説明

ロボット制御システム

【課題】予め定められた座標系でジョグ送りする場合は複数のキーの組合せ操作が必要なため操作が煩雑になる。
【解決手段】ツールの移動方向を定める方向指示キー41Aを備え、指示された移動方向および手動操作座標系に基づき、ツールをジョグ送りするロボット制御システム10である。ジョグ送り操作時に、手動操作座標系を構成する座標軸のうち1つを選択する。次に座標軸の回転角度を設定する。そして、手動操作座標系を座標軸中心に回転させ、回転後の手動操作座標系に従ってツールをジョグ送りする。上記回転角度は、ジョグダイヤル42によって設定しても良い。また、方向指示キー41のいずれか1つを押下したまま、ジョグダイヤル42によってリアルタイムに座標系を回転させながらアナログ感覚でジョグ送りすることもできる。軸方向をいつでも変更可能とすることによりジョグ送り操作時の煩雑さを解消する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業ツールを取り付けたロボットを所定の位置に手動で移動させるためのジョグ送り機能を有するロボット制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
アーク溶接、スポット溶接等の加工作業をロボットで実現する場合、ティーチングプレイバックと呼ばれる方式が採用されることが一般的である。ティーチングプレイバック方式とは、予め決められた位置にワークを設置して、マニピュレータとワークとの相対的な位置関係を拘束した状態で、ワークに対するマニピュレータの動作を教示し、この教示データを繰り返し再生動作させることで、同一品種のワークを連続して加工するという方法である。
【0003】
図6は、ティーチングプレイバック方式を採用したロボット制御システム60の一般的な構成図である。同図において、マニピュレータ61は、アーム62の先端にワークWを加工するための作業ツールTを備えている。ティーチペンダント63は、ワークWに対するマニピュレータ61の動作を作業者が教示するための装置であり、その盤面上には、作業ツールTを移動させるための方向指示キー64が装備されている。方向指示キー64は、図示しているように座標系の方向(±X,±Y,±Z)に応じた複数のボタンが装備されているのが一般的である。例えば、手動操作座標系の1つであるベース座標系で作業ツールTを移動させる場合は、方向指示キー64のX+を押すと、ベース座標系のX+方向に作業ツールTの制御点が移動する。このように、作業者は方向指示キー64を操作することによって作業ツールTを所望の位置に動かして、加工作業を行わせるための作業経路を教示する。そして、作業経路上の教示点における作業ツールTの位置姿勢座標値が教示データとしてロボット制御装置65に記憶される。なお、以下では作業ツールTを移動させる操作のことを、ジョグ送りと呼ぶことにする。
【0004】
図7は、教示時におけるマニピュレータ61の移動方向と手動操作座標系の関係について説明するための図である。マニピュレータ61、ワークWは、図6と同符号を付与した同一のものであるので説明を省略する。作業経路Kは、ワークWを加工するために必要な経路の1つであり、同図の場合は教示点Aと教示点Bとによって形成される。ベース座標系Cbはマニピュレータ61に原点を有する手動操作座標系である。説明の便宜上、ベース座標系Cbにおける軸方向のX+とY+を矢印で表現しており、その他の軸方向は省略している。
【0005】
上述したように、作業者は作業ツールTを所望の位置にジョグ送りし、その位置を教示する。しかしながら、ジョグ送りの際に必要なキー操作は煩雑さを伴うことが多い。例えば、同図において作業経路Kを教示するために、現在位置である教示点Aから目標位置である教示点Bに作業ツールTをジョグ送りする場合を想定する。教示点Aから教示点Bに向かう方向がベース座標系CbのX+方向に一致していれば、作業者は方向指示キー64のX+を押すだけでよい。しかしながら、ワークW上の作業経路Kは、ベース座標系Cbの軸方向と一致していない。このような場合、作業者は方向指示キー64のX+、Y−等を組み合わせて操作する必要がある。ワークWが大型であったり作業経路Kが複雑であったりすると、作業ツールTのジョグ送り操作は、より一層煩雑になる。
【0006】
