ロブスターアイX線画像処理システムおよびその製作方法
地下、容器内、壁、隔壁等の背後に隠された物体をリアルタイムで安全に検出する凝視コンプトン後方散乱X線用の、独特なロブスターアイ(LE)構造、X線発生器、シンチレータベースの検出器、および冷却CCD(すなわち増感CCD)に基づいたロブスターアイX線画像処理システム。既存の走査型ペンシルビームシステムとは対照的に、ロブスターアイX線画像処理システムの真の焦点が調整されたX線光学系は、1つまたは2以上のX線発生器からの広いオープンコーンビームによって照射されたシーン全体から、弾道コンプトン後方散乱光子(CBP)を同時に得る。ロブスターアイX線画像処理システムは、40から120keVの範囲(すなわち波長λ=0.31から0.1オングストローム)において、現在の後方散乱画像処理センサ(BIS)よりも何千倍も多い後方散乱硬X線を収集する(焦点に集める)ので、高感度で高信号対雑音比(SNR)であり、地面、金属、壁等を貫通する能力を提供する。ロブスターアイX線画像処理システムの収集効率を最適化して、放射されるX線パワーを低減し、装置を小型化する。該装置は、X線ベースの検査システムに特に好都合であり、該X線ベースの検査システムの要件、すなわち、地面、金属、および他の隠蔽材料を通したX線の貫通、安全性、および人による可搬性の要件を満たしている。ここに開示された先進技術は、医療診断や、地雷探知、手荷物検査等のような軍事的応用にも適用可能である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロブスターアイX線焦点調整技術を使用した、改善されたX線撮像システムに関する。
【背景技術】
【0002】
多くの産業および軍事的応用が、潜伏地、壁、地面、ボートの隔壁、およびコンテナ船を通した、物体の非侵入性検査の能力を必要としている。このため、政府機関は、地面、壁、および隔壁の後ろの、視界から隠された材料を正確に解析し視覚化することができるポータブル(すなわち携帯用)器機を求めている。検査装置は、全面的な責任能力を確保しつつ、検査要員を危険にさらしてはならず、操作するのに簡単でなければならず、商用財産と私財の破壊を最小限にする必要がある。当面の応用は、不法貨物および遠洋航行のコンテナ船での他の密貿易、空港および他の検問所での大型船舶および小型船舶への乗船、さらには地雷および簡易爆発装置(IED)を検査要員によって探知することである。
【0003】
壁を通した又は地面を通した検査の方法は、光学、マイクロ波、音響、およびX線技術を含んでいる。光学的熱感知画像処理システムは、壁と同一の温度を持つ隠された物体を見ることができない。音響システムは金属壁を十分に貫通せず、該システムの低周波は作業者および密航者にとって危険を伴う。マイクロ波レーダーは金属隔壁を貫通することができない。最先端技術のX線走査BISは、壁および内部の建築構造物を貫通することができるが、それらはかさばっていて、高価で、とりわけ有害である。X線画像を組立てるために、現在のBIS(後方散乱画像処理センサ)は、光電子増倍管(PMT)およびX線走査型ペンシルビームを備えた、高価で、重く、視界が限られたシンチレーション検出器を使用している。走査型ペンシルビームを発生させることは、作業者および壁の背後に隠れている人にとって非能率的で危険でもある。これは安全な携帯器機、ひとりで持ち運べる器機とはいえない。したがって、最先端技術のX線検査システムは、船の客室検査に対する要件も満たしていない。
【発明の開示】
【0004】
これらの限界を克服するために、本発明は、地下、コンテナの中、壁および隔壁等の背後に隠された物体のリアルタイムで安全な凝視型コンプトン後方散乱X線検出のために、独特なロブスターアイ(LE)構造、X線発生器、結晶シンチレータ、CCD(すなわち増感CCD)、および画像処理モジュールに基づいた、新しいロブスターアイX線画像処理システムを組み込んでいる。既存の走査型ペンシルビームシステムとは対照的に、ロブスターアイX線画像処理システムの真の焦点が調整されたX線光学系は、X線発生器(凝視型)からの広いオープンコーンビームによって照射されたシーン全体から、弾道コンプトン後方散乱光子(CBP)を同時に得る。ロブスターアイX線画像処理システムは、40から120keVの範囲(すなわち波長λ=0.31から0.1オングストローム)において、現在のBIS装置よりも何千倍も多い後方散乱硬X線を収集する(焦点に集める)ので、高感度で高信号対雑音比(SNR)であり、金属壁等を貫通する能力を提供する。ロブスターアイX線画像処理システムの収集効率を最適化して、放射されるX線パワーを低減し、装置を小型化する。この装置は、X線ベースの検査の要件、すなわち地面、金属、および他の隔壁を通したX線の貫通、検査要員の安全性、および人による可搬性を満足する。ロブスターアイX線画像処理システムの重要な利点は、次の考察が満足された場合に、人間の安全性を確保しながら、それが金属を含む、地面、壁、隔壁、および船体を貫通することができる点にある。
【0005】
ロブスターアイX線画像処理システムの構成は次の考察に基づいている。
・後方散乱に最適なエネルギー範囲は、所定の医療X線胸部検査と同じ40から120keVであり、50keV(すなわちλ=0.25オングストローム)のX線光子の42%は、0.762mm(30ミル)のスチール壁、(2.54cm(1インチ)のプラスチック、または20.32cm(8インチ)の乾燥木と等価)を貫通する。
・検査要員のX線照射の総線量は重大な問題である。この線量は、光子の数とそのエネルギーとの関数である。予備推定では、貨物検査用のロブスターアイX線画像処理システムの作業者等は、天然の放射線レベルと同程度の放射線を受けるであろう。
【0006】
貨物検査のためのロブスターアイX線画像処理システムの操作は、以下のリアルタイムプロセスを含んでいる。
・遮蔽物の背後にある物体に、オープンコーン状のX線を照射すること。
・後方散乱弾道X線光子を集めること。
・多数のCCDフレームの内に蓄積された情報を処理すること。
・高い角度分解能で、隠された物体の軟X線画像を取り出すこと。
【0007】
現在のアプローチに関し、開示したロブスターアイX線画像処理システム技術の利点は、以下のことを含んでいる。
・作業者にとって安全な照射量で、金属および他の壁を通ったコンプトン後方散乱を観察する。
・凝視により、すなわち走査しないで、FOV(視野)全体にわたるX線画像を瞬時に得る。
・既存の非常に大きなペンシルビーム走査型システムとは対照的に、X線発生器からのすべてのX線光束を利用する。
・X線CBPの遠隔検出用に、高い角度分解能を持っている。
・拡散したバックグラウンドと比較して焦点のX線強度を著しく増強し、したがって、はるかに低い安全なX線強度レベルにもかかわらず、他のX線センサよりも著しく優れたSNRおよび感度を持っている。
・携帯型で、ひとりで運ぶことができ、コスト効率の良い構成要素と技術を使用して製作しやすいことが好ましい。
【0008】
ロブスターアイX線画像処理システムは、IEDのリアルタイムでの(待ち時間なし)検出、又はコンプトン後方散乱光子を用いた、コンテナ、トラック、大型船舶および小型船舶中の密輸品の壁を通した画像処理の必要性をまさに満たしている。ロブスターアイ(LE)X線光学系には真の焦点調整能力があるため、このX線は金属壁を貫通し、検査員にとって安全で、分解能およびSNRを高めている。
【0009】
開示した実施形態の最も重要な特徴は、ロブスターアイレンズ構造に対する非常に革新的な製作および組立て概念である。この概念により、フラット部に対して研磨および表面処理をすべて実行することができ、真の90度のコーナおよび高い幾何学的精度を有する、完璧に形成されたLE構成を達成している。
【0010】
本発明の他の態様は、後方散乱ターゲットの近似位置および入射X線のエネルギー分布に起因して焦点がずれることに対する補正を含む、ロブスターアイレンズの光学特性に関する。ロブスターアイレンズは、壁材を分析するのに有用であってもよく、ロブスターアイレンズの分光計としての使用も開示している。
【0011】
ここに開示した新しい画像処理システムは、医学的診断、および地雷探知等の軍事利用にも有益な応用を見出している。
【0012】
以下の参照文献は、対応する番号によって本書に引用される。
1. J.W.Goodmanによる、“Introduction to Fourier Optics”(第2版)、1996年、McGraw−Hill(マグローヒル)
2. 米国特許番号第5,497,008号
3. 米国特許番号第5,192,869号
4. P.Gorenshtein、E.Whitbeck、G.Austin、および A.Kentevによる、“Lobster−Eye X−Ray Telescope Prototype”、1996年、SPIE(写真・光学計測技術者協会)vol.2805,pp.74−81
5. S.S.Holtによる、“ALL−Sky Monitors for X−Ray Astronomy”、1987年、Space Science Reviews、vol.45,pp.269−289
6. W.C.Priedhorsky、A.G.Peele、およびK.A.Nugentによる、“An X−Ray All−Sky Monitor with Extraordinary Sensitivity”、1996年、Mon.Not.R.Astron.Soc,vol.279,pp.733−750
【0013】
7. G.K.Parks、S.H.Werden、およびM.P.McCarthyによる、“Pinhole X−Ray Cameras for Imaging Small−Scaled Auroral Structures”、1993年、Opt.Eng.,vol.32,no12,pp.3164−3168
