説明

ロボット、ロボットシステムおよび回転電機

【課題】モータの駆動力をリンクに伝達する減速機の出力軸の回転角度をより精度よく検出すること。
【解決手段】モータ11と、モータ11の駆動力をリンクである下部アーム26bに伝達する減速機12と、減速機12の出力軸125の回転角度を検出するエンコーダ14bとを備える。そして、第2のエンコーダ14bは、減速機12の出力軸125に軸継手140を介して連結される。かかる第2のエンコーダ14bの検出結果に基づいてモータ11の位置指令が補正される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボット、ロボットシステムおよび回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のリンクが関節によって接続されたロボットを制御するロボット制御装置が知られている。かかるロボット制御装置は、ロボットの関節部分に設けられたモータを制御し、減速機を介してモータの動力をリンクに伝達する。
【0003】
減速機には、ねじれが存在する。そこで、減速機のねじれを補償することによって、位置決めの精度を高めるロボット制御装置が提案されている。例えば、減速機の出力軸側に設けられたエンコーダの出力と予め定められた位置指令との差分に基づいて位置指令を補正することにより、減速機のねじれを補償するロボット制御装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2010/0191374号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
減速機のねじれをより精度良く補償するためには、減速機の出力軸の回転角度をより精度よく検出することが望ましい。
【0006】
開示の技術は、上記に鑑みてなされたものであって、減速機の出力軸の回転角度をより精度よく検出することができるロボット、ロボットシステムおよび回転電機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願の開示するロボットは、一つの態様において、モータと、前記モータの駆動力をリンクに伝達する減速機と、前記減速機の出力軸の回転角度を検出する検出部とを備え、前記検出部は、前記減速機の出力軸に軸継手を介して連結されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本願の開示するロボットの一つの態様によれば、モータの駆動力をリンクに伝達する減速機の出力軸の回転角度をより精度よく検出することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、実施例に係るロボットの側面模式図である。
【図2】図2は、実施例に係るロボットの正面模式図である。
【図3】図3は、実施例に係るロボットの関節部分の構成を示す図である。
【図4】図4は、図3に示す軸継手の構成を示す図である。
【図5】図5は、実施例に係るロボットシステムの構成を示す図である。
【図6】図6は、実施例に係る指令生成部の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本願の開示するロボットシステムの実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【実施例】
【0011】
本実施例に係るロボットシステムは、ロボットとロボット制御装置を備える。ロボットは、隣接するリンクが関節を介して連結されており、ロボット制御装置は、関節を駆動することでロボットを制御する。なお、ロボットの一例として多関節ロボットを説明するが、ロボットは、少なくとも一つの関節を有するロボットであればよい。また、関節を介して接続されるリンクとして、基台、旋回ヘッドおよびアームを例に挙げて説明するが、これらに限定されるものではない。
【0012】
まず、本実施例に係るロボットの構成を説明する。図1は、本実施例に係るロボットの側面模式図であり、図2は、本実施例に係るロボットの正面模式図である。
【0013】
図1および図2に示すように、ロボット2は、基台25と、旋回ヘッド26aと、下部アーム26bと、上部アーム26cと、関節29a〜29cとを備える多関節ロボットである。関節29aは、基台25に旋回ヘッド26aを回転自在に連結し、関節29bは、旋回ヘッド26aに下部アーム26bを回転自在に連結し、関節29cは、下部アーム26bに上部アーム26cを回転自在に連結する。なお、以下においては、説明の便宜上、各関節29a〜29cを関節29と総称し、旋回ヘッド26a、下部アーム26bおよび上部アーム26cをリンク26と総称する場合がある。
