説明

レーダ装置

【課題】測定対象のターゲットが移動する場合でも低レンジサイドローブ特性を維持し、複数のターゲットの検出における分離性能の劣化を抑圧するレーダ装置を提供する。
【解決手段】所定の送信周期で高周波送信信号を送信アンテナから送信し、ターゲットに反射された反射波の信号を受信アンテナで受信する。符号生成部は、相補符号のペアとなる第1の符号系列と第2の符号系列を生成する。第1変調部は、第1符号系列を変調して第1送信信号を生成する。第2変調部は、第2符号系列を変調して第2送信信号を生成する。直交変調部は、生成された第1、第2送信信号を用いて直交変調を行う。直交変調された信号から高周波送信信号を生成し、送信アンテナから送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ターゲットに反射された反射波の信号をアンテナで受信してターゲットを検出するレーダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーダ装置は、測定地点から電波を空間に放射し、ターゲットに反射された反射波の信号を受信して、当該測定地点とターゲットとの距離、方向等を測定する装置である。特に近年、マイクロ波又はミリ波等の波長の短い電波を用いた高分解能な測定により、自動車だけでなく歩行者等をターゲットとして検出可能なレーダ装置の開発が進められている。
【0003】
レーダ装置は、近距離にいるターゲットと遠距離にいるターゲットとからの反射波が混合された信号を受信することがある。特に、近距離にいるターゲットからの反射波の信号の自己相関特性にレンジサイドローブが生じる場合、このレンジサイドローブと、遠距離にいるターゲットからの反射波の信号の自己相関特性に生じるメインローブとが混在することがある。この場合、レーダ装置が遠距離にいるターゲットを検出する際の検出精度が劣化することがある。
【0004】
また、レーダ装置は、測定地点から同じ距離に自動車と歩行者とがいる場合に、レーダ反射断面積(RCS: Radar cross section)の異なる自動車と歩行者とからのそれぞれの反射波の信号が混合された信号を受信することがある。一般に、歩行者のレーダ反射断面積は自動車のレーダ反射断面積に比べると低いと言われている。このため、レーダ装置には、たとえ測定地点から同じ距離に自動車と歩行者とがいる場合でも、自動車だけでなく歩行者からの反射波も適正に受信することが要求される。
【0005】
従って、上述した様な複数のターゲットに対して、高分解能な測定が要求されるレーダ装置には、自己相関特性が低レンジサイドローブレベルとなる特性(以下、「低レンジサイドローブ特性」という)を有するパルス波又はパルス変調波が送信されることが要求される。更に、当該レーダ装置における受信の際に、ターゲットの距離、種別により様々な受信レベルとなるターゲットに反射された反射波の信号を、受信可能な程度に広い受信ダイナミックレンジを有することが要求される。
【0006】
上述した低レンジサイドローブ特性に関して、低レンジサイドローブ特性を有するパルス波又はパルス変調波として、相補符号を用いて高周波送信信号を送信するパルス圧縮レーダが従来から知られている。ここで、パルス圧縮とは、パルス信号をパルス変調又は位相変調してパルス幅の広い信号を用いて送信し、受信後の信号処理において当該受信された信号を復調してパルス幅の狭い信号に変換する(圧縮する)ことで、受信電力を等価的に高める方法である。パルス圧縮によれば、ターゲットの探知距離を増大することができ、更に、当該探知距離に対する距離推定精度を向上することができる。
【0007】
また、相補符号は、複数例えば2つの相補符号系列(a、b)からなり、一方の相補符号系列aと他方の相補符号系列bの各自己相関演算結果において、遅延時間(シフト時間)τ[秒]を一致させて各自己相関演算結果を加算した場合に、レンジサイドローブがゼロとなる性質を有する。なお、パラメータnはn=1、2、・・・、Lである。パラメータLは、符号系列長又は単に符号長を示す。
【0008】
相補符号の生成方法について図14を参照して説明する。図14は、一般的な相補符号の符号系列の生成手順の一例を示した説明図である。図14に示す様に、4行目、5行目の記載から要素1又は要素−1からなる符号長L=2p−1のサブ符号系列(c,d)が生成され、更に、6行目、7行目の記載から符号長L=2の符号長の相補符号系列(a,b)が生成される。ここで、一方の相補符号系列aは、サブ符号系列cとサブ符号系列dとが連結されたものである。他方の相補符号系列bは、サブ符号系列cとサブ符号系列−dとが連結されたものである。
【0009】
なお、符号系列a,bはそれぞれ相補符号系列を表し、符号系列c,dはそれぞれ相補符号系列を構成するサブ符号系列を表す。また、パラメータpは、生成される各相補符号系列(a,b)の符号長Lを定める。
【0010】
この様な相補符号(相補符号系列)の性質に関して、図15を参照して説明する。図15は、従来の相補符号の性質を説明する説明図である。同図(a)は、一方の相補符号系列aの自己相関値演算結果を示す説明図である。同図(b)は、他方の相補符号系列bの自己相関値演算結果を示す説明図である。同図(c)は、2つの相補符号系列(a,b)の自己相関値演算結果の加算値を示す説明図である。なお、図15で用いた相補符号の符号長Lは128である。
【0011】
2つの相補符号系列(a,b)のうち一方の相補符号系列aの自己相関値演算結果は、数式(1)に従って導出される。他方の相補符号系列bの自己相関値演算結果は、数式(2)に従って導出される。なお、パラメータRは自己相関値演算結果を示す。但し、n>L又はn<1の場合には、相補符号系列a,bはゼロとする(すなわち、n>L又はn<1において、a=0、b=0)。なお、アスタリスク*は複素共役演算子を示す。
【0012】
【数1】

【0013】
【数2】

【0014】
数式(1)に従って導出された一方の相補符号系列aの自己相関値演算結果Raa(τ)は、図15(a)に示す様に、遅延時間τがゼロのときにピークが立ち、遅延時間τがゼロでない場合にはレンジサイドローブが存在する。同様に、数式(2)に従って導出された他方の相補符号系列bの自己相関値演算結果Rbb(τ)は、図15(b)に示す様に、遅延時間τがゼロのときにピークが立ち、遅延時間τがゼロでない場合にはレンジサイドローブが存在する。
【0015】
これらの自己相関値演算結果(Raa(τ),Rbb(τ))の加算値は、図15(c)に示す様に、遅延時間(あるいはシフト時間)τがゼロのときにピークが発生し(以下、遅延時間τがゼロのときのピークをメインローブと呼ぶ)、遅延時間τがゼロでない場合にはレンジサイドローブが存在せずにゼロになる。これを数式(3)にて示す。なお、図15(a)〜(c)の横軸は自己相関値演算における遅延時間(τ)を示し、縦軸は演算された自己相関値演算結果を示す。
【0016】
【数3】

【0017】
また、図16に示す様に、上述した相補符号aに基づいて生成された高周波送信信号と、相補符号bに基づいて生成された高周波送信信号とを、所定の送信周期ごとに切り換えて時分割で送信するパルス圧縮レーダが従来から知られている。図16は、従来のパルス圧縮レーダにおける送信周期Trと各送信周期における送信の際に用いられる送信符号である相補符号a、bとの説明図である。この様な従来のパルス圧縮レーダにおける受信の際にターゲットが移動している場合には、当該受信された受信信号は、当該移動に伴って発生するドップラ周波数fに起因して数式(4)に示す位相変化θ(t)の影響を受ける。パラメータtは時間を示す。
【0018】
【数4】

【0019】
この様な位相変化θ(t)の影響を受けている状態では、当該受信信号の自己相関特性においてレンジサイドローブレベルがゼロにならず、受信信号の自己相関特性における低レンジサイドローブ特性が成立しないという課題が生じる。
【0020】
この課題について図16を参照して具体的に説明する。図16において、相補符号a,bに基づいてそれぞれ生成された各高周波送信信号を送信する送信間隔を送信周期Tとする。この場合、相補符号aに基づいて生成された高周波送信信号の送信後、次の送信周期Tに、相補符号bに基づいて生成された高周波送信信号に対する反射波の信号を受信する。但し、この反射波の信号は、数式(4)に示す位相変化θ(t)を受けていることになる。
【0021】
従って、送信周期Tと、当該反射波の信号に含まれるドップラ周波数fとの積の大きさによっては、上述した理想的な低レンジサイドローブ特性を得ることが難しく、低レンジサイドローブ特性が劣化する。なお、図16において、パラメータTは、符号長Lのパルス符号に対応した1つのパルスあたりの送信時間である。パラメータTは、符号長Lの相補符号a又は相補符号bに基づいてそれぞれ生成された高周波送信信号の送信区間における送信時間である。パラメータTとパラメータTとパラメータLとの間には、数式(5)が成立する。
【0022】
【数5】

