説明

ロボットクローラのための可変プリミティブマッピング

高レベル(オペレータ入力)プリミティブ42、64から低レベルプリミティブ46、70への可変マッピングを用いることによって、ロボットクローラ10の種々の動作モードが与えられる。そのマッピングは、ロボットクローラ10によって検知される環境データ74、94の関数であり、それにより、動作モードを環境に合わせることができるようになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は動くことができるロボットデバイスの制御に関する。
【0002】
[関連出願の相互参照]
本出願は、米国特許商標局に2007年5月8日に出願された「Variable Primitive Mapping For A Robotic Crawler」と題する米国仮特許出願第60/928,483号の恩典を主張し、その特許出願は参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0003】
本出願はさらに、参照により、いずれも2007年11月13日に出願された、共同所有で、同時係属中の「Serpentine Robotic Crawler」と題する米国特許出願第11/985,323号及び「Tracked Robotic Crawler Having a Moveable Arm」と題する米国特許出願第11/985,336号を援用する。
【背景技術】
【0004】
ロボット工学の研究成果として、多数の異なるロボット構成が生み出されてきた。ロボット工学の特に興味深い分野は、包括的にロボット車両又はロボットクローラと呼ばれる、動くことができるロボットデバイスである。ロボットクローラの中には、極めて広い用途を有し、複数の作業の実行を可能にする。
【0005】
連係して動かされるべき多数の関節、モータ等があるときに、複雑なロボットクローラの制御は非常に難しくなることがある。1つの制御手法は、いわゆる「レプリカマスター」動作モードである。ロボットは、そのロボットと同じ関節及びアクチュエータを備えるレプリカマスターに従属するように制御される。オペレータがマスターを操作するのに応じて、マスターは関節及びアクチュエータの位置をロボットに通知し、そのロボットは同じ位置に動こうとする。レプリカマスターモードは、ロボット操作のタイプ(たとえば、遠隔操作)によっては便利であるが、このタイプの制御は、ロボットを操縦して起伏のある地形を通り抜ける方法としては、面倒である可能性がある。オペレータが制御ループの中に入るので、制御が緩慢であり、環境変化への迅速な応答を達成するのは難しい。さらに、非常に複雑なロボットクローラの場合、制御されるべき関節の数が多くなり、レプリカマスター制御で扱うには実際的でなくなる可能性がある。
【0006】
結果として、複雑なロボットクローラの動きの制御は多くの場合に、動きのパターンを確立するように予めプログラムされる。関節及びモータが、予め決まった方式又は関係に従って連係して起動され、そのロボットクローラに対して指定された動作モード又は歩行が生み出される。オペレータ制御は典型的には、方向及び速度のような、予めプログラムされた動きへのいくつかの高レベル入力に制限される。そのような制御手法は、オペレータの作業を非常に楽にするが、それと引き換えに、ロボットクローラのための能力が低下する。典型的には、ロボットクローラによって与えられる付加的な機能又は能力はそれぞれ制御の追加を伴い、ロボットクローラを使用するために、オペレータは操作方法を習得することになる。操作制御の数が増えると、オペレータは環境変化に応答するのが遅くなる傾向があり、それにより、ロボットクローラの敏捷性が制限される。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、ロボットクローラの動作様式を変更する方法及びシステムを含む。一実施の形態では、ロボットクローラの動作様式を変更する方法は、複数の低レベルプリミティブを規定することであって、ロボットクローラの基本動作を制御する、規定することを含む。オペレータから受信される高レベルプリミティブは、ロボットクローラによって実行するための変更可能な1組の低レベルプリミティブにマッピングされ、種々の動作モードが生成される。マッピングは、ロボットクローラによって検知される環境データの関数とすることができる。ロボットクローラは、変更可能な1組の低レベルプリミティブを実行し、ロボットクローラが動かされる。
【0008】
本発明は、添付の図面とともに取り上げられる、以下の説明及び添付の特許請求の範囲からさらに十分に明らかになるであろう。これらの図面が本発明の例示的な実施の形態を示すにすぎないこと、それゆえ、それらの図面は本発明の範囲を制限するものと見なされるべきでないことは理解されたい。本明細書の図面において包括的に記述され、例示されるような本発明の構成要素は、多種多様の異なる構成において配置し、設計することができることは容易に理解されよう。それでも、本発明を、添付の図面を使用することによって、さらに具体的且つ詳細に記述及び説明する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1a】本発明の例示的な実施形態による、或る姿勢にあるロボットクローラを示す斜視図である。