8. J.R.P.Angelによる、“Lobster−Eyes as X−Ray Telescopes”、1979年、Ap.J.,vol.233,pp.364−373
9. M.F.LandとD.Nilssonによる、“Animal Eyes”、2002年、Oxford University Press
10. J.Macdonaldらによる、“Alternatives for Landmine Detection”、2003年、RAND Organization,pp.191−223、www.rand.org.
11. E.T DuganとA.M.Jacobsによる、Lateral Migration Radiology Image Signature for the Detection and Identification of Buried land Mines、2001年8月、Final Progress Report to the US Army Research Office,ARO Grant DAAG−55−98−1−0400
【0014】
12. 2000年6月28日に、16th Annual Security Technology Symposium & Exhibitionに提示された、W.J.Baukusによる,“X−Ray Imaging for On−The−Body Contraband Detection”
13. W.Niemannらによる、“Detection of Buried Landmines with X−Ray Backscatter Technology”、2002年10月、The e−Journal of Nondestructive Testing,vol.7,no.10、www.ndt.net/index.html
14. G.J.Lockwoodらによる、“Bomb Detection Using Backscattered X−Rays”、1999年、SPIE Proceedings,vol.3577,pp.53−61
15. G.W.FraserとA.N.Bruntonらによる、”Lobster−ISS:An Imaging X−Ray All−sky Monitor for the International Space Station”、2002年1月、Kathryn A.Flanagan、Oswald H.Siegmundによる、Proc.SPIE,X−Ray and Gamma−Ray Instrumentation for Astronomy XII,vol.4497,pp.115−126
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の種々の実施形態、特徴、および発展は、参照が以下の図に対してなされるその詳細な説明の結果として、以下でより完全に理解されるであろう。
【0016】
非天文学的物体に対するロブスターアイ画像処理
ロブスターアイレンズの従来の応用は、天文学的な物体、すなわち無限大(x=∞)の物体に目を向けられていた。その後、球面収差が支配的になる。対照的に、非天文学的な物体、すなわちロブスターアイレンズ半径R(x〜R)と比較可能な有限の距離の物体の場合、画像部分がその位置を変化させるので、ピンボケ(defocusing)が支配的になる。これを説明するために、図1のロブスターアイレンズの幾何学的配置を考察する。ロブスターアイ画像処理の数式を導き出すために、点光源D、その画像B、および曲率中心Cを考察する。ローカル光軸(DC)はDをCに接続している。たった1つの軸を持つ典型的な光学レンズシステムとは対照的に、物体の点の連続体を考慮し、我々は、そのような軸の連続体を有するものとする。三角形ABCから数式(1)が得られる。また、三角形DACから数式(2)が得られる。
【0017】
【数1】
【0018】
【数2】
【0019】
ここで、θcは全外反射(TER)のカットオフ角、即ち、通常0.3°〜0.5°の範囲である。そのような小さなTER角に対して、数式(1)は、次のレンズ画像処理式(3)又は(4)に変形することができる。fについては数式(5)参照。
【0020】
【数3】
【0021】
【数4】
【0022】
【数5】
【0023】
これは、有限の撮影距離xでのロブスターアイレンズの画像数式である。数式(4)および(5)から、ピンボケΔyは、数式(6)となる。
【数6】
【0024】
それは小さな(x/f)比に対し顕著になりえる。例えば、R=6cm、f=3cm、およびx=1mに対して、Δy=0.9mmを得るが一方、x=50cm、および20cmに対しては、Δf=1.7mmおよび3.9mmをそれぞれ得る。ピンボケの相対的変化(より小さい)は、撮影距離の相対的変化と比較可能である。
【数7】
【0025】
例えば、距離(x)が1%変化すると、ピンボケは1%未満の変化となる。ピンボケスポット(Δ)は数式(8)の形式で表され、それは表1に要約される。
【数8】
【0026】
【表1】
【0027】
ロブスターアイレンズ画像処理式(3)又は(4)は、近軸条件下で導き出されが、それはθc<<1により自動的に満たされる。第2の仮定は、ロブスターアイチャネルが幅対長さ比(〜θc)をラジアン単位で持つことであったので、単一光軸のみが示される図1のように、1つの(又は三次元では2つの)TERだけが考慮される。事実、そのような軸をロブスターアイレンズのまわりのいかなる点光源にも提供することができる。したがって、光軸の群は、検出器表面の離散化(ピクセルの形態で)が提供される場合、連続体すなわち離散集合となる。
【0028】
ロブスターアイの幾何学的なアパチャー(開口又は口径)はπa2の領域(面積)を持ち、ここで、aは次式で表される半径である。これは表2に要約される。
【数9】
【0029】
【表2】
【0030】
ロブスターアイレンズの性能は、より高いaの値(よりよい収集力)およびより低いΔ値(より低いピンボケ、それはぼやけた画像を提供する)に対して優れているので、我々は、次の形でレンズ品質係数Qを導入することができる。
【数10】
【0031】
数式(8)及び(9)から、数式(8)を得る。すなわち、Qは距離xに比例する。距離が大きければ大きいほど、レンズ性能はより向上する。
【数11】
【0032】
レンズ倍率には、通常、横倍率(Mt)、角倍率(Mq)、および縦倍率(Ml)の3つがある。ここで、数式(12)参照。ここで、Mt値は図2に示されている。
【数12】
【0033】
図2は、ロブスターアイレンズと凸面鏡との類似点を示している。ロブスターアイの場合の実像を鏡の場合の虚像と置き換える必要がある以外は、画像処理式(4)も凸面鏡に有効なことが分かる。したがって、画像収差は、ロブスターアイの場合以外においては、両方の場合において同じ状態のままであり、近軸近似は自動的に満足されるので(θc<<1により)、三次の(ザイデル)幾何学的な収差は、ロブスターアイレンズの場合には非常に小さくなり、天文学的な場合(ここでx=∞)の球面収差まで減少される。
【0034】
アポディゼーション
ピンボケ又は他の幾何学的な(ザイデル)収差の場合には、アポディゼーション技術の適用により補正が可能である。アポディゼーションの一般観念はフーリエ光学を扱う多くの本で説明されており、最もよく知られているのは、〔文献番号1〕J.W.Goodman,“Introduction to Fourier Optics”である。その座標系を図3に示している。一次元の投射では、座標ξはピンボケ点Δの位置を示している。そのプロファイルは全外反射(TEF)の近傍ではフレネル反射に従う。実際上、我々は複数のエネルギッシュなX線ビームを持っている、すなわち、X線光子はモノエネルギッシュではないが、エネルギー分布を持っている。その結果、フーリエ光学用語における、点応答関数と等価なピンボケ点の関数のプロファイルは、図4に示すように鋭いエッジを持たない。
【0035】
角座標では、位置ξcは位置θcと等価であり、ここでθcはTERカットオフ角である。図1から数式(13)を得る。
【数13】
【0036】
フーリエ光学の数学的理論から、非コヒーレントシステムでは、点応答関数h(ξ)のモジュール2乗は、光学的伝達関数(OTF)のフーリエ逆変換であり、次式で表される。
【数14】
【0037】
ここで、(ξx,ξy)は、一般的な二次元の場合にはローカル焦点面の座標であり、したがって、カットオフ位置については、次式(15)及び(16)となる。
【0038】
【数15】
【0039】
【数16】
【0040】
ここで、h(ξx、ξy)は、正規化された点応答関数である。
【0041】
さらなる詳細は、Goodmanのフーリエ光学への紹介(Introduction to Fourier Optics)に見つけることができる。OTFのモジュール又は|OTF(fx、fy)|は変調伝達関数(MTF)と呼ばれている。アポディゼーション操作は次の関係式によって与えられる。
【数17】
【0042】
ここで、山記号付きIg(fx,fy)は、数式(16)のような、正規化された物体の二次元のフーリエ変換である。一方、山記号付きIi(fx,fy)は、図2のような点応答で畳み込まれた画像の幾何学的な強度分布のフーリエ変換である。|h(ξx,fy)|2は(ξx,fy)座標の滑らかな関数なので、その二次元のフーリエ変換も、空間周波数カットオフ値fcが、図5に示すように、数式(18)となるような、空間周波数座標(fx,fy)の滑らかな関数である。
【0043】
【数18】
【0044】
効果的なアポディゼーションを提供するために、我々は、式(5)の数値計算を提供する必要がある。ここで、Ij(ξx,ξy)はローカル焦点面で測定像強度分布であり、一方h(ξx,fy)は、ETR近傍におけるフレネル反射分布から解析的に算出することができる。次に、山記号付きIi(fx,fy)は、Iiから高速フーリエ変換(FFT)によって算出され、数式(17)は、相殺されたピンボケ効果により、
山記号付きIg(fx,fy)を計算して物体強度分布として数的に算出される。この種のアポディゼーションは、かなり人為的なアポディゼーション関数をフーリエ面に適用する規則的な光学系のアポディゼーションとは異なっている。ここで、アポディゼーション関数は、フレネル反射係数の物理的な角分布から得られた自然な形態を持っている。アポディゼーションのこの新しい方法は、|OTF|=MTFが無限大を除いてゼロを持たないので、非常に効果的であり、したがって、逆演算(5)は明確に定義される。
【0045】
ピンボケ効果の相殺の他の形態は、図6のように単純に機械的なズーミングによる、すなわち検出器面の移動によるΔy値の零調整によるものである。さらにまた、相補的な方法は、図1のようにローカル焦点面が単なるローカルな面であるので、焦点面の像面湾曲を補正することである。
【0046】
X線の角度分光計
X線源、サンプル、およびロブスターアイレンズの特定の幾何学的配置は、サンプルから反射されたX線の散乱角を規定している。図6に示すように、散乱角θは正反射からの角度の出発として定義される。光源Sにより発生した、X線の束の形態の、サンプルに入射する、x軸によって一次元投射で定義された、X線円錐ビームは、サンプルからロブスターアイレンズへ反射される(後方散乱される)。各X線は、入射角αおよび正反射角(これもα)によって規定される。後方散乱X線は、正反射のまわりを中心として円錐状に広がる。散乱X線の束として散乱した円錐は、サンプルの化学成分の種類または材料に応じた特定の散乱断面積によって規定されるが、多くはそのZ番号によって規定される。Z番号が高くなればなるほど、散乱円錐は狭くなる。1つの光線がロブスターアイレンズの中心O’に導かれ、半径R/2でその角度位置φのロブスターアイ半球に配置された検出器によって受け取られる。したがって、図6から得られるα、φ、およびθの間に、3つの数式の形である関係が存在する。
【0047】
【数19】
【0048】
ここで、α、φ、θの3つは未知である。それらを消去し、u=tanθおよびv=tanφを導入して、数式(20)を得る。
【数20】
【0049】
それは、xo=yo=y1に対して、数式(21)となる。
【数21】
【0050】
ここで、v=1/2およびφ=26.6°に対してu=0、次に、図1に示したようにθ2=0、一方v=(−1+√5)/2またはφ=31.7°に対してu=∞となる。また、v=0に対して、u=1およびθ3=45°=γ3となる。x=0に対してθ<0、次にθθ2=0、次に、θ>0、すなわち、角θは、数式(21)に対して図7に示すようにφの単調でほぼ直線の関数であることが分かる。
【0051】
我々は次の関係式(22)を見、それは、ほぼ線形であることが分かる。ここで近似傾斜係数は数式(23)である。
【0052】
【数22】
【0053】
【数23】
【0054】
したがって我々は、一挙に(すなわち瞬間に)サンプルの完全な角度特性を得ることができ、それは、「角度主役の分光計」という名を正当化するものである。図8に示すような60°すなわちπ/3の円錐角を有するロブスターアイレンズでは、検出器は、寸法δおよびスペースdを持っているので、デューティサイクルはd/δとなる。角分解能を1°とすると、検出器の数はN=60、および検出器間の距離すなわちピクセルサイズは、デューティサイクル70/30に対して303/130として割られた、δ+d=26mm/60=433マイクロメートルである。R=5cm、x=1mとすると、横倍率はMtc=1/41となり、433マイクロメートルの画像解像度に対して1.77cmの物体分解能が得られ、または、R=5cmおよびx=20cmに対して3.9mm物体分解能が得られる。
【0055】
図6のような平面状の試料の幾何学的配置は、単調で、図7のようにほぼ線形θ(φ)の関係を可能にする。対照的に、サンプルのいかなる点に対してもθ=0を常に得たい場合には、図9に示すように、サンプルの表面プロファイルを回転の楕円形状にする必要があり(ここでPおよびP’が楕円焦点)、楕円曲線はED−T軸のまわりに回転されるべきである。
【0056】
較正
