レーダ装置
【課題】JEMが発生した場合の目標相対速度を正しく算出し目標検出性能の向上を図ったレーダ装置を得る。
【解決手段】周波数が異なるキャリア信号を所定時間間隔でパルス変調した送信信号を放射する手段、目標で反射した信号を受ける受信手段、受信された時間領域の受信信号を周波数領域に変換する周波数領域変換手段206、周波数領域の受信信号における信号強度に基づき目標候補を検出し、目標候補の相対速度を求める目標候補検出手段207、目標候補検出手段で異なるキャリア周波数で検出された目標候補の位相差を求め位相差から目標候補の仮の相対距離を求める仮の相対距離算出手段208、目標候補の仮の相対距離に基づき目標候補を判定する目標判定手段209、目標と判定された目標候補の相対速度を目標候補検出手段で求めた目標の相対速度で求める目標相対速度算出手段210を有す。
【解決手段】周波数が異なるキャリア信号を所定時間間隔でパルス変調した送信信号を放射する手段、目標で反射した信号を受ける受信手段、受信された時間領域の受信信号を周波数領域に変換する周波数領域変換手段206、周波数領域の受信信号における信号強度に基づき目標候補を検出し、目標候補の相対速度を求める目標候補検出手段207、目標候補検出手段で異なるキャリア周波数で検出された目標候補の位相差を求め位相差から目標候補の仮の相対距離を求める仮の相対距離算出手段208、目標候補の仮の相対距離に基づき目標候補を判定する目標判定手段209、目標と判定された目標候補の相対速度を目標候補検出手段で求めた目標の相対速度で求める目標相対速度算出手段210を有す。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はレーダ装置、特にJEM(Jet Engine Modulation:ジェットエンジン変調)が発生した場合の目標相対距離の算出に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、JEMが発生した場合の目標相対距離算出においては、例えば下記特許文献1の図7に示されているように、目標のドップラ周波数は、JEMより高いドップラ周波数に検出されることを想定している。
【0003】
FM(Frequency Modulation:周波数変調)フェーズCの受信ビデオ信号をFFT(Fast Fourier Transform:高速フーリエ変換)することにより目標、JEMのドップラ周波数を算出する。また、FMフェーズBの受信ビート信号をFFTすることにより目標、JEMのビート周波数を算出する。FMフェーズCのドップラ周波数がFMフェーズBのビート周波数より小さい場合、測距回路が目標相対速度を算出する。さらに、距離判定回路は、算出された相対距離がJEMの距離より小さい場合、真の目標相対距離として、表示器に出力する。
【0004】
目標のドップラ周波数がJEMより高い周波数に検出されることを前提にすることによって、JEMの相対距離を誤って目標の相対距離とせず、目標相対距離、目標検出性能の改善が期待できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平6−56413号公報(図1,3,7,8)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら従来のレーダ装置では、目標のドップラ周波数がJEMより高い周波数に検出されることを前提にしているため、目標のドップラ周波数がJEMより低い周波数に検出され、かつ、目標のビート周波数がJEMより低い周波数に検出された場合、目標相対距離は算出されるが、目標相対速度が誤って算出される問題があった。
【0007】
この発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、JEMが発生した場合の目標相対速度を正しく算出し、目標検出性能の向上を図ったレーダ装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、目標との相対速度を算出し目標検出を行うレーダ装置であって、周波数が異なるキャリア信号を所定の時間間隔でパルス変調した送信信号を放射する送信手段と、前記目標で反射して戻った前記送信信号を受信信号として受信する受信手段と、前記受信手段で受信された時間領域の受信信号を周波数領域に変換する周波数領域変換手段と、前記周波数領域変換手段で変換された前記周波数領域の受信信号における信号の強度に基づく演算処理を行い、目標候補を検出するとともに、目標候補の相対速度を算出する目標候補検出手段と、前記目標候補検出手段で異なるキャリア周波数で検出された前記目標候補の位相差を算出しこの位相差から目標候補の仮の相対距離を算出する仮の相対距離算出手段と、前記仮の相対距離算出手段から入力された目標候補の仮の相対距離に基づき目標候補を判定する目標判定手段と、前記目標判定手段で目標と判定された目標候補の相対速度を目標候補検出手段で算出された目標の相対速度として算出する目標相対速度算出手段と、を備えたことを特徴とするレーダ装置にある。
【発明の効果】
【0009】
この発明では、JEMが発生した場合の目標相対速度を正しく算出することができるレーダ装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明の実施の形態1に係わるレーダ装置の構成を示す図である。
【図2】この発明の実施の形態1におけるレーダと目標の関係を示す図である。
【図3】この発明の実施の形態1における送信信号と受信信号の関係を示す図である。
【図4】この発明の実施の形態1における目標候補検出手段による周波数領域での目標検出処理を示す図である。
【図5】この発明の実施の形態1における目標候補検出手段でのCFAR処理の結果、CFAR閾値を越えるセルが集合した場合の処理内容を示す図である。
【図6】この発明の実施の形態1における目標に搭載されているジェットエンジンに起因にするJEMの影響により複数の目標候補が検出されることを示す図である。
【図7】この発明の実施の形態1における仮の相対距離算出手段による目標とJEM1、JEM2が目標候補として検出された場合の動作を示す図である。
【図8】この発明の実施の形態1におけるレーダと目標とJEMの関係と目標との相対距離と2つの送信周波数でアンビギュィティなく測距できる相対距離の関係を示す図である。
【図9】この発明の実施の形態1における目標判定手段に入力された目標とJEMの目標候補の仮の相対距離を示す図である。
【図10】この発明の実施の形態1における目標判定手段の判定フローを示す図である。
【図11】この発明の実施の形態1におけるJEMが目標と同じ相対速度に発生した場合を示す図である。
【図12】この発明の実施の形態2に係わるレーダ装置の構成を示す図である。
【図13】この発明の実施の形態2における目標とJEMが同じ仮の相対距離になった場合を示す図である。
【図14】この発明の実施の形態2におけるJEMの初期位相が異なった場合の測距結果を示す図である。
【図15】この発明の実施の形態2における送信周波数と送信信号の関係を示す図である。
【図16】この発明の実施の形態2におけるサイドローブの影響と窓関数処理の効果を示す図である。
【図17】この発明の実施の形態2における相対距離差算出手段での目標とJEM1、JEM2が目標候補として検出された場合の動作を示す図である。
【図18】この発明の実施の形態2におけるレーダと目標、JEMの関係を示す図である。
【図19】この発明の実施の形態2における目標とJEMの目標候補の仮の相対距離と相対距離差の関係を示す図である。
【図20】この発明の実施の形態2における目標とJEMの目標候補の相対距離差を示す図である。
【図21】この発明の実施の形態2における目標判定手段の判定フローを示す図である。
【図22】この発明の実施の形態3に係わるレーダ装置の構成を示す図である。
【図23】この発明の実施の形態3における目標が検出されない場合の目標候補の相対距離差を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、この発明によるレーダ装置を各実施の形態に従って図面を用いて説明する。なお、各実施の形態において、同一もしくは相当部分は同一符号で示し、重複する説明は省略する。
