説明

ロボット、及びロボットの制御方法

【課題】最大定格出力に近い駆動条件であっても、本来の駆動性能を発揮することが可能なロボットを提供すること。
【解決手段】多軸ロボットは、第1の駆動電圧を供給する第1電源回路1と、第1の駆動電圧よりも高い電圧である第2の駆動電圧を供給する第2電源回路2と、第1電源回路1と第2電源回路2とを切り替えるスイッチ21〜26とを備えている。そして、モーター部11〜16の駆動条件を規定する制御信号が所定の閾値以上になった場合に、スイッチ21〜26を駆動して第1電源回路1から高電圧の第2電源回路2に切り替えることにより、十分な駆動電圧が確保されるため、期待通りの動作を行うことができる。換言すれば、制御信号から駆動電力が不足しそうな状況を予測して、第2電源回路2に切り替えることにより、決められた作業時間(タクトタイム)で、作業に必要な動作を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボット、及びロボットの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工業製品の組み立て工程、あるいは溶接工程等においては、ロボット(ロボット装置)が多用されている。そして近年は、作業工程の複雑化に伴い、複数の駆動軸(ジョイント)、及びリンク(腕木)を有する多軸ロボットの需要が増えてきている。かかる多軸ロボットでは、作業内容に応じて、先端(末端)のリンクに部品を把持するためのハンドや、溶接を行うための溶接装置等が取り付けられる。
そして複数の駆動軸(回転軸)の近傍には、それぞれモーター等のアクチュエーターや減速機構等が組み込まれており、各駆動軸に連動するリンクを動かしていた。例えば特許文献1には、6つの駆動軸を有する6軸垂直型ロボットが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−167515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の多軸ロボットにおいて、複数のリンクを同時に駆動する場合や、最大出力に近い状態で使用する場合等では、期待される動作を行うことが困難であるという課題があった。換言すれば、最大定格出力に近い駆動条件においては、本来の駆動性能(速度やトルク等)を得ることが困難であるという課題があった。
これは複数のモーターに電流を一気に供給することにより電源電圧が降下してしまうからである。
つまり、従来の多軸ロボットでは、作業に必要な動作を行うことが困難であるという課題があった。また、決められた作業時間(タクトタイム)で作業を行うことが困難な場合があるという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の適用例又は形態として実現することが可能である。
【0006】
(適用例)
複数のリンクが複数のジョイントによって直列に接続されたアーム構造を有するロボットであって、ジョイントごとに配置された複数のモーターと、モーターに第1の駆動電圧を供給する第1電源回路、および第1の駆動電圧よりも高い電圧である第2の駆動電圧を供給する第2電源回路を含む電源部と、第1電源回路と第2電源回路とを切り替えるスイッチ部と、モーターの駆動条件を制御する制御部と、を備え、制御部は、駆動条件を規定する制御信号が所定の閾値以上になった場合に、スイッチ部を駆動して第1電源回路から第2電源回路に切り替えることを特徴とするロボット。
【0007】
この適用例によれば、ロボットは、第1の駆動電圧を供給する第1電源回路と、第1の駆動電圧よりも高い電圧である第2の駆動電圧を供給する第2電源回路と、第1電源回路と第2電源回路とを切り替えるスイッチ部とを備えている。
そして、モーターの駆動条件を規定する制御信号が所定の閾値以上となった場合に、スイッチ部を駆動して第1電源回路から高電圧の第2電源回路に切り替えることにより、十分な駆動電圧が確保されるため、期待通りの動作を行うことができる。換言すれば、制御信号から駆動電力が不足しそうな状況を予測して、第2電源回路に切り替えることにより、決められた作業時間(タクトタイム)で、作業に必要な動作を行うことができる。
従って、最大定格出力に近い駆動条件であっても、本来の駆動性能(速度やトルク等)を発揮することが可能なロボットを提供することができる。
【0008】
また、制御信号は、モーターの駆動トルクを規定するトルク指令、またはモーターの回転数を規定する速度指令、もしくはモーターの駆動電流を規定するトルク電流値であることが好ましい。
【0009】
また、アーム構造の一端には、作業を行うためのハンドが取り付けられ、アーム構造における一端の反対側の他端は、ロボットを支持する基底部側に取り付けられており、複数のモーターのうち、少なくとも他端におけるモーターには、スイッチ部が設けられていることが好ましい。
【0010】
また、第2電源回路の電力を蓄電する第2コンデンサーの耐電圧は、第1電源回路の電力を蓄電する第1コンデンサーの耐電圧よりも高く、第2コンデンサーの容量は、第1コンデンサーの容量よりも小さいことが好ましい。
【0011】
複数のリンクが複数のジョイントによって直列に接続されたアーム構造を有するロボットであって、ジョイントごとに配置された複数のモーターと、モーターに第1の駆動電圧を供給する第1電源回路、および第1の駆動電圧よりも高い電圧である第2の駆動電圧を供給する第2電源回路を含む電源部と、第1電源回路と第2電源回路とを切り替えるスイッチ部と、第1電源回路の出力電流、および/または出力電圧を測定する検出部と、モーターの駆動条件を制御する制御部と、を備え、制御部は、出力電流が所定の閾値以上になった場合、または出力電圧が所定の閾値以下になった場合に、スイッチ部を駆動して第1電源回路から第2電源回路に切り替えることを特徴とするロボットであっても良い。
