レーダ装置
【課題】時空間適応信号処理を適用してクラッタを抑圧する際、演算量の低減化、測距性能及びクラッタ抑圧性能の向上を図るレーダ装置を得る。
【解決手段】局部発振信号を生成する局部発振信号生成部2、局部発振信号を用いてパルスごとの送信周波数をステップ状に変化させた有限個のパルス信号を生成し繰り返し送信する送信部1、送信信号を空間に放射する送信アンテナ部3、目標に反射して到来するパルス状の反射電波を受信する受信アンテナ部4、受信信号のパルスごとに局部発振信号を用いて周波数変換及びI、Q位相検波を行って複素ビデオ信号を生成しAD変換して複素デジタルビデオ信号を出力する受信部6、複素デジタルビデオ信号を用いて高距離分解能化を図る合成帯域処理部7、高距離分解能化を図った信号に対しクラッタを抑圧する時空間適応信号処理部8、時空間適応信号処理部からの出力信号に基づき目標検出処理を行う目標検出部9を備える。
【解決手段】局部発振信号を生成する局部発振信号生成部2、局部発振信号を用いてパルスごとの送信周波数をステップ状に変化させた有限個のパルス信号を生成し繰り返し送信する送信部1、送信信号を空間に放射する送信アンテナ部3、目標に反射して到来するパルス状の反射電波を受信する受信アンテナ部4、受信信号のパルスごとに局部発振信号を用いて周波数変換及びI、Q位相検波を行って複素ビデオ信号を生成しAD変換して複素デジタルビデオ信号を出力する受信部6、複素デジタルビデオ信号を用いて高距離分解能化を図る合成帯域処理部7、高距離分解能化を図った信号に対しクラッタを抑圧する時空間適応信号処理部8、時空間適応信号処理部からの出力信号に基づき目標検出処理を行う目標検出部9を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、パルス信号を目標に向けて送信し、低速で移動する目標により反射したパルス信号を受信して目標を検出するレーダ技術に関し、詳しくは、低速で移動する目標を検出する際に、時空間適応信号処理によって、クラッタが混在した受信信号からフィルタ処理によりクラッタを抑圧する、クラッタ抑圧技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
レーダ装置でパルス状の電波を送受信して目標を検出しようとする場合、目標からの反射波のほかに、地表面、海面、雨などの不要物によって反射するクラッタ(不要波)が存在する。このクラッタによって目標からの反射電波が埋もれると目標を検出できなくなるため、クラッタを抑圧しなければならない。特に低速で移動する目標を検出する場合、ドップラー速度の小さい領域でクラッタ抑圧性能を確保することが必要となる。
【0003】
クラッタが存在する電波環境において、低速で移動する目標の目標検出性能を向上させるため、アレーアンテナで受信した受信信号から、時間と空間の二次元の情報でフィルタを作成し、フィルタ処理によってクラッタを除去して目標検出を行う時空間適応信号処理(STAP:Space Time Adaptive Processing)が知られている(例えば、非特許文献1参照)。時空間適応信号処理は、時間と空間の二次元の情報を用いるため、時間又は空間の一次元の情報を用いる方法とくらべて、クラッタ抑圧性能が向上するが、処理データ量が多くなって演算量が増大する、という特徴がある。
【0004】
時空間適応信号処理の演算量が増大する一因として、アレーアンテナで受信した受信信号から、クラッタの抑圧に用いるフィルタのフィルタ係数を求めるため、受信信号を用いて算出したデータベクトルの相関行列(クラッタの共分散行列)に対して、逆行列演算を行うことが挙げられる。データベクトルの相関行列(クラッタの共分散行列)の次元は、受信信号に含まれるパルス数とアンテナ素子数との積で求められる。このため、パルス数及びアンテナ素子数が大きくなると、データベクトルの相関行列(クラッタの共分散行列)の次元が大きくなって、逆行列の演算量がしばしば増大する。
【0005】
このため、時空間適応信号処理の演算量を低減するための対策が考えられている。例えば、時空間適応信号処理を適用する前に、受信信号の周波数を分析してクラッタのドップラー周波数を検出し、クラッタが含まれるドップラーフィルタビンと、クラッタが含まれないドップラーフィルタビンを選別し、クラッタが存在するドップラーフィルタビンに対してのみ時空間適応信号処理をほどこすことによって、データベクトルの相関行列(クラッタの共分散行列)の次元を低減させて時空間適応信号処理の演算量を削減するという方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
【非特許文献1】J. R. Guerci "Space-Time Adaptive Processing for Radar" Artech House Publishers、2003年、第3章、P51〜74
【特許文献1】特開2005−189171号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のレーダ装置においては、上述したように、時空間適応信号処理に用いる処理データ量が多いため演算量が増大するといった課題があった。また、従来のレーダ装置は、時空間適応信号処理を適用する前に、受信信号の周波数分析を行ってクラッタが含まれるドップラーフィルタビンに対してのみ時空間適応信号処理を施すことで演算量を削減するため、演算量の削減化以外の効果、例えば、クラッタ抑圧性能の改善などを行うことについて言及されていなかった。
【0008】
さらに、時空間適応信号処理を実施する場合、使用するパルス幅で決まる距離分解能(パルス幅をTP[μs]とすると距離分解能は約(150×TP)[m]となる)が十分に高くないため、特に低速で移動する目標の測距性能について改善の余地があった。
【0009】
この発明は、上記のような課題に対処するためになされたものであり、時空間適応信号処理を適用してクラッタを抑圧しようとする場合に、演算量の低減化、測距性能の向上、及びクラッタ抑圧性能の向上を図ることができるレーダ装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明に係るレーダ装置は、パルス信号を目標に向けて送信し、低速で移動する目標により反射したパルス信号を受信して目標を検出するレーダ装置において、所定のパルス繰返し周期ごとに周波数がステップ状に変化する局部発振信号を生成する局部発振信号生成部と、前記局部発振信号を用いてパルスごとの送信周波数をステップ状に変化させた有限個のパルス信号を生成し、送信信号として繰り返し送信する送信部と、前記送信部で生成した送信信号を電波として空間に放射する送信アンテナ部と、空間に放射された電波が目標に反射して到来してくるパルス状の反射電波を、受信信号として受信する受信アンテナ部と、前記受信アンテナ部から出力される受信信号のパルスごとに前記局部発振信号を用いて周波数変換及びI、Q位相検波を行って複素ビデオ信号を生成し、生成した複素ビデオ信号をアナログ・デジタル変換して複素デジタルビデオ信号を出力する受信部と、前記受信部から出力される、前記局部発振信号の周波数のステップ数に等しい個数の、同一のレンジビンの複素デジタルビデオ信号を用いて高距離分解能化を図る合成帯域処理部と、前記合成帯域処理部から出力される、高距離分解能化を図った信号に対して、時間と空間の二次元の情報からクラッタを抑圧するフィルタを作成してフィルタ処理によりクラッタを抑圧する時空間適応信号処理部と、前記時空間適応信号処理部から出力される信号に基づいて目標検出処理を行う目標検出部とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、受信信号に対して、合成帯域処理部で高距離分解能化を図り、時空間適応信号処理部で用いる信号の数を削減した後、クラッタを抑圧する構成としたので、クラッタ抑圧に要する演算量を削減することができるようになり、かつ、低速で移動する目標の測距性能が改善される。