説明

レールの水平移動量計測装置

【課題】工事施工範囲の全体を広く監視するだけでなく、集中的に工事施工個所及びその近傍のトラブルをも列車を止めることなく、工事期間中、常時、見張れる(計測できる)ようにしたレールの水平移動計測装置を提供する。
【解決手段】 本願計測装置10は、鉄道レールの側面に付したターゲットを中心に一定の夾角を介して視準できる2台の撮像装置11、12を配置し、かつ、各撮像装置によって得たそれぞれの画像のターゲット像の定点からの移動量と、前記撮像装置の配置角度とによりターゲットの前後方向の移動量を求める画像処理装置13を設けてなり、鉄道レール下を横断するトンネル工事や近接工事等において生ずることのある地盤変動その他の原因による既設鉄道レールの通り狂いを的確に計測できるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道レール下を横断する鉄道・自動車道路・水路等の工事や近接工事等において生ずることのある地盤変動その他の原因による影響により当該鉄道レールの水平移動を的確に計測するためのレールの水平移動計測装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
工事施工場所の上部ないし近接部を走行する車両・列車の安全走行に直接影響を及ぼす路盤変状・軌道変状は工事施工範囲全体にわたって緩やかに生ずる場合と、急激に生ずる場合がある。
【0003】
従来から路盤・軌道の変状に基づくレールの軌道の狂い、特に、水平方向の狂い(通り狂い)の計測をするものとして、特開平5−1908号公報記載のものがある。これは鉄道レールに沿ってほぼ平行な方向にレーザ光を照射する発光器と、照射されたレーザ光を受ける固定受光器と、前記鉄道レールに沿って移動する台車上にレールに直交する方向に移動できるように備えた移動受光器とを設け、その台車上の移動受光器の移動量を計測できるようにしたものである。
【特許文献1】特開平5−1908号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特開平5−1908号公報記載の装置の如く、工事施工範囲を広く計測する場合には、集中的に狭い範囲でのトラブルには的確に対応できなかったばかりでなく、鉄道レールに沿って台車を移動させるために、計測時には列車を止めなければならず、したがって、工事期間中、常時、監視できるものではなかった。
【0005】

