0047】
次に、動作について説明する。実施の形態3では、観測中にアンテナビームの指向ベクトルの方位角を、特にプラットフォーム1の移動方向へ振る場合を想定して説明した。この場合、図11に示したように、アンテナビームの指向ベクトルを固定した場合と比較して早く観測を完了することができる。そこで、この実施の形態4では、残った時間を利用してもう一度観測を行う。すなわち、図12(a)の23”に示すように、23’と同様の観測の終了後、アンテナビームの指向ベクトルの方位角をプラットフォーム1の進行方向と逆向きに素早く振り戻す。また。同時に、図12(b)の19”に示すように、アンテナビームの指向ベクトルの仰角を変更する。そして、図12(a)の23”に示すように、再びアンテナビームの指向ベクトルの方位角を23’と同様に変化させながら観測を繰り返す。
【0048】
この結果、図13の20’に示すように、アンテナパターン14に対する基準目標3の方位角と仰角を変えて2回繰り返して観測することができる。すなわち、図14の16”に示すように、信号強度の計算値のパターンが増えるので、アンテナの取付誤差によって生じる基準目標3の信号強度の観測値17”との差が明確になる。
【0049】
すなわち、この実施の形態4に係るレーダ観測方法では、アンテナの取付誤差角度を、より高い精度で推定できる特長がある。
【0050】
実施の形態5.
以上の実施の形態では、基準目標3が一つであることを暗黙に仮定して説明したが、次に、基準目標3が複数あるようにした実施の形態を示す。図15は、この発明の実施の形態5に係るレーダ装置の構成を示すブロック図である。図15に示すレーダ装置において、2から13は、図2と同様である。但し、3は第一の基準目標、3’は第二の基準目標である。
【0051】
図16は、予測手段12の動作を示す図であり、(a)は第一の基準目標3に対する図、(b)は第二の基準目標3’に対する図である。また、これらの図において、それぞれの番号の要素は図3と同様である。
【0052】
図17は、照合手段13の入力データを表す模式図であり、(a)は第一の基準目標3に対する図、(b)は第二の基準目標3’に対する図である。これらの図において、それぞれの番号の要素は図4と同様である。
【0053】
次に、動作について説明する。なお、ここでは、実施の形態1と同様に、アンテナビームの指向角は観測中一定とした場合について説明するが、そうでない場合であってもこの実施の形態5の効果を減ずることはない。
【0054】
まず、第一の基準目標3について、実施の形態1と同様に観測し、予測手段12により、この基準目標3の信号強度の計算値16、16a、あるいは16bを得る。すなわち、照合手段13の入力端には、実施の形態1と同様に、計算された信号強度Pr_1(t、Δθ、Δφ)と観測された信号強度Po_1(t)を得る。
【0055】
一方、第二の基準目標3’についても並行して同様に観測し、予測手段12により、この基準目標3の信号強度の計算値16#、16#a、あるいは16#bを得る。すなわち、照合手段13の入力端には、第一の基準目標3と同様に、第二の基準目標3’について計算された信号強度Pr_2(t、Δθ、Δφ)と、観測された信号強度P0_2(t)を得る。なお、二つの基準目標3、3’は一般に異なる方位・仰角にあるので、16と16#はやや異なる波形となる。
【0056】
最後に、照合手段13は、実施の形態1と同様に、計算された信号強度と観測された信号強度が最もよく一致する取付誤差角度(Δθ、Δφ)を求める。その指標には、例えば信号強度の差を時間で積分した値を二つの基準目標3、3’について総和を求めた次式(6)の値などを使うことができる。
【0057】
【数5】

【0058】
このように、図17(a)、(b)の2枚のグラフを利用できるので、信号強度の計算値のパターンが増えて、アンテナの取付誤差によって生じる基準目標3の信号強度の観測値17#との差が明確になる。
【0059】
すなわち、この実施の形態5に係るレーダ観測方法では、アンテナの取付誤差角度を、より高い精度で推定できる特長がある。
【0060】
なお、ここでは、基準目標3が二つの場合について説明したが、三つ以上ある場合でも同様の効果を得られることは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】この発明の実施の形態1に係る観測のジオメトリを示す図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係るレーダ装置の構成を示すブロック図である。