【0012】
本適用例に係るロボットの制御方法は、複数のリンクが複数のジョイントによって直列に接続されたアーム構造と、ジョイントごとに配置された複数のモーターと、第1の駆動電圧を供給する第1電源回路と、第1の駆動電圧よりも高い電圧である第2の駆動電圧を供給する第2電源回路と、モーターの電源として、第1電源回路と第2電源回路とを切り替えるスイッチ回路と、を有するロボットの制御方法であって、モーターの駆動条件を規定する制御信号が所定の閾値以上になった場合に、スイッチ回路を駆動して、第1電源回路から第2電源回路に切り替えることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施形態1に係るロボットの概略構成を示す斜視図。
【図2】制御ブロックの概要図。
【図3】制御部の構成を示すブロック図。
【図4】電源部における電源回路の回路図。
【図5】電源回路切り換え方法の流れを示したフローチャート図。
【図6】モーターの駆動トルク/回転数特性(TN特性)を示すグラフ図。
【図7】実施形態2に係る制御ブロックの概要図。
【図8】実施形態3に係るロボットの制御部の構成を示すブロック図。
【図9】(a),(b)変形例3に係る電源回路図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の各図においては、各層や各部材を認識可能な程度の大きさにするため、各層や各部材の尺度を実際とは異ならせしめている。
【0015】
(実施形態1)
「ロボットの概要」
図1は、本実施形態にかかるロボットの概略構成を示す斜視図である。
ロボット100は、基本的な駆動軸(回転軸)を6つ有する6軸の垂直型多関節ロボットであり、人間の腕の構造を模して高さ方向(Z軸)に複数のリンク(腕木)が複数のジョイント(関節、継手)によって直列に接続された構成であるため、自由度が高く複雑な作業を行うことが可能である。
特に、特徴的な電源部を備えたことにより、複数の駆動軸が同時に駆動されるような高負荷時においても、必要な駆動電力を確保することが可能となり、期待通りの動作を行うことができる。なお、電源部の構成や、その制御方法などについては後述する。
【0016】
ロボット100は、基底部70、本体部71、制御ボックス72、ジョイント73、リンク74、ジョイント75、リンク76、ジョイント77、リンク78、ジョイント79、リンク80、およびハンド81などから構成されている。
基底部70は、ロボット100の台座であり、工場内の作業スペースの床や、作業台などの平面に複数本のボルト(ネジ)によって強固に固定されている。なお、固定場所は、水平面(X軸及びY軸を含む面)に限定するものではなく、ロボット100の重量、及び振動に耐え得る強度があれば、移動可能な台車上や、壁面、天井などであっても良い。
【0017】
本体部71は、円筒状をなしており、基底部70の上に配置されている。
制御ボックス72は、本体部71の背面に配置されており、その内部には、ロボット100を駆動制御するための制御部や、電力を供給する電源部などが格納されている。制御ボックス72には、電源ケーブルが接続されており、その末端は、交流電力を引き込むためのインレット83となっている。なお、制御ボックス72は、ロボット本体とは別体に設けられていても良い。
また、制御ボックス72には、ロボット100を操作するための操作パネルに加えて、動作プログラムを入力するためのRS232Cや、USB(Universal Serial Bus)などのインターフェイス端子が設けられている。または、無線LAN(Local Area Network)端末や、赤外線送受信器などのインターフェイス装置を備えた構成であっても良い。
【0018】
本体部71の上には、ジョイント73、リンク74が、この順番に配置されている。
まず、ロボット100のジョイント73からハンド81までのアーム構造(腕から手まで)は、本体部71をZ軸方向に貫く回転軸91を中心にして水平方向に旋回する。この回転軸91が、第1の駆動軸である。
また、ハンド81が取り付けられたリンク80がアーム構造における一端(末端)であり、本体部71(基底部70側)に取り付けられたジョイント73がアーム構造における他端(根元)に相当する。なお、以降の説明において、アーム構造におけるハンド81に近い側を「末端側」、基底部70に近い側を「根元側」という表現も用いる。
また、本体部71には、アーム構造を回転駆動するためのモーター、および複数のギヤを含む減速機構などが組み込まれている。また、以降説明する各回転軸の近傍にも、該当するリンクやハンドを駆動するためのモーター、および減速機構などが組み込まれている。
【0019】
リンク74は、ジョイント73をX軸方向に貫く第2の駆動軸としての回転軸92を中心にして駆動される。回転軸92は、リンク74の根元側に位置している。そして、リンク74の末端側には、ジョイント75が組み合わされている。なお、回転軸の延在方向は、ロボットが動作すると変化する(例えば、回転軸91を中心に旋回した場合)ため、図1に示す、初期状態に設置された状態を前提として説明する。
リンク76は、ジョイント75の末端側に延在するように配置されており、ジョイント75(リンク74末端側)をX軸方向に貫く第3の駆動軸としての回転軸93を中心にして駆動される。そして、リンク76の末端側には、ジョイント77が組み合わされている。
リンク78は、ジョイント77の末端側に延在するように配置されており、ジョイント77(リンク76末端側)をX軸方向に貫く第4の駆動軸としての回転軸94を中心にして駆動される。そして、リンク78の末端側には、ジョイント79が組み合わされている。
