説明

ロボット制御装置、物品取り出しシステム、プログラムおよびロボットの制御方法

【課題】 物品の姿勢がランダムであっても、ロボットを用いて取り出し部位を把持して、物品を取り出す。
【解決手段】 複数の取り出し部位を備える物品の位置・姿勢情報に基づいて、前記複数の取り出し部位にそれぞれ設定された把持方向のうち、所定の方向となす角度が最小となる把持方向を選択方向として選択する方向選択部と、前記複数の取り出し部位のうち、前記把持方向として前記選択方向が設定された取り出し部位を把持して前記物品を取り出すようにロボットを制御する制御部と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボット制御装置、物品取り出しシステム、プログラム、およびロボットの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、工場の製造ラインなどにおいて様々な産業用ロボットが用いられている。特に、(垂直)多関節ロボットは、人間の腕に近い構造をしているため、種々の作業を人間に代わって行うことができる。
例えば、特許文献1では、カメラによって撮像された物品(ワーク)の画像から単純形状の特定部位を検出し、当該特定部位との相対位置関係に基づいて算出される取り出し部位(ピッキング部位)をロボットハンドによって把持してピックアップするピッキング装置が開示されている。
このようにして、カメラによって撮像された画像からワークを認識して、ワークを取り出すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−134731号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、例えばトレイに山積みまたはバラ積みしてワークを供給する場合、各ワークがランダムな姿勢をとることとなる。そのため、特許文献1のピッキング装置では、特定部位がカメラの方向を向いておらず、認識することができないワークが存在する場合がある。さらに、ピッキング部位がロボットハンドの接近方向を向いておらず、把持することができないワークが存在する場合もある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前述した課題を解決する主たる本発明は、複数の取り出し部位を備える物品の位置・姿勢情報に基づいて、前記複数の取り出し部位にそれぞれ設定された把持方向のうち、所定の方向となす角度が最小となる把持方向を選択方向として選択する方向選択部と、前記複数の取り出し部位のうち、前記把持方向として前記選択方向が設定された取り出し部位を把持して前記物品を取り出すようにロボットを制御する制御部と、を有することを特徴とするロボット制御装置である。
【0006】
本発明の他の特徴については、添付図面及び本明細書の記載により明らかとなる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、物品の姿勢がランダムであっても、ロボットを用いて取り出し部位を把持して、物品を取り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施形態におけるロボット制御装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態におけるロボット制御装置を備えた物品取り出しシステム全体の構成の概略を示すブロック図である。
【図3】ワークの形状の一例を示す斜視図である。
【図4】図3に示したワークにおける取り出し部位の配置の一例を示す図である。
【図5】入力部13に入力される各取り出し部位の相対座標および把持方向の一例を示す図である。
【図6】方向選択部14、座標算出部15、部位選択部16、および制御部17の機能をコンピュータに実現させるためのプログラムの動作を説明するフローチャートである。
【図7】選択方向Dsを選択する方法を説明する図である。
【図8】選択方向Dsを選択する方法を説明する図である。
【図9】選択部位Psを選択する方法を説明する図である。
【図10】入力部13に入力される各取り出し部位の相対座標、把持方向、および優先順位の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書および添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