【0014】
基台25は、フロアや天井などの固定面に図示しないアンカーボルトで固定される。基台25、旋回ヘッド26a、下部アーム26bおよび上部アーム26cは、例えば、金属鋳物等で形成された構造支持部材であり、関節29を介して基台25から順に配置される。
【0015】
関節29a〜29cは、それぞれ回転電機27a〜27cを備える。回転電機27aは、アクチュエータ10aと、第1のエンコーダ13aと、第2のエンコーダ14aとを備える。同様に、回転電機27bは、アクチュエータ10bと、第1のエンコーダ13bと、第2のエンコーダ14bとを備え、回転電機27cは、アクチュエータ10cと、第1のエンコーダ13cと、第2のエンコーダ14cとを備える。
【0016】
第1のエンコーダ13a〜13cは、それぞれアクチュエータ10a〜10cの入力軸の回転角度を検出するエンコーダであり、第2のエンコーダ14a〜14cは、それぞれアクチュエータ10a〜10cの出力軸の回転角度を検出するエンコーダである。なお、以下においては、説明の便宜上、アクチュエータ10a〜10cをアクチュエータ10と総称し、第1のエンコーダ13a〜13cを第1のエンコーダ13と総称し、第2のエンコーダ14a〜14cを第2のエンコーダ14と総称する場合がある。
【0017】
ここで、回転電機27a〜27cの構成について説明する。なお、回転電機27a〜27cはそれぞれ同様の構成であるため、ここでは、回転電機27bについてのみ説明する。図3は、本実施例に係る回転電機27bの構成を示す図であり、図1のA−A線断面図に相当する。
【0018】
図3に示すように、回転電機27bは、アクチュエータ10bと、第1のエンコーダ13bと、第2のエンコーダ14bとを備える。アクチュエータ10bは、モータ11と、モータ11の駆動力をリンクである下部アーム26bに伝達する減速機12とを備える。
【0019】
かかる回転電機27bでは、第2のエンコーダ14bが減速機12の出力軸125に軸継手140を介して連結されている。そのため、第2のエンコーダ14bにおいて、減速機12の出力軸125の回転角度を精度良く検出することが可能である。以下、回転電機27bの構成についてさらに詳細に説明する。なお、以下においては、減速機12を遊星ローラ型の減速機としているが、これに限られない。例えば、遊星歯車型の減速機を減速機12としてもよい。また、モータ11についても図3に示す構成に限られない。
【0020】
モータ11は、フレーム110と、第1ブラケット111と、第2ブラケット112と、シャフト113と、固定子114と、回転子115とを備える。フレーム110は、筒状に形成され、内周に固定子114が固着される。第1ブラケット111は、外周部においてフレーム110の一端と連結され、内周部においてシャフト113を通す開口を備える。第2ブラケット112は、外周部においてフレーム110の他端と連結され、内周部において軸受け116を支持する。かかる軸受け116によって、シャフト113が回転可能に支持される。
【0021】
固定子114は、固定子コア151と、固定子巻線152とを備える。この固定子114の内周側には空隙を介して回転子115が対向配置される。回転子115は、円筒状の回転子コア153と、回転子コア153の外周側に配置された複数の永久磁石154とを備え、シャフト113の中心を回転軸として回転する。
【0022】
このように構成されたモータ11では、固定子114の固定子巻線152に電流を流すことにより固定子114の内側に回転磁界が発生する。そして、この回転磁界と回転子115の永久磁石154が発生する磁界との相互作用により回転子115が回転し、この回転子115の回転に伴ってシャフト113が回転する。
【0023】
減速機12は、筒状に形成されたハウジング120を備えており、かかるハウジング120の一端がモータ11の第2ブラケット112に固定される。ハウジング120内には、太陽ローラ121と、リング122と、遊星ローラ123と、遊星ローラ軸124と、出力軸125と、軸受け126を備える。
【0024】