【0020】
リンク80は、ジョイント79の末端側に配置されており、ジョイント79(リンク78末端側)をX軸方向に貫く第5の駆動軸としての回転軸95を中心にして駆動される。そして、リンク80の末端側には、ハンド81が組み合わされている。
ハンド81は、円柱状をなしたリンク80の略中心を貫く第6の駆動軸としての回転軸96を中心にして駆動される。
そして、ハンド81の末端には、指部82が形成されている。指部82は、親指と中指に相当する2本の指から構成されており、2本の指先を開閉することにより各種パーツなどの作業対象物を把持することができる。なお、指部82に替えて、溶接装置などの各種の作業用アタッチメントをセットすることもできる。
なお、回転軸を6つ持つ6軸ロボットに限定するものではなく、複数の駆動軸を有するロボットであれば良い。
【0021】
「制御方法の概要」
図2は、ロボットの制御ブロックの概要図である。ここでは、ロボット100の制御方法(構成)の概要について、図2を中心に、適宜、図1を適宜交えながら説明する。
ロボット100の駆動制御は、6つの駆動軸ごとに配置された6つのモーターを駆動制御することによって行われる。なお、以下の説明においては、モーターと、当該モーターに付属するエンコーダーと、当該モーターに駆動電力を供給するインバーターとを1つのセットとして「モーター部」と称して説明する。
【0022】
モーター部11は、最も根元側の回転軸91に配置されたモーター11Mと、当該モーターの回転速度や位置を検出するためのエンコーダー11Eと、当該モーターに供給する交流電力を生成するインバーター11iなどから構成されている。
モーター11Mは、好適例としてACサーボモーターを用いている。なお、ACサーボモーターに限定するものではなく、サーボモーターであれば良い。
インバーター11iは、三相ブリッジ回路(図示せず)を有しており、制御部5のサーボ演算回路(後述する)から供給されるPWM(Pulse Width Modulation)駆動信号に基づいた駆動信号を生成し、モーター11Mを回転駆動する。
【0023】
各モーター部は、モーター部11から末端側に向かって、モーター部12(回転軸92)、モーター部13(回転軸93)、モーター部14(回転軸94)、モーター部15(回転軸95)、モーター部16(回転軸96)の順に配置されている。各モーター部には、モーター部11と同様に、それぞれエンコーダーとインバーターとが配置されている。
なお、各モーターの定格は、根元側のモーター11Mの方が、末端側のモーター16Mよりも大きくなっている。これは、根元側のモーター11Mには、腕から手までに相当する重い上部構造を動かすための駆動力が必要なためであり、パーツを動かす駆動力があれば足りる末端側のモーター16Mよりも、定格(サイズ)が大きく設定されている。同様に、モーター11Mとモーター16Mとの間のモーターの定格も、根元側の方が末端側よりも大きく設定されている。
【0024】
ロボットの制御ブロック構成は、前述のモーター部11〜16に加えて、電源部3、スイッチ部4、および制御部5などから構成されている。
電源部3は、第1電源回路1、第2電源回路2などから構成されている。
第1電源回路1は、商用交流電源から直流電力を生成する電源回路である。
第2電源回路2も、商用交流電源から直流電力を生成する電源回路であるが、第1電源回路1よりも高電圧の直流電力を生成する。
スイッチ部4は、6つのスイッチ21〜26などから構成されている。
スイッチ21は、モーター部11に接続される電源回路を、第1電源回路1、または第2電源回路2のいずれかに切替えるスイッチ回路である。換言すれば、第1電源回路1と、第2電源回路2とのいずれかにモーター部11の電源を切替えるスイッチである。スイッチ回路としては、リレーや、パワーMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)、またはメカニカルスイッチなどを用いることができる。
図2に示すように、スイッチ21は、初期状態では、第1電源回路1に接続されているが、制御部5が高負荷状態になったと判断した場合に第2電源回路2に切り替わる。なお、具体的な判断処理などについては後述する。
スイッチ22〜26も、スイッチ21と同様に、モーター部12〜16とそれぞれ対となって設けられており、各モーター部に接続される電源回路を、第1電源回路1と、第2電源回路2とのいずれかに切り替える。
【0025】
制御部5は、CPU(Central Processing Unit)を含む制御回路と、各モーター部11〜16との間で、位置や回転速度などの駆動情報を検知し、検知した情報を反映した駆動信号を供給するフィードバック制御を行うサーボ演算回路(いずれも図示せず)などから構成されている。
また、制御部5は、白抜きの制御ライン(末端矢印)で示すように、スイッチ21〜26の切り替え制御を司る。なお、スイッチ21〜26の切り替えは、連動して行うこともできるし、それぞれ独立して切り替えることもできる。
また、制御部5には、フラッシュメモリーなどの不揮発性のメモリーにより構成された記憶部6が附属している。
【0026】
「制御部の詳細」
図3は、制御部の構成を示すブロック図である。
ここでは、制御部5の詳細な構成について説明する。なお、説明を解りやすくするために、図3では、6つのモーター部のうち、モーター部11のみを図示している。
制御部5は、制御回路7と、サーボ演算回路8などから構成されている。
制御回路7は、CPUであり、記憶部6の動作プログラムに従って、サーボ演算回路8や、スイッチ部4のスイッチ21を含む各部を制御する。なお、DSP(Digital Signal Processor)や、FPGA(Field Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)を用いることであっても良い。
