説明

ロキソプロフェンナトリウムとビタミンB1を含有する固形製剤

【課題】ロキソプロフェンナトリウム及びビタミンB1を含有する、変色や含量低下等がない安定な固形製剤を提供する。
【解決手段】ロキソプロフェンナトリウム又はその水和物、及びビタミンB1又はその誘導体を含有する固形製剤において、ロキソプロフェンナトリウム又はその水和物、及びビタミンB1又はその誘導体が、製剤中で実質的に接触することなく存在することを特徴とする固形製剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安定性に優れたロキソプロフェンナトリウムを含有する固形製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、総合感冒薬や解熱鎮痛薬等については、複数の薬効成分を配合した製剤が広く使用されている。例えば、総合感冒薬においては、解熱鎮痛薬、鎮咳去痰薬、鼻炎薬など多くの成分が配合されていることが知られている。これらの薬剤は、一般用医薬品として広く販売されており、安全性の観点から、製剤としての安定性に優れている必要がある。
【0003】
ロキソプロフェンナトリウム又はその水和物は、非ステロイド系解熱鎮痛薬として臨床で広く使用されている。
【0004】
ビタミンB1又はその誘導体は、体力消耗時に滋養強壮剤として、総合感冒薬の有効成分として配合されている。
【0005】
ロキソプロフェンナトリウム又はその水和物と、ビタミンB1を組み合わせた医薬組成物については、すでに知られているが(例えば、特許文献1、2参照)、これらの文献には、ロキソプロフェンナトリウム又はその水和物と、ビタミンB1を配合の配合変化等に関する記載がないことから、ロキソプロフェンナトリウム又はその水和物と、ビタミンB1とを配合した製剤の安定性については知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−172175号公報
【特許文献2】特開2001−199882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、ロキソプロフェンナトリウム又はその水和物と、ビタミンB1又はその誘導体を含む同一顆粒に含む製剤を調製後、これを保存した際、経時保存にビタミンB1又はその誘導体の含量が低下する問題があることを見出した。したがって、本発明の課題は、ロキソプロフェンナトリウム又はその水和物とビタミンB1又はその誘導体を含有する固形製剤において、変色や含量低下等がなく安定性に優れた固形製剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、ロキソプロフェンナトリウム又はその水和物とビタミンB1又はその誘導体を、製剤中で実質的に接触することなく存在するように配合することによって安定した製剤が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明は以下の(1)〜(8)を提供するものである。
(1):ロキソプロフェンナトリウム又はその水和物、及びビタミンB1又はその誘導体を含有する固形製剤において、
ロキソプロフェンナトリウム又はその水和物、及びビタミンB1又はその誘導体が、製剤中で実質的に接触することなく存在することを特徴とする固形製剤。
(2):ロキソプロフェンナトリウム又はその水和物を含む顆粒a、及びビタミンB1又はその誘導体を含む顆粒bを含有することにより、ロキソプロフェンナトリウム又はその水和物、及びビタミンB1又はその誘導体が、製剤中で実質的に接触することなく存在する(1)に記載の固形製剤。
(3):顆粒a及び顆粒bが、セルロース誘導体を含むものである(2)に記載の固形製剤。
(4):ロキソプロフェンナトリウム又はその水和物が、ロキソプロフェンナトリウム2水和物である(1)〜(4)のいずれか1に記載の固形製剤。
(5):固形製剤が、顆粒剤、散剤、カプセル剤、丸剤又は錠剤である(1)〜(4)のいずれか1に記載の固形製剤。
(6):固形製剤が錠剤である(1)〜(4)のいずれか1に記載の固形製剤。
(7):少なくとも、ロキソプロフェンナトリウム又はその水和物を含む層aと、ビタミンB1又はその誘導体を含む層bの2層以上からなる多層錠であり、ロキソプロフェンナトリウム又はその水和物、及びビタミンB1又はその誘導体が、製剤中で実質的に接触することなく存在することを特徴とする(6)に記載の固形製剤。
