説明

ロック機構および情報記録装置

【課題】情報記録装置の有する情報の漏洩をほぼ抑制可能で操作制約の無いロック機構およびこのロック機構を備えた情報記録装置を提供することを目的とする。
【解決手段】DVDパブリッシャ1のロック機構10は、DVD20およびDVD20に記録された情報などの盗難、漏洩を防止するために、電子錠8と機械錠9とを有する。電子錠8は、事前に登録されている個人の生体を利用した個人認証データと入力された個人認証データとが合致した場合に、ロック解除のための開錠が可能であり、機械錠9は、別体の鍵46の操作によって、ロック解除のための開錠が可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報などの漏洩を防止するためのロック機構およびこのロック機構を備えた情報記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、情報記録装置に記録されている情報の漏洩を防止するために、情報記録装置をロック機構付きのケースに収容して管理していた。情報記録装置は、ケースのカバーを開けた開口部から収容される構成であり、情報記憶装置の収容後にカバーが閉じられると、ケースのロック機構が働いてカバーを閉止状態にする。これにより、第三者による情報記録装置への不正な浸入を防止していた。
【0003】
具体的に例示すると、特許文献1には、情報記録装置であるプリンタを収容するための電磁式のロック機構付きケースが開示されている。プリンタは、入場券、乗車券等の有価証券および金券などを印刷でき、さらに、売上記録のジャーナルを保存可能である。電磁式のロック機構は、プリンタに接続されているホストコンピュータから所定の入力操作がなされ、ロック解除信号が送られることによりロックが解除されるようになっている。ロックが解除されると、プリンタの有する有価証券、金券およびジャーナルなどの取り出しが可能となる。このような電磁式のロック機構付きケースを用いれば、ロック機構付きケースを用いない場合に比べて、プリンタが有する有価証券、金券およびジャーナルなどの情報を、より確実に保護することが可能である。
【0004】
【特許文献1】特開2005−313453号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の技術では、入力操作が不可の停電時などには、ロック解除ができなかった。さらに、ホストコンピュータからロック機構に対して、所定の入力操作がなされると、操作者(使用者)が誰であるかに関わらずケースのロックが解除される構成であった。そのため、所定の入力操作を知った第三者によるケースのロック解除が可能であり、このような場合には、プリンタが有する有価証券、金券およびジャーナルなどの盗難や情報漏洩の恐れがあるという課題があった。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためのものであり、情報記録装置の有する情報の漏洩をほぼ防止可能であり操作制約の無いロック機構およびこのロック機構を備えた情報記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のロック機構は、事前に登録されている個人認証データと、取得された個人認証データとが合致した場合に、ロック解除のための開錠が可能な電子錠と、鍵によって、ロック解除のための開錠が可能な機械錠と、を備えていることを特徴とする。
【0008】
このロック機構によれば、電子錠と機械錠とを備えていて、ロック機構が備える電子錠は、個人認証データの電気的取得によって開錠し、一方、機械錠は、鍵による機械的操作によって開錠する。ロック機構のロックを解除するためには、まず、電子錠や機械錠を開錠することが必要である。この場合、電子錠の開錠のための個人認証データは、パスワードの他、個人の生体情報から構成されたものがより好ましい。個々人それぞれ異なる特有のデータであり、第三者が当該個人を装うことを困難にするものである。個人認証データとして生体情報から構成された場合には、生体のどの部分を利用しているかが公になったとしても、電子錠は、登録された個人によってのみ開錠可能であり、ロック機構のセキュリティが保たれるので、より好ましい。生体を利用した個人認証データとしては、たとえば、各個人によって異なっている指紋、手のひら静脈および眼球の虹彩、顔の輪郭などが挙げられる。また、機械錠は、別体の鍵によって開錠可能であり、電子錠の電気的な開錠機能とは異なって機械的に機能する。このようにロック解除のために異なる2つの錠を備えたロック機構は、2つの錠の組み合わせによるさまざまなロック解除方法が考えられ、用途に応じたセキュリティ方法に柔軟に対応可能である。
【0009】
この場合、電子錠と機械錠とは、それぞれ独立して機能しており、それぞれの開錠に対応してロック解除がなされることが好ましい。
【0010】
この構成によれば、電子錠または機械錠のいずれかを開錠することにより、ロック解除が可能である。従って、開錠操作をするために、操作者が電気的または機械的な方法のいずれか得手な方法を選択することができ、操作者の便を図れる。さらに、停電などの電気的トラブル時にも、機械的に開錠操作を行える利点がある。
【0011】
あるいは、電子錠と機械錠とは、連動して機能しており、共に開錠された場合のみロック解除がなされることが好ましい。
【0012】
この構成によれば、電子錠と機械錠とは、互いに連動して機能する構成であり、どちらか一方だけの開錠ではロックが解除されず、電子錠と機械錠とが共に開錠された場合のみ、ロックが解除される。電子的な開錠と機械的な開錠とを組み合わせにより、ロック解除のためには二重の操作を経る必要があり、第三者によって安易にロック解除がなされることをほぼ防止可能である。これにより、情報記録装置の情報の漏洩などを防ぎセキュリティの向上がさらに図れる。
【0013】
あるいは、前記ロック解除機構が、前記電子錠及び前記機械錠を施錠不能とするロック解除機構をさらに備えていることが好ましい。
【0014】
この構成によれば、ロック解除機構により電子錠と機械錠を無効化することができるので、ロックが不要な時(セキュリティ不要時)には、簡単にロック機構を解除でき、操作者の使い勝手が向上する。
【0015】
本発明の情報記録装置は、上述のいずれかのロック機構を有することを特徴とする。この情報記録装置によれば、情報記録装置が電子錠と機械錠の組合せにより、いずれか一方又は共に開錠することにより、ロック解除することができる。このため、用途に応じたセキュリティ方法に柔軟に対応可能である。
【0016】