散乱角θの包絡線は正反射角αのまわりにある。そのような包絡線は一般にαに依存する。そうでない場合には、システムはフーリエ用語を使用して角度不変光学系呼ばれる。システムが角度不変でなくても、角度分散はほぼサンプルのカテゴリー内で同じでありえる。そのような近似では、光源距離、サンプル距離、およびロブスターアイ距離のような幾何学的因子をすべて測定することを可能にする普遍的な較正手順を展開することができる。そのような場合、一般的な測定式には次の形がある、
【数24】
【0057】
ここで、入射X線ビームの強度Io(θ)は、すべての幾何学的因子に依存し(そして解析することが困難)、M(θ)は、Io(θ)から分離されるべきサンプルの未知の角度特性である。しかし、それを解析的に分離する代わりに、我々は次の形の較正曲線を創出する。
【数25】
【0058】
ここで、Mc(θ)は較正に使用された既知のサンプルの角度特性であり、Ic(θ)は、既知の角度の曲線(図7に示すような)によるこのサンプルに対する測定検出器強度である。数式(25)で数式(24)を割って、較正式(26)を得る。
【数26】
【0059】
我々は、完全な三次元の幾何学的配置に対するこの公式を容易に一般化することができる。この公式は、下記の少なくとも2つの方法で適用することができる。
1.角度分光学
2.コントラスト強化画像処理
【0060】
第1の事例は上で説明したが、第2の事例は以下のように説明することができる。図11のような物体(サンプル)の幾何学的配置を考慮する。より高いx値はより大きい角度θと等価であるので、高い正のx値すなわち高い正のφ値によって特徴づけられた位置に物体を配置すると、そのような物体の画像は、低いZ番号を持つそのような物体要素にのみ敏感になり、そのような物体のコントラストが強化されることになる。
【0061】
時間ゲーティングおよびX線凝視画像処理
ロブスターアイ検出器表面は半径R/2を有する半球に設置される、ここでRはロブスターアイレンズ半径である。該表面の各点Qは、図11に示すようなX線サンプルにあるそれと等価な点Pを持っている。
【0062】
点θは極座標(ρ,φ)を持ち、その等価点Pは直交座標(x,y)を持つ。図11に示すように、点Pが速度vで移動すると、その等価点Qも点Q’に移動する。速度をvとすると、点Pは時間t中に距離vtだけ移動する。特定の硬X線の場合、X線が点Pに「衝突する」と、特に小さなZ番号に対して、サンプルの内部で多重散乱が起こり、点Pから点P’への変位を発生させる。ロブスターアイ画像処理の数式を使用すると、距離PP’は数式(27)となり、数式(28)に還元される。
【0063】
【数27】
【0064】
【数28】
【0065】
ここでMtは横倍率である。R=6cmおよびx=1mに対して、Mt=1/41が得られる。検出器のピクセルサイズを100マイクロメートルとすると、物体面の等価な寸法は、4.1mmとなるが、1cmの変位さえ可能であるのでそれは現実的な値である。ロブスターアイとサンプル間の遅延時間は、x=l=1mに対して、次のようになる(ここでv=c)。
【数29】
【0066】
したがって、図12に示すように、パルス幅τはそのような距離に対して6.6nsより小さくなければならない。
【0067】
図12は、元の送信されたパルスおよび元の受信されたパルスの2つのパルスを示しており、後者のパルスは多重散乱部を含んでいる。δtを測定することにより、有機物か非有機物か、空気、金属等のようなサンプルの性質について推論することができる。当然、合成画像を得るためには多くのそのようなパルスを等間隔Δt0で送る必要がある。Z番号が小さければ小さいほど、時間的な変位値δtは大きくなる。時間ゲーティングは角度の多重化と相補的になりえる。
【数30】
【0068】
ここでv≒c=3×1010cm/s、又、δxは多重散乱による空間変位である。
【0069】
X線の一般的特性
X線は、ヒト組織および有機ポリマーのような軟質材を容易に貫通し、「密度射影」X線画像を生成すると一般に考えられている。他の一般的な認識は、X線が金属を貫通することができないということである。いずれの表現も正しくない。X線光子は、軟質の非金属物質との相互作用によって広く散乱され、それらのいくつかは、X線源の方へ後方に散乱される。そのような光子は弾道後方散乱光子と呼ばれている。同時に、60keV(すなわち波長λ=0.2オングストローム)の平均エネルギーを有するX線光子の18%は、1.422mm(56ミル)の鋼板を貫通する(図13を参照)。60以上keVのエネルギーを有するX線は所定の胸部X線に使用される。
【0070】
現在のキャピラリーX線の焦点調整光学系
X線の性質として、屈折によって焦点を結んで要素を生成することができない。X線と共に働く唯一の可能な方法は、入射の小さなグレージング角の下で滑らかな金属表面からのX線の反射を用いることである。古典的なX線反射光学系は、重く、かさばっていて(メートル規模)、高価で、位置合わせが難しかった。これは、長く、湾曲した、環状のキャピラリーに基づいた、Kumakov形X線焦点調整光学系の開発をもたらした[文献番号2および3]。非常に小さく重要なグレージング角(60keVのX線に対して≦3.6arc−minutes)および比較的大きな内側のキャピラリー径のために、キャピラリーは非常に長くなければならない。
【0071】
さらに、キャピラリー要素のかなりの厚みおよび該要素間のデッドスペースは、Kumakov形X線光学のフィルファクタをかなり減少させている。さらに高度なLE形焦点調整X線光学系は、グラススランプマイクロチャネルプレート(MCP)に基づいている。しかし、既存のLE光学系の動作のスペクトル域は、エネルギー≦4keV(すなわちλ=3.1オングストローム)を有するX線に限定されている[文献番号4−6]。より小さく重要なグレージング角を有するより硬いX線は、グラスMCPのチャネルの小さな長さ対幅比(アスペクト比)のために該グラスMCPによって効率的に焦点を結ぶことができない[文献番号4−8]。
【0072】
ロブスターアイX線焦点調整光学系
ロブスターは、目の外部にわたって湾曲した、箱状の正方形断面の個眼のアレイを通して(アイレット)世界を見ている。
【0073】
甲殻類の目では、そのセルは短く、幅の約2倍の長さの長方形である。かなり速く焦点を形成するために、光は広範囲の入射角にわたって反射される。硬X線の応用では、セル長は幅の約100倍である必要があるが、光学的な原理は甲殻類の目の原理と同じままである。それは、プレートの2つの直交系の合併と円筒状よりむしろ球状の対称性の採用とが好ましい軸を取り除き、視野(FOV)を所望の大きさにできるという点を除いて、Schmidtの二次元装置と密接に関係がある。ロブスターの目は、例えば180°よりわずかに大きなFOVを持っている。
【0074】
各個眼はすべての角度から目に入る小量の光を捕らえ、多数の個眼からの光は画像を形成するために焦点を調整される。物理光学株式会社の物理学者は、硬X線の焦点を調整するために、LE構造で体系づけられた長い中空金属マイクロチャネルにこの構造をコピーした[文献番号9](図14Aおよび14Bを参照)。
【0075】
LEの幾何学的配置では、X線反射が非常に低い角度で起こるように配置することが可能である。12arc−minutesより小さい角度では、例えば金皮膜の反射率は高く、その結果入射光束はほとんど失われない。図15は、同一の十字形のスポットに反射された(焦点を合わされた)小さなグレージング角を持つ平行X線を示している。初めに、X線は、正方形の長い中空セルのアレイに衝突して共通の点に集中し、X線の焦点をその単一の点上に結ぶ。正方形のトンネルのような形をしたどんな単一要素セルにも入るX線は、2つの反射壁からはね返り、隣接セルから出現するビームと平行に出現する。反射された平行X線束のスポットの中央部の強度は、入射X線束の何千倍も大きくなりえる。真の焦点調整装置として、LE光学系は、拡散した背景に対して物体を有効に画像化でき、それによってぼんやりした物体の観測をも向上させることができる。
【0076】
X線は、通常1又は3の奇数の反射で、検出器の焦点面へ直接到達する。2つの直交壁から反射するX線は共通の焦点に送られる。図15に示すように、たった1つの壁に衝突したX線は最後には線になり、残りのX線は真っすぐに通り抜ける。反射しないで通過する光線を含む偶数回反射した光線は、背景雑音に寄与することになる。
【0077】
プラスチックおよび金属からのX線後方散乱
ロブスターアイX線画像処理システムのX線発生器が、水面下の物体に、40から120keV(すなわち波長λ=0.31から0.1オングストローム)までの平均的X線エネルギーを備えた、130kVp(キロボルトピークエネルギー)から180kVpまでのX線スペクトルを照射する場合、それは2つの著しい相互作用を生み出す、すなわち(i)コンプトン散乱、および、(ii)光電効果である[文献番号10および11]。異なる平均局所原子番号(Z番号)および異なる電子密度を備えた材料は、コンプトン散乱画像では異なる強度値を持つ[文献番号12]。これらの相互作用の相対的確率は、Z番号および材料の電子密度の関数である。光電効果では、X線光子は吸収され、電子が放射される。約60keV(0.2オングストローム)以下のX線光子エネルギーについては、Z番号が高い材料ほど、より高い光電子断面積およびより低いコンプトン散乱断面積を持っている。低いZ番号の材料については、それはちょうど反対である。金属のような高いZ番号を持つ材料では、X線照明光子の大部分は光電効果によって材料に吸収され、コンプトン相互作用によって散乱する光子はほとんどない。
【0078】
したがって、金属材料は、凝視画像処理X線検査システムの画像では、低い強度値を持つだろう。対照的に、プラスチックのような材料は、より低いZ番号および中間の電子密度を持っている。プラスチックが凝視画像処理X線検査システムによって撮像される場合、多くのX線照明光子がコンプトン相互作用を持ち、その光子の中には、LE検出器によって後方散乱させられ、記録されるものもあり、そしてこれは、冷却されたCCDカメラ(図16を参照)に接続された発光スクリーンへX線を集束させるLE光学系を含んでいる。したがって、コンプトン後方散乱画像処理(CBI)では、低いZ番号の材料は後方散乱させられたX線光子の高強度値によって表される。
【0079】
現在の後方散乱技術
横方向移動ラジオグラフィ(LMR)[文献番号10および11]のような、最先端技術のX線コンプトン後方散乱画像処理(CBI)技術[文献番号11から14]は、土壌の表面、表面下、または土壌の内部構造を撮像して、地雷を検出することができる。LMRシステムは、物体調査用に、物体の原子と一度だけ衝突する単一後方散乱X線光子(SBP)、および多重後方散乱光子(MBP)を撮像するための、別個の検出器を持っている。SBPとMBPの番号は一般に低く、ある程度幾何学的重複があるため、2つの画像には、低い信号対雑音比(SNR)と分解能、および重度の幾何学的歪がある。LMR(他のすべてのCBI技術と同様に)は、硬X線を集束させることができない。X線画像の形成は、X線の走査型ペンシルビーム、および光電管(PMT)を備えた、高価で、非常に大きな、広領域X線検出器に依存する。LMRの分解能、コントラスト、FOV、およびSNRは、走査型ペンシルビームの強度、大きさ及び速度によって制限されている。LMRは、1m2/min.[文献番号11から12および14]に制限される低い取得率と、長く複雑な画像再構成プロセスを持っている。走査型ペンシルビームを発生させることは、非効率であり、それは、発生させたX線のわずか0.01%しか使用せず、大きな慣性モーメントを備えた、重い、鉛の、速く回転するチョッパーホイールまたは回転コリメータを必要とする。したがって、最先端技術のX線後方散乱システムは、例えば、埋設地雷探知用の必要条件を満たしていない。
【0080】
凝視デジタルX線画像処理検出器
凝視画像処理X線検査システムのための凝視デジタル検出器の実施形態は、シリコンウエハから微小化され、ロブスターアイX線焦点調整光学の半球の焦点面と一致する半球形状にスランプされた、マイクロチャネルプレート(MCP)を含んでいる。シリコンMCPのマイクロチャネルの大きさ、形状および位置は、フォトリソグラフィー法によって決定され、85%を超える高いフィルファクタを提供するだろう。
【0081】
既存の鉛ガラスMCPは、高コストで、重く、領域が制限され、硬質であり、マイクロチャネルの周期性またはその壁の平滑性を維持しない。この後者は、MCP構造の幾何学配置、およびチャネル壁の表面の粗さによって実際に決定される、焦点調整性能の重要な低下を引き起こす[文献番号6および15]。
【0082】
SOTA鉛ガラスMCPとは対照的に、シリコンMCPは、低コストで、軽く、領域が広く、機械的に安定している。シリコンMCPは、シリコンウエハの異方性エッチング(ECANE)によって製作され、それらは次に、望ましい球形状へスランプするだろう。高アスペクト比マイクロチャネルは、硬X線に有効なNaIまたはCsI(Tl)のような材料を発光させることで充填されるだろう。
【0083】
この凝視デジタル検出器(SDD)用のMCPの製作、および付随の微小化およびスランプする技術は以下の工程を含む。
(1)孔径、形状、およびアレイ内での位置は、フォトリソグラフィー法によって決定される。その後、孔は、Si単結晶の基板ウエハによって、異方的にエッチングされる。
(2)微小化されたSi MCPは、孔壁を酸化させることと組み合わされた、特別の熱サイクル工程によって所望の球形状にスランプされる。
(3)孔のメタライゼーションは、化学真空蒸着(CVD)成長によって達成され、連続した、滑らかな、X線反射孔壁を形成するだろう。壁のSiO2層により、高いZ番号(ガラスMCP技術とは対照的に)を持つ非常に様々な金属が使用できる。
(4)SDDは、直径150mm(6インチ)を超える、一般に利用可能で、安価な、単結晶Siウエハから製造される。
(5)シリコンの融解温度が、NaIまたはCsI(Tl)のような発光材のそれよりほぼ2倍高い1400℃を超えるという事実に基づいて、真空中のスランプされたシリコンMCPのマイクロチャネルへ発光材を溶かすこと。
【0084】