(8):ロキソプロフェンナトリウム又はその水和物と、ビタミンB1又はその誘導体を含有する固形製剤の製造方法において;
ロキソプロフェンナトリウム又はその水和物と、ビタミンB1又はその誘導体が、製剤中で実質的に接触することなく存在することを特徴とするとする固形製剤の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、ロキソプロフェンナトリウム又はその水和物、及びビタミンB1又はその誘導体を含有し、保存安定性に優れた固形製剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明における「ロキソプロフェンナトリウム又はその水和物」は、ロキソプロフェンナトリウム、ロキソプロフェンナトリウム1水和物、ロキソプロフェンナトリウム2水和物を含む。ロキソプロフェンナトリウム2水和物は、ロキソプロフェンナトリウム水和物として、第15改正日本薬局方に収載されており、容易に入手可能である。
【0012】
本発明におけるビタミンB1又はその誘導体としては、例えば、チアミン硝化物、チアミン塩化物塩酸塩、ベンフォチアミン、フルスルチアミン等を挙げることができる。チアミン硝化物やチアミン塩化物塩酸塩は、第15改正日本薬局方に収載されており、また、ベンフォチアミンやフルスルチアミンは、日本薬局方外医薬品規格2002に収載されており、いずれも公知の化合物で、容易に入手可能である。
【0013】
本発明におけるビタミンB1又はその誘導体としては、チアミン硝化物又はベンフォチアミンが好ましく;ベンフォチアミンがより好ましい。
【0014】
本発明の固形製剤は、ロキソプロフェンナトリウム又はその水和物、及びビタミンB1又はその誘導体を含むものであり、その含有比率は、本発明の効果に影響がない限り特に限定されないが、ロキソプロフェンナトリウム2水和物1重量部あたりのビタミンB1又はその誘導体の含有比率として、0.05〜1.0重量部の範囲が好ましく;0.05〜0.5重量部の範囲がより好ましい。
【0015】
本発明の「固形製剤」としては、具体的には、第15改正日本薬局方に記載されている顆粒剤、散剤、カプセル剤、錠剤、又は丸剤等を挙げることができる。本発明の「固形製剤」は、好適には、顆粒剤、散剤、カプセル剤又は錠剤であり、より好適には、錠剤を挙げることができる。
【0016】
また、本発明の顆粒剤又は錠剤の態様として、水溶性の高分子などで製剤をコーティングしたものや、糖で錠剤をコーティングしたものも好適である。すなわち、フィルムコーティング顆粒、フィルムコーティング錠、糖衣錠等が好ましい顆粒剤及び錠剤の態様として挙げることができる。
【0017】
本発明の固形製剤が錠剤の場合、組成の異なる粉末又は顆粒を2層又は3層以上に積み重ねて圧縮成型した多層錠も好ましい態様として挙げることができる。
【0018】
本発明の「製剤中で実質的に接触することなく存在する」とは、固形製剤中に複数の薬剤等が存在する場合に、共存が好ましくない薬剤が均一に混合して存在することがなく、すなわち当該薬剤同士が直接接触して相互作用をすることなく、同一の固形製剤中に存在する状態をいう。例えば、当該薬剤の間に結合剤や賦形剤等の薬剤と反応しない不活性添加物質が存在したり、当該薬剤が異なる顆粒中に存在する複数の顆粒として存在したり、或いは当該薬剤が異なる層に存在する多層錠の形態を有する固形製剤が挙げられる。具体的な態様としては、ロキソプロフェンナトリウム又はその水和物と、ビタミンB1又はその誘導体を、各々別の顆粒に配合し混合した顆粒剤や、当該顆粒を圧縮成型した錠剤でもよく、また、本発明の固形製剤が錠剤であって多層錠や有核錠の場合、ロキソプロフェンナトリウム又はその水和物を含む層aと、ビタミンB1又はその誘導体を含む層bとに、分けて配合した錠剤であってもよい。
【0019】
このように薬剤が「製剤中で実質的に接触することなく存在する」ことにより、複数の薬剤が同一の固形製剤中に存在しても、当該薬剤同士の相互作用によって、固形製剤の変色や有効成分の含量低下を抑制することができる。
【0020】
また、本発明の固形製剤に、カフェイン類を含有する場合、かかるカフェイン類の配合は、ロキソプロフェンナトリウム又はその水和物及びカフェイン類の混合物と、ビタミンB1又はその誘導体が、実質的に接触することなく存在するのが好ましい。