また、本発明の情報記録装置は、記録媒体を収容する収容部と、記録媒体へデータを記録する記録部と、記録媒体の表面へ印刷をする印刷部と、収容部、記録部および印刷部を収容すると共に、開閉可能であり閉時にはロック可能な扉を有する外装部と、事前に登録されている個人認証データと、取得された個人認証データとが合致した場合に、扉のロック解除のための開錠が可能となる電子錠と、別体の鍵の操作によって、扉のロック解除のための開錠が可能となる機械錠と、を備えていることを特徴とする。
【0017】
この情報記録装置によれば、記録媒体への記録および記録面の表面、例えばデータを記録していない面への印刷が可能な装置であって、さらに、電子錠と機械錠とを備えていて、記録媒体の盗難や情報漏洩などを防ぐために、扉にロックがかかる構成である。電子錠は、個人認証データの電気的取得によって開錠し、一方、機械錠は、鍵による機械的操作によって開錠する。扉のロックを解除するためには、まず、電子錠や機械錠を開錠することが必要である。この場合、電子錠の開錠のための個人認証データは、個々人それぞれ異なる特有のデータであり、第三者が当該個人を装うことを困難にするものである。これにより、個人認証データとして生体を利用した場合には、生体のどの部分を利用しているかが公になったとしても、電子錠は、登録された個人によってのみ開錠可能であり、容易に扉のロック解除がなされることを防ぎ、セキュリティの向上が図れるため、パスワードなどより好ましい。なお、個人認証データとして利用できる生体としては、各個人によって異なっている指紋、手のひら静脈、眼球の虹彩、顔の輪郭などが挙げられる。また、機械錠は、別体の鍵によって開錠可能であり、電子錠の電気的な開錠機能とは異なって機械的に機能する。このようにロック解除のために異なる2つの錠を備えた情報記録装置は、2つの錠の組み合わせによるさまざまなロック解除方法が考えられ、用途に応じたセキュリティ方法に柔軟に対応可能である。
【0018】
この場合、前記ロック機構が、前記電子錠及び前記機械錠を施錠不能とするロック解除機構を備えており、前記ロック解除機構の操作部材が、前記扉に覆われる部位に設けられていることが好ましい。
【0019】
この構成によれば、セキュリティ時に不用意にロック解除機構の操作部材が操作され、扉のロック解除がなされてしまうことを防止できる。
【0020】
この場合、個人認証データは、扉のロック解除が可能である第一のデータと、扉のロック解除が不可である第二のデータとに分けて登録されており、第一のデータが取得された場合には、開錠可能であり、第二のデータが取得された場合には、開錠が不可能であることが好ましい。
【0021】
この構成によれば、情報記録装置に事前に登録される個人認証データは、第一のデータと第二のデータとの二種類に区分されている。第一のデータとして登録されると、扉のロック解除のための開錠可能であり、いわゆる管理者の立場にある者として認証される。第二のデータとして登録されるのは、管理者以外の操作者であって、扉のロック解除のための開錠が不可能である。個人認証データを区分けすることによって、記録媒体へのアクセス権限を明確にでき、記録媒体に対するセキュリティの向上を図ることができる。
【0022】
この場合、第二のデータは、ロック解除権限を有する特定の第二のデータとして登録可能であり、情報記録装置に特定の第二のデータが取得された場合には、当該第二のデータを有するものとして記録がなされた記録媒体にのみ開錠可能であることが好ましい。
【0023】
この構成によれば、特定の第二のデータとして登録されていると、特定の第二のデータを有するものが記録した記録媒体に対し、情報記録装置が特定の第二のデータを取得すると、扉のロック解除のための開錠可能でアクセス可能となる。特定の第二のデータとして登録されるのは、特定された操作者であって、自らが使用するときのみ扉のロック解除のための開錠が可能である。操作者の個人認証データをさらに区分けすることによって、記録媒体へのアクセス権限を使用態様に合わせて、柔軟に対応することができる。
【0024】
この場合、情報記録装置は、記録媒体搬送部と記録媒体排出部をさらに有しており、記録媒体搬送部は、記録媒体を記録媒体排出部に排出することが可能であることが好ましい。
【0025】
この構成によれば、記録された記録媒体を情報記録装置から取り出す場合に、扉を開けなくても記録媒体排出部から排出させることが可能である。これにより、扉のロック解除が不可の使用者であっても、記録された記録媒体を情報記録装置から取り出すことが可能となる。セキュリティを低下させることなく、操作者の権限に対応して記録媒体を取り出すことができ、情報記録装置の利便性の向上が図れる。
【0026】
この場合、情報記録装置は、さらに個人認証データを取得する入力装置を有することが好ましい。
【0027】
この構成によれば、情報記録装置から直接個人認証データを取得することができ、簡便な装置で登録や認証をすることができる。入力装置の例としては、キーボードやテンキーの他、指紋や手のひら静脈、眼球の虹彩、顔の輪郭などの生体認証用装置がある。記録媒体の例としては、DVD(Digital Versatile Disk)があり、近年のビジュアルで記録容量を要する各種のプレゼンテーションデータ、販売・経理などの統計データのほか、ムービーの記録などに使用されている。この場合、情報記録装置の扉ロックの機能によるセキュリティ確保により、DVDの盗難、情報漏洩などから保護され、第三者などの不正コピーによる著作権の侵害を防止することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明を具体化した実施形態について図面に従って説明する。実施形態では、情報記録装置として、DVD(Digital Versatile Disk)の記録面へのデータ記録およびデータ記録面以外の面(表面)への印刷が可能な複合装置であるDVDパブリッシャを例にして説明する。DVDパブリッシャは、DVDの記録面へのデータなどの記録をするDVDレコーダおよび記録面以外の面へのラベル印刷を行うインクジェットプリンタを備えた装置である。また、DVDパブリッシャは、ロック機構を備え、収容しているDVDおよびDVDに記録されているデータなどの盗難、漏洩などを防止する機能を有する。
【0029】
(実施形態1)
図1は、第1実施形態に係るDVDパブリッシャの外観を示す斜視図である。DVDパブリッシャ(情報記録装置)1は、不図示のDVD(記録媒体)、DVDレコーダおよびインクジェットプリンタなどを収容している本体収容部(収容部)2と、本体収容部2の開口部分を閉止する扉3と、扉3に設けられている複数の扉フック5と、扉3を本体収容部2へ支持し、常時、扉3が閉まる方向へ力が付勢されている扉支持部4と、を備えている。そして、本体収容部2は、扉フック5と噛み合って扉3を閉止(ロック)するための本体フック6と、扉3の開閉状態を検出する扉センサ7と、閉止された扉3をロックすると共に扉3のロックを解除するための電子錠8および機械錠9とを備えており、扉フック5、本体フック6、電子錠8、機械錠9は、後述する本体フック支持部などと共に扉3のロック機構10を構成している。