さらには、合成帯域処理部でクラッタ面積を小さくしてクラッタ電力を低減し、時空間適応信号処理部でクラッタを抑圧するように構成したので、時空間適応信号処理部のみでクラッタを抑圧する従来の構成に比べて、クラッタ抑圧性能が向上する効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に係るレーダ装置の全体構成を示すブロック図である。図1に示すレーダ装置は、有限個のパルス信号を生成し、後述する局部発振信号生成部2より供給された局部発振信号を用いて、生成したパルス信号ごとの送信周波数をステップ状に変換し、後述する送信アンテナ部3へ送信信号として繰り返し出力する送信部1と、送信部1及び後述する受信部6で、パルス信号ごとの周波数を変換するための局部発振信号を発生し、送信部1及び受信部6に同じ局部発振信号を供給する局部発振信号生成部2と、送信部1から出力された送信信号を空間へ放射する送信アンテナ部3と、複数のアンテナ素子5を規則的に並列に配置したアレーアンテナでなり、複数のアンテナ素子ごとに、クラッタの混在する、目標から到来するパルス状の反射電波を受信信号として受信する受信アンテナ部4と、受信アンテナ部4で受信した受信信号に含まれるパルスごとに、局部発振信号を用いて周波数変換、及びI、Q位相検波を行って複素ビデオ信号を生成した後、生成した複素ビデオ信号にアナログ・デジタル変換を行い、複素デジタルビデオ信号を出力する受信部6と、受信部6より出力される複素デジタルビデオ信号を用いて合成帯域処理を行い、高距離分解能化を図る合成帯域処理部7と、複数個の合成帯域処理部7から出力される信号を用いて、時空間適応信号処理を利用し、クラッタを抑圧する時空間適応信号処理部8と、クラッタ成分が抑圧された後の信号から、目標を検出する目標検出部9とを備える。
【0013】
次に、図1に示す各構成の動作について説明する。図2は、送信部1の機能を説明するもので、有限個のパルス数をPとした場合、周波数f0からfP−1まで周波数ステップΔfずつパルスごとの送信周波数を変換し、P個のパルスを4回繰り返して送信する例(パルス数の合計数:4×P個)を示す図である。ここで、繰り返して送信するP個の送信パルス信号Sn(t)は、式(1)により表される。
【0014】
【数1】
【0015】
ただし、n=0,1,・・・,P−1、Re[・]は[・]内の実部を求める操作、Aは送信信号の振幅、f0は送信最小周波数、nはパルスのインデックス番号、tは時刻、φnは各送信周波数の初期位相、TPRIはパルス繰り返し時間、TPはパルス幅を示す。P個の送信パルス信号Sn(t)を4回繰り返して送信する場合、送信信号に含まれるパルス数は(4×P)個となる。
【0016】
次に、図3は、局部発振信号生成部2により発振されて、送信部1及び受信部6に供給される局部発振信号を説明するもので、局部発振信号は、図3に示すように、時間TPRIごとに周波数f0からfP−1まで周波数ステップΔfずつ変えて送信を行う。ここで、局部発振信号Wn(t)は、式(2)により表される。
【0017】
【数2】
【0018】
ただし、Bは局部発振信号の振幅である。局部発振信号の周波数がfP−1となると、再び周波数f0から繰り返して送信を行う。例えば、送信部1から(4×P)個のパルス信号を送信する場合、局部発振信号の繰り返し回数は4回となる。
【0019】
次に、送信アンテナ部3は、送信部1から出力された送信信号を空間へ放射する機能を持つ。空間へ放射された送信信号は、電波となって空間内を伝搬し、空間内に存在する飛翔体などの目標によって反射した後、パルス状の反射電波として再び空間内を伝搬する。
【0020】
受信アンテナ部4は、複数のアンテナ素子5を規則的に並列に配置したアレーアンテナでなり、複数のアンテナ素子ごとに、クラッタの混在する、目標から到来するパルス状の反射電波を受信信号として受信する。
【0021】
受信部6は、受信アンテナ部4で受信した受信信号に含まれるパルスごとに、局部発振信号を用いて周波数変換、及びI、Q位相検波を行って複素ビデオ信号を生成した後、生成した複素ビデオ信号にアナログ・デジタル変換を行い、複素デジタルビデオ信号を出力する。一例として、目標との相対速度が0[m/s]である場合を例にすると、受信部6に入力された受信信号に含まれるP個の受信パルス信号Un(t)は、式(1)に対応して式(3)により表される。
【0022】
【数3】
【0023】
ここで、A'は受信信号の振幅、Rは目標との相対距離、cは光速を示す。式(3)で表されるP個の受信パルス信号は繰り返し受信される。図4は、一例として送信部1から送信された(4×P)個の送信パルス信号と、受信部6に入力される(4×P)個の受信パルス信号を示している。
【0024】
式(3)の受信パルス信号Un(t)を式(2)の局部発振信号Wn(t)で周波数変換、及びI、Q位相検波を行うと、式(4)により表される複素ビデオ信号Vn(t)が得られる。
【0025】
【数4】
【0026】
ここで、A”は複素ビデオ信号の振幅を示す。式(4)のVn(t)を送信パルス幅と同じサンプリング間隔でアナログ・デジタル変換し、パルス繰り返し時間ごとに信号を抽出して複素デジタルビデオ信号を生成する。受信パルス信号の同一レンジビンのn番目のパルスに対する複素デジタルビデオ信号V(n)は、式(4)のn番目の複素ビデオ信号に対応して、式(5)により表される。
【0027】
【数5】
【0028】
式(5)は、複素デジタルビデオ信号がP個の離散値であることを示す。よって、例えば、受信信号のパルス数が(4×P)個である場合、複素デジタルビデオ信号も(4×P)個となる。
【0029】
次に、合成帯域処理部7は、受信部6より出力される複素デジタルビデオ信号を用いて合成帯域処理を行い、高距離分解能化を図る。一例として、図5を用いて、(4×P)個の受信パルス信号から生成される(4×P)点の複素デジタルビデオ信号を使用し、高距離分解能化を図る流れを模式的に説明する。
【0030】
図5において、受信部6で同一のレンジビンの(4×P)個の受信パルス信号から生成される同一レンジビンの(4×P)点の複素デジタルビデオ信号に対して、P点ごとに逆フーリエ変換を実行する。この結果、受信パルス信号の存在するレンジビンをP点に細分化した結果が4個得られる。逆フーリエ変換の結果から、振幅が最大となるレンジビンに目標が存在する。
【0031】
合成帯域処理部7で上述の処理を行う前、受信部6では(4×P)個の受信パルス信号を受信したが、合成帯域処理部7で合成帯域処理を行ったことにより、距離分解能がP倍に高分解能化された4個の高距離分解能後信号が得られたことになる。
【0032】
なお、高距離分解能化を実施後は、図6に示すように、距離方向の幅とレーダビーム方位方向の幅で囲まれる面積(以下、クラッタ面積と呼ぶ)が、高距離分解能化の実施前に比べて小さくなるため、クラッタ面積から反射するクラッタが低減する。例えば、レーダビーム幅で決まるクラッタ面積の幅が一定と仮定すると、距離分解能が4倍になると、クラッタ面積は元の4分の1となり、クラッタ面積から反射するクラッタの電力も元の4分の1となる。このため、高距離分解能化を実施した後のパルス信号の信号電力対クラッタ電力比は元の4倍に向上する。
【0033】
次に、時空間適応信号処理部8は、複数個の合成帯域処理部7から出力される信号を用いて、時空間適応信号処理を利用し、クラッタを抑圧する機能を有する。時空間適応信号処理の処理手順を図7に示す。
【0034】
図7において、まず、ステップ1で、合成帯域処理部7から出力されるクラッタのみの信号を用いて、データベクトルの相関行列(クラッタの共分散行列)の算出を行う。データベクトルの相関行列(クラッタの共分散行列)Rcは、式(6)により表される。