太陽ローラ121は、減速機12の入力軸である。かかる太陽ローラ121は、シャフト113と一体化され、かつその中心軸をシャフト113の中心軸と同一としている。リング122は、ハウジング120内の溝に嵌め込まれた円筒状の弾性リングであり、かかるリング122の内周面と太陽ローラ121の外周面との間に遊星ローラ123が回転自在に配置される。遊星ローラ123は、その回転中心位置に遊星ローラ軸124が固定されており、かかる遊星ローラ軸124は、出力軸125に固定される。
【0025】
ハウジング120の他端の内周面には、軸受け126が固定されており、かかる軸受け126によって出力軸125が回転自在に支持される。また、ハウジング120の他端は、旋回ヘッド26aのフレーム127に固定される。一方、ハウジング120に対して回転自在に支持された出力軸125は、下部アーム26bに固定される。
【0026】
このように構成された減速機12では、モータ11のシャフト113の回転に伴って太陽ローラ121が回転する。太陽ローラ121の回転に伴い、遊星ローラ軸124が自転しつつ、太陽ローラ121を中心として公転する。かかる遊星ローラ軸124の公転に伴って出力軸125が回転する。出力軸125の先端周縁部は、下部アーム26bに固定されており、これにより、出力軸125の回転に伴って、下部アーム26bが出力軸125を中心に回転する。
【0027】
第1のエンコーダ13bは、モータ11と隣接して減速機12とは逆側に配置され、カバー130によって覆われる。かかる第1のエンコーダ13bは、シャフト113の回転角度を検出する。
【0028】
一方、第2のエンコーダ14bは、減速機12の出力軸125に軸継手140を介して連結される。具体的には、減速機12の出力軸125の先端中央には連結軸141が固定されており、軸継手140および連結軸141を介して、減速機12の出力軸125に第2のエンコーダ14bの検出軸195が連結される。なお、第2のエンコーダ14bは、検出軸195の回転を検出する検出器を備えており、検出軸195の回転に応じた検出結果を出力する。
【0029】
このように、第2のエンコーダ14bは、軸継手140を介して減速機12の出力軸125に連結されるため、減速機12の出力軸125の位置を精度良く検出することができ、従って、高精度の位置決めを行うことができる。
【0030】
また、第2のエンコーダ14bは、下部アーム26bのフレーム127に固定された支持部材128によって支持される。そして、下部アーム26bにおいて、減速機12の出力軸125と第2のエンコーダ14bとの間の領域に開口142を設けることで、第2のエンコーダ14bと減速機12とを、下部アーム26bを挟んで配置するようにしている。これにより、第2のエンコーダ14bと減速機12の出力軸125とを軸継手140を介して容易に連結することができる。
【0031】
また、下部アーム26bに設けられた開口142内に、軸継手140を配置することによって第2のエンコーダ14bを下部アーム26bに近接させることができるため、回転電機27bの小型化を図ることができ、それに伴い、ロボット2の小型化を図ることができる。なお、開口142を大きくして、第2のエンコーダ14bを開口142内に配置すれば、さらにロボット2の小型化を図ることができる。
【0032】
さらに、軸継手140において、少なくとも軸間に位置する中間部材を樹脂で形成することで、連結する軸間での熱伝達が抑制される。これにより、減速機12の発熱が第2のエンコーダ14bへ影響を及ぼすことを抑制でき、第2のエンコーダ14bにおける検出精度を保つことができる。また、軸継手140を偏心や偏角を吸収するオルダム継手とすることによって、第2のエンコーダ14bの配置の自由度を増加させることができる。
【0033】
ここで、軸継手140の構成の一例について、図4を参照して具体的に説明する。図4は、軸継手140の構成の一例を示す図である。なお、図4においては、便宜上、連結軸141の延伸方向をZ方向とし、図面視において上方をY方向と、Z軸およびY軸のいずれにも直交する方向をX軸方向とする。
【0034】
軸継手140は、オルダム継手であり、図4に示すように、第1のハブ160と、スライド170と、第2のハブ180とを備える。かかる軸継手140は、軸端が相対する回転軸である連結軸141と第2のエンコーダ14の検出軸195とを連結する継手である。なお、第1および第2のハブ160,180は、例えば、アルミ合金などの金属で形成され、中間継手であるスライド170は、アセタール樹脂やナイロン樹脂などの樹脂によって形成される。そのため、軸間の熱伝達を抑制することができる。なお第1および第2のハブ160,180は金属ではなく樹脂部材で形成してもよい。