【0023】
上述した課題、即ち、相補符号a,bのそれぞれに基づいて生成された各高周波送信信号を切り換えて時分割で送信する際に、ドップラ周波数fに起因して低レンジサイドローブ特性が劣化するという課題に関連して、特許文献1が知られている。
【0024】
特許文献1に示す分散圧縮方式パルスエコーシステム送受信装置は、各モード(Bモード、ドップラモード)に応じて、パルス圧縮符号の異なる符号系列で変調した高周波信号を時分割で送信する。具体的には、当該送受信装置は、Bモードの際に、近距離レンジ用として相補符号系列で変調した高周波信号を送信する。更に、当該送受信装置は、ドップラモードの際に、Barker符号系列あるいはM系列等で変調した高周波送信信号を送信する。これにより、測定対象のターゲットに応じて送信パルスを使い分けることができ、近距離で動きの速いターゲットによるパルスエコーを低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0025】
【特許文献1】特開平1−303135号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
しかしながら、従来のレーダ装置においては、上述した課題により、当該レーダ装置に比較的近い位置に存在するターゲットからの反射波の信号のレンジサイドローブに、比較的遠い位置に存在するターゲットからの反射波の信号のメインローブが埋もれることがあった。この場合には、従来のレーダ装置は、遠い位置に存在するターゲットの検出精度が劣化することとなり、従って、上述した課題は、レーダ装置における測定性能に大きな影響を与えることになる。
【0027】
また、上述した特許文献1では、Bモードで用いる相補符号系列と、ドップラモードで用いるM系列符号やBarker符号系列等とを交互に切り換えてパルス圧縮を行う。ところが、特許文献1では、ターゲットが移動する場合に、相補符号を用いて送信したときにおけるサイドローブレベルの劣化に対しては考慮されておらず、M系列符号やBarker符号系列等のサイドローブレベルの特性に依存している。このM系列符号やBarker符号を用いた場合には、符号長LのBarker符号系列に対してピークサイドローブレベルはおよそ20Log(L)存在する。従って、Barker符号として知られている最長の符号長13の場合でも、ピークサイドローブレベルは22.3[dB]程度存在するため、レーダ装置の測定性能に影響を与えてしまう。
【0028】
従って、レーダ装置から比較的近く、例えば5m以内に存在するターゲットが移動する場合には、当該ターゲットからの反射波の信号に対するピークサイドローブレベルと、例えば20m離れた遠方からのターゲットからの反射波の信号に対するメインローブとが同等になる。これにより、上述した課題は、特許文献1においても解決されておらず、依然としてレーダ装置における測定性能に大きな影響を与えることになる。
【0029】
本発明は、上述従来の事情に鑑みてなされたもので、ターゲットが移動する場合でも当該ターゲットからの反射波の信号における低レンジサイドローブ特性を維持し、レンジサイドローブレベルを効果的に抑圧することにより複数のターゲットの検出における分離性能の劣化を抑圧するレーダ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0030】
本発明は、上述したレーダ装置であって、相補符号のペアとなる第1の符号系列と第2の符号系列を生成する符号生成部と、第1符号系列を変調して第1送信信号を生成する第1変調部と、第2符号系列を変調して第2送信信号を生成する第2変調部と、第1、第2変調部によりそれぞれ生成された第1、第2送信信号を用いて直交変調を行う直交変調部と、直交変調部により直交変調された信号から高周波送信信号を生成する増幅部と、高周波送信信号を送信アンテナから送信するアンテナ部とを備える。
【発明の効果】
【0031】
本発明のレーダ装置によれば、ターゲットが移動する場合でも当該ターゲットからの反射波の信号における低レンジサイドローブ特性を維持し、レンジサイドローブレベルを効果的に抑圧することにより複数のターゲットの検出における分離性能の劣化を抑圧することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】第1の実施形態のレーダ装置の内部構成を示すブロック図
【図2】第1の実施形態のレーダ装置の動作に関するタイミングチャート、(a)送信周期Tと各送信周期Tに用いられる送信符号との説明図、(b)測定区間の説明図、(c)各送信周期Tと離散時刻kとの関係を説明する説明図
【図3】第1の実施形態のレーダ装置においてIQ多重された高周波送信信号の信号点配置図
【図4】IQ相関値AC(k)をIQ平面上に示した説明図、(a)減算部による減算処理前のIQ相関値AC(k)の説明図、(b)減算部による減算処理に用いる際のIQ相関値AC(k)の説明図、(c)離散時刻kとIQ相関値AC(k)の絶対値|AC(k)|との関係を示す説明図
【図5】第2の実施形態のレーダ装置の内部構成を示すブロック図
【図6】第2の実施形態のレーダ装置の動作に関するタイミングチャート、(a)送信周期Tと各送信周期Tに用いられる送信符号との説明図、(b)測定区間の説明図、(c)各送信周期Tと離散時刻kとの関係を説明する説明図
【図7】第2の実施形態のレーダ装置においてIQ多重された高周波送信信号の信号点配置図、(a)第M番目及び第(M+2)番目の送信周期で、相補符号aをI軸に、相補符号bをQ軸にそれぞれ割り当ててIQ多重した送信信号の信号点配置図、(b)第(M+1)番目及び第(M+3)番目の送信周期で、相補符号bをI軸に、相補符号aをQ軸にそれぞれ割り当ててIQ多重した送信信号の信号点配置図
【図8】第2の実施形態のレーダ装置において各送信周期Tに用いられる送信符号の詳細を示す説明図
【図9】各実施形態の変形例1におけるレーダ送信部の内部構成を示すブロック図、(a)第1の実施形態の変形例1のレーダ送信部の内部構成を示すブロック図、(b)第2の実施形態の変形例1のレーダ送信部の内部構成を示すブロック図
【図10】相補符号aがI軸に割り当てられて−45度位相シフトされ、相補符号bがQ軸に割り当てられて−45度位相シフトされてIQ多重された高周波送信信号の信号点配置図
【図11】各実施形態の変形例2におけるレーダ受信部の信号処理部の内部構成を示すブロック図、(a)第1の実施形態の変形例2のレーダ受信部の信号処理部の内部構成を示すブロック図、(b)第2の実施形態の変形例2のレーダ受信部の信号処理部の内部構成を示すブロック図
【図12】ターゲットの検出精度に関するシミュレーション結果を示す説明図、(a)従来のレーダ装置で相補符号a,bに基づいてそれぞれ生成された各高周波送信信号を時分割で送信した場合の説明図、(b)第1の実施形態のレーダ装置で相補符号a,bをIQ多重して生成された高周波送信信号を送信した場合の説明図
【図13】第2の実施形態のレーダ装置における送信信号生成部の他の内部構成を示すブロック図
【図14】一般的な相補符号の符号系列の生成手順を示した説明図
【図15】従来の相補符号の性質を説明する説明図、(a)一方の相補符号系列の自己相関演算結果を示す説明図、(b)他方の相補符号系列の自己相関演算結果を示す説明図、(c)2つの相補符号系列の自己相関演算結果の加算値を示す説明図
【図16】従来のパルス圧縮レーダにおける送信周期と各送信周期に用いられる送信符号との説明図
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。以下の説明において、本発明に係るレーダ装置により受信される受信信号には、当該レーダ装置から送信された高周波送信信号がターゲットにより反射された反射波の信号と、当該レーダ装置の周囲のノイズ信号とが含まれる。
【0034】
〔第1の実施形態〕
第1の実施形態のレーダ装置1の構成及び動作について図1〜図4を参照して説明する。図1は、第1の実施形態のレーダ装置1の内部構成を示すブロック図である。図2は、第1の実施形態のレーダ装置1の動作に関するタイミングチャートである。同図(a)は、送信周期Tと各送信周期Tに用いられる送信符号との説明図である。同図(b)は、測定区間の説明図である。同図(c)は、各送信周期Tと離散時刻kとの関係を説明する説明図である。
【0035】
図3は、第1の実施形態のレーダ装置1においてIQ多重された高周波送信信号の信号点配置図である。図4は、IQ相関値AC(k)をIQ平面上に示した説明図である。同図(a)は、減算部31による減算処理前のIQ相関値AC(k)の説明図である。同図(b)は、減算部31による減算処理に用いる際のIQ相関値AC(k)の説明図である。同図(c)は、離散時刻kとIQ相関値AC(k)の絶対値|AC(k)|との関係を示す説明図である。
【0036】
レーダ装置1は、図1に示す様に、基準発振器Lと、送信アンテナANTが接続されたレーダ送信部2と、受信アンテナANTが接続されたレーダ受信部3とを備える。レーダ装置1は、レーダ送信部2により生成された所定の間欠的な高周波送信信号を送信アンテナANTから送信し、ターゲットに反射された反射波の信号をレーダ受信部3で受信する。レーダ装置1は、レーダ受信部3で受信した受信信号を信号処理してターゲットの有無を検出する。なお、ターゲットはレーダ装置1が検出する対象の物体であり、例えば自動車又は人等であり、以下の各実施形態においても同様である。
【0037】
レーダ送信部2について説明する。レーダ送信部2は、送信信号生成部4と、送信RF(Radio Frequency)部11とを備える。送信信号生成部4は、第1符号生成部5と、第2符号生成部6と、第1変調部7と、第2変調部8と、LPF(Low Pass Filter)9と、LPF10とを備える。図1では、送信信号生成部4は、LPF9及びLPF10を含む様に構成されているが、LPF9及びLPF10は送信信号生成部4と独立してレーダ送信部2の中に構成されても良い。送信RF部11は、局部発振器Lと、ミキサ12と、第1位相シフト部13と、ミキサ14と、加算部15と、増幅器16とを備える。
【0038】
送信信号生成部4は、基準発振器Lにより生成されたリファレンス信号に基づいて、当該リファレンス信号を所定倍に逓倍した信号を生成する。送信信号生成部4の各部は、当該生成された信号に基づいて動作する。送信信号生成部4は、それぞれ符号長Lの相補符号系列a,bのパルス圧縮符号を変調してベースバンドの送信信号を周期的に生成する。ここで、n=1,・・・,Lであり、パラメータLは、相補符号系列a,bの符号長を表す。
【0039】
また、送信信号生成部4により生成される送信信号は、連続的な信号ではないものとする。図2(a)に示す様に、例えば第M番目〜第(M+3)番目の各送信周期Tの送信区間T[s]では、符号長Lの相補符号系列a,bに対して、1つのパルス符号あたりN[個]のサンプルが存在する。なお、パラメータMは自然数である。従って、送信区間Tにおいては、N(=N×L)のサンプルが含まれる。また、第M番目〜第(M+3)番目の各送信周期Tの非送信区間(T−T)[s]では、ベースバンドの送信信号としてN[個]のサンプルが存在するものとする。
【0040】
先ず、送信信号生成部4aの各部の構成について説明する。
【0041】
第1符号生成部5は、符号長Lの相補符号系列のペアである相補符号系列aのパルス圧縮用の送信符号を生成する。第1符号生成部5は、当該生成された相補符号系列aの送信符号を第1変調部7に出力する。以下、相補符号系列aの送信符号を、便宜的に送信符号aと記載する。
【0042】
第2符号生成部6は、符号長Lの相補符号系列のペアである相補符号系列bのパルス圧縮用の送信符号を生成する。第2符号生成部6は、当該生成された相補符号系列bの送信符号を第2変調部8に出力する。以下、相補符号系列bの送信符号を、便宜的に送信符号bと記載する。
【0043】
第1変調部7は、第1符号生成部5により出力された送信符号aを入力する。第1変調部7は、当該入力された送信符号aに対してパルス変調(振幅変調、ASK(Amplitude Shift Keying))又は位相変調(PSK(Phase Shift Keying))を行い、ベースバンドの送信信号I(k)を生成する。第1変調部7は、LPF9を介して、当該生成された送信信号I(k)のうち予め設定された制限帯域以下の送信信号I(k)を送信RF部11に出力する。
【0044】
第2変調部8は、第2符号生成部6により出力された送信符号bを入力する。第2変調部8は、当該入力された送信符号bに対してパルス変調(振幅変調、ASK)又は位相変調(PSK)を行い、ベースバンドの送信信号Q(k)を生成する。第2変調部8は、LPF10を介して、当該生成された送信信号Q(k)のうち予め設定された制限帯域以下の送信信号Q(k)を送信RF部11に出力する。
【0045】
送信RF部11は、基準発振器Lにより生成されたリファレンス信号に基づいて、当該リファレンス信号を所定倍数に逓倍した信号を生成する。送信RF部11は、当該生成された信号に基づいて動作する。
【0046】
送信RF部11は、第1変調部7により出力された送信信号I(k)を、図3に示すIQ平面におけるI軸に割り当てる。また、送信RF部11は、第2変調部8により出力された送信信号Q(k)を、図3に示すIQ平面におけるQ軸に割り当てる。送信RF部11は、I軸に割り当てられた送信信号I(k)と、Q軸に割り当てられた送信信号Q(k)とを加算的に多重する。また、以下の説明において、第1変調部7により出力された送信信号I(k)をI軸に、第2変調部8により出力された送信信号Q(k)をQ軸に割り当て、当該送信信号I(k)とQ(k)とを加算的に多重して高周波送信信号を生成する処理を「IQ多重」と記載する。
【0047】
このIQ多重の処理内容を具体的に説明する。なお、このIQ多重は、送信RF部11のうち、ミキサ12、第1位相シフト部13、ミキサ14及び加算部15により行われる。以下の各実施形態において、これらのミキサ12、第1位相シフト部13、ミキサ14及び加算部15を、IQ多重を行う直交変調部と記載することもできる。
【0048】
第1変調部7により出力された送信信号I(k)は、ミキサ12にて、キャリア周波数fの局部発振器Lからの信号Acos(2πft)と乗算される。パラメータAは所定の振幅値を示す。また、パラメータtは、連続時刻(アナログ時刻)を示すものであり、上述した離散時刻kとは、t=k×Tにより関連づけられる。ここでT(=T/N)はサンプリング周期である。
更に、第2変調部8により出力された送信信号Q(k)は、ミキサ14にて、キャリア周波数fの局部発振器Lからの信号Acos(2πft)が第1位相シフト部13により90度位相シフトされた信号Asin(2πft)と乗算される。各ミキサ12,14により乗算された信号が加算部15により加算される。この結果、送信符号a,bのIQ多重により、数式(6)に示す直交変調された高周波送信信号s(t)が生成される。
【0049】
【数6】