【0021】
なお、本発明におけるカフェイン類とは、カフェイン又は無水カフェインが好ましい。
【0022】
本発明の固形製剤の調製方法としては特に限定されず、ロキソプロフェンナトリウム又はその水和物含む顆粒aと、ビタミンB1又はその誘導体を含む顆粒bを分離して配合する際には、必要により、各々の顆粒に、本発明に影響のない範囲で他の薬効成分を配合し、さらに必要に応じて製剤添加剤を添加し、常法に従って製造すればよい。
【0023】
例えば、ロキソプロフェンナトリウム又はその水和物含む顆粒aと、ビタミンB1又はその誘導体を含む顆粒bを分離して配合するフィルムコーティング錠を調製する方法としては、ロキソプロフェンナトリウム又はその水和物及び製剤添加剤を含む顆粒aと、ビタミンB1又はその誘導体及び製剤添加剤を含む顆粒bを調製し、各々の顆粒と滑沢剤を混合後に打錠し錠剤を調製する。錠剤の調製後にフィルムコーティング機に投入、フィルムコーティング液を噴霧しフィルムコーティング錠を調製すればよい。
【0024】
ここで、固形製剤の製剤化に使用される製剤添加剤としては、薬学的に許容される担体、例えば賦形剤、結合剤、崩壊剤、崩壊補助剤、滑沢剤、流動化剤、光沢化剤、発泡剤、防湿剤、界面活性剤、安定化剤、乳化剤、抗酸化剤、充填剤、防腐剤、保存剤、甘味剤、矯味剤、清涼化剤、香料、芳香剤、着色剤、コーティング剤、分散剤、消泡剤等が挙げられ、従来公知の固形製剤に使用しうる製剤添加剤を上記の目的で使用しうる。
【0025】
特に本発明において、ロキソプロフェンナトリウム又はその水和物を含む顆粒aと、ビタミンB1又はその誘導体を含む顆粒bに使用される製剤添加剤としては、賦形剤を含有することが好ましく、賦形剤としては、セルロース誘導体から選ばれる1種又は2種以上を含有することが好ましい。ここで、セルロース誘導体としては、例えば、カルボキシメチルエチルセルロース、カルメロース、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、結晶セルロース、微結晶セルロース、結晶セルロース(微粒子)、結晶セルロース(粒)、粉末セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2208、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2906、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2910、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、メチルセルロース、及びエチルセルロース等から選ばれる1種又は2種以上を挙げることができ;カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、結晶セルロース、微結晶セルロース、結晶セルロース(微粒子)、結晶セルロース(粒)、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、及びヒドロキシプロピルセルロースから選ばれる1種又は2種以上が好ましい。
【0026】
本発明においては、ロキソプロフェンナトリウム又はその水和物及びセルロース誘導体を含む顆粒a、ならびにビタミンB1又はその誘導体及びセルロース誘導体を含む顆粒bを含有する固形製剤を調製することが好ましく;ロキソプロフェンナトリウム又はその水和物及び結晶セルロースを含む顆粒a、ならびにビタミンB1又はその誘導体及び結晶セルロースを含む顆粒bを含有する固形製剤を調製することがより好ましく;ロキソプロフェンナトリウム又はその水和物、カフェイン類及び結晶セルロースを含む顆粒a、並びにビタミンB1又はその誘導体、及び結晶セルロースを含む顆粒bを含有する固形製剤を調製することが特に好ましい。
【0027】
本発明に配合される製剤添加物の配合量については、ロキソプロフェンナトリウム又はその水和物と、ビタミンB1又はその誘導体が、製剤中において実質的に接触することなく存在することができれば特に限定されないが、製剤添加物がセルロース誘導体の場合、ロキソプロフェンナトリウム又はその水和物1重量部に対して、セルロース誘導体を0.05〜100重量部配合するのが好ましく;0.1〜50重量部配合するのがより好ましく;0.1〜10重量部配合するのがさらに好ましい。