【0012】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1に係わるレーダ装置の構成を示す図である。レーダ装置は、送信RF(高周波)信号を送信してこれによる反射RF信号を受信する空中線1、送信機2、受信機4、送信機2と受信機4を切り替えて空中線1に接続する送受切替器3、受信機4で得られた受信ビデオ信号の処理を行う例えばコンピュータからなる信号処理器205A、および信号処理器205Aでの処理結果等を表示する表示器20を備えている。なお、送信機2と送受切替器3と空中線1が送信手段、空中線1と送受切替器3と受信機4が受信手段を構成する。
【0013】
また、信号処理器205Aは、周波数領域変換手段206、目標候補検出手段207、仮の相対距離算出手段208、目標判定手段209、目標相対速度算出手段210を備えている。
【0014】
図2はレーダと目標の関係を説明するための図、図3は送信信号と受信信号の関係の説明するための図である。
【0015】
以下、図2,3を参照して受信ビデオ信号を生成するまでの動作を説明する。図2,3において、f1とf2は送信(信号)周波数、Δfはf1とf2の周波数間隔、Tfは同じ送信周波数を送信する時間(送信時間)、φ01とφ02は送信周波数f1とf2の送信信号の初期位相、R1とR2は送信周波数f1とf2で観測した際の目標相対距離、φ1とφ2は送信周波数f1とf2で観測した際の周波数領域の目標の位相、mは送信周波数番号である。
【0016】
送信機2は、キャリア信号を送信時間Tfにパルス繰り返し周期(以下PRI)でパルス変調して送信RF信号を生成し、送受切替器3に出力する。また、送信機2は、送信時間Tfの間、送信周波数f1の送信RF信号を生成した後、次の送信時間Tfの間、送信周波数f1より周波数間隔Δfだけ高い送信周波数f2の送信RF信号を生成する。このように、次の送信時間Tfの間、前の送信時間Tfの間に用いた送信周波数より周波数間隔Δfだけ高い送信周波数で動作する。ここでは、次の送信時間に周波数間隔Δfだけ高い送信周波数で動作した場合について説明するが、次の送信時間に周波数間隔Δfだけ低い送信周波数で動作した場合も同じ原理で処理が可能である。
【0017】
送受切替器3は、送信機2から入力された送信RF信号を空中線1に出力する。この結果、空中線1から次式(1)(2)で表される送信RF信号が空中に放射される。ここで、Txf1(t)は送信周波数f1の送信RF信号、Txf2(t)は送信周波数f2の送信RF信号、Aは送信RF信号の振幅を表す。
【0018】
【数1】
【0019】
空中に放射された送信RF信号は、目標で反射され、次式(3)(4)で表される反射RF信号として空中線1に入射する。ここで、Rxf1(t)は送信周波数f1の反射RF信号、Rxf2(t)は送信周波数f2の反射RF信号、A’は反射RF信号の振幅、vは目標相対速度、R1とR2は各送信周波数で送受信した時の目標相対距離、cは光速を表す。
【0020】
【数2】
【0021】
そこで、空中線1は、入射してきた反射RF信号を受信し、受信RF信号として送受切替器3に出力する。送受切替器3は、空中線1から入力された受信RF信号を受信機4に出力する。そして、受信機4は、送受切替器3から入力された受信RF信号を狭帯域フィルタを通過させ、増幅器での増幅、位相検波器での位相検波の後(共に図示省略)、次式(5)(6)で表される受信ビデオ信号に変換し、信号処理器205Aに出力する。ここで、Vf1(n)は送信周波数f1の受信ビデオ信号、Vf2(n)は送信周波数f2の受信ビデオ信号、ASは受信ビデオ信号の振幅、nは送信時間Tf間のパルス番号、Nは送信時間Tf間のパルス数、Δtは時間領域のサンプリング間隔(ここでは、パルス繰り返し周期と同じである)を表す。
【0022】
【数3】
【0023】
信号処理器205Aは、CPU、RAM、ROM、インターフェース回路等(共に図示省略)を有するコンピュータから構成され、ROMに記憶されるプログラムに従って、CPUで演算処理が行われる。信号処理器205Aの処理結果は、コンピュータのRAMや専用メモリに記録される。
【0024】
以降、各手段の処理内容について説明する。
周波数領域変換手段206は、受信機4から入力された時間領域の受信ビデオ信号を周波数領域に変換する。
周波数領域変換手段206は時間領域の受信ビデオ信号Vfm(n)に対し、次式(7)に表される高速フーリエ変換を行い、周波数領域に変換された受信ビデオ信号Pfm(k)を目標候補検出手段207に出力する。ここで、NfftはFFT点数を表す。ただし、Nfft>Nの場合は0を代入する。また、周波数領域のサンプリング間隔ΔFsampは式(8)により表される。Tpriはパルス繰り返し周期(PRI:Pulse Repetition Interval)を表す。周波数領域変換手段206は、パルス数より多いFFT点数を用いて高速フーリエ変換することで、周波数領域の受信ビデオ信号を高精度にサンプリングする。
【0025】
【数4】
【0026】
次に、目標候補検出手段207において行われる、CFAR(Constant False Alarm Rate:一定誤警報確率)処理による目標検出の処理内容について説明する。図4は目標候補検出手段207による周波数領域での目標検出処理を説明するための図である。より具体的にはこの図4は、CFAR処理に関わる注目セル、ガードセル、サンプルセルを説明するための図である。また、ここでは周波数領域に変換された受信ビデオ信号Pfm(k)から1つの目標候補が検出された場合について説明する。
【0027】
目標候補検出手段207は、周波数領域変換手段206から得られる周波数領域に変換された受信ビデオ信号Pfm(k)に対し、下記式(9)によりCFAR処理を行い、目標候補を検出する。ここで、Pfm,CFAR(k)は送信周波数番号mの周波数領域の受信ビデオ信号のCFAR処理による目標候補検出結果、(abs(Pfm(k)))は周波数領域に変換された受信ビデオ信号Pfm(k)の振幅を表し、目標候補は、0が設定される(他は1を設定)。
【0028】
また、CFAR閾値CFAR_thm(k)は、下記式(10)により算出する。ここで、CFAR_corはCFAR係数、Samp_cellm(k)はサンプルセル、ave(Z(p))は配列Z(p)(Z(p)=(abs(Samp_cellm(k))))の平均値を表す。ただし、CFAR閾値CFAR_thm(k)を越えるセルが集合した場合には、集合のなかで振幅の最大値を示すセルを目標候補として検出する。図5はこの実施の形態の目標候補検出手段207における、CFAR処理の結果、CFAR閾値を越えるセル(斜線(ハッチング)で示す)が集合した場合の処理内容を説明するための図である。目標候補検出手段207は、周波数領域セル番号k’で検出された目標候補の相対速度v’を下記式(11)により算出する。ここで、f(k’)は周波数領域セル番号k’の周波数、f0は送信周波数を表す。目標候補検出手段207は、検出した目標候補とその相対速度を仮の相対距離算出手段208に出力する。
【0029】
【数5】
【0030】
図6は目標に搭載されているジェットエンジンに起因にするJEMの影響により複数の目標候補が検出されることを説明するための図である。目標が一つの場合においても、目標に搭載されているジェットエンジンに起因するJEMの影響により、図6に示すように複数の目標候補が検出されることがある。このような場合に真の目標の相対速度算出が困難になる。
【0031】
仮の相対距離算出手段208は、目標候補から目標とJEMを区別するために、距離高分解能にし、距離アンビギュィティ(距離不確定)がある仮の相対距離を算出する。
仮の相対距離算出手段208は、目標候補検出手段207から入力された異なる送信周波数で検出された目標候補の位相を算出する。式(5)で表される受信ビデオ信号Vf1(n)に対して、Nfftで離散フーリエ変換を行うと、その結果は次式(12)で表される。
【0032】
【数6】
【0033】
式(12)より、kが次式(13)となるときに送信周波数f1の目標候補の周波数領域に変換された受信ビデオ信号Pf1(k)の強度が最大値となることが分かる。
【0034】
【数7】
【0035】