図17は、SDDシステムの構造および動作原理を示している。SDDは、信号読み出し用のマイクロチャネルのガイド構造に基づいており、テーパ形光ファイバによって最先端技術のフルフレームCCDと接続される。テーパ形光ファイバの入力面は、半球の形状を持ち、ロブスターアイX線の焦点調整光学の半球の焦点面と一致する。テーパの出力面はフラットで、CCDマトリックスに取り付けられている。SDDは、85%を超えるフィルファクタを持つ、高アスペクト比のガイドマイクロチャネルを含み、その壁は反射アルミニウム層で覆われ、例えば、ヨウ化ナトリウム発光材で充填されている。この材料は、90%を超える量子効率で硬X線光子を吸収し、それらを可視光線に変換する。その結果、Al−clad NaI(Tl)コアは高アスペクト比の光導管構造であり、それは、室温でCCDアレイによって十分検出できるほど明るい(数百平方マイクロメートルのマイクロチャネル断面積のまさに狭い領域に集中された)発光フラッシュを送り、高精度でX線照射のエネルギー量を識別する。
【0085】
NaI(Tl)で発生させた可視光線スパークの強度は、100keV光子につき約4,000の可視光線光子率で、そのエネルギーに比例する。NaI(Tl)の減衰長は例えば、60keV光子(波長λ=0.2オングストローム)で0.5mmであり、100keV光子(波長λ=0.12オングストローム)で1.8mmである。
【0086】
マイクロチャネル内のNaI(Tl)シンチレータによって放射された光は、光ファイバの光導管と同じように、ピクセル間で損失またはクロストークのない対応するCCDピクセルの高感度な領域へ向かう。照射の終わりで、CCDの活性領域の電荷は、フレーム記憶装置へ迅速に(約40ms)転送されるだろう。このように、SDDは光子計数とエネルギー識別を行う。X線光子のエネルギーを識別するために、ほんの少数のイベントだけが各フレーム中に登録されるように、SDDのCCDは高速でフレームを登録しなければならないが、シンチレータ中の各スパークの強度は別々に測定することができる。
【0087】
ロブスターアイX線画像処理システムのX線焦点調整光学系の製作
本発明では、すべての研磨および表面仕上げは、X線ロブスターアイの「平らな」部品が容易にアクセス可能である時間中に、該X線ロブスターアイの「平らな」部品で行われるが一方、大多数の先行技術では、これらの作業行はアクセス可能性が乏しいので行うことができない。高い表面平坦度を達成するのに必要な研磨および仕上げ作業および高性能X線ロブスターアイの形成に極めて重要低い表面粗さは、本発明の初期の製作中のすべての素材表面の完全なアクセス可能性により達成される。
【0088】
例えば、大半の先行技術では、「コーナ」は、研磨および表面仕上げのためにアクセスすることが困難または不可能であるが一方、硬X線光学系に必要な完全に研磨および表面仕上げされた90度のコーナは、本発明の構成では本来備わっており、そして、新しいロブスターアイの最終組立工程中に自動的に達成される。
【0089】
前述の先行技術[文献番号4−6]において、それは、表面上は同じであるように見えるが、重大な「半分のステップ」、すなわち、本発明の場合のようにロブスターアイレンズを形成する、X字形の(十字形)配置、または2つの水平および垂直層の単一の三次元の網状構造への差し込みが欠けている。
【0090】
本発明では、先細りの台形水路は、連続的に正方形断面を縮小することにより三次元的に形成されるので、「理想的な」ロブスターアイの形状因子を達成することができる。
【0091】
本発明はロブスターアイ形状を「生成する」というよりもむしろ、X線光学の厳しい要件を維持しながらロブスターアイ形状を「作る」ことであることが強調されるべきであろう。
【0092】
本発明で具体化された新規で独特な製作および組立工程の結果は、高い幾何学的な精度のロブスターアイ構造と、うまくX線ミラーを製作するのに必要とされる表面仕上げという結果をもたらす。
【0093】
本発明のロブスターアイ製作のアーキテクチャ−上の概念を図18に示している。薄いフラットリブは、所定の角度および間隔で作られた「ナイフカット」によって、半球体ドーム(図19を参照)から抜き出される。図18で、4つのリブが抜き出されるのが分かる。
【0094】
このえぐり抜かれた半球体ドーム(それ自体は初めに球体から抜き出されたものであるが)は、本発明の製作のアーキテクチャの基礎を形成する。球からこの部分的中空部を薄く切る切断面は、所定の角度および間隔で、ドームを二分する、該「ドーム」の円形部分の内周のまわりの点AおよびA’、および、該円形部分の外周のまわりの点BおよびB’によって定義された線分から放射するように、配列される、その結果、フラットリブの各々が環形のセグメントとなる複数のフラットリブが得られる。
【0095】
図20に示すような雄雌リブの幾何学的配置は、それらの嵌合スロットの深さが、雄リブで長さu、雌リブで長さu’のようなものであり、ここで、uはu’に等しい(u=u’)。雄雌リブは、X字形に配置され差し込まれたときに、雄雌リブの上部の湾曲縁が同一平面上にあり、雄雌リブの下部の湾曲縁も同一平面上にあるような方法で相互に「とまりばめ」されるように、雄リブの高さを2u、雌リブの高さを2u’にしてある。一旦この方法で組立てられると、元来台形の空胴を「埋めていた」「不要な」立体部分がなくなり、元の「半球体ドーム」は「骨格状に」再構成される。この正確な組立ては、雄リブのスロットは幅sで雌リブのスロットは幅s’であり、幅sがs’と等しく(s=s’)なるように、および双方の雄雌リブは厚みtであり、幅sおよびs’が幅tと等しく(s=s’=t)なるようにしてあるという事実により可能になる。しかし、製造公差は、物理的実現においてリブのスロットの実際の幅は幅s,+0.0254mm(0.001インチ)/−0.000mm(0.000インチ)、一方リブの実際厚さは幅t’,+0.000mm(0.000インチ)/−0.0254mm(0.001インチ)である。リブ厚(t)のこの極くわずかなアンダーサイジングは、リブのスロット(s,s’)の極くわずかなサイジングと共に、各雄リブの本体が雌リブのスロットにちょうど辛うじて滑り込むことを可能にし、かつ各雌リブの本体が雄リブのスロットにちょうど辛うじて滑り込むことを可能にし、雄雌リブの90度(90°)の十字形の差し込みを可能にしている。
【0096】
本発明の、4対のウエハのような雄雌リブのX字形の(十字形)配置によって形成された「4x4」ロブスターアイを図21に示している。「雄」リブの1つは嵌合される前の段階で示されている。雄リブが、該雄リブを受け入れるように設計されている4つの「雌」リブと「嵌合する」ように、該雄リブをそれより下のほぼ完全な構造物の中に垂直に下げることで、「4×4」ロブスターアイの形成が完成する。
【0097】
ここに開示したものはX線画像化技術において著しい進歩を構成することが理解されるだろう。後方散乱X線用途へのロブスターアイレンズ技術の新規な利用は、例えば、貨物専用コンテナの検査、埋設地雷の探知、および医療診断においてさえ、多くの画像処理シナリオに有利な応用を持つ著しい改善を提供する。さらに、独特なロブスターアイ製作概念は、非常に効率的な比較的容易で低価格の組立ておよび特にX線画像化用途ための正確な構造を可能にする。さらに、ロブスターアイ光学系および検出器物理学のよりよい理解は、結果として得られた画像発生を改善する好機および分光学のような新しい応用にその構造を用いる好機を提供するものである。したがって、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲およびそれらの等価物によってのみ制限されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】図1は、有限の距離にある物体に対するロブスターアイレンズ動作の幾何学的配置の略図である。
【図2】図2は、物体までの距離の関数として、類推的に凸面鏡に対するLEレンズの横倍率Mtの依存を示すグラフである。
【図3】図3は、アポディゼーション用に示した、一次元投射におけるロブスターアイレンズ画像処理システムのローカル軸である。
【図4】図4は、全外反射近傍においてフレネル反射分布に従う、点応答関数の2乗の一次元分布モジュールである。
【図5】図5は、光学的伝達関数のモジュールの一次元分布である。
【図6】図6は、X線源、サンプル、およびロブスターアイレンズの一次元の幾何学的配置である。
【図7】図7は、数式(21および22)のために、角度φの検出器位置の関数として散乱角θの依存を示すグラフである。
【図8】図8は、円錐角60°を持つロブスターアイ検出器アレイの断面図である。
【図9】図9は、θ=0に対するX線源およびロブスターアイ中心の特定の幾何学的配置を示す図であり、ここでサンプル表面はPP’軸のまわりで回転楕円であり、点PおよびP’は楕円焦点である。
【図10】図10は、散乱角の幾何学的配置を示す図である。
【図11】図11は、ロブスターアイ検出器および物体の三次元の幾何学的構成である。
【図12】図12は、物体へ送信されたX線パルスおよび多重散乱部分を含む後方散乱させられたX線の受信パルスの時系列チャートである。
【図13】図13は、X線エネルギーの関数として、0.91mm(36ミル)、1.22mm(48ミル)、1.42mm(56ミル)、1.65mm(65ミル)、および1.91mm(75ミル)厚のスチール金属板の計算されたX線透過のグラフである。
【図14】図14は、図14Aおよび14Bから成り、好ましい実施形態で使用される独特なロブスターアイ構造の図および写真である。
【図15】図15は、ロブスターアイ光学系の焦点面における計算された強度分布のグラフである。
【図16】図16は、凝視画像処理X線検査システムの検出モジュールの技術者の概念図である。
【図17】図17は、凝視デジタル検出器(SDD)の構造および動作原理の図である。
【図18】図18は、図14Aおよび14Bのロブスターアイ構造のフラットリブの製作概念を示す。
【図19】図19は、図14Aおよび14Bのロブスターアイ構造のフラットリブの製作概念を示す。
【図20】図20は、図14Aおよび14Bのロブスターアイ構造のフラットリブの製作概念を示す。
【図21】図21は、図14Aおよび14Bのロブスターアイ構造のフラットリブの製作概念を示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロブスターアイX線焦点調整技術を使用した、改善されたX線撮像システムに関する。
【背景技術】
【0002】
多くの産業および軍事的応用が、潜伏地、壁、地面、ボートの隔壁、およびコンテナ船を通した、物体の非侵入性検査の能力を必要としている。このため、政府機関は、地面、壁、および隔壁の後ろの、視界から隠された材料を正確に解析し視覚化することができるポータブル(すなわち携帯用)器機を求めている。検査装置は、全面的な責任能力を確保しつつ、検査要員を危険にさらしてはならず、操作するのに簡単でなければならず、商用財産と私財の破壊を最小限にする必要がある。当面の応用は、不法貨物および遠洋航行のコンテナ船での他の密貿易、空港および他の検問所での大型船舶および小型船舶への乗船、さらには地雷および簡易爆発装置(IED)を検査要員によって探知することである。
【0003】
壁を通した又は地面を通した検査の方法は、光学、マイクロ波、音響、およびX線技術を含んでいる。光学的熱感知画像処理システムは、壁と同一の温度を持つ隠された物体を見ることができない。音響システムは金属壁を十分に貫通せず、該システムの低周波は作業者および密航者にとって危険を伴う。マイクロ波レーダーは金属隔壁を貫通することができない。最先端技術のX線走査BISは、壁および内部の建築構造物を貫通することができるが、それらはかさばっていて、高価で、とりわけ有害である。X線画像を組立てるために、現在のBIS(後方散乱画像処理センサ)は、光電子増倍管(PMT)およびX線走査型ペンシルビームを備えた、高価で、重く、視界が限られたシンチレーション検出器を使用している。走査型ペンシルビームを発生させることは、作業者および壁の背後に隠れている人にとって非能率的で危険でもある。これは安全な携帯器機、ひとりで持ち運べる器機とはいえない。したがって、最先端技術のX線検査システムは、船の客室検査に対する要件も満たしていない。
【発明の開示】
【0004】
これらの限界を克服するために、本発明は、地下、コンテナの中、壁および隔壁等の背後に隠された物体のリアルタイムで安全な凝視型コンプトン後方散乱X線検出のために、独特なロブスターアイ(LE)構造、X線発生器、結晶シンチレータ、CCD(すなわち増感CCD)、および画像処理モジュールに基づいた、新しいロブスターアイX線画像処理システムを組み込んでいる。既存の走査型ペンシルビームシステムとは対照的に、ロブスターアイX線画像処理システムの真の焦点が調整されたX線光学系は、X線発生器(凝視型)からの広いオープンコーンビームによって照射されたシーン全体から、弾道コンプトン後方散乱光子(CBP)を同時に得る。ロブスターアイX線画像処理システムは、40から120keVの範囲(すなわち波長λ=0.31から0.1オングストローム)において、現在のBIS装置よりも何千倍も多い後方散乱硬X線を収集する(焦点に集める)ので、高感度で高信号対雑音比(SNR)であり、金属壁等を貫通する能力を提供する。ロブスターアイX線画像処理システムの収集効率を最適化して、放射されるX線パワーを低減し、装置を小型化する。この装置は、X線ベースの検査の要件、すなわち地面、金属、および他の隔壁を通したX線の貫通、検査要員の安全性、および人による可搬性を満足する。ロブスターアイX線画像処理システムの重要な利点は、次の考察が満足された場合に、人間の安全性を確保しながら、それが金属を含む、地面、壁、隔壁、および船体を貫通することができる点にある。
【0005】
ロブスターアイX線画像処理システムの構成は次の考察に基づいている。
・後方散乱に最適なエネルギー範囲は、所定の医療X線胸部検査と同じ40から120keVであり、50keV(すなわちλ=0.25オングストローム)のX線光子の42%は、0.762mm(30ミル)のスチール壁、(2.54cm(1インチ)のプラスチック、または20.32cm(8インチ)の乾燥木と等価)を貫通する。