記憶部6には、所定の作業動作を行うための順序と内容を規定した複数のプログラムや、付随するデータなどが記憶されている。当該プログラムには、モーターに加わる負荷状況に応じて電源回路を切り替える制御プログラムなどのロボット100の動作を制御するための様々なプログラムが含まれている。
また、付随するデータには、電源回路を切り替える際の判断基準となるトルク指令、トルク電流、回転数の閾値(境界値)を記録したデータテーブルや、初期状態における各モーター部の位置情報のデータなどが含まれている。なお、これらのデータは、6つのモーター部ごとに区分けされて記憶されている。
【0027】
サーボ演算回路8は、軌道生成部30、位置制御部31、速度制御部32、エンコーダーIF33、電流制御部34、PWM信号生成部36などから構成されている。
軌道生成部30は、位置指令を位置制御部31に送信する。なお、当該位置指令は、制御回路7からの位置指令に基づくものである。
位置制御部31は、位置指令と、エンコーダー11EからエンコーダーIF33を介して入力されるモーター11Mの位置情報とを用いて演算した速度指令を速度制御部32に送信する。
速度制御部32は、速度指令と、エンコーダー11EからエンコーダーIF33を介して入力されるモーター11Mの速度情報(回転数)とを用いて演算したトルク指令を電流制御部34に送信する。また、制御信号としてのトルク指令は、モーター11Mの駆動トルクを規定する指令であり、制御回路7にも同時に送信される。
エンコーダーIF33には、エンコーダー11Eの検知データが入力されており、この検知データに基づく位置情報を位置制御部31に送信し、速度情報を速度制御部32に送信する。
【0028】
電流制御部34は、インバーター11iからモーター11Mに出力されるU相電流とV相電流とをモニターするuv/dq変換部35からのd軸電流、q軸電流、およびトルク指令から、電流制御信号を算出してPWM信号生成部36に送信する。
PWM信号生成部36は、電流制御信号に基づいて、インバーター11iを駆動するためのPWM駆動信号を出力する。インバーター11iは、三相ブリッジ回路(図示せず)を有しており、PWM駆動信号に基づいて、モーター11Mに3相のPWM駆動電圧を供給する。
【0029】
図3では、一例として、制御回路7にトルク指令が入力される信号線を図示しているが、制御回路7には、モーター11Mの駆動条件を指示する速度指令、トルク電流などの各種指令や、エンコーダーIF33から出力される位置情報、速度情報などの駆動情報が入力されている。制御回路7は、これらの各種指令、および駆動情報と、記憶部6の該当するデータテーブルの数値とを比較、または演算して、スイッチ21の切り替えを含む各種制御を行うことができる。
なお、図3では、制御ボックス72(図1)に格納された制御部5内のサーボ演算回路8によって、1つのモーター部11を駆動制御する場合について説明したが、6つのモーター部11〜16を駆動制御する場合には、前述した処理を並行して、または順次行えば良い。または、制御ボックス72には、制御回路7と記憶部6のみを格納して、6つのモーター部11〜16ごとに専用のサーボ演算回路を設ける構成としても良い。
【0030】
「電源部の詳細」
図4は、電源部における電源回路の回路図である。
ここでは、第1電源回路1、および第2電源回路2の回路構成について説明する。
第1電源回路1は、商用交流電源40から供給される交流電力を全波整流回路で整流し、整流した直流電力を第1コンデンサーとしてのコンデンサー51に蓄電する直流電源回路である。第1電源回路1からは、直流の第1の駆動電圧(電力)が供給される。
全波整流回路は、4個のダイオードDをブリッジ構成に接続した回路構成となっており、2つのダイオードDのカソード端子の接合部にコンデンサー51のプラス端子が、残る2つのダイオードDのアノード端子の接合部にコンデンサー51のマイナス端子が接続されている。
【0031】
第2電源回路2も、同様なブリッジ式の全波整流回路と第2コンデンサーとしてのコンデンサー52とを含む直流電源回路であるが、商用交流電源40と全波整流回路との間に、昇圧用のトランス41を備えている。
このような構成により、商用交流電源40が供給する同一の交流電力から、第1電源回路1と、第2電源回路2とで、それぞれ電圧の異なる直流電力を生成することができる。第2電源回路2からは、第1の駆動電圧(電力)よりも高電圧の第2の駆動電圧(電力)が供給される。
【0032】
以下に好適例を紹介する。
商用交流電源40は、AC200Vとする。
第2電源回路2の昇圧用のトランス41の巻き線比率は、「1次側:2次側」=「1.0:1.2」とする。
これにより、AC200Vが供給される第1電源回路1のコンデンサー51の両端からは第1の駆動電圧としてのDC282Vが得られ、AC240Vが供給される第2電源回路2のコンデンサー52の両端からは第2の駆動電圧としてのDC339Vが得られる。
【0033】
ここで、第2電源回路2の電力を蓄電するコンデンサー52の耐電圧は、第1電源回路1の電力を蓄電するコンデンサー51の耐電圧よりも高く設定する。具体的には、コンデンサー51の耐電圧を1.0としたときに、コンデンサー52の耐電圧は1.5〜2.0倍の範囲内とすることが好ましい。
また、コンデンサー52の容量は、コンデンサー51の容量よりも小さく設定する。具体的には、コンデンサー51の容量を1.0としたときに、コンデンサー52の容量は1/5〜1/3倍の範囲内とする。