【図1b】本発明の例示的な実施形態による、或る姿勢にあるロボットクローラを示す斜視図である。
【図1c】本発明の例示的な実施形態による、或る姿勢にあるロボットクローラを示す斜視図である。
【図1d】本発明の例示的な実施形態による、或る姿勢にあるロボットクローラを示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態によるロボットクローラ制御システムのブロック図である。
【図3】本発明の一実施形態によるプリミティブ階層のブロック図である。
【図4】本発明の別の実施形態によるロボットクローラ制御システムのブロック図である。
【図5】本発明の一実施形態による、或る環境内でロボットクローラの動作様式を変更する方法の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の例示的な実施形態の以下の詳細な説明は添付の図面を参照しており、それらの図面は本明細書の一部を構成し、それらの図面には例示として、本発明が実施されることができる例示的な実施形態が示される。これらの例示的な実施形態は当業者が本発明を実施することができるようにするほど十分に詳しく説明されるが、他の実施形態を実現することもできること、並びに本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、本発明に対して種々の変更を行なうことができることは理解されたい。したがって、以下に示される本発明の実施形態のさらに詳しい説明は、特許請求される本発明の範囲を制限することを意図するものではなく、本発明の特徴及び特性を説明するために、且つ当業者が本発明を十分に実施することができるようにするために、限定のためではなく、例示のためだけに提示される。したがって、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ規定されることになる。
【0011】
本発明の以下の詳細な説明及び例示的な実施形態は、添付の図面を参照することによって最もよく理解されることになり、本発明の構成要素及び特徴は、図面全体を通じての参照符号によって指示される。図面における類似の参照符号及び指示は、類似の機能を提供する類似の構成要素を指示する。参照指示子符号に続く文字は、その参照指示子符号を有する構成要素の一例を表す。
【0012】
図1(a)〜図1(d)を参照すると、本発明の一実施形態によるロボットクローラの説明図が示される。例示されるクローラは地上用クローラであるが、本発明の実施形態は地上で動作するクローラには限定されず、他の環境において動作するロボットクローラにも適用することができることは理解されよう。包括的に10で示されるロボットクローラは、それぞれキャタピラ14a、14bを有する2つのフレーム12a、12bを備える。それらのフレームは、複数の関節18を有する多自由度連結アーム16を通じて互いに結合される。それらのフレームには、それぞれ第1のアームセグメント22a、22b及び第2のアームセグメント24a、24bを有する関節アーム20a、20bが結合される。それらのアームセグメントはアーム関節26a、26bで結合される。各関節アームはセンサ28a、28bを備えることができる。
【0013】
ロボットクローラ10は、種々の動作モードを有することができる。たとえば、フレーム12a、12bは、図1(a)に示されるような「列車」姿勢に構成することができ、その場合、フレームは同じ方向に概ね一列に並べられる。列車姿勢では、前後への動きは、相対的に同じ方向に動くようにキャタピラ14a、14bを動作させることによって成し遂げることができる。
【0014】
多自由度連結アーム16は、図1(b)に示されるように、フレーム12a、12bの位置を横方向にずらして、ロボットクローラ10を「斜め(zag)」姿勢にするように構成することができる。斜め姿勢は、たとえば、丘を横切るか又は登る間に、横方向への高い安定性を与える。列車姿勢にあるときと同じようにしてキャタピラ14a、14bを回転させることによって、動きを与えることができる。
【0015】
図1(c)に示される「戦車」姿勢にあるときに、代替の動作モードが可能であり、その場合、フレーム12a、12bは並置される。相対的に同じ方向にキャタピラ14a、14bを駆動することによって、ロボットクローラ10を前方方向及び後進方向に動かすことができる。連続的なキャタピラを異なるように(異なる速度で又はさらには異なる方向に)駆動することによって、ロボットクローラを方向転換させることができる。一般的に、戦車姿勢においてロボットクローラを動かすことは、キャタピラに異なる駆動速度及び方向を適用することを伴うことがある。戦車姿勢にあるときには、キャタピラのうちの1つのキャタピラの方向感覚が、列車姿勢にあるときの方向に対して逆にされる。
【0016】