【0030】
また、本体収容部2は、扉3の左部に不図示のインクジェットプリンタのインクカートリッジを装着するカートリッジ装着部11と、カートリッジ装着部11をカバーする装着部カバー12と、装着部カバーを開けるためのカバー開ボタン13と、を備え、さらに、上部斜面部にDVDパブリッシャ1を操作するための操作部15および表示部16と、底部にDVDを排出するためのDVD排出部(記録媒体排出部)17と、側面部に接続されDVDパブリッシャ1の使用者を認証するための個人認証データが入力される認証機器18と、を備えている。認証機器18はパスワードなどを入力するためのキーボードやテンキーの他、生体認証するための、指紋、手のひら静脈、眼球の虹彩、顔の輪郭などを認識する生体認証機器などがある。これらのいずれか、又は組合せで構成されてもよい。さらに組合せて構成すれば、よりセキュリティ効果は高まる。
【0031】
このようなDVDパブリッシャ1の本体収容部2内の構成について説明する。図2(a)は、DVDパブリッシャの有する記録および印刷の機能を示す模式図であり、図2(b)は、DVDパブリッシャの各機能の構成を示す模式図である。図2(a)に示すように、DVDパブリッシャ1は、DVD20のラベル面21へインクジェットプリンタ22によって任意のラベル印刷をする機能と、ラベル面21と異なる面である記録面23へDVDレコーダ24によって各種のデータを記録する機能と、を有する。DVD20の記録面23へ記録したデータの内容を示す表示を、ラベル面21へ直ちに印刷することができ、別途印刷をする場合に生じ易い記録内容とラベル印刷内容とが相違することを防止可能である。
【0032】
次に、インクジェットプリンタ22とDVDレコーダ24とを含むDVDパブリッシャ1の各機能の構成について詳細に説明する。図2(b)に示すように、DVDパブリッシャ1の本体収容部2は、記録および印刷前の複数のDVD20を収容するDVD収容部30と、記録および印刷後のDVD20を収容するDVD収容部31と、DVD20を搬送する搬送部32と、インクジェットプリンタ22が印刷する印刷データおよびDVDレコーダ24が記録する記録データを記憶しているHDD(Hard Disk Drive)33と、を備えている。これらの各機能は、認証機器18によって認証された操作者のみが操作可能である。
【0033】
この構成において、DVD20へ記録および印刷する手順を説明する。まず、搬送部32が、DVD収容部30に収容されている記録前のいわゆる生のDVDを取り出して、DVDレコーダ24へ挿入する。DVDレコーダ24は、操作部15から指定された記録データをHDD33から受信して、挿入されたDVD20の記録面23へデータを記録する。この時、認証された操作者の個人認証データを合わせて記録する。DVD20への記録終了後、搬送部32は、DVDレコーダ24から記録済みのDVD20を取り出し、インクジェットプリンタ22へ挿入する。インクジェットプリンタ22は、操作部15から指定された印刷データをHDD33から受信して、挿入されたDVD20のラベル面21へラベルの印刷をする。
【0034】
ラベルの印刷がされたDVD20は、搬送部(記録媒体搬送部)32によってインクジェットプリンタ22から取り出され、DVD収容部31へ収容される。複数のDVD20を作成する場合、DVD収容部31へ一括収容しておけば、DVD20への記録および印刷が連続してスムーズに行える。また、DVD20へ追加記録をする予定がある場合に、そのままDVD収容部31へ収容しておけば、個人認証データが合致しない第三者によるDVD20への不正なアクセス、DVD20の盗難などから、DVD20を保護しつつ保管することが可能である。通常、DVD20への記録および印刷の終了後、最後に、扉を開けて全てのDVD20を取り出す。また、図6の搬送制御部63への設定により、搬送部3がDVD排出部17にDVD20を搬送し排出することも可能である。セキュリティを強化したい場合、DVDパブリッシャ1は、個人認証データが開錠を許可された者であるときのみ、接続されたPC(Personal Computer)などのホストコンピュータからの指示を受け付け、搬送制御部63へ設定を行うようにしてもよい。この設定により、扉3を開けずに、DVD排出部17からDVD20を取り出すことが可能である。
【0035】
以上説明したDVDパブリッシャ1は、認証機器18によって認証された操作者によって許可された範囲の操作が可能であり、第三者による不正操作により、DVD20の盗難および記録した情報の漏洩などを防止可能である。ここで、DVDパブリッシャ1における個人認証データの扱いの一例について詳細に説明する。DVDパブリッシャ1の認証機器18から入力される個人認証データは、個人の指紋である。入力された個人認証データが、事前に登録された個人認証データと合致すれば、DVDパブリッシャ1を許可された範囲において操作することが可能である。
【0036】
また、PC(Personal Computer)などのホストコンピュータ上で、登録処理用プログラムを立ち上げて動作するようになっている。個人認証処理用プログラムも動作可能としてもよい。個人認証データの登録は、認証機器18により取得した個人認証データがDVDパブリッシャ1に接続したPC(Personal Computer)などのホストコンピュータに送信されることによって登録処理が行われ、DVDパブリッシャ1内のハードディスクなどの記憶装置に登録される。個人認証データの登録先は、ホストコンピュータやホストコンピュータに接続されたサーバ内のハードディスクなどの記憶装置であってもよい。このとき、登録処理用プログラムにより、個人認証データを第一のデータ又は第二のデータとするかを選択して登録することができる。また登録処理用プログラム上で、第一のデータを取得した場合において、特定の第二のデータに対し、ロック解除し開錠する権限を設定することも可能である。
【0037】
認証機器18から個人認証データが入力されると、入力された個人認証データとDVDパブリッシャ1等に登録されている個人認証データとを照合して、入力された個人認証データが登録されたものか否かを判断する。入力された個人認証データが登録されたものであれば、ホストコンピュータは、指定の情報を送信し、DVD20へ記録および印刷を、DVDパブリッシャ1へ指示する。この時、個人認証データに基づいて、ロックされている扉3のロック解除可否の判断もなされる。扉3のロック解除は、この場合、電子錠8の開錠によるものとする。以下に、ロック機構10の電子錠8の開錠による扉3のロック解除について、図3を参照して説明する。
【0038】