これは、通常状態で用いられる第1電源回路1では、電力を長時間安定して供給することが求められるため大きな容量が必要となり、高負荷時に短時間の加勢をするための第2電源回路2では、容量はさほど必要ないが、高電圧に耐え得る耐電圧が必要となるからである。
また、コンデンサーのコストは、耐電圧および容量に比例するため、上述の好適例の場合では、コンデンサー52のコストはコンデンサー51の約1/3となり、第2電源回路2の費用を抑制することができる。
【0034】
「電源回路切り換え方法の流れ」
図5は、電源回路の切り換え方法の流れを示したフローチャートである。
ここでは、複数の回転軸が同時に駆動されるような高負荷時における電源回路の切り換え(制御)方法の流れについて、図3を交えて説明する。なお、説明を解りやすくするために、6つのモーター部のうち、モーター部11のみを用いて説明する。
また、以下のフローは、記憶部6の制御プログラムに基づいて、制御部5がスイッチ21を含む各部を制御することにより実行される。
【0035】
ステップS1では、記憶部6に記憶されている所定の作業内容に基づいた位置指令に従い、モーター部11を駆動する。なお、初期状態においては、スイッチ21が第1電源回路1に接続された状態となっている。
ステップS2では、速度制御部32は、位置制御部31からの速度指令、およびエンコーダーIF33からの速度情報に基づいてトルク指令を生成(演算)し出力する。
ステップS3では、制御部5は、出力されたトルク指令と、記憶部6のデータテーブルの閾値とを比較し、トルク指令が閾値以上であるか判断する。トルク指令が閾値以上であった場合には、ステップS4に進む。トルク指令が閾値未満であった場合には、ステップS5に進む。
【0036】
ステップS4では、制御部5は、スイッチ21を第1電源回路1から第2電源回路2に切り換える。なお、既に第2電源回路2が接続(選択)されている場合には、その状態を維持する。
ステップS5では、制御部5は、スイッチ21を第2電源回路2から第1電源回路1に切り換える。なお、既に第1電源回路1が接続(選択)されている場合には、その状態を維持する。
ステップS6では、ステップS2で出力されたトルク指令に従ってモーター部11を駆動する。
ステップS7では、制御部5は、位置指令に規定された目標位置に到達したか判断する。目標位置に到達した場合には、ステップS8に進む。目標位置に到達していない場合には、ステップS2に戻る。
ステップS8では、制御部5は、モーター部11の駆動を停止する。
【0037】
なお、上記説明では、1つのモーター部11の制御方法について説明したが、複数のモーター部を制御する場合も同様に、各々のトルク指令と個別の閾値とを比較して、対応するスイッチを切り換えれば良い。
【0038】
「作用」
図6は、モーターの駆動トルク/回転数特性(TN特性)を示すグラフ図である。
ここでは、図5で説明した制御方法により得られる作用について、図3を交えて説明する。
図6において、横軸には駆動トルクを、縦軸には回転数を取っている。
グラフ60(実線)は、第1電源回路1を電源に用いた場合におけるモーター11MのTN特性(最大定格)の一例であり、長方形の右上を斜め下方にカットした台形状をなしている。
【0039】
このグラフ60は、モーターの原理式である下記数式(1)、数式(2)に基づく特性となっている。なお、下記数式では、駆動電圧をV、巻き線抵抗をR、トルク電流をI、誘起電圧をE、トルクをT、トルク定数をKtとしている。
V=R*I+E …(1)
T=Kt*I ……(2)
まず、数式(1)において、モーターの回転数が上昇すると、回転数に比例する誘起電圧Eが大きくなり、また巻き線抵抗Rは一定のため、必然的にトルク電流Iが少なくなる。また、数式(2)に示すように、トルクTは、トルク電流Iと比例関係にあるため、トルク電流Iの減少に伴い、トルクTも小さくなることが解る。
このため、グラフ60は、右肩下がりの特性となり、最大(最高)回転数(6,000rpm)において定格の最大トルク(3.5Nm)を得ることはできず、高回転で、かつ大トルクが必要な高負荷時における駆動には余裕がなかった。
【0040】
図6のグラフ61(破線)は、第2電源回路2を電源に用いた場合におけるモーター11MのTN特性(最大定格)を示している。
ここで、電源回路を第1電源回路1から第2電源回路2に切り換えることにより、グラフ61に示すように、ハッチング部分のTN特性が広がるため、高負荷時の駆動に対応することが可能になる。これは、第1電源回路1から高電圧の第2電源回路2に切り換えることにより、数式(1)における駆動電圧Vが大きく(高く)なるからである。
【0041】
以上述べたように、本実施形態に係るロボット100、およびその制御方法によれば、以下の効果を得ることができる。
ロボット100は、第1の駆動電圧を供給する第1電源回路1と、第1の駆動電圧よりも高い電圧である第2の駆動電圧を供給する第2電源回路2と、第1電源回路と第2電源回路とを切り替えるスイッチ21〜26を備えている。
そして、モーターの駆動トルクを規定するトルク指令(制御信号)が所定の閾値以上となった場合に、スイッチを駆動して第1電源回路1から高電圧の第2電源回路2に切り替えることにより、十分な駆動電圧が確保されるため、期待通りの動作を行うことができる。換言すれば、トルク指令から駆動電力が不足しそうな状況を予測して、第2電源回路に切り替えることにより、決められた作業時間(タクトタイム)で、作業に必要な動作を行うことができる。
従って、最大定格出力に近い駆動条件であっても、本来の駆動性能(速度やトルク等)を発揮することが可能なロボット100を提供することができる。
【0042】
また、複数のモーター部を制御する場合でも、各々のトルク指令と個別の閾値とを比較して対応するスイッチを切り換えれば良いため、必要なモーターだけに第2の駆動電圧が供給されることになり、消費電力効率が良い。