【0035】
第1のハブ160は、中央部に軸孔である中央孔161が形成され、中央孔161の径方向両側に2つの側孔162が中央孔161を挟んで対称に形成される。同様に、第2のハブ180も中央部に軸孔である中央孔181が形成され、中央孔181の径方向両側に2つの側孔182が中央孔181を挟んで対称に形成される。
【0036】
このように、第1および第2のハブ160,180は、側孔162,182を備えており、かかる側孔162,182をスライド170と係合する領域とすることによって、軸方向(Z方向)の厚みが厚くなることを抑制するようにしている。
【0037】
また、第1のハブ160には、各側孔162のY方向の両側に断面視台形状の凸部163が形成され、また、第1のハブ160の外周面には組立用溝165が形成される。同様に、第2のハブ180には、各側孔182のX方向の両側に断面視台形状の凸部183が形成され、また、第2のハブ180の外周面には組立用溝185が形成される。
【0038】
スライド170には、平坦部174a,174bから隆起する凸部171a,171bが形成される。2つの凸部171aはX軸方向に並んで配置される一方、2つの凸部171bはY軸方向に並んで配置される。すなわち、凸部171aと凸部171bとは配列方向が互いに90度ずれた関係にある。また、凸部171aには、スリット172aが形成され、凸部171bには、スリット172bが形成される。
【0039】
さらに、スライド170には、凸部171a,171bの両側に、平坦部174a,174bから隆起する側壁173a,173bが形成される。そして、凸部171aの裏面に側壁173bが位置し、凸部171bの裏面に側壁173aが位置する。そのため、スライド170の軸方向(Z方向)の強度を向上させることができ、スライド170の軸方向の厚みを薄くすることができる。
【0040】
また、スライド170には、各凸部171aの両側に平坦部174aよりも凹んだ凹部175aが形成され、同様に、各凸部171bの両側に平坦部174bよりも凹んだ凹部175bが形成される。また、スライド170の外周面には組立用溝177,178が形成される。
【0041】
このように構成される第1のハブ160、スライド170および第2のハブ180によって軸継手140が構成される。以下、軸継手140の組立方法を説明する。
【0042】
第1のハブ160の中央孔161に連結軸141を嵌合して、第1のハブ160と連結軸141を連結する。また、第2のハブ180の中央孔181に第2のエンコーダ14の検出軸195を嵌合して、第2のハブ180に第2のエンコーダ14の検出軸195を連結する。
【0043】
また、第1のハブ160の側孔162にスライド170の凸部171aを嵌合させると共に、第1のハブ160の凸部163にスライド170の凹部175aを嵌合させる。これにより、第1のハブ160がスライド170に嵌合される。同様に、第2のハブ180の側孔182にスライド170の凸部171bを嵌合させると共に、第2のハブ180の凸部183にスライド170の凹部175bを嵌合させる。
【0044】
凸部171a,171bには、スリット172a,172bが形成されることから、凸部171a,171bはスリット172a,172bの延伸方向と直交する方向で柔軟性を有する。また、側壁173bの厚みが厚くならないように側壁173bには2つの凹部176bが形成されるため、側壁173bは柔軟性を有している。このことは、側壁173aについても同様である。そのため、第1および第2のハブ160,180がスライド170に高い摺動性を持って嵌合される。
【0045】
なお、第1のハブ160と第2のハブ180とは類似する構成である。そこで、第1のハブ160の組立用溝165とスライド170の組立用溝177とが連続するように、第1のハブ160をスライド170に取り付けさせ、第2のハブ180の組立用溝185とスライド170の組立用溝178とが連続するように、第2のハブ180をスライド170に取り付けさせることで、組立を容易にしている。
【0046】
以上のように組み立てられる軸継手140の動作について説明する。連結軸141は減速機12の出力軸125の回転に応じて回転し、それに伴って、第1のハブ160が回転する。そして、第1のハブ160の回転に伴って、スライド170および第2のハブ180が回転し、第2のエンコーダ14の検出軸195が回転する。