【0010】
===物品取り出しシステム全体の構成の概略===
以下、図2ないし図4を参照して、後述する本発明の一実施形態におけるロボット制御装置を備えた物品取り出しシステム全体の構成の概略について説明する。
【0011】
図2に示されている物品取り出しシステムは、ロボット制御装置1、ステレオカメラ2、および多関節ロボット3を含んで構成され、一例として、トレイ9に収納された5つのワークWn(1≦n≦5)を取り出し対象とする。
【0012】
各ワークWnは、例えば図3に示す形状をしており、トレイ9内でランダムな姿勢をとっているものとする。また、各ワークWnは、例えば図4に示すように、7つの把持可能な取り出し部位Pm(1≦m≦7)を備えている。ここで、各取り出し部位Pmは、実際には、多関節ロボット3によって把持される際にハンド31が接触する2点からなり、当該2点を結ぶ線分の中点の座標で表すことができる。
【0013】
なお、図4において、取り出し部位P1ないしP6は、多関節ロボット3のハンド31を閉じることによってワークWnを持ち上げることが可能となるのに対して、取り出し部位P7は、ハンド31を開くことによってワークWnを持ち上げることが可能となる。本明細書においては、ハンド31を閉じる場合および開く場合のいずれも「把持」と称することとする。
【0014】
ステレオカメラ2は、トレイ9が据え置かれる作業台などの上方に配置されている。また、ステレオカメラ2から出力される3次元情報IMGは、ロボット制御装置1に入力されている。さらに、ロボット制御装置1から出力される制御信号CNTは、多関節ロボット3に入力されている。
【0015】
なお、図2において、「Σ」は、例えば多関節ロボット3の基端を原点とするワールド座標系を示し、x(Σ)、y(Σ)、z(Σ)は、それぞれワールド座標系のx軸、y軸、z軸を示している。一方、図4において、「Σ」は、例えばワークWnの任意の点(重心など)を原点とするローカル座標系を示し、X(Σ)、Y(Σ)、Z(Σ)は、それぞれローカル座標系のX軸、Y軸、Z軸を示している。
【0016】
ここで、

と表される4行4列の同次変換行列を用いて、ワークWnの位置および姿勢をTWnと表すこととすると、各ワークWn(の原点)のワールド座標系における位置および姿勢を示す同次変換行列(位置・姿勢情報)は、ΣWnと表すことができる。以下、このような同次変換行列で示されるワールド座標系における位置および姿勢を、座標ΣWnのように称することとする。
【0017】
なお、同次変換行列において、P(3×1)は、位置(平行移動)を示す3行1列の行列であり、

と表すことができる。一方、R(3×3)は、姿勢(各座標軸を中心とする回転)を示す3行3列の行列であり、例えば図2に示すように、x軸回りにθx、y軸回りにθy、z軸回りにθzだけ回転させた場合には、

と表されるRx、Ry、およびRzの積として表すことができる。
【0018】
また、取り出し部位Pmの位置および姿勢をTPmと表すこととすると、各取り出し部位PmのワークWnの原点から見た相対的な位置および姿勢を示す同次変換行列(位置・姿勢情報)は、ΣPmと表すことができる。以下、このような同次変換行列で示される相対的な位置および姿勢を、相対座標ΣPmのように称することとする。
【0019】
===物品取り出しシステム全体の動作の概略===
以下、物品取り出しシステム全体の動作の概略について説明する。
ステレオカメラ2は、3次元情報取得装置に相当し、トレイ9が据え置かれる作業台などのカメラエリアにあるワークWnを撮影し、3次元情報IMGを出力する。また、ロボット制御装置1は、3次元情報IMGに基づいて制御信号CNTを出力する。そして、多関節ロボット3は、制御信号CNTに応じて制御され、トレイ9内のワークWnをハンド31によって把持して1つずつ取り出す。
このようにして、ステレオカメラ2によって取得した3次元情報IMGに基づいて多関節ロボット3を制御し、トレイ9内のワークWnを1つずつ取り出すことができる。
【0020】
===ロボット制御装置の構成===
以下、図1を参照して、本発明の一実施形態におけるロボット制御装置の構成について説明する。
【0021】
図1に示されているロボット制御装置1は、認識処理部11、記憶部12、入力部13、方向選択部14、座標算出部15、部位選択部16、および制御部17を含んで構成されている。
【0022】