【0050】
図3に示す信号点配置図は、相補符号の送信符号aをI軸に、相補符号の送信符号bをQ軸にそれぞれ割り当てて、IQ多重した高周波送信信号の信号点配置図である。従って、数式(6)に示す高周波送信信号s(t)は、図3に示す信号点(A,A)、(A,−A)、(−A,A)及び(−A,−A)のうち、いずれかが選択される様に、送信符号a及び送信符号bがIQ多重されて生成されたものである。
【0051】
増幅器16は、数式(6)に従って生成された高周波送信信号s(t)を入力し、当該入力された高周波送信信号s(t)のレベルを所定のレベルに増幅して、送信アンテナANTに出力する。この増幅された高周波送信信号s(t)は、送信アンテナANTを介して空間に放射する様に送信される。
【0052】
送信アンテナANTは、送信RF部11により出力された高周波送信信号s(t)を空間に放射する様に送信する。図2(a)に示す様に、高周波送信信号s(t)は、送信周期Tのうち送信区間Tの間において送信され、非送信区間(T−T)の間においては送信されない。
【0053】
次に、レーダ受信部3の各部の構成について説明する。
【0054】
レーダ受信部3は、受信アンテナANTと、受信RF部17と、信号処理部21とを備える。受信RF部17は、増幅器18と、周波数変換部19と、直交検波部20とを備える。信号処理部21は、A/D変換部22,23と、第1,第2基準信号生成部24,25と、第1,第2相関値演算部26,27と、加算部28と、受信信号抽出部29と、IQ多重干渉成分抽出部30と、減算部31と、平均化処理部32と、到来距離推定部33とを備える。レーダ受信部3は、各送信周期Tを、信号処理部21における信号処理区間として周期的に演算する。
【0055】
受信アンテナANTは、レーダ送信部2により送信された高周波送信信号s(t)がターゲットにより反射された反射波の信号と、当該レーダ装置1の周囲のノイズ信号とを受信信号として受信する。なお、この反射波の信号は高周波帯域の信号である。受信アンテナANTにより受信された受信信号は、受信RF部17に入力される。なお、レーダ装置1においては、レーダ受信部3は1つの受信アンテナANTを保持する。
【0056】
受信アンテナANTは、図2(b)に示す様に、各送信周期Tに相当する区間に、上述した受信信号を受信する。従って、この受信信号が受信される区間Tがレーダ装置1における測定区間とされる。
【0057】
受信RF部17は、送信RF部11と同様に、基準発振器Lにより生成されたリファレンス信号に基づいて、当該リファレンス信号を所定倍に逓倍した信号を生成する。受信RF部17は、当該生成された信号に基づいて動作する。これにより、送信RF部11の局部発振器Lと受信RF部17の局部発振器(不図示)との間の同期をとることができる。
【0058】
増幅器18は、受信アンテナANTにより受信された高周波帯域の受信信号を入力し、当該入力された高周波帯域の受信信号のレベルを増幅して周波数変換部19に出力する。
【0059】
周波数変換部19は、当該増幅器18により出力された高周波帯域の受信信号を入力し、当該入力された高周波帯域の受信信号をベースバンドにダウンコンバートし、当該ダウンコンバートされた受信信号を直交検波部20に出力する。
【0060】
直交検波部20は、周波数変換部19により出力されたベースバンドの受信信号を直交検波することで同相信号(In-phase signal)及び直交信号(Quadrate signal)からなるベースバンドの受信信号を生成する。直交検波部20は、当該生成された受信信号のうち同相信号成分をA/D変換部22に出力し、当該生成された受信信号のうち直交信号成分をA/D変換部23に出力する。
【0061】
A/D変換部22は、直交検波部20により出力されたベースバンドの同相信号に対して離散時刻kにおけるサンプリングを行い、アナログデータの当該同相信号をデジタルデータに変換する。A/D変換部22は、当該変換されたデジタルデータの同相信号を第1相関値演算部26に出力する。
【0062】
同様に、A/D変換部23は、直交検波部20により出力されたベースバンドの直交信号に対して離散時刻kにおけるサンプリングを行い、アナログデータの当該直交信号をデジタルデータに変換する。A/D変換部23は、当該変換されたデジタルデータの直交信号を第2相関値演算部27に出力する。ここで、パラメータkは、図2(a)に示す各送信周期Tにおいて送信される高周波送信信号の元になるベースバンドの送信信号I(k),Q(k)のサンプル数に対応した離散時刻を表す。
【0063】
また、A/D変換部22,23により変換された離散時刻kにおける受信信号は、当該受信信号の同相信号I(k)及び当該受信信号の直交信号Q(k)を用いて、数式(7)の複素信号として表される。ここでjは、j=−1を満たす虚数単位である。なお、以下の説明において、離散時刻kは、k=1〜(N+N)である。また、離散時刻kの範囲は、後述の各実施形態においても同様である。
【0064】
【数7】

【0065】
図2(c)に示す様に、離散時刻k=1は、送信符号a及び送信符号bがIQ多重されて生成された高周波送信信号s(t)の送信周期Tにおける送信区間Tの開始時点を示す。また、離散時刻k=Nは、送信符号a及び送信符号bがIQ多重されて生成された高周波送信信号s(t)の送信周期Tにおける送信区間Tの終了時点を示す。更に、離散時刻k=(N+N)は、送信符号a及び送信符号bがIQ多重されて生成された高周波送信信号s(t)の送信周期Tの終了直前時点を示す。なお、図2(c)には、離散時刻kの範囲を便宜的に図示するために、離散時刻kの範囲を第M番目の送信周期のみに示している。
【0066】
第1基準信号生成部24は、送信信号生成部4の動作と同期して、当該送信信号生成部4と同様に基準発振器Lにより生成されたリファレンス信号に基づいて、当該リファレンス信号を所定倍に逓倍した信号を生成する。第1基準信号生成部24は、当該生成された信号に基づいて、第1変調部7により生成された送信信号I(k)と同一のベースバンドの第1基準送信信号I(k)を生成する。第1基準信号生成部24は、当該生成された第1基準送信信号I(k)を第1相関値演算部26に出力する。なお、図1において、リファレンス信号の第1基準信号生成部24への入力の記載は省略する。
【0067】
第2基準信号生成部25は、送信信号生成部4の動作と同期して、当該送信信号生成部4と同様に基準発振器Lにより生成されたリファレンス信号に基づいて、当該リファレンス信号を所定倍に逓倍した信号を生成する。第2基準信号生成部25は、当該生成された信号に基づいて、第2変調部8により生成された送信信号Q(k)と同一のベースバンドの送信信号Q(k)に、IQ多重におけるQ軸の位相回転を付与した第2基準送信信号jQ(k)を周期的に生成する。第2基準信号生成部25は、当該生成された第2基準送信信号jQ(k)を第2相関値演算部27に出力する。なお、図1において、リファレンス信号の第2基準信号生成部25への入力の記載は省略する。
【0068】
第1相関値演算部26は、A/D変換部22により出力されたデジタルデータの複素信号x(k)、及び、第1基準信号生成部24により出力された第1基準送信信号I(k)を入力する。第1相関値演算部26は、当該入力された複素信号x(k)と第1基準送信信号I(k)との第1相関値AC(k)を演算する。なお、*(アスタリスク)は、複素共役演算子を表す。
【0069】
具体的には、第1相関値演算部26は、離散時刻k=1〜(N+N)の場合には、数式(8)に従って、第1相関値AC(k)を演算する。第1相関値演算部26は、数式(8)に従って演算された第1相関値AC(k)を加算部28に出力する。
【0070】
【数8】

【0071】
第2相関値演算部27は、A/D変換部23により出力されたデジタルデータの複素信号x(k)、及び、第2基準信号生成部25により出力された第2基準送信信号jQ(k)を入力する。第2相関値演算部27は、当該入力された複素信号x(k)と第2基準送信信号jQ(k)との第2相関値AC(k)を演算する。なお、*(アスタリスク)は、複素共役演算子を表す。
【0072】
具体的には、第2相関値演算部27は、離散時刻k=1〜(N+N)の場合には、数式(9)に従って、第2相関値AC(k)を演算する。第2相関値演算部27は、数式(9)に従って演算された第2相関値AC(k)を加算部28に出力する。
【0073】
【数9】

【0074】
上述した様に、第1相関値演算部26及び第2相関値演算部27の演算は、それぞれ離散時刻k=1〜(N+N)に対して行われる。なお、レーダ装置の測定対象となるターゲットの存在範囲によって、測定レンジ(kの範囲)を更に限定してもよい。
これにより、レーダ装置1は、第1相関値演算部26及び第2相関値演算部27のそれぞれの演算量をそれぞれ低減することができる。即ち、レーダ装置1は、信号処理部21による演算量の削減に基づく消費電力量を低減することができる。
【0075】
加算部28は、第1相関値演算部26により出力された第1相関値AC(k)と、第2相関値演算部27により出力された第2相関値AC(k)とを入力する。加算部28は、当該入力された第1相関値AC(k)と第2相関値AC(k)とを、各離散時刻kを揃えた状態で、数式(10)に示す様に加算して第3相関値AC(k)を演算する。以下の説明において、この加算部28により加算された第3相関値を「IQ相関値」と記載する。加算部28は、当該演算されたIQ相関値AC(k)を、受信信号抽出部29及び減算部31にそれぞれ出力する。
【0076】
【数10】

【0077】
なお、第1相関値演算部26及び第2相関値演算部27は、例えば下述の参考非特許文献1に記載されている相補符号高速相関器を参照して適用することができる。なお、以下の各実施形態においても同様である。
【0078】
(参考非特許文献1)S.Z.Budisin,「Efficient Pulse Compressor for Golay Complementary Sequences」,Electronics Letters 31st,Vol.27,No.3,(January 1991)
【0079】
受信信号抽出部29は、加算部28により出力されたIQ相関値AC(k)を入力する。受信信号抽出部29は、当該入力されたIQ相関値AC(k)のうち、予め設定された所定の閾値Bを超えるIQ相関値AC(kpq)を抽出する。
【0080】
即ち、受信信号抽出部29は、数式(11)を満たす離散時刻kpqを抽出し、当該抽出された離散時刻kpqに対応するIQ相関値AC(kpq)を大きい順に並べたIQ相関値AC(kp1)、AC(kp2)、・・・、AC(kpv)をそれぞれIQ多重干渉成分抽出部30に出力する。パラメータp1、p2、・・・、pvはそれぞれサンプル数1〜(N+N)のうちいずれかの自然数であり、且つ、数式(11)を満たすIQ相関値AC(kpq)に対応する離散時刻kpqの序数である。なお、パラメータq=1、2、・・・、vのいずれかであるとする。また、パラメータvは、自然数であって、数式(11)を満たす離散時刻kpqの個数を示す。
【0081】
【数11】

【0082】
ここで、所定の閾値Bとは、ノイズレベルに所定のマージン(3[dB]〜10[dB]程度)を加えたレベルである。所定の閾値Bについては以下の各実施形態においても同様である。
【0083】
IQ多重干渉成分抽出部30は、受信信号抽出部29により出力された各IQ相関値AC(kpq)を入力する。IQ多重干渉成分抽出部30は、当該入力された各IQ相関値AC(kpq)の位相成分θ(kpq)(=∠[AC(kpq)])をそれぞれ演算する。
また、IQ多重干渉成分抽出部30は、当該演算された各IQ相関値AC(kpq)の位相成分θ(kpq)に基づいて、数式(12)に従ってIQ多重干渉成分を演算する。なお、Im{x}は、複素数xの虚数成分を抽出する演算子である。IQ多重干渉成分抽出部30は、当該演算されたIQ多重干渉成分を減算部31に出力する。
【0084】
【数12】

【0085】
減算部31は、IQ多重干渉成分抽出部30により出力されたIQ多重干渉成分を入力する。また、減算部31は、数式(13)に示す様に、数式(12)に基づいて演算されたIQ多重干渉成分を、受信信号抽出部29により抽出されたIQ相関値AC(kpq)から除去(減算)して、IQ多重干渉成分が除去された第4相関値AC’(kpq)を導出する。ここでk=kpq−NL+1、kpq、…、kpq+NL−1である。ただし、k<1、あるいはk>(N+N)の場合は、減算処理を行う範囲に含めない。
【0086】
【数13】