・検査要員のX線照射の総線量は重大な問題である。この線量は、光子の数とそのエネルギーとの関数である。予備推定では、貨物検査用のロブスターアイX線画像処理システムの作業者等は、天然の放射線レベルと同程度の放射線を受けるであろう。
【0006】
貨物検査のためのロブスターアイX線画像処理システムの操作は、以下のリアルタイムプロセスを含んでいる。
・遮蔽物の背後にある物体に、オープンコーン状のX線を照射すること。
・後方散乱弾道X線光子を集めること。
・多数のCCDフレームの内に蓄積された情報を処理すること。
・高い角度分解能で、隠された物体の軟X線画像を取り出すこと。
【0007】
現在のアプローチに関し、開示したロブスターアイX線画像処理システム技術の利点は、以下のことを含んでいる。
・作業者にとって安全な照射量で、金属および他の壁を通ったコンプトン後方散乱を観察する。
・凝視により、すなわち走査しないで、FOV(視野)全体にわたるX線画像を瞬時に得る。
・既存の非常に大きなペンシルビーム走査型システムとは対照的に、X線発生器からのすべてのX線光束を利用する。
・X線CBPの遠隔検出用に、高い角度分解能を持っている。
・拡散したバックグラウンドと比較して焦点のX線強度を著しく増強し、したがって、はるかに低い安全なX線強度レベルにもかかわらず、他のX線センサよりも著しく優れたSNRおよび感度を持っている。
・携帯型で、ひとりで運ぶことができ、コスト効率の良い構成要素と技術を使用して製作しやすいことが好ましい。
【0008】
ロブスターアイX線画像処理システムは、IEDのリアルタイムでの(待ち時間なし)検出、又はコンプトン後方散乱光子を用いた、コンテナ、トラック、大型船舶および小型船舶中の密輸品の壁を通した画像処理の必要性をまさに満たしている。ロブスターアイ(LE)X線光学系には真の焦点調整能力があるため、このX線は金属壁を貫通し、検査員にとって安全で、分解能およびSNRを高めている。
【0009】
開示した実施形態の最も重要な特徴は、ロブスターアイレンズ構造に対する非常に革新的な製作および組立て概念である。この概念により、フラット部に対して研磨および表面処理をすべて実行することができ、真の90度のコーナおよび高い幾何学的精度を有する、完璧に形成されたLE構成を達成している。
【0010】
本発明の他の態様は、後方散乱ターゲットの近似位置および入射X線のエネルギー分布に起因して焦点がずれることに対する補正を含む、ロブスターアイレンズの光学特性に関する。ロブスターアイレンズは、壁材を分析するのに有用であってもよく、ロブスターアイレンズの分光計としての使用も開示している。
【0011】
ここに開示した新しい画像処理システムは、医学的診断、および地雷探知等の軍事利用にも有益な応用を見出している。
【0012】
以下の参照文献は、対応する番号によって本書に引用される。
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13. W.Niemannらによる、“Detection of Buried Landmines with X−Ray Backscatter Technology”、2002年10月、The e−Journal of Nondestructive Testing,vol.7,no.10、www.ndt.net/index.html
14. G.J.Lockwoodらによる、“Bomb Detection Using Backscattered X−Rays”、1999年、SPIE Proceedings,vol.3577,pp.53−61
15. G.W.FraserとA.N.Bruntonらによる、”Lobster−ISS:An Imaging X−Ray All−sky Monitor for the International Space Station”、2002年1月、Kathryn A.Flanagan、Oswald H.Siegmundによる、Proc.SPIE,X−Ray and Gamma−Ray Instrumentation for Astronomy XII,vol.4497,pp.115−126
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の種々の実施形態、特徴、および発展は、参照が以下の図に対してなされるその詳細な説明の結果として、以下でより完全に理解されるであろう。
【0016】
非天文学的物体に対するロブスターアイ画像処理
ロブスターアイレンズの従来の応用は、天文学的な物体、すなわち無限大(x=∞)の物体に目を向けられていた。その後、球面収差が支配的になる。対照的に、非天文学的な物体、すなわちロブスターアイレンズ半径R(x〜R)と比較可能な有限の距離の物体の場合、画像部分がその位置を変化させるので、ピンボケ(defocusing)が支配的になる。これを説明するために、図1のロブスターアイレンズの幾何学的配置を考察する。ロブスターアイ画像処理の数式を導き出すために、点光源D、その画像B、および曲率中心Cを考察する。ローカル光軸(DC)はDをCに接続している。たった1つの軸を持つ典型的な光学レンズシステムとは対照的に、物体の点の連続体を考慮し、我々は、そのような軸の連続体を有するものとする。三角形ABCから数式(1)が得られる。また、三角形DACから数式(2)が得られる。
【0017】
【数1】
【0018】
【数2】
【0019】
ここで、θcは全外反射(TER)のカットオフ角、即ち、通常0.3°〜0.5°の範囲である。そのような小さなTER角に対して、数式(1)は、次のレンズ画像処理式(3)又は(4)に変形することができる。fについては数式(5)参照。
【0020】
【数3】
【0021】
【数4】
【0022】
【数5】
【0023】
これは、有限の撮影距離xでのロブスターアイレンズの画像数式である。数式(4)および(5)から、ピンボケΔyは、数式(6)となる。
【数6】
【0024】
それは小さな(x/f)比に対し顕著になりえる。例えば、R=6cm、f=3cm、およびx=1mに対して、Δy=0.9mmを得るが一方、x=50cm、および20cmに対しては、Δf=1.7mmおよび3.9mmをそれぞれ得る。ピンボケの相対的変化(より小さい)は、撮影距離の相対的変化と比較可能である。
【数7】
【0025】
例えば、距離(x)が1%変化すると、ピンボケは1%未満の変化となる。ピンボケスポット(Δ)は数式(8)の形式で表され、それは表1に要約される。
【数8】
【0026】
【表1】
【0027】
ロブスターアイレンズ画像処理式(3)又は(4)は、近軸条件下で導き出されが、それはθc<<1により自動的に満たされる。第2の仮定は、ロブスターアイチャネルが幅対長さ比(〜θc)をラジアン単位で持つことであったので、単一光軸のみが示される図1のように、1つの(又は三次元では2つの)TERだけが考慮される。事実、そのような軸をロブスターアイレンズのまわりのいかなる点光源にも提供することができる。したがって、光軸の群は、検出器表面の離散化(ピクセルの形態で)が提供される場合、連続体すなわち離散集合となる。
【0028】
ロブスターアイの幾何学的なアパチャー(開口又は口径)はπa2の領域(面積)を持ち、ここで、aは次式で表される半径である。これは表2に要約される。
【数9】
【0029】
【表2】
【0030】
ロブスターアイレンズの性能は、より高いaの値(よりよい収集力)およびより低いΔ値(より低いピンボケ、それはぼやけた画像を提供する)に対して優れているので、我々は、次の形でレンズ品質係数Qを導入することができる。
【数10】
【0031】
数式(8)及び(9)から、数式(8)を得る。すなわち、Qは距離xに比例する。距離が大きければ大きいほど、レンズ性能はより向上する。
【数11】
【0032】
レンズ倍率には、通常、横倍率(Mt)、角倍率(Mq)、および縦倍率(Ml)の3つがある。ここで、数式(12)参照。ここで、Mt値は図2に示されている。
【数12】
【0033】
図2は、ロブスターアイレンズと凸面鏡との類似点を示している。ロブスターアイの場合の実像を鏡の場合の虚像と置き換える必要がある以外は、画像処理式(4)も凸面鏡に有効なことが分かる。したがって、画像収差は、ロブスターアイの場合以外においては、両方の場合において同じ状態のままであり、近軸近似は自動的に満足されるので(θc<<1により)、三次の(ザイデル)幾何学的な収差は、ロブスターアイレンズの場合には非常に小さくなり、天文学的な場合(ここでx=∞)の球面収差まで減少される。
【0034】
アポディゼーション
ピンボケ又は他の幾何学的な(ザイデル)収差の場合には、アポディゼーション技術の適用により補正が可能である。アポディゼーションの一般観念はフーリエ光学を扱う多くの本で説明されており、最もよく知られているのは、〔文献番号1〕J.W.Goodman,“Introduction to Fourier Optics”である。その座標系を図3に示している。一次元の投射では、座標ξはピンボケ点Δの位置を示している。そのプロファイルは全外反射(TEF)の近傍ではフレネル反射に従う。実際上、我々は複数のエネルギッシュなX線ビームを持っている、すなわち、X線光子はモノエネルギッシュではないが、エネルギー分布を持っている。その結果、フーリエ光学用語における、点応答関数と等価なピンボケ点の関数のプロファイルは、図4に示すように鋭いエッジを持たない。
【0035】
角座標では、位置ξcは位置θcと等価であり、ここでθcはTERカットオフ角である。図1から数式(13)を得る。
【数13】
【0036】
フーリエ光学の数学的理論から、非コヒーレントシステムでは、点応答関数h(ξ)のモジュール2乗は、光学的伝達関数(OTF)のフーリエ逆変換であり、次式で表される。
【数14】
【0037】
ここで、(ξx,ξy)は、一般的な二次元の場合にはローカル焦点面の座標であり、したがって、カットオフ位置については、次式(15)及び(16)となる。
【0038】
【数15】
【0039】
【数16】
【0040】
ここで、h(ξx、ξy)は、正規化された点応答関数である。
【0041】
さらなる詳細は、Goodmanのフーリエ光学への紹介(Introduction to Fourier Optics)に見つけることができる。OTFのモジュール又は|OTF(fx、fy)|は変調伝達関数(MTF)と呼ばれている。アポディゼーション操作は次の関係式によって与えられる。
【数17】
【0042】
ここで、山記号付きIg(fx,fy)は、数式(16)のような、正規化された物体の二次元のフーリエ変換である。一方、山記号付きIi(fx,fy)は、図2のような点応答で畳み込まれた画像の幾何学的な強度分布のフーリエ変換である。|h(ξx,fy)|2は(ξx,fy)座標の滑らかな関数なので、その二次元のフーリエ変換も、空間周波数カットオフ値fcが、図5に示すように、数式(18)となるような、空間周波数座標(fx,fy)の滑らかな関数である。
【0043】
【数18】
【0044】
効果的なアポディゼーションを提供するために、我々は、式(5)の数値計算を提供する必要がある。ここで、Ij(ξx,ξy)はローカル焦点面で測定像強度分布であり、一方h(ξx,fy)は、ETR近傍におけるフレネル反射分布から解析的に算出することができる。次に、山記号付きIi(fx,fy)は、Iiから高速フーリエ変換(FFT)によって算出され、数式(17)は、相殺されたピンボケ効果により、
山記号付きIg(fx,fy)を計算して物体強度分布として数的に算出される。この種のアポディゼーションは、かなり人為的なアポディゼーション関数をフーリエ面に適用する規則的な光学系のアポディゼーションとは異なっている。ここで、アポディゼーション関数は、フレネル反射係数の物理的な角分布から得られた自然な形態を持っている。アポディゼーションのこの新しい方法は、|OTF|=MTFが無限大を除いてゼロを持たないので、非常に効果的であり、したがって、逆演算(5)は明確に定義される。
【0045】
ピンボケ効果の相殺の他の形態は、図6のように単純に機械的なズーミングによる、すなわち検出器面の移動によるΔy値の零調整によるものである。さらにまた、相補的な方法は、図1のようにローカル焦点面が単なるローカルな面であるので、焦点面の像面湾曲を補正することである。
【0046】
X線の角度分光計
X線源、サンプル、およびロブスターアイレンズの特定の幾何学的配置は、サンプルから反射されたX線の散乱角を規定している。図6に示すように、散乱角θは正反射からの角度の出発として定義される。光源Sにより発生した、X線の束の形態の、サンプルに入射する、x軸によって一次元投射で定義された、X線円錐ビームは、サンプルからロブスターアイレンズへ反射される(後方散乱される)。各X線は、入射角αおよび正反射角(これもα)によって規定される。後方散乱X線は、正反射のまわりを中心として円錐状に広がる。散乱X線の束として散乱した円錐は、サンプルの化学成分の種類または材料に応じた特定の散乱断面積によって規定されるが、多くはそのZ番号によって規定される。Z番号が高くなればなるほど、散乱円錐は狭くなる。1つの光線がロブスターアイレンズの中心O’に導かれ、半径R/2でその角度位置φのロブスターアイ半球に配置された検出器によって受け取られる。したがって、図6から得られるα、φ、およびθの間に、3つの数式の形である関係が存在する。
【0047】
【数19】
【0048】
ここで、α、φ、θの3つは未知である。それらを消去し、u=tanθおよびv=tanφを導入して、数式(20)を得る。
【数20】
【0049】
それは、xo=yo=y1に対して、数式(21)となる。
【数21】
【0050】
ここで、v=1/2およびφ=26.6°に対してu=0、次に、図1に示したようにθ2=0、一方v=(−1+√5)/2またはφ=31.7°に対してu=∞となる。また、v=0に対して、u=1およびθ3=45°=γ3となる。x=0に対してθ<0、次にθθ2=0、次に、θ>0、すなわち、角θは、数式(21)に対して図7に示すようにφの単調でほぼ直線の関数であることが分かる。
【0051】
我々は次の関係式(22)を見、それは、ほぼ線形であることが分かる。ここで近似傾斜係数は数式(23)である。
【0052】
【数22】