【0047】
連結軸141と検出軸195の軸心が一致せずに偏心している場合、軸継手140は、スライド170の両凸部171a,171bが各ハブ160,180の側孔162,182内をスライドして偏心を吸収し、連結軸141の回転を検出軸195へ伝達する。連結軸141と検出軸195の軸心が一致しておらず偏角している場合も同様に、軸継手140は、スライド170の各凸部171a,171bが各ハブ160,180の側孔162,182内をスライドして偏心を吸収し、連結軸141の回転を検出軸195へ伝達する。
【0048】
以上のように、軸継手140は、第1および第2のハブ160,180がスライド170に高い摺動性を持って嵌合されるため、精度良い回転伝達が可能となる。また、スライド170に側壁173a,173bを設けているためスライド170の強度を高めることができるため、スライド170の軸方向の厚みを薄くすることができる。
【0049】
次に、ロボット2を制御するロボット制御装置の構成および動作について説明する。図5は、実施例1に係るロボットシステム1の構成を示す図である。ここでは、一つのアクチュエータ10を駆動する例を説明する。なお、例えば、アクチュエータ10bを制御する場合、ロボット制御装置3は、第1および第2のエンコーダ13b,14bから取得した情報に基づいてアクチュエータ10bを制御する。
【0050】
ロボット制御装置3は、ロボット2の関節に設けられたモータ11を駆動する。これにより、モータ11の駆動力が減速機12によってリンク26に伝達され、リンク26が駆動される。かかるロボット制御装置3は、図5に示すように、モータ11の位置指令Prefを出力する指令生成部20と、モータ11の回転角度が位置指令Prefに一致するようにモータ11を制御するサーボ制御部21とを備える。位置指令Prefは、モータ11の回転角度を規定する位置指令である。
【0051】
指令生成部20は、第1および第2のエンコーダ13,14から取得した回転角度Pfb1,Pfb2に基づいて補正した位置指令Prefをサーボ制御部21へ出力する。第1のエンコーダ13は、モータ11のシャフト113の回転角度を回転角度Pfb1として検出し、また、第2のエンコーダ14は、減速機12の出力軸125の回転角度を回転角度Pfb2として検出する。
【0052】
サーボ制御部21は、指令生成部20から位置指令Prefを取得すると共に、第1のエンコーダ13からモータ11の回転角度Pfb1を取得し、モータ11の回転角度Pfb1を位置指令Prefに一致させるための電流指令Erefを演算し、かかる電流指令Erefをモータ11へ出力する。
【0053】
指令生成部20から出力される位置指令Prefは、上述のように、モータ11の回転角度Pfb1と減速機12の出力軸125の回転角度Pfb2に基づいて補正されている。モータ11の回転角度Pfb1と減速機12の出力軸125の回転角度Pfb2には、サーボ制御の遅れ時間の要素が含まれていないため、サーボ制御の遅れ時間を補償する設定作業を行うことなく、減速機12のねじれを補償することができる。
【0054】
図6は、実施例1に係る指令生成部20の構成を示す図である。図6に示すように、指令生成部20は、位置指令生成部30と、位置指令補正部31とを備える。
【0055】
位置指令生成部30は、予め定められた指令プロファイルを元にモータ11の位置指令Pref0を生成する。そして、位置指令生成部30は、生成した位置指令Pref0を位置指令補正部31へ出力する。
【0056】
なお、指令プロファイルは、例えば、次のように生成される。まず、ロボット2のリンク先端に取り付けられた図示しないエンドエフェクタの軌道が、予め決められた加速度、速度にて通るようにエンドエフェクタ位置指令(XYZ座標)を演算する。XYZ座標は制御点であるエンドエフェクタが動作する空間の座標である。そして、エンドエフェクタ位置指令に対して座標変換を行うことによって、モータ11の位置指令Pref0(モータ座標)を生成する。モータ座標はロボット2のリンク26を駆動するモータ11の回転角の座標である。エンドエフェクタの軌道に応じて生成される位置指令Pref0群により指令プロファイルが形成される。
【0057】
