説明

ロキソプロフェン含有医薬組成物

【課題】長期間保存しても安定なロキソプロフェン又はその塩及びカフェイン類を含有する医薬組成物、特に液状医薬組成物、並びに該液状医薬組成物が充填されたカプセル剤の提供。
【解決手段】ロキソプロフェン又はその塩、カフェイン類及びフェノール誘導体又はその塩を含有する液状医薬組成物は、液中に結晶が析出するという安定性の問題があり、ロキソプロフェン又はその塩とカフェイン類とを含有する医薬組成物に誘導体又はその塩を共存させることにより、冷所等の低温条件下における保存安定性が向上した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロキソプロフェン又はその塩を含有する医薬組成物に関する。特に、ロキソプロフェン又はその塩を含有する液状医薬組成物、及び該組成物がカプセルに充填されたカプセル剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ロキソプロフェンは、非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs)の一種であり、関節リウマチ、変形性関節症、腰痛症、肩関節周囲炎、頸肩腕症候群、歯痛、急性上気道炎、手術後・外傷後・抜歯後等の消炎・鎮痛・解熱に有効なものとして知られている(非特許文献1)。
【0003】
NSAIDsの一種ということもあり、ロキソプロフェンは、OTC医薬品の解熱鎮痛剤や総合感冒薬への適用を意図して、様々な薬物との併用が検討されている。
例えば、中枢興奮作用、強心・利尿作用、胃酸分泌亢進作用等を示し、解熱鎮痛成分とともに解熱鎮痛剤や総合感冒薬等に配合される成分であるカフェイン類(非特許文献2)は、ロキソプロフェンと組み合せることにより消炎・鎮痛効果の増強作用を示すことが知られている(特許文献1)。
【0004】
また、カフェイン類とロキソプロフェンとを含有する液状医薬組成物として、例えば、シロップ剤(特許文献2及び3)や液剤(特許文献4及び5)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−139971号公報
【特許文献2】特開2006−52210号公報
【特許文献3】特開2007−314517号公報
【特許文献4】特開2001−172175号公報
【特許文献5】特開2001−199882号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】第15改正日本薬局方解説書 株式会社廣川書店 第C−4790−4795頁
【非特許文献2】OTCハンドブック 2008−09 株式会社学術情報流通センター 第198−199頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、ロキソプロフェン又はその塩とカフェイン類とを含有する医薬組成物、特にカプセル充填用として好ましい液状医薬組成物の開発を進めたところ、当該液状医薬組成物を冷所で一定期間以上保存すると、液が凍結したり、液中に結晶が析出するという、製造直後では確認できない安定性の問題が生じることを見出した。医薬品は、流通過程や貯蔵・保管過程において、低温条件にさらされるおそれがあるので、冷所等の低温条件下における保存安定性は、医薬品の品質保持上、問題となり得る。
従って、本発明は、長期間保存しても安定なロキソプロフェン又はその塩及びカフェイン類を含有する医薬組成物、特に液状医薬組成物、並びに該液状医薬組成物が充填されたカプセル剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、ロキソプロフェン又はその塩とカフェイン類とを含有する医薬組成物の保存安定性について鋭意検討したところ、全く意外にも、これら化合物にフェノール誘導体又はその塩を共存させることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
1)すなわち、本発明は、ロキソプロフェン又はその塩、カフェイン類及びフェノール誘導体又はその塩を含有する医薬組成物を提供するものである。
2)また、本発明は、ロキソプロフェン又はその塩、カフェイン類及びフェノール誘導体又はその塩を含有する液状医薬組成物を提供するものである。
3)また、本発明は、上述の2)の液状医薬組成物がカプセルに充填されたカプセル剤を提供するものである。
4)また、本発明は、フェノール誘導体又はその塩を含有するロキソプロフェン又はその塩及びカフェイン類を含有する液の安定化剤を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
フェノール誘導体又はその塩は、ロキソプロフェン又はその塩とカフェイン類を含有する医薬組成物を冷所(1〜15℃)又はこれ以下の温度(例えば、−5℃)で保存した場合の、凍結や結晶析出の抑制作用を有する。
特に、本発明の医薬組成物が液状医薬組成物(以下、本発明の液ともいう)である場合、低温においても液状態で存在するため、寒冷地等で服用したとしても、ロキソプロフェン又はその塩やカフェイン類、さらには去痰作用を有するフェノール誘導体又はその塩の有する薬効の速やかな発現が期待できる。また本発明の液状医薬組成物は、本発明に係る各成分の1回服用量としての常用量を適当な大きさ(例えば、0号〜2号カプセル)のカプセルに適当な個数(1〜3つ程度)で充填することができるので、カプセルへの充填に適しており、液状医薬組成物を充填したカプセル剤は、コンプライアンスが良好である。
【0011】
さらに、本発明において、液状医薬組成物は透明・澄明なものにすることができ、カプセルとして透明又は半透明なものを用いた場合、カプセルに充填した液を目視できることから、商品価値の高いロキソプロフェン又はその塩、及びカフェイン類を含有するカプセル剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明で用いられるロキソプロフェン又はその塩には、ロキソプロフェンのみならず、ロキソプロフェンの薬学上許容される塩、さらには水やアルコール等との溶媒和物が含まれる。これらは公知の化合物であり、公知の方法により製造できるほか、市販のものを用いることができる。本発明において、ロキソプロフェン又はその塩としては、ロキソプロフェンナトリウム水和物(化学名:Monosodium 2-[4-[(2-oxocyclopentyl)methyl]phenyl]propanoate dihydrate)が好ましい。