【0087】
減算部31におけるIQ多重干渉成分の除去処理の原理について図4を参照して説明する。図4(a),(b)は、I軸、Q軸からなる複素平面上でIQ相関値AC(k)をプロットした説明図である。また、図4(c)は離散時刻kを横軸にした場合のIQ相関値の絶対値|AC(k)|を縦軸にプロットした図である。上述した様に、或る送信周期Tにおいて、レーダ送信部2においては相補符号である送信符号a及び送信符号bがIQ多重されて生成された高周波送信信号s(t)が送信される。ここで、送信符号a及び送信符号bは、互いに直交性のある符号ではなく、相互相関性を有する符号である。従って、この様な送信符号a及び送信符号bがIQ多重されて生成された高周波送信信号s(t)が送信された場合には、当該高周波送信信号s(t)のターゲットにより反射された反射波の信号にはIQ多重干渉成分が発生する。
【0088】
第1の実施形態の様に相補符号のペアの符号をIQ多重する場合、図4(a)に示す様に、レーダ受信部3の加算部28により得られるIQ相関値AC(k)のうち上述した数式(11)を満たすIQ相関値AC(kpq)のピーク方向θ(kpq)に対して直交する方向に、IQ多重干渉成分がピークレンジサイドローブとして現れる。このIQ多重干渉成分は図4(c)に示すように、点線で囲んだ部分に示すレンジサイドローブ成分に相当するものである。
従って、IQ多重干渉成分抽出部30がIQ相関値AC(kpq)のピーク方向θ(kpq)に直交する成分(数式(12)参照)を演算することにより、図4(b)の点線で囲んだ部分に示す、当該IQ相関値AC(kpq)におけるレンジサイドローブ成分を抽出することができる。
【0089】
なお、数式(12)に示している様に、IQ多重干渉成分の抽出のために位相回転θ(kpq)を与えたので、元の位相成分とするために数式(13)右辺の第2式において、係数exp(jθ(kpq))を乗算している。
更に、上述した様に、数式(13)の右辺の第2式のIm{x}は、複素数xの虚数成分を抽出する演算子であるが、減算部31は、元の虚数成分に戻すために、数式(13)の右辺の第2式においては90度の位相回転の付与を示す複素係数jを乗算する。
【0090】
これらにより、減算部31は、数式(13)に従って、受信信号抽出部29により抽出された各IQ相関値AC(k)からレンジサイドローブ成分を除去することができる。
【0091】
平均化処理部32は、減算部31により導出された第4相関値AC’(k)を入力する。平均化処理部32は、所定の複数回の送信周期Tにわたって入力された各第4相関値AC’(k)を平均化する。平均化処理部32は、当該平均化された第4相関値AC’(k)の平均値を到来距離推定部33に出力する。これにより、レーダ装置1は、当該レーダ装置1の周囲の雑音成分を抑圧し、ターゲットの到来角度及び距離の推定に関する測定性能を向上することができる。
【0092】
到来距離推定部33は、平均化処理部32により出力された平均値を入力する。到来距離推定部33は、当該入力された平均値に基づいて、ターゲットまでの距離の推定演算を行う。到来距離推定部33によるターゲットまでの距離の推定演算は、既に公知の技術であり、例えば下述参考非特許文献2を参照することにより実現することが可能である。
【0093】
(参考非特許文献2)J.J.BUSSGANG、et al.、「A Unified Analysis of Range Performance of CW, Pulse, and Pulse Dopper Radar」,Proceedings of the IRE,Vol.47,Issue 10,pp.1753−1762(1959)
【0094】
例えば、到来距離推定部33は、平均化処理部32により演算された平均値の第4相関値に基づいて、当該第4相関値が最大値をとるときの離散時刻と高周波送信信号の送信時間との時間差を判定する。更に、到来距離推定部33は、当該判定された時間差に基づいて、ターゲットまでの距離を推定する。
【0095】
以上により、第1の実施形態のレーダ装置1によれば、ターゲットが移動する場合でも当該ターゲットからの反射波の信号における低レンジサイドローブ特性を維持し、レンジサイドローブレベルを効果的に抑圧することにより複数のターゲットの検出における分離性能の劣化を抑圧することができる。
【0096】
また、上述した特許文献1では、一回のパルス圧縮結果を得るために、三種類の符号系列、即ち、相補符号系列のペアとなる二種類の符号と一種類のBarker符号あるいはM系列符号等の符号系列を用いることにより、計三回の送信周期に相当する時間を要する必要があった。一方、第1の実施形態におけるレーダ装置1は、送信の際に送信符号a及び送信符号bをIQ多重するため、一回の測定結果を得るために、計一回の送信周期に相当する時間を要する。このため、レーダ装置1によれば、所定時間内における測定回数を増加することができ、即ち、測定性能を向上させることができる。
【0097】
〔第2の実施形態〕
次に、第2の実施形態のレーダ装置1aの構成及び動作について図5〜図8を参照して説明する。
図5は、第2の実施形態のレーダ装置1aの内部構成を示すブロック図である。
図6は、第2の実施形態のレーダ装置1aの動作に関するタイミングチャートである。同図(a)は、送信周期Tと各送信周期Tに用いられる送信符号との説明図である。同図(b)は、測定区間の説明図である。同図(c)は、各送信周期Tと離散時刻kとの関係を説明する説明図である。
【0098】
図7は、第2の実施形態のレーダ装置1aにおける送信信号の信号点配置図である。同図(a)は、第M番目や第(M+2)番目の送信周期で、相補符号aをI軸に、相補符号bをQ軸にそれぞれ割り当ててIQ多重した送信信号の信号点配置図である。同図(b)は、第(M+1)番目や第(M+3)番目の送信周期で、相補符号bをI軸に、相補符号aをQ軸にそれぞれ割り当ててIQ多重した送信信号の信号点配置図である。
図8は、第2の実施形態のレーダ装置1aにおいて各送信周期Tに用いられる送信符号の詳細を示す説明図である。
【0099】
以下の第2の実施形態では、第1の実施形態と異なる構成及び動作について説明し、当該第1の実施形態と同一の構成及び動作に関する説明は省略する。第2の実施形態では、レーダ装置1aは、送信周期Tごとに、IQ多重する送信符号のうちI軸に割り当てる送信符号を送信符号aと送信符号bとの間で交互に切り換え、Q軸に割り当てる送信符号を送信符号bと送信符号aとの間で交互に切り換える。更に、第2の実施形態では、ターゲットの移動に伴って発生するドップラ周波数fを演算し、この演算されたドップラ周波数fを超えるIQ相関値に関してIQ多重干渉成分の除去を行う。
【0100】
レーダ装置1aは、図5に示す様に、基準発振器Lと、送信アンテナANTが接続されたレーダ送信部2aと、受信アンテナANTが接続されたレーダ受信部3aとを備える。レーダ装置1aは、レーダ送信部2aにより生成された所定の間欠的な高周波送信信号を送信アンテナANTから送信し、ターゲットに反射された反射波の信号をレーダ受信部3aで受信する。レーダ装置1は、レーダ受信部3aで受信した受信信号を信号処理してターゲットの有無を検出する。
【0101】
レーダ送信部2aについて説明する。レーダ送信部2aは、送信信号生成部4aと、送信RF部11とを備える。送信信号生成部4aは、第1符号生成部5aと、第2符号生成部6aと、第1スイッチ部SW1と、第2スイッチ部SW2と、送信符号制御部CT1と、第1変調部7aと、第2変調部8aと、LPF9と、LPF10とを備える。図5では、送信信号生成部4aは、LPF9及びLPF10を含む様に構成されているが、LPF9及びLPF10は送信信号生成部4aと独立してレーダ送信部2aの中に構成されても良い。送信RF部11の構成及び動作は、第1の実施形態と同様のため、当該構成及び動作の説明は省略する。
【0102】
送信信号生成部4aは、基準発振器Lにより生成されたリファレンス信号に基づいて、当該リファレンス信号を所定倍に逓倍したタイミングクロックを生成する。送信信号生成部4aの各部は、当該生成されたタイミングクロックに基づいて動作する。送信信号生成部4aは、それぞれ符号長Lの相補符号系列a,bのパルス圧縮符号を変調してベースバンドの送信信号を周期的に生成する。ここで、n=1,・・・,Lであり、パラメータLは、相補符号系列a,bの符号長を表す。
【0103】
また、送信信号生成部4aにより生成される送信信号は、連続的な信号ではないものとする。例えば、図6(a)に示す様に、第M番目〜第(M+3)番目の各送信周期Tの送信区間Tでは、符号長Lの相補符号系列a,bに対して、1つのパルス符号あたりNのサンプルが存在する。従って、送信区間Tにおいては、N(=N×L)のサンプルが含まれる。また、第M番目〜第(M+3)番目の各送信周期Tの非送信区間(T−T)では、ベースバンドの送信信号としてNのサンプルが存在するものとする。
【0104】
以下、送信信号生成部4aの各部の構成について説明する。
【0105】
第1符号生成部5aは、符号長Lの相補符号系列のペアである相補符号系列aのパルス圧縮用の送信符号を生成する。第1符号生成部5aは、当該生成された送信符号aを第1スイッチ部SW1及び第2スイッチ部SW2にそれぞれ出力する。
【0106】
第2符号生成部6aは、符号長Lの相補符号系列のペアである相補符号系列bのパルス圧縮用の送信符号を生成する。第2符号生成部6aは、当該生成された送信符号bを第1スイッチ部SW1及び第2スイッチ部SW2にそれぞれ出力する。
【0107】
第1スイッチ部SW1は、第1符号生成部5a及び第2符号生成部6aによりそれぞれ出力された送信符号a及び送信符号bを入力する。また、第1スイッチ部SW1は、送信符号制御部CT1により出力された符号切換制御信号に基づいて、当該入力された送信符号a及び送信符号bのうちいずれかの送信符号を選択的に切り換え、当該切り換えられた送信符号を第1変調部7aに出力する。
【0108】
第2スイッチ部SW2は、第1符号生成部5a及び第2符号生成部6aによりそれぞれ出力された送信符号a及び送信符号bを入力する。また、第2スイッチ部SW2は、送信符号制御部CT1により出力された符号切換制御信号に基づいて、当該入力された送信符号a及び送信符号bのうちいずれかの送信符号を選択的に切り換え、当該切り換えられた送信符号を第2変調部8aに出力する。
【0109】
送信符号制御部CT1は、送信周期Tごとに、第1スイッチ部SW1及び第2スイッチ部SW2にそれぞれ入力される送信符号a及び送信符号bを選択的に切り換える様に第1スイッチ部SW1及び第2スイッチ部SW2を制御する。即ち、送信符号制御部CT1は、送信周期Tごとに、送信符号を選択的に切り換える旨の符号切換制御信号を第1スイッチ部SW1及び第2スイッチ部SW2にそれぞれ出力する。
【0110】
送信符号制御部CT1の動作について、図6(a)を参照して具体的に説明する。
【0111】
送信符号制御部CT1は、第M番目の送信周期Tでは、送信符号aを第1変調部7aに出力させる様に第1スイッチ部SW1を制御する。即ち、送信符号制御部CT1は、第M番目の送信周期Tでは、送信符号aに切り換える旨の符号切換制御信号を第1スイッチ部SW1に出力する。
また、送信符号制御部CT1は、第M番目の送信周期Tでは、送信符号bを第2変調部8aに出力させる様に第2スイッチ部SW2を制御する。即ち、送信符号制御部CT1は、第M番目の送信周期Tでは、送信符号bに切り換える旨の符号切換制御信号を第2スイッチ部SW2に出力する。
【0112】
また、送信符号制御部CT1は、第(M+1)番目の送信周期Tでは、送信符号bを第1変調部7aに出力させる様に第1スイッチ部SW1を制御する。即ち、送信符号制御部CT1は、第(M+1)番目の送信周期Tでは、送信符号bに切り換える旨の符号切換制御信号を第1スイッチ部SW1に出力する。
また、送信符号制御部CT1は、第(M+1)番目の送信周期Tでは、送信符号aを第2変調部8aに出力させる様に第2スイッチ部SW2を制御する。即ち、送信符号制御部CT1は、第(M+1)番目の送信周期Tでは、送信符号aに切り換える旨の符号切換制御信号を第2スイッチ部SW2に出力する。
【0113】
また、送信符号制御部CT1は、第(M+2)番目の送信周期Tでは、送信符号aを第1変調部7aに出力させる様に第1スイッチ部SW1を制御する。即ち、送信符号制御部CT1は、第(M+2)番目の送信周期Tでは、送信符号aに切り換える旨の符号切換制御信号を第1スイッチ部SW1に出力する。
また、送信符号制御部CT1は、第(M+2)番目の送信周期Tでは、送信符号bを第2変調部8aに出力させる様に第2スイッチ部SW2を制御する。即ち、送信符号制御部CT1は、第(M+2)番目の送信周期Tでは、送信符号bに切り換える旨の符号切換制御信号を第2スイッチ部SW2に出力する。