【0043】
さらに、第1電源回路1の電力を蓄電するコンデンサー51の耐電圧および容量を1.0としたときに、第2電源回路2の電力を蓄電するコンデンサー52の耐電圧は1.5〜2.0倍の範囲内であり、容量は1/5〜1/3倍の範囲内となっている。
これにより、コンデンサー52のコストはコンデンサー51の約1/3となり、費用を抑制することができる。
【0044】
また、第2電源回路2に切り換えた後であっても、目標位置に到達するまでの間で、トルク指令が閾値未満となった場合には、再度、第1電源回路1に切り換えを行うため、その間に第2電源回路2のコンデンサー52を充電することが可能となり、次の高負荷に備えることができる。
【0045】
(実施形態2)
図7は、実施形態2に係るロボットの制御ブロックの概要図であり、図2に対応している。
以下、実施形態2に係るロボットについて説明する。なお、実施形態1と同一の構成部位については、同一の番号を附し、重複する説明は省略する。
図7のブロック図では、末端側のモーター部14〜16に対応するスイッチが設けられていない。換言すれば、根元側のモーター部11〜13のみに対応するスイッチ21〜23が設けられている点が実施形態1と異なる。
【0046】
これは、実施形態1で説明したように、各モーターの定格(サイズ)が根元側で大きく、末端側に行くに従って小さくなることを考慮したものである。詳しくは、根元側の3つのモーター部は、リンクやハンドの重量に加えて、それらが駆動するときのモーメント力の影響も受けることから高負荷となり易いため、スイッチを選択的に取り付けている。
なお、根元側の3つのモーター部全てにスイッチを設ける構成に限定するものではなく、少なくとも根元側から1〜3つ目以内のモーターのいずれかにスイッチが取り付けられていれば良い。または、ロボットの構成、または仕様上、高負荷となり易いモーターに対して選択的にスイッチが取り付けられていれば良い。
【0047】
また、電源回路の切り換え制御方法の一部についても、実施形態1と異なっている。
詳しくは、図5のフローチャートのステップS3において、モーター部11〜13のうち、1つのモーター部のトルク指令が閾値以上であった場合には、ステップS4で、全てのモーター部11〜13のスイッチ21〜23を同期して第2電源回路2に切り換える。換言すれば、複数のモーターのうち、1つでも高負荷となることが予測された場合には、複数のモーター全ての電源を高電圧の第2電源回路2に切り換えるように制御する。
【0048】
上述した通り、本実施形態に係るロボットによれば、実施形態1における効果に加えて、以下の効果を得ることができる。
この構成によれば、ロボットの構成上、高負荷となり易いモーターに対して選択的にスイッチが取り付けられているため、スイッチの数を減らすことができる。また、スイッチが減った分、制御も容易となる。
さらに、複数のモーターのうち、1つでも高負荷となることが予測された場合には、複数のモーター全ての電源を高電圧の第2電源回路2に切り換えるため、制御を容易にすることができるとともに、高負荷時において余裕を持った駆動を行うことができる。
従って、ロボットの構成や、制御内容をシンプルにすることができる。
【0049】
(実施形態3)
図8は、実施形態3に係る制御部の構成を示すブロック図であり、図3に対応している。
以下、実施形態3に係るロボットについて説明する。なお、実施形態1と同一の構成部位については、同一の番号を附し、重複する説明は省略する。
本実施形態に係るロボットのブロック構成では、図3の構成に加えて、監視回路55を備えている点が実施形態1と異なる。その他の構成は、実施形態1と同様である。なお、本実施形態は、実施形態2にも適用可能である。
【0050】
監視回路55は、電圧、および電流を計測する検出回路であり、第1電源回路1の出力電圧、および出力電流を検出して、その検出結果を制御回路7に送信する。換言すれば、監視回路55は、第1電源回路1の出力電圧、および出力電流のモニター回路である。なお、電圧および電流の両方を計測する回路に限定するものではなく、いずれか一方を検出する回路であっても良い。
【0051】
また、電源回路の切り換え制御方法の一部についても、実施形態1と異なっており、本実施形態では、監視回路55が検出した第1電源回路1の出力電流、または出力電圧をトリガーとして電源回路の切り替えを行う。
詳しくは、図5のフローチャートに基づいて説明する。
まず、ステップS2では、トルク指令演算に替えて、監視回路55により第1電源回路1の出力電流の計測を行う。
続いて、ステップS3では、計測した出力電流と、所定の閾値とを比較し、出力電流が閾値以上であるか判断する。出力電流が閾値以上であった場合には、ステップS4に進む。出力電流が閾値未満である場合には、ステップS5に進む。
また、ステップS4,S5では、全てのスイッチを同期して(一緒に)切り換える。
その他の処理フローは、実施形態1での説明と同様である。
【0052】
また、出力電流に替えて、出力電圧に基づいて切り替え制御を行っても良い。
この場合、ステップS2では、監視回路55により第1電源回路1の出力電圧の計測を行う。
続いて、ステップS3では、計測した出力電圧と、所定の閾値とを比較し、出力電圧が閾値以下であるか判断する。出力電圧が閾値以下であった場合には、ステップS4に進む。出力電圧が閾値を超えている場合には、ステップS5に進む。
また、ステップS4,S5では、全てのスイッチを同期して(一緒に)切り換える。
その他の処理フローは、実施形態1での説明と同様である。
【0053】