c,f1,Nfft,Δtは既知であるため、次式(13)で強度が最大値となるkをk1とすると、送信周波数f1の目標候補の周波数領域に変換された受信ビデオ信号Pf1(k1)の位相φ1は次式(14)で表される。
【0036】
【数8】
【0037】
上記送信周波数f1の場合と同様に、送信周波数f2の目標候補の周波数領域に変換された受信ビデオ信号Pf2(k2)の位相φ2は次式(15)で表される。
【0038】
【数9】
【0039】
仮の相対距離算出手段208は、以上の関係より、その位相差Δφ21を下記式(16)により算出する。図7は目標とJEM1、JEM2が目標候補として検出された場合の動作を説明するための図である。位相差算出の際、図7のように送信周波数f1とf2で検出された目標候補の相対速度が最も近いもので計算する。
【0040】
【数10】
【0041】
次に、仮の相対距離算出手段208は、下記式(17)により位相差Δφ21から仮の相対距離を算出する。ただし、2つの送信周波数でアンビギュィティなく測距できる最大距離Rmaxは下記式(18)、距離分解能は下記式(19)で求められる。距離分解能ΔRで信号処理性能を持つマッチドフィルタの場合は通過帯域Δfのフィルタが必要であるのに比べ、この実施の形態では通過帯域Δfと比べ十分小さい通過帯域でよい狭帯域フィルタで同等の距離分解能を得ることが可能で、装置規模の縮小が可能になる。
【0042】
【数11】
【0043】
図8はレーダと目標とJEMの関係と目標との相対距離と2つの送信周波数でアンビギュィティなく測距できる相対距離の関係を説明するための図である。目標との相対距離R1、JEM発生源との相対距離R1J、2つの送信周波数でアンビギュィティなく測距できる最大距離Rmaxは図8のように表わされる。仮の相対距離算出手段208は、JEMにより検出された目標候補についても式(14)〜(17)を用いて、位相、位相差、仮の相対距離を算出する。JEM発生源は同じなので、JEM同士の初期位相が同じとした場合、位相は下記式(20)(21)、位相差は下記式(22)、仮の相対距離は下記式(23)となる。
【0044】
【数12】
【0045】
仮の相対距離算出手段208は、以上の計算により算出した目標候補の仮の相対距離を目標判定手段209に出力する。ここでは、位相差を仮の相対距離に換算して、目標判定を行うが、位相差による目標判定も同様に行うことが可能である。図9は目標判定手段209に入力された目標とJEMの目標候補の仮の相対距離を示す図である。目標とJEMの仮の相対距離は式(17)と(23)が示すように異なる。また、JEM同士は仮の相対距離の所定仮の相対距離範囲内になることが分かる。
【0046】
図10は目標判定手段209の判定フローを示す。目標判定手段209は、目標とJEMの仮の相対距離が異なることを利用して、図10に示す処理フローに従い、目標候補の仮の相対距離の所定仮の相対距離範囲内に、他の目標候補の仮の相対距離が存在しない場合、目標と判定し、存在する場合、JEMと判定する。
【0047】
図11はJEMが目標と同じ相対速度に発生した場合を説明するための図である。図11に示すように、JEMが目標に影響を与える相対速度に発生する場合がある。このようにJEMの影響が大きい場合、目標とJEMが混信し、目標の仮の相対距離は下記式(24)により表わされる。このように、目標とJEMが混信した場合の仮の相対距離は、目標相対速度以外に発生したJEMと異なる仮の相対距離になるため、目標判定手段209は、同様の考え方に従い、図10に示す処理フローに従い、目標とJEMを判定する。目標判定手段209は、目標とJEMの判定結果を目標相対速度算出手段210に出力する。
【0048】
【数13】
【0049】
目標相対速度算出手段210は、目標判定手段209から入力された目標と判定された目標候補の相対速度を、目標相対速度として表示器20に出力する。表示器20は、目標候補から目標と判定された場合、目標情報として、時刻tの相対速度を画面上に表示する。
【0050】
以上のようにこの実施の形態によれば、異なる送信周波数で観測した目標とJEMから、仮の相対距離算出手段208により目標とJEMの仮の相対距離を算出し、目標判定手段209は目標がJEMの仮の相対距離と異なることを利用して、目標とJEMを判定するため、誤った目標相対速度を算出することがなくなり、目標検出性能と目標相対速度算出性能の向上を図ったレーダ装置を得ることができる。また、距離分解能ΔRで信号処理性能を持つマッチドフィルタの場合は通過帯域Δfのフィルタが必要なのに比べ、この実施の形態では通過帯域Δfと比べ十分小さい通過帯域でよい狭帯域フィルタで同等の距離分解能を得ることが可能で、装置規模の縮小が可能になる。また、装置規模の縮小が可能のため、距離高分解能で観測し、短い観測時間で目標とJEMの判定が可能になる。
【0051】
実施の形態2.
図12はこの発明の実施の形態2に係わるレーダ装置の構成を示す図である。この実施の形態における構成は、上記実施の形態における構成と比較すると、信号処理器205Bが、周波数領域変換手段206に代えて周波数領域変換手段206B、目標判定手段209に代えて目標判定手段209Bを備え、さらに仮の相対距離算出手段208と目標判定手段209Bの間に相対距離差算出手段211を備えている点が異なっている。
【0052】
図13は目標と(目標相対速度以外に発生した)JEMが同じ仮の相対距離になった場合を説明するための図である。上記実施の形態1では、図9に示すように目標の仮の相対距離の所定仮の相対距離範囲内にJEM(目標に影響を与えない相対速度に発生したJEM)が存在するこのを前提としている。しかし、図13のように目標の相対距離が異なる送信周波数でアンビギュィティなく測距できる最大距離Rmaxの折返しの関係で、目標(JEMが目標に影響を与える相対速度に発生)の仮の相対距離が、JEM1とJEM2の仮の相対距離の所定仮の相対距離範囲内になる場合、実施の形態1では、目標とJEMの判定ができない。
【0053】
また、JEMは複数のブレードからの反射信号が共振し発生するため、異なる送信周波数で観測したJEMが同じ初期位相にならない可能性がある。図14はJEMの初期位相が異なった場合の測距結果を説明するための図である。JEMの初期位相が異なった場合、図14に示すように、位相差にオフセットが加算され、JEM同士が仮の相対距離の所定仮の相対距離範囲内に存在せず、上記実施の形態1では、目標とJEMの判定が困難になる。
【0054】
図15はこの実施の形態2における送信周波数と送信信号の関係を説明するための図である。この実施の形態2では、上記の場合においても目標とJEMの判定を行うために、図15に示すように、異なる送信周波数で観測された信号を用いて、目標とJEMの判定を可能にする。以下、図13の場合を例として上記実施の形態と異なる部分について説明する。
【0055】
図16はサイドローブの影響と窓関数処理の効果を説明するための図である。図16の(a)に示すように隣接する目標候補の強度が大きい場合、隣接する目標候補のサイドローブが、目標候補の位相に影響を与え、正しく仮の相対距離を算出することが困難になる。
【0056】
周波数領域変換手段206Bは、受信機4から入力された時間領域の受信ビデオ信号に対し次式(25)により窓関数処理を行う。ここで、W(n)は窓関数を表し、例えば窓関数としてハミング窓を用いた場合は次式(26)により表される。
【0057】
【数14】
【0058】
周波数領域変換手段206Bは、窓関数処理が行われた時間領域の受信ビデオ信号を周波数領域に変換し、周波数領域に変換された受信ビデオ信号を目標候補検出手段207に出力する。図16の(b)に示すように、窓関数処理を行うことによりサイドローブが低減され、隣接する目標候補への影響が低減し、精度良く仮の相対距離を算出することが可能になる。
【0059】
相対距離差算出手段211は、仮の相対距離算出手段208から送信周波数f1とf2で検出された目標候補の仮の相対距離と、送信周波数f2とf3で検出された目標候補の仮の相対距離が入力される。図17は目標とJEM1、JEM2が目標候補として検出された場合の相対距離差算出手段211の動作を説明するための図である。また図18はレーダと目標、JEMの関係を説明するための図である。送信周波数f2とf3で検出された目標の位相差は下記式(27)、相対距離差算出手段211に入力される送信周波数f2とf3で検出された目標の仮の相対距離は下記式(28)で表わされる。また、相対距離差算出手段211に入力される送信周波数f2とf3で検出されたJEMの仮の相対距離は下記式(29)で表わされる。