認識処理部11には、3次元情報IMGが入力され、認識処理部11から出力される各ワークWnの座標ΣWnは、記憶部12に入力されている。また、入力部13に入力される取り出し部位情報INFは、各取り出し部位Pmの相対座標ΣPmおよび把持方向Dmとして記憶部12に入力されている。
【0023】
方向選択部14には、記憶部12からワークWnの座標ΣWnが入力され、方向選択部14から出力される選択方向Dsは、座標算出部15に入力されている。また、座標算出部15には、記憶部12からワークWnの座標ΣWnおよび後述する取り出し部位Pkの相対座標ΣPkも入力されている。さらに、部位選択部16には、座標算出部15から取り出し部位Pkの座標ΣPkが入力され、部位選択部16から出力される選択部位Dsは、座標算出部15に入力されている。そして、制御部17には、座標算出部15から選択部位Psの座標ΣPsが入力され、制御部17からは、制御信号CNTが出力されている。
【0024】
===ロボット制御装置の動作===
以下、図5ないし図7を適宜参照して、本実施形態におけるロボット制御装置の動作について説明する。
【0025】
認識処理部11は、ステレオカメラ2によって取得した3次元情報IMGに基づいて位置・姿勢認識処理を行い、各ワークWnの座標ΣWnを算出する。具体的には、例えば、3次元(画像)情報IMGからエッジを抽出し、図3に示したような1つのワークの3次元情報(3D−CADデータなど)とのマッチングを行うことによって、各ワークWnを認識して座標ΣWnを算出する。そして、各ワークWnの座標ΣWnは、記憶部12に記憶される。
【0026】
入力部13には、ワークWnの取り出し部位情報INFが入力される。ここで、取り出し部位情報INFは、例えば図5に示すように、各取り出し部位Pmの相対座標ΣPmと、各取り出し部位Pmに設定された把持方向Dmとからなり、これらは記憶部12に記憶される。
【0027】
前述したように、各取り出し部位Pmは、多関節ロボット3のハンド31が接触する2点を結ぶ線分の中点の座標で表され、相対座標ΣPmは、当該中点のローカル座標系における位置および姿勢を示している。一方、把持方向Dmは、取り出し部位Pmを把持する際にハンド31が接近してくる方向であり、ローカル座標系の各座標軸の方向で表される。例えば、取り出し部位P1を把持する場合には、ハンド31をローカル座標系のZ軸の正方向から接近させ、取り出し部位P4を把持する場合には、ハンド31をローカル座標系のX軸の負方向から接近させることとなる。
【0028】
ロボット制御装置1のうち、方向選択部14、座標算出部15、部位選択部16、および制御部17の機能は、例えば、認識処理部11、記憶部12、および入力部13を備えるコンピュータによって実現することができる。図6は、方向選択部14、座標算出部15、部位選択部16、および制御部17に相当する機能をコンピュータに実現させるためのプログラムの動作を示している。
【0029】
プログラムの処理が開始されると(S1)、各ワークWn(1≦n≦5)に対して、S2からS9までのループ処理が行われる。
【0030】
ループ処理においては、まず、記憶部12からワークWnの座標ΣWnを読み出す(S2)。そして、当該座標ΣWnに基づいて、各取り出し部位Pmの把持方向Dmの何れかを選択方向Dsとして選択する(S3)。したがって、当該S3の処理は、方向選択部14に相当する機能を実現する。
【0031】
S3の処理においては、各取り出し部位Pmの把持方向Dmのうち、「所定の方向となす角度」が最小となる把持方向が選択方向Dsとして選択される。
【0032】
「所定の方向」としては、ワークWnを把持して取り出す際に、多関節ロボット3のハンド31を接近させ、ワークWnを移動させるのに好適な方向を選択することができる。例えば、図2において、高さ方向(トレイ9の平面に垂直な方向)を「所定の方向」として選択することができる。また、例えば、トレイ9が据え置かれる作業台が傾斜している場合や、作業台の上方に配置されているステレオカメラ2が障害物となる場合などには、適宜斜め上方を「所定の方向」として選択してもよい。
【0033】
また、本実施形態では、把持方向Dmをローカル座標系の各座標軸の方向で表しているため、「所定の方向となす角度」は、ローカル座標系の各座標軸の単位ベクトル(正方向および負方向)が「所定の方向」の単位ベクトルとなす角度として計算することができる。なお、ローカル座標系の各座標軸の単位ベクトルは、ワークWnの(位置および)姿勢を示す座標ΣWnから求めることができる。