【0114】
また、送信符号制御部CT1は、第(M+3)番目の送信周期Tでは、送信符号bを第1変調部7aに出力させる様に第1スイッチ部SW1を制御する。即ち、送信符号制御部CT1は、第(M+3)番目の送信周期Tでは、送信符号bに切り換える旨の符号切換制御信号を第1スイッチ部SW1に出力する。
また、送信符号制御部CT1は、第(M+3)番目の送信周期Tでは、送信符号aを第2変調部8aに出力させる様に第2スイッチ部SW2を制御する。即ち、送信符号制御部CT1は、第(M+3)番目の送信周期Tでは、送信符号aに切り換える旨の符号切換制御信号を第2スイッチ部SW2に出力する。
【0115】
なお、第(M+4)番目以降の送信周期においては、図6(a)に示した第M番目及び第(M+1)番目の計2つの送信周期を1つの単位として、当該単位ごとの各送信周期に応じた送信符号が同様に生成され、繰り返して第1変調部7a及び第2変調部8aに出力される。
【0116】
第1変調部7aは、第1スイッチ部SW1により出力された送信符号a又は送信符号bを入力する。第1変調部7aは、当該入力された送信符号a又は送信符号bに対してパルス変調(振幅変調、ASK)又は位相変調(PSK)を行い、ベースバンドの送信信号I(k)を生成する。第1変調部7aは、LPF9を介して、当該生成された送信信号I(k)のうち予め設定された制限帯域以下の送信信号I(k)を送信RF部11に出力する。
【0117】
第2変調部8aは、第2スイッチ部SW2により出力された送信符号b又は送信符号aを入力する。第2変調部8aは、当該入力された送信符号b又は送信符号aに対してパルス変調(振幅変調、ASK)又は位相変調(PSK)を行い、ベースバンドの送信信号Q(k)を生成する。第2変調部8aは、LPF10を介して、当該生成された送信信号Q(k)のうち予め設定された制限帯域以下の送信信号Q(k)を送信RF部11に出力する。
【0118】
送信RF部11、及び送信アンテナANTの動作は第1の実施形態と殆ど同様であるため、当該動作の説明は省略する。但し、第2の実施形態においては、送信RF部11によりIQ多重された高周波送信信号の信号点配置図は、送信符号制御部CT1により第1変調部7a及び第2変調部8aにそれぞれ入力される送信符号が異なる。このため、送信RF部11によりIQ多重された高周波送信信号の信号点配置図は、図7(a)及び(b)に示す様に送信周期Trごとに異なる。
【0119】
具体的には、図7(a)に示す信号点配置図は、図6(a)に示した第M番目及び第(M+2)番目の各送信周期Tに、送信符号aをI軸に、送信符号bをQ軸にそれぞれ割り当ててIQ多重した高周波送信信号の信号点配置図である。従って、上述した数式(6)に示す高周波送信信号s(t)は、図7(a)に示す信号点(A,A)、(A,−A)、(−A,A)及び(−A,−A)のうちいずれかが選択される様に送信符号a,bがIQ多重されて生成されたものである。
【0120】
更に、図7(b)に示す信号点配置図は、図6(a)に示した第(M+1)番目及び第(M+3)番目の各送信周期Tに、送信符号bをI軸に、送信符号aをQ軸にそれぞれ割り当ててIQ多重した高周波送信信号の信号点配置図である。従って、上述した数式(6)に示す高周波送信信号s(t)は、図7(b)に示す信号点(A,A)、(A,−A)、(−A,A)及び(−A,−A)のうちいずれかが選択される様に送信符号a,bがIQ多重されて生成されたものである。
【0121】
次に、レーダ受信部3aについて説明する。
【0122】
レーダ受信部3aは、受信アンテナANTと、受信RF部17と、信号処理部21aとを備える。受信RF部17は、増幅器18と、周波数変換部19と、直交検波部20とを備える。信号処理部21aは、A/D変換部22,23と、第1,第2基準信号生成部24a,25aと、第1,第2相関値演算部26a,27aと、加算部28aと、受信信号選択部29aと、IQ多重干渉成分抽出部30と、減算部31と、平均化処理部32と、到来距離推定部33と、ドップラ周波数推定部34とを備える。レーダ受信部3aは、2倍の送信周期T(2T)を、信号処理部21aにおける信号処理区間として周期的に演算する。
【0123】
受信アンテナANT、受信RF部17、A/D変換部22及びA/D変換部23の動作は第1の実施形態と同様のため、当該動作の説明は省略する。なお、受信アンテナANTは、図6(b)に示す様に、各送信周期Tに相当する区間に、上述した受信信号を受信する。従って、この受信信号が受信される区間Tがレーダ装置1aにおける測定区間とされる。
【0124】
更に、図6(c)に示す様に、離散時刻k=1は、送信周期Tごとに送信符号a及び送信符号bが交互に切り換えられてIQ多重された結果、生成された高周波送信信号s(t)の送信周期Tにおける送信区間Tの開始時点を示す。また、離散時刻k=Nは、送信周期Tごとに送信符号a及び送信符号bが交互に切り換えられてIQ多重された結果、生成された高周波送信信号s(t)の送信周期Tにおける送信区間Tの終了時点を示す。更に、離散時刻k=(N+N)は、送信周期Tごとに送信符号a及び送信符号bが交互に切り換えられてIQ多重された結果、生成された高周波送信信号s(t)の送信周期Tの終了直前時点を示す。なお、図6(c)には、離散時刻kの範囲を便宜的に図示するために、離散時刻kの範囲を第M番目の送信周期のみに示している。
【0125】
第1基準信号生成部24aは、送信信号生成部4aの動作と同期して、当該送信信号生成部4aと同様に基準発振器Lにより生成されたリファレンス信号に基づいて、当該リファレンス信号を所定倍に逓倍したタイミングクロックを生成する。第1基準信号生成部24aは、当該生成されたタイミングクロックに基づいて、第1変調部7aにより生成された送信信号I(k)と同一のベースバンドの第1基準送信信号I(k)を周期的に生成する。
【0126】
上述した様に、図6(a)に示した第M番目及び第(M+2)番目の各送信周期Tでは、送信符号制御部CT1は、第1符号生成部5aにより生成された送信符号aを、第1スイッチ部SW1を介して第1変調部7aに出力する。
また、図6(a)に示した第(M+1)番目及び第(M+3)番目の送信周期Tでは、送信符号制御部CT1は、第2符号生成部6aにより生成された送信符号bを、第1スイッチ部SW1を介して第1変調部7aに出力する。
【0127】
従って、第1基準信号生成部24aは、図6(a)に示した第M番目及び第(M+2)番目の各送信周期Tでは、第1変調部7aに入力された送信符号aに基づいて生成された送信信号I(k)と同一の第1基準送信信号I(k)を生成する。
また、第1基準信号生成部24aは、図6(a)に示した第(M+1)番目及び第(M+3)番目の各送信周期Tでは、第1変調部7aに入力された送信符号bに基づいて生成された送信信号I(k)と同一の第1基準送信信号I(k)を生成する。
第1基準信号生成部24aは、各送信周期Tにおいて生成された第1基準送信信号I(k)を第1相関値演算部26aに出力する。
【0128】
第2基準信号生成部25aは、送信信号生成部4aの動作と同期して、当該送信信号生成部4aと同様に基準発振器Lにより生成されたリファレンス信号に基づいて、当該リファレンス信号を所定倍に逓倍したタイミングクロックを生成する。第2基準信号生成部25aは、当該生成されたタイミングクロックに基づいて、第2変調部8aにより生成された送信信号Q(k)と同一のベースバンドの送信信号Q(k)に、IQ多重におけるQ軸の位相回転を付与した第2基準送信信号jQ(k)を周期的に生成する。
【0129】
上述した様に、図6(a)に示した第M番目及び第(M+2)番目の各送信周期Tでは、送信符号制御部CT1は、第2符号生成部6aにより生成された送信符号bを、第2スイッチ部SW2を介して第2変調部8aに出力する。
また、図6(a)に示した第(M+1)番目及び第(M+3)番目の送信周期Tでは、送信符号制御部CT1は、第1符号生成部5aにより生成された送信符号aを、第1スイッチ部SW1を介して第2変調部8aに出力する。
【0130】
従って、第2基準信号生成部25aは、図6(a)に示した第M番目及び第(M+2)番目の各送信周期Tでは、第2変調部8aに入力された送信符号bに基づいて生成された送信信号Q(k)と同一の送信信号Q(k)に、IQ多重におけるQ軸の位相回転を付与した第2基準送信信号jQ(k)を生成する。
また、第2基準信号生成部25aは、図6(a)に示した第(M+1)番目及び第(M+3)番目の各送信周期Tでは、第2変調部8aに入力された送信符号aに基づいて生成された送信信号Q(k)と同一の送信信号Q(k)に、IQ多重におけるQ軸の位相回転を付与した第2基準送信信号jQ(k)を生成する。
第2基準信号生成部25aは、各送信周期Tにおいて生成された第2基準送信信号jQ(k)を第2相関値演算部27aに出力する。
【0131】
第1相関値演算部26aは、A/D変換部22により出力されたデジタルデータの複素信号x(k)、及び、第1基準信号生成部24aにより出力された第1基準送信信号I(k)を入力する。第1相関値演算部26aは、当該入力された複素信号x(k)と第1基準送信信号I(k)との第1相関値AC(k)を演算する。なお、*(アスタリスク)は、複素共役演算子を表す。
【0132】
具体的には、第1相関値演算部26aは、離散時刻k=1〜(N+N)の場合には、上述した数式(8)に従って、第1相関値AC(k)を演算する。第1相関値演算部26aは、数式(8)に従って演算された第1相関値AC(k)を加算部28aに出力する。
【0133】
第2相関値演算部27aは、A/D変換部23により出力されたデジタルデータの複素信号x(k)、及び、第2基準信号生成部25aにより出力された第2基準送信信号jQ(k)を入力する。第2相関値演算部27aは、当該入力された複素信号x(k)と第2基準送信信号jQ(k)との第2相関値AC(k)を演算する。なお、*(アスタリスク)は、複素共役演算子を表す。
【0134】
具体的には、第2相関値演算部27aは、離散時刻k=1〜(N+N)の場合には、上述した数式(9)に従って、第2相関値AC(k)を演算する。第2相関値演算部27aは、数式(9)に従って演算された第2相関値AC(k)を加算部28aに出力する。
【0135】
上述した様に、第1相関値演算部26a及び第2相関値演算部27aの演算は、それぞれ離散時刻k=1〜(N+N)に対して行われる。なお、レーダ装置の測定対象となるターゲットの存在範囲によって、測定レンジ(kの範囲)を更に限定してもよい。
これにより、レーダ装置1aは、第1相関値演算部26a及び第2相関値演算部27aのそれぞれの演算量をそれぞれ低減することができる。即ち、レーダ装置1aは、信号処理部21aによる演算量に基づく消費電力量を低減することができる。
【0136】
加算部28aは、第1相関値演算部26aにより出力された第1相関値AC(k)と、第2相関値演算部27aにより出力された第2相関値AC(k)とを入力する。加算部28aは、当該入力された第1相関値AC(k)と第2相関値AC(k)とを、各離散時刻kを揃えた状態で、上述した数式(10)に示す様に加算してIQ相関値AC(k)を演算する。加算部28aは、当該演算されたIQ相関値AC(k)を、受信信号選択部29a及び減算部31にそれぞれ出力する。
【0137】
また、加算部28aは、IQ相関値AC(k)のうち各送信周期Tの送信区間Tの前半部における前半相関値ACsub1(k)をドップラ周波数推定部34に出力する。更に、加算部28aは、IQ相関値AC(k)のうち各送信周期Tの送信区間Tの後半部における後半相関値ACsub2(k+(N/2))をドップラ周波数推定部34に出力する。
【0138】
ドップラ周波数推定部34は、加算部28aによりそれぞれ出力された前半相関値ACsub1(k)及び後半相関値ACsub2(k+(N/2))を入力する。ドップラ周波数推定部34は、当該入力された前半相関値ACsub1(k)及び後半相関値ACsub2(k+(N/2))に基づいて、IQ相関値AC(k)におけるドップラ周波数fを演算する。
【0139】
ここで、ドップラ周波数推定部34の演算について図8を参照して説明する。図8は、第2の実施形態のレーダ装置1aにおいて各送信周期Tに用いられる送信符号の詳細を示す説明図である。図14に示した様に、相補符号系列a,bは、符号長L/2のサブ相補符号のペアであるc,dを数式(14)に示す様に連結することにより得られたものである。なお、サブ相補符号のペアであるc,dは、数式(15)の様に表すことができる。
【0140】
【数14】