そこで、近年の産業用ロボットでは、手動操作座標系の原点位置および軸方向を任意に定義可能なユーザ座標系を、作業者が事前に設定することによって、ジョグ送り操作の煩雑さを解消する提案がなされている(例えば、特許文献1参照)。同図に示すように、作業経路Kの方向が座標系のX+方向に一致するように所望のユーザ座標系Cuを設定すれば、方向指示キー64のX+のみの操作で教示点Bに移動させることができる。すなわち、手動操作座標系の原点位置および軸方向をワークWの設置位置、形状等に合わせた任意の位置および方向に設定することができるため、ジョグ送り操作の煩雑さを解消することが可能である。しかしながら、ユーザ座標系を設定しても、後述する課題を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭61−49205号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、ユーザ座標系は、手動操作座標系の原点位置および軸方向を任意に設定可能としたものであるが、一度設定したユーザ座標系は、原点位置および軸方向を再度設定しない限り固定となるために、ワークWの形状によっては、方向指示キー64の組み合わせによる操作が必要となる。例えば、図7において、教示点Aから教示点Bへジョグ送りする場合は、ユーザ座標系Cuを基準として方向指示キー64のX+のみを押下すればよいが、次いで教示点Bから教示点Cへジョグ送りする場合は、ユーザ座標系Cuまたはベース座標系Cbのどちらを基準としても、方向指示キー64のX+、Y+等の組合せによる操作が必要となる。すなわち、ジョグ送り操作の煩雑さは、解消されているとは言い難い。
【0009】
そこで、本発明は、手動操作座標系の軸方向をいつでも変更可能とすることによって、ジョグ送り操作の煩雑さを解消することができるロボット制御システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、
ロボットに取り付けられたツールの移動方向を定める方向指示手段を備え、この方向指示手段により指示された移動方向および手動操作座標系に基づき、前記ツールをジョグ送りするロボット制御システムにおいて、
前記ジョグ送りの操作時に、前記手動操作座標系を構成する座標軸のうち、少なくとも1つを選択する座標軸選択手段と、
前記座標軸の回転角度を設定する回転角度設定手段と、
前記手動操作座標系を、前記座標軸を中心として前記回転角度だけ回転させる座標系演算手段と、
この座標系演算手段によって算出された手動操作座標系に従って前記ツールをジョグ送りする動作制御手段と、
を備えたことを特徴とするロボット制御システムである。
【0011】
請求項2の発明は、回転操作手段と、この回転操作手段の回転量および回転方向を検出する検出手段とをさらに備え、前記回転角度は、前記検出手段が検出した前記回転量および前記回転方向に基づいて算出されることを特徴とする請求項1記載のロボット制御システムである。
【0012】
請求項3の発明は、前記方向指示手段および前記回転操作手段が同時に操作されたときは、前記座標系演算手段は、前記検出手段が検出した前記回転量および前記回転方向に基づいて前記手動操作座標系を刻々と算出し、前記動作制御手段は、刻々と算出される手動操作座標系および前記方向指示手段により指示された移動方向に基づいて前記ツールをジョグ送りすることを特徴とする請求項2記載のロボット制御システムである。
【0013】
請求項4の発明は、前記ジョグ送りが中断されたときは、前記座標系演算手段は、前記手動操作座標系を演算前の手動操作座標系に戻すことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のロボット制御システムである。
【0014】
請求項5の発明は、前記ジョグ送りが中断されたときに、前記手動操作座標系を演算前の手動操作座標系に戻すか、演算後の手動操作座標系を保持するかを設定可能としたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のロボット制御システムである。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明によれば、手動操作座標系の軸方向をいつでも変更できるようにしたことによって、ジョグ送り操作の煩雑さを解消することができる。
【0016】
請求項2の発明によれば、手動操作座標系の軸方向を回転操作手段によって設定するようにしたことによって、軸方向の変更操作を簡略化することができる。
【0017】
請求項3の発明によれば、マニピュレータをジョグ送りしながらリアルタイムに手動操作座標系の軸方向を変更できるようにしたことによって、アナログ的な感覚でジョグ送り操作を行うことができる。すなわち、ジョグ送り操作の煩雑さをさらに解消することができる。