【0060】
【数15】
【0061】
相対距離差算出手段211は、送信周波数f1とf2で検出された目標候補の仮の相対距離と送信周波数f2とf3で検出された目標候補の仮の相対距離の差を下記式により算出する。ただし、目標の場合を下記式(30)、JEMの場合を下記式(31)に示す。相対距離差算出手段211は、算出した目標候補の相対距離差を目標判定手段209Bに出力する。
【0062】
【数16】
【0063】
このように、目標(JEMが発生しているが目標に影響が小さい場合)とJEMによる目標候補の相対距離差は所定相対距離差範囲内の値を示す。しかし、図19,図20に示すように目標に影響を与えるJEMが発生した場合、仮の相対距離を誤り、他の目標候補と異なる相対距離差を算出することになる。図19は目標とJEMの目標候補の仮の相対距離と相対距離差の関係を示す図、図20は目標とJEMの目標候補の相対距離差を示す図である。
【0064】
図21は目標判定手段209Bの判定フローを示す。目標判定手段209Bは、目標とJEMの相対距離差が異なることを利用して、図21に示す処理フローに従い、目標候補の相対距離差の所定相対距離差範囲内に他の目標候補の相対距離差が存在する場合、JEMと判定し、他の目標候補の相対距離差が存在せず、かつ、JEMと判定された目標候補がある場合、目標と判定し、他の目標候補の相対距離差が存在せず、かつ、JEMと判定された目標候補がない場合、第2の目標候補と判定する。第2の目標候補は、さらに送信周波数を変更して処理を続行する。そして目標判定手段209Bは、目標とJEMの判定結果を目標相対速度算出手段210に出力する。
【0065】
以上のようにこの実施の形態によれば、異なる送信周波数で観測した目標とJEMの仮の相対距離が所定仮の相対距離範囲内になり目標とJEMの判定が困難であったが、異なる送信周波数で観測された信号を用いて、相対距離差算出手段211により目標とJEMの相対距離差を算出し、目標判定手段209Bは目標がJEMと異なる相対距離差に算出されないことを利用し、目標とJEMを判定するため、誤った目標相対速度を算出することがなくなり、目標検出性能と目標相対速度算出性能の向上を図ったレーダ装置を得ることができる。また、相対距離差を用いているが、位相差の差を用いた場合も同様の効果を得ることが可能である。
【0066】
また、距離分解能ΔRで信号処理性能を持つマッチドフィルタの場合は通過帯域Δfのフィルタが必要に比べ、この実施の形態は通過帯域Δfと比べ十分小さい通過帯域でよい狭帯域フィルタで同等の距離分解能を得ることが可能で、装置規模の縮小が可能になる。また、装置規模の縮小が可能のため、距離高分解能で観測し、短い観測時間で目標とJEMの判定が可能になる。
【0067】
また、周波数領域変換手段206Bを備えたことにより、窓関数処理を行うことにより目標候補のサイドローブが低減され、隣接する目標候補への影響が低減し、正しく仮の相対距離を算出することが可能になる。
【0068】
実施の形態3.
図22はこの発明の実施の形態3に係わるレーダ装置の構成を示す図である。この実施の形態における構成は、上記実施の形態2における構成と比較すると、信号処理器205Cが、目標相対速度算出手段210に代えて目標相対速度算出手段210Bを備えている点が異なっている。
【0069】
図23は目標が検出されない場合の目標候補の相対距離差を説明するための図である。上記実施の形態の目標相対速度算出手段210は、目標と判定された目標候補の相対速度を目標相対速度として算出しており、図23に示すように目標候補から目標と判定されない場合、目標相対速度を算出することができなくなる。
【0070】
この実施の形態は、上記の場合においても目標相対速度を算出するためのものであり、以下、図23の場合を例として上記実施の形態2と異なる部分について説明する。
【0071】
目標相対速度算出手段210Bは、次式(32)により目標相対速度を算出する。目標相対速度算出手段210Bは、算出した目標相対速度を表示器20に出力する。
【0072】
【数17】
【0073】
以上のようにこの実施の形態によれば、目標候補に目標が含まれていない場合においても、異なる送信周波数で観測された信号を用いて、目標相対速度算出手段210Bにより相対距離差から目標相対速度を算出することが可能になり、目標検出性能と目標相対速度算出性能の向上を図ったレーダ装置を得ることができる。
【0074】
なお、この発明は上記の各実施の形態に限定されるものではなく、これらの可能な組み合わせを全て含むことは云うまでもない。
【符号の説明】
【0075】
1 空中線、2 送信機、3 送受切替器、4 受信機、205A,205B,205C 信号処理器、206,206B 周波数領域変換手段、207 目標候補検出手段、208 仮の相対距離算出手段、209,209B 目標判定手段、210,210B 目標相対速度算出手段、211 相対距離差算出手段。
【技術分野】
【0001】
この発明はレーダ装置、特にJEM(Jet Engine Modulation:ジェットエンジン変調)が発生した場合の目標相対距離の算出に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、JEMが発生した場合の目標相対距離算出においては、例えば下記特許文献1の図7に示されているように、目標のドップラ周波数は、JEMより高いドップラ周波数に検出されることを想定している。
【0003】
FM(Frequency Modulation:周波数変調)フェーズCの受信ビデオ信号をFFT(Fast Fourier Transform:高速フーリエ変換)することにより目標、JEMのドップラ周波数を算出する。また、FMフェーズBの受信ビート信号をFFTすることにより目標、JEMのビート周波数を算出する。FMフェーズCのドップラ周波数がFMフェーズBのビート周波数より小さい場合、測距回路が目標相対速度を算出する。さらに、距離判定回路は、算出された相対距離がJEMの距離より小さい場合、真の目標相対距離として、表示器に出力する。
【0004】
目標のドップラ周波数がJEMより高い周波数に検出されることを前提にすることによって、JEMの相対距離を誤って目標の相対距離とせず、目標相対距離、目標検出性能の改善が期待できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平6−56413号公報(図1,3,7,8)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら従来のレーダ装置では、目標のドップラ周波数がJEMより高い周波数に検出されることを前提にしているため、目標のドップラ周波数がJEMより低い周波数に検出され、かつ、目標のビート周波数がJEMより低い周波数に検出された場合、目標相対距離は算出されるが、目標相対速度が誤って算出される問題があった。
【0007】
この発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、JEMが発生した場合の目標相対速度を正しく算出し、目標検出性能の向上を図ったレーダ装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、目標との相対速度を算出し目標検出を行うレーダ装置であって、周波数が異なるキャリア信号を所定の時間間隔でパルス変調した送信信号を放射する送信手段と、前記目標で反射して戻った前記送信信号を受信信号として受信する受信手段と、前記受信手段で受信された時間領域の受信信号を周波数領域に変換する周波数領域変換手段と、前記周波数領域変換手段で変換された前記周波数領域の受信信号における信号の強度に基づく演算処理を行い、目標候補を検出するとともに、目標候補の相対速度を算出する目標候補検出手段と、前記目標候補検出手段で異なるキャリア周波数で検出された前記目標候補の位相差を算出しこの位相差から目標候補の仮の相対距離を算出する仮の相対距離算出手段と、前記仮の相対距離算出手段から入力された目標候補の仮の相対距離に基づき目標候補を判定する目標判定手段と、前記目標判定手段で目標と判定された目標候補の相対速度を目標候補検出手段で算出された目標の相対速度として算出する目標相対速度算出手段と、を備えたことを特徴とするレーダ装置にある。