【0035】
【数6】
【0036】
ここで、E{ }は期待値を求める操作、X’はクラッタのみが存在するレンジビンの受信信号であり、アンテナ素子数をN、パルス数をMとすると、NM×1次元の行列である。また、Hは共役転置を示す。
【0037】
ステップ2で、データベクトルの相関行列(クラッタの共分散行列)の逆行列を算出する。
【0038】
ステップ3では、データベクトルの相関行列(クラッタの共分散行列)の逆行列を用いて、クラッタ抑圧に用いるフィルタ係数を算出する。フィルタ係数Wは、式(7)により表される。
【0039】
【数7】
【0040】
ここで、−1は行列の逆行列、vは、目標の時空間ステアリングベクトルであり、目標の空間ステアリングベクトルaと目標の時間ステアリングベクトルbを用いて式(8)により表される。
【0041】
【数8】
【0042】
ただし、a、bはそれぞれ式(9)及び式(10)により表される。
【0043】
【数9】
【0044】
ただし、Tは転置行列を表し、θt及びωtは、それぞれ式(11)及び式(12)により表される。
【0045】
【数10】
【0046】
ここで、θtは目標の空間周波数、ωtは目標の規格化ドップラー周波数、dは素子間隔、λは送信信号の波長、Ψtは目標のエレベーション角、φtは目標のアジマス角、vtは目標の相対速度、TPRIはパルス繰り返し周期を示す。また、式(8)における右辺のbとaとの間の記号はクロネッカー積を表す。
【0047】
最後に、ステップ4によって、フィルタ係数を用いたフィルタ処理により、合成帯域処理部7から出力される、目標の存在する注目レンジビンにおける、複数個の信号からクラッタを抑圧する。クラッタを抑圧した後の信号yは、式(13)により表される。
【0048】
【数11】
【0049】
ただし、Xは目標からの反射波とクラッタが存在するレンジビンで得られたNM×1の受信信号である。
【0050】
図8は、図1に示す構成において、一例として、受信アンテナ部4のアンテナ素子数Nを4とした場合の、時空間適応信号処理部8に入力する信号の特徴を説明する図である。ここで、(a)は受信部6に入力される信号、(b)は合成帯域処理部7に入力される信号、(c)は時空間適応信号処理部8に入力される信号をそれぞれ示している。図8において、受信部6に入力される受信パルス信号のパルス数Pを4、繰り返し回数を4回とすると、合計16個の受信パルス信号が受信部6に入力され、受信部6より、同じレンジビンにおける16点の複素デジタルビデオ信号が出力される。その後、合成帯域処理部7に同じレンジビンにおける16点の複素デジタルビデオ信号が入力される。合成帯域処理部7では、4つの複素デジタルビデオ信号ごとに、逆フーリエ変換を行うことにより高距離分解能化が行われる。その結果、合成帯域処理部7から、距離分解能が4倍に高分解能化され、かつ、信号電力対クラッタ電力比が4倍に向上した4個の高距離分解能後信号が出力される。
【0051】
このため、時空間適応信号処理部8に入力する信号は、距離分解能が4倍に高分解能化され、信号電力対クラッタ電力比が4倍向上し、パルス数が16個から4個に削減される。
【0052】
最後に、目標検出部9は、クラッタ成分が抑圧された後の信号から、目標を検出する機能を有する。例えば、ピーク値検出処理CFAR(Constant False Alarm Rate)処理など公知の方法によって目標を検出する。
【0053】
以上のように、この実施の形態1によれば、受信信号に対して、合成帯域処理部7で高距離分解能化を図り、時空間適応信号処理部8で用いる信号の数を削減した後、クラッタを抑圧する構成としたので、クラッタ抑圧に要する演算量を削減することができるようになり、かつ、低速で移動する目標の測距性能が改善される。さらには、合成帯域処理部7でクラッタ面積を小さくしてクラッタ電力を低減し、時空間適応信号処理部8でクラッタを抑圧するように構成したので、時空間適応信号処理部8のみでクラッタを抑圧する従来の構成に比べて、クラッタ抑圧性能が向上する効果がある。
【0054】
実施の形態2.
図9は、この発明の実施の形態2に係るレーダ装置の全体構成を示すブロック図である。前述した実施の形態1では、合成帯域処理部7で高距離分解能化を図る際、連続するP点の複素デジタルビデオ信号ごとに逆フーリエ変換を実施していたが、この実施の形態2では、目標検出部9で目標検出を行った結果に基づき、逆フーリエ変換に用いるP点の複素デジタルビデオ信号の選び方を変更することに特徴を有しており、図1に示す実施の形態1に係る構成に対して、目標検出部9での目標検出結果に応じて合成帯域処理部7で逆フーリエ変換に用いる複素デジタルビデオ信号の選び方を制御する制御部10をさらに備え、合成帯域処理部7は、制御部10からの制御に基づいて高距離分解能化に用いる複素デジタルビデオ信号の組み合わせ方を変えることにより、高距離分解能化を図ったパルス数を増やすようになされている。
【0055】
図9において、制御部10は、目標検出部9での目標検出結果に応じて、合成帯域処理部7で逆フーリエ変換に用いる複素デジタルビデオ信号の選び方を制御する機能を有する。クラッタ抑圧性能が不十分のため、目標検出部9で目標検出できなかった場合、時空間適応信号処理部8に入力するパルス数を増やすと、クラッタ抑圧に用いるフィルタの特性が向上してクラッタ抑圧性能が改善するため、目標検出できるようになる場合がある。
【0056】
このため、目標検出部9で目標検出できなかった場合、制御部10は、時空間適応信号処理部8に入力するパルス数を増やすように制御する。その制御例を図10に示す。実施の形態1の場合は、図10(a)に示すように、複素デジタルビデオ信号から4個の組み合わせを作り、それぞれ逆フーリエ変換を行い、図10(b)に示すように、合計4個の高距離分解能後の信号を得ていたが、この実施の形態2では、合成帯域処理部7で逆フーリエ変換に用いる複素デジタルビデオ信号の選び方を変える。
【0057】
すなわち、合成帯域処理部7において、図10(c)に示すように、受信周波数f0からf3にステップ状に変化する4個のパルス信号を4回繰り返した16個の受信パルス信号が受信部6に入力されるとする。受信部6では、16点の複素デジタルビデオ信号が生成される。合成帯域処理部7では、図10(d)に示すように、隣り合わせの4個の複素デジタルビデオ信号を選ぶ。隣り合わせの4個の複素デジタルビデオ信号は、必ず周波数f0,f1,f2,f3のパルス信号となる。このため、周波数f0,f1,f2,f3の順番となるように、4個の複素デジタルビデオ信号の順番を並べ換えることで、13個の組み合わせができ、それぞれ逆フーリエ変換を行う。逆フーリエ変換の回数は13回となるため、距離分解能が4倍になった13個のパルス信号が得られることになり、合成帯域処理部8に入力するパルス数を13個とすることができる。
【0058】
図11は、合成帯域処理部8に入力されるパルス数の違いにより、フィルタ係数の精度が向上する結果、クラッタを抑圧するフィルタの特性が向上することを模式的に説明する図である。図11(a)に示す合成帯域処理部8に入力するパルス数が少ない場合のフィルタ特性に対し、合成帯域処理部8に入力するパルス数が多くなると、パルス信号に含まれるクラッタの情報量が多くなり、クラッタの周波数成分の精度が向上する。すなわち、図11(b)に示すように、クラッタのドップラー周波数のみの成分を抑圧するためフィルタの帯域を狭帯域にでき、減衰量を大きくできる。このため、クラッタを抑圧するフィルタ特性が向上する。
【0059】
以上のように、この実施の形態2によれば、目標検出部9でクラッタ抑圧性能が不十分のため目標検出できなかった場合、時空間適応信号処理部8に入力するパルス数を増やすことができ、クラッタを抑圧するフィルタの特性が向上する結果、クラッタの抑圧性能が改善し、目標を検出できるようになる。
【0060】
実施の形態3.