【0034】
さらに、「所定の方向」をワールド座標系の何れかの座標軸の方向と一致させることによって、「所定の方向となす角度」の計算を省略することもできる。ここで、ワークWnの座標ΣWnを、

と表すこととすると、A、B、Cは、それぞれローカル座標系のX軸、Y軸、Z軸の単位ベクトル(正方向)のワールド座標系における姿勢を示している。そのため、例えば、「所定の方向」をワールド座標系のz軸の正方向と一致させ、ローカル座標系のX軸、Y軸、Z軸の単位ベクトル(正方向)がワールド座標系のz軸の単位ベクトル(正方向)となす角度をそれぞれθi、θj、θkとすると、
=cosθi、
=cosθj、
=cosθk
となる。
【0035】
したがって、a、b、cのそれぞれの正負および絶対値の大きさから、「所定の方向となす角度」が最小となる把持方向、すなわち、選択方向Dsを求めることができる。例えば、ワークWnが図7に示すような姿勢をとっている場合には、|c|>|a|、かつ|c|>|b|、かつc>0となり、ローカル座標系のZ軸の正方向が選択方向Dsとして選択される(Ds=Z)。また、例えば、ワークWnが図8に示すような姿勢をとっている場合には、|b|>|a|、かつ|b|>|c|、かつb<0となり、ローカル座標系のY軸の負方向が選択方向Dsとして選択される(Ds=−Y)。
【0036】
次に、記憶部12から、取り出し部位Pmのうち、把持方向Dmとして選択方向Dsが設定された取り出し部位Pkの相対座標ΣPkを読み出す(S4)。そして、ワークWnの座標ΣWnおよび取り出し部位Pkの相対座標ΣPkから、取り出し部位Pkの座標ΣPkを、
(ΣPk)=(ΣWn)(ΣPk
と算出する(S5)。したがって、当該S5の処理は、座標算出部15に相当する機能を実現する。
【0037】
次に、把持方向Dmとして選択方向Dsが設定された取り出し部位Pkが複数存在する場合(S6:YES)には、S5の処理において算出された座標ΣPkに基づいて、複数存在する取り出し部位Pkの何れかを選択部位Psとして選択する(S7)。したがって、当該S7の処理は、部位選択部16に相当する機能を実現する。ここで、一例として、選択方向Ds=Zであるものとすると、把持方向Dmとして選択方向Ds(=Z)が設定された2つの取り出し部位P1およびP2が存在する。
【0038】
S7の処理においては、複数存在する取り出し部位Pk(k=1または2)のうち、「所定の方向の高さ」が最も高い取り出し部位が選択部位Psとして選択される。なお、「所定の方向」は、S3の処理の場合と同一の方向であり、「所定の方向の高さ」は、ワールド座標系における取り出し部位Pkの位置ベクトルの「所定の方向」への正射影として計算することができる。また、ワールド座標系における取り出し部位Pkの位置ベクトルは、取り出し部位Pkの位置(および姿勢)を示す座標ΣPkから求めることができる。
【0039】
さらに、例えば、「所定の方向」をワールド座標系のz軸の正方向と一致させることによって、「所定の方向の高さ」の計算を省略することもできる。ここで、取り出し部位Pkの座標ΣPkを、

と表すこととすると、Dは、取り出し部位Pkのワールド座標系における位置を示している。したがって、dが「所定の方向の高さ」を示し、例えば、ワークWnが図9に示すような姿勢をとっている場合には、取り出し部位P1またはP2のうち、取り出し部位P2が選択部位Psとして選択される(Ps=P2)。
【0040】
一方、S6において、把持方向Dmとして選択方向Dsが設定された取り出し部位Pkが1つだけ存在する場合(S6:NO)には、当該1つの取り出し部位Pkを選択部位Psとする(S8)。ここで、一例として、選択方向Ds=Xであるものとすると、把持方向Dmとして選択方向Ds(=X)が設定された唯一の取り出し部位P3が存在する。
【0041】
最後に、ワークWnの選択部位Psの座標ΣPsに基づいて制御信号CNTを出力し、選択部位Psを把持してワークWnを「所定の方向」に取り出すように多関節ロボット3を制御する(S9)。したがって、当該S9の処理は、制御部17に相当する機能を実現する。なお、選択方向Dsは、「所定の方向となす角度」が最小となる把持方向であるので、ワークWnを選択方向Dsに取り出すように多関節ロボット3を制御してもよい。
【0042】
そして、S2からS9までのループ処理を各ワークWnに対して行うことによって、ワークW1ないしW5をすべて取り出すことができ、処理を終了する(S10)。