【0028】
本発明の固形製剤に配合できるロキソプロフェンナトリウム又はその水和物、及びビタミンB1又はその誘導体以外の薬効成分としては、クロルフェニラミンマイレン酸塩、メキタジン、クレマスチンフマル酸塩等の抗ヒスタミン剤、アンブロキソール塩酸塩、ブロムヘキシン塩酸塩等の去痰剤、ベラドンナ総アルカロイド、ベラドンナエキス、スコポラミン臭化水素酸塩等の副交感神経抑制剤、デキストロメトルファン臭化水素酸塩、ジヒドロコデインリン酸塩、dl−メチルエフェドリン塩酸塩、ノスカピン等の鎮咳薬、リボフラビン、アスコルビン酸、アスコルビン酸カルシウム等のビタミン剤等を挙げることができる。
【実施例】
【0029】
本発明をより詳細に説明するため、以下に試験例、比較例及び実施例を記載するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0030】
試験例:錠剤での比較試験
1.錠剤の調製方法
下記の(A)〜(C)の工程により、実施例、及び、(A´)〜(C´)の工程により比較例の錠剤を製造した。
【0031】
(実施例の錠剤の製造)
(A)顆粒aの製造:流動層造粒機にロキソプロフェンナトリウム2水和物(第一三共プロファーマ株式会社製)102.9g、無水カフェイン37.5(白鳥製薬株式会社製)、下記の実施例に記載された(薬効成分A)、製剤添加剤としての結晶セルロース(旭化成ケミカルズ株式会社製)適量及びD−マンニトール(三菱商事フードテック社製)適量を投入・混合し、ヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達株式会社製)の水溶液を噴霧し顆粒aを得た。
(B)顆粒bの製造:流動層造粒機に、ベンフォチアミン(米沢浜理工業株式会社製)12.5g、下記の実施例に記載された(薬効成分B)、及び製剤添加剤としての結晶セルロース適量を投入・混合し、ヒドロキシプロピルセルロース水溶液を噴霧し顆粒bを得た。
(C)錠剤の製造:該顆粒a、bとクロスカルメロースナトリウム(旭化成ケミカルズ株式会社製)、及びステアリン酸マグネシウム(メルクジャパン株式会社製)を混合後、打錠して錠剤を得た。
【0032】
上述の錠剤の調製方法にて、下記の実施例1〜10の錠剤を製造した。
【0033】
(実施例1)
(薬効成分A):追加なし。
(薬効成分B):上記の(B)工程のベンフォチアミン12.5gの代わりにチアミン硝化物12.5g。
【0034】
(実施例2)
(薬効成分A):追加なし。
(薬効成分B):トラネキサム酸375.0g、クレマスチンフマル酸塩0.67g、及びリボフラビン6.0g。
【0035】
(実施例3)
(薬効成分A):ジヒドロコデインリン酸塩6.0g、ベラドンナ総アルカロイド0.15g、及びリボフラビン3.0g。
(薬効成分B):アンブロキソール塩酸塩10.0g、クロルフェニラミンマレイン酸塩7.5g、ノスカピン24.0g、及びリボフラビン3.0g。
【0036】
(実施例4)
(薬効成分A):ノスカピン24.0g。
(薬効成分B):ブロムヘキシン塩酸塩6.0g、クレマスチンフマル酸塩0.67g、dl−メチルエフェドリン塩酸塩30.0g、及び上記の(B)工程のベンフォチアミン12.5gの代わりにチアミン硝化物12.5g。
【0037】
(実施例5)
(薬効成分A):ジヒドロコデインリン酸塩6.0g、及びリボフラビン3.0g。
(薬効成分B):クレマスチンフマル酸塩0.67g、ジヒドロコデインリン酸塩6.0g、dl−メチルエフェドリン塩酸塩30.0g、及びリボフラビン3.0g。
【0038】
(実施例6)
(薬効成分A):ジヒドロコデインリン酸塩6.0g、ベラドンナ総アルカロイド0.15g、及びリボフラビン3.0g。
(薬効成分B):クレマスチンフマル酸塩0.67g、ノスカピン24.0g、及びリボフラビン3.0g。
【0039】
(実施例7)
(薬効成分A):追加なし。
(薬効成分B):ブロムヘキシン塩酸塩6.0g、クレマスチンフマル酸塩0.67g、ジヒドロコデインリン酸塩12.0g、dl−メチルエフェドリン塩酸塩30.0g、及びリボフラビン6.0g。
【0040】
(実施例8)
(薬効成分A):上記(A)工程において、無水カフェイン37.5gは添加せず、その他の追加成分として、ジヒドロコデインリン酸塩6.0g、ベラドンナ総アルカロイド0.15g、及びリボフラビン3.0g。