図3は、電子錠の開錠手順を示すフローチャートである。このフローチャートは、DVDパブリッシャ1の制御部が実行する。ステップS1において、個人認証の照合結果がOKか否かを判断する。具体的には、認証機器18から入力された指紋等の生体情報から構成されている個人認証データが登録されているものと合致するか否かを判断する。登録されている個人認証データと合致し認証されれば、ステップS2へ進み、一方、合致しなければ、DVDパブリッシャ1への使用権限が無い第三者と判断して、フローを終了する。
【0039】
個人認証データが認証されると、ステップS2において、認証された個人認証データの操作者が、扉3を開くための電子錠8の開錠を許可された者であるか否かを判断する。開錠を許可された者であると判断された場合、操作者は、扉3を開けることができる。管理者として判断された個人認証データが、第一のデータであり、扉3のロック解除のための開錠が可能で、全てのDVD20へアクセス可能である。また、管理者が開錠を許可した者の個人認証データが、特定の第二のデータである。特定の第二のデータが、ホストコンピュータから指定の情報と共にDVDパブリッシャ1に送信された場合のみ、すなわち、管理者から開錠を許可された者が自ら使用するときのみ、扉3のロック解除のための開錠が可能である。開錠を許可された者として判断されなかった個人認証データは、第一のデータでないか又は特定された第二のデータでない場合である。第一のデータ又は特定された第二のデータと判断されれば、ステップS4へ進み、一方、第一のデータ又は特定された第二のデータと判断されなければ、ステップS3へ進む。
【0040】
ステップS3において、特定されていない第二のデータとして判断された個人認証データの操作者は、扉3を開けることが不可の認証者であると判断される。従って、特定されていない第二のデータを有する操作者は、管理者に依頼して扉3を開けてもらって、DVD20を取り出してもらう必要がある。ステップS3を経てフローは、終了する。
【0041】
ステップS4において、扉3を開くための電子錠8の開錠可能とする。このとき、開錠を許可された者が操作部15より電子錠8の開錠を指示入力すれば、扉3のロックが解除され、扉3を開くことが可能となる。ステップS4において、自動的に扉3のロックを解除し、扉3を開くようにしてもよい。管理者は、扉3の開だけでなく、DVDパブリッシャ1が収容するすべてのDVD20へアクセス可能である。以上で、フローが終了する。なお、扉3の開閉は扉センサ7により検出し、閉状態のときのみ、DVD20への記録や書き込みが可能である。
【0042】
なお、ロック機構10の機械錠9は、電気的な電子錠8と異なり、鍵によって機械的に開錠可能である。従って、機械錠9の主な設置目的は、停電時や、DVDパブリッシャ1の電気的不具合発生時などの非常時において、扉3を開くためのものである。機械錠9の鍵は、管理者が保有することがセキュリティ上から望ましく、また、ステップS3における認証者の依頼で管理者が扉3を開く場合に、ステップS1からステップS4を経ることなく迅速に対応可能である。
【0043】
次に、電子錠8および機械錠9を有するロック機構10について、詳細に説明する。図4は、扉のロック機構を示す斜視図である。ロック機構10は、扉3に設けられた扉フック5と、扉フック5と噛み合う本体フック6と、本体フック6が設けられDVDパブリッシャ1の上下方向に延在し上下に稼動可能な本体フック支持部36と、本体フック支持部36へ下向きの力を付勢するロックばね38と、本体フック支持部36の上部に設けられロックばね38を懸架するためのロックばね取付部37と、本体フック支持部36の下部に設けられ電子錠8および機械錠9の開錠によるロック解除のための操作が作用する開錠受部39と、を有している。
【0044】
また、開錠受部39の下方には、電子錠8と機械錠9とが配置されている。電子錠8は、プランジャ14と開錠軸40とを有し、プランジャ14の上下方向の動作を、開錠軸40を介して開錠受部39に伝達する。機械錠9は、機械錠9をDVDパブリッシャ1へ固定するための固定枠45と、固定枠45内を回転する回転軸47と、回転軸47の固定枠45側に設けられている鍵挿入孔43と、回転軸47の固定枠45と対極側に設けられ開錠受部39を上下させるように開錠受部39と当接する開錠カム41と、開錠カム41を開錠受部39から離反させる方向の力を付勢するカムばね42と、を有している。また、開錠受部39の下方には、開錠受部39の移動により、錠の開閉を検出する開錠センサ80を備えている。
【0045】
以上のような構成の電子錠8および機械錠9による扉3のロックおよびロック解除について説明する。図5(a)は、電子錠による扉開の状態を示す斜視図である。図5(b)は、機械錠による扉開の状態を示す斜視図である。まず、電子錠8によるロックおよびロック解除について説明する。電子錠8の基本的動作は、図5(a)に示すように二つあって、一つは、電子錠8を構成するプランジャ14によって、開錠軸40が上方向へ突出して開錠受部39に当接し、開錠受部39をロックばね38の付勢に抗して上方向へ押し上げる動作である。二つ目は、開錠軸40を下方向へ引っ込めて、開錠受部39がロックばね38の付勢によって下方向へ押し下げられるようにする動作である。
【0046】
このように、開錠受部39が開錠軸40によって上方向へ押し上げられると、本体フック支持部36および本体フック6が押し上げられ、扉フック5が本体フック6から離反可能となり、ロックが解除された状態になる。つまり、扉3を開けることが可能である。また、開錠受部39が下方向へ押し下げられると、本体フック支持部36および本体フック6が押し下げられ、この時、扉3が閉じられていると、扉フック5が本体フック6に噛み合って、ロックがなされた状態になる。つまり、扉3が開かないようにロックされる。ロックされているか否かは、開錠センサ80により検出する。
【0047】
ここで、扉フック5と本体フック6とが噛み合ってロックされる状態について、さらに詳細に説明する。図4に示すように、扉フック5と本体フック6とは、ロック状態時にそれぞれ噛み合っている噛合面25,26と反対側の面がそれぞれ斜面27,28を形成している。扉3が開いている状態から閉められると、扉フック5の斜面28が本体フック6の斜面27に当接する。そして、本体フック6の斜面27が扉フック5の斜面28に沿って上方向へ滑り、本体フック6は上方向へ移動する。そして、本体フック6の斜面27の先端が扉フック5の斜面28の先端(上端)へ達すると、扉フック5が本体フック6との当接状態から自由となり、扉3が完全に閉まる。扉3の開閉は扉センサ7により検出できる。この時、ロックばね38によって本体フック6は押し下げられ、扉フック5と本体フック6との噛合面25,26が互いに噛み合って、ロックがなされた状態になる。
【0048】