【0043】
このようにして、ロボット制御装置1は、把持方向Dmとして選択方向Dsが設定された取り出し部位Pkを把持してワークWnを取り出すように多関節ロボット3を制御する。そして、各ワークWnは複数の取り出し部位Pmを備えているため、ワークWn姿勢がランダムであっても、多関節ロボット3は、ハンド31によって何れかの取り出し部位を把持して、ワークWnを取り出すことができる。
【0044】
また、ロボット制御装置1は、ワークWnの各取り出し部位Pmの把持方向Dmのうち、「所定の方向となす角度」が最小となる把持方向を選択方向Dsとして選択している。そして、作業台の傾斜や障害物の配置などを考慮して、多関節ロボット3のハンド31を接近させ、ワークWnを移動させるのに好適な方向を「所定の方向」として選択することによって、多関節ロボット3の動作可能範囲を広く取ることができる。
【0045】
さらに、ロボット制御装置1は、取り出し部位Pkが複数存在する場合には、当該複数存在する取り出し部位Pkのうち、「所定の方向の高さ」が最も高い取り出し部位を選択部位Psとして選択している。したがって、ワークWnに多関節ロボット3のハンド31が接近する際に、他のワークとの干渉を抑制することができる。
【0046】
なお、取り出し部位Pkが複数存在する場合の選択部位Psの選択方法として、他の方法を用いてもよい。例えば図10に示すように、各取り出し部位Pmに優先順位Rmをさらに設定し、図6のS7の処理において、当該優先順位Rmに基づいて選択部位Psを選択してもよい。また、この場合において、優先順位Rmが同じ取り出し部位Pkが複数存在する場合には、さらに「所定の方向の高さ」に基づいて選択部位Psを選択してもよい。
【0047】
前述したように、ロボット制御装置1において、ワークWn(物品)の各取り出し部位Pmの把持方向Dmのうち、「所定の方向となす角度」が最小となる把持方向を選択方向Dsとして選択し、把持方向Dmとして選択方向Dsが設定された取り出し部位Pkを把持してワークWnを取り出すように多関節ロボット3を制御することによって、ワークWn姿勢がランダムであっても、多関節ロボット3のハンド31によって何れかの取り出し部位を把持して、ワークWnを取り出すことができる。
【0048】
また、把持方向Dmとして選択方向Dsが設定された取り出し部位Pkが複数存在する場合に、当該複数存在する取り出し部位Pkのうち、「所定の方向の高さ」が最も高い取り出し部位が選択部位Psとして選択し、選択部位Psを把持してワークWnを取り出すように多関節ロボット3を制御することによって、ワークWnに多関節ロボット3のハンド31が接近する際に、他のワークとの干渉を抑制することができる。
【0049】
また、各取り出し部位Pmに優先順位Rmをさらに設定することによって、当該優先順位Rmに基づいて選択された選択部位Psを把持してワークWnを取り出すことができる。
【0050】
また、ワークWnを把持して取り出す際に、多関節ロボット3のハンド31を接近させ、ワークWnを移動させるのに好適な「所定の方向」に取り出すことによって、多関節ロボット3の動作可能範囲を広く取ることができる。
【0051】
また、ワークWnを把持して取り出す際に、「所定の方向となす角度」が最小となる把持方向である選択方向Dsに取り出すことによっても、多関節ロボット3の動作可能範囲を広く取ることができる。
【0052】
また、ワールド座標系におけるワークWnの位置および姿勢を示す同次変換行列ΣWnと、ローカル座標系における取り出し部位Pkの位置および姿勢を示す同次変換行列ΣPkとの積を、取り出し部位Pkの座標ΣPkとして算出することによって、当該座標ΣPkに基づいて、取り出し部位Pkを把持してワークWnを取り出すように多関節ロボット3を制御することができる。
【0053】
また、図2に示した物品取り出しシステムにおいて、ステレオカメラ2によって取得した3次元情報IMGに基づいて位置・姿勢認識処理を行うことによって、各ワークWnの座標ΣWnを算出し、多関節ロボット3を制御してトレイ9内のワークWnを1つずつ取り出すことができる。
【0054】
また、ロボット制御装置1の少なくとも方向選択部14に相当する機能をコンピュータに実現させるためのプログラムにおいて、ワークWnが備える複数の取り出し部位Pmにそれぞれ設定された把持方向Dmのうち、「所定の方向となす角度」が最小となる把持方向を選択方向Dsとして選択することによって、把持方向Dmとして選択方向Dsが設定された取り出し部位Pkの座標ΣPkに基づいて多関節ロボット3を制御し、取り出し部位Pkを把持してワークWnを取り出すことができる。