(薬効成分B):アンブロキソール塩酸塩10.0g、クロルフェニラミンマレイン酸塩7.5g、ノスカピン24.0g、無水カフェイン37.5g、及びリボフラビン3.0g。
【0041】
(実施例9)
(薬効成分A):上記(A)工程において、無水カフェイン37.5gは添加せず、その他の追加成分として、ジヒドロコデインリン酸塩6.0g、及びリボフラビン3.0g。
(薬効成分B):アンブロキソール塩酸塩10.0g、ジヒドロコデインリン酸塩6.0g、dl−メチルエフェドリン塩酸塩30.0g、無水カフェイン37.5g、及びリボフラビン3.0g。
【0042】
(実施例10)
(薬効成分A):上記(A)工程において、無水カフェイン37.5gは添加せず、その他の追加成分として、ジヒドロコデインリン酸塩6.0g、ベラドンナ総アルカロイド0.15g、及びリボフラビン3.0g。
(薬効成分B):アンブロキソール塩酸塩10.0g、ジヒドロコデインリン酸塩6.0g、ノスカピン24.0g、dl−メチルエフェドリン塩酸塩30.0g、無水カフェイン37.5g、及びリボフラビン3.0g。
【0043】
(比較例の錠剤の製造)
(A´)顆粒aの製造:流動層造粒機にロキソプロフェンナトリウム2水和物102.9g、ベンフォチアミン12.5g、無水カフェイン37.5(白鳥製薬株式会社製)、製剤添加剤としての結晶セルロース適量及びD−マンニトール適量を投入・混合し、ヒドロキシプロピルセルロース水溶液を噴霧し顆粒aを得た。
(B´)顆粒bの製造:流動層造粒機に、下記の実施例に記載された(薬効成分B´)、及び製剤添加剤としての結晶セルロース適量を投入・混合し、ヒドロキシプロピルセルロース水溶液を噴霧し顆粒bを得た。
(C´)錠剤の製造:該顆粒a、bとクロスカルメロースナトリウム(旭化成ケミカルズ株式会社製)、及びステアリン酸マグネシウム(メルクジャパン株式会社製)を混合後、打錠して錠剤を得た。
【0044】
上記の(比較例の錠剤の製造)に記載した(A´)〜(C´)の工程により、下記比較例1〜11の錠剤を製造した。
【0045】
(比較例1)
(薬効成分B´):追加なし。
【0046】
(比較例2)
(薬効成分B´):上記の(B´)工程のベンフォチアミン12.5gの代わりにチアミン硝化物12.5g。
【0047】
(比較例3)
(薬効成分B´):トラネキサム酸375.0g、クレマスチンフマル酸塩0.67g、及びリボフラビン6.0g。
【0048】
(比較例4)
(薬効成分B´):アンブロキソール塩酸塩10.0g、クロルフェニラミンマレイン酸塩7.5g、ノスカピン24.0g、及びリボフラビン3.0g。
【0049】
(比較例5)
(薬効成分B´):ブロムヘキシン塩酸塩6.0g、クレマスチンフマル酸塩0.67g、dl−メチルエフェドリン塩酸塩30.0g、及び上記の(B´)工程のベンフォチアミン12.5gの代わりにチアミン硝化物12.5g。
【0050】
(比較例6)
(薬効成分B´):クレマスチンフマル酸塩0.67g、ジヒドロコデインリン酸塩6.0g、dl−メチルエフェドリン塩酸塩30.0g、及びリボフラビン3.0g。
【0051】
(比較例7)
(薬効成分B´):クレマスチンフマル酸塩0.67g、ノスカピン24.0g、及びリボフラビン3.0g。
【0052】
(比較例8)
(薬効成分B´):ブロムヘキシン塩酸塩6.0g、クレマスチンフマル酸塩0.67g、ジヒドロコデインリン酸塩12.0g、dl−メチルエフェドリン塩酸塩30.0g、及びリボフラビン6.0g。
【0053】
(比較例9)
上記(A´)工程において、無水カフェイン37.5gは添加せず、その他の追加成分として、ジヒドロコデインリン酸塩6.0g、ベラドンナ総アルカロイド0.15g、及びリボフラビン3.0gを添加した。
(薬効成分B´):アンブロキソール塩酸塩10.0g、クロルフェニラミンマレイン酸塩7.5g、ノスカピン24.0g、無水カフェイン37.5g、及びリボフラビン3.0g。
【0054】
(比較例10)
上記(A´)工程において、無水カフェイン37.5gは添加せず、その他の追加成分として、ジヒドロコデインリン酸塩6.0g、及びリボフラビン3.0gを添加した。
(薬効成分B´):アンブロキソール塩酸塩10.0g、ジヒドロコデインリン酸塩6.0g、dl−メチルエフェドリン塩酸塩30.0g、無水カフェイン37.5g、及びリボフラビン3.0gを添加した。