図12は、この発明の実施の形態3に係るレーダ装置の全体構成を示すブロック図である。前述した実施の形態1及び2では、レーダ装置の処理方法及び処理パラメータを固定としていた。この実施の形態3によれば、目標検出部9の目標検出結果に応じて処理パラメータを変更し、送信部1、局部発振信号生成部2、受信部6、合成帯域処理部7及び時空間適応信号処理部8で行う処理を制御することに特徴を有しており、図1に示す実施の形態1に係る構成に対して、目標検出部9での目標検出結果に応じて、目標検出性能を改善させるため、送信部1、局部発振信号生成部2、受信部6、合成帯域処理部7、及び時空間適応信号処理部8に対し、処理パラメータの変更及び処理の制御を行う機能を有する処理制御部11をさらに備えている。
【0061】
一例として、距離分解能を高くして、クラッタを低減させる方法について説明する。図13は、目標検出部9の目標検出結果の例であり、目標よりも振幅の大きいクラッタが、レンジビン全体にわたり受信された状況を示している。目標はクラッタに埋もれているため、目標を検出することは困難となる。また、図13(a)に示すように、スレッショルド判定により、あらかじめ設定されたスレッショルドTよりも振幅の大きいレンジビンに目標が存在するとみなす場合、スレッショルドTより振幅の大きなクラッタを誤って目標と判定してしまう。このため、目標検出部9は、レンジビン全体の振幅がスレッショルドTを越える場合、クラッタが存在するとみなし、高距離分解能化を図るための制御を行う。
【0062】
高距離分解能化を図るためには、送信部1で生成するパルス数を増やすこと、局部発振信号生成部2の局部発振信号の周波数ステップ数を増やすこと、受信部6で周波数変換を行うパルス数を増やすこと、合成帯域処理部7で行う逆フーリエ変換に用いる点数を増やすこと、及び時空間適応信号処理部8で時空間適応信号処理に用いるパルス数の変更が必要となる。このため、制御処理部11は、高距離分解能化を図るための所要の処理パラメータを、送信部1、局部発振信号生成部2、受信部6、合成帯域処理部7、及び時空間適応信号処理部8へ設定する。設定変更後の処理パラメータでパルス信号の送受信処理を行う。そして、高距離分解能化を図ってクラッタを低減させ、目標検出部9で目標検出処理を行った結果を、図13(b)に示すように、再度スレッショルドTと比較し、特定のレンジビンの振幅のみがスレッショルドTよりも高くなれば、その特定のレンジビンに目標が存在するとみなし、高距離分解能化を図る処理を終了する。なお、レンジビン全体の振幅がスレッショルドTより大きいままであれば、さらに高距離分解能化を図る。
【0063】
以上のように、この実施の形態3によれば、目標検出部9の目標検出結果に応じて、処理パラメータを変更し、送信部1、局部発振信号生成部2、受信部6、合成帯域処理部7、及び時空間適応信号処理部8で行う処理方法を制御することができるようになるため、目標検出性能を改善できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】この発明の実施の形態1に係るレーダ装置の全体構成を示すブロック図である。
【図2】図1における送信部1から送信されるパルスの説明図である。
【図3】図1における局部発振信号生成部2により発振されて、送信部1及び受信部6に供給される局部発振信号を説明する図である。
【図4】図1における送信部1から送信された(4×P)個の送信パルス信号と、受信部6に入力される(4×P)個の受信パルス信号の例を示す図である。
【図5】図1における合成帯域処理部7の機能を説明するもので、(4×P)個の受信パルス信号から生成される(4×P)点の複素デジタルビデオ信号を使用し、高距離分解能化を図る流れを模式的に説明する図である。
【図6】図1における合成帯域処理部7による高距離分解能化の効果を説明する図である。
【図7】図1における時空間適応信号処理部8による時空間適応信号処理の処理手順を図である。
【図8】図1における時空間適応信号処理部8に入力する信号の特徴を説明する図である。
【図9】この発明の実施の形態2に係るレーダ装置の全体構成を示すブロック図である。
【図10】図9における制御部10により、時空間適応信号処理部8に入力するパルス数を増やすように制御例を示す図である。
【図11】図9における合成帯域処理部8に入力されるパルス数の違いにより、フィルタ係数の精度が向上する結果、クラッタを抑圧するフィルタの特性が向上することを模式的に説明する図である。
【図12】この発明の実施の形態3に係るレーダ装置の全体構成を示すブロック図である。
【図13】図12における目標検出部9の目標検出結果の例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0065】
1 送信部、2 局部発振信号生成部、3 送信アンテナ部、4 受信アンテナ部、5 アンテナ素子、6 受信部、7 合成帯域処理部、8 時空間適応信号処理部、9 目標検出部、10 制御部、11 処理制御部。
【技術分野】
【0001】
この発明は、パルス信号を目標に向けて送信し、低速で移動する目標により反射したパルス信号を受信して目標を検出するレーダ技術に関し、詳しくは、低速で移動する目標を検出する際に、時空間適応信号処理によって、クラッタが混在した受信信号からフィルタ処理によりクラッタを抑圧する、クラッタ抑圧技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
レーダ装置でパルス状の電波を送受信して目標を検出しようとする場合、目標からの反射波のほかに、地表面、海面、雨などの不要物によって反射するクラッタ(不要波)が存在する。このクラッタによって目標からの反射電波が埋もれると目標を検出できなくなるため、クラッタを抑圧しなければならない。特に低速で移動する目標を検出する場合、ドップラー速度の小さい領域でクラッタ抑圧性能を確保することが必要となる。
【0003】
クラッタが存在する電波環境において、低速で移動する目標の目標検出性能を向上させるため、アレーアンテナで受信した受信信号から、時間と空間の二次元の情報でフィルタを作成し、フィルタ処理によってクラッタを除去して目標検出を行う時空間適応信号処理(STAP:Space Time Adaptive Processing)が知られている(例えば、非特許文献1参照)。時空間適応信号処理は、時間と空間の二次元の情報を用いるため、時間又は空間の一次元の情報を用いる方法とくらべて、クラッタ抑圧性能が向上するが、処理データ量が多くなって演算量が増大する、という特徴がある。
【0004】
時空間適応信号処理の演算量が増大する一因として、アレーアンテナで受信した受信信号から、クラッタの抑圧に用いるフィルタのフィルタ係数を求めるため、受信信号を用いて算出したデータベクトルの相関行列(クラッタの共分散行列)に対して、逆行列演算を行うことが挙げられる。データベクトルの相関行列(クラッタの共分散行列)の次元は、受信信号に含まれるパルス数とアンテナ素子数との積で求められる。このため、パルス数及びアンテナ素子数が大きくなると、データベクトルの相関行列(クラッタの共分散行列)の次元が大きくなって、逆行列の演算量がしばしば増大する。
【0005】
このため、時空間適応信号処理の演算量を低減するための対策が考えられている。例えば、時空間適応信号処理を適用する前に、受信信号の周波数を分析してクラッタのドップラー周波数を検出し、クラッタが含まれるドップラーフィルタビンと、クラッタが含まれないドップラーフィルタビンを選別し、クラッタが存在するドップラーフィルタビンに対してのみ時空間適応信号処理をほどこすことによって、データベクトルの相関行列(クラッタの共分散行列)の次元を低減させて時空間適応信号処理の演算量を削減するという方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