【0141】
【数15】

【0142】
〔第M番目及び第(M+2)番目の各送信周期Tの場合〕
図8に示す様に、第M番目及び第(M+2)番目の各送信周期Tの送信区間Tにおいては、当該送信区間Tの前半部では、IQ多重される送信符号は、数式(16)に示される。同様に、当該送信区間Tの後半部では、IQ多重される送信符号は、数式(17)に示される。
【0143】
【数16】

【0144】
【数17】

【0145】
数式(16)及び数式(17)の送信符号に基づいて演算されたIQ相関値AC(k)のうち、送信区間Tの前半部における前半相関値ACsub1(k)に対し、同送信区間Tの後半部における後半相関値ACsub2(k+(N/2))は、−90度位相シフトしている。従って、ドップラ周波数推定部34は、後半相関値ACsub2(k+(N/2))を、前半相関値ACsub1(k)と位相を揃えるために90度位相回転する。即ち、ドップラ周波数推定部34は、後半相関値ACsub2(k+(N/2))に90度の位相回転を付与するために、当該後半相関値ACsub2(k+(N/2))に虚数係数jを乗算する。
【0146】
これにより、ドップラ周波数推定部34は、前半相関値の位相成分と後半相関値の位相成分との間における固定的な90度の位相差をなくすことができる。この後、ドップラ周波数推定部34は、ターゲットの移動に伴って前半相関値の位相成分と後半相関値の位相成分との間に生じた位相回転量に基づいて、数式(18)に従ってドップラ周波数fを演算する。ドップラ周波数推定部34は、当該演算されたドップラ周波数fを受信信号選択部29aに出力する。なお、上述した様に、N=N×Lである。ここで∠[x]は、複素数xの位相成分を示す。
【0147】
【数18】

【0148】
〔第(M+1)番目及び第(M+3)番目の各送信周期Tの場合〕
図8に示す様に、第(M+1)番目及び第(M+3)番目の各送信周期Tの送信区間Tにおいては、当該送信区間Tの前半部では、IQ多重される送信符号は、数式(19)に示される。同様に、当該送信区間Tの後半部では、IQ多重される送信符号は、数式(20)に示される。
【0149】
【数19】

【0150】
【数20】

【0151】
数式(19)及び数式(20)の送信符号に基づいて演算されたIQ相関値AC(k)のうち、送信区間Tの前半部における前半相関値ACsub1(k)に対し、同送信区間Tの後半部における後半相関値ACsub2(k+(N/2))は、90度位相シフトしている。従って、ドップラ周波数推定部34は、後半相関値ACsub2(k+(N/2))を、前半相関値ACsub1(k)と位相を揃えるために−90度位相回転する。即ち、ドップラ周波数推定部34は、後半相関値ACsub2(k+(N/2))に−90度の位相回転を付与するために、当該後半相関値ACsub2(k+(N/2))に複素係数−jを乗算する。
【0152】
これにより、ドップラ周波数推定部34は、前半相関値の位相成分と後半相関値の位相成分との間における固定的な−90度の位相差をなくすことができる。この後、ドップラ周波数推定部34は、ターゲットの移動に伴って前半相関値の位相成分と後半相関値の位相成分との間に生じた位相回転量に基づいて、数式(21)に従ってドップラ周波数fを演算する。ドップラ周波数推定部34は、当該演算されたドップラ周波数fを受信信号選択部29aに出力する。なお、上述した様に、N=N×Lである。
【0153】
【数21】

【0154】
受信信号選択部29aは、加算部28aにより出力されたIQ相関値AC(k)、及びドップラ周波数推定部34により出力されたドップラ周波数f(k)を入力する。受信信号選択部29aは、当該入力されたIQ相関値AC(k)のうち、予め設定された所定の閾値Bを超え且つ当該入力されたドップラ周波数f(k)が予め設定された所定の閾値D以上のIQ相関値AC(kpq)を選択する。
【0155】
即ち、受信信号選択部29aは、数式(22)を満たす離散時刻kpqを抽出し、当該抽出された離散時刻kpqに対応するIQ相関値AC(kpq)を大きい順に並べたIQ相関値(kp1)、AC(kp2)、・・・、AC(kpv)をそれぞれIQ多重干渉成分抽出部30に出力する。パラメータp1、p2、・・・、pvはそれぞれサンプル数1〜(N+N)のうちいずれかの自然数であり、且つ、数式(11)を満たすIQ相関値AC(kpq)に対応する離散時刻kpqの序数である。なお、パラメータq=1、2、・・・、vのいずれかであるとする。また、パラメータvは、自然数であって、数式(11)を満たす離散時刻kpqの個数を示す。
【0156】
【数22】