【発明の効果】
【0009】
この発明では、JEMが発生した場合の目標相対速度を正しく算出することができるレーダ装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明の実施の形態1に係わるレーダ装置の構成を示す図である。
【図2】この発明の実施の形態1におけるレーダと目標の関係を示す図である。
【図3】この発明の実施の形態1における送信信号と受信信号の関係を示す図である。
【図4】この発明の実施の形態1における目標候補検出手段による周波数領域での目標検出処理を示す図である。
【図5】この発明の実施の形態1における目標候補検出手段でのCFAR処理の結果、CFAR閾値を越えるセルが集合した場合の処理内容を示す図である。
【図6】この発明の実施の形態1における目標に搭載されているジェットエンジンに起因にするJEMの影響により複数の目標候補が検出されることを示す図である。
【図7】この発明の実施の形態1における仮の相対距離算出手段による目標とJEM1、JEM2が目標候補として検出された場合の動作を示す図である。
【図8】この発明の実施の形態1におけるレーダと目標とJEMの関係と目標との相対距離と2つの送信周波数でアンビギュィティなく測距できる相対距離の関係を示す図である。
【図9】この発明の実施の形態1における目標判定手段に入力された目標とJEMの目標候補の仮の相対距離を示す図である。
【図10】この発明の実施の形態1における目標判定手段の判定フローを示す図である。
【図11】この発明の実施の形態1におけるJEMが目標と同じ相対速度に発生した場合を示す図である。
【図12】この発明の実施の形態2に係わるレーダ装置の構成を示す図である。
【図13】この発明の実施の形態2における目標とJEMが同じ仮の相対距離になった場合を示す図である。
【図14】この発明の実施の形態2におけるJEMの初期位相が異なった場合の測距結果を示す図である。
【図15】この発明の実施の形態2における送信周波数と送信信号の関係を示す図である。
【図16】この発明の実施の形態2におけるサイドローブの影響と窓関数処理の効果を示す図である。
【図17】この発明の実施の形態2における相対距離差算出手段での目標とJEM1、JEM2が目標候補として検出された場合の動作を示す図である。
【図18】この発明の実施の形態2におけるレーダと目標、JEMの関係を示す図である。
【図19】この発明の実施の形態2における目標とJEMの目標候補の仮の相対距離と相対距離差の関係を示す図である。
【図20】この発明の実施の形態2における目標とJEMの目標候補の相対距離差を示す図である。
【図21】この発明の実施の形態2における目標判定手段の判定フローを示す図である。
【図22】この発明の実施の形態3に係わるレーダ装置の構成を示す図である。
【図23】この発明の実施の形態3における目標が検出されない場合の目標候補の相対距離差を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、この発明によるレーダ装置を各実施の形態に従って図面を用いて説明する。なお、各実施の形態において、同一もしくは相当部分は同一符号で示し、重複する説明は省略する。
【0012】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1に係わるレーダ装置の構成を示す図である。レーダ装置は、送信RF(高周波)信号を送信してこれによる反射RF信号を受信する空中線1、送信機2、受信機4、送信機2と受信機4を切り替えて空中線1に接続する送受切替器3、受信機4で得られた受信ビデオ信号の処理を行う例えばコンピュータからなる信号処理器205A、および信号処理器205Aでの処理結果等を表示する表示器20を備えている。なお、送信機2と送受切替器3と空中線1が送信手段、空中線1と送受切替器3と受信機4が受信手段を構成する。
【0013】
また、信号処理器205Aは、周波数領域変換手段206、目標候補検出手段207、仮の相対距離算出手段208、目標判定手段209、目標相対速度算出手段210を備えている。
【0014】
図2はレーダと目標の関係を説明するための図、図3は送信信号と受信信号の関係の説明するための図である。
【0015】
以下、図2,3を参照して受信ビデオ信号を生成するまでの動作を説明する。図2,3において、f1とf2は送信(信号)周波数、Δfはf1とf2の周波数間隔、Tfは同じ送信周波数を送信する時間(送信時間)、φ01とφ02は送信周波数f1とf2の送信信号の初期位相、R1とR2は送信周波数f1とf2で観測した際の目標相対距離、φ1とφ2は送信周波数f1とf2で観測した際の周波数領域の目標の位相、mは送信周波数番号である。
【0016】
送信機2は、キャリア信号を送信時間Tfにパルス繰り返し周期(以下PRI)でパルス変調して送信RF信号を生成し、送受切替器3に出力する。また、送信機2は、送信時間Tfの間、送信周波数f1の送信RF信号を生成した後、次の送信時間Tfの間、送信周波数f1より周波数間隔Δfだけ高い送信周波数f2の送信RF信号を生成する。このように、次の送信時間Tfの間、前の送信時間Tfの間に用いた送信周波数より周波数間隔Δfだけ高い送信周波数で動作する。ここでは、次の送信時間に周波数間隔Δfだけ高い送信周波数で動作した場合について説明するが、次の送信時間に周波数間隔Δfだけ低い送信周波数で動作した場合も同じ原理で処理が可能である。
【0017】
送受切替器3は、送信機2から入力された送信RF信号を空中線1に出力する。この結果、空中線1から次式(1)(2)で表される送信RF信号が空中に放射される。ここで、Txf1(t)は送信周波数f1の送信RF信号、Txf2(t)は送信周波数f2の送信RF信号、Aは送信RF信号の振幅を表す。
【0018】
【数1】
【0019】
空中に放射された送信RF信号は、目標で反射され、次式(3)(4)で表される反射RF信号として空中線1に入射する。ここで、Rxf1(t)は送信周波数f1の反射RF信号、Rxf2(t)は送信周波数f2の反射RF信号、A’は反射RF信号の振幅、vは目標相対速度、R1とR2は各送信周波数で送受信した時の目標相対距離、cは光速を表す。
【0020】
【数2】
【0021】
そこで、空中線1は、入射してきた反射RF信号を受信し、受信RF信号として送受切替器3に出力する。送受切替器3は、空中線1から入力された受信RF信号を受信機4に出力する。そして、受信機4は、送受切替器3から入力された受信RF信号を狭帯域フィルタを通過させ、増幅器での増幅、位相検波器での位相検波の後(共に図示省略)、次式(5)(6)で表される受信ビデオ信号に変換し、信号処理器205Aに出力する。ここで、Vf1(n)は送信周波数f1の受信ビデオ信号、Vf2(n)は送信周波数f2の受信ビデオ信号、ASは受信ビデオ信号の振幅、nは送信時間Tf間のパルス番号、Nは送信時間Tf間のパルス数、Δtは時間領域のサンプリング間隔(ここでは、パルス繰り返し周期と同じである)を表す。
【0022】
【数3】
【0023】
信号処理器205Aは、CPU、RAM、ROM、インターフェース回路等(共に図示省略)を有するコンピュータから構成され、ROMに記憶されるプログラムに従って、CPUで演算処理が行われる。信号処理器205Aの処理結果は、コンピュータのRAMや専用メモリに記録される。
【0024】
以降、各手段の処理内容について説明する。
周波数領域変換手段206は、受信機4から入力された時間領域の受信ビデオ信号を周波数領域に変換する。
周波数領域変換手段206は時間領域の受信ビデオ信号Vfm(n)に対し、次式(7)に表される高速フーリエ変換を行い、周波数領域に変換された受信ビデオ信号Pfm(k)を目標候補検出手段207に出力する。ここで、NfftはFFT点数を表す。ただし、Nfft>Nの場合は0を代入する。また、周波数領域のサンプリング間隔ΔFsampは式(8)により表される。Tpriはパルス繰り返し周期(PRI:Pulse Repetition Interval)を表す。周波数領域変換手段206は、パルス数より多いFFT点数を用いて高速フーリエ変換することで、周波数領域の受信ビデオ信号を高精度にサンプリングする。