【0018】
請求項4の発明によれば、ジョグ送りが中断されたときは、手動操作座標系を元に戻すようにしたことによって、ジョグ送り操作の再開時に意図しない方向へロボットが移動してしまうことを防止することができる。
【0019】
請求項5の発明によれば、ジョグ送りが中断されたときに、手動操作座標系を演算前の手動操作座標系に戻すか、演算後の手動操作座標系を保持するかを設定可能としたことによって、ユーザニーズに応じた使い勝手を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は本発明に係るロボット制御システムの構成図である。
【図2】図2は本発明に係るティーチペンダントの外観図である。
【図3】図3は本発明に係るロボット制御システムの機能ブロック図である。
【図4】図4は手動操作座標系を回転させた様子を説明するための図である。
【図5】図5は手動操作座標系を回転させながらジョグ送りする様子を説明するための図である。
【図6】図6はティーチングプレイバック方式を採用した従来のロボット制御システムの構成図である。
【図7】図7は教示時におけるマニピュレータの移動方向と座標系の関係について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
発明の実施の形態を実施例に基づき図面を参照して説明する。
【0022】
[実施の形態1]
図1は、本発明に係るロボット制御システム10のブロック図である。同図は、例としてアーク溶接用途に具体化したものを示しているが、スポット溶接、ハンドリング等のその他の用途においても本発明は適用可能である。
【0023】
同図において、マニピュレータMは、ワークWに対してアーク溶接を自動で行うものであり、ロボット制御装置RCに接続されている。マニピュレータMは、複数のアーム部および手首部と、これらを回転駆動するための複数のサーボモータ(いずれも図示せず)とによって各々構成されている。また、マニピュレータMのアームの先端部分には、作業ツールTとしてアーク溶接トーチが取り付けられている。アーク溶接トーチは、直径1mm程度の溶接ワイヤを、ワークW上の教示された溶接箇所に導くためのものである。
【0024】
ティーチペンダントTPは、可搬式の教示操作盤であり、ロボット制御装置RCに接続されている。作業者は、このティーチペンダントTPを用いて、マニピュレータMをジョグ送りしながらワークWを加工するための作業経路を教示する。教示結果は、教示データTdとしてロボット制御装置RCに記憶される。なお、ティーチペンダントTPは、座標軸選択手段および回転角度設定手段に相当するものであり、詳細については後述する。
【0025】
ロボット制御装置RCは、ティーチペンダントTPからの入力に応じてマニピュレータMのジョグ送りを行わせるものである。また、再生運転時は、教示データTdに基づいた所定のタイミングで動作制御信号をマニピュレータMに出力して駆動したり、溶接制御信号を溶接電源WPに出力したりすることで、アーク溶接加工を自動で行わせる。
【0026】
図2は、本発明に係るティーチペンダントの外観図である。キーボード41は、教示操作、各種設定操作等を行うためのものであり、マニピュレータMをジョグ送りする際の移動方向を定める方向指示キー41Aを含んでいる。方向指示キー41Aは、方向指示手段に相当する。表示部43は、教示データTdの内容やロボットの動作制御に必要な各種パラメータを表示するためのものである。ジョグダイヤル42は、回転操作手段に相当するものであり、内部に備えられたロータリエンコーダ34により回転量および回転方向が検出される。ジョグダイヤル42は、押しボタンの機能も有しており、矢印42Aの方向へ押し込むことが可能となっている。押し込まれることにより、表示部43に表示される選択肢の中からいずれかを決定する等の処理が、ロボット制御装置RCにおいて行われる。
【0027】
図3は、本発明に係るロボット制御システム10の機能ブロック図である。
【0028】