【0053】
【数23】
【0054】
したがって我々は、一挙に(すなわち瞬間に)サンプルの完全な角度特性を得ることができ、それは、「角度主役の分光計」という名を正当化するものである。図8に示すような60°すなわちπ/3の円錐角を有するロブスターアイレンズでは、検出器は、寸法δおよびスペースdを持っているので、デューティサイクルはd/δとなる。角分解能を1°とすると、検出器の数はN=60、および検出器間の距離すなわちピクセルサイズは、デューティサイクル70/30に対して303/130として割られた、δ+d=26mm/60=433マイクロメートルである。R=5cm、x=1mとすると、横倍率はMtc=1/41となり、433マイクロメートルの画像解像度に対して1.77cmの物体分解能が得られ、または、R=5cmおよびx=20cmに対して3.9mm物体分解能が得られる。
【0055】
図6のような平面状の試料の幾何学的配置は、単調で、図7のようにほぼ線形θ(φ)の関係を可能にする。対照的に、サンプルのいかなる点に対してもθ=0を常に得たい場合には、図9に示すように、サンプルの表面プロファイルを回転の楕円形状にする必要があり(ここでPおよびP’が楕円焦点)、楕円曲線はED−T軸のまわりに回転されるべきである。
【0056】
較正
散乱角θの包絡線は正反射角αのまわりにある。そのような包絡線は一般にαに依存する。そうでない場合には、システムはフーリエ用語を使用して角度不変光学系呼ばれる。システムが角度不変でなくても、角度分散はほぼサンプルのカテゴリー内で同じでありえる。そのような近似では、光源距離、サンプル距離、およびロブスターアイ距離のような幾何学的因子をすべて測定することを可能にする普遍的な較正手順を展開することができる。そのような場合、一般的な測定式には次の形がある、
【数24】
【0057】
ここで、入射X線ビームの強度Io(θ)は、すべての幾何学的因子に依存し(そして解析することが困難)、M(θ)は、Io(θ)から分離されるべきサンプルの未知の角度特性である。しかし、それを解析的に分離する代わりに、我々は次の形の較正曲線を創出する。
【数25】
【0058】
ここで、Mc(θ)は較正に使用された既知のサンプルの角度特性であり、Ic(θ)は、既知の角度の曲線(図7に示すような)によるこのサンプルに対する測定検出器強度である。数式(25)で数式(24)を割って、較正式(26)を得る。
【数26】
【0059】
我々は、完全な三次元の幾何学的配置に対するこの公式を容易に一般化することができる。この公式は、下記の少なくとも2つの方法で適用することができる。
1.角度分光学
2.コントラスト強化画像処理
【0060】
第1の事例は上で説明したが、第2の事例は以下のように説明することができる。図11のような物体(サンプル)の幾何学的配置を考慮する。より高いx値はより大きい角度θと等価であるので、高い正のx値すなわち高い正のφ値によって特徴づけられた位置に物体を配置すると、そのような物体の画像は、低いZ番号を持つそのような物体要素にのみ敏感になり、そのような物体のコントラストが強化されることになる。
【0061】
時間ゲーティングおよびX線凝視画像処理
ロブスターアイ検出器表面は半径R/2を有する半球に設置される、ここでRはロブスターアイレンズ半径である。該表面の各点Qは、図11に示すようなX線サンプルにあるそれと等価な点Pを持っている。
【0062】
点θは極座標(ρ,φ)を持ち、その等価点Pは直交座標(x,y)を持つ。図11に示すように、点Pが速度vで移動すると、その等価点Qも点Q’に移動する。速度をvとすると、点Pは時間t中に距離vtだけ移動する。特定の硬X線の場合、X線が点Pに「衝突する」と、特に小さなZ番号に対して、サンプルの内部で多重散乱が起こり、点Pから点P’への変位を発生させる。ロブスターアイ画像処理の数式を使用すると、距離PP’は数式(27)となり、数式(28)に還元される。
【0063】
【数27】
【0064】
【数28】
【0065】
ここでMtは横倍率である。R=6cmおよびx=1mに対して、Mt=1/41が得られる。検出器のピクセルサイズを100マイクロメートルとすると、物体面の等価な寸法は、4.1mmとなるが、1cmの変位さえ可能であるのでそれは現実的な値である。ロブスターアイとサンプル間の遅延時間は、x=l=1mに対して、次のようになる(ここでv=c)。
【数29】
【0066】
したがって、図12に示すように、パルス幅τはそのような距離に対して6.6nsより小さくなければならない。
【0067】
図12は、元の送信されたパルスおよび元の受信されたパルスの2つのパルスを示しており、後者のパルスは多重散乱部を含んでいる。δtを測定することにより、有機物か非有機物か、空気、金属等のようなサンプルの性質について推論することができる。当然、合成画像を得るためには多くのそのようなパルスを等間隔Δt0で送る必要がある。Z番号が小さければ小さいほど、時間的な変位値δtは大きくなる。時間ゲーティングは角度の多重化と相補的になりえる。
【数30】
【0068】
ここでv≒c=3×1010cm/s、又、δxは多重散乱による空間変位である。
【0069】
X線の一般的特性
X線は、ヒト組織および有機ポリマーのような軟質材を容易に貫通し、「密度射影」X線画像を生成すると一般に考えられている。他の一般的な認識は、X線が金属を貫通することができないということである。いずれの表現も正しくない。X線光子は、軟質の非金属物質との相互作用によって広く散乱され、それらのいくつかは、X線源の方へ後方に散乱される。そのような光子は弾道後方散乱光子と呼ばれている。同時に、60keV(すなわち波長λ=0.2オングストローム)の平均エネルギーを有するX線光子の18%は、1.422mm(56ミル)の鋼板を貫通する(図13を参照)。60以上keVのエネルギーを有するX線は所定の胸部X線に使用される。
【0070】
現在のキャピラリーX線の焦点調整光学系
X線の性質として、屈折によって焦点を結んで要素を生成することができない。X線と共に働く唯一の可能な方法は、入射の小さなグレージング角の下で滑らかな金属表面からのX線の反射を用いることである。古典的なX線反射光学系は、重く、かさばっていて(メートル規模)、高価で、位置合わせが難しかった。これは、長く、湾曲した、環状のキャピラリーに基づいた、Kumakov形X線焦点調整光学系の開発をもたらした[文献番号2および3]。非常に小さく重要なグレージング角(60keVのX線に対して≦3.6arc−minutes)および比較的大きな内側のキャピラリー径のために、キャピラリーは非常に長くなければならない。
【0071】
さらに、キャピラリー要素のかなりの厚みおよび該要素間のデッドスペースは、Kumakov形X線光学のフィルファクタをかなり減少させている。さらに高度なLE形焦点調整X線光学系は、グラススランプマイクロチャネルプレート(MCP)に基づいている。しかし、既存のLE光学系の動作のスペクトル域は、エネルギー≦4keV(すなわちλ=3.1オングストローム)を有するX線に限定されている[文献番号4−6]。より小さく重要なグレージング角を有するより硬いX線は、グラスMCPのチャネルの小さな長さ対幅比(アスペクト比)のために該グラスMCPによって効率的に焦点を結ぶことができない[文献番号4−8]。
【0072】
ロブスターアイX線焦点調整光学系
ロブスターは、目の外部にわたって湾曲した、箱状の正方形断面の個眼のアレイを通して(アイレット)世界を見ている。
【0073】
甲殻類の目では、そのセルは短く、幅の約2倍の長さの長方形である。かなり速く焦点を形成するために、光は広範囲の入射角にわたって反射される。硬X線の応用では、セル長は幅の約100倍である必要があるが、光学的な原理は甲殻類の目の原理と同じままである。それは、プレートの2つの直交系の合併と円筒状よりむしろ球状の対称性の採用とが好ましい軸を取り除き、視野(FOV)を所望の大きさにできるという点を除いて、Schmidtの二次元装置と密接に関係がある。ロブスターの目は、例えば180°よりわずかに大きなFOVを持っている。
【0074】
各個眼はすべての角度から目に入る小量の光を捕らえ、多数の個眼からの光は画像を形成するために焦点を調整される。物理光学株式会社の物理学者は、硬X線の焦点を調整するために、LE構造で体系づけられた長い中空金属マイクロチャネルにこの構造をコピーした[文献番号9](図14Aおよび14Bを参照)。
【0075】
LEの幾何学的配置では、X線反射が非常に低い角度で起こるように配置することが可能である。12arc−minutesより小さい角度では、例えば金皮膜の反射率は高く、その結果入射光束はほとんど失われない。図15は、同一の十字形のスポットに反射された(焦点を合わされた)小さなグレージング角を持つ平行X線を示している。初めに、X線は、正方形の長い中空セルのアレイに衝突して共通の点に集中し、X線の焦点をその単一の点上に結ぶ。正方形のトンネルのような形をしたどんな単一要素セルにも入るX線は、2つの反射壁からはね返り、隣接セルから出現するビームと平行に出現する。反射された平行X線束のスポットの中央部の強度は、入射X線束の何千倍も大きくなりえる。真の焦点調整装置として、LE光学系は、拡散した背景に対して物体を有効に画像化でき、それによってぼんやりした物体の観測をも向上させることができる。
【0076】
X線は、通常1又は3の奇数の反射で、検出器の焦点面へ直接到達する。2つの直交壁から反射するX線は共通の焦点に送られる。図15に示すように、たった1つの壁に衝突したX線は最後には線になり、残りのX線は真っすぐに通り抜ける。反射しないで通過する光線を含む偶数回反射した光線は、背景雑音に寄与することになる。
【0077】
プラスチックおよび金属からのX線後方散乱
ロブスターアイX線画像処理システムのX線発生器が、水面下の物体に、40から120keV(すなわち波長λ=0.31から0.1オングストローム)までの平均的X線エネルギーを備えた、130kVp(キロボルトピークエネルギー)から180kVpまでのX線スペクトルを照射する場合、それは2つの著しい相互作用を生み出す、すなわち(i)コンプトン散乱、および、(ii)光電効果である[文献番号10および11]。異なる平均局所原子番号(Z番号)および異なる電子密度を備えた材料は、コンプトン散乱画像では異なる強度値を持つ[文献番号12]。これらの相互作用の相対的確率は、Z番号および材料の電子密度の関数である。光電効果では、X線光子は吸収され、電子が放射される。約60keV(0.2オングストローム)以下のX線光子エネルギーについては、Z番号が高い材料ほど、より高い光電子断面積およびより低いコンプトン散乱断面積を持っている。低いZ番号の材料については、それはちょうど反対である。金属のような高いZ番号を持つ材料では、X線照明光子の大部分は光電効果によって材料に吸収され、コンプトン相互作用によって散乱する光子はほとんどない。
【0078】
したがって、金属材料は、凝視画像処理X線検査システムの画像では、低い強度値を持つだろう。対照的に、プラスチックのような材料は、より低いZ番号および中間の電子密度を持っている。プラスチックが凝視画像処理X線検査システムによって撮像される場合、多くのX線照明光子がコンプトン相互作用を持ち、その光子の中には、LE検出器によって後方散乱させられ、記録されるものもあり、そしてこれは、冷却されたCCDカメラ(図16を参照)に接続された発光スクリーンへX線を集束させるLE光学系を含んでいる。したがって、コンプトン後方散乱画像処理(CBI)では、低いZ番号の材料は後方散乱させられたX線光子の高強度値によって表される。
【0079】
現在の後方散乱技術
横方向移動ラジオグラフィ(LMR)[文献番号10および11]のような、最先端技術のX線コンプトン後方散乱画像処理(CBI)技術[文献番号11から14]は、土壌の表面、表面下、または土壌の内部構造を撮像して、地雷を検出することができる。LMRシステムは、物体調査用に、物体の原子と一度だけ衝突する単一後方散乱X線光子(SBP)、および多重後方散乱光子(MBP)を撮像するための、別個の検出器を持っている。SBPとMBPの番号は一般に低く、ある程度幾何学的重複があるため、2つの画像には、低い信号対雑音比(SNR)と分解能、および重度の幾何学的歪がある。LMR(他のすべてのCBI技術と同様に)は、硬X線を集束させることができない。X線画像の形成は、X線の走査型ペンシルビーム、および光電管(PMT)を備えた、高価で、非常に大きな、広領域X線検出器に依存する。LMRの分解能、コントラスト、FOV、およびSNRは、走査型ペンシルビームの強度、大きさ及び速度によって制限されている。LMRは、1m2/min.[文献番号11から12および14]に制限される低い取得率と、長く複雑な画像再構成プロセスを持っている。走査型ペンシルビームを発生させることは、非効率であり、それは、発生させたX線のわずか0.01%しか使用せず、大きな慣性モーメントを備えた、重い、鉛の、速く回転するチョッパーホイールまたは回転コリメータを必要とする。したがって、最先端技術のX線後方散乱システムは、例えば、埋設地雷探知用の必要条件を満たしていない。
【0080】
凝視デジタルX線画像処理検出器
凝視画像処理X線検査システムのための凝視デジタル検出器の実施形態は、シリコンウエハから微小化され、ロブスターアイX線焦点調整光学の半球の焦点面と一致する半球形状にスランプされた、マイクロチャネルプレート(MCP)を含んでいる。シリコンMCPのマイクロチャネルの大きさ、形状および位置は、フォトリソグラフィー法によって決定され、85%を超える高いフィルファクタを提供するだろう。
【0081】
既存の鉛ガラスMCPは、高コストで、重く、領域が制限され、硬質であり、マイクロチャネルの周期性またはその壁の平滑性を維持しない。この後者は、MCP構造の幾何学配置、およびチャネル壁の表面の粗さによって実際に決定される、焦点調整性能の重要な低下を引き起こす[文献番号6および15]。
【0082】
SOTA鉛ガラスMCPとは対照的に、シリコンMCPは、低コストで、軽く、領域が広く、機械的に安定している。シリコンMCPは、シリコンウエハの異方性エッチング(ECANE)によって製作され、それらは次に、望ましい球形状へスランプするだろう。高アスペクト比マイクロチャネルは、硬X線に有効なNaIまたはCsI(Tl)のような材料を発光させることで充填されるだろう。