ロボットクローラ10のための他の動作モードも可能である。たとえば、キャタピラ14a、14bの回転を関節アーム20a、20bの作動と組み合わせることができる。たとえば、先頭アーム20aが先頭フレーム12aの端部を持ち上げて、障害物を飛び越えるか、階段を登るか、又は高くなった穴に入ることができる。別の例として、関節アーム20a、20bを回転させて、ロボットクローラに泳ぐような動き又は飛び跳ねるような動きを与えることができる。
【0017】
図1(d)に示される「起立」姿勢にあるときに、さらに別の動作モードが可能であり、その場合、関節アーム20a、20bをロボットクローラ10の下に回転させて、脚として機能させる。したがって、動きは、たとえば、並足で歩くこと、速歩で駆けること、緩い駆け足で走ること、疾走すること、飛び上がること、及び跳ね回ることを含む、種々の4脚歩行を含むことができる。1つには、脚の動きの相対的な位相関係に関して、4脚歩行を説明することができる。たとえば、並足で歩く場合、一度に1つの脚が次々に動かされる(たとえば、左前脚、右後脚、右前脚及び左後脚が、0.25サイクルの位相遅れでそれぞれ動く)。速歩で駆けること、緩い駆け足で走ること、及び疾走することは、4本脚の動物、たとえば、馬における動作モードを反映する。飛び上がるのは、前脚が一緒に動き、後脚が一緒に動く場合である。跳ね回るのは、4本の脚全てが一緒に動く場合であり、たとえば、飛び跳ねるような動きを生み出す。
【0018】
関節アーム20a、20b及びキャタピラ14a、14bの作動を組み合わせるか、又は関節アーム、キャタピラ及び多自由度連結アーム16の作動を組み合わせる他の動作モードも実現することができる。たとえば、動作モードは、波打って動く芋虫又は尺取虫のような動き、飛び跳ねるタイプの動き、蛇が滑るように進むような動き等を含むことができる。別の例として、ロボットクローラ10は、水平又は垂直な表面上で動作することができる。たとえば、垂直な棒の周りに巻き付くことによって、ロボットクローラは、垂直な表面において上下に動くだけの十分な牽引力を与えることができる。
【0019】
使用すべき最も好都合の動作モードは、ロボットクローラが動作している地形によって異なるであろう。異なる動作モードは、異なる安定性、牽引力、効率及びエネルギー使用量を生み出し得る。レプリカマスターで多種多様の動作モードを生み出そうと試みることは、可能ではあるが、面倒であり、長い時間を要する。逆に、いくつかの異なる動作モードをプログラムすることは可能であるが、動作モードを切り替えること、始動すること、停止すること、及び方向転換することは、種々の動作モードに応じて異なる複雑な操作になる可能性がある。たとえば、先に言及されたように、列車姿勢における前進は、戦車姿勢にあるときとは異なる方向にキャタピラを回転させる必要がある。さらに、動作モードが異なると、多くの場合に制御も異なる。たとえば、先に言及されたように、戦車姿勢にあるときには、キャタピラの回転速度差によってロボットクローラが方向転換するのに対して、列車姿勢では、多自由度連結アームを作動させることによって、ロボットクローラが方向転換する。
【0020】
したがって、そのロボットクローラは、変化する環境に動作モードを自動的に合わせることができる。ロボットクローラの動作モードは、階層的な1組のプリミティブを用いて制御することができる。キャタピラを方向転換させる、アームを回転させる等の基本機能のために、低レベルプリミティブを規定することができる。複雑な連係した動き及び行為、たとえば、戦車の動き、4脚歩行等を実行するために、低レベルプリミティブから高レベルプリミティブを構成することができる。高レベルプリミティブは、オペレータ入力コマンド、たとえば、前進させること、停止させること、特定の場所に向かって操縦すること等に対応する場合がある。高レベルプリミティブは、高レベルプリミティブにマッピングされる低レベルプリミティブを実行することによって実行することができる。それらの低レベルプリミティブを実行することによって、そのロボットクローラが動く。
【0021】
高レベルプリミティブから低レベルプリミティブへのマッピングは可変にすることができる。たとえば、ロボットクローラによって検知される環境条件に応じてマッピングを変更して、ロボットクローラの動作モードをその環境に合わせることができる。ロボットクローラが第1の環境から第2の環境に移動するときに、可変マッピングによって、ロボットクローラは、第1の環境にとって最適である第1の動作モードから、地形的に異なる第2の環境にとって最適である第2の動作モードに切り替わることができるようになる。高レベルプリミティブと低レベルプリミティブとの間のマッピングを変更することによって、環境又は実行される動作モードには関係なく、高レベルプリミティブへのインターフェースを一定にしておくことができる。これは、より簡単で、より直観的なオペレータ制御を提供するのを助けることができ、それにより、ロボットクローラの根底を成す動作モードが変化する場合であっても、一貫して動作する。
【0022】
ロボットクローラによって検知される環境データに基づいて、動作モードを自動的に選択することができる。たとえば、動作モードの選択は、動作モードと特定の環境条件との所定の関連性を用いる環境データに基づくことができる。また、ロボットクローラは、環境データが望ましくない条件を指示するときに、動作モードを適応的に変更するように構成することもできる。