次に、機械錠9によるロックおよびロック解除について説明する。機械錠9の基本的動作は、図5(b)に示す通り電子錠8と同様に二つあって、一つは、鍵挿入孔43に鍵46を挿入し、時計方向へ鍵46を回すことにより回転軸47を回転させ、回転軸47と連動して回転する開錠カム41によって、開錠受部39をロックばね38の付勢に抗して上方向へ押し上げる動作である。二つ目は、鍵46をカムばね42の付勢によって開錠カム41を反時計方向へ回転させ、開錠受部39がロックばね38の付勢によって下方向へ押し下げられるようにする動作である。
【0049】
このように、開錠受部39が開錠カム41によって上方向へ押し上げられると、本体フック支持部36および本体フック6も押し上げられ、扉フック5が本体フック6から離反可能となり、ロックが解除された状態になる。つまり、扉3を開けることが可能である。また、開錠受部39が下方向へ押し下げられると、本体フック支持部36および本体フック6も押し下げられ、この時、扉3が閉じられていると、扉フック5が本体フック6に噛み合って、ロックがなされた状態になる。つまり、扉3が安易に開かないようにロックされる。DVDパブリッシャ1は、電子錠8および機械錠9を有することにより、電気的および機械的な異なる方法で、セキュリティ確保のための扉3のロックとロック解除が可能である。
【0050】
なお、電子錠8のプランジャ14の開錠軸40の最上点が、扉フック5が本体フック6から半分程度離反する位置にし、そこから鍵46の開錠カム41が最上点に達したときに、扉フック5が本体フック6から完全に離反する位置になるように構成すれば、電子錠8と鍵46が共に開錠されたときのみ、ロック解除がなされるようになる。先に、鍵46の開錠カム41の最上点が、扉フック5が本体フック6から半分程度離反する位置にし、後で電子錠8のプランジャ14の開錠軸40の最上点に達したときに、扉フック5が本体フック6から完全に離反する位置になるように構成してもよい。
【0051】
次に、DVDパブリッシャ1が有する機能を発揮させ、且つ、DVD20およびDVD20の記録データを盗難や情報漏洩などから保護するような制御をする制御部について説明する。図6は、DVDパブリッシャの制御部構成を主に示すブロック図である。DVDパブリッシャ1の制御部50は、入出力インタフェース53を介して、個人認証データの登録等を行うためのホストコンピュータ51およびサーバ52と接続されている。また、制御部50は、インクジェットプリンタ22、DVDレコーダ24などを制御するプログラム等を記憶するROM(Read Only Memory)55と、個人認証データや印刷データ、記録データなどを一時的に記憶しておくRAM(Random Access Memory)56と、ROM55に記憶されているプログラムに基づき各種の制御を実行するCPU(Central Processing Unit)54と、を有する。RAM56は、電源がオフ状態であっても、個人認証データや印刷データ、記録データ等を記憶しておくことが可能なフラッシュROMなどであることが好ましい。また、これらのデータは不図示のハードディスクドライブなどの書き換え可能な不揮発性メモリに記憶させてもよい。
【0052】
そして、制御部50は、HDD33を制御するためのHDD制御部57と、扉3の開または閉の状態を検出する扉センサ7からの信号を受信する扉管理部58と、電子錠8のプランジャ14への作動指示および開錠受部39の位置を検出する開錠センサ80からの信号を受信し、錠の開閉を判断する施錠制御部59と、操作者の個人認証データを取り込む、キーボードやテンキー、又は生体認証機器などの認証機器18を制御する認証制御部60と、を有する。さらに、DVD20の記録面23へデータなどの記録を行うDVDレコーダ24を制御する記録制御部61と、DVD20のラベル面21へ印刷するインクジェットプリンタ22を制御する印刷制御部62と、DVD収容部30,31、DVDレコーダ24、インクジェットプリンタ22、DVD排出部17との間においてDVD20を適切に搬送する搬送部32を制御する搬送制御部63と、記録・印刷前のDVD20を収容しているDVD収容部30および記録・印刷後のDVD20を収容しているDVD収容部31を管理するDVD管理部64と、を有する。
【0053】
これら制御部50を構成する入出力インタフェース53、CPU54、ROM55、RAM56、扉管理部58、施錠制御部59、認証制御部60などは、バス65を介して相互に接続され、相互に連携してDVDパブリッシャ1のセキュリティ確保等を担っている。
【0054】
以上本発明の一実施形態について説明した。以下に、本実施形態の効果をまとめて記載する。
【0055】
(1)DVDパブリッシャ1は、インクジェットプリンタ22とDVDレコーダ24とを備えており、DVD20にデータを記録すると共に、記録後にデータの内容表示をラベル面21へ直ちに印刷可能である。そのため、ラベル印刷を後で別途に印刷する場合のように、後回しにしての印刷忘れや、記録内容と異なるラベルを間違って印刷してしまうような事態を防止可能である。
【0056】
(2)DVDパブリッシャ1は、DVD20の情報漏洩などを防ぐために、扉3をロックするロック機構10を備えており、ロック機構10は、電子錠8または機械錠9によってロックが解除できる構成である。電気的または機械的にロック解除ができ、操作者が得手な方法が選択可能である。また、停電などの電気トラブルにおいて電子錠8が機能しない非常事態に対しても、機械的に対応することが可能である。
【0057】
(3)DVDパブリッシャ1が備えるロック機構10は、電気的な開錠機能を有する電子錠8および鍵46によって開錠可能である機械錠9を有している。このようにロック解除のために異なる2つの錠を備えたDVDパブリッシャ1は、2つの錠の組み合わせによるさまざまなロック解除方法が考えられ、用途に応じたセキュリティ方法に柔軟に対応可能である。
【0058】
(4)電子錠8は、各個人によって異なる個人認証データを利用でき、登録された操作者による電気的入力によってのみ開錠されるため、第三者による不正なロック解除を防止可能である。さらに、個人認証データを第一および第二のデータに区分し、さらに第二のデータは特定のものと区分して管理することにより、扉3を開けられ全てのDVD20へアクセス可能な管理者と、自分が使用するときのみDVDへアクセス可能な操作者と、扉3を開けられない者等の制限を課すことができ、セキュリティの向上を図ることが可能である。
【0059】
(5)DVD20をDVDパブリッシャ1から取り出す場合に、扉3を開けなくてもDVD排出部17から排出するようにして、取り出すことが可能である。DVDパブリッシャ1への設定により、扉3のロック解除が不可の操作者である認証者であっても、DVD20をDVDパブリッシャ1から取り出すことが可能となる。
【0060】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、次の変形例として挙げられているような形態であっても、実施形態と同様な効果を得ることが可能である。