【0013】
本発明に係る医薬組成物中のロキソプロフェン又はその塩の含有量は、服用者の性別、年齢、症状等に応じて、1日あたりの服用量を適宜検討して決定すればよいが、1日あたり、ロキソプロフェンナトリウム無水物換算で10〜300mg服用できる量が好ましく、30〜240mg服用できる量がより好ましく、60〜180mg服用できる量がさらに好ましい。1日あたりの服用量は、1〜3回に分けて服用すればよく、1回あたりの服用量としては、60mgが特に好ましい。
【0014】
本発明の液中又はカプセル剤中におけるロキソプロフェン又はその塩の濃度は、上述のような服用量となるように、充填するカプセルの容量やカプセルの服用個数等に応じて適宜設定すればよい。1回あたりの服用量が60mgの場合、例えば、1カプセルあたり、20mg、30mg又は60mgとなるように、設定すればよい。この場合、カプセルに充填する液におけるロキソプロフェン又はその塩の含有量は、溶解性、安定性等の観点から、ロキソプロフェンナトリウム無水物換算で、液中0.3〜12.5質量%が好ましく、1〜10質量%がより好ましく、2〜8質量%がさらに好ましい。
【0015】
本発明で用いられるカフェイン類としては、カフェイン水和物、無水カフェイン、安息香酸ナトリウムカフェイン、クエン酸カフェイン等が挙げられる。これらは公知の化合物であり、公知の方法により製造できるほか、市販のものを用いることができる。本発明に係る医薬組成物が解熱鎮痛剤や総合感冒薬等として用いられ得る観点から、カフェイン類としては、カフェイン水和物、無水カフェイン、安息香酸ナトリウムカフェインが好ましい。
【0016】
本発明において、本発明に係る医薬組成物中のカフェイン類の含有量は、服用者の性別、年齢、症状等に応じて、1日あたりの服用量を適宜検討して決定すればよいが、1日あたり、10〜1000mg服用できる量が好ましく、20〜800mg服用できる量がより好ましく、30〜600mg服用できる量がさらに好ましい。また、例えば、カフェイン類として、カフェイン水和物又は無水カフェインを用いる場合、1日あたり、30〜150mg服用できる量がより好ましく、安息香酸ナトリウムカフェインを用いる場合、1日あたり、60〜300mg服用できる量がより好ましい。
【0017】
また、本発明の医薬組成物に含まれるロキソプロフェン又はその塩とカフェイン類との配合比は、上述した各成分の1日あたりの服用量に応じて、適宜検討して決定すればよいが、ロキソプロフェン又はその塩を、ロキソプロフェンナトリウム無水物換算で1質量部に対し、カフェイン類を、0.03〜100質量部含有するものが好ましく、0.08〜27質量部含有するものがより好ましく、0.1〜10質量部含有するものがさらに好ましい。
本発明において、カフェイン類の液中又はカプセル剤中の濃度は、上述のような服用量やロキソプロフェン又はその塩との配合比となるように、充填するカプセルの容量やカプセルの服用個数等に応じて適宜設定すればよい。
【0018】
本発明で用いられるフェノール誘導体又はその塩としては、下記一般式(1)で表される化合物又はその塩が好ましい。
【0019】
【化1】

【0020】
[式中、R1はアルキル基又は置換基を有していてもよいアルコキシ基を示し、R2は水素原子又はスルホ基を示す。なお、式中のフェノール性水酸基はエーテル化されてもよい。]
【0021】
上記R1において、アルキル基としては、直鎖状又は分枝状の炭素数1〜6のアルキル
基が好ましく、具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。本発明においては、メチル基が好ましい。
また、アルコキシ基としては、直鎖状又は分枝状の炭素数1〜6のアルコキシ基が好ましく、具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基等が挙げられる。本発明においては、メトキシ基が好ましい。
当該アルコキシ基に置換し得る基としては、水酸基;臭素原子、塩素原子、フッ素原子等のハロゲン原子が挙げられ、これらを1個又は複数個有していてもよい。
【0022】
上記一般式(1)において、フェノール性水酸基がエーテル化された場合としては、例えば、直鎖状又は分枝状の炭素数1〜3の1価アルコールでフェノール性水酸基がエーテル化されたもの、多価アルコールでフェノール性水酸基がエーテル化されたもの等が挙げられる。1価アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール等が挙げられる。また、多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等が挙げられる。本発明においては、エーテル化するに際し、多価アルコールが好ましく、中でもグリセリンがより好ましい。なお、フェノール性水酸基がエーテル化された場合において、エーテル化反応は特に限定されるものではない。
【0023】
本発明で用いられるフェノール誘導体又はその塩としては、2−メトキシフェノール誘導体(グアヤコール誘導体)又はその塩、2−メチルフェノール誘導体(クレゾール誘導体)又はその塩が好適な具体例として挙げられる。
当該2−メトキシフェノール誘導体又はその塩としては、グアイフェネシン(グアヤコールグリセリンエーテル;(2RS)−3−(2−メトキシフェノキシ)プロパン−1,2−ジオール);グアヤコールスルホン酸、グアヤコールスルホン酸カリウム等のグアヤコールスルホン酸又はその塩が好ましい。
また、クレゾール誘導体又はその塩としては、クレゾールスルホン酸(2−メチルフェノールスルホン酸)、クレゾールスルホン酸カリウム等のクレゾールスルホン酸又はその塩が好ましい。これらは公知の化合物であり、公知の方法により製造できるほか、市販のものを用いることができる。上記フェノール誘導体又はその塩のうち、総合感冒薬等として利用される観点から、去痰作用を有するものが好ましく、グアヤコール誘導体又はその塩がより好ましく、グアイフェネシン、グアヤコールスルホン酸カリウムがさらに好ましく、グアイフェネシンが特に好ましい。
【0024】