【0023】
3つの異なる環境:起伏のある野原、絡み合った植生地及び硬い地面を通ってロボットクローラが進行することになる例を考える。起伏のある野原を横切るために、安定性及び牽引力が与えられることから、戦車構成を用いることができる。絡み合った植生地に遭遇するとき、断面輪郭が小さくなることから、列車構成を用いることができ、それにより植物の中で立ち往生する危険性を小さくすることができる。最後に、硬い地面の場合、4脚動作モードを用いて、速度を上げることができる。これらの動作モードはそれぞれ、異なる1組の低レベルプリミティブを用いて実施される。それゆえ、「前進する」及び「方向転換する」場合の高レベルプリミティブは、異なる低レベルプリミティブにマッピングされる。そのマッピングは、ロボットクローラが或る環境から次の環境に動くにつれて変更される。
【0024】
たとえば、図2は、本発明の一実施形態による、ロボットクローラ制御システムのブロック図を示す。そのロボットクローラ制御システム60は、1つ又は複数の高レベルプリミティブ64へのオペレータ入力62を受信し、ロボットクローラの動きを制御する。上記のように、動作方向、動作速度、姿勢、動作タイプ等を制御するために、種々の高レベルプリミティブを含むことができる。また、高レベルプリミティブは、オペレータ入力を受信して、たとえば、スロットル設定、ステアリングホイール位置等のプリミティブの動作も制御することができる。高レベルプリミティブはマッパ68に制御出力66を与え、マッパは高レベルプリミティブを変更可能な1組の低レベルプリミティブ70にマッピングする。低レベルプリミティブは、駆動出力72を与え、ロボットクローラ内のアクチュエータ、モータ等を制御し、ロボットクローラを動かす。
【0025】
マッパ68はセンサ入力74を受信し、センサ入力74を用いて、高レベルプリミティブ64を変更可能な1組の低レベルプリミティブ70に如何にマッピングするかを決定する。たとえば、センサデータを処理して、ロボットクローラが動作している環境のタイプを判定することができる。その環境に基づいて、その後、動作モードを選択することができる。その動作モードに基づいて、種々の組の低レベルプリミティブを実行して、ロボットクローラを適当な姿勢にし、選択された動作モードを実施することができる。
【0026】
具体的な例として、オペレータ制御コンソールは、動作方向及び速度を制御するためのオペレータ入力を生成するジョイスティックを備えることができる。ジョイスティック制御は直観的にすることができ、ジョイスティックの前後への動きがロボットクローラの前後への動きに対応し、左右への動きが方向転換することに対応する。オペレータによるジョイスティックの動きをロボットクローラの細かい動きに如何にマッピングするかは、ロボットクローラがその時点で使用中の動作モードの複合的な関数である。一度に2つ以上の高レベルプリミティブがアクティブになる場合があり、たとえば、前方及び横方向の両方にジョイスティックを押す結果として、前進すると同時に方向転換することができることに留意されたい。
【0027】
戦車モードでは、ジョイスティックの前後への動きは、高レベル「移動」プリミティブへの入力を与え、キャタピラを(進行線に対して)前後に駆動するための低レベルプリミティブにマッピングされる。ジョイスティックの左右への動きは、高レベル「方向転換」プリミティブに入力され、キャタピラを異なるように駆動してロボットクローラを方向転換させる低レベルプリミティブにマッピングされる。列車モードでは、「移動」は、キャタピラを前後に駆動するためのプリミティブにマッピングされ(先に言及されたように、戦車モードにあるときとは回転方向が異なる)、「方向転換」は、ロボットクローラの形状を曲げて方向転換を達成するように多自由度連結アームを動かすプリミティブにマッピングされる。4脚モードでは、「移動」は、関節アームの動作を制御するプリミティブにマッピングされ、「方向転換」は、多自由度連結アームの作動を制御するプリミティブに、又は関節アームの差動運動を制御するプリミティブにマッピングされる。表1は、本発明の一実施形態による上記の例の一覧を提供する。
【0028】
【表1】

【0029】
これまでの例は、例示のために幾分簡単にされているが、そのロボットクローラのために多数のプリミティブ及び可変マッピングを用いることができることは理解されたい。簡単な行動及び複雑な行動の両方の場合にプリミティブを規定することができる。たとえば、個々のモータ又はアクチュエータを制御するようにプリミティブを規定することができる。別の例として、他のプリミティブを利用して連係させて複数のモータ又はアクチュエータを制御するプリミティブを規定することもできる。ロボットクローラを特定の姿勢にするために、又は特定の動作モード又は歩行を実施するために、プリミティブを規定することができる。
【0030】
