説明

ロボットハンド

【課題】把持ストロークを可変にしつつ、軽量化かつ小型化できるロボットハンドを提供する。
【解決手段】ワークを把持するロボットハンド10であって、水平方向に配置されるサーボモータ21と、鉛直軸Pを中心とする平面視における仮想円Rの円周上に配置される複数のツメ60と、サーボモータ21の水平軸周りの回転を、鉛直軸P周りの回転に変換する第1変換機構30と、鉛直軸P周りの回転を、鉛直軸P方向の直線移動に変換する第2変換機構40と、鉛直軸P方向の直線移動を、仮想円Rの径方向Dの直線移動に変換する第3変換機構50と、を具備し、ツメ60は、第3変換機構50によって、仮想円Rの径方向Dに移動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークを把持するロボットハンドの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ロボットハンドは、搬送ロボットを構成するアクチュエータとして公知である。より詳しくは、ロボットハンドは、搬送ロボットのアームに支持され、ワークを把持するためのアクチュエータである。例えば、特許文献1は、複数のフィンガー(ツメ)を備えるロボットハンドを開示している。
【0003】
ロボットハンドは、様々な形状または大きさのワークを把持できるように構成されている。例えば、3つのツメでワークを上方から把持する構成のロボットハンドでは、様々な形状または大きさのワークを把持できるように、把持ストロークが可変となるように構成されている。把持ストロークとは、例えば平面視における仮想円の円周上に3つのツメが配置されているロボットハンドでは、仮想円の半径がツメの把持ストロークである。このような把持ストロークを可変とするロボットハンドでは、3つのツメを水平方向に直線移動させる駆動機構およびモータを配置する必要ある。
【0004】
一方、搬送ロボットでは、アームに支持された状態で搬送されるもの、すなわちロボットハンドおよびワークの重量および全長に制限がある。そのため、ロボットハンドは、軽量かつ小型であることが望ましい。そこで、把持ストロークを可変とするロボットハンドでは、駆動機構およびモータを含めて、軽量化かつ小型化することが課題となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−222971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は、把持ストロークを可変にしつつ、軽量化かつ小型化できるロボットハンドを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、請求項1においては、ワークを把持するロボットハンドであって、水平方向に配置されるサーボモータと、鉛直軸を中心とする平面視における仮想円の円周上に配置される複数のツメと、前記サーボモータの水平軸周りの回転を、前記鉛直軸周りの回転に変換する第1変換機構と、前記鉛直軸周りの回転を、前記鉛直軸方向の直線移動に変換する第2変換機構と、前記鉛直軸方向の直線移動を、前記仮想円の径方向の直線移動に変換する第3変換機構と、を具備し、前記ツメは、前記第3変換機構によって、前記仮想円の径方向に移動するものである。
【0009】
請求項2においては、請求項1記載のロボットハンドであって、前記第1変換機構は、前記サーボモータによって駆動されるウォームと、鉛直軸周りに回転するウォームホイールと、を具備し、前記ウォームと前記ウォームホイールとを螺合することによって、前記サーボモータの水平軸周りの回転を、前記ウォームホイールの前記鉛直軸周りの回転に変換し、前記第2変換機構は、前記鉛直軸上にて前記ウォームホイールに固定され、内側に台形ネジ部が形成される筒部と、外側に台形ネジ部が形成される軸と、を具備し、前記筒部と前記軸とを螺合することによって、前記ウォームホイールの前記鉛直軸周りの回転を、前記軸の前記鉛直軸方向の直線移動に変換し、前記第3変換機構は、前記軸の下端から前記ツメに向かって水平方向に延設され、先端に突起部が形成される支持部と、前記突起部が移動する通路が内部に形成されるツメ支持部と、を具備し、前記通路は、径方向の外側から内側、かつ、鉛直方向の上側から下側に向かうように形成され、前記突起部が前記通路を移動することによって、前記軸の前記鉛直軸方向の直線移動を、前記ツメ支持部の前記仮想円における径方向の直線移動に変換するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明のロボットハンドによれば、把持ストロークを可変にしつつ、軽量化かつ小型化できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係る搬送ロボットの全体的な構成を示した構成図。