本発明に係る医薬組成物中のフェノール誘導体又はその塩の含有量は、本発明に係る医薬組成物の保存安定性向上(凍結や結晶析出抑制)の観点、さらにはフェノール誘導体又はその塩の有する去痰作用等に基づき、服用者の性別、年齢、症状等に応じて、1日あたりの服用量を適宜検討して決定すればよいが、1日あたり、5〜600mg服用できる量が好ましく、10〜450mg服用できる量がより好ましく、25〜300mg服用できる量がさらに好ましい。
【0025】
なお、フェノール誘導体又はその塩として、グアヤコール誘導体又はその塩を用いる場合、1日あたり、10〜600mg服用できる量が好ましく、20〜450mg服用できる量がより好ましく、30〜300mg服用できる量がさらに好ましい。また、フェノール誘導体又はその塩として、クレゾール誘導体又はその塩を用いる場合、1日あたり、5〜550mg服用できる量が好ましく、10〜400mg服用できる量がより好ましく、25〜270mg服用できる量がさらに好ましい。特に、グアヤコール誘導体又はその塩として、グアイフェネシン又はグアヤコールスルホン酸カリウムを用いる場合、1日あたり、125〜250mg服用できる量が好ましい。
【0026】
また、本発明の医薬組成物に含まれるロキソプロフェン又はその塩とフェノール誘導体又はその塩との配合比は、上述した各成分の1日あたりの服用量に応じて、適宜検討して決定すればよいが、保存安定性向上の観点及びフェノール誘導体又はその塩の有する去痰作用等の観点等から、ロキソプロフェン又はその塩を、ロキソプロフェンナトリウム無水物換算で1質量部に対し、フェノール誘導体又はその塩を、0.015〜60質量部含有するものが好ましく、0.04〜15質量部含有するものがより好ましく、0.13〜5質量部含有するものがさらに好ましい。
【0027】
本発明に係る医薬組成物を、液状組成物、特にカプセル充填用の液状医薬組成物とする場合、液体をカプセルに充填等する際に用いられる通常の溶媒を用いればよい。ここで、本発明の液状医薬組成物は透明又は澄明な液体であり、さらに着色していてもよいが、配合成分が肉眼観察において均一に溶解している状態である組成物をいう。
当該溶媒としては、本発明に係る成分を溶解するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、(1)水、(2)水と混和しない又は水に溶解しない揮発性若しくは非揮発性の液体(植物油、脂肪族及び芳香族炭化水素、塩素化炭化水素、エーテル類、エステル類、高級アルコール類等)、(3)水と混和する非揮発性の液体、(4)その他(マクロゴール、グリセリン、プロピレングリコール等の多価アルコール;ソルビトール等の糖アルコール等)が挙げられる。このうち1種だけ用いても、複数の混合物を用いてもよい。中でも、カプセルに充填可能なものが好ましい。本発明においては、本発明に係る成分、特にカフェイン類の溶解性向上及びカプセル皮膜の軟化抑制の点で、水や多価アルコール、または水と多価アルコールとの混液が好ましい。
【0028】
上記多価アルコールとしては、特に限定されるものではなく、例えば、マクロゴール、プロピレングリコール、グリセリン等が挙げられ、マクロゴール、グリセリンがより好ましく、マクロゴールがさらに好ましい。
【0029】
マクロゴールの平均分子量は、特に限定されるものではないが、100〜800が好ましく、150〜700がより好ましく、190〜630がさらに好ましい。このうち、マクロゴール200、マクロゴール300、マクロゴール400、マクロゴール600が好ましく、マクロゴール400が特に好ましい。なお、マクロゴールは各種平均分子量のマクロゴールを複数の混合物として用いてもよい。
【0030】
本発明の液中に多価アルコールを含有する場合、液における多価アルコールの含有量は、液全量に対して、10〜90質量%が好ましく、15〜85質量%がより好ましく、20〜80質量%がさらに好ましく、50〜80質量%が特に好ましい。
【0031】
本発明の液には、さらにpH調節剤、色素、界面活性剤、粘稠(化)剤等の添加物を本発明の効果を損なわない範囲内で含有させてもよい。
【0032】
pH調節剤は、液中のロキソプロフェン又はその塩の安定性を考慮すると、酸性〜中性領域、好ましくは酸性領域に調整することが可能なpH調節剤が好ましい。pH調節剤としては、例えば、アジピン酸、アスコルビン酸、安息香酸、エリソルビン酸、塩酸、クエン酸、グルタミン酸、コハク酸、酢酸、酒石酸、乳酸、フマル酸、マレイン酸、リンゴ酸等の酸が挙げられる。
【0033】
また、色素としては、例えば、食用赤色2号、食用赤色3号、食用赤色40号、食用赤色102号、食用赤色106号、食用黄色4号、食用黄色5号、食用青色1号、食用青色2号、カラメル等が挙げられる。
【0034】
界面活性剤としては、例えば、モノヘキサン酸グリセリン、モノオクタン酸グリセリン、モノデカン酸グリセリン、モノラウリン酸グリセリン、ジオクタン酸グリセリン、ジデカン酸グリセリン、デカン酸オクタン酸グリセリン、モノミリスチン酸グリセリン、モノステアリン酸グリセリン、モノオレイン酸グリセリン等のグリセリン脂肪酸エステル;モノラウリン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン等のソルビタン脂肪酸エステル;ラウロマクロゴール等のポリオキシエチレンアルキルエーテル;ステアリン酸ポリオキシル40、ステアリン酸ポリオキシル45、ステアリン酸ポリオキシル55等のポリオキシエチレン脂肪酸エステル;、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート61、ポリソルベート65、ポリソルベート80、ポリソルベート81、ポリソルベート85等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等の非イオン性界面活性剤が挙げられる。
【0035】
粘稠(化)剤としては、例えば、アルギン酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、カルメロースナトリウム、キサンタンガム、グリセリン、ソルビトール、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、メチルセルロース、ポビドン、マクロゴール4000、マクロゴール6000等が挙げられ、このうち、ヒプロメロース、メチルセルロース、ポビドンが好ましい。
【0036】
本発明の医薬組成物は、ロキソプロフェン又はその塩、カフェイン類及びフェノール誘導体又はその塩を含有する液として、カプセルに充填することができ、液体充填カプセル剤とすることができる。