低レベルプリミティブ及び高レベルプリミティブの点から本明細書において説明されるが、プリミティブの階層は、最も低いレベルの基本プリミティブ(たとえば、個々のアクチュエータ又はモータを動作させる)から、中間レベルのプリミティブ、そして非常に高いレベルのプリミティブ(たとえば、所定の任務を実行する)までに至る、2つ、3つ又はそれ以上のプリミティブを含むことができる。さらに、プリミティブが階層内の異なるレベルからのいくつかの他のプリミティブに基づく場合があるという点で、プリミティブは厳密な階層に従う必要はないことを理解されたい。いくつかの低レベルプリミティブには中間レベルプリミティブを通じてのみアクセスすることができ、一方、他の低レベルプリミティブには中間レベル又は高レベルのいずれかのプリミティブからアクセスすることができるように、プリミティブ階層を規定することができる。
【0031】
たとえば、図3は、本発明の一実施形態によるプリミティブ階層40のブロック図を示す。そのプリミティブ階層では、高レベルプリミティブ42がマッパ44によって中間レベルプリミティブ48にマッピングされ、中間レベルプリミティブはさらに、低レベルプリミティブ46にマッピングされる。たとえば、中間レベルプリミティブは姿勢、牽引力、駆動モード等を規定することができ、それらはさらに詳細な低レベルプリミティブに変換される。付加的なプリミティブレベル、及び階層内の2つ以上の位置にある付加的なマッパを含む、種々の他の構成も本発明の実施形態において用いることができる。
【0032】
本発明の一実施形態によれば、図4においてブロック図の形で示されるように、マイクロプロセッサ(又はマイクロコントローラ)を用いてロボットクローラ制御システムを実現することができる。ロボットクローラ制御システム80は、コマンドインターフェース82のような、ロボットクローラによって実行されるべき高レベルプリミティブ84をオペレータから受信する手段を備える。コマンドインターフェースは、たとえば、オペレータ制御コンソール(図示せず)への有線又は無線リンクとすることができる。高レベルプリミティブコマンドはマイクロプロセッサ86に与えることができる。また、ロボットクローラは、マイクロプロセッサに環境データ94を与えるセンサ92のような、環境を検知する手段も備えることができる。たとえば、カメラ、化学センサ、生物センサ、光センサ、水分センサ、振動センサ、温度センサ、電磁センサ、音波センサ、力センサ、ソナーセンサ、レーダセンサ、ライダーセンサ、放射性同位元素センサ、地震センサ、圧力センサ、磁力計、サンプリングセンサ、方位センサ、慣性測定ユニット、関節トルクセンサ、関節位置センサ、センサの組み合わせ、又は複数のセンサを含む、種々のタイプのセンサ92を用いることができる。センサの出力は、たとえば、コンピュータが読取り可能な形式の環境データ94を提供し、そのデータはロボットクローラが動作している実際の実世界の環境の特性を示す。
【0033】
ロボットクローラ制御システム80は、高レベルプリミティブを、ロボットクローラによって実行するための変更可能な1組の低レベルプリミティブにマッピングする手段、たとえば、メモリ88内に格納されるマイクロプロセッサ86のためのソフトウエア命令を含むことができる。そのメモリは、マイクロプロセッサの一部である場合があるか、又はマイクロプロセッサの外部に存在する場合がある。たとえば、リードオンリーメモリ、プログラマブルリードオンリーメモリ、ランダムアクセスメモリ等を含む、種々のタイプのメモリを用いることができる。
【0034】
高レベルプリミティブから変更可能な1組の低レベルプリミティブへのマッピングは、環境データ94の関数とすることができる。たとえば、センサデータを処理して、環境条件を認識し、その後、特定の環境条件に最適な動作モードを選択することができる。選択は、たとえば、実験によって、又は解析によって求められた種々の環境条件に最適な動作モードを予め求めることに基づくことができる。選択された動作モードに基づいて、適当な1組の低レベルプリミティブを起動して、高レベルプリミティブを実施する。
【0035】
別の例として、マイクロプロセッサ86が第1の動作モードを選択し、第1の動作モードが失敗する場合に第2の動作モードに切り替わることによって、動作モードを適応的に選択することができる。たとえば、環境データ94は、滑り、傾斜、不安定な姿勢、又は他の望ましくない条件を指示する場合がある。これにより、牽引力増加プリミティブ、自動復原プリミティブ、自動安定化プリミティブ等の特定のプリミティブを自動的に起動することができる。
【0036】
ロボットクローラ制御システム80は、ロボットクローラを動かすために変更可能な1組の低レベルプリミティブを実行する手段、たとえばドライバ96を備えることができる。ドライバは、ロボットクローラの種々のアクチュエータ、モータ等98を駆動してロボットクローラの物理的な動きを生み出すために、マイクロプロセッサからの出力信号を与える。
【0037】
これまでに提供された例は比較的簡単であったが、複雑なマッピングを用いることができることは理解されたい。たとえば、センサデータを処理して、牽引力、出力効率、雑音発生等に関して、動作モードの有効性を判定することができる。それに応じて、実行される変更可能な1組の低レベルプリミティブを動的に変更することができる。いくつかの低レベルプリミティブは、一時的に起動され、その後、停止される場合がある。さらに、いくつかの所定のプリミティブは、所定の環境条件が検知されるときに自動的に起動される(そして、停止される)場合がある。たとえば、高レベルプリミティブを変更可能な1組の低レベルプリミティブにマッピングすることは、ロボットクローラが転覆していることを環境データが指示するときに自動復原プリミティブを実行すること、ロボットクローラが滑っているときに牽引力増加プリミティブを実行すること、又はロボットクローラが不安定な姿勢にあるときに自動安定化プリミティブを実行することを含むことができる。
