説明

レールの検査装置

【課題】レールRの長手方向の曲がり(上下変位と左右変位)などを安定して測定、検査できる、レールの検査装置100を提供する。
【解決手段】レールRの側面と接触しながら転動する車輪12の中心軸Pを、レールの検査装置100の走行方向に傾斜させ、その傾斜の向きを、車輪12が、レールRの側面と接触しながら転動する際に、車輪12に下向きの力が作用する向きとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レールの長手方向の曲がり(上下変位と左右変位)などを安定して測定、検査できるレールの検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、鉄道車両や工場建屋の天井クレーンなどは、レールのメンテナンスが重要である。
【0003】
レールの長期間にわたる使用に伴う、例えばレールの長手方向の曲がりの測定や検査は、従来、トランシットやレベラなどの測量機器を用いて人手により行われていた。
【0004】
これが、例えば工場内のレールになると、地上を走る各種の搬送用車両のほか、天井クレーンなど、高所、狭所に設置されたものも出てくる。
【0005】
人手によるレールの長手方向の曲がりの測定や検査では、効率アップには限界がある。また、作業の安全性においても問題が出てくる場合があった。
【0006】
さらに、工場内のレールを検査するとなると、多くの場合、工場の長時間の操業停止を余儀なくされる。そのため、検査の自動化や効率化が強く望まれていた。
【0007】
レールの長手方向の曲がりを測定する装置や方法については、特許文献1、特許文献2、特許文献3などが知られている。
【0008】
代表して、特許文献1のものについて図3を用いて説明する。図3中、15はレーザビーム発射装置、16は固定具、20は移動体、30は受光検知部、31は集光レンズ、32は二次元両面分割型受光素子、40は演算部である。Rはレール、LBはレーザビームである。
【0009】
集光レンズ31によって二次元両面分割型受光素子32上に結像されたレーザビームスポットの二次元座標を、同素子32に電気的に接続された演算部40にて求める。ここで、変位が無いとした場合に本来レーザビームスポットが結像されるはずの二次元座標とのずれを移動体20のレールR上を走行中に測定し、レールRのうねり変位(左右、上下方向の変位)等を測定する。
【0010】
また、レールのうねりのほか、レール頭部のメタルフローや摩耗なども検査の対象とされる場合がある。特許文献4では、そのような検査装置として、図4に示すようなものを提案している。
【0011】
なお、図5(a)にレール頭部のメタルフローのようすを、(b)に摩耗のようすを示す。
【0012】
図4中、1は台車、2は水平ローラ、3は水平リニアゲージ、4はレーザ距離計、5は垂直ローラ、6は垂直リニアゲージ、7は超音波プローブ、8は旋回倣い機構、9は押付具、10,11は走行車輪、12,13は保持ローラ、14はロータリーエンコーダをそれぞれ示す。ここでは、車輪12および13のそれぞれでレールRを挟持させることで、台車1の姿勢を移動中も安定させるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平06−094419号公報
【特許文献2】特開平10−068611号公報
【特許文献3】特開平10−185521号公報
【特許文献4】特許第3696715号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、特許文献4のような検査装置によってもなお、台車1が移動中、レールのうねりによる振動などによって、台車1のズレや脱線などの問題を完全に防止することができず、その改善が求められていた。
【0015】
本発明は、従来技術のかような問題を解決するためになされたものであり、レールにうねり等がある場合においても、レールからのズレや脱線を起こすことなく安定した走行によって、レールの長手方向の曲がり(上下変位と左右変位)などを検査することができるレール検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
すなわち、本発明は、以下の通りである。
(1)レールの上面と接触しながら転動する走行車輪と、前記レールの側面と接触しながら転動するガイド車輪とを備えたレール検査装置であって、
前記ガイド車輪の回転中心軸を、ガイド車輪がレールの側面と接触しながら転動する際に、前記ガイド車輪に下向きの力が作用するように、前記レール検査装置の走行方向に向けて傾斜させたことを特徴とするレールの検査装置。
(2)ガイド車輪の回転中心軸の傾斜の向きを、レール検査装置の走行方向に応じて変更可能な機構を備えたことを特徴とする上記(1)に記載のレール検査装置。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、レールにうねり等がある場合においても、レールからのズレや脱線を起こすことなく安定した走行によって、レールの長手方向の曲がり(上下変位と左右変位)などを検査することができるレール検査装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第一の本発明の実施の形態の一例を示す図である。
【図2】第二の本発明の実施の形態の一例を示す図である。
【図3】特許文献1に示す従来技術について説明するための図である。
【図4】特許文献4に示す従来技術について説明するための図である。
【図5】特許文献4に示すレール頭部のメタルフローや摩耗の様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係るレール検査装置は、上記特許文献1、特許文献2、特許文献3に記載されたレールのうねり変位(左右、上下方向の変位)を測定するもののほか、特許文献4に記載された天井クレーンの走行レール、製鉄所におけるトーピードカーの走行レールなど、各種工業用走行レールの検査を自動的に行うようなものなど、各種のものが考えられる。