【0157】
ここで、所定の閾値Dとは、信号処理部21aが、信号処理の際に、ターゲットの移動に伴って発生するドップラ周波数fの影響を無視することができなくなる値を示す。この所定の閾値Dについては以下の各実施形態においても同様である。
【0158】
平均化処理部32は、減算部31により導出された第4相関値AC’(k)を入力する。平均化処理部32は、レーダ送信周期(2T)での相補符号a,bをI軸、Q軸に交互にIQ多重したレーダ送信信号に対し、k=1,…,(N+N)の期間における、第4相関値AC’(k)の加算による平均化処理を行う。ここで、加算は、各時刻kの相関演算結果毎に行う。そして、平均化処理部32は、当該平均化された第4相関値AC’(k)の平均値を到来距離推定部33に出力する。
【0159】
これにより、測定対象となるターゲットのうち、移動によるドップラ変動の影響の少ないものは、レーダ送信周期(2T)での相補符号a,bをI軸、Q軸に交互にIQ多重した信号を用いることで、相補符号の性質を利用してサイドローブを理想的にゼロにすることができる。
【0160】
また、さらに、これらの2つのレーダ送信周期(T)である2T分の相関演算値の加算処理結果を1つの単位として、さらに複数回のレーダ送信期間にわたる平均化処理を行うことで、雑音成分の抑圧を行う処理を加えても良い。これにより、レーダ装置1は、当該レーダ装置1の周囲の雑音成分を抑圧し、ターゲットの到来角度及び距離の推定に関する測定性能を向上することができる。
【0161】
IQ多重干渉成分抽出部30、減算部31及び到来距離推定部33の動作は第1の実施形態と同様であるため、当該動作の説明は省略する。
【0162】
以上により、第2の実施形態のレーダ装置1aによれば、ターゲットが移動する場合でも当該ターゲットからの反射波の信号における低レンジサイドローブ特性を維持し、レンジサイドローブレベルを効果的に抑圧することにより複数のターゲットの検出における分離性能の劣化を抑圧することができる。
【0163】
また、第2の実施形態のレーダ装置1aによれば、送信の際に送信符号a及び送信符号bをIQ多重するため、一回の測定結果を得るために、計二回の送信周期に相当する時間を要する。このため、レーダ装置1aによれば、第1の実施形態のレーダ装置1と同様に、所定時間内に測定回数を増加することができ、即ち、測定性能を向上させることができる。
【0164】
また、レーダ装置1aは、所定の閾値Bを超え且つドップラ周波数fが所定の閾値Dを超えるIQ相関値を選択し、当該選択されたIQ相関値におけるIQ多重干渉成分の除去を行う。このため、レーダ装置1aは、ターゲットの移動に伴って発生するドップラ周波数fの影響を受けても低レンジサイドローブ特性が劣化しない様な反射波の信号に対しては、IQ多重干渉成分の除去を行わない。即ち、レーダ装置1aは、ターゲットの移動に伴って発生するドップラ周波数fの影響を受けた場合に低レンジサイドローブ特性が劣化する様な反射波の信号に対してのみIQ多重干渉成分の除去を行う。これにより、当該レーダ装置1aは、第1の実施形態のレーダ装置1と比べて、IQ多重干渉成分を除去するための演算処理量を著しく低減することができる。
【0165】
〔各実施形態の変形例1〕
上述した各実施形態の変形例1について図9及び図10を参照して説明する。図9は、各実施形態の変形例1におけるレーダ送信部の内部構成を示すブロック図である。同図(a)は、第1の実施形態の変形例1のレーダ送信部2bの内部構成を示すブロック図である。同図(b)は、第2の実施形態の変形例1のレーダ送信部2cの内部構成を示すブロック図である。
図10は、相補符号aがI軸に割り当てられて−45度位相シフトされ、相補符号bがQ軸に割り当てられて−45度位相シフトされてIQ多重された高周波送信信号の信号点配置図である。
【0166】
なお、図10においては、図1で示した基準発振器Lの記載は省略しているが、送信信号生成部4bは、基準発振器Lにより生成されたリファレンス信号に基づいて、当該リファレンス信号を所定倍に逓倍した信号を生成する。送信信号生成部4bの各部は、当該生成された信号に基づいて動作する。
【0167】
また、送信RF部11においても、基準発振器Lにより生成されたリファレンス信号に基づいて、当該リファレンス信号を所定倍数に逓倍した信号を生成する。送信RF部11は、当該生成された信号に基づいて動作する。
【0168】
各実施形態の変形例1では、上述した第1の実施形態又は第2の実施形態と異なる内容についてのみ説明し、同一の内容に関しては説明を省略する。第1の実施形態又は第2の実施形態では、IQ多重の際に、送信符号a又はbをI軸に割り当て、更に、送信符号b又はaをQ軸に直接割り当て、その際の位相回転は考慮していなかった。この各実施形態の変形例1では、図10に示した様に、送信符号a及び送信符号bをそれぞれ所定の角度θの位相回転を付与した後にIQ多重する。なお、図10には、当該角度θ=−45度の例が示されているが、これに限定されず、θ=45度としても同様な効果を得ることができる。以下、第1の実施形態の変形例1におけるレーダ送信部2b、第2の実施形態の変形例1におけるレーダ送信部2cの順に説明する。
【0169】
図9(a)に示す様に、第1の実施形態の変形例1におけるレーダ送信部2bは、送信信号生成部4bと、送信RF部11とを備える。送信信号生成部4bは、第1符号生成部5bと、第2符号生成部6bと、第2位相シフト部35と、第3位相シフト部36と、第1変調部7bと、第2変調部8bと、LPF9と、LPF10とを備える。
【0170】
図9(a)では、送信信号生成部4bは、LPF9及びLPF10を含む様に構成されているが、LPF9及びLPF10は送信信号生成部4bと独立してレーダ送信部2bの中に構成されても良い。送信RF部11の構成及び動作は、第1の実施形態と同様のため説明を省略する。更に、第1の実施形態の変形例1におけるレーダ受信部の構成及び動作は第1の実施形態のレーダ受信部3と同様のため、当該構成及び動作の説明は省略する。
【0171】
第1符号生成部5bにより生成された送信符号aは、第2シフト位相部35に入力される。第2符号生成部6bにより生成された送信符号bは、第3シフト位相部36に入力される。
【0172】
第2位相シフト部35は、当該入力された送信符号aに対し、所定の角度θに対応した位相回転を付与する。上述した様に例えば、第2位相シフト部35は、第1符号生成部5bにより出力された送信符号aに−45度の位相回転を付与する。第2位相シフト部35は、当該位相回転された送信符号aを第1変調部7bに出力する。
【0173】
同様に、第3位相シフト部36は、当該入力された送信符号bに対し、所定の角度θに対応した位相回転を付与する。上述した様に例えば、第3位相シフト部36は、第2符号生成部6bにより出力された送信符号bに−45度の位相回転を付与する。第3位相シフト部36は、当該位相回転された送信符号bを第2変調部8bに出力する。
【0174】
図9(b)に示す様に、第2の実施形態の変形例1におけるレーダ送信部2cは、送信信号生成部4cと、送信RF部11とを備える。送信信号生成部4cは、第1符号生成部5cと、第2符号生成部6cと、第2位相シフト部37と、第3位相シフト部38と、第1スイッチ部SW1と、第2スイッチ部SW2と、送信符号制御部CT2と、第1変調部7cと、第2変調部8cと、LPF9と、LPF10とを備える。
【0175】
図9(b)では、送信信号生成部4bは、LPF9及びLPF10を含む様に構成されているが、LPF9及びLPF10は送信信号生成部4cと独立してレーダ送信部2cの中に構成されても良い。送信RF部11の構成及び動作は、第2の実施形態と同様のため説明を省略する。更に、第2の実施形態の変形例1におけるレーダ受信部の構成及び動作は第2の実施形態のレーダ受信部3aと同様のため、当該構成及び動作の説明は省略する。
【0176】
第1符号生成部5cにより生成された送信符号aは、第2シフト位相部37に入力される。第2符号生成部6cにより生成された送信符号bは、第3シフト位相部38に入力される。
【0177】
第2位相シフト部37は、当該入力された送信符号aに対し、所定の角度θに対応した位相回転を付与する。上述した様に、例えば、第2位相シフト部37は、第1符号生成部5cにより出力された送信符号aに−45度の位相回転を付与する。第2位相シフト部37は、当該位相回転された送信符号aを第1スイッチ部SW1及び第2スイッチ部SW2にそれぞれ出力する。
【0178】
同様に、第3位相シフト部38は、当該入力された送信符号bに対し、所定の角度θに対応した位相回転を付与する。上述した様に、例えば、第3位相シフト部38は、第2符号生成部6cにより出力された送信符号bに−45度の位相回転を付与する。第3位相シフト部38は、当該位相回転された送信符号bを第1スイッチ部SW1及び第2スイッチ部SW2にそれぞれ出力する。
【0179】
なお、第1スイッチ部SW1、第2スイッチ部SW2、送信符号制御部CT2、第1変調部7c及び第2変調部8cの動作は、それぞれ第2の実施形態と同様であるため、当該動作に関する説明は省略する。
【0180】
以上により、各実施形態の変形例1のレーダ装置は、第1の実施形態のレーダ装置1又は第2の実施形態のレーダ装置1aと比べて、図10に示すIQ多重後の信号点配置に基づいて高周波送信信号を生成する。このため、各実施形態の変形例1のレーダ装置によれば、上述したレーダ装置1又はレーダ装置1aの各効果に加え、シフト位相部において、45度、あるいは−45度の位相回転を付与する場合、IQ多重の際に上述した高周波送信信号s(t)の信号点がI軸及びQ軸に配置されるため、平均的な送信電力を低減することができる。
【0181】
〔各実施形態の変形例2〕
上述した各実施形態の変形例2について図11を参照して説明する。図11は、各実施形態の変形例2におけるレーダ受信部の信号処理部の内部構成を示すブロック図である。同図(a)は、第1の実施形態の変形例2のレーダ受信部の信号処理部21dの内部構成を示すブロック図である。同図(b)は、第2の実施形態の変形例2のレーダ受信部の信号処理部21eの内部構成を示すブロック図である。
【0182】
各実施形態の変形例2では、上述した第1の実施形態又は第2の実施形態と異なる内容についてのみ説明し、同一の内容に関しては説明を省略する。第1又は第2の実施形態では、IQ多重干渉成分抽出部30は、受信信号抽出部29又は受信信号選択部29aから出力された各IQ相関値AC(kpq)の位相成分θ(kpq)に基づいて、当該位相成分θ(kpq)に直交する成分をIQ多重干渉成分として演算した。
【0183】
各実施形態の変形例2において、第1の実施形態の変形例2では、IQ多重干渉成分抽出部30の代わりに、IQ多重干渉成分生成部39を設ける。更に、第2の実施形態の変形例2では、IQ多重干渉成分抽出部30の代わりに、IQ多重干渉成分生成部40をそれぞれ設ける。これらIQ多重干渉成分レプリカ生成部39,40は、それぞれ当該位相成分θ(kpq)に基づいて、IQ多重干渉成分のレプリカを高精度に演算する。
【0184】
図11(a)に示す様に、第1の実施形態の変形例2におけるレーダ受信部の信号処理部21dは、A/D変換部22,23と、第1,第2基準送信信号生成部24,25と、第1,第2相関値演算部26,27と、加算部28と、受信信号抽出部29と、IQ多重干渉成分レプリカ生成部39と、減算部31と、平均化処理部32と、到来距離推定部33とを備える。
【0185】
信号処理部21dは、第1の実施形態の信号処理部21と同様に、各送信周期Tを、信号処理部21dにおける信号処理区間として周期的に演算する。更に、第1の実施形態の変形例2におけるレーダ送信部,レーダ受信部の受信RF部の構成及び動作は、第1の実施形態のレーダ送信部2,受信RF部17と同様のため、当該構成及び動作の説明は省略する。
【0186】
A/D変換部22,23、第1,第2基準送信信号生成部24,25、第1,第2相関値演算部26,27、加算部28、受信信号抽出部29、平均化処理部32及び到来距離推定部33の動作は第1の実施形態と同様のため、当該動作の説明は省略する。
【0187】
IQ多重干渉成分レプリカ生成部39は、受信信号抽出部29により出力された各IQ相関値AC(kpq)を入力する。IQ多重干渉成分レプリカ生成部39は、各IQ相関値AC(kpq)に基づいて、数式(23)に従ってIQ多重干渉成分レプリカU(k)を演算する。IQ多重干渉成分レプリカ生成部39は、当該演算されたIQ多重干渉成分レプリカU(k)を減算部31に出力する。ここでk=kpq−NL+1、kpq、…、kpq+NL−1である。ただし、k<1、あるいはk>(N+N)の場合は、レプリカ生成処理を行う範囲に含めない。
【0188】
【数23】

【0189】
減算部31は、IQ多重干渉成分レプリカ生成部39により出力されたIQ多重干渉成分レプリカU(k)を入力する。また、減算部31は、数式(24)に示す様に、数式(23)に基づいて演算されたIQ多重干渉成分レプリカU(k)を、受信信号抽出部29により抽出された各IQ相関値AC(k)から除去(減算)する。減算部31は、この除去により、IQ多重干渉成分が高精度に除去された第4相関値AC’(k)を導出する。減算部31は、当該導出された第4相関値AC’(k)を平均化処理部32に出力する。
【0190】
【数24】