【0025】
【数4】
【0026】
次に、目標候補検出手段207において行われる、CFAR(Constant False Alarm Rate:一定誤警報確率)処理による目標検出の処理内容について説明する。図4は目標候補検出手段207による周波数領域での目標検出処理を説明するための図である。より具体的にはこの図4は、CFAR処理に関わる注目セル、ガードセル、サンプルセルを説明するための図である。また、ここでは周波数領域に変換された受信ビデオ信号Pfm(k)から1つの目標候補が検出された場合について説明する。
【0027】
目標候補検出手段207は、周波数領域変換手段206から得られる周波数領域に変換された受信ビデオ信号Pfm(k)に対し、下記式(9)によりCFAR処理を行い、目標候補を検出する。ここで、Pfm,CFAR(k)は送信周波数番号mの周波数領域の受信ビデオ信号のCFAR処理による目標候補検出結果、(abs(Pfm(k)))は周波数領域に変換された受信ビデオ信号Pfm(k)の振幅を表し、目標候補は、0が設定される(他は1を設定)。
【0028】
また、CFAR閾値CFAR_thm(k)は、下記式(10)により算出する。ここで、CFAR_corはCFAR係数、Samp_cellm(k)はサンプルセル、ave(Z(p))は配列Z(p)(Z(p)=(abs(Samp_cellm(k))))の平均値を表す。ただし、CFAR閾値CFAR_thm(k)を越えるセルが集合した場合には、集合のなかで振幅の最大値を示すセルを目標候補として検出する。図5はこの実施の形態の目標候補検出手段207における、CFAR処理の結果、CFAR閾値を越えるセル(斜線(ハッチング)で示す)が集合した場合の処理内容を説明するための図である。目標候補検出手段207は、周波数領域セル番号k’で検出された目標候補の相対速度v’を下記式(11)により算出する。ここで、f(k’)は周波数領域セル番号k’の周波数、f0は送信周波数を表す。目標候補検出手段207は、検出した目標候補とその相対速度を仮の相対距離算出手段208に出力する。
【0029】
【数5】
【0030】
図6は目標に搭載されているジェットエンジンに起因にするJEMの影響により複数の目標候補が検出されることを説明するための図である。目標が一つの場合においても、目標に搭載されているジェットエンジンに起因するJEMの影響により、図6に示すように複数の目標候補が検出されることがある。このような場合に真の目標の相対速度算出が困難になる。
【0031】
仮の相対距離算出手段208は、目標候補から目標とJEMを区別するために、距離高分解能にし、距離アンビギュィティ(距離不確定)がある仮の相対距離を算出する。
仮の相対距離算出手段208は、目標候補検出手段207から入力された異なる送信周波数で検出された目標候補の位相を算出する。式(5)で表される受信ビデオ信号Vf1(n)に対して、Nfftで離散フーリエ変換を行うと、その結果は次式(12)で表される。
【0032】
【数6】
【0033】
式(12)より、kが次式(13)となるときに送信周波数f1の目標候補の周波数領域に変換された受信ビデオ信号Pf1(k)の強度が最大値となることが分かる。
【0034】
【数7】
【0035】
c,f1,Nfft,Δtは既知であるため、次式(13)で強度が最大値となるkをk1とすると、送信周波数f1の目標候補の周波数領域に変換された受信ビデオ信号Pf1(k1)の位相φ1は次式(14)で表される。
【0036】
【数8】
【0037】
上記送信周波数f1の場合と同様に、送信周波数f2の目標候補の周波数領域に変換された受信ビデオ信号Pf2(k2)の位相φ2は次式(15)で表される。
【0038】
【数9】
【0039】
仮の相対距離算出手段208は、以上の関係より、その位相差Δφ21を下記式(16)により算出する。図7は目標とJEM1、JEM2が目標候補として検出された場合の動作を説明するための図である。位相差算出の際、図7のように送信周波数f1とf2で検出された目標候補の相対速度が最も近いもので計算する。
【0040】
【数10】
【0041】
次に、仮の相対距離算出手段208は、下記式(17)により位相差Δφ21から仮の相対距離を算出する。ただし、2つの送信周波数でアンビギュィティなく測距できる最大距離Rmaxは下記式(18)、距離分解能は下記式(19)で求められる。距離分解能ΔRで信号処理性能を持つマッチドフィルタの場合は通過帯域Δfのフィルタが必要であるのに比べ、この実施の形態では通過帯域Δfと比べ十分小さい通過帯域でよい狭帯域フィルタで同等の距離分解能を得ることが可能で、装置規模の縮小が可能になる。
【0042】
【数11】
【0043】
図8はレーダと目標とJEMの関係と目標との相対距離と2つの送信周波数でアンビギュィティなく測距できる相対距離の関係を説明するための図である。目標との相対距離R1、JEM発生源との相対距離R1J、2つの送信周波数でアンビギュィティなく測距できる最大距離Rmaxは図8のように表わされる。仮の相対距離算出手段208は、JEMにより検出された目標候補についても式(14)〜(17)を用いて、位相、位相差、仮の相対距離を算出する。JEM発生源は同じなので、JEM同士の初期位相が同じとした場合、位相は下記式(20)(21)、位相差は下記式(22)、仮の相対距離は下記式(23)となる。
【0044】
【数12】
【0045】
仮の相対距離算出手段208は、以上の計算により算出した目標候補の仮の相対距離を目標判定手段209に出力する。ここでは、位相差を仮の相対距離に換算して、目標判定を行うが、位相差による目標判定も同様に行うことが可能である。図9は目標判定手段209に入力された目標とJEMの目標候補の仮の相対距離を示す図である。目標とJEMの仮の相対距離は式(17)と(23)が示すように異なる。また、JEM同士は仮の相対距離の所定仮の相対距離範囲内になることが分かる。
【0046】
図10は目標判定手段209の判定フローを示す。目標判定手段209は、目標とJEMの仮の相対距離が異なることを利用して、図10に示す処理フローに従い、目標候補の仮の相対距離の所定仮の相対距離範囲内に、他の目標候補の仮の相対距離が存在しない場合、目標と判定し、存在する場合、JEMと判定する。
【0047】
図11はJEMが目標と同じ相対速度に発生した場合を説明するための図である。図11に示すように、JEMが目標に影響を与える相対速度に発生する場合がある。このようにJEMの影響が大きい場合、目標とJEMが混信し、目標の仮の相対距離は下記式(24)により表わされる。このように、目標とJEMが混信した場合の仮の相対距離は、目標相対速度以外に発生したJEMと異なる仮の相対距離になるため、目標判定手段209は、同様の考え方に従い、図10に示す処理フローに従い、目標とJEMを判定する。目標判定手段209は、目標とJEMの判定結果を目標相対速度算出手段210に出力する。
【0048】
【数13】
【0049】
目標相対速度算出手段210は、目標判定手段209から入力された目標と判定された目標候補の相対速度を、目標相対速度として表示器20に出力する。表示器20は、目標候補から目標と判定された場合、目標情報として、時刻tの相対速度を画面上に表示する。
【0050】
以上のようにこの実施の形態によれば、異なる送信周波数で観測した目標とJEMから、仮の相対距離算出手段208により目標とJEMの仮の相対距離を算出し、目標判定手段209は目標がJEMの仮の相対距離と異なることを利用して、目標とJEMを判定するため、誤った目標相対速度を算出することがなくなり、目標検出性能と目標相対速度算出性能の向上を図ったレーダ装置を得ることができる。また、距離分解能ΔRで信号処理性能を持つマッチドフィルタの場合は通過帯域Δfのフィルタが必要なのに比べ、この実施の形態では通過帯域Δfと比べ十分小さい通過帯域でよい狭帯域フィルタで同等の距離分解能を得ることが可能で、装置規模の縮小が可能になる。また、装置規模の縮小が可能のため、距離高分解能で観測し、短い観測時間で目標とJEMの判定が可能になる。
【0051】
実施の形態2.