また、上記判断の基準となる出力電流、および出力電圧の所定の閾値は、あらかじめ記憶部6のデータテーブルに記憶されている。第1電源回路1の出力電流は、負荷状態に応じて変化する。このため、第1電源回路1から取り出すことができる許容(限界)電力量に近づいていることを出力電流から予測可能であり、本実施形態では、この原理を用いている。出力電流の所定の閾値は、直近に許容電力量に達してしまうレベルの電流値を、設計データから演算、または実験データから導出して定めている。
また、第1電源回路1の出力電圧も、出力電流よりは変化量が少ないが、負荷状態に応じて変化する。出力電圧の閾値についても、出力電流と同様に、直近に許容電力量に達してしまうレベルの電圧値を、設計データから演算、または実験データから導出して定めている。
【0054】
なお、出力電圧、出力電流のいずれかを判断基準とすることに限定するものではなく、出力電圧と出力電流との両方が上記判断基準を満たした場合に、第2電源回路2への切り換えを行うことであっても良い。換言すれば、第1電源回路1の出力電圧、および/または出力電流をトリガーとして電源回路の切り替えを行えば良い。
【0055】
上述した通り、本実施形態に係るロボットによれば、上記各実施形態における効果に加えて、以下の効果を得ることができる。
本実施形態によれば、監視回路55を用いて、第1電源回路1の出力電流、または出力電圧をトリガーとして電源回路の切り替えを行うため、第1電源回路1の負荷状態を適切に把握して、第2電源回路2に切り換えることができる。換言すれば、第1電源回路1の出力電流、または出力電流から駆動電力が不足しそうな状況を予測して、第2電源回路に切り替えることにより、決められた作業時間(タクトタイム)で、作業に必要な動作を行うことができる。
従って、最大定格出力に近い駆動条件であっても、本来の駆動性能(速度やトルク等)を発揮することが可能なロボットを提供することができる。
【0056】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されず、上述した実施形態に種々の変更や改良などを加えることが可能である。変形例を以下に述べる。
【0057】
(変形例1)
図3、および図5を用いて説明する。
上記実施形態1では、制御信号としてトルク指令を用いて説明したが、制御信号はトルク指令に限定するものではない。
以下、変形例1に係る制御方法について説明する。なお、実施形態1と同一の構成部位については、同一の番号を附し、重複する説明は省略する。
【0058】
制御信号としては、モーターの駆動条件を規定する指標(目標値)であれば良く、例えば、速度指令(回転数指令)や、トルク電流値を用いることもできる。
これらの指標を制御信号として用いる場合には、図5に於けるステップS2,S3の「トルク指令」を「速度指令(回転数指令)」、または「トルク電流値」に読み替えれば良い。なお、この場合、記憶部6のデータテーブルには、あらかじめモーターごとのトルク電流の閾値、回転数の閾値を記憶しておく。
この制御方法によれば、速度指令(回転数指令)や、トルク電流値を用いても、上記各実施形態と同様の駆動制御を行うことができる。
【0059】
(変形例2)
図2、および図5を用いて説明する。
上記実施形態1では、1つのモーターごとの個別のトルク指令を用いて電源回路を切り換えることとして説明したが、この方法に限定するものではなく、複数のモーターのトルク指令(トルク電流)の総和を用いて、電源回路の切り換え制御を行っても良い。
以下、変形例2に係る制御方法について説明する。なお、実施形態1と同一の構成部位については、同一の番号を附し、重複する説明は省略する。
【0060】
図5のフローチャートに基づいて説明する。
まず、ステップS2では、全てのモーターにおけるトルク指令の総和を演算する。
続いて、ステップS3では、トルク指令の総和と、所定の閾値とを比較し、トルク指令の総和が閾値以上であるか判断する。トルク指令の総和が閾値以上であった場合には、ステップS4に進む。トルク指令の総和が閾値未満であった場合には、ステップS5に進む。
その他の処理フローは、実施形態1での説明と同様である。
【0061】
また、上記判断の基準となるトルク指令の総和に関する所定の閾値は、あらかじめ記憶部6のデータテーブルに記憶されている。
なお、トルク指令の総和に限定するものではなく、速度指令(回転数指令)の総和や、トルク電流値の総和を用いても良い。なお、本変形例は、実施形態2にも適用可能である。
【0062】
上述した通り、本変形例に係るロボットによれば、上記各実施形態における効果に加えて、以下の効果を得ることができる。
本実施形態によれば、全てのモーターにおけるトルク指令(電流)の総和(総合負荷)を用いて、電源回路の切り替えを行うため、第1電源回路1の負荷状態を適切に把握して、第2電源回路2に切り換えることができる。換言すれば、総合的な負荷状態の指標となるトルク指令の総和から、駆動電力が不足しそうな状況を予測して、第2電源回路に切り替えることにより、決められた作業時間(タクトタイム)で、作業に必要な動作を行うことができる。
従って、最大定格出力に近い駆動条件であっても、本来の駆動性能(速度やトルク等)を発揮することが可能なロボットを提供することができる。
【0063】
(変形例3)
図9(a),(b)は、変形例3に係る電源回路図であり、図4に対応している。
上記実施形態1において、第2電源回路2ではトランス41を用いて高電圧化していたが、この回路構成に限定するものではない。また、商用交流電源もAC100Vであっても良い。
以下、本変形例に係る電源回路について説明する。なお、実施形態1と同一の構成部位については、同一の番号を附し、重複する説明は省略する。
【0064】
図9(a)の電源回路では、AC100Vの商用交流電源39から、第1電源回路111の全波整流回路でDC141V(出力端子Va)を生成し、第2電源回路112の倍圧整流回路でDC282V(出力端子Vb)を生成している。