【非特許文献1】J. R. Guerci "Space-Time Adaptive Processing for Radar" Artech House Publishers、2003年、第3章、P51〜74
【特許文献1】特開2005−189171号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のレーダ装置においては、上述したように、時空間適応信号処理に用いる処理データ量が多いため演算量が増大するといった課題があった。また、従来のレーダ装置は、時空間適応信号処理を適用する前に、受信信号の周波数分析を行ってクラッタが含まれるドップラーフィルタビンに対してのみ時空間適応信号処理を施すことで演算量を削減するため、演算量の削減化以外の効果、例えば、クラッタ抑圧性能の改善などを行うことについて言及されていなかった。
【0008】
さらに、時空間適応信号処理を実施する場合、使用するパルス幅で決まる距離分解能(パルス幅をTP[μs]とすると距離分解能は約(150×TP)[m]となる)が十分に高くないため、特に低速で移動する目標の測距性能について改善の余地があった。
【0009】
この発明は、上記のような課題に対処するためになされたものであり、時空間適応信号処理を適用してクラッタを抑圧しようとする場合に、演算量の低減化、測距性能の向上、及びクラッタ抑圧性能の向上を図ることができるレーダ装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明に係るレーダ装置は、パルス信号を目標に向けて送信し、低速で移動する目標により反射したパルス信号を受信して目標を検出するレーダ装置において、所定のパルス繰返し周期ごとに周波数がステップ状に変化する局部発振信号を生成する局部発振信号生成部と、前記局部発振信号を用いてパルスごとの送信周波数をステップ状に変化させた有限個のパルス信号を生成し、送信信号として繰り返し送信する送信部と、前記送信部で生成した送信信号を電波として空間に放射する送信アンテナ部と、空間に放射された電波が目標に反射して到来してくるパルス状の反射電波を、受信信号として受信する受信アンテナ部と、前記受信アンテナ部から出力される受信信号のパルスごとに前記局部発振信号を用いて周波数変換及びI、Q位相検波を行って複素ビデオ信号を生成し、生成した複素ビデオ信号をアナログ・デジタル変換して複素デジタルビデオ信号を出力する受信部と、前記受信部から出力される、前記局部発振信号の周波数のステップ数に等しい個数の、同一のレンジビンの複素デジタルビデオ信号を用いて高距離分解能化を図る合成帯域処理部と、前記合成帯域処理部から出力される、高距離分解能化を図った信号に対して、時間と空間の二次元の情報からクラッタを抑圧するフィルタを作成してフィルタ処理によりクラッタを抑圧する時空間適応信号処理部と、前記時空間適応信号処理部から出力される信号に基づいて目標検出処理を行う目標検出部とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、受信信号に対して、合成帯域処理部で高距離分解能化を図り、時空間適応信号処理部で用いる信号の数を削減した後、クラッタを抑圧する構成としたので、クラッタ抑圧に要する演算量を削減することができるようになり、かつ、低速で移動する目標の測距性能が改善される。さらには、合成帯域処理部でクラッタ面積を小さくしてクラッタ電力を低減し、時空間適応信号処理部でクラッタを抑圧するように構成したので、時空間適応信号処理部のみでクラッタを抑圧する従来の構成に比べて、クラッタ抑圧性能が向上する効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に係るレーダ装置の全体構成を示すブロック図である。図1に示すレーダ装置は、有限個のパルス信号を生成し、後述する局部発振信号生成部2より供給された局部発振信号を用いて、生成したパルス信号ごとの送信周波数をステップ状に変換し、後述する送信アンテナ部3へ送信信号として繰り返し出力する送信部1と、送信部1及び後述する受信部6で、パルス信号ごとの周波数を変換するための局部発振信号を発生し、送信部1及び受信部6に同じ局部発振信号を供給する局部発振信号生成部2と、送信部1から出力された送信信号を空間へ放射する送信アンテナ部3と、複数のアンテナ素子5を規則的に並列に配置したアレーアンテナでなり、複数のアンテナ素子ごとに、クラッタの混在する、目標から到来するパルス状の反射電波を受信信号として受信する受信アンテナ部4と、受信アンテナ部4で受信した受信信号に含まれるパルスごとに、局部発振信号を用いて周波数変換、及びI、Q位相検波を行って複素ビデオ信号を生成した後、生成した複素ビデオ信号にアナログ・デジタル変換を行い、複素デジタルビデオ信号を出力する受信部6と、受信部6より出力される複素デジタルビデオ信号を用いて合成帯域処理を行い、高距離分解能化を図る合成帯域処理部7と、複数個の合成帯域処理部7から出力される信号を用いて、時空間適応信号処理を利用し、クラッタを抑圧する時空間適応信号処理部8と、クラッタ成分が抑圧された後の信号から、目標を検出する目標検出部9とを備える。
【0013】
次に、図1に示す各構成の動作について説明する。図2は、送信部1の機能を説明するもので、有限個のパルス数をPとした場合、周波数f0からfP−1まで周波数ステップΔfずつパルスごとの送信周波数を変換し、P個のパルスを4回繰り返して送信する例(パルス数の合計数:4×P個)を示す図である。ここで、繰り返して送信するP個の送信パルス信号Sn(t)は、式(1)により表される。
【0014】
【数1】
【0015】
ただし、n=0,1,・・・,P−1、Re[・]は[・]内の実部を求める操作、Aは送信信号の振幅、f0は送信最小周波数、nはパルスのインデックス番号、tは時刻、φnは各送信周波数の初期位相、TPRIはパルス繰り返し時間、TPはパルス幅を示す。P個の送信パルス信号Sn(t)を4回繰り返して送信する場合、送信信号に含まれるパルス数は(4×P)個となる。
【0016】
次に、図3は、局部発振信号生成部2により発振されて、送信部1及び受信部6に供給される局部発振信号を説明するもので、局部発振信号は、図3に示すように、時間TPRIごとに周波数f0からfP−1まで周波数ステップΔfずつ変えて送信を行う。ここで、局部発振信号Wn(t)は、式(2)により表される。
【0017】
【数2】
【0018】
ただし、Bは局部発振信号の振幅である。局部発振信号の周波数がfP−1となると、再び周波数f0から繰り返して送信を行う。例えば、送信部1から(4×P)個のパルス信号を送信する場合、局部発振信号の繰り返し回数は4回となる。
【0019】
次に、送信アンテナ部3は、送信部1から出力された送信信号を空間へ放射する機能を持つ。空間へ放射された送信信号は、電波となって空間内を伝搬し、空間内に存在する飛翔体などの目標によって反射した後、パルス状の反射電波として再び空間内を伝搬する。
【0020】
受信アンテナ部4は、複数のアンテナ素子5を規則的に並列に配置したアレーアンテナでなり、複数のアンテナ素子ごとに、クラッタの混在する、目標から到来するパルス状の反射電波を受信信号として受信する。
【0021】