位置指令補正部31は、位置指令補正信号である位置補償値Paddを生成し、かかる位置補償値Paddによって位置指令生成部30から出力される位置指令Pref0を補正する。具体的には、位置指令補正部31は、ねじれ位置演算部32と、ねじれ位置初期値記憶部33と、ねじれ位置差分演算部34と、位置補償値演算部35と、位置補償積算部36と、補償位置指令演算部37とを備える。
【0058】
ねじれ位置演算部32は、モータ11の回転軸であるシャフト113の回転角度Pfb1と減速機12の出力軸125の回転角度Pfb2に基づいてねじれ位置Pdifを生成し、生成したねじれ位置Pdifをねじれ位置差分演算部34へ出力する。かかるねじれ位置Pdifは、減速機12のねじれを表す情報である。
【0059】
具体的には、ねじれ位置演算部32は、減速機12の出力軸125の回転角度Pfb2を減速比に基づいて演算した回転角度Pfb2からモータ11の回転角度Pfb1を減算し、かかる差分値をねじれ位置Pdifとする。例えば、減速機12の減速比をnとした場合、ねじれ位置演算部32は、n倍した回転角度Pfb2からモータ11の回転角度Pfb1を減算し、かかる差分値をねじれ位置Pdifとする。
【0060】
ねじれ位置初期値記憶部33は、初期化信号Initが入力されたときにねじれ位置演算部32から出力されるねじれ位置Pdifをねじれ位置初期値Pdif0として記憶する。例えば、ロボット2の姿勢が基本姿勢であるときに初期化信号Initがねじれ位置初期値記憶部33へ入力され、このときにねじれ位置演算部32から出力されるねじれ位置Pdifがねじれ位置初期値Pdif0としてねじれ位置初期値記憶部33に記憶される。
【0061】
ねじれ位置差分演算部34は、ねじれ位置演算部32から取得したねじれ位置Pdifから、ねじれ位置初期値記憶部33から取得したねじれ位置初期値Pdif0を減算し、ねじれ位置差分Perr(=Pdif−Pdif0)を生成する。かかるねじれ位置差分Perrは、ねじれ位置Pdifのねじれ位置初期値Pdif0からのずれを表す情報である。
【0062】
位置補償値演算部35は、ねじれ位置差分Perrから位置補償積算値Paddedを減算し、位置補償値Paddを生成する。かかる位置補償値Paddは、位置指令補正信号であり、位置補償値演算部35から補償位置指令演算部37へ出力される。位置補償積算値Paddedは、位置補償積算部36から出力される情報であり、位置補償積算部36は、位置補償値演算部35から出力される位置補償値Paddを積算して、位置補償積算値Paddedを生成する。
【0063】
補償位置指令演算部37は、位置指令生成部30から取得した位置指令Pref0に、位置補償値演算部35から取得した位置補償値Paddを加算して新たな位置指令Prefを生成する。そして、補償位置指令演算部37は、生成した位置指令Prefをサーボ制御部21へ出力する。
【0064】
このように、実施例1に係るロボットシステム1は、指令生成部20において、モータ11の回転角度Pfb1と減速機12の出力軸125の回転角度Pfb2の差分から求めた位置補償値Paddを位置指令補正信号として位置指令Pref0に加算して位置指令Pref0を補正する。位置指令Pref0とモータ11の回転角度Pfb1との間には、サーボ制御の遅れ時間の要素が含まれるが、モータ11の回転角度Pfb1と減速機12の出力軸125の回転角度Pfb2には、サーボ制御の遅れ時間の要素が含まれない。そのため、実施例1に係るロボットシステム1では、サーボ制御の遅れ時間を補償する設定作業を行うことなく、減速機12のねじれに起因する位置誤差を低減することができる。
【0065】
また、位置補償値演算部35において、ねじれ位置差分Perrから位置補償積算値Paddedが減算されるため、位置補償値Paddとして一度加算したねじれ位置差分Perrは次回から加算されない。従って、ねじれ位置差分Perrに応じて精度良く位置指令Prefを補償することができる。
【0066】
なお、上記実施例では、3軸に第2のエンコーダ14を備えるが、各軸は独立して制御されるため、必要に応じて1軸のみや2軸のみに第2のエンコーダ14を設けるようにしてもよい。
【0067】
また、補正により位置指令Prefが急激に変動することを避けるため、リミッタやフィルタなどの制限手段を設けるようにしてもよい。この場合、制限手段は、ねじれ位置差分演算部34と補償位置指令演算部37の間の経路に設けることができる。
【0068】