同図において、ティーチペンダントTPは、中央演算処理装置であるCPU31、各種制御プログラムが格納されたROM32、一時的な計算領域としてのRAM33を備えている。また、上述したキーボード41(方向指示キー41A)、ジョグダイヤル42および表示部43を備えている。ロータリエンコーダ34は、ジョグダイヤル42の回転量および回転方向を検出する検出手段である。ロータリエンコーダ34の検出信号により、ジョグダイヤル42の回転方向(正転方向、逆転方向を含む)および回転量が検出される。より具体的には、ロータリエンコーダ34が、ジョグダイヤル42の回転量に比例したパルス信号(検出信号)を検出し、このパルス数を図示しないカウンタにてカウントすることにより、回転量を認識する。また、ロータリエンコーダ34が、例えば2相パルスを出力することにより、正転か逆転しているか(すなわち回転方向)を認識する。なお、CPU31は、キーボード41からの入力操作により生成された操作信号およびロータリエンコーダ34が検出した検出信号をロボット制御装置RCに対して図示しない通信部を介して通知するよう構成されている。
【0029】
座標系演算手段および動作制御手段としてのロボット制御装置RCは、中央演算処理装置であるCPU21、各種制御プログラムや手動操作座標系の定義パラメータ等が格納されたROM22、一時的な計算領域としてのRAM23、各種メモリ等を含むマイクロコンピュータによって構成されている。TPインターフェース1は、ティーチペンダントTPを接続するためのものである。
【0030】
ROM22には、各種処理を行うための制御ソフトウェアが記憶されており、これらを機能的に同図に示すと、キー入力監視部2、教示データ作成処理部3、座標系・座標軸選択処理部7、座標系演算部8、ジョグ動作処理部9、解釈実行部11、駆動指令部12および溶接制御部13の各処理部を備えている。また、ROM22には、ジョグ送り操作時の基準となる手動操作座標系を定義するための制御パラメータも記憶されている。
【0031】
キー入力監視部2は、ティーチペンダントTPのキーボード41およびジョグダイヤル42の操作がなされたときに入力される操作信号を監視する。教示データ作成処理部3は、ティーチペンダントTPからの入力に応じ、教示点の位置姿勢座標値、各種命令等を、教示データTdとしてハードディスク5に記憶する。座標系・座標軸選択処理部7は、ティーチペンダントTPによって選択された、ジョグ送り操作の基準となる手動操作座標系を座標系演算部8に通知する。また、手動操作座標系を構成する座標軸(X軸、Y軸およびZ軸)の中から、選択された座標軸を座標系演算部8に通知する。座標系演算部8は、ロータリエンコーダ34が検出したジョグダイヤル42の回転量および回転方向、またはティーチペンダントTPから指定された回転角度に基づき、手動操作座標系を回転させる演算を行い、RAM23に記憶する。ジョグ動作処理部9は、方向指示キー41Aおよび演算後の手動操作座標系に従って、マニピュレータMを移動させるための演算を行い、演算結果を駆動指令部12に出力する。この結果、マニピュレータMが駆動制御される。
【0032】
ハードディスク5は不揮発性メモリであり、教示データTdを記憶する。この教示データTdを再生するための解釈実行部11は、ハードディスク5に格納されている教示データTdを教示ステップごとに読み出してその内容を解析し、駆動指令部12および溶接制御部13に各種制御信号を出力する。この結果、マニピュレータMが駆動制御されると共に、溶接制御信号が溶接電源WPに出力され、所定のタイミングで溶接電力の供給、シールドガスの出力等の処理が行われる。
【0033】
次に、上記のように構成されたロボット制御システム10の作用について説明する。
【0034】
(1.手動操作座標系の選択)
作業者は、マニピュレータMをジョグ送りする場合、まず、ティーチペンダントTPを操作して手動操作座標系を選択する。手動操作座標系としては、ベース座標系、ツール座標系、ワールド座標系、ユーザ座標系等が予め定められているが、いずれか1つを選択する。ここでは、ベース座標系を選択したものとする。この操作により、座標系・座標軸選択処理部7は、ベース座標系を手動操作座標系として座標系演算部8に通知する。
【0035】
(2.座標軸の選択)
ワークWの形状に応じてベース座標系を回転させる場合、作業者は、表示部43にメニューを呼び出して、ベース座標系を構成する座標軸(X軸、Y軸およびZ軸)のうち、1つを選択する。ここでは、Z軸を選択したものとする。この操作により、座標系・座標軸選択処理部7は、Z軸を回転対象座標軸として座標系演算部8に通知する。
【0036】
(3.回転方向および回転量の設定)