本発明は、上記課題を解決するためのもので、その目的とするところは、工事施工範囲の全体を広く監視するだけでなく、集中的に工事施工個所及びその近傍のトラブルをも列車を止めることなく、工事期間中、常時、見張れる(計測できる)ようにしたレールの水平移動計測装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は、鉄道レールの側面に付したターゲットを中心に一定の夾角を介して視準できる2台の撮像装置を配置し、かつ、各撮像装置によって得たそれぞれの画像のターゲット像の定点からの移動量と、前記撮像装置の配置角度とによりターゲットの前後方向の移動量を求める画像処理装置を設けてなるものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、鉄道レールの側面に付したターゲットを中心に一定の夾角を介して視準できる2台の撮像装置を配置し、かつ、各撮像装置によって得たそれぞれの画像のターゲット像の定点からの移動量と、前記撮像装置の配置角度とによりターゲットの前後方向の移動量を求める画像処理装置を設けたことを特徴としているから、鉄道レール下を横断するトンネル工事や近接工事等において生ずることのある地盤変動その他の原因による既設鉄道レールの通り狂いが、これらの工事等の期間中、列車を止めることなく、常時、見張れるという優れた効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
次に、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。図1は本願計測装置の略示的平面図、図2はカメラの視準状態を示す正面図、図3は通り狂いが生じたレールの平面図、図4はレールの通り狂い時のカメラ毎のターゲット像の移動量を示す図、図5(a)、(b)はターゲット像を示す画像処理装置の正面図、図6はレールの通り狂い量を示す図、図7は上下複線でのカメラの視準と列車通過時の説明図、図8は列車通過監視装置の正面図である。
【0009】
図において、10は本願計測装置である。本願計測装置10は、たとえば、鉄道レール14の直下において横断構造物(図示せず)を、エレメントと称する角形鋼管を牽引・推進してボックスカルバートを形成する施工を行う場合、エレメントの推進時に地中障害物による押し込みによる路盤の隆起あるいは土砂の取りこみ過多による路盤の沈下などが原因で生ずる変状が予想される個所に設置されることとなる。
【0010】
前記本願計測装置10は2台の撮像装置11、12(以下第1カメラ11,第2カメラ12という)と、画像処理装置13とを備えてなり、該第1カメラ11、第2カメラ12は、鉄道レール14の側面(レールウェブの側面が適当)に付したターゲット15を中心に一定の夾角θを介して視準できるように配置されている。すなわち、レールに付したターゲット15より立てたレールに直交する面に対して第1カメラ11及び第2カメラ12は同角度(θ/2)であり、レールから同距離に配置されていることを意味する。
【0011】
前記ターゲット15は、鉄道レール14の側面に付されるもので、目立つ色(白を含む)のペンキ等の塗料によりワンポイント的に塗布しても、又は、ステッカーを貼着する等してもよい。前記第1カメラ11と第2カメラ12は、列車の走行に支障にならずに、前記ターゲット15をやや俯瞰状に視準できる位置に設置するとよい。
【0012】
前記第1カメラ11と第2カメラ12は、その性能によっては、図7の如く、上下複線になっている手前のレール14及び該レール14を跨いで奥側のレール14′のそれぞれの側面に付したターゲット15が視準できるように設置することもある。この場合、手前のレール14に列車Rが走行すると、カメラ画像が遮断されてエラーデータを出すこととなるため、かかるエラーデータは列車の走行であることを条件に除外することが必要である。
【0013】
前記列車の走行を確認する手段として、図8の如く、たとえば、レーザ光を利用した列車通過監視装置(スイッチ)16を設け、発信器16aからのレーザ光を受信器16bが受信しているときはスイッチオフに、列車Rの通過によってレーザ光が遮断されると、スイッチオンとなって前記画像処理装置13に組み込んだシステム(図示せず)により一定時間(スイッチオン後、15秒程度)で、計測データを除外するように構成しておくと良い。
【0014】
前記画像処理装置13は、鉄道レール14下を横断する鉄道・自動車道路・水路等のための工事等に伴う地盤変動により、図3、図4の如く、通り狂いが生じた結果、前記第1カメラ11と第2カメラ12がそれぞれとらえたターゲット15の定点pから移動点p′までの移動量aとbを、図5(a)、(b)の如く、画面表示する。
【0015】
また、前記画像処理装置13は、前述のターゲット像17の移動量a、bと、前記第1カメラ11と第2カメラ12との配置角度(θ)とによりレール14の前後方向の移動量cを求める演算手段(コンピュータ)を有している。この演算は、前記第1カメラ11と第2カメラ12がそれぞれとらえたターゲット像17の定点pから移動点p′までの移動量a及びbと、前記両カメラ11と12との位置関係とにより、図6の如く、三角測量の原理を用いてターゲット15の移動量(奥行情報)cが求められる。つまり、移動量c=a/√2+b/√2となり、「通り狂い量」の計測が可能になる。
【0016】
前記ターゲット15を中心とする夾角θ(ターゲット15より立てたレールに直交する面に対して夾角θ/2となる)は、本例では90°に設定されているが、この角度に限定するものではない。
【0017】
なお、前記画像処理装置13により得られた情報は、リアルタイムに工事現場の監視モニタへ表示させることも、計測地点に接近中の列車に警報信号として出力することも可能なようにしておくとよい。
【0018】
次に、本願計測装置1の作用を説明する。まず、鉄道レール11の直下において横断構造物(図示せず)の施工を行う場合、この工事等に伴い地盤変動等が予測される区間内のレール11の側面(レールのウェブ部)に、白ペンキにより丸形ワンポイント的にターゲット15を塗布する。
【0019】
次いで、前記ターゲット15を中心にして一定の夾角θ(90°)を介して視準できる位置に第1カメラ11と第2カメラ12を2台配置する。この2台のカメラ11,12は列車の走行に支障にならず、しかも前記ターゲット15をやや俯瞰状に視準できるように設置するとよい。
【0020】
前記第1カメラ11と第2カメラ12には、画像処理装置3の画面上に、前記ターゲット像17が表示される。これら両カメラ11,12にてとらえられたターゲット像17は平時には、画像処理装置3の画面上に定点画像(同一位置)として表示されているが、地盤変動に伴い、第1カメラ11にてとらえたターゲット像17が、図5(a)の如く、定点pから移動点p ′へaだけ移動する。一方、第2カメラ12にてとらえたターゲット像17が、図5(b)の如く、定点pから移動点p ′へbだけ移動したとすると、図6の如く、レール14は手前側に水平移動(通り狂い)したこととなり、その移動量cは、a/√2+b/√2として演算できる。
【0021】
したがって、本願計測装置1が設置されたレール14の「通り狂い」が、即座に知れ、その情報はリアルタイムに工事現場の監視モニタに表示させることもできるとともに、計測地点に接近中の列車に警報信号として発信することも可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明は、近接工事等において生ずることのある地盤変動、不同沈下その他の原因による影響により既設鉄道レールの通り狂いを的確に計測かつ監視できるようにした有効な装置である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本願計測装置の略示的平面図である。
【図2】カメラの視準状態を示す正面図である。
【図3】通り狂いが生じたレールの平面図である。
【図4】レールの通り狂い時のカメラ毎のターゲット像の移動量を示す図である。
【図5】(a)、(b)はターゲット像を示す画像処理装置の正面図である。
【図6】レールの通り狂い量を示す図である。
【図7】上下複線でのカメラの視準と列車通過時の説明図である。
【図8】列車通過監視装置の正面図である。
【符号の説明】
【0024】
10 本願計測装置
11,12 撮像装置(カメラ)
13 画像処理装置
14 レール(手前のレール)
14′ 奥側のレール
15 ターゲット
16 列車通過監視装置(スイッチ)
16a 発信器
16b 受信器
17 ターゲット像
p 定点
p′移動点
a 第1カメラがとらえたターゲット像の移動量
b 第2カメラがとらえたターゲット像の移動量
c レールの移動量(通り狂い量)
R 列車

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道レールの側面に付したターゲットを中心に一定の夾角を介して視準できる2台の撮像装置を配置し、かつ、各撮像装置によって得たそれぞれの画像のターゲット像の定点からの移動量と、前記撮像装置の配置角度とによりターゲットの前後方向の移動量を求める画像処理装置を設けたことを特徴とするレールの水平移動量計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−122299(P2008−122299A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−308472(P2006−308472)
【出願日】平成18年11月14日(2006.11.14)
【出願人】(594144980)株式会社東京計測 (12)
【Fターム(参考)】