【0191】
これにより、減算部31は、数式(24)に従って、受信信号抽出部29により抽出された各IQ相関値AC(k)からレンジサイドローブ成分を高精度に除去することができる。従って、減算部31は、移動しているターゲットに反射された反射波の信号を受信した場合においても、レンジサイドローブを効果的に抑圧した第4相関値AC’(k)を得ることができる。
【0192】
図11(b)に示す様に、第2の実施形態の変形例2におけるレーダ受信部の信号処理部21eは、A/D変換部22,23と、第1,第2基準送信信号生成部24a,25aと、第1,第2相関値演算部26a,27aと、加算部28aと、受信信号選択部29aと、IQ多重干渉成分レプリカ生成部40と、減算部31と、平均化処理部32と、到来距離推定部33と、ドップラ周波数推定部34とを備える。
【0193】
信号処理部21eは、第2の実施形態の信号処理部21と同様に、2倍の送信周期(2T)を、信号処理部21eにおける信号処理区間として周期的に演算する。更に、第2の実施形態の変形例2におけるレーダ送信部,レーダ受信部の受信RF部の構成及び動作は第2の実施形態のレーダ送信部2a,受信RF部17と同様のため、当該構成及び動作の説明は省略する。
【0194】
A/D変換部22,23、第1,第2基準送信信号生成部24a,25a、第1,第2相関値演算部26a,27a、加算部28a、受信信号選択部29a、ドップラ周波数推定部34、平均化処理部32及び到来距離推定部33の動作は第2の実施形態と同様のため、当該動作の説明は省略する。
【0195】
IQ多重干渉成分レプリカ生成部40は、受信信号抽出部29aにより出力された各IQ相関値AC(kpq)を入力する。IQ多重干渉成分レプリカ生成部40は、当該演算された各IQ相関値AC(kpq)の位相成分θ(kpq)に基づいて、上述した数式(22)に従ってIQ多重干渉成分レプリカU(k)を演算する。IQ多重干渉成分レプリカ生成部40は、当該演算されたIQ多重干渉成分レプリカU(k)を減算部31に出力する。ここでk=kpq−NL+1、kpq、…、kpq+NL−1である。ただし、k<1、あるいはk>(N+N)の場合は、レプリカ生成処理を行う範囲に含めない。
【0196】
減算部31は、IQ多重干渉成分レプリカ生成部40により出力されたIQ多重干渉成分レプリカU(k)を入力する。また、減算部31は、上述した数式(23)に示す様に、上述した数式(23)に基づいて演算されたIQ多重干渉成分レプリカU(k)を、受信信号抽出部29により抽出されたIQ相関値AC(k)から除去する。減算部31は、この除去により、IQ多重干渉成分が高精度に除去された第4相関値AC’(k)を導出する。減算部31は、当該導出された第4相関値AC’(k)を平均化処理部32に出力する。
【0197】
これにより、減算部31は、上述した数式(24)に従って、受信信号選択部29aにより選択された各IQ相関値AC(kpq)からレンジサイドローブ成分を高精度に除去することができる。従って、減算部31は、移動しているターゲットにより反射された反射波の信号を受信した場合においても、レンジサイドローブを効果的に抑圧した第4相関値AC’(kpq)を得ることができる。
【0198】
以上により、各実施形態の変形例2のレーダ装置は、第1の実施形態のレーダ装置1又は第2の実施形態のレーダ装置1aと比べて、IQ多重干渉成分を高精度に生成する。このため、各実施形態の変形例2のレーダ装置によれば、上述したレーダ装置1又はレーダ装置1aの各効果に加え、ターゲットの移動に伴って低レンジサイドローブ特性の劣化をより効果的に抑圧することができる。
【0199】
〔第1の実施形態のシミュレーション結果に関する説明〕
第1の実施形態のレーダ装置1の動作条件を設定してターゲットの検出精度をシミュレーションした結果について図12を参照して説明する。図12は、ターゲットの検出精度に関するシミュレーション結果を示す説明図である。同図(a)は、従来のレーダ装置で相補符号a,bに基づいてそれぞれ生成された高周波送信信号を時分割で送信した場合の結果である。同図(b)は、第1の実施形態のレーダ装置で相補符号a,bをIQ多重して生成された高周波送信信号を送信した場合の結果である。
【0200】
シミュレーションの条件を以下に示す。
(a)キャリア周波数f=60[GHz]
(b)周波数帯域幅=500[MHz]
(c)パルス幅Tp=2[ns]
(d)パルス圧縮符号長L=256
(e)送信周期Tr=1.024[μs]
(f)送信区間Tw=0.512[μs]
(g)送信電力=10[dB]
(h)アンテナ利得=20[dB]
(i)レーダ受信部NF=10[dB]
(j)平均化回数(送信周期Trの送信回数)=20
(k)ターゲット数=2
(l)ターゲット位置=10[m],40[m]
(m)ターゲットRCS(レーダ反射断面積)=20[dBsm],0[dBsm]
(n)ターゲットの移動速度=80[km/h],0[km/h]
(o)ターゲットのドップラ周波数=8592[Hz],0[Hz]
【0201】
図12(a)では、従来のレーダ装置から40[m]離れた位置に存在するターゲットにより反射された反射波の信号(メインローブ)が、他の近距離(10[m])に位置するターゲットにより反射された反射波の信号(レンジサイドローブ)に埋もれてしまっている。この様に、従来のレーダ装置で相補符号a,bに基づいてそれぞれ生成された高周波送信信号を時分割で送信した場合には、本来40[m]の位置に存在するターゲットを検出することが難しい。
【0202】
しかし、図12(b)には、レーダ装置1から10[m]離れた位置に存在するターゲットと、40[m]離れた位置に存在するターゲットとが高精度に検出された様子が示されている。従って、第1の実施形態のレーダ装置1によれば、10[m]離れた位置に存在するターゲットが移動してドップラ周波数fの影響を受ける場合であっても、当該ターゲットにより反射された反射波の信号の低レンジサイドローブ特性を維持することができる。即ち、第1の実施形態のレーダ装置1によれば、10[m]離れた位置に存在するターゲットと、40[m]離れた位置に存在するターゲットとを高精度に検出することができる。
【0203】
以上、添付図面を参照しながら各種の実施形態について説明したが、本発明のレーダ装置はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0204】
なお、上述した各実施形態において、A/D変換部22,23は、受信RF部17の直交検波部20により出力されたベースバンドの同相信号及び直交信号に対して、離散時刻kに応じたオーバーサンプリングでデジタルデータに変換する。しかし、A/D変換部22,23は、レーダ送信部2におけるベースバンドの送信信号と同一のサンプリングレートでA/D変換を行わなくても良い。
【0205】
例えば、上述した各実施形態のレーダ送信部では、符号長Lに対してNのサンプル数を用いて、ベースバンドの送信信号が生成された。これは、1つの符号あたりN/Lサンプルのオーバーサンプリングに相当する。しかしながら、上述した各実施形態のレーダ受信部においては、1つの符号あたり1倍のサンプル以上でも、受信信号の信号処理は可能である。
【0206】
なお、上述した第1符号生成部5a、第2符号生成部6a、第1スイッチ部SW1、第2スイッチ部SW2を送信信号生成部4aに設けず、図13に示す様に、送信信号生成部4aにより生成された送信符号a及び送信符号bを予め記憶する送信符号記憶部CMを設けても良い。なお、図13に示した送信符号記憶部CMは、第2の実施形態に限らず、第1の実施形態にも同様に適用することができる。図13は、第2の実施形態のレーダ装置1aにおける送信信号生成部4aの他の例である送信信号生成部4fの内部構成を示すブロック図である。この送信信号生成部4fは、送信符号記憶部CMと、送信符号制御部CT3と、第1変調部7fと、第2変調部8fと、LPF9と、LPF10とを備える。
【0207】
図13において、送信符号制御部CT3は、送信周期Trごとに、第1変調部7f及び第2変調部8fにそれぞれ出力する送信符号を、送信符号記憶部7aから巡回的に読み出して出力する。具体的には、送信符号制御部CT3は、図6(a)に示した第M番目及び第(M+2)番目の各送信周期Tでは、送信符号記憶部CMから送信符号aを読み出して第1変調部7fに出力し、更に、送信符号bを読み出して第2変調部8fに出力する。
【0208】
送信符号制御部CT3は、図6(a)に示した第(M+1)番目及び第(M+3)番目の各送信周期Tでは、送信符号記憶部CMから送信符号bを読み出して第1変調部7fに出力し、更に、送信符号aを読み出して第2変調部8fに出力する。第1変調部7f及び第2変調部8fにそれぞれ出力された後の動作は上述した各実施形態と同様であるため、当該同様の内容に関する説明は省略する。
【産業上の利用可能性】
【0209】
本発明に係るレーダ装置は、ターゲットが移動する場合でも当該ターゲットからの反射波の信号における低レンジサイドローブ特性を維持し、レンジサイドローブレベルを効果的に抑圧することにより複数のターゲットの検出における分離性能の劣化を抑圧するレーダ装置として有用である。
【符号の説明】
【0210】
1、1a レーダ装置
2、2a、2b、2c レーダ送信部
3、3a レーダ受信部
4、4a、4b、4c 送信信号生成部
5、5a 第1符号生成部
6、6a 第2符号生成部
7、7a、7b、7c 第1変調部
8、8a、8b、8c 第2変調部
9、10 LPF
11 送信RF部
12、14 ミキサ
13 第1位相シフト部
15、28 加算部
16、18 増幅器
17 受信RF部
19 周波数変換部
20 直交検波部
21、21a、21d、21e 信号処理部
22、23 A/D変換部
24 第1基準信号生成部
25 第2基準信号生成部
26 第1相関値演算部
27 第2相関値演算部
29 受信信号抽出部
29a 受信信号選択部
30 IQ多重干渉成分抽出部
31 減算部
32 平均化処理部
33 到来距離推定部
34 ドップラ周波数推定部
35、37 第2位相シフト部
36、38 第3位相シフト部
ANT0 送信アンテナ
ANT1 受信アンテナ
CM 送信符号記憶部
CT1、CT2、CT3 送信符号制御部
、L 基準発振器
SW1 第1スイッチ部
SW2 第2スイッチ部
送信周期
送信区間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相補符号のペアとなる第1の符号系列と第2の符号系列を生成する符号生成部と、
前記第1符号系列を変調して第1送信信号を生成する第1変調部と、
前記第2符号系列を変調して第2送信信号を生成する第2変調部と、
前記第1、第2変調部によりそれぞれ生成された第1、第2送信信号を用いて直交変調を行う直交変調部と、
前記直交変調部により直交変調された信号から高周波送信信号を生成する増幅部と、
前記高周波送信信号を送信アンテナから送信するアンテナ部と、
を備えることを特徴とするレーダ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のレーダ装置であって、
所定の送信周期毎に、前記第1変調部又は前記第2変調部により変調される符号系列を、前記第1符号系列又は前記第2符号系列から前記第2符号系列又は前記第1符号系列に切り換える送信符号制御部と、
を更に備えることを特徴とするレーダ装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のレーダ装置であって、
前記受信アンテナで受信した前記高周波送信信号が前記ターゲットにより反射された前記反射波の信号をベースバンドの受信信号に変換する受信RF部と、
前記受信RF部により変換された受信信号と、前記第1変調部により生成された第1送信信号と同一の信号との第1相関値を演算する第1相関値演算部と、
前記受信RF部により変換された受信信号と、前記第2変調部により生成された第2送信信号と同一の信号との第2相関値を演算する第2相関値演算部と、
前記第1相関値演算部により演算された前記第1相関値と、前記第2相関値演算部により演算された前記第2相関値とを加算して第3相関値を導出する加算部と、
前記加算部により導出された前記第3相関値のうち、前記高周波送信信号の送信に応じて発生するIQ多重干渉成分を除去するための閾値を超える前記第3相関値の位相成分を抽出して前記IQ多重干渉成分を演算するIQ多重干渉成分抽出部と、
前記IQ多重干渉成分抽出部により演算された前記IQ多重干渉成分を減算して第4相関値を導出する減算部と、
を更に備えることを特徴とするレーダ装置。
【請求項4】
請求項3に記載のレーダ装置であって、
前記減算部により導出された前記第4相関値を複数の前記送信周期にわたって平均化する平均化処理部と、
を更に備えることを特徴とするレーダ装置。
【請求項5】
請求項4に記載のレーダ装置であって、
前記平均化処理部により平均化された前記第4相関値に基づいて、前記ターゲットの到来距離を演算する到来距離推定部と、
を更に備えることを特徴とするレーダ装置。
【請求項6】
請求項1〜5のうちいずれか一項に記載のレーダ装置であって、
前記受信RF部により変換された受信信号をデジタルデータに変換するA/D変換部と、
を更に備えることを特徴とするレーダ装置。
【請求項7】
請求項1〜6のうちいずれか一項に記載のレーダ装置であって、
前記高周波送信信号の送信周期に同期して、前記第1変調部により生成された第1送信信号と同一の信号である第1基準送信信号を生成する第1基準信号生成部と、
前記高周波送信信号の送信周期に同期して、前記第2変調部により生成された第2送信信号と同一の信号である第2基準送信信号を生成する第2基準信号生成部と、
を更に備えることを特徴とするレーダ装置。
【請求項8】
請求項1に従属する請求項3に記載のレーダ装置であって、
前記加算部により導出された前記第3相関値のうち、前記高周波送信信号の送信に応じて発生するIQ多重干渉成分を除去するための閾値を超える前記第3相関値を抽出する受信信号抽出部と、
を更に備えることを特徴とするレーダ装置。
【請求項9】
請求項2に従属する請求項3に記載のレーダ装置であって、
前記第1相関値演算部により演算された前記第1相関値と、前記第2相関値演算部により演算された前記第2相関値とに基づいて、前記ターゲットの移動に起因して発生するドップラ周波数を演算するドップラ周波数推定部と、
を更に備えることを特徴とするレーダ装置。
【請求項10】
請求項9に記載のレーダ装置であって、
前記加算部により導出された前記第3相関値のうち、前記高周波送信信号の送信に応じて発生するIQ多重干渉成分を除去するための閾値を超える前記第3相関値であって、且つ、当該第3相関値における周波数成分が前記ドップラ周波数推定部により演算されたドップラ周波数を超える前記第3相関値を選択する受信信号選択部と、
を更に備えることを特徴とするレーダ装置。
【請求項11】
請求項1〜3のうちいずれか一項に記載のレーダ装置であって、
前記第1変調部による変調の前に、前記第1の符号系列に対して、45度あるいは−45度の位相回転を与える第2位相シフト部と、
前記第2変調部による変調の前に、前記第2の符号系列に対して、45度あるいは−45度の位相回転を与える第3位相シフト部と、
を更に備えることを特徴とするレーダ装置。
【請求項12】
請求項1又は2に記載のレーダ装置であって、
前記受信アンテナで受信した前記高周波送信信号が前記ターゲットにより反射された前記反射波の信号をベースバンドの受信信号に変換する受信RF部と、
前記受信RF部により変換された受信信号と、前記第1変調部により生成された第1送信信号と同一の信号との第1相関値を演算する第1相関値演算部と、
前記受信RF部により変換された受信信号と、前記第2変調部により生成された第2送信信号と同一の信号との第2相関値を演算する第2相関値演算部と、
前記第1相関値演算部により演算された前記第1相関値と、前記第2相関値演算部により演算された前記第2相関値とを加算して第3相関値を導出する加算部と、
前記加算部により導出された前記第3相関値のうち、前記高周波送信信号の送信に応じて発生するIQ多重干渉成分を除去するための閾値を超える前記第3相関値の位相成分に基づいて、前記IQ多重干渉成分を演算するIQ多重干渉成分レプリカ生成部と、
前記閾値を超える第3相関値から、前記IQ多重干渉成分レプリカ生成部により生成されたIQ多重干渉成分を減算して第4相関値を導出する減算部と、
を更に備えることを特徴とするレーダ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−52964(P2012−52964A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−197023(P2010−197023)
【出願日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】