次に作業者は、Z軸を中心に所定の角度だけ回転させる操作を行う。具体的には、ジョグダイヤル42を正転または逆転操作する。この操作により、回転方向および回転量が、ロボット制御装置RCへ通知される。ジョグダイヤル42の回転量と座標軸の回転角度との関係は予め定められており、この関係に基づいて、座標系演算部8は、座標軸の回転方向および回転角度を演算する。この演算結果はティーチペンダントTPに表示されるように構成しておくことが望ましい。そして、作業者は、所望の回転方向および回転角度になったときに、ジョグダイヤル42を図2で示した矢印42Aの方向へ押し込む。この操作により、座標系演算部8は、ベース座標系をZ軸を中心に回転させる演算を行い、演算結果をRAM23に記憶する。なお、上記では座標軸の回転方向および回転角度を、ジョグダイヤル42によって設定するように構成しているが、回転角度として、例えば+45°、−30°等をティーチペンダントTPから数値で設定できるように構成してもよい。プラスの回転角度であればプラス方向へ、マイナスの回転角度であればマイナス方向へそれぞれ回転させるように、座標系演算部8が演算する。また、ジョグダイヤル42の回転量と座標軸の回転角度との関係は、作業者が変更可能なように構成しておくことが望ましい。
【0037】
図4は、手動操作座標系を回転させた様子を説明するための図である。同図(a)は、初期状態のベース座標系Cbを、Z軸を中心に回転させようとしている様子を示している。同図(b)は、回転後のベース座標系Cb’であり、Z軸を中心にマイナス方向へ約45°回転させた様子を示している。
【0038】
(4.座標系回転後の操作)
手動操作座標系の回転が完了した後は、ワークWの形状あるいは作業経路に応じたジョグ送り操作が可能になっているので、作業者は、方向指示キー41Aの例えばX+のみを押下する。この操作によって、ジョグ動作処理部9は、方向指示キー41Aおよび回転後のベース座標系に応じて作業ツールTを移動させるための演算を行い、演算結果を駆動指令部12に出力する。この結果、マニピュレータMが駆動制御されてジョグ送りが行われる。
【0039】
以上説明したように、手動操作座標系の軸方向をいつでも変更できるようにしたことによって、ジョグ送り操作の煩雑さを解消することができる。
【0040】
また、手動操作座標系の軸方向を回転操作手段によって設定するようにしたことによって、軸方向の変更操作を簡略化することができる。
【0041】
[実施の形態2]
実施の形態1では、回転対象となる座標軸を決定した後に回転方向および回転量を定め、手動操作座標系を回転させてから、ジョグ送り操作を行うようにした。これに対し、実施の形態2は、手動操作座標系をリアルタイムに回転させながら、ジョグ送り操作を行えるようにするものである。
【0042】
より具体的には、作業者は、座標軸の選択まで行った後に、ジョグダイヤル42を回転させながら方向指示キー41Aを押下する。座標系演算部8は、ジョグダイヤル42の回転量および回転方向に基づいて手動操作座標系を刻々と算出する。さらに、ジョグ動作処理部9は、刻々と算出される手動操作座標系および方向指示キー41Aにより指示された移動方向に基づいて作業ツールTをジョグ送りする演算を行う。
【0043】
図5は、手動操作座標系を回転させながらジョグ送りする様子を説明するための図である。同図においては、ワークW上に模擬的に示した現在位置P1(黒丸)から、P2(白丸)およびP3(黒四角)を経由して、目標位置P4(白四角)まで、方向指示キー41Aの−Xのみを押下してジョグ送りする場合を示している。P1からP2の区間は、回転させる前(初期状態)の手動操作座標系Rc1を基準としてジョグ送りを行う。したがって、P1の位置から方向指示キー41Aの−Xのみを押下してジョグ送りを開始し、P2へ到達させる。この区間の経路K1は直線となる。P2からP3の区間は、P2の位置から方向指示キー41Aの−Xのみを押下したまま、ジョグダイヤル42を回転させながら(すなわち手動操作座標系Rc2を回転させながら)、ジョグ送りを行い、P3へ到達させる。この区間の経路K2は曲線となる。P3からP4の区間は、回転後の手動操作座標系Rc3を基準としてジョグ送りを行う。したがって、ジョグダイヤル42は回転させずに、P3の位置から方向指示キー41Aの−Xのみを押下してジョグ送りを開始し、P4へ到達させる。この区間の経路K3は直線となる。
【0044】
このように、実施の形態2によれば、ジョグ送り中にジョグダイヤル42の操作により手動操作座標系の回転を可能としたことによって、方向指示キー41Aのいずれかのキーを押下したままで動作方向を変更することが可能となり、アナログ的な感覚による操作を実現することができる。すなわち、ジョグ送り操作の煩雑さをさらに解消することができる。
【0045】