【0083】
この凝視デジタル検出器(SDD)用のMCPの製作、および付随の微小化およびスランプする技術は以下の工程を含む。
(1)孔径、形状、およびアレイ内での位置は、フォトリソグラフィー法によって決定される。その後、孔は、Si単結晶の基板ウエハによって、異方的にエッチングされる。
(2)微小化されたSi MCPは、孔壁を酸化させることと組み合わされた、特別の熱サイクル工程によって所望の球形状にスランプされる。
(3)孔のメタライゼーションは、化学真空蒸着(CVD)成長によって達成され、連続した、滑らかな、X線反射孔壁を形成するだろう。壁のSiO2層により、高いZ番号(ガラスMCP技術とは対照的に)を持つ非常に様々な金属が使用できる。
(4)SDDは、直径150mm(6インチ)を超える、一般に利用可能で、安価な、単結晶Siウエハから製造される。
(5)シリコンの融解温度が、NaIまたはCsI(Tl)のような発光材のそれよりほぼ2倍高い1400℃を超えるという事実に基づいて、真空中のスランプされたシリコンMCPのマイクロチャネルへ発光材を溶かすこと。
【0084】
図17は、SDDシステムの構造および動作原理を示している。SDDは、信号読み出し用のマイクロチャネルのガイド構造に基づいており、テーパ形光ファイバによって最先端技術のフルフレームCCDと接続される。テーパ形光ファイバの入力面は、半球の形状を持ち、ロブスターアイX線の焦点調整光学の半球の焦点面と一致する。テーパの出力面はフラットで、CCDマトリックスに取り付けられている。SDDは、85%を超えるフィルファクタを持つ、高アスペクト比のガイドマイクロチャネルを含み、その壁は反射アルミニウム層で覆われ、例えば、ヨウ化ナトリウム発光材で充填されている。この材料は、90%を超える量子効率で硬X線光子を吸収し、それらを可視光線に変換する。その結果、Al−clad NaI(Tl)コアは高アスペクト比の光導管構造であり、それは、室温でCCDアレイによって十分検出できるほど明るい(数百平方マイクロメートルのマイクロチャネル断面積のまさに狭い領域に集中された)発光フラッシュを送り、高精度でX線照射のエネルギー量を識別する。
【0085】
NaI(Tl)で発生させた可視光線スパークの強度は、100keV光子につき約4,000の可視光線光子率で、そのエネルギーに比例する。NaI(Tl)の減衰長は例えば、60keV光子(波長λ=0.2オングストローム)で0.5mmであり、100keV光子(波長λ=0.12オングストローム)で1.8mmである。
【0086】
マイクロチャネル内のNaI(Tl)シンチレータによって放射された光は、光ファイバの光導管と同じように、ピクセル間で損失またはクロストークのない対応するCCDピクセルの高感度な領域へ向かう。照射の終わりで、CCDの活性領域の電荷は、フレーム記憶装置へ迅速に(約40ms)転送されるだろう。このように、SDDは光子計数とエネルギー識別を行う。X線光子のエネルギーを識別するために、ほんの少数のイベントだけが各フレーム中に登録されるように、SDDのCCDは高速でフレームを登録しなければならないが、シンチレータ中の各スパークの強度は別々に測定することができる。
【0087】
ロブスターアイX線画像処理システムのX線焦点調整光学系の製作
本発明では、すべての研磨および表面仕上げは、X線ロブスターアイの「平らな」部品が容易にアクセス可能である時間中に、該X線ロブスターアイの「平らな」部品で行われるが一方、大多数の先行技術では、これらの作業行はアクセス可能性が乏しいので行うことができない。高い表面平坦度を達成するのに必要な研磨および仕上げ作業および高性能X線ロブスターアイの形成に極めて重要低い表面粗さは、本発明の初期の製作中のすべての素材表面の完全なアクセス可能性により達成される。
【0088】
例えば、大半の先行技術では、「コーナ」は、研磨および表面仕上げのためにアクセスすることが困難または不可能であるが一方、硬X線光学系に必要な完全に研磨および表面仕上げされた90度のコーナは、本発明の構成では本来備わっており、そして、新しいロブスターアイの最終組立工程中に自動的に達成される。
【0089】
前述の先行技術[文献番号4−6]において、それは、表面上は同じであるように見えるが、重大な「半分のステップ」、すなわち、本発明の場合のようにロブスターアイレンズを形成する、X字形の(十字形)配置、または2つの水平および垂直層の単一の三次元の網状構造への差し込みが欠けている。
【0090】
本発明では、先細りの台形水路は、連続的に正方形断面を縮小することにより三次元的に形成されるので、「理想的な」ロブスターアイの形状因子を達成することができる。
【0091】
本発明はロブスターアイ形状を「生成する」というよりもむしろ、X線光学の厳しい要件を維持しながらロブスターアイ形状を「作る」ことであることが強調されるべきであろう。
【0092】
本発明で具体化された新規で独特な製作および組立工程の結果は、高い幾何学的な精度のロブスターアイ構造と、うまくX線ミラーを製作するのに必要とされる表面仕上げという結果をもたらす。
【0093】
本発明のロブスターアイ製作のアーキテクチャ−上の概念を図18に示している。薄いフラットリブは、所定の角度および間隔で作られた「ナイフカット」によって、半球体ドーム(図19を参照)から抜き出される。図18で、4つのリブが抜き出されるのが分かる。
【0094】
このえぐり抜かれた半球体ドーム(それ自体は初めに球体から抜き出されたものであるが)は、本発明の製作のアーキテクチャの基礎を形成する。球からこの部分的中空部を薄く切る切断面は、所定の角度および間隔で、ドームを二分する、該「ドーム」の円形部分の内周のまわりの点AおよびA’、および、該円形部分の外周のまわりの点BおよびB’によって定義された線分から放射するように、配列される、その結果、フラットリブの各々が環形のセグメントとなる複数のフラットリブが得られる。
【0095】
図20に示すような雄雌リブの幾何学的配置は、それらの嵌合スロットの深さが、雄リブで長さu、雌リブで長さu’のようなものであり、ここで、uはu’に等しい(u=u’)。雄雌リブは、X字形に配置され差し込まれたときに、雄雌リブの上部の湾曲縁が同一平面上にあり、雄雌リブの下部の湾曲縁も同一平面上にあるような方法で相互に「とまりばめ」されるように、雄リブの高さを2u、雌リブの高さを2u’にしてある。一旦この方法で組立てられると、元来台形の空胴を「埋めていた」「不要な」立体部分がなくなり、元の「半球体ドーム」は「骨格状に」再構成される。この正確な組立ては、雄リブのスロットは幅sで雌リブのスロットは幅s’であり、幅sがs’と等しく(s=s’)なるように、および双方の雄雌リブは厚みtであり、幅sおよびs’が幅tと等しく(s=s’=t)なるようにしてあるという事実により可能になる。しかし、製造公差は、物理的実現においてリブのスロットの実際の幅は幅s,+0.0254mm(0.001インチ)/−0.000mm(0.000インチ)、一方リブの実際厚さは幅t’,+0.000mm(0.000インチ)/−0.0254mm(0.001インチ)である。リブ厚(t)のこの極くわずかなアンダーサイジングは、リブのスロット(s,s’)の極くわずかなサイジングと共に、各雄リブの本体が雌リブのスロットにちょうど辛うじて滑り込むことを可能にし、かつ各雌リブの本体が雄リブのスロットにちょうど辛うじて滑り込むことを可能にし、雄雌リブの90度(90°)の十字形の差し込みを可能にしている。
【0096】
本発明の、4対のウエハのような雄雌リブのX字形の(十字形)配置によって形成された「4x4」ロブスターアイを図21に示している。「雄」リブの1つは嵌合される前の段階で示されている。雄リブが、該雄リブを受け入れるように設計されている4つの「雌」リブと「嵌合する」ように、該雄リブをそれより下のほぼ完全な構造物の中に垂直に下げることで、「4×4」ロブスターアイの形成が完成する。
【0097】
ここに開示したものはX線画像化技術において著しい進歩を構成することが理解されるだろう。後方散乱X線用途へのロブスターアイレンズ技術の新規な利用は、例えば、貨物専用コンテナの検査、埋設地雷の探知、および医療診断においてさえ、多くの画像処理シナリオに有利な応用を持つ著しい改善を提供する。さらに、独特なロブスターアイ製作概念は、非常に効率的な比較的容易で低価格の組立ておよび特にX線画像化用途ための正確な構造を可能にする。さらに、ロブスターアイ光学系および検出器物理学のよりよい理解は、結果として得られた画像発生を改善する好機および分光学のような新しい応用にその構造を用いる好機を提供するものである。したがって、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲およびそれらの等価物によってのみ制限されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】図1は、有限の距離にある物体に対するロブスターアイレンズ動作の幾何学的配置の略図である。
【図2】図2は、物体までの距離の関数として、類推的に凸面鏡に対するLEレンズの横倍率Mtの依存を示すグラフである。
【図3】図3は、アポディゼーション用に示した、一次元投射におけるロブスターアイレンズ画像処理システムのローカル軸である。
【図4】図4は、全外反射近傍においてフレネル反射分布に従う、点応答関数の2乗の一次元分布モジュールである。
【図5】図5は、光学的伝達関数のモジュールの一次元分布である。
【図6】図6は、X線源、サンプル、およびロブスターアイレンズの一次元の幾何学的配置である。
【図7】図7は、数式(21および22)のために、角度φの検出器位置の関数として散乱角θの依存を示すグラフである。
【図8】図8は、円錐角60°を持つロブスターアイ検出器アレイの断面図である。
【図9】図9は、θ=0に対するX線源およびロブスターアイ中心の特定の幾何学的配置を示す図であり、ここでサンプル表面はPP’軸のまわりで回転楕円であり、点PおよびP’は楕円焦点である。
【図10】図10は、散乱角の幾何学的配置を示す図である。
【図11】図11は、ロブスターアイ検出器および物体の三次元の幾何学的構成である。
【図12】図12は、物体へ送信されたX線パルスおよび多重散乱部分を含む後方散乱させられたX線の受信パルスの時系列チャートである。
【図13】図13は、X線エネルギーの関数として、0.91mm(36ミル)、1.22mm(48ミル)、1.42mm(56ミル)、1.65mm(65ミル)、および1.91mm(75ミル)厚のスチール金属板の計算されたX線透過のグラフである。
【図14】図14は、図14Aおよび14Bから成り、好ましい実施形態で使用される独特なロブスターアイ構造の図および写真である。
【図15】図15は、ロブスターアイ光学系の焦点面における計算された強度分布のグラフである。
【図16】図16は、凝視画像処理X線検査システムの検出モジュールの技術者の概念図である。
【図17】図17は、凝視デジタル検出器(SDD)の構造および動作原理の図である。
【図18】図18は、図14Aおよび14Bのロブスターアイ構造のフラットリブの製作概念を示す。
【図19】図19は、図14Aおよび14Bのロブスターアイ構造のフラットリブの製作概念を示す。
【図20】図20は、図14Aおよび14Bのロブスターアイ構造のフラットリブの製作概念を示す。
【図21】図21は、図14Aおよび14Bのロブスターアイ構造のフラットリブの製作概念を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非走査のブロードビームで、洗濯されたターゲットを照射する少なくとも1つのX線発生器と、
前記照射されたターゲットからのX線後方散乱を受け取るように配置されたX線焦点調整装置と、
前記焦点調整装置に対して配置され、前記受け取られたX線後方散乱から画像を形成する検出器と、
を備えた後方散乱に基づくX線凝視画像装置。
【請求項2】
前記焦点調整装置はロブスターアイ構造を備えている、請求項1に記載のX線凝視画像装置。
【請求項3】
前記ロブスターアイ構造は、差し込まれた極めて薄いフラットリブのX字形配置を有しており、これらのフラットリブは、正方形断面を連続的に縮小した複数の隣接するチャネルを形成する単一の三次元網状アレイとして構成されている、請求項2に記載のX線凝視画像装置。
【請求項4】
前記フラットリブの各々は、研磨された反射面、及び、他のフラットリブが差し込まれるための、間隔を空けて配置された複数の嵌合スロットを有する、請求項3に記載のX線凝視画像装置。
【請求項5】
前記焦点調整装置によって受け取られたX線後方散乱を増大させるための複数のX線発生器を備える、請求項1に記載のX線凝視画像装置。
【請求項6】
前記検出器は、前記焦点に集められたX線後方散乱を電子画像に変換するためのデジタル装置を備えている、請求項1に記載のX線凝視画像装置。
【請求項7】
前記デジタル装置は、テーパ形光ファイバによってCCDマトリックスに接続された発光スクリーンを備えている、請求項6に記載のX線凝視画像装置。
【請求項8】
前記発光スクリーンは、発光材で充填された複数のマイクロチャネルを持つマイクロチャネルプレートを備えている、請求項7に記載のX線凝視画像装置。
【請求項9】
前記照射されたターゲットでのX線放射のエネルギー準位は、平均的な周囲のX線放射のエネルギー準位以下である、請求項1に記載のX線凝視画像装置。
【請求項10】
壁の背後に隠された少なくとも1つの物体の画像を発生させるX線検査システムであって、
前記壁および物体を含んだ検査される領域を照射するオープンコーン状のX線放射を発生させる少なくとも1つのX線源と、
X線画像を電子画像に変換するデジタルX線画像検出器と、
前記検査された領域から後方散乱されたX線放射を受け取って、少なくとも1つの前記物体を画像化する画像検出器に焦点を合わせるロブスターアイベースのX線焦点調整構造と、
を備えたX線検査システム。
【請求項11】
複数の前記X線源を備え、当該X線源の各々は、前記検査される領域に向かってオープンコーン状のX線放射を発生する、請求項10に記載のX線検査システム。