図12はこの発明の実施の形態2に係わるレーダ装置の構成を示す図である。この実施の形態における構成は、上記実施の形態における構成と比較すると、信号処理器205Bが、周波数領域変換手段206に代えて周波数領域変換手段206B、目標判定手段209に代えて目標判定手段209Bを備え、さらに仮の相対距離算出手段208と目標判定手段209Bの間に相対距離差算出手段211を備えている点が異なっている。
【0052】
図13は目標と(目標相対速度以外に発生した)JEMが同じ仮の相対距離になった場合を説明するための図である。上記実施の形態1では、図9に示すように目標の仮の相対距離の所定仮の相対距離範囲内にJEM(目標に影響を与えない相対速度に発生したJEM)が存在するこのを前提としている。しかし、図13のように目標の相対距離が異なる送信周波数でアンビギュィティなく測距できる最大距離Rmaxの折返しの関係で、目標(JEMが目標に影響を与える相対速度に発生)の仮の相対距離が、JEM1とJEM2の仮の相対距離の所定仮の相対距離範囲内になる場合、実施の形態1では、目標とJEMの判定ができない。
【0053】
また、JEMは複数のブレードからの反射信号が共振し発生するため、異なる送信周波数で観測したJEMが同じ初期位相にならない可能性がある。図14はJEMの初期位相が異なった場合の測距結果を説明するための図である。JEMの初期位相が異なった場合、図14に示すように、位相差にオフセットが加算され、JEM同士が仮の相対距離の所定仮の相対距離範囲内に存在せず、上記実施の形態1では、目標とJEMの判定が困難になる。
【0054】
図15はこの実施の形態2における送信周波数と送信信号の関係を説明するための図である。この実施の形態2では、上記の場合においても目標とJEMの判定を行うために、図15に示すように、異なる送信周波数で観測された信号を用いて、目標とJEMの判定を可能にする。以下、図13の場合を例として上記実施の形態と異なる部分について説明する。
【0055】
図16はサイドローブの影響と窓関数処理の効果を説明するための図である。図16の(a)に示すように隣接する目標候補の強度が大きい場合、隣接する目標候補のサイドローブが、目標候補の位相に影響を与え、正しく仮の相対距離を算出することが困難になる。
【0056】
周波数領域変換手段206Bは、受信機4から入力された時間領域の受信ビデオ信号に対し次式(25)により窓関数処理を行う。ここで、W(n)は窓関数を表し、例えば窓関数としてハミング窓を用いた場合は次式(26)により表される。
【0057】
【数14】
【0058】
周波数領域変換手段206Bは、窓関数処理が行われた時間領域の受信ビデオ信号を周波数領域に変換し、周波数領域に変換された受信ビデオ信号を目標候補検出手段207に出力する。図16の(b)に示すように、窓関数処理を行うことによりサイドローブが低減され、隣接する目標候補への影響が低減し、精度良く仮の相対距離を算出することが可能になる。
【0059】
相対距離差算出手段211は、仮の相対距離算出手段208から送信周波数f1とf2で検出された目標候補の仮の相対距離と、送信周波数f2とf3で検出された目標候補の仮の相対距離が入力される。図17は目標とJEM1、JEM2が目標候補として検出された場合の相対距離差算出手段211の動作を説明するための図である。また図18はレーダと目標、JEMの関係を説明するための図である。送信周波数f2とf3で検出された目標の位相差は下記式(27)、相対距離差算出手段211に入力される送信周波数f2とf3で検出された目標の仮の相対距離は下記式(28)で表わされる。また、相対距離差算出手段211に入力される送信周波数f2とf3で検出されたJEMの仮の相対距離は下記式(29)で表わされる。
【0060】
【数15】
【0061】
相対距離差算出手段211は、送信周波数f1とf2で検出された目標候補の仮の相対距離と送信周波数f2とf3で検出された目標候補の仮の相対距離の差を下記式により算出する。ただし、目標の場合を下記式(30)、JEMの場合を下記式(31)に示す。相対距離差算出手段211は、算出した目標候補の相対距離差を目標判定手段209Bに出力する。
【0062】
【数16】
【0063】
このように、目標(JEMが発生しているが目標に影響が小さい場合)とJEMによる目標候補の相対距離差は所定相対距離差範囲内の値を示す。しかし、図19,図20に示すように目標に影響を与えるJEMが発生した場合、仮の相対距離を誤り、他の目標候補と異なる相対距離差を算出することになる。図19は目標とJEMの目標候補の仮の相対距離と相対距離差の関係を示す図、図20は目標とJEMの目標候補の相対距離差を示す図である。
【0064】
図21は目標判定手段209Bの判定フローを示す。目標判定手段209Bは、目標とJEMの相対距離差が異なることを利用して、図21に示す処理フローに従い、目標候補の相対距離差の所定相対距離差範囲内に他の目標候補の相対距離差が存在する場合、JEMと判定し、他の目標候補の相対距離差が存在せず、かつ、JEMと判定された目標候補がある場合、目標と判定し、他の目標候補の相対距離差が存在せず、かつ、JEMと判定された目標候補がない場合、第2の目標候補と判定する。第2の目標候補は、さらに送信周波数を変更して処理を続行する。そして目標判定手段209Bは、目標とJEMの判定結果を目標相対速度算出手段210に出力する。
【0065】
以上のようにこの実施の形態によれば、異なる送信周波数で観測した目標とJEMの仮の相対距離が所定仮の相対距離範囲内になり目標とJEMの判定が困難であったが、異なる送信周波数で観測された信号を用いて、相対距離差算出手段211により目標とJEMの相対距離差を算出し、目標判定手段209Bは目標がJEMと異なる相対距離差に算出されないことを利用し、目標とJEMを判定するため、誤った目標相対速度を算出することがなくなり、目標検出性能と目標相対速度算出性能の向上を図ったレーダ装置を得ることができる。また、相対距離差を用いているが、位相差の差を用いた場合も同様の効果を得ることが可能である。
【0066】
また、距離分解能ΔRで信号処理性能を持つマッチドフィルタの場合は通過帯域Δfのフィルタが必要に比べ、この実施の形態は通過帯域Δfと比べ十分小さい通過帯域でよい狭帯域フィルタで同等の距離分解能を得ることが可能で、装置規模の縮小が可能になる。また、装置規模の縮小が可能のため、距離高分解能で観測し、短い観測時間で目標とJEMの判定が可能になる。
【0067】
また、周波数領域変換手段206Bを備えたことにより、窓関数処理を行うことにより目標候補のサイドローブが低減され、隣接する目標候補への影響が低減し、正しく仮の相対距離を算出することが可能になる。
【0068】
実施の形態3.