【0055】
(比較例11)
上記(A´)工程において、無水カフェイン37.5gは添加せず、その他の追加成分として、ジヒドロコデインリン酸塩6.0g、ベラドンナ総アルカロイド0.15g、及びリボフラビン3.0gを添加した。
(薬効成分B´):アンブロキソール塩酸塩10.0g、ジヒドロコデインリン酸塩6.0g、ノスカピン24.0g、dl−メチルエフェドリン塩酸塩30.0g、無水カフェイン37.5g、及びリボフラビン3.0gを添加した。
【0056】
2.試験方法
実施例及び比較例の錠剤を各々ガラス瓶(6k規格瓶)に充填し、60℃密栓、及び50℃密栓の条件で2週間放置した。保管後に冷蔵庫保存品を対照としてロキソプロフェンナトリウム2水和物及びベンフォチアミンの含量、錠剤外観の色調変化、及び性状変化を確認した。
【0057】
色調変化は;A:変色なし、B:わずかな変色、C:変色あり、D:著しい変色、の4段階で評価した。
【0058】
性状変化は;A:変化し、B:わずかな変化、C:変化あり、D:著しい変化、の4段階で評価した。
【0059】
3.試験結果
実施例の錠剤は、50℃密栓及び60℃密栓という苛酷条件下で2週間保存しても、色調や性状にほぼ変化は認められなかった。また、ロキソプロフェンナトリウム2水和物及びベンフォチアミンの含量低下も認められなかった。一方、ロキソプロフェンナトリウム2水和物とベンフォチアミンを同一の顆粒に配合した比較例1の錠剤は、50℃密栓及び60℃密栓のいずれの条件下においても、ベンフォチアミンの含量低下が認められた。この結果より、ロキソプロフェンナトリウム2水和物とベンフォチアミンを各々別の顆粒に分けて製造した錠剤は、保存安定性に優れていることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明により、ロキソプロフェンナトリウム2水和物、ならびにビタミンB1又はその誘導体を含有し、保存安定性に優れた固形製剤を提供することができる。本発明の固形製剤は、総合感冒薬、かぜ薬や解熱鎮痛剤として有用である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロキソプロフェンナトリウム又はその水和物、及びビタミンB1又はその誘導体を含有する固形製剤において、
ロキソプロフェンナトリウム又はその水和物、及びビタミンB1又はその誘導体が、製剤中で実質的に接触することなく存在することを特徴とする固形製剤。
【請求項2】
ロキソプロフェンナトリウム又はその水和物を含む顆粒a、及びビタミンB1又はその誘導体を含む顆粒bを含有することにより、ロキソプロフェンナトリウム又はその水和物、及びビタミンB1又はその誘導体が、製剤中で実質的に接触することなく存在する請求項1に記載の固形製剤。
【請求項3】
顆粒a及び顆粒bが、セルロース誘導体を含むものである請求項2に記載の固形製剤。
【請求項4】
ロキソプロフェンナトリウム又はその水和物が、ロキソプロフェンナトリウム2水和物である請求項1〜4のいずれか1項に記載の固形製剤。
【請求項5】
固形製剤が、顆粒剤、散剤、カプセル剤、丸剤又は錠剤である請求項1〜4のいずれか1項に記載の固形製剤。
【請求項6】
固形製剤が錠剤である請求項1〜4のいずれか1項に記載の固形製剤。
【請求項7】
少なくとも、ロキソプロフェンナトリウム又はその水和物を含む層aと、ビタミンB1又はその誘導体を含む層bの2層以上からなる多層錠であり、ロキソプロフェンナトリウム又はその水和物、及びビタミンB1又はその誘導体が、製剤中で実質的に接触することなく存在することを特徴とする請求項6に記載の固形製剤。
【請求項8】
ロキソプロフェンナトリウム又はその水和物と、ビタミンB1又はその誘導体を含有する固形製剤の製造方法において、
ロキソプロフェンナトリウム又はその水和物と、ビタミンB1又はその誘導体が、製剤中で実質的に接触することなく存在することを特徴とするとする固形製剤の製造方法。

【公開番号】特開2012−140413(P2012−140413A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−271601(P2011−271601)
【出願日】平成23年12月12日(2011.12.12)
【出願人】(306014736)第一三共ヘルスケア株式会社 (176)
【Fターム(参考)】