【0038】
図5は、或る環境内でロボットクローラの動作様式を変更する方法を示す。方法100は、ロボットクローラの基本動作を制御するために、複数の低レベルプリミティブを規定すること(102)を含む。たとえば、低レベルプリミティブは、上記のように、制御回路又はソフトウエアルーチンによって規定することができる。また、その方法は、ロボットクローラによって実行されるべき高レベルプリミティブをオペレータから受信すること(104)も含むことができる。たとえば、高レベルプリミティブは、上記のように、オペレータ制御コンソール(たとえば、ジョイスティック)を介して、ロボットクローラへの有線又は無線リンクによって通知されることができる。さらに、その方法は、高レベルプリミティブを、種々の動作モードを生み出すためにロボットクローラによって実行するための変更可能な1組の低レベルプリミティブにマッピングすること(106)も含むことができる。そのマッピングは、ロボットクローラによって検知される環境データの関数とすることができる。たとえば、ロボットクローラは種々のセンサ及び処理を含み、上記のように所望の姿勢及び/又は動作モードを決定することができる。最後に、その方法は、変更可能な1組の低レベルプリミティブを実行して、ロボットクローラを動かすこと(108)を含むことができる。
【0039】
多少繰り返すことになるが、要約すると、本発明の実施形態を用いるロボット制御は、複雑で、高い能力があるロボットクローラの管理の容易性を改善することができる。ロボットクローラが多種多様の動作モードに対応することができるとき、動作モードの詳細な低レベルプリミティブ制御を、少数の直観的な入力を用いてオペレータによって制御される高レベルプリミティブにマッピングすることができる。それゆえ、オペレータは、ロボットクローラのあらゆる詳細な動きを規定する必要はない。環境条件によって必要とされるときに、オペレータの介入を必要とすることなく、且つオペレータに異なる制御技法又は異なる制御手段を使用するように要求することなく、ロボットクローラは動作モード、姿勢又は他の動作態様を自動的に調整することができる。その制御技法の用途は、救難、軍事作戦及び生産工程において用いられる複雑な多関節ロボットクローラを含むことができる。
【0040】
これまでの詳細な説明は、特定の例示的な実施形態を参照しながら、本発明を説明している。しかしながら、添付の特許請求の範囲において述べられる本発明の範囲から逸脱することなく、種々の変更及び変形を行なうことができることは理解されよう。詳細な説明及び添付の図面は、制限するものではなく、単に例示するものと見なされるべきであり、もしあるのならば、全てのそのような変更及び変形は、本明細書において説明及び記載されるような本発明の範囲内に入ることを意図している。
【0041】
より具体的には、本発明を説明するための例示的な実施形態が本明細書において説明されてきたが、本発明はこれらの実施形態には限定されず、これまでの詳細な説明に基づいて当業者によって理解されるような変更、省略、組み合わせ(たとえば、種々の実施形態にわたる複数の態様の組み合わせ)、改変及び/又は修正を有するありとあらゆる実施形態を含む。特許請求の範囲における制限は、特許請求の範囲において用いられる文言に基づいて広く解釈されるべきであり、これまでの詳細な説明において、又は本出願の手続中に説明される例に限定されるべきではなく、それらの例は、他の例を排除するものではないと解釈されるべきである。たとえば、本開示において、用語「好ましい」は他を排除するものではなく、「好ましいが、限定はしない」を意味することを意図している。任意の方法又はプロセスの請求項において列挙される任意のステップは、任意の順序で実行されることができ、その請求項において提示される順序には限定されない。ミーンズ・プラス・ファンクション限定又はステップ・プラス・ファンクション限定は、特定の請求項限定のために、以下の条件の全てが満たされる場合にのみ用いられることになる:a)「する手段(means for)」又は「するステップ(step for)」が、その限定の中で明確に列挙されること;b)対応する機能がその限定の中で明確に列挙されること;及びc)その機能を支える構造、材料又は行為が本明細書内に記述されること。したがって、本発明の範囲は、先に与えられた説明及び例によってではなく、添付の特許請求の範囲及びその法的均等物によってのみ決定されるべきである。
【図1(a)】

【図1(b)】

【図1(c)】

【図1(d)】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
或る環境内でロボットクローラの動作様式を変更する方法であって、
複数の低レベルプリミティブを規定することであって、前記ロボットクローラの基本動作を制御する、規定すること、