また、本発明の医薬組成物には、ロキソプロフェン又はその塩、カフェイン類、及びフェノール誘導体又はその塩以外の薬物、例えば、解熱鎮痛剤、抗ヒスタミン剤、鎮咳剤、ノスカピン類、気管支拡張剤、去痰剤、催眠鎮静剤、ビタミン類、抗炎症剤、胃粘膜保護剤、抗コリン剤、生薬類、漢方処方、キサンチン類等からなる群より選ばれる1種又は2種以上を含んでいてもよい。
【0037】
解熱鎮痛剤としては、例えば、アスピリン、アスピリンアルミニウム、アセトアミノフェン、イソプロピルアンチピリン、イブプロフェン、エテンザミド、サザピリン、サリチルアミド、サリチル酸ナトリウム、チアラミド塩酸塩、ラクチルフェネチジン等が挙げられる。
【0038】
抗ヒスタミン剤としては、例えば、アゼラスチン塩酸塩、アリメマジン酒石酸塩、イソチペンジル塩酸塩、イプロヘプチン塩酸塩、エピナスチン塩酸塩、エメダスチンフマル酸塩、カルビノキサミンジフェニルジスルホン酸塩、カルビノキサミンマレイン酸塩、クレマスチンフマル酸塩、dl−クロルフェニラミンマレイン酸塩、d−クロルフェニラミンマレイン酸塩、ケトチフェンフマル酸塩、ジフェテロール塩酸塩、ジフェテロールリン酸塩、ジフェニルピラリン塩酸塩、ジフェニルピラリンテオクル酸塩、ジフェンヒドラミン塩酸塩、ジフェンヒドラミンサリチル酸塩、ジフェンヒドラミンタンニン酸塩、トリプロリジン塩酸塩、トリペレナミン塩酸塩、トンジルアミン塩酸塩、フェネタジン塩酸塩、プロメタジン塩酸塩、プロメタジンメチレン二サリチル酸塩、メキタジン、メトジラジン塩酸塩、メブヒドロリンナパジシル酸塩、エメダスチンフマル酸塩等が挙げられる。
【0039】
鎮咳剤としては、例えば、アロクラミド塩酸塩、エプラジノン塩酸塩、カルベタペンタンクエン酸塩、クロペラスチン塩酸塩、クロペラスチンフェンジゾ酸塩、コデインリン酸塩、ジヒドロコデインリン酸塩、ジブナートナトリウム、ジメモルファンリン酸塩、デキストロメトルファン臭化水素酸塩、デキストロメトルファン・フェノールフタリン塩、チペピジンクエン酸塩、チペピジンヒベンズ酸塩等が挙げられる。
【0040】
ノスカピン類としては、例えば、ノスカピン塩酸塩、ノスカピン等が挙げられる。
【0041】
気管支拡張剤としては、例えば、トリメトキノール塩酸塩、フェニルプロパノールアミン塩酸塩、フェニレフリン塩酸塩、プソイドエフェドリン塩酸塩、プソイドエフェドリン硫酸塩、メチルエフェドリン、dl−メチルエフェドリン塩酸塩、l−メチルエフェドリン塩酸塩、dl−メチルエフェドリンサッカリン塩、メトキシフェナミン塩酸塩等が挙げられる。
【0042】
去痰剤としては、例えば、アンブロキソール塩酸塩、アンモニア・ウイキョウ精、エチルシステイン塩酸塩、塩化アンモニウム、カルボシステイン、ブロムヘキシン塩酸塩、メチルシステイン塩酸塩、l−メントール、リゾチーム塩酸塩等が挙げられる。
【0043】
催眠鎮静剤としては、例えば、アリルイソプロピルアセチル尿素やブロムワレリル尿素等が挙げられる。
【0044】
ビタミン類としては、例えば、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB5、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンC、ヘスペリジン及びその誘導体並びにそれらの塩類等(例えば、チアミン、チアミン塩化物塩酸塩、チアミン硝化物、ジセチアミン塩酸塩、セトチアミン塩酸塩、フルスルチアミン、フルスルチアミン塩酸塩、オクトチアミン、シコチアミン、チアミンジスルフィド、ビスイブチアミン、ビスベンチアミン、プロスルチアミン、ベンフォチアミン、リボフラビン、リボフラビンリン酸エステル、リボフラビン酪酸エステル、リン酸リボフラビンナトリウム、パンテノール、パンテチン、パントテン酸カルシウム、パントテン酸ナトリウム、ピリドキシン塩酸塩、ピリドキサールリン酸エステル、シアノコバラミン、メコバラミン、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸カルシウム、ヘスペリジン等)が挙げられる。
【0045】
抗炎症剤としては、例えば、グリチルリチン酸及びその誘導体並びにそれらの塩類(例えば、グリチルリチン酸二カリウム、グリチルリチン酸モノアンモニウム等)、セアプローゼ、セミアルカリプロティナーゼ、セラペプターゼ、トラネキサム酸、プロクターゼ、プロナーゼ、ブロメライン等が挙げられる。
【0046】
胃粘膜保護剤としては、例えば、アミノ酢酸、アルジオキサ、ケイ酸マグネシウム、ゲファルナート、合成ケイ酸アルミニウム、合成ヒドロタルサイト、酸化マグネシウム、ジヒドロキシアルミニウム・アミノ酢酸塩(アルミニウムグリシネート)、水酸化アルミニウムゲル、水酸化アルミニウム・炭酸マグネシウム混合乾燥ゲル、水酸化アルミニウム・炭酸水素ナトリウムの共沈生成物、水酸化アルミニウム・炭酸カルシウム・炭酸マグネシウムの共沈生成物、水酸化マグネシウム・硫酸アルミニウムカリウムの共沈生成物、スクラルファート、セトラキサート塩酸塩、ソファルコン、炭酸マグネシウム、テプレノン、銅クロロフィリンカリウム、銅クロロフィリンナトリウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、メチルメチオニンスルホニウムクロリド等が挙げられる。
【0047】
抗コリン薬としては、例えば、オキシフェンサイクリミン塩酸塩、ジサイクロミン塩酸塩、メチキセン塩酸塩、スコポラミン臭化水素酸塩、ダツラエキス、チペピジウム臭化物、メチルアトロピン臭化物、メチルアニソトロピン臭化物、メチルスコポラミン臭化物、メチル−l−ヒヨスチアミン臭化物、メチルベナクチジウム臭化物、ピレンゼピン塩酸塩、ブチルスコポラミン臭化物、ベラドンナアルカロイド、ベラドンナエキス、ベラドンナ総アルカロイド、ヨウ化イソプロパミド、ヨウ化ジフェニルピペリジノメチルジオキソラン、ロートエキス、ロート根、ロート根総アルカロイドクエン酸塩等が挙げられる。
【0048】