【図2】同じくロボットハンドのツメの配置を示す平面図。
【図3】同じくロボットハンドの全体的な構成を示す平面図。
【図4】同じくロボットハンドの全体的な構成を示す側面図。
【図5】第3変換機構の作用を示す一部断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1を用いて、搬送ロボットについて説明する。
搬送ロボット100は、本発明のロボットハンドによって構成される実施形態である。本実施形態の搬送ロボット100は、自動車工場に配置されているものとする。また、搬送ロボット100は、エンジンのシャーシを構成するナックルキャリア(以下、単にワークとする)を搬送するものとする。搬送ロボット100は、ワークを上方から把持し、ワークを所定距離だけ搬送し、ワークを上方から解放するものである。
【0013】
搬送ロボット100は、支持部6と、旋回部7と、第1アーム8と、第2アーム9と、ロボットハンド10と、コントローラ5と、を具備している。支持部6は、搬送ロボット100を配置場所の床面等に支持固定するものである。旋回部7は、上部7Aが下部7Bに対して駆動機構によって旋回するように構成され、搬送ロボット100を旋回させるものである。第1アーム8は、駆動機構によって旋回部7に対し上下方向に回動するように構成されている。第2アーム9は、駆動機構によって第1アーム8に対し上下方向に回動するように構成されている。ロボットハンド10は、駆動機構によって第2アーム9に対し上下方向に回動するように構成されている。ロボットハンド10について、詳しくは後述する。
【0014】
コントローラ5は、搬送ロボット100の各駆動機構に接続されている。コントローラ5は、搬送ロボット100の各駆動機構を制御することによって、ワークを上方から把持し、ワークを所定距離だけ搬送し、ワークを上方から解放する機能を有している。
【0015】
図2を用いて、ロボットハンド10のツメ60の配置について説明する。
図2では、説明を分かり易くするため、ロボットハンド10のツメ60のみを示している。
【0016】
ロボットハンド10は、3つのツメ60を具備している。3つのツメ60は、鉛直軸Pを中心とする平面視における仮想円Rの円周上に配置されている。ツメ60とツメ60とによって形成される角度は、それぞれ120°とされている。ここで、仮想円Rの半径方向を径方向Dと定義する。ツメ60は、径方向Dに直線移動(把持ストローク)することによって、ワークを上方から把持し、ワークを上方から解放するものである。以下では、図2に示す水平方向および鉛直方向、ならびに、鉛直軸Pおよび径方向Dに従って、ロボットハンド10について説明する。
【0017】
図3および図4を用いて、ロボットハンド10について説明する。
図3および図4では、説明を分かり易くするために、ロボットハンド10の各機構のみを記載している。さらに、図4の左方には筒部41の一部断面図を示している。
【0018】
ロボットハンド10の構成について説明する。
ロボットハンド10は、駆動機構20と、第1変換機構30と、第2変換機構40と、第3変換機構50と、3つのツメ60と、を具備している。
【0019】
駆動機構20の構成について説明する。
駆動機構20は、サーボモータ21と、駆動軸22と、を具備している。サーボモータ21は、コントローラ5と、接続されている。サーボモータ21は、軸が水平方向と平行になるように配置されている。サーボモータ21は、サーボアンプと、モータと、エンコーダと、を具備している。サーボアンプは、コントローラ5からの指令を受け、モータを制御するものである。モータは、駆動軸22を回転駆動するものである。エンコーダは、モータの制御の状態である回転を検出し、サーボアンプにフィードバックするものである。駆動軸22は、軸が水平方向と平行になるように配置されている。
【0020】
第1変換機構30について説明する
第1変換機構30は、ウォーム31と、ウォームホイール32と、を具備している。ウォーム31は、ネジ歯車であって、駆動軸22の他端側に固定して配置されている。ウォームホイール32は、はす歯歯車であって、ウォーム31に歯合されている。
【0021】
駆動機構20および第1変換機構30の作用について説明する。
すなわち、コントローラ5は、サーボモータ21を駆動することによって、ウォーム31を水平軸周りに回転させる。ウォーム31の水平軸周りの回転に従って、ウォームホイール32が鉛直軸P周りに回転する。
【0022】
すなわち、第1変換機構30は、ウォーム31とウォームホイール32とを螺合することによって、サーボモータ21の水平軸周りの回転を、ウォームホイール32の鉛直軸P周りの回転に変換する機構である。
【0023】
第2変換機構40の構成について説明する。