前記ロボットクローラによって実行されるべき高レベルプリミティブをオペレータから受信すること、
前記高レベルプリミティブを、前記ロボットクローラによって実行するための変更可能な1組の低レベルプリミティブにマッピングすることであって、種々の動作モードを生成し、該マッピングすることは前記ロボットクローラによって検知される環境データの関数である、マッピングすること、及び
前記変更可能な1組の低レベルプリミティブを実行することであって、前記ロボットクローラを動かす、実行することを含む、方法。
【請求項2】
前記複数の低レベルプリミティブを規定することは、前記ロボットクローラの特定の姿勢に対応する複数の低レベルプリミティブを規定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記変更可能な1組の低レベルプリミティブをマッピングする手段は、所定の環境条件が検知されるときに所定のプリミティブを起動する手段を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記変更可能な1組の低レベルプリミティブをマッピングする手段は、所定の環境条件が検知されるときに所定のプリミティブを停止する手段を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記高レベルプリミティブを変更可能な1組の低レベルプリミティブにマッピングすることは、前記ロボットクローラが第1の環境から、地形的に異なる第2の環境に移動するときに、該第1の環境にとって最適である第1の動作モードから、該第2の環境にとって最適である第2の動作モードに切り替わることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の環境は水平な表面であり、前記第2の環境は垂直な表面である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記高レベルプリミティブを変更可能な1組の低レベルプリミティブにマッピングすることは、前記ロボットクローラが転覆していることを前記環境データが指示するときに、自動復原プリミティブを実行することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記高レベルプリミティブを変更可能な1組の低レベルプリミティブにマッピングすることは、前記ロボットクローラが滑っていることを前記環境データが指示するときに、牽引力増加プリミティブを実行することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記高レベルプリミティブを変更可能な1組の低レベルプリミティブにマッピングすることは、前記ロボットクローラが不安定な姿勢にあることを前記環境データが指示するときに、自動安定化プリミティブを実行することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記高レベルプリミティブを変更可能な1組の低レベルプリミティブにマッピングすることは、高レベル動作プリミティブコマンドを、姿勢、牽引力及び駆動モードを規定する低レベルプリミティブにマッピングすることを含み、前記姿勢、前記牽引力及び前記駆動モードは前記環境データの関数である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記高レベルプリミティブを変更可能な1組の低レベルプリミティブにマッピングすることは、前記環境データに基づいて動作モードを選択すると共に、該選択された動作モードに関連する低レベルプリミティブを起動することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記環境データに基づいて動作モードを選択することは、動作モードと特定の環境条件との所定の関連性を使用する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記環境データに基づいて動作モードを選択することは、前記環境データが望ましくない条件を指示するときに、動作モードを適応的に変更することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
請求項1に記載の方法を実施するためのコンピュータ読取り可能プログラムコードを含むコンピュータ読取り可能媒体。
【請求項15】
或る環境内でロボットクローラの動作様式を変更する方法であって、
前記ロボットクローラの基本動作を規定する一連の低レベルプリミティブを規定すること、
前記ロボットクローラの動作のための、オペレータによって指示される高レベルプリミティブを受信すること、
前記高レベルプリミティブを変更可能な1組の低レベルプリミティブにマッピングすること、
前記低レベルプリミティブを実行することであって、前記高レベルプリミティブ動作を実施し、前記ロボットクローラを動かす、実行すること、及び
前記ロボットクローラによって検知される環境条件に応答して前記1組の低レベルプリミティブを変更することであって、前記ロボットクローラの動作モードを前記環境に合わせる、変更することを含む、方法。