生薬類としては、例えば、アカメガシワ(赤芽柏)、アセンヤク(阿仙薬)、インヨウカク(淫羊霍)、ウイキョウ(茴香)、ウコン(鬱金)、エンゴサク(延胡索)、エンメイソウ(延命草)、オウゴン(黄岑)、オウセイ(黄精)、オウバク(黄柏)、オウヒ(桜皮)、オウレン(黄連)、オンジ(遠志)、ガジュツ(我朮)、カノコソウ(鹿子草)、カミツレ、カロニン(か楼仁)、カンゾウ(甘草)、キキョウ(桔梗)、キョウニン(杏仁)、クコシ(枸杞子)、クコヨウ(枸杞葉)、ケイガイ(荊芥)、ケイヒ(桂皮)、ケツメイシ(決明子)、ゲンチアナ、ゲンノショウコ(現証拠)、コウブシ(香附子)、ゴオウ(牛黄)、ゴミシ(五味子)、サイシン(細辛)、サンショウ(山椒)、シオン(紫苑)、ジコッピ(地骨皮)、シャクヤク(芍薬)、ジャコウ(麝香)、シャジン(沙参)、シャゼンシ(車前子)、シャゼンソウ(車前草)、獣胆(ユウタン(熊胆)を含む)、ショウキョウ(生姜)、ジリュウ(地竜)、シンイ(辛夷)、セキサン(石蒜)、セネガ、センキュウ(川きゅう)、ゼンコ(前胡)、センブリ(千振)、ソウジュツ(蒼朮)、ソウハクヒ(桑白皮)、ソヨウ(蘇葉)、タイサン(大蒜)、チクセツニンジン(竹節人参)、チョウジ(丁子)、チンピ(陳皮)、トウキ(当帰)、トコン(吐根)、ナンテンジツ(南天実)、ニンジン(人参)、バイモ(貝母)、バクモンドウ(麦門冬)、ハッカ(薄荷)、ハンゲ(半夏)、バンコウカ(番紅花)、ハンピ(反鼻)、ビャクシ(白し)、ビャクジュツ(白朮)、ブクリョウ(茯苓)、ボタンピ(牡丹皮)、ボレイ(牡蠣)、マオウ(麻黄)、ロクジョウ(鹿茸)等の生薬及びこれらの抽出物(エキス、チンキ、乾燥エキス等)等が挙げられる。
【0049】
漢方処方としては、例えば、葛根湯、桂枝湯、香蘇散、柴胡桂枝湯、小柴胡湯、小青竜湯、麦門冬湯、半夏厚朴湯、麻黄湯等が挙げられる。
【0050】
キサンチン類としては、例えば、アミノフィリン、ジプロフィリン、テオフィリン、プロキシフィリン等が挙げられる。
【0051】
本発明においては、本発明の医薬組成物が、解熱鎮痛剤や総合感冒薬等として用いられる観点から、抗ヒスタミン剤、鎮咳剤、ノスカピン類、気管支拡張剤、去痰剤、催眠鎮静剤、抗コリン剤等からなる群より選ばれる1種又は2種以上を含んでいるものが好ましい。
【0052】
本発明の液状組成物を充填するに際して用いられるカプセルのカプセル皮膜の基剤としては、例えば、ゼラチン、ヒプロメロース(HPMCと略される)、プルラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール共重合体(好ましくは、ポリビニルアルコールとメチルメタクリレートとアクリル酸又はその塩の共重合体)等が挙げられる。これらは1種だけでも、複数の混合物としてもよい。本発明においては、ゼラチンカプセル、マクロゴールを配合したゼラチンカプセル、ポリビニルアルコール共重合体を基剤とするカプセルが好ましい。
【0053】
カプセル皮膜には、基剤の他に、グリセリン、マンニトール、ソルビトール、ショ糖、果糖、プロピレングリコール、マクロゴール等の可塑剤や、アラビアガム、アルギン酸、カラギーナン、寒天、キサンタンガム、グァーガム、グルコマンナン、ジェランガム、タマリンドガム、ファーセレラン、ペクチン、ローカストビーンガム等のゲル化剤を含有させてもよく、また必要に応じて、塩化アンモニウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、クエン酸カリウム、クエン酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、リン酸カリウム等のゲル化助剤を含有させることができる。
【0054】
また、カプセル皮膜には、例えば、食用赤色2号、食用赤色3号、食用赤色40号、食用赤色102号、食用赤色106号、食用黄色4号、食用黄色5号、食用青色1号、食用青色2号、カラメル等の色素、酸化チタン等の顔料、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、防腐剤、芳香剤、崩壊剤、界面活性剤等を、本発明の効果を損なわない範囲内で含有させてもよい。
【0055】
本発明において、カプセル皮膜としては、ゼラチンを基剤とする皮膜;可塑剤を含有するゼラチンを基剤とする皮膜;ゲル化剤及び/又はゲル化助剤を含有するポリビニルアルコール共重合体を基剤とする皮膜がより好ましい。ゼラチンを基剤とする皮膜としては、可塑剤を含有する皮膜が好ましい。また、ポリビニルアルコール共重合体を含有する皮膜としては、ゲル化剤としてカラギーナン、ゲル化助剤として塩化カリウムを含有する皮膜が好ましい。
本発明において、カプセル皮膜としてゼラチンを基剤とする皮膜を用いる場合、可塑剤としてグリセリン、ソルビトール、ショ糖、プロピレングリコール、マクロゴール等を含有するものが好ましい。この場合、可塑剤の含有量は、カプセルの機械的強度、成形時の皮膜の均一性や皮膜への弾力性付与等を考慮して、適宜検討すればよいが、カプセル皮膜中のゼラチンに対して、1〜50質量%、好ましくは10〜40質量%添加すればよい。
【0056】
本発明において、硬カプセル剤のカプセル皮膜としてマクロゴール及びゼラチンを含有する皮膜を用いる場合、マクロゴールの含有量は、カプセルの機械的強度、成形時の皮膜の均一性や皮膜への弾力性付与等考慮して適宜検討すればよいが、カプセル皮膜全量に対して、0.5〜15質量%が好ましく、1〜10質量%がより好ましい。
【0057】
カプセル皮膜中にマクロゴールを含む場合、マクロゴールの平均分子量は、950〜25000が好ましく、2500〜4000がより好ましく、マクロゴール1000、マクロゴール1500、マクロゴール1540、マクロゴール4000、マクロゴール6000がさらに好ましく、マクロゴール4000が特に好ましい。なお、マクロゴールは1種だけ用いても、複数の混合物を用いてもよい。
【0058】
カプセル皮膜中にゼラチンを含む場合、ゼラチンとしては、例えば、熱変化に伴いゾルゲル変化するもので、牛、豚、鳥、魚等を原料とするゼラチンやコハク化ゼラチン等のアシル化ゼラチンなどが挙げられる。
上記ゼラチンの含有量は、カプセルの機械的強度、成形時の皮膜の均一性や皮膜への弾力性付与等を考慮して適宜検討すればよいが、カプセル皮膜全量に対して、50〜99.5質量%が好ましく、65〜99質量%がより好ましい。
【0059】