なお、上記いずれの実施例においても、座標系演算部8は、ジョグ送り操作が中断した後(方向指示キー41Aを離した後)、座標系演算部8は、手動操作座標系を演算前の手動操作座標系に戻すように構成することが好ましい。このようにすることによって、ジョグ送り操作の再開時に意図しない方向へロボットが移動してしまうことを防止することができる。
【0046】
あるいは、ジョグ送りが中断されたときに、手動操作座標系を演算前の手動操作座標系に戻すか、演算後の手動操作座標系を保持するかを予め選択できるように構成してもよい。このように構成することによって、ユーザニーズに応じた使い勝手を提供することができる。
【符号の説明】
【0047】
1 TPインターフェース
2 キー入力監視部
3 教示データ作成処理部
5 ハードディスク
7 座標系・座標軸選択処理部
8 座標系演算部
9 ジョグ動作処理部
10 ロボット制御システム
11 解釈実行部
12 駆動指令部
13 溶接制御部
21 CPU(ロボット制御装置)
22 ROM(ロボット制御装置)
23 RAM(ロボット制御装置)
31 CPU(ティーチペンダント)
32 ROM(ティーチペンダント)
33 RAM(ティーチペンダント)
34 ロータリエンコーダ
41 キーボード
41A 方向指示キー
42 ジョグダイヤル
42A 矢印
43 表示部
60 ロボット制御システム
61 マニピュレータ
62 アーム
63 ティーチペンダント
64 方向指示キー
65 ロボット制御装置
Cb ベース座標系
Cu ユーザ座標系
K 作業経路
K1 経路
K2 経路
K3 経路
M マニピュレータ
P1 現在位置
P2 ジョグダイヤルの回転開始位置
P3 ジョグダイヤルの回転終了位置
P4 目標位置
RC ロボット制御装置
Rc1 手動操作座標系
Rc2 手動操作座標系
Rc3 手動操作座標系
T 作業ツール
Td 教示データ
TP ティーチペンダント
W ワーク
WP 溶接電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットに取り付けられたツールの移動方向を定める方向指示手段を備え、この方向指示手段により指示された移動方向および手動操作座標系に基づき、前記ツールをジョグ送りするロボット制御システムにおいて、
前記ジョグ送りの操作時に、前記手動操作座標系を構成する座標軸のうち、少なくとも1つを選択する座標軸選択手段と、
前記座標軸の回転角度を設定する回転角度設定手段と、
前記手動操作座標系を、前記座標軸を中心として前記回転角度だけ回転させる座標系演算手段と、
この座標系演算手段によって算出された手動操作座標系に従って前記ツールをジョグ送りする動作制御手段と、
を備えたことを特徴とするロボット制御システム。
【請求項2】
回転操作手段と、この回転操作手段の回転量および回転方向を検出する検出手段とをさらに備え、前記回転角度は、前記検出手段が検出した前記回転量および前記回転方向に基づいて算出されることを特徴とする請求項1記載のロボット制御システム。
【請求項3】
前記方向指示手段および前記回転操作手段が同時に操作されたときは、前記座標系演算手段は、前記検出手段が検出した前記回転量および前記回転方向に基づいて前記手動操作座標系を刻々と算出し、前記動作制御手段は、刻々と算出される手動操作座標系および前記方向指示手段により指示された移動方向に基づいて前記ツールをジョグ送りすることを特徴とする請求項2記載のロボット制御システム。
【請求項4】
前記ジョグ送りが中断されたときは、前記座標系演算手段は、前記手動操作座標系を演算前の手動操作座標系に戻すことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のロボット制御システム。
【請求項5】
前記ジョグ送りが中断されたときに、前記手動操作座標系を演算前の手動操作座標系に戻すか、演算後の手動操作座標系を保持するかを設定可能としたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のロボット制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−66322(P2012−66322A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−211621(P2010−211621)
【出願日】平成22年9月22日(2010.9.22)
【出願人】(000000262)株式会社ダイヘン (990)
【Fターム(参考)】