【0055】
また、ワークWnが備える複数の取り出し部位Pmにそれぞれ設定された把持方向Dmのうち、「所定の方向となす角度」が最小となる把持方向を選択方向Dsとして選択し、把持方向Dmとして選択方向Dsが設定された取り出し部位Pkを把持してワークWnを取り出すように多関節ロボット3を制御することによって、ワークWn姿勢がランダムであっても、多関節ロボット3のハンド31によって何れかの取り出し部位を把持して、ワークWnを取り出すことができる。
【0056】
なお、上記実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。
【0057】
上記実施形態では、ステレオカメラ2を用いてトレイ9上のワークの3次元情報IMGを取得しているが、これに限定されるものではない。ステレオカメラ2の代わりに、例えばカメラおよびレーザスキャナを用いて3次元情報を取得してもよい。
【0058】
上記実施形態では、ロボット制御装置1は、例えば図2に示した多関節ロボット3を制御対象としているが、これに限定されるものではない。ロボット制御装置1が制御するロボットは、ワークの選択部位Psを把持して取り出すことができればよく、他の形態のロボットであってもよい。
【0059】
上記実施形態では、例えば図3に示した形状の5つのワークを取り出し対象としているが、これに限定されるものではない。トレイ9上には複数の種類のワークが混在していてもよく、この場合には、ワークの種類ごとに取り出し部位を設定すればよい。
【0060】
上記実施形態では、方向選択部14、座標算出部15、部位選択部16、および制御部17の機能は、認識処理部11、記憶部12、および入力部13を備えるコンピュータによって実現されているが、これに限定されるものではない。例えば、制御部17には、公知の実装方法を用いることができるため、制御部17をさらに備えるコンピュータに、図6のS9の処理において選択部位Psの座標ΣPsを出力するプログラムを搭載してもよい。また、例えば、認識処理部11の位置・姿勢認識処理をさらに行うプログラムをコンピュータに搭載してもよい。
【符号の説明】
【0061】
1 ロボット制御装置
2 ステレオカメラ(3次元情報取得装置)
3 多関節ロボット
9 トレイ
11 認識処理部
12 記憶部
13 入力部
14 方向選択部
15 座標算出部
16 部位選択部
17 制御部
31 ハンド
W1〜W5 ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の取り出し部位を備える物品の位置・姿勢情報に基づいて、前記複数の取り出し部位にそれぞれ設定された把持方向のうち、所定の方向となす角度が最小となる把持方向を選択方向として選択する方向選択部と、
前記複数の取り出し部位のうち、前記把持方向として前記選択方向が設定された取り出し部位を把持して前記物品を取り出すようにロボットを制御する制御部と、
を有することを特徴とするロボット制御装置。
【請求項2】
前記把持方向として前記選択方向が設定された取り出し部位が複数存在する場合に、当該複数存在する取り出し部位のうち、前記所定の方向の高さが最も高い取り出し部位を選択部位として選択する部位選択部をさらに有し、
前記制御部は、前記選択部位を把持して前記物品を取り出すように前記ロボットを制御することを特徴とする請求項1に記載のロボット制御装置。
【請求項3】
前記複数の取り出し部位には、それぞれ優先順位が設定され、
前記把持方向として前記選択方向が設定された取り出し部位が複数存在する場合に、当該複数存在する取り出し部位のうち、前記優先順位が最も高い取り出し部位を選択部位として選択する部位選択部をさらに有し、
前記制御部は、前記選択部位を把持して前記物品を取り出すように前記ロボットを制御することを特徴とする請求項1に記載のロボット制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記物品を前記所定の方向に取り出すように前記ロボットを制御することを特徴とする請求項1ないし請求項3の何れかに記載のロボット制御装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記物品