図22はこの発明の実施の形態3に係わるレーダ装置の構成を示す図である。この実施の形態における構成は、上記実施の形態2における構成と比較すると、信号処理器205Cが、目標相対速度算出手段210に代えて目標相対速度算出手段210Bを備えている点が異なっている。
【0069】
図23は目標が検出されない場合の目標候補の相対距離差を説明するための図である。上記実施の形態の目標相対速度算出手段210は、目標と判定された目標候補の相対速度を目標相対速度として算出しており、図23に示すように目標候補から目標と判定されない場合、目標相対速度を算出することができなくなる。
【0070】
この実施の形態は、上記の場合においても目標相対速度を算出するためのものであり、以下、図23の場合を例として上記実施の形態2と異なる部分について説明する。
【0071】
目標相対速度算出手段210Bは、次式(32)により目標相対速度を算出する。目標相対速度算出手段210Bは、算出した目標相対速度を表示器20に出力する。
【0072】
【数17】
【0073】
以上のようにこの実施の形態によれば、目標候補に目標が含まれていない場合においても、異なる送信周波数で観測された信号を用いて、目標相対速度算出手段210Bにより相対距離差から目標相対速度を算出することが可能になり、目標検出性能と目標相対速度算出性能の向上を図ったレーダ装置を得ることができる。
【0074】
なお、この発明は上記の各実施の形態に限定されるものではなく、これらの可能な組み合わせを全て含むことは云うまでもない。
【符号の説明】
【0075】
1 空中線、2 送信機、3 送受切替器、4 受信機、205A,205B,205C 信号処理器、206,206B 周波数領域変換手段、207 目標候補検出手段、208 仮の相対距離算出手段、209,209B 目標判定手段、210,210B 目標相対速度算出手段、211 相対距離差算出手段。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
目標との相対速度を算出し目標検出を行うレーダ装置であって、
周波数が異なるキャリア信号を所定の時間間隔でパルス変調した送信信号を放射する送信手段と、
前記目標で反射して戻った前記送信信号を受信信号として受信する受信手段と、
前記受信手段で受信された時間領域の受信信号を周波数領域に変換する周波数領域変換手段と、
前記周波数領域変換手段で変換された前記周波数領域の受信信号における信号の強度に基づく演算処理を行い、目標候補を検出するとともに、目標候補の相対速度を算出する目標候補検出手段と、
前記目標候補検出手段で異なるキャリア周波数で検出された前記目標候補の位相差を算出しこの位相差から目標候補の仮の相対距離を算出する仮の相対距離算出手段と、
前記仮の相対距離算出手段から入力された目標候補の仮の相対距離に基づき目標候補を判定する目標判定手段と、
前記目標判定手段で目標と判定された目標候補の相対速度を目標候補検出手段で算出された目標の相対速度として算出する目標相対速度算出手段と、
を備えたことを特徴とするレーダ装置。
【請求項2】
前記目標判定手段は、前記仮の相対距離算出手段から入力された目標候補の仮の相対距離から、目標候補の仮の相対距離の所定距離範囲内に他の目標候補の仮の相対距離が存在する場合にJEMと判定し、他の目標候補の仮の相対距離が存在しない場合に目標と判定することを特徴とする請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項3】
前記仮の相対距離算出手段から入力された仮の相対距離により、異なる送信周波数で得られた目標候補の仮の相対距離差を算出する相対距離差算出手段をさらに備え、前記目標判定手段が、前記相対距離差算出手段から入力された目標候補の相対距離差に基づき目標候補を判定することを特徴とする請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項4】
前記目標判定手段は、前記相対距離差算出手段から入力された目標候補の仮の相対距離差から、目標候補の相対距離差の所定距離差範囲内に他の目標候補の相対距離差が存在する場合にJEMと判定し、他の目標候補の相対距離差が存在せずかつJEMと判定された目標候補が存在しない場合に第2の目標候補と判定することを特徴とする請求項3に記載のレーダ装置。
【請求項5】
前記目標相対速度算出手段は、前記相対距離差算出手段からの相対距離差により目標相対速度を算出することを特徴とする請求項3に記載のレーダ装置。
【請求項6】
前記周波数領域変換手段は、隣接する目標候補の信号からの影響を低減するために、前記受信手段で受信された時間領域の受信信号に対して窓関数処理を加えて行った後、前記受信手段で受信された時間領域の受信信号を周波数領域に変換することを特徴とする請求項1から5までのいずれか1項に記載のレーダ装置。
【請求項7】
前記周波数領域変換手段は、目標候補の最大強度を高精度に算出できるように、前記受信手段で受信された時間領域の受信信号を時間領域の受信信号の点数よりも多い点数で周波数領域に変換することを特徴とする請求項1から5までのいずれか1項に記載のレーダ装置。
【請求項1】
目標との相対速度を算出し目標検出を行うレーダ装置であって、
周波数が異なるキャリア信号を所定の時間間隔でパルス変調した送信信号を放射する送信手段と、
前記目標で反射して戻った前記送信信号を受信信号として受信する受信手段と、
前記受信手段で受信された時間領域の受信信号を周波数領域に変換する周波数領域変換手段と、
前記周波数領域変換手段で変換された前記周波数領域の受信信号における信号の強度に基づく演算処理を行い、目標候補を検出するとともに、目標候補の相対速度を算出する目標候補検出手段と、
前記目標候補検出手段で異なるキャリア周波数で検出された前記目標候補の位相差を算出しこの位相差から目標候補の仮の相対距離を算出する仮の相対距離算出手段と、
前記仮の相対距離算出手段から入力された目標候補の仮の相対距離に基づき目標候補を判定する目標判定手段と、
前記目標判定手段で目標と判定された目標候補の相対速度を目標候補検出手段で算出された目標の相対速度として算出する目標相対速度算出手段と、
を備えたことを特徴とするレーダ装置。
【請求項2】
前記目標判定手段は、前記仮の相対距離算出手段から入力された目標候補の仮の相対距離から、目標候補の仮の相対距離の所定距離範囲内に他の目標候補の仮の相対距離が存在する場合にJEMと判定し、他の目標候補の仮の相対距離が存在しない場合に目標と判定することを特徴とする請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項3】
前記仮の相対距離算出手段から入力された仮の相対距離により、異なる送信周波数で得られた目標候補の仮の相対距離差を算出する相対距離差算出手段をさらに備え、前記目標判定手段が、前記相対距離差算出手段から入力された目標候補の相対距離差に基づき目標候補を判定することを特徴とする請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項4】
前記目標判定手段は、前記相対距離差算出手段から入力された目標候補の仮の相対距離差から、目標候補の相対距離差の所定距離差範囲内に他の目標候補の相対距離差が存在する場合にJEMと判定し、他の目標候補の相対距離差が存在せずかつJEMと判定された目標候補が存在しない場合に第2の目標候補と判定することを特徴とする請求項3に記載のレーダ装置。
【請求項5】
前記目標相対速度算出手段は、前記相対距離差算出手段からの相対距離差により目標相対速度を算出することを特徴とする請求項3に記載のレーダ装置。
【請求項6】
前記周波数領域変換手段は、隣接する目標候補の信号からの影響を低減するために、前記受信手段で受信された時間領域の受信信号に対して窓関数処理を加えて行った後、前記受信手段で受信された時間領域の受信信号を周波数領域に変換することを特徴とする請求項1から5までのいずれか1項に記載のレーダ装置。
【請求項7】
前記周波数領域変換手段は、目標候補の最大強度を高精度に算出できるように、前記受信手段で受信された時間領域の受信信号を時間領域の受信信号の点数よりも多い点数で周波数領域に変換することを特徴とする請求項1から5までのいずれか1項に記載のレーダ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公開番号】特開2011−127961(P2011−127961A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−285307(P2009−285307)
【出願日】平成21年12月16日(2009.12.16)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月16日(2009.12.16)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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