【0061】
(変形例1)DVDパブリッシャ1のロック機構10を構成する電子錠8と機械錠9とはそれぞれ個別に機能する構成であるが、連動して機能する構成であっても良い。具体的には、図7(a)電子錠の開錠を示す変形例の斜視図および図7(b)機械錠による扉開の状態を示す変形例の斜視図に示すように、実施形態と同様に配置されている機械錠9と、実施形態では上下方向に作動していた開錠軸40が水平方向に作動するように配置された電子錠8とによる構成である。図7(a)に示すように、電子錠8は、直接、開錠受部39に作用せずに、機械錠9の開錠カム41に設けられているロック穴70に開錠軸40が出入りして、開錠カム41の回転を制御する。つまり、開錠軸40がプランジャ14から突出してロック穴70に入っていれば、開錠カム41の回転が制止されるため、機械錠9の開錠ができない。つまり、ロック解除が不可である。一方、図7(b)に示すように、開錠軸40がプランジャ14によってロック穴70から引っ込められ、電子錠8が開錠されると、開錠カム41の回転が可能になって、開錠受部39を押し上げることができ、ロック解除が可能となる。即ち、ロック機構10は、電子錠8と機械錠9とが共に開錠された場合のみロック解除できる二重ロックの構成である。電子的な個人認証データと機械的な鍵46とによる二重ロックにより、DVDパブリッシャ1の扉3を開けることに対するセキュリティをより高めることが可能である。
【0062】
(変形例2)DVD収容部31の記録済みのDVD20を指定して、該当DVD20への追加記録も可能である。この場合、DVD20へのデータ記録の後、直ちにラベル印刷を行わず、追加のデータ記録が終了後にラベル印刷する構成であっても良い。追記録が可能なDVD20への複数回にわたる記録がスムーズに行える。
【0063】
(変形例3)図3のフローチャートにおいて、ステップS2およびステップS3を削除して、全ての認証者が扉を開けられるフローであっても良い。ムービー、ソフトウエアなど多量販売用のDVD20の作成では、信頼できる少数の認証者すべてが同様な権限を持って操作することができ、作業が効率的に行える。
【0064】
(変形例4)個人認証データは、指紋のほかに個人を特定できる手のひら静脈および眼球の虹彩、顔の輪郭などであっても良い。DVDパブリッシャ1のユーザー要望に幅広く対応可能である。
【0065】
(変形例5)セキュリティを確保可能なロック機構10は、DVD20やDVD20に記録されたデータを保護するだけではなく、漏洩防止などの保護が必要な各種機器に対して設けても良い。それらの機器としては、メモリや感光体に保護が必要なデータの残るコピー機、インクリボンに保護が必要な印刷結果が残る熱転写プリンタやFAX、保護が必要な販売データが紙または電子ジャーナルとして残るPOSプリンタなどが挙げられる。また、ロック機構は、扉3を閉じてロックする構成に使用するだけではなく、電源スイッチ、操作部15のボタンなどの操作可否に用いても良い。
【0066】
(変形例6)本体収容部2に収容されているDVDレコーダ24は、CDレコーダ、MDレコーダまたはCD、DVDマルチレコーダなどでも良い。同様に、インクジェットプリンタ22は、DVD20、CD、MDなどの記録媒体に印刷可能なサーマルプリンタ、インパクトプリンタなどであっても良い。
【0067】
(実施形態2)
図8は第2実施形態に係るDVDパブリッシャの外観を示す斜視図である。尚、本第2実施形態に係るDVDパブリッシャ100は、ロック機構10に代えてロック機構110を備えている以外は上記第1実施形態に係るDVDパブリッシャ1と略同様の構成であるので、同様の部材については同符号付して詳細な説明を省略する。
【0068】
本第2実施形態に係るロック機構110について、詳細に説明する。図9及び図10は扉のロック機構を示す表面側及び内面側の要部斜視図である。
ロック機構110は、扉3に設けられた扉フック5と、扉フック5と噛み合う本体フック6と、本体フック6が設けられDVDパブリッシャ100の上下方向に延在し上下に可動可能な本体フック支持部36と、本体フック支持部36へ下向きの力を付勢するロックばね38と、本体フック支持部36の上部に設けられロックばね38を懸架するためのロックばね取付部37と、本体フック支持部36の下部に設けられ電子錠8および機械錠9の開錠によるロック解除のための操作が作用する開錠受部39と、電子錠8及び機械錠9を施錠不能とするロック解除機構120と、を有している。
【0069】
また、開錠受部39の下方には、電子錠8と機械錠9とが配置されている。電子錠8は、プランジャ14と開錠アーム140とを有し、プランジャ14の前後方向の動作を、開錠アーム140を介して開錠受部39に伝達し、本体フック支持部36を上下させる。機械錠9は、回転軸47の外周に突設された開錠カム41を有し、回転軸47の回転方向の動作により開錠カム41を介して開錠受部39に伝達し、本体フック支持部36を上下させる。更に、本体フック支持部36の下方には、本体フック支持部36の移動により、錠の開閉を検出する開錠センサ80を備えている。
【0070】
そして、本体フック支持部36の中間には、ロック解除機構120が配置されている。ロック解除機構120は、本体フック支持部36の中間に設けられたロック解除受部122と、係合部132がロック解除受部122と係合する操作部材130と、を備えている。
【0071】
操作部材130は、係合部132がロック解除受部122と係合することにより、本体フック支持部36および本体フック6を押し上げて、扉フック5に対して本体フック6を噛み合い不能とする施錠不可位置(図13の位置)と、係合部132がロック解除受部122と係合不能になることにより、扉フック5に対して本体フック6を噛み合い可能とする施錠可能位置(図12の位置)との間を移動自在にフレーム145に取り付けられている。操作部材130の下部には、先端突起がフレーム145のガイド穴150の開口縁に係合することで操作部材130を施錠可能位置に保持可能な係止アーム133が一体形成されている。
【0072】
尚、本第2実施形態のDVDパブリッシャ100は、図8に示すように、扉3に設けられた複数の扉フック115と、扉フック115と弾性係合して扉3を閉止状態にするための弾性ロック116と、を有している。この弾性ロック116は、所定以上の開放力が扉3に作用した際には扉3の閉止状態を解除することができる。
そこで、上記ロック解除機構120により、本体フック6が扉フック5(図1参照)に対して噛み合い不能となっている場合にも、これら扉フック115及び弾性ロック116によって扉3を開閉自在な閉止状態とすることができる。
【0073】
次に、以上のような構成のロック解除機構120の動作について説明する。
図11は、電子錠による扉開の状態を示す側面図である。図12は、電子錠による扉閉の状態を示す側面図である。図13は、電子錠及び機械錠を施錠不能とするロック解除機構の施錠不能状態を示す側面図である。