【0020】
その構成は、レールの上面と接触しながら転動する走行車輪を備えたものであればいかなるものでもよい。もちろん、図4を用いて示した、先述の特許文献4に記載したもののように、レールの側面と接触しながら転動する保持ローラを既に別途備えたようなものであってもよい。
【0021】
そして、本発明に係るレールの検査装置は、レールの長手方向の曲がりのほか、例えばレール頭部のメタルフローや摩耗、あるいはそれら以外のレールの各部寸法や内部欠陥など、各種のデータを一つ以上測定し検査するものであればこれに該当し、測定や検査の方法もレーザビームを用いたものに限らず、超音波なども含め、あらゆる手段を用いたものがこれに該当する。
【実施例】
【0022】
(第一の本発明の実施の形態)
図1に第一の本発明の実施の形態の一例を示す。図1(a)はレール検査装置100の前方から見た正面図、図1(b)は側方から見た側面図である。図1中、10はレールRの上面と接触しながら転動する走行車輪、12はレールRの側面と接触しながら転動するガイド車輪、Bはガイド車輪12を軸支する軸受12aやそれをさらに保持する軸受箱などを内部に備える保持ブロックである。図1(b)中、保持ブロックBは図示を省略している。
【0023】
ここで、本発明では、レールRの側面と接触しながら転動するガイド車輪12の回転中心軸Pを、レールの検査装置100の走行方向Tに向けて傾斜させる。つまり、その傾斜の向きを、ガイド車輪12が、レールRの側面と接触しながら転動する際に、ガイド車輪12に下向きの力が作用する向きとする。
【0024】
図1(b)を用いて説明すると、レール検査装置100の走行方向が図中のTで示す方向とした場合、レールRの側面と接触することで従動的に転動するガイド車輪12には、図中のCで示す方向に力がはたらく。この方向Cは下向きの成分を含むため、レールRの側面と接触しながら転動するガイド車輪12には、レールRの側面と接触しながら転動する際に、下向きの力が作用する。
【0025】
この作用により、レール検査装置100が走行中、レールRのうねり等による振動などによって、レールからズレたり脱線したりすることを防止できる。
【0026】
(第二の本発明の実施の形態)
図2に第二の本発明の実施の形態の一例を示す。図2は側方から見た側面図であり、図1でいえば(b)に相当する。正面図は図1(a)と実質的に同じになるので省略した。
【0027】
12bは流体圧シリンダなどのアクチュエータである。a,b,cはいずれも回動可能な支点である。
【0028】
これらアクチュエータ12bや支点a,b,cなどは、レールの検査装置100の走行方向が逆になった場合も、レールRの側面と接触しながら転動するガイド車輪12の回転中心軸Pを、レール検査装置100の走行方向Tに傾斜させる向きを逆にして、ガイド車輪12が、レールRの側面と接触しながら転動する際に、ガイド車輪12に常に下向きの力が作用するようにできる機構を構成する。
【0029】
レール検査装置100の走行中、アクチュエータ12bからは、ガイド車輪12がレールRの側面と接触しながら転動する際にレールRから受ける反力によって押し戻されないようにするための十分な力を作用させる。
【0030】
このような機構を備えるようにすれば、レール検査装置100の走行方向を逆にしたい場合に、レール検査装置100全体をクレーンで吊り上げるなどしてレールRから離脱させ、走行方向が逆になるように平面内で回動して再びレールRに着地させる、という煩わしい作業を行う必要がなくなる。これにより、レール検査装置100の走行方向を逆向きとする場合でも、先述の第一の本発明の実施の形態で説明したのと同様に、レール検査装置100が走行中、レールRのうねり等による振動などによって、レールからズレたり脱線したりすることを防止できる。
【0031】
ここで、上記のガイド車輪12の回転中心軸Pの傾斜の向きを変更可能とする機構は図2に示す構成に限られるものではない。回転中心軸Pの傾斜の向きをレール検査装置100の走行方向に応じて、ガイド車輪12がレールRの側面と接触しながら転動する際に前記ガイド車輪12に下向きの力が作用する向きに変更でき、そこで固定できる機構を備えたものであれば用いることができる。
【符号の説明】
【0032】
10 走行車輪
12 ガイド車輪
12a 軸受
12b アクチュエータ
100 レール検査装置
B 保持ブロック
C レールRの側面と接触しながら転動する車輪12にはたらく力の方向
P レールRの側面と接触しながら転動する車輪12の中心軸
R レール
T 走行方向
a 支点
b 支点
c 支点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レールの上面と接触しながら転動する走行車輪と、前記レールの側面と接触しながら転動するガイド車輪とを備えたレール検査装置であって、
前記ガイド車輪の回転中心軸を、ガイド車輪がレールの側面と接触しながら転動する際に、前記ガイド車輪に下向きの力が作用するように、前記レール検査装置の走行方向に向けて傾斜させたことを特徴とするレールの検査装置。
【請求項2】
ガイド車輪の回転中心軸の傾斜の向きを、レール検査装置の走行方向に応じて変更可能な機構を備えたことを特徴とする請求項1に記載のレール検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−208447(P2010−208447A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−55856(P2009−55856)
【出願日】平成21年3月10日(2009.3.10)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】