第1電源回路111の全波整流回路は、図4の第1電源回路1と同じ回路構成の全波整流回路である。
第2電源回路112の倍圧整流回路は、2つのダイオードと、2つのコンデンサー43,44から構成されており、後段のコンデンサー44に282Vの直流電力が蓄電される。
【0065】
図9(b)の電源回路では、AC100Vの商用交流電源39から、第1電源回路121の倍圧整流回路でDC282V(出力端子Vb)を生成し、第2電源回路122の3倍圧整流回路でDC423V(出力端子Vc)を生成している。
第1電源回路121の倍圧整流回路は、図9(a)の第2電源回路112と同じ回路構成の倍圧整流回路である。
第2電源回路122の3倍圧整流回路は、3つのダイオードと、3つのコンデンサー45,46,47から構成されており、後段で直列接続されたコンデンサー45とコンデンサー47の両端(Gnd,Vc)に、423Vの直流電力が蓄電される。
【0066】
発明者等による実験結果によれば、AC200V定格のACサーボモーターであれば、駆動電圧としてDC170V〜420V程度までの間での動作確認が取れている。
従って、本変形例の電源回路を用いても、前記各実施形態と同様の駆動制御を行うことができる。
【符号の説明】
【0067】
1,111,121…第1電源回路、2,112,122…第2電源回路、3…電源部、4…スイッチ部、5…制御部、6…記憶部、8…サーボ演算回路、11〜16…モーター部、11M〜16M…モーター、21〜26…スイッチ回路としてのスイッチ、51…第1コンデンサー、44,52…第2コンデンサー、55…監視回路、72…制御ボックス、74,76,78,80…リンク、73,75,77,79…ジョイント、81…ハンド、91〜96…回転軸、100…ロボット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のリンクが複数のジョイントによって直列に接続されたアーム構造を有するロボットであって、
前記ジョイントごとに配置された複数のモーターと、
前記モーターに第1の駆動電圧を供給する第1電源回路、および前記第1の駆動電圧よりも高い電圧である第2の駆動電圧を供給する第2電源回路を含む電源部と、
前記第1電源回路と前記第2電源回路とを切り替えるスイッチ部と、
前記モーターの駆動条件を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記駆動条件を規定する制御信号が所定の閾値以上になった場合に、前記スイッチ部を駆動して前記第1電源回路から前記第2電源回路に切り替えることを特徴とするロボット。
【請求項2】
前記制御信号は、前記モーターの駆動トルクを規定するトルク指令、または前記モーターの回転数を規定する速度指令、もしくは前記モーターの駆動電流を規定するトルク電流値であることを特徴とする請求項1に記載のロボット。
【請求項3】
前記アーム構造の一端には、作業を行うためのハンドが取り付けられ、
前記アーム構造における前記一端の反対側の他端は、前記ロボットを支持する基底部側に取り付けられており、
前記複数のモーターのうち、少なくとも前記他端における前記モーターには、前記スイッチ部が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載のロボット。
【請求項4】
前記第2電源回路の電力を蓄電する第2コンデンサーの耐電圧は、前記第1電源回路の電力を蓄電する第1コンデンサーの耐電圧よりも高く、
前記第2コンデンサーの容量は、前記第1コンデンサーの容量よりも小さいことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のロボット。
【請求項5】
複数のリンクが複数のジョイントによって直列に接続されたアーム構造を有するロボットであって、
前記ジョイントごとに配置された複数のモーターと、
前記モーターに第1の駆動電圧を供給する第1電源回路、および前記第1の駆動電圧よりも高い電圧である第2の駆動電圧を供給する第2電源回路を含む電源部と、
前記第1電源回路と前記第2電源回路とを切り替えるスイッチ部と、
前記第1電源回路の出力電流、および/または出力電圧を測定する検出部と、
前記モーターの駆動条件を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記出力電流が所定の閾値以上になった場合、または前記出力電圧が所定の閾値以下になった場合に、前記スイッチ部を駆動して前記第1電源回路から前記第2電源回路に切り替えることを特徴とするロボット。
【請求項6】
複数のリンクが複数のジョイントによって直列に接続されたアーム構造と、
前記ジョイントごとに配置された複数のモーターと、
第1の駆動電圧を供給する第1電源回路と、
前記第1の駆動電圧よりも高い電圧である第2の駆動電圧を供給する第2電源回路と、
前記モーターの電源として、前記第1電源回路と前記第2電源回路とを切り替えるスイッチ回路と、を有するロボットの制御方法であって、
前記モーターの駆動条件を規定する制御信号が所定の閾値以上になった場合に、前記スイッチ回路を駆動して、前記第1電源回路から前記第2電源回路に切り替えることを特徴とするロボットの制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−13964(P2013−13964A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−147998(P2011−147998)
【出願日】平成23年7月4日(2011.7.4)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】