【請求項12】
前記X線源のオープンコーン状の放射は、非走査で凝視タイプのX線ビームである、請求項10に記載のX線検査システム。
【請求項13】
前記ロブスターアイベースのX線焦点調整構造は、差し込まれた極めて薄いフラットリブのX字形配置を有しており、これらのフラットリブは、正方形断面を連続的に縮小した複数の隣接チャネルを形成する単一の三次元網状アレイとして構成されている、請求項10に記載のX線検査システム。
【請求項14】
前記フラットリブの各々はX線反射材で覆われている、請求項13に記載のX線検査システム。
【請求項15】
前記フラットリブの各々は、他の前記フラットリブが差し込まれるための、間隔を空けて配置された複数のスロットを有する、請求項13に記載のX線検査システム。
【請求項16】
差し込まれた極めて薄いフラットリブのX字形配置を有しており、これらのフラットリブが、正方形断面を連続的に縮小した複数の隣接チャネルを形成する単一の三次元網状アレイとして構成されている、ロブスターアイレンズ。
【請求項17】
前記フラットリブは、入射X線の焦点を調整するために、選ばれた長さ及び断面積の前記チャネルを提供するように構成されている、請求項16に記載のロブスターアイレンズ。
【請求項18】
前記フラットリブの各々は、前記入射X線をよく反射するように形成された表面を有する、請求項17に記載のロブスターアイレンズ。
【請求項19】
前記フラットリブの各々は、他の前記フラットリブが差し込まれるための、間隔を空けて配置された複数のスロットを有する、請求項16に記載のロブスターアイレンズ。
【請求項20】
前記フラットリブの各々は、内周および外周を持つ環形のセグメントである、請求項16に記載のロブスターアイレンズ。
【請求項21】
前記フラットリブの各々は、内周および外周を持つ環形のセグメントであり、
第1群の前記複数のフラットリブは、前記内周から伸びる前記スロットを持ち、
第2群の前記複数のフラットリブは、前記外周から伸びる前記スロットを持つ、
請求項19に記載のロブスターアイレンズ。
【請求項22】
前記差し込まれたフラットリブのX字形配置は、前記スロット沿って、前記第1群の複数のフラットリブと前記第2群の複数のフラットリブを正確に直角的に嵌合することによって形成されている、請求項21に記載のロブスターアイレンズ。
【請求項23】
前記フラットリブの厚みは、前記スロットの幅にほぼ等しく、
前記スロットの長さは、前記環形の半径に沿った前記内周と前記外周との間の距離の2分の1にほぼ等しい、請求項22に記載のロブスターアイレンズ。
【請求項24】
近接したターゲット領域に向かってX線エネルギーを発生させる少なくとも1つのX線源と、前記ターゲット領域から反射された後方散乱X線を受け取る焦点面を持つ検出器と、前記後方散乱X線の焦点を前記検出器焦点面に合わせるロブスターアイレンズとを有するX線画像処理システムにおいて、
不注意なピンボケ画像異常を低減するピンボケ効果補正器を備えており、そのピンボケ効果補正器は、a)アポディゼーション、b)焦点面移動、およびc)焦点面像面湾曲補正のうちの少なくとも1つに基づいている、
ことを特徴とするX線画像処理システム。
【請求項25】
解析されるサンプルに対し第1の選ばれた位置に配置されたX線源と、
前記サンプルに対し第2の選ばれた位置に配置されると共に、焦点調整面を持つロブスターアイレンズと、
互いに選択的に間隔を空けて配置された検出器のアレイとして前記焦点調整面上に配置されると共に、前記サンプルの材料を暗示するところの、前記サンプルからのX線後方散乱によって発生した散乱コーンの断面形状に基づいた出力を提供する複数のX線検出器と、
を備えた角度凝視分光計。
【請求項26】
解析されるサンプルに対する、選ばれたX線源及びロブスターレンズの位置の較正曲線を発生させるための、既知の散乱角特性を持った較正試料、を更に備えてなる、請求項25に記載の角度凝視分光計。
【請求項27】
検査されている領域の画像を発生させる方法であって、
前記領域をX線エネルギーで照射するステップと、
前記照射領域からのX線後方散乱を受け取る検出器を配置するステップと、
前記領域と前記検出器との間にX線ロブスターアイレンズを配置して、前記X線後方散乱の焦点を前記検出器に合わせるステップと、
を含んでなる方法。
【請求項28】
前記焦点が合わされたX線後方散乱を、前記検査されている領域の電子画像に変換するべく前記検出器を構成するステップをさらに含んでなる、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記領域の画像が低いZ番号の要素を持つ物体に対してのみ応答し、結果的に得られる画像においてそのような物体のコントラストを高めるように、前記検査されている領域に対して前記ロブスターアイレンズを配置するステップをさらに含んでなる、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
複数のX線源を使用して前記領域を照射し、前記領域からのX線後方散乱のレベルを増大させるステップをさらに含んでなる、請求項27に記載の方法。
【請求項1】
非走査のブロードビームで、洗濯されたターゲットを照射する少なくとも1つのX線発生器と、
前記照射されたターゲットからのX線後方散乱を受け取るように配置されたX線焦点調整装置と、
前記焦点調整装置に対して配置され、前記受け取られたX線後方散乱から画像を形成する検出器と、
を備えた後方散乱に基づくX線凝視画像装置。
【請求項2】
前記焦点調整装置はロブスターアイ構造を備えている、請求項1に記載のX線凝視画像装置。
【請求項3】
前記ロブスターアイ構造は、差し込まれた極めて薄いフラットリブのX字形配置を有しており、これらのフラットリブは、正方形断面を連続的に縮小した複数の隣接するチャネルを形成する単一の三次元網状アレイとして構成されている、請求項2に記載のX線凝視画像装置。
【請求項4】
前記フラットリブの各々は、研磨された反射面、及び、他のフラットリブが差し込まれるための、間隔を空けて配置された複数の嵌合スロットを有する、請求項3に記載のX線凝視画像装置。
【請求項5】
前記焦点調整装置によって受け取られたX線後方散乱を増大させるための複数のX線発生器を備える、請求項1に記載のX線凝視画像装置。
【請求項6】
前記検出器は、前記焦点に集められたX線後方散乱を電子画像に変換するためのデジタル装置を備えている、請求項1に記載のX線凝視画像装置。
【請求項7】
前記デジタル装置は、テーパ形光ファイバによってCCDマトリックスに接続された発光スクリーンを備えている、請求項6に記載のX線凝視画像装置。
【請求項8】
前記発光スクリーンは、発光材で充填された複数のマイクロチャネルを持つマイクロチャネルプレートを備えている、請求項7に記載のX線凝視画像装置。
【請求項9】
前記照射されたターゲットでのX線放射のエネルギー準位は、平均的な周囲のX線放射のエネルギー準位以下である、請求項1に記載のX線凝視画像装置。
【請求項10】
壁の背後に隠された少なくとも1つの物体の画像を発生させるX線検査システムであって、
前記壁および物体を含んだ検査される領域を照射するオープンコーン状のX線放射を発生させる少なくとも1つのX線源と、
X線画像を電子画像に変換するデジタルX線画像検出器と、
前記検査された領域から後方散乱されたX線放射を受け取って、少なくとも1つの前記物体を画像化する画像検出器に焦点を合わせるロブスターアイベースのX線焦点調整構造と、
を備えたX線検査システム。
【請求項11】
複数の前記X線源を備え、当該X線源の各々は、前記検査される領域に向かってオープンコーン状のX線放射を発生する、請求項10に記載のX線検査システム。
【請求項12】
前記X線源のオープンコーン状の放射は、非走査で凝視タイプのX線ビームである、請求項10に記載のX線検査システム。
【請求項13】
前記ロブスターアイベースのX線焦点調整構造は、差し込まれた極めて薄いフラットリブのX字形配置を有しており、これらのフラットリブは、正方形断面を連続的に縮小した複数の隣接チャネルを形成する単一の三次元網状アレイとして構成されている、請求項10に記載のX線検査システム。
【請求項14】
前記フラットリブの各々はX線反射材で覆われている、請求項13に記載のX線検査システム。
【請求項15】
前記フラットリブの各々は、他の前記フラットリブが差し込まれるための、間隔を空けて配置された複数のスロットを有する、請求項13に記載のX線検査システム。
【請求項16】
差し込まれた極めて薄いフラットリブのX字形配置を有しており、これらのフラットリブが、正方形断面を連続的に縮小した複数の隣接チャネルを形成する単一の三次元網状アレイとして構成されている、ロブスターアイレンズ。
【請求項17】
前記フラットリブは、入射X線の焦点を調整するために、選ばれた長さ及び断面積の前記チャネルを提供するように構成されている、請求項16に記載のロブスターアイレンズ。
【請求項18】
前記フラットリブの各々は、前記入射X線をよく反射するように形成された表面を有する、請求項17に記載のロブスターアイレンズ。
【請求項19】
前記フラットリブの各々は、他の前記フラットリブが差し込まれるための、間隔を空けて配置された複数のスロットを有する、請求項16に記載のロブスターアイレンズ。
【請求項20】
前記フラットリブの各々は、内周および外周を持つ環形のセグメントである、請求項16に記載のロブスターアイレンズ。
【請求項21】
前記フラットリブの各々は、内周および外周を持つ環形のセグメントであり、
第1群の前記複数のフラットリブは、前記内周から伸びる前記スロットを持ち、
第2群の前記複数のフラットリブは、前記外周から伸びる前記スロットを持つ、
請求項19に記載のロブスターアイレンズ。
【請求項22】
前記差し込まれたフラットリブのX字形配置は、前記スロット沿って、前記第1群の複数のフラットリブと前記第2群の複数のフラットリブを正確に直角的に嵌合することによって形成されている、請求項21に記載のロブスターアイレンズ。
【請求項23】
前記フラットリブの厚みは、前記スロットの幅にほぼ等しく、
前記スロットの長さは、前記環形の半径に沿った前記内周と前記外周との間の距離の2分の1にほぼ等しい、請求項22に記載のロブスターアイレンズ。
【請求項24】
近接したターゲット領域に向かってX線エネルギーを発生させる少なくとも1つのX線源と、前記ターゲット領域から反射された後方散乱X線を受け取る焦点面を持つ検出器と、前記後方散乱X線の焦点を前記検出器焦点面に合わせるロブスターアイレンズとを有するX線画像処理システムにおいて、
不注意なピンボケ画像異常を低減するピンボケ効果補正器を備えており、そのピンボケ効果補正器は、a)アポディゼーション、b)焦点面移動、およびc)焦点面像面湾曲補正のうちの少なくとも1つに基づいている、
ことを特徴とするX線画像処理システム。
【請求項25】
解析されるサンプルに対し第1の選ばれた位置に配置されたX線源と、
前記サンプルに対し第2の選ばれた位置に配置されると共に、焦点調整面を持つロブスターアイレンズと、
互いに選択的に間隔を空けて配置された検出器のアレイとして前記焦点調整面上に配置されると共に、前記サンプルの材料を暗示するところの、前記サンプルからのX線後方散乱によって発生した散乱コーンの断面形状に基づいた出力を提供する複数のX線検出器と、
を備えた角度凝視分光計。
【請求項26】
解析されるサンプルに対する、選ばれたX線源及びロブスターレンズの位置の較正曲線を発生させるための、既知の散乱角特性を持った較正試料、を更に備えてなる、請求項25に記載の角度凝視分光計。
【請求項27】
検査されている領域の画像を発生させる方法であって、
前記領域をX線エネルギーで照射するステップと、
前記照射領域からのX線後方散乱を受け取る検出器を配置するステップと、
前記領域と前記検出器との間にX線ロブスターアイレンズを配置して、前記X線後方散乱の焦点を前記検出器に合わせるステップと、
を含んでなる方法。
【請求項28】
前記焦点が合わされたX線後方散乱を、前記検査されている領域の電子画像に変換するべく前記検出器を構成するステップをさらに含んでなる、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記領域の画像が低いZ番号の要素を持つ物体に対してのみ応答し、結果的に得られる画像においてそのような物体のコントラストを高めるように、前記検査されている領域に対して前記ロブスターアイレンズを配置するステップをさらに含んでなる、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
複数のX線源を使用して前記領域を照射し、前記領域からのX線後方散乱のレベルを増大させるステップをさらに含んでなる、請求項27に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公表番号】特表2009−503506(P2009−503506A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−523939(P2008−523939)
【出願日】平成18年7月15日(2006.7.15)
【国際出願番号】PCT/US2006/027569
【国際公開番号】WO2007/015784
【国際公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【出願人】(504294721)フィジカル・オプティクス・コーポレーション (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年7月15日(2006.7.15)
【国際出願番号】PCT/US2006/027569
【国際公開番号】WO2007/015784
【国際公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【出願人】(504294721)フィジカル・オプティクス・コーポレーション (1)
【Fターム(参考)】
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