【図3】この発明の実施の形態1に係るアンテナパターンと基準目標3の角度θ、φの関係を示す模式図である。
【図4】この発明の実施の形態1に係る照合手段13の入力データを表す模式図である。
【図5】この発明の実施の形態2に係る観測のジオメトリを示す図である。
【図6】この発明の実施の形態2に係るアンテナビームの指向ベクトルの仰角の時間変化を表す図である。
【図7】この発明の実施の形態2に係る予測手段12の動作を示す図である。
【図8】この発明の実施の形態2に係る照合手段13の入力データを表す模式図である。
【図9】この発明の実施の形態3に係る観測のジオメトリを示す図である。
【図10】この発明の実施の形態3に係るアンテナビームの指向ベクトルの方位角の時間変化を表す図である。
【図11】この発明の実施の形態3に係る照合手段13の入力データを表す模式図である。
【図12】この発明の実施の形態4に係るアンテナビームの指向ベクトルの時間変化を表す図である。
【図13】この発明の実施の形態4に係る予測手段12の動作を示す図である。
【図14】この発明の実施の形態4に係る照合手段13の入力データを表す模式図である。
【図15】この発明の実施の形態5に係るレーダ装置の構成を示すブロック図である。
【図16】この発明の実施の形態5に係る予測手段12の動作を示す図である。
【図17】この発明の実施の形態5に係る照合手段13の入力データを表す模式図である。
【符号の説明】
【0062】
1 プラットフォーム、2 送受信アンテナ、3,3’ 基準目標、8 ビーム制御手段、9 送受信機、10 アンテナ利得データベース(第1のデータベース)、11 基準目標データベース(第2のデータベース)、12 予測手段、13 照合手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動するプラットフォームに搭載されて、基準目標に対し電磁波ビームを放射し、基準目標からの散乱波を観測する送受信アンテナと、
前記送受信アンテナを走査して放射ビームを制御するビーム制御手段と、
前記送受信アンテナに送信信号を送信すると共に、前記送受信アンテナにより受信される基準目標の信号強度の観測値を得る送受信機と、
前記送受信アンテナのアンテナ利得の角度特性を記憶した第1のデータベースと、
前記基準目標の座標と電気的特性を記憶した第2のデータベースと、
前記ビーム制御手段による制御値、前記第1及び第2のデータベースの記憶値、プラットフォームの座標及び姿勢角に基づいて基準目標からの信号電力を予測する予測手段と、
前記送受信機からの基準目標の信号強度の観測値と前記予測手段からの信号強度の予測値との照合に基づいて前記送受信アンテナの取付誤差角度を推定する照合手段と
を備えたレーダ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のレーダ装置において、
前記ビーム制御手段は、観測中に前記送受信アンテナの仰角方向の指向角度を変化させる
ことを特徴とするレーダ装置。
【請求項3】
請求項1に記載のレーダ装置において、
前記ビーム制御手段は、観測中に前記送受信アンテナの方位方向の指向角度を変化させる
ことを特徴とするレーダ装置。
【請求項4】
請求項1に記載のレーダ装置において、
前記ビーム制御手段は、観測中に前記送受信アンテナの方位方向の指向角度を前記プラットフォームの進行方向と逆方向に回転させる
ことを特徴とするレーダ装置。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか1項に記載のレーダ装置において、
前記照合手段は、前記観測値と前記予測値の信号強度の差を時間で積分した値を照合の規範として取付誤差角度を求める
ことを特徴とするレーダ装置。
【請求項6】
請求項5に記載のレーダ装置において、
前記照合手段は、前記基準目標が複数存在する場合に、前記信号強度の差を時間で積分した値を複数の基準目標について総和を求めた値を指標とする
ことを特徴とするレーダ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2008−191071(P2008−191071A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−27738(P2007−27738)
【出願日】平成19年2月7日(2007.2.7)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】