受信部6は、受信アンテナ部4で受信した受信信号に含まれるパルスごとに、局部発振信号を用いて周波数変換、及びI、Q位相検波を行って複素ビデオ信号を生成した後、生成した複素ビデオ信号にアナログ・デジタル変換を行い、複素デジタルビデオ信号を出力する。一例として、目標との相対速度が0[m/s]である場合を例にすると、受信部6に入力された受信信号に含まれるP個の受信パルス信号Un(t)は、式(1)に対応して式(3)により表される。
【0022】
【数3】
【0023】
ここで、A'は受信信号の振幅、Rは目標との相対距離、cは光速を示す。式(3)で表されるP個の受信パルス信号は繰り返し受信される。図4は、一例として送信部1から送信された(4×P)個の送信パルス信号と、受信部6に入力される(4×P)個の受信パルス信号を示している。
【0024】
式(3)の受信パルス信号Un(t)を式(2)の局部発振信号Wn(t)で周波数変換、及びI、Q位相検波を行うと、式(4)により表される複素ビデオ信号Vn(t)が得られる。
【0025】
【数4】
【0026】
ここで、A”は複素ビデオ信号の振幅を示す。式(4)のVn(t)を送信パルス幅と同じサンプリング間隔でアナログ・デジタル変換し、パルス繰り返し時間ごとに信号を抽出して複素デジタルビデオ信号を生成する。受信パルス信号の同一レンジビンのn番目のパルスに対する複素デジタルビデオ信号V(n)は、式(4)のn番目の複素ビデオ信号に対応して、式(5)により表される。
【0027】
【数5】
【0028】
式(5)は、複素デジタルビデオ信号がP個の離散値であることを示す。よって、例えば、受信信号のパルス数が(4×P)個である場合、複素デジタルビデオ信号も(4×P)個となる。
【0029】
次に、合成帯域処理部7は、受信部6より出力される複素デジタルビデオ信号を用いて合成帯域処理を行い、高距離分解能化を図る。一例として、図5を用いて、(4×P)個の受信パルス信号から生成される(4×P)点の複素デジタルビデオ信号を使用し、高距離分解能化を図る流れを模式的に説明する。
【0030】
図5において、受信部6で同一のレンジビンの(4×P)個の受信パルス信号から生成される同一レンジビンの(4×P)点の複素デジタルビデオ信号に対して、P点ごとに逆フーリエ変換を実行する。この結果、受信パルス信号の存在するレンジビンをP点に細分化した結果が4個得られる。逆フーリエ変換の結果から、振幅が最大となるレンジビンに目標が存在する。
【0031】
合成帯域処理部7で上述の処理を行う前、受信部6では(4×P)個の受信パルス信号を受信したが、合成帯域処理部7で合成帯域処理を行ったことにより、距離分解能がP倍に高分解能化された4個の高距離分解能後信号が得られたことになる。
【0032】
なお、高距離分解能化を実施後は、図6に示すように、距離方向の幅とレーダビーム方位方向の幅で囲まれる面積(以下、クラッタ面積と呼ぶ)が、高距離分解能化の実施前に比べて小さくなるため、クラッタ面積から反射するクラッタが低減する。例えば、レーダビーム幅で決まるクラッタ面積の幅が一定と仮定すると、距離分解能が4倍になると、クラッタ面積は元の4分の1となり、クラッタ面積から反射するクラッタの電力も元の4分の1となる。このため、高距離分解能化を実施した後のパルス信号の信号電力対クラッタ電力比は元の4倍に向上する。
【0033】
次に、時空間適応信号処理部8は、複数個の合成帯域処理部7から出力される信号を用いて、時空間適応信号処理を利用し、クラッタを抑圧する機能を有する。時空間適応信号処理の処理手順を図7に示す。
【0034】
図7において、まず、ステップ1で、合成帯域処理部7から出力されるクラッタのみの信号を用いて、データベクトルの相関行列(クラッタの共分散行列)の算出を行う。データベクトルの相関行列(クラッタの共分散行列)Rcは、式(6)により表される。
【0035】
【数6】
【0036】
ここで、E{ }は期待値を求める操作、X’はクラッタのみが存在するレンジビンの受信信号であり、アンテナ素子数をN、パルス数をMとすると、NM×1次元の行列である。また、Hは共役転置を示す。
【0037】
ステップ2で、データベクトルの相関行列(クラッタの共分散行列)の逆行列を算出する。
【0038】
ステップ3では、データベクトルの相関行列(クラッタの共分散行列)の逆行列を用いて、クラッタ抑圧に用いるフィルタ係数を算出する。フィルタ係数Wは、式(7)により表される。
【0039】
【数7】
【0040】
ここで、−1は行列の逆行列、vは、目標の時空間ステアリングベクトルであり、目標の空間ステアリングベクトルaと目標の時間ステアリングベクトルbを用いて式(8)により表される。
【0041】
【数8】
【0042】
ただし、a、bはそれぞれ式(9)及び式(10)により表される。
【0043】
【数9】
【0044】
ただし、Tは転置行列を表し、θt及びωtは、それぞれ式(11)及び式(12)により表される。
【0045】
【数10】
【0046】
ここで、θtは目標の空間周波数、ωtは目標の規格化ドップラー周波数、dは素子間隔、λは送信信号の波長、Ψtは目標のエレベーション角、φtは目標のアジマス角、vtは目標の相対速度、TPRIはパルス繰り返し周期を示す。また、式(8)における右辺のbとaとの間の記号はクロネッカー積を表す。
【0047】
最後に、ステップ4によって、フィルタ係数を用いたフィルタ処理により、合成帯域処理部7から出力される、目標の存在する注目レンジビンにおける、複数個の信号からクラッタを抑圧する。クラッタを抑圧した後の信号yは、式(13)により表される。
【0048】
【数11】
【0049】
ただし、Xは目標からの反射波とクラッタが存在するレンジビンで得られたNM×1の受信信号である。
【0050】
図8は、図1に示す構成において、一例として、受信アンテナ部4のアンテナ素子数Nを4とした場合の、時空間適応信号処理部8に入力する信号の特徴を説明する図である。ここで、(a)は受信部6に入力される信号、(b)は合成帯域処理部7に入力される信号、(c)は時空間適応信号処理部8に入力される信号をそれぞれ示している。図8において、受信部6に入力される受信パルス信号のパルス数Pを4、繰り返し回数を4回とすると、合計16個の受信パルス信号が受信部6に入力され、受信部6より、同じレンジビンにおける16点の複素デジタルビデオ信号が出力される。その後、合成帯域処理部7に同じレンジビンにおける16点の複素デジタルビデオ信号が入力される。合成帯域処理部7では、4つの複素デジタルビデオ信号ごとに、逆フーリエ変換を行うことにより高距離分解能化が行われる。その結果、合成帯域処理部7から、距離分解能が4倍に高分解能化され、かつ、信号電力対クラッタ電力比が4倍に向上した4個の高距離分解能後信号が出力される。
【0051】
このため、時空間適応信号処理部8に入力する信号は、距離分解能が4倍に高分解能化され、信号電力対クラッタ電力比が4倍向上し、パルス数が16個から4個に削減される。
【0052】
最後に、目標検出部9は、クラッタ成分が抑圧された後の信号から、目標を検出する機能を有する。例えば、ピーク値検出処理CFAR(Constant False Alarm Rate)処理など公知の方法によって目標を検出する。
【0053】
以上のように、この実施の形態1によれば、受信信号に対して、合成帯域処理部7で高距離分解能化を図り、時空間適応信号処理部8で用いる信号の数を削減した後、クラッタを抑圧する構成としたので、クラッタ抑圧に要する演算量を削減することができるようになり、かつ、低速で移動する目標の測距性能が改善される。さらには、合成帯域処理部7でクラッタ面積を小さくしてクラッタ電力を低減し、時空間適応信号処理部8でクラッタを抑圧するように構成したので、時空間適応信号処理部8のみでクラッタを抑圧する従来の構成に比べて、クラッタ抑圧性能が向上する効果がある。
【0054】
実施の形態2.