カプセル皮膜中にポリビニルアルコール共重合体(ポリビニルアルコールとメチルメタクリレートとアクリル酸又はその塩の共重合体)を含む場合、ポリビニルアルコール共重合体は、ポリビニルアルコール、メチルメタクリレート及びアクリル酸とを共重合すれば得ることができる。ポリビニルアルコールは、けん化度が78mol%以上であればよく、また、部分けん化物(けん化度:78〜96mol%)でも、完全けん化物(けん化度:97mol%以上)でもよい。本発明においては、平均重合度300〜3000のポリビニルアルコール(部分けん化物)、メチルメタクリレート及びアクリル酸とを質量比60〜90:7〜38:0.5〜12の割合で共重合させて得られるものが好ましく、25℃における該共重合体の5質量%水溶液の粘度が5〜40mPa・sであるものがより好ましい。ポリビニルアルコール共重合体は、国際公開WO02/017848パンフレットや特開2007−91670号公報等の記載にしたがって、製造することができる。
【0060】
本発明の液をカプセルに充填したカプセル剤には、硬カプセル剤及び軟カプセル剤のいずれもが含まれる。
【0061】
本発明に用いられるカプセル皮膜の色は、特に限定されるものではないが、カプセル剤の商品性の点から、充填された液を目視可能な透明又は半透明が好ましい。
本発明においては、カプセル剤の色を暖色系(赤〜オレンジ〜黄色)とすることもできる。この場合、あたたかさ、落ち着き、安定感・安心感のイメージをもたらし、リラックスして症状の緩和等につなげることができる。
暖色系のカプセル剤を製するには、液状組成物が目視可能となるように、剤皮を透明又は半透明とした上で、液状組成物を暖色系に色素等で着色するか、または、充填された液状組成物を目視可能な程度に、透明又は半透明の剤皮を暖色系に着色する等で達成できる。
【0062】
本発明のカプセル剤は、常法に従って製することができる。
例えば、マクロゴール又はグリセリン、及びゼラチンを含有するカプセル皮膜を用いたカプセル剤を製造する場合、ゼラチンを吸水膨潤させた後、加熱溶解し、次いでカプセル皮膜中に含ませるべきマクロゴールやグリセリンを適当量加え、所望により色素や防腐剤等を添加し、適宜粘度を調整した後、脱泡処理してカプセル成形用ジェリーを得る。得られたジェリーを、カプセル成形装置を用いてカプセルに成形し、これに本発明の液を充填することで、本発明のカプセル剤(硬カプセル剤)を製することができる。さらに、常法に従って、バンド方式や熱着方式等によりカプセルにシールを施すこともできる。
【0063】
また、ゼラチンを吸水膨潤させた後、加熱溶解し、次いでカプセル皮膜中に含ませるべきマクロゴールやグリセリンを適当量加え、所望により、可塑剤、色素や防腐剤等を添加して、適宜粘度を調整した後、脱泡処理してカプセル成形用ジェリーを得る。得られたジェリー及び本発明の液を用いて、ロータリー・ダイ法や滴下法等に基づくことにより、本発明のカプセル剤(軟カプセル剤)を製することができる。
【0064】
また、カプセル皮膜としてポリビニルアルコール共重合体を含有する皮膜を用いる場合、ポリビニルアルコール共重合体を水に溶解し、所望によりゲル化助剤、色素や防腐剤等を添加し、加温溶解する。これと別途ゲル化剤を水に加温溶解したものとを合わせ、ディッピング液を調製する。これを用いてディッピング成形を行い、カプセルに成形し、これに本発明の液を充填することで、本発明のカプセル剤(硬カプセル剤)を製することができる。さらに、常法にしたがって、バンド方式や熱着方式等によりカプセルにシールを施すこともできる。また、ロータリー・ダイ法や滴下法等に基づき、本発明のカプセル剤(軟カプセル剤)を製することができる。
【0065】
また、本発明の硬カプセル剤に用いられるカプセルは、上記常法に従って製造することもできるが、市販の硬カプセルを用いることもできる。市販品としては、例えば、マクロゴールを配合した日本薬局方ゼラチンカプセル(クオリカプス株式会社)、ポリビニルアルコール共重合体を基剤とするPONDAC(登録商標)カプセル(日新化成株式会社)、HPMCを基剤とするクオリーV(クオリカプス株式会社)、プルランを基剤とするNPcaps(登録商標)(カプスゲル・ジャパン株式会社)等が挙げられる。
これら市販の硬カプセルを用いて、本発明の液を充填することで、本発明のカプセル剤を製することができ、さらに、常法にしたがって、バンド方式や熱着方式等によりカプセルにシールを施すこともできる。当該シールを施すことは、カプセルからの充填液の液漏れ、充填液に由来するにおいの防臭や充填液の安定性に寄与する。
【0066】
本発明のカプセル剤の包装形態は特に限定されるものではなく、例えば、ビンやPTP包装等の通常のカプセル剤の包装形態で包装することができる。
【実施例】
【0067】
以下に実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0068】
比較例1
ロキソプロフェンナトリウム水和物(20.43g)、dl−メチルエフェドリン塩酸塩(6g)、d−クロルフェニラミンマレイン酸塩(0.35g)、マクロゴール400(188.1g)、乳酸(5g)及び精製水(30.7g)を混合し、試料とした。斯かる液体の試料は澄明であった。
【0069】
比較例2
ロキソプロフェンナトリウム水和物(20.43g)、無水カフェイン(4g)、dl−メチルエフェドリン塩酸塩(6g)、d−クロルフェニラミンマレイン酸塩(0.35g)、マクロゴール400(177.7g)及び精製水(29g)を混合し、試料とした。
【0070】
比較例3
ロキソプロフェンナトリウム水和物(20.43g)、安息香酸ナトリウムカフェイン(7.5g)、dl−メチルエフェドリン塩酸塩(6g)、d−クロルフェニラミンマレイン酸塩(0.35g)、マクロゴール400(201.4g)、乳酸(5g)及び精製水(32.8g)を混合し、試料とした。
【0071】
実施例1
ロキソプロフェンナトリウム水和物(20.43g)、無水カフェイン(4g)、dl−メチルエフェドリン塩酸塩(6g)、d−クロルフェニラミンマレイン酸塩(0.35g)、グアイフェネシン(25g)、ポビドン(10g)、マクロゴール400(192.4g)、安息香酸(8g)及び精製水(31.4g)を混合し、試料とした。斯かる液体の試料は澄明であった。
【0072】
実施例2
ロキソプロフェンナトリウム水和物(20.43g)、無水カフェイン(4g)、dl−メチルエフェドリン塩酸塩(6g)、d−クロルフェニラミンマレイン酸塩(0.35g)、グアイフェネシン(25g)、ポビドン(10g)、マクロゴール400(175.2g)、乳酸(20g)、安息香酸(8g)及び精製水(28.6g)を混合し、試料とした。斯かる液体の試料は澄明であった。
【0073】
実施例3