【請求項16】
前記高レベルプリミティブを変更可能な1組の低レベルプリミティブにマッピングすることは、前記ロボットクローラが第1の環境から、地形的に異なる第2の環境に移動するときに、該第1の環境にとって最適である第1の動作モードから、該第2の環境にとって最適である第2の動作モードに切り替わることを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記高レベルプリミティブを変更可能な1組の低レベルプリミティブにマッピングすることは、前記環境データに基づいて動作モードを選択すると共に、該選択された動作モードに関連する低レベルプリミティブを起動することを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
或る環境内で動作様式を変更することができるロボットクローラ制御システムであって、
ロボットクローラが動作している環境を検知する手段であって、環境データを生成する、検知する手段と、
前記ロボットクローラによって実行されるべき高レベルプリミティブをオペレータから受信する手段と、
前記高レベルプリミティブを、前記ロボットクローラによって実行するための変更可能な1組の低レベルプリミティブにマッピングする手段であって、種々の動作モードを生成し、該マッピングは前記環境データの関数である、マッピングする手段と、
前記変更可能な1組の低レベルプリミティブを実行する手段であって、前記ロボットクローラを動かす、実行する手段とを備える、ロボットクローラ制御システム。
【請求項19】
前記複数の低レベルプリミティブは、前記ロボットクローラの特定の姿勢に対応する低レベルプリミティブを含む、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
前記複数の低レベルプリミティブは、前記ロボットクローラの基本動作に対応する低レベルプリミティブを含む、請求項18に記載のシステム。
【請求項21】
前記高レベルプリミティブを変更可能な1組の低レベルプリミティブにマッピングする手段は、前記ロボットクローラが第1の環境から、地形的に異なる第2の環境に移動するときに、該第1の環境にとって最適である第1の動作モードから、該第2の環境にとって最適である第2の動作モードに切り替わる手段を含む、請求項18に記載のシステム。
【請求項22】
ロボットクローラ制御システムであって、
複数のアクチュエータによって駆動される複数の関節及び少なくとも1つのセンサを有するロボットクローラと、
複数のドライバを通じて前記複数のアクチュエータに接続されて該アクチュエータのマイクロプロセッサ制御を可能にするマイクロプロセッサと、
オペレータ入力高レベルプリミティブコマンドを受信すると共に、該高レベルプリミティブコマンドを前記マイクロプロセッサに通知するように構成されるコマンドインターフェースと、
前記ドライバへの信号を生成して前記ロボットクローラのための種々の動作モードを生成するように実行される変更可能な1組の低レベルプリミティブに前記マイクロプロセッサが前記高レベルプリミティブコマンドをマッピングするように前記マイクロプロセッサ上で実行可能なコンピュータ読取り可能命令において実装されるマッパとを備える、ロボットクローラ制御システム。
【請求項23】
前記コマンドインターフェースは有線リンク又は無線リンクである、請求項22に記載のロボットクローラ制御システム。
【請求項24】
前記センサは、カメラ、化学センサ、生物センサ、光センサ、湿度センサ、振動センサ、温度センサ、電磁センサ、音波センサ、力センサ、ソナーセンサ、レーダセンサ、ライダーセンサ、放射性同位元素センサ、地震センサ、圧力センサ、磁力計、サンプリングセンサ、方位センサ、慣性測定ユニット、関節トルクセンサ、関節位置センサ、又はそれらの組み合わせから成る一群のセンサから選択される、請求項22に記載のロボットクローラ制御システム。
【請求項25】
前記マッパは、前記環境データに基づいて動作モードを選択すると共に、該選択された動作モードに関連する低レベルプリミティブを起動するようにさらに構成される、請求項22に記載のロボットクローラ制御システム。
【請求項26】
前記マッパは、複数の動作モードと複数の環境条件との所定の関連性を含む、請求項22に記載のロボットクローラ制御システム。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−527294(P2010−527294A)
【公表日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−507657(P2010−507657)
【出願日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際出願番号】PCT/US2008/063058
【国際公開番号】WO2008/150630
【国際公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【出願人】(508177024)レイセオン・サルコス・エルエルシー (22)
【Fターム(参考)】