第2変換機構40は、筒部41と、軸42と、を具備している。筒部41は、パイプ形状に形成されている。筒部41は、軸が鉛直軸Pと同軸上に配置されている。筒部41の上部は、ウォームホイール32の中心に固定して配置されている。筒部41の内部には、台形ネジ部41Aが形成されている。台形ネジ部41Aとは、断面が台形の連続で形成されるネジ部のことである。
【0024】
軸42は、軸が鉛直軸Pと同軸上に配置されている。軸42の下端には、後述する支持部51A・51B・51Cが固定して配置されている。軸42の外側には、台形ネジ部42Aが形成されている。軸42の台形ネジ部42Aと、筒部41の台形ネジ部41Aとは、螺合するように構成されている。
【0025】
第2変換機構40の作用について説明する。
すなわち、ウォームホイール32の鉛直軸P周りの回転に従って、筒部41は、鉛直軸P周りに回転する。筒部41の鉛直軸P周りの回転に従って、軸42は、鉛直軸P周りに回転しようとする。しかし、軸42の下端に後述する支持部51A・51B・51Cが固定して配置されているため、鉛直軸P周りの回転が規制される。このとき、台形ネジ部42Aと台形ネジ部41Aとが螺合しているため、筒部41の鉛直軸P周りの回転に従って、軸42は、鉛直軸P方向(上下方向)へ直線移動する。
【0026】
すなわち、第2変換機構40は、筒部41と軸42とを螺合することによって、ウォームホイール32の鉛直軸P周りの回転を、軸42の鉛直軸P方向の直線移動に変換する機構である。
【0027】
図3〜図5を用いて、第3変換機構50について説明する。
なお、図5は、ツメ支持部55Aの一部断面図を示している。また、図5(A)の上方には、突起部54Aの斜視図を拡大して示している。図5(B)は、図5(A)の状態から軸42が上向きに直線移動したときの第3変換機構50の作用について示している。
【0028】
第3変換機構50の構成について説明する。
第3変換機構50は、支持台51と、3つの支持部53A・53B・53Cと、3つのツメ支持部55A・55B・55Cと、を具備している。支持台51は、平面視において、Y字形状に形成されている。
【0029】
支持部53A・53B・53Cは、略直方体で形成されている。支持部53A・53B・53Cは、平面視において、長手方向が軸42を中心としたY字形状を構成するように配置されている。支持部53Aと支持部53Bとによって形成される角度、支持部53Aと支持部53Cとによって形成される角度は、それぞれ120°とされている。支持部53A・53B・53Cの一端は、軸42の下端に固定して配置されている。支持部53A・53B・53Cの他端には、突起部54A・54B・54Cが形成されている。突起部54A・54B・54Cは、後述する通路57A・57B・57Cに嵌合されている。
【0030】
ツメ支持部55A・55B・55Cは、1辺が切り欠かれた略直方体で形成されている。ツメ支持部55A・55B・55Cは、平面視において、軸42を中心とした仮想円R(図3参照)上にそれぞれ120°の間隔を空けて配置されている。ツメ支持部55A・55B・55Cは、切り欠かれた側を軸42に向けて配置されている。ツメ支持部55A・55B・55Cは、支持台51上において、径方向Dに移動可能に構成されている。
【0031】
ツメ支持部55A・55B・55Cの内部には、通路57A・57B・57Cが形成されている。通路57A・57B・57Cは、ツメ支持部55A・55B・55Cの鉛直方向の上側かつ径方向Dの外側から、ツメ支持部46の鉛直方向の下側かつ径方向Dの内側に向かって(図4(A)における矢印L、以下、傾斜方向Lとする)形成されている。言い換えれば、通路57A・57B・57Cは、径方向Dの外側から内側、かつ、鉛直方向の上側から下側に向かうように形成されている。通路57A・57B・57Cには、上述した突起部54A・54B・54Cが嵌合して傾斜方向Lにのみ移動するように構成されている。
【0032】
第3変換機構50の作用について説明する。
すなわち、軸42の鉛直軸P方向の上向きの直線移動(図4における矢印S1)に従って、突起部54A・54B・54Cは、通路57A・57B・57Cに沿って傾斜方向Lに沿って移動する。突起部54A・54B・54Cの通路57A・57B・57Cに沿った傾斜方向Lの移動に従って、ツメ支持部46は径方向Dの内向きに移動する(図4における矢印S2)。ツメ支持部55A・55B・55Cの径方向Dの内向きの移動に従って、連結部61・61・61およびツメ60・60・60は、径方向Dの内向きに移動する(図4における矢印S3)。
【0033】
すなわち、第3変換機構50は、突起部54A・54B・54Cが通路57A・57B・57Cを傾斜方向Lに移動することによって、軸42の鉛直軸P方向の直線移動を、ツメ支持部55A・55B・55Cの仮想円Rにおける径方向Dの直線移動に変換する機構である。
【0034】