ロキソプロフェンナトリウム水和物(20.43g)、無水カフェイン(4g)、dl−メチルエフェドリン塩酸塩(6g)、d−クロルフェニラミンマレイン酸塩(0.35g)、グアイフェネシン(25g)、ポビドン(10g)、マクロゴール400(192.4g)、塩酸(5ml)、安息香酸(8g)及び精製水(31.4g)を混合し、試料とした。斯かる液体の試料は澄明であった。
【0074】
試験例1 保存安定性評価(1)
実施例1〜3及び比較例1〜3で調製した試料について評価を行った。評価は、5℃における保存開始直後、1週間保存後及び1ヵ月保存後の液の凍結や液中の結晶析出の有無を目視で検査することにより行った。結果を表1に示した。
【0075】
【表1】

【0076】
表1から明らかなように、ロキソプロフェンを含むが、カフェイン類を含まない比較例1の試料は、5℃1ヶ月保存後においても、液の凍結や結晶析出といった変化は認められず、澄明な液体の状態を維持した。一方、ロキソプロフェン及びカフェイン類を含む比較例2及び3の試料は、5℃1週間保存後において、凍結した。
これに対し、ロキソプロフェン及びカフェイン類に加えて、さらにグアイフェネシンを含む実施例1、2及び3の試料においては、5℃1ヵ月保存後においても、液の凍結や結晶の析出といった変化は認められず、澄明な液体の状態を維持した。
したがって、グアイフェネシンは、ロキソプロフェンとカフェインを含む液の凍結や結晶の析出防止に極めて有用であることが判明した。
【0077】
試験例2 保存安定性評価(2)
試験例1の結果を受け、比較例1、実施例2及び実施例3で調製した試料についてさらに過酷な保存条件での評価を行った。すなわち、−5℃における保存開始直後、1週間保存後及び1ヶ月保存後の液の凍結や液中の結晶析出の有無を目視で検査することにより評価を行った。結果を表2に示した。
【0078】
【表2】

【0079】
表2から明らかなように、比較例1、実施例2及び実施例3で調製した試料は、−5℃1ヶ月間という過酷な条件での保存後においても液の凍結や結晶析出することなく、澄明な液体の状態を維持し、安定なものであった。
したがって、グアイフェネシンは、ロキソプロフェンとカフェインを含む液の凍結や結晶の析出防止に極めて有用であることが判明した。
また、試験例1及び試験例2の結果から、カフェイン類を含まなければ、ロキソプロフェンナトリウム水和物をマクロゴールと水の混液とを混合すると澄明な液となり、保存安定な液を製することができることが初めて判明した。
【0080】
実施例4 硬カプセル剤の製造
ゼラチン10.0kgに精製水18.0リットルを加え、約2時間自然放置して吸水膨潤させた。ゼラチンが十分に膨潤した後、60℃に加温し、撹拌してゼラチンを均一に溶解させ、更にこのゼラチン溶液中にマクロゴール4000の50質量%水溶液を1.0kg加えて撹拌し、粘度を調整した後、脱泡処理してカプセル成形用ジェリーを得た。このジェリーをカプセル成形装置に仕込み、サイズ0号のカプセルを成形した。
得られたカプセル1つにつき、澄明な実施例1の試料を、1カプセルあたりロキソプロフェンナトリウム水和物を34.05mg(ロキソプロフェンナトリウム無水物換算で30mg)含有するように充填し、液体が充填された硬カプセル剤を製造した。
【0081】
実施例5 軟カプセル剤の製造
ゼラチン9.0kgに精製水10.0リットルを加え、約2時間自然放置して吸水膨潤させた。ゼラチンが十分に膨潤した後、60℃に加温し、撹拌してゼラチンを均一に溶解させ、更にこのゼラチン溶液中に濃グリセリン2.25kg加えて撹拌し、粘度を調整した後、脱泡処理してカプセル成形用ジェリーを得た。このジェリーを用いてロータリー式カプセル充填機にて、澄明な実施例1の試料を、1カプセルあたりロキソプロフェンナトリウム水和物を34.05mg(ロキソプロフェンナトリウム無水物換算で30mg)含有するように充填し、液体が充填された軟カプセル剤を製造した。
【0082】
実施例6 硬カプセル剤の製造
ロキソプロフェンナトリウム水和物(20.43g)、無水カフェイン(4g)、dl−メチルエフェドリン塩酸塩(6g)、d−クロルフェニラミンマレイン酸塩(0.35g)、ジヒドロコデインリン酸塩(2.4g)、グアイフェネシン(25g)、ポビドン(10g)、マクロゴール400(172.6g)、乳酸(5g)、安息香酸(8g)及び精製水(28.2g)を混合し、カプセル充填用の液体を調製した。斯かる液体は澄明であった。
得られた澄明な液体を、実施例4と同様にして、実施例4で得たカプセル1つにつき470mgずつ充填し、1カプセルあたりロキソプロフェンナトリウム水和物を34.05mg(ロキソプロフェンナトリウム無水物換算で30mg)含有する液体を充填した硬カプセル剤を製造した。
【0083】
実施例7 軟カプセル剤の製造
実施例6で得た澄明な液体を、実施例5と同様にして、ロータリー式カプセル充填機にて、470mgずつ充填し、1カプセルあたりロキソプロフェンナトリウム水和物を34.05mg(ロキソプロフェンナトリウム無水物換算で30mg)含有する液体を充填した軟カプセル剤を製造した。
【0084】
実施例8 硬カプセル剤の製造
ロキソプロフェンナトリウム水和物(20.43g)、無水カフェイン(4g)、dl−メチルエフェドリン塩酸塩(6g)、d−クロルフェニラミンマレイン酸塩(0.35g)、ジヒドロコデインリン酸塩(2.4g)、グアイフェネシン(25g)、ポビドン(10g)、マクロゴール400(168.1g)、乳酸(2.5g)、安息香酸(8g)及び精製水(35.3g)を混合し、カプセル充填用の液体を調製した。斯かる液体は澄明であった。
得られた澄明な液体を、実施例4と同様にして、実施例4で得たカプセル1つにつき470mgずつ充填し、1カプセルあたりロキソプロフェンナトリウム水和物を34.05mg(ロキソプロフェンナトリウム無水物換算で30mg)含有する液体を充填した硬カプセル剤を製造した。
【0085】
実施例9 軟カプセル剤の製造
実施例8で得た澄明な液体を、実施例5と同様にして、ロータリー式カプセル充填機にて、470mgずつ充填し、1カプセルあたりロキソプロフェンナトリウム水和物を34.05mg(ロキソプロフェンナトリウム無水物換算で30mg)含有する液体を充填した軟カプセル剤を製造した。
【0086】