図9は、この発明の実施の形態2に係るレーダ装置の全体構成を示すブロック図である。前述した実施の形態1では、合成帯域処理部7で高距離分解能化を図る際、連続するP点の複素デジタルビデオ信号ごとに逆フーリエ変換を実施していたが、この実施の形態2では、目標検出部9で目標検出を行った結果に基づき、逆フーリエ変換に用いるP点の複素デジタルビデオ信号の選び方を変更することに特徴を有しており、図1に示す実施の形態1に係る構成に対して、目標検出部9での目標検出結果に応じて合成帯域処理部7で逆フーリエ変換に用いる複素デジタルビデオ信号の選び方を制御する制御部10をさらに備え、合成帯域処理部7は、制御部10からの制御に基づいて高距離分解能化に用いる複素デジタルビデオ信号の組み合わせ方を変えることにより、高距離分解能化を図ったパルス数を増やすようになされている。
【0055】
図9において、制御部10は、目標検出部9での目標検出結果に応じて、合成帯域処理部7で逆フーリエ変換に用いる複素デジタルビデオ信号の選び方を制御する機能を有する。クラッタ抑圧性能が不十分のため、目標検出部9で目標検出できなかった場合、時空間適応信号処理部8に入力するパルス数を増やすと、クラッタ抑圧に用いるフィルタの特性が向上してクラッタ抑圧性能が改善するため、目標検出できるようになる場合がある。
【0056】
このため、目標検出部9で目標検出できなかった場合、制御部10は、時空間適応信号処理部8に入力するパルス数を増やすように制御する。その制御例を図10に示す。実施の形態1の場合は、図10(a)に示すように、複素デジタルビデオ信号から4個の組み合わせを作り、それぞれ逆フーリエ変換を行い、図10(b)に示すように、合計4個の高距離分解能後の信号を得ていたが、この実施の形態2では、合成帯域処理部7で逆フーリエ変換に用いる複素デジタルビデオ信号の選び方を変える。
【0057】
すなわち、合成帯域処理部7において、図10(c)に示すように、受信周波数f0からf3にステップ状に変化する4個のパルス信号を4回繰り返した16個の受信パルス信号が受信部6に入力されるとする。受信部6では、16点の複素デジタルビデオ信号が生成される。合成帯域処理部7では、図10(d)に示すように、隣り合わせの4個の複素デジタルビデオ信号を選ぶ。隣り合わせの4個の複素デジタルビデオ信号は、必ず周波数f0,f1,f2,f3のパルス信号となる。このため、周波数f0,f1,f2,f3の順番となるように、4個の複素デジタルビデオ信号の順番を並べ換えることで、13個の組み合わせができ、それぞれ逆フーリエ変換を行う。逆フーリエ変換の回数は13回となるため、距離分解能が4倍になった13個のパルス信号が得られることになり、合成帯域処理部8に入力するパルス数を13個とすることができる。
【0058】
図11は、合成帯域処理部8に入力されるパルス数の違いにより、フィルタ係数の精度が向上する結果、クラッタを抑圧するフィルタの特性が向上することを模式的に説明する図である。図11(a)に示す合成帯域処理部8に入力するパルス数が少ない場合のフィルタ特性に対し、合成帯域処理部8に入力するパルス数が多くなると、パルス信号に含まれるクラッタの情報量が多くなり、クラッタの周波数成分の精度が向上する。すなわち、図11(b)に示すように、クラッタのドップラー周波数のみの成分を抑圧するためフィルタの帯域を狭帯域にでき、減衰量を大きくできる。このため、クラッタを抑圧するフィルタ特性が向上する。
【0059】
以上のように、この実施の形態2によれば、目標検出部9でクラッタ抑圧性能が不十分のため目標検出できなかった場合、時空間適応信号処理部8に入力するパルス数を増やすことができ、クラッタを抑圧するフィルタの特性が向上する結果、クラッタの抑圧性能が改善し、目標を検出できるようになる。
【0060】
実施の形態3.