ツメ60・60・60は、連結部61・61・61を介して、ツメ支持部55A・55B・55Cに固定して配置されている。
【0035】
ロボットハンド10の作用について説明する。
すなわち、コントローラ5は、サーボモータ21を駆動し、第1変換機構30によって、ウォームホイール32が鉛直軸P周りに回転する。ウォームホイール32が鉛直軸P周りに回転すると、第2変換機構40によって、軸42は、鉛直軸P方向(上下方向)へ直線移動する。軸42が鉛直軸P方向へ直線移動すると、第3変換機構50によって、ツメ支持部55A・55B・55Cおよびツメ60・60・60は、径方向Dへ移動する。例えば、軸42が鉛直軸P方向の上向きに直線移動(図4における矢印S1)すると、第3変換機構50によって、ツメ支持部55A・55B・55Cおよびツメ60・60・60は、径方向Dの内向きに移動する(図4における矢印S2)。逆に、軸42が鉛直軸P方向の下向きに直線移動すると、第3変換機構50によって、ツメ支持部55A・55B・55Cおよびツメ60・60・60は、径方向Dの外向きに移動する。
【0036】
ロボットハンド10の効果について説明する。
ロボットハンド10によれば、把持ストローク(径方向Dの直線移動)を可変にしつつ、軽量化かつ小型化できる。すなわち、サーボモータ21を鉛直軸Pに対して直角となる水平方向に配置することによって、ロボットハンド10の全長を低くすることができる。また、第1変換機構30をウォームギア(ウォーム31およびウォームホイール32)による簡易な構成とすることによって、軽量化し、高い減速比を得ることができる。さらに、第2変換機構40を台形ネジ部42Aと台形ネジ部41Aとを螺合させることによる簡易な構成とすることで、軽量化かつ小型化することができる。さらに、第3変換機構50を突起部54A・54B・54Cが通路57A・57B・57Cに沿って傾斜方向Lの移動させる簡易な構成とすることで、軽量化かつ小型化することができる。
【符号の説明】
【0037】
5 コントローラ
10 ロボットハンド
20 駆動機構
21 サーボモータ
22 駆動軸
30 第1変換機構
31 ウォーム
32 ウォームホイール
40 第2変換機構
41 筒部
42 軸
50 第3変換機構
53A 支持部
54A 突起部
55A ツメ支持部
57A 通路
60 ツメ
100 搬送ロボット
D 径方向
P 鉛直軸
R 仮想円

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを把持するロボットハンドであって、
水平方向に配置されるサーボモータと、
鉛直軸を中心とする平面視における仮想円の円周上に配置される複数のツメと、
前記サーボモータの水平軸周りの回転を、前記鉛直軸周りの回転に変換する第1変換機構と、
前記鉛直軸周りの回転を、前記鉛直軸方向の直線移動に変換する第2変換機構と、
前記鉛直軸方向の直線移動を、前記仮想円の径方向の直線移動に変換する第3変換機構と、
を具備し、
前記ツメは、
前記第3変換機構によって、前記仮想円の径方向に移動する、
ロボットハンド。
【請求項2】
請求項1記載のロボットハンドであって、
前記第1変換機構は、
前記サーボモータによって駆動されるウォームと、
鉛直軸周りに回転するウォームホイールと、
を具備し、
前記ウォームと前記ウォームホイールとを螺合することによって、前記サーボモータの水平軸周りの回転を、前記ウォームホイールの前記鉛直軸周りの回転に変換し、
前記第2変換機構は、
前記鉛直軸上にて前記ウォームホイールに固定され、内側に台形ネジ部が形成される筒部と、
外側に台形ネジ部が形成される軸と、
を具備し、
前記筒部と前記軸とを螺合することによって、前記ウォームホイールの前記鉛直軸周りの回転を、前記軸の前記鉛直軸方向の直線移動に変換し、
前記第3変換機構は、
前記軸の下端から前記ツメに向かって水平方向に延設され、先端に突起部が形成される支持部と、
前記突起部が移動する通路が内部に形成されるツメ支持部と、
を具備し、
前記通路は、
径方向の外側から内側、かつ、鉛直方向の上側から下側に向かうように形成され、
前記突起部が前記通路を移動することによって、前記軸の前記鉛直軸方向の直線移動を、前記ツメ支持部の前記仮想円における径方向の直線移動に変換する、
ロボットハンド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−171034(P2012−171034A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−33643(P2011−33643)
【出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(504233351)株式会社マルエム商会 (3)
【出願人】(508372995)有限会社アイトーテック (2)
【Fターム(参考)】