【0074】
本実施形態のロック機構110の基本動作は、上述したロック機構10と同様に、電子錠8又は機械錠9により開錠受部39をロックばね38の付勢に抗して上方向へ押し上げる動作と、開錠受部39がロックばね38の付勢によって下方向へ押し下げられるようにする動作である。
【0075】
本実施形態のロック解除機構120において、図11及び図12に示すように、操作部材131がロック解除受部122と係合不能な施錠可能位置にある場合、扉3に設けられている扉フック5に対して本体フック6は噛み合い可能である。即ち、本実施形態のロック機構110は、上述したように電子錠8又は機械錠9により開錠受部39をロックばね38の付勢に抗して上方向へ押し上げる動作と、開錠受部39がロックばね38の付勢によって下方向へ押し下げられるようにする動作とが可能となる。
【0076】
従って、図11に示すように、電子錠8を構成するプランジャ14によって、開錠レバー140が時計回り方向へ回動して開錠受部39に当接し、開錠受部39をロックばね38の付勢に抗して上方向へ押し上げると、本体フック支持部36および本体フック6が押し上げられ、扉フック5が本体フック6から離反可能となり、ロックが解除された状態になる。つまり、扉3を開けることが可能である。
【0077】
また、図12に示すように、開錠受部39が下方向へ押し下げられると、本体フック支持部36および本体フック6も押し下げられ、この時、扉3が閉じられていると、扉フック5が本体フック6に噛み合って、ロックがなされた状態になる。つまり、扉3が安易に開かないようにロックされる。ロックされているか否かは、開錠センサ80により検出する。
【0078】
一方、図13に示すように、操作部材131がロック解除受部122と係合する施錠不可位置に操作されると、本体フック支持部36および本体フック6を押し上げた状態に保持して、電子錠8又は機械錠9の動作に係わらず、扉3に設けられている扉フック5に対して本体フック6を噛み合い不能とする。
【0079】
ここで、操作部材131とロック解除受部122とが係合してロックされる状態について、さらに詳細に説明する。
図10乃至図13に示すように、操作部材131と係合するロック解除受部122は、ロック状態時に係合部132と噛み合っている係合部123と反対側の面が斜面125を形成している。
本体フック支持部36が押し下げられている状態から操作部材131が施錠不可位置へ向けて操作されると、操作部材131の係合部132がロック解除受部122の斜面125に当接する(図12参照)。そして、ロック解除受部122の斜面125が操作部材131の係合部132によって上方向へ滑り、ロック解除受部122は上方向へ移動する。
【0080】
さらに、操作部材131の係合部132がロック解除受部122の斜面125の下端へ達すると、操作部材131はロック解除受部122の斜面125との摺接状態から係止状態となる。そこで、操作部材131が施錠不可位置に達すると共に、本体フック支持部36および本体フック6が上方へ押し上げられた状態となって扉フック5が本体フック6から離反可能となり、ロックが解除された状態になる(図13参照)。
【0081】
以上説明したDVDパブリッシャ100は、ロック解除機構120により電子錠8と機械錠9を無効化することができるので、ロックが不要な時(セキュリティ不要時)には、簡単にロック機構110を解除でき、操作者の使い勝手が向上する。
また、本実施形態に係るロック解除機構120の操作部材130は、扉3に覆われる部位に設けられている。そこで、セキュリティ時に不用意にロック解除機構120の操作部材130が操作され、扉3のロック解除がなされてしまうことを防止できる。即ち、管理者以外の操作者は、扉3のロック解除のための開錠が不可能であるので、セキュリティ時にはロック解除機構120の操作をすることができない。
【0082】
図14は、DVDパブリッシャ100におけるセキュリティの使用モード切換え手順を示すフローチャートである。このフローチャートは、DVDパブリッシャ100の制御部が実行する。
ステップS10において、図示しないホストコンピュータからの送信、或いはDVDパブリッシャ100のディップスイッチの切換え等によりセキュリティの使用モードを入力する。
セキュリティの使用モードが入力されると、ステップS11において、セキュリティモード(セキュリティ時)か否(セキュリティ不要時)かを判定する。セキュリティモードでないと判定されれば、ステップS16へ進み、セキュリティモードと判定されれば、ステップS12へ進む。
【0083】
セキュリティモードと判定されると、ステップS12において、扉3が閉じているか否かを判定する。具体的には、扉センサ7により扉3の開閉を検出する。扉3が閉じていると判定されれば、ステップS14へ進み、一方、閉じていないと判定されれば、ステップ13へ進む。ステップ13においては、扉を閉じるように促すメッセージを表示部16に表示させた後、ステップS12に戻る。管理者は、扉3を確認して閉じる。
【0084】
ステップS14において、本体フック6が施錠可能位置か否かを判定する。具体的には、開錠センサ80により開錠受部39の位置を検出する。本体フック6が施錠可能位置と判定されれば、フローを終了し、一方、本体フック6が施錠不能位置と判定されれば、ステップS15へ進む。
【0085】
ステップS15においては、扉3がロックできない状態である旨のエラーメッセージを表示部16に表示させた後、ステップS12に戻る。このとき、管理者は扉3を開けてロック解除機構120の操作部材130を確認し、操作部材130が施錠不可位置である場合には、操作部材130を操作して施錠可能位置に移動させた後、扉3を閉じる。また、操作部材130が施錠可能位置であるにも係わらずエラーメッセージが消えない場合は、本体フック支持部36がフレーム145に引っ掛かっていたり、電子錠8の異常であったりする可能性もあるので、その旨のエラーメッセージを表示させても良い。
【0086】
ステップS11でセキュリティモードでないと判定されると、ステップS16において、本体フック6が施錠可能位置か否かを判定する。具体的には、開錠センサ80により開錠受部39の位置を検出する。本体フック6が施錠可能位置でないと判定されれば、フローを終了し、一方、本体フック6が施錠可能位置と判定されれば、ステップS17へ進む。
【0087】
ステップS17においては、扉3がロック状態である旨のエラーメッセージを表示部16に表示させた後、ステップS16に戻る。このとき、管理者は扉3を開けてロック解除機構120の操作部材130を確認し、操作部材130を操作して施錠解除位置に移動させた後、扉3を閉じる。
【0088】