例えば、位置補償値演算部35と補償位置指令演算部37との間にリミッタを設けることによって、補償位置指令演算部37で取得される位置補償値Paddに制限の値をかけるようにすることができる。また、例えば、位置補償値演算部35と補償位置指令演算部37との間にフィルタを設けることによって、補償位置指令演算部37で取得される位置補償値Paddの変化率に制限をかけるようにすることができる。
【0069】
また、モータ11の回転角度Pfb1を検出する第1の検出部として、エンコーダを一例に挙げて説明したが、モータ11の回転角度Pfb1を検出することができればよく、例えば、オブザーバであってもよい。同様に、減速機12の出力軸125の回転角度Pfb2を検出する第2の検出部として、エンコーダを一例に挙げて説明したが、減速機12の出力軸125の回転角度Pfb2を検出することができればよく、例えば、オブザーバであってもよい。
【0070】
以上のように、本実施例に係るロボットシステム1では、第2のエンコーダ14は、軸継手140を介して減速機12の出力軸125に連結されるため、減速機12の出力軸125の位置を精度良く検出することができ、従って、高精度の位置決めを行うことができる。また、モータ11の回転角度Pfb1と減速機12の出力軸125の回転角度Pfb2とから求めた位置補償値Paddを位置指令Pref0に加算する。そのため、サーボ制御の遅れ時間を補償する設定作業を行うことなく、減速機12のねじれに起因する位置誤差を低減することができ、これによっても、高精度の位置決めを容易に行うことができる。
【0071】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細及び代表的な実施例に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲及びその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0072】
1 ロボットシステム
2 ロボット
3 ロボット制御装置
11 モータ
12 減速機
13,13a〜13c 第1のエンコーダ(モータ角検出部)
14,14a〜14c 第2のエンコーダ(検出部)
27,27a〜27c 回転電機
125 減速機の出力軸
140 軸継手
160 第1のハブ
170 スライド(中間部材)
180 第2のハブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、
前記モータの駆動力をリンクに伝達する減速機と、
前記減速機の出力軸の回転角度を検出する検出部と、を備え、
前記検出部は、
前記減速機の出力軸に軸継手を介して連結されたことを特徴とするロボット。
【請求項2】
前記検出部は、
前記リンクに設けられた開口を通じて、前記減速機の出力軸と前記軸継手を介して連結されることを特徴とする請求項1に記載のロボット。
【請求項3】
前記軸継手は、
前記開口内に配置されることを特徴とする請求項2に記載のロボット。
【請求項4】
前記軸継手は、
連結する軸間に位置する中間部材が樹脂で形成されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のロボット。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のロボットと、
前記ロボットのモータを駆動するロボット制御装置と、
前記モータの回転角度を検出するモータ角検出部と、
を備え、
前記ロボット制御装置は、
前記検出部による検出結果および前記モータ角検出部による検出結果に基づいて、前記モータの位置指令を補正することを特徴とするロボットシステム。
【請求項6】
モータと、
前記モータの駆動力をリンクに伝達する減速機と、
前記減速機の出力軸の回転角度を検出する検出部と、を備え、
前記検出部は、
前記減速機の出力軸に軸継手を介して連結されたことを特徴とする回転電機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−171072(P2012−171072A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−37692(P2011−37692)
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【出願人】(000006622)株式会社安川電機 (2,482)
【Fターム(参考)】