上記実施例4及び5のカプセル剤は、ロキソプロフェンナトリウム水和物のほか、総合感冒薬の成分として用いられる、気管支拡張剤としてのdl−メチルエフェドリン塩酸塩、抗ヒスタミン剤としてのd−クロルフェニラミンマレイン酸塩及びグアイフェネシンを含む。これらカプセル剤を1回2カプセル服用することで、ロキソプロフェンナトリウム水和物を1回服用量としての常用量である68.1mg(ロキソプロフェンナトリウム無水物として60mg)を服用できる。また、これらカプセル剤を1回2カプセル1日3回(計6カプセル)服用すると、1日あたり、ロキソプロフェンナトリウム水和物を204.3mg(ロキソプロフェンナトリウム無水物として180mg)、dl−メチルエフェドリン塩酸塩を60mg、d−クロルフェニラミンマレイン酸塩3.5mg及びグアイフェネシン250mgを服用することができるので、優れた総合感冒薬の効能・効果(かぜの諸症状(鼻水、鼻づまり、くしゃみ、のどの痛み、せき、たん、悪寒、発熱、頭痛、関節の痛み、筋肉の痛み))等を有するカプセル剤となる。
また、上記実施例6〜9のカプセル剤は、ロキソプロフェンナトリウム水和物のほか、総合感冒薬の成分として用いられる、気管支拡張剤としてのdl−メチルエフェドリン塩酸塩、抗ヒスタミン剤としてのd−クロルフェニラミンマレイン酸塩、鎮咳剤としてのジヒドロコデインリン酸塩及びグアイフェネシンを含む。これらカプセル剤を1回2カプセル服用することで、ロキソプロフェンナトリウム水和物を1回服用量としての常用量である68.1mg(ロキソプロフェンナトリウム無水物として60mg)を服用できる。また、これらカプセル剤を1回2カプセル1日3回(計6カプセル)服用すると、1日あたり、ロキソプロフェンナトリウム水和物を204.3mg(ロキソプロフェンナトリウム無水物として180mg)、dl−メチルエフェドリン塩酸塩を60mg、d−クロルフェニラミンマレイン酸塩3.5mg、ジヒドロコデインリン酸塩24mg及びグアイフェネシン250mgを服用することができるので、優れた総合感冒薬の効能・効果(かぜの諸症状(鼻水、鼻づまり、くしゃみ、のどの痛み、せき、たん、悪寒、発熱、頭痛、関節の痛み、筋肉の痛み))等を有するカプセル剤となる。
さらには、上記実施例4〜9のカプセル剤は、透明カプセル中に透明・澄明液体を含有させたカプセル剤であり、商品価値の極めて高い製剤である。また、充填した液が、冷所においても凍結等することなく、液状態を維持することができるため、冷所においても、カプセル剤中に含まれる溶解状態の各種薬物が速効性を発揮しうる。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明によれば、冷所や寒冷地で長期間保存しても保存安定なロキソプロフェン又はその塩及びカフェイン類を含有する医薬組成物を提供することができる。
特に、本発明の医薬組成物が液状医薬組成物である場合、各種薬物を溶解状態で含有させることができるので、ロキソプロフェン又はその塩、カフェイン類、去痰作用等を有するフェノール誘導体又はその塩のみならず、これら以外に含有させた各種薬物についても、速やかな薬効の発現が期待できる。
さらには、本発明の液状医薬組成物を充填するカプセルとして透明又は半透明なものを用いた場合、充填した液を目視できることから、商品価値の極めて高いカプセル剤を提供することができる。また、1回服用量としての常用量を含有しうるカプセル剤とすることができるので、服用者のコンプライアンスが良好である。また、フェノール誘導体又はその塩はロキソプロフェン又はその塩及びカフェイン類を含有する液の安定化剤として作用するのみならず、去痰作用を有することから、本発明のカプセル剤は、総合感冒薬や解熱鎮痛薬として優れたものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロキソプロフェン又はその塩、カフェイン類及びフェノール誘導体又はその塩を含有する医薬組成物。
【請求項2】
液状医薬組成物である請求項1記載の医薬組成物。
【請求項3】
ロキソプロフェン又はその塩が、ロキソプロフェンナトリウム水和物である請求項1又は2記載の医薬組成物。
【請求項4】
カフェイン類が、無水カフェイン、カフェイン水和物及び安息香酸ナトリウムカフェインから選ばれる1種以上である請求項1〜3いずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項5】
フェノール誘導体又はその塩が、グアイフェネシン及びグアヤコールスルホン酸カリウムから選ばれる1種以上である請求項1〜4いずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項6】
ロキソプロフェンナトリウム水和物を、ロキソプロフェンナトリウム無水物換算で、10〜300mgを1日量として含有する請求項3〜5いずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項7】
カフェイン類を、10〜1000mgを1日量として含有する請求項1〜6いずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項8】
フェノール誘導体又はその塩を、5〜600mgを1日量として含有する請求項1〜7いずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項9】
さらに、解熱鎮痛剤、抗ヒスタミン剤、鎮咳剤、ノスカピン類、気管支拡張剤、去痰剤、催眠鎮静剤、ビタミン類、抗炎症剤、胃粘膜保護剤、抗コリン剤、生薬類、漢方処方及びキサンチン類から選ばれる1種以上を含有する請求項1〜8いずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項10】
請求項2〜9のいずれか1項記載の液状医薬組成物がカプセルに充填されたカプセル剤。
【請求項11】
軟カプセル剤又は硬カプセル剤である請求項10記載のカプセル剤。
【請求項12】
フェノール誘導体又はその塩を含有するロキソプロフェン又はその塩及びカフェイン類を含有する液の安定化剤。

【公開番号】特開2011−140486(P2011−140486A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−273521(P2010−273521)
【出願日】平成22年12月8日(2010.12.8)
【出願人】(000163006)興和株式会社 (618)
【Fターム(参考)】