尚、上記ステップS13,S15においては、表示部16にエラーメッセージを表示させたが、例えば、ホストコンピュータにステータスを返し、ホストコンピュータにエラーメッセージを表示させるようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明のロック機構は、個人情報を始めとした各種情報の盗難、漏洩などを防止する管理が強く求められている中で、情報にアクセスしようとする個人の本人確認が確実にでき、不正なアクセスを防ぐことが可能である。さらに、電子的な錠と機械的な錠とを有し、用途に応じたセキュリティ方法に柔軟に対応可能な用途の広いロック機構である。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】第1実施形態に係るDVDパブリッシャの外観を示す斜視図。
【図2】(a)DVDパブリッシャの有する記録および印刷の機能を示す模式図、(b)DVDパブリッシャの各機能の構成を示す模式図。
【図3】電子錠の開錠手順を示すフローチャート図。
【図4】扉のロック機構を示す斜視図。
【図5】(a)電子錠による扉開の状態を示す斜視図、(b)機械錠による扉開の状態を示す斜視図。
【図6】DVDパブリッシャの制御部構成を主に示すブロック図。
【図7】(a)電子錠の開錠を示す変形例の斜視図、(b)機械錠による扉開の状態を示す変形例の斜視図。
【図8】第2実施形態に係るDVDパブリッシャの外観を示す斜視図。
【図9】扉のロック機構を示す表面側の要部斜視図。
【図10】扉のロック機構を示す内面側の要部斜視図。
【図11】電子錠による扉開の状態を示す側面図。
【図12】電子錠による扉閉の状態を示す側面図。
【図13】電子錠及び機械錠を施錠不能とするロック解除機構の施錠不能状態を示す側面図。
【図14】セキュリティの使用モード切換え手順を示すフローチャート図。
【符号の説明】
【0091】
1,100…情報記録装置としてのDVDパブリッシャ、2…収容部としての本体収容部、3…扉、4…扉支持部、5,115…扉フック、6…本体フック、7…扉センサ、8…電子錠、9…機械錠、10…ロック機構、14…プランジャ、17…記録媒体排出部としてのDVD排出部、18…認証機器、20…記録媒体としてのDVD、22…インクジェットプリンタ、24…DVDレコーダ、25,26…噛合面、27,28…斜面、30…記録・印刷前DVD収容部、31…記録・印刷後DVD収容部、32…記録媒体搬送部としての搬送部、33…HDD、36…本体フック支持部、37…ロックばね取付部、38…ロックばね、39…開錠受部、40…開錠軸、41…開錠カム、42…カムばね、43…鍵挿入孔、45…固定枠、46…鍵、47…回転軸、50…制御部、51…ホストコンピュータ、52…サーバ、70…ロック穴、116…弾性ロック、120…ロック解除機構、122…ロック解除受部、130…操作部材、140…開錠レバー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
事前に登録されている個人認証データと、取得された前記個人認証データとが合致した場合に、ロック解除のための開錠が可能となる電子錠と、
鍵によって、ロック解除のための開錠が可能となる機械錠と、を備えていることを特徴とするロック機構。
【請求項2】
請求項1に記載のロック機構において、
前記電子錠と前記機械錠とは、それぞれ独立して機能しており、それぞれの開錠に対応してロック解除がなされることを特徴とするロック機構。
【請求項3】
請求項1に記載のロック機構において、
前記電子錠と前記機械錠とは、連動して機能しており、共に開錠された場合のみロック解除がなされることを特徴とするロック機構。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載のロック機構において、
前記個人認証データは生体情報から構成されていることを特徴とするロック機構。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載のロック機構において、前記電子錠及び前記機械錠を施錠不能とするロック解除機構をさらに備えていることを特徴とするロック機構。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載のロック機構を有することを特徴とする情報記録装置。
【請求項7】
記録媒体を収容する収容部と、
前記記録媒体へデータを記録する記録部と、
前記記録媒体の表面へ印刷をする印刷部と、
前記収容部、前記記録部および前記印刷部を収容すると共に、開閉可能であり閉時にはロック可能な扉を有する外装部と、
事前に登録されている個人認証データと、取得された前記個人認証データとが合致した場合に、前記扉のロック解除のための開錠が可能となる電子錠と、
鍵によって、前記扉のロック解除のための開錠が可能となる機械錠と、を備えていることを特徴とする情報記録装置。
【請求項8】
請求項7に記載の情報記録装置において、前記ロック機構が、前記電子錠及び前記機械錠を施錠不能とするロック解除機構を備えており、前記ロック解除機構の操作部材が、前記扉に覆われる部位に設けられていることを特徴とする情報記録装置。
【請求項9】
請求項6から8のいずれか一項に記載の情報記録装置において、
前記個人認証データは、前記扉のロック解除が可能である第一のデータと、前記扉のロック解除が不可である第二のデータとに分けて登録されており、
前記第一のデータが取得された場合には、ロック解除のための開錠が可能であり、前記第二のデータが取得された場合には、ロック解除のための開錠が不可能であることを特徴とする情報記録装置。
【請求項10】
請求項9に記載の情報記録装置において、
前記第二のデータは、ロック解除権限を有する特定の第二のデータとして登録可能であり、
前記特定の第二のデータが取得された場合には、当該第二のデータを有するものとして記録がなされた前記記録媒体にのみ開錠可能であることを特徴とする情報記録装置。
【請求項11】
請求項6から10のいずれか一項に記載の情報記録装置において、
記録媒体搬送部と、
記録媒体排出部をさらに有しており、
記録媒体搬送部は、前記記録媒体を前記記録媒体排出部に排出することを特徴とする情報記録装置。
【請求項12】
請求項6から11のいずれか一項に記載の情報記録装置において、前記個人認証データを取得する入力装置を有することを特徴とする情報記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2007−247390(P2007−247390A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−36977(P2007−36977)
【出願日】平成19年2月16日(2007.2.16)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】