図12は、この発明の実施の形態3に係るレーダ装置の全体構成を示すブロック図である。前述した実施の形態1及び2では、レーダ装置の処理方法及び処理パラメータを固定としていた。この実施の形態3によれば、目標検出部9の目標検出結果に応じて処理パラメータを変更し、送信部1、局部発振信号生成部2、受信部6、合成帯域処理部7及び時空間適応信号処理部8で行う処理を制御することに特徴を有しており、図1に示す実施の形態1に係る構成に対して、目標検出部9での目標検出結果に応じて、目標検出性能を改善させるため、送信部1、局部発振信号生成部2、受信部6、合成帯域処理部7、及び時空間適応信号処理部8に対し、処理パラメータの変更及び処理の制御を行う機能を有する処理制御部11をさらに備えている。
【0061】
一例として、距離分解能を高くして、クラッタを低減させる方法について説明する。図13は、目標検出部9の目標検出結果の例であり、目標よりも振幅の大きいクラッタが、レンジビン全体にわたり受信された状況を示している。目標はクラッタに埋もれているため、目標を検出することは困難となる。また、図13(a)に示すように、スレッショルド判定により、あらかじめ設定されたスレッショルドTよりも振幅の大きいレンジビンに目標が存在するとみなす場合、スレッショルドTより振幅の大きなクラッタを誤って目標と判定してしまう。このため、目標検出部9は、レンジビン全体の振幅がスレッショルドTを越える場合、クラッタが存在するとみなし、高距離分解能化を図るための制御を行う。
【0062】
高距離分解能化を図るためには、送信部1で生成するパルス数を増やすこと、局部発振信号生成部2の局部発振信号の周波数ステップ数を増やすこと、受信部6で周波数変換を行うパルス数を増やすこと、合成帯域処理部7で行う逆フーリエ変換に用いる点数を増やすこと、及び時空間適応信号処理部8で時空間適応信号処理に用いるパルス数の変更が必要となる。このため、制御処理部11は、高距離分解能化を図るための所要の処理パラメータを、送信部1、局部発振信号生成部2、受信部6、合成帯域処理部7、及び時空間適応信号処理部8へ設定する。設定変更後の処理パラメータでパルス信号の送受信処理を行う。そして、高距離分解能化を図ってクラッタを低減させ、目標検出部9で目標検出処理を行った結果を、図13(b)に示すように、再度スレッショルドTと比較し、特定のレンジビンの振幅のみがスレッショルドTよりも高くなれば、その特定のレンジビンに目標が存在するとみなし、高距離分解能化を図る処理を終了する。なお、レンジビン全体の振幅がスレッショルドTより大きいままであれば、さらに高距離分解能化を図る。
【0063】
以上のように、この実施の形態3によれば、目標検出部9の目標検出結果に応じて、処理パラメータを変更し、送信部1、局部発振信号生成部2、受信部6、合成帯域処理部7、及び時空間適応信号処理部8で行う処理方法を制御することができるようになるため、目標検出性能を改善できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】この発明の実施の形態1に係るレーダ装置の全体構成を示すブロック図である。
【図2】図1における送信部1から送信されるパルスの説明図である。
【図3】図1における局部発振信号生成部2により発振されて、送信部1及び受信部6に供給される局部発振信号を説明する図である。
【図4】図1における送信部1から送信された(4×P)個の送信パルス信号と、受信部6に入力される(4×P)個の受信パルス信号の例を示す図である。
【図5】図1における合成帯域処理部7の機能を説明するもので、(4×P)個の受信パルス信号から生成される(4×P)点の複素デジタルビデオ信号を使用し、高距離分解能化を図る流れを模式的に説明する図である。
【図6】図1における合成帯域処理部7による高距離分解能化の効果を説明する図である。
【図7】図1における時空間適応信号処理部8による時空間適応信号処理の処理手順を図である。
【図8】図1における時空間適応信号処理部8に入力する信号の特徴を説明する図である。
【図9】この発明の実施の形態2に係るレーダ装置の全体構成を示すブロック図である。
【図10】図9における制御部10により、時空間適応信号処理部8に入力するパルス数を増やすように制御例を示す図である。
【図11】図9における合成帯域処理部8に入力されるパルス数の違いにより、フィルタ係数の精度が向上する結果、クラッタを抑圧するフィルタの特性が向上することを模式的に説明する図である。
【図12】この発明の実施の形態3に係るレーダ装置の全体構成を示すブロック図である。
【図13】図12における目標検出部9の目標検出結果の例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0065】
1 送信部、2 局部発振信号生成部、3 送信アンテナ部、4 受信アンテナ部、5 アンテナ素子、6 受信部、7 合成帯域処理部、8 時空間適応信号処理部、9 目標検出部、10 制御部、11 処理制御部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルス信号を目標に向けて送信し、低速で移動する目標により反射したパルス信号を受信して目標を検出するレーダ装置において、
所定のパルス繰返し周期ごとに周波数がステップ状に変化する局部発振信号を生成する局部発振信号生成部と、
前記局部発振信号を用いてパルスごとの送信周波数をステップ状に変化させた有限個のパルス信号を生成し、送信信号として繰り返し送信する送信部と、
前記送信部で生成した送信信号を電波として空間に放射する送信アンテナ部と、
空間に放射された電波が目標に反射して到来してくるパルス状の反射電波を、受信信号として受信する受信アンテナ部と、
前記受信アンテナ部から出力される受信信号のパルスごとに前記局部発振信号を用いて周波数変換及びI、Q位相検波を行って複素ビデオ信号を生成し、生成した複素ビデオ信号をアナログ・デジタル変換して複素デジタルビデオ信号を出力する受信部と、
前記受信部から出力される、前記局部発振信号の周波数のステップ数に等しい個数の、同一のレンジビンの複素デジタルビデオ信号を用いて高距離分解能化を図る合成帯域処理部と、
前記合成帯域処理部から出力される、高距離分解能化を図った信号に対して、時間と空間の二次元の情報からクラッタを抑圧するフィルタを作成してフィルタ処理によりクラッタを抑圧する時空間適応信号処理部と、
前記時空間適応信号処理部から出力される信号に基づいて目標検出処理を行う目標検出部と
を備えたことを特徴とするレーダ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のレーダ装置において、
前記目標検出部での目標検出結果に応じて、前記合成帯域処理部による高距離分解能化に用いる複素デジタルビデオ信号の組み合わせ方を制御する制御部をさらに備えた
ことを特徴とするレーダ装置。
【請求項3】
請求項1に記載のレーダ装置において、
前記目標検出部での目標検出結果に応じて、前記送信部、前記局部発振信号生成部、前記受信部、前記合成帯域処理部、及び前記時空間適応信号処理部の処理パラメータの制御を行う処理制御部をさらに備えた
ことを特徴とするレーダ装置。
【請求項1】
パルス信号を目標に向けて送信し、低速で移動する目標により反射したパルス信号を受信して目標を検出するレーダ装置において、
所定のパルス繰返し周期ごとに周波数がステップ状に変化する局部発振信号を生成する局部発振信号生成部と、
前記局部発振信号を用いてパルスごとの送信周波数をステップ状に変化させた有限個のパルス信号を生成し、送信信号として繰り返し送信する送信部と、
前記送信部で生成した送信信号を電波として空間に放射する送信アンテナ部と、
空間に放射された電波が目標に反射して到来してくるパルス状の反射電波を、受信信号として受信する受信アンテナ部と、
前記受信アンテナ部から出力される受信信号のパルスごとに前記局部発振信号を用いて周波数変換及びI、Q位相検波を行って複素ビデオ信号を生成し、生成した複素ビデオ信号をアナログ・デジタル変換して複素デジタルビデオ信号を出力する受信部と、
前記受信部から出力される、前記局部発振信号の周波数のステップ数に等しい個数の、同一のレンジビンの複素デジタルビデオ信号を用いて高距離分解能化を図る合成帯域処理部と、
前記合成帯域処理部から出力される、高距離分解能化を図った信号に対して、時間と空間の二次元の情報からクラッタを抑圧するフィルタを作成してフィルタ処理によりクラッタを抑圧する時空間適応信号処理部と、
前記時空間適応信号処理部から出力される信号に基づいて目標検出処理を行う目標検出部と
を備えたことを特徴とするレーダ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のレーダ装置において、
前記目標検出部での目標検出結果に応じて、前記合成帯域処理部による高距離分解能化に用いる複素デジタルビデオ信号の組み合わせ方を制御する制御部をさらに備えた
ことを特徴とするレーダ装置。
【請求項3】
請求項1に記載のレーダ装置において、
前記目標検出部での目標検出結果に応じて、前記送信部、前記局部発振信号生成部、前記受信部、前記合成帯域処理部、及び前記時空間適応信号処理部の処理パラメータの制御を行う処理制御部をさらに備えた
ことを特徴とするレーダ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−250952(P2009−250952A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−103282(P2008−103282)
【出願日】平成20年4月11日(2008.4.11)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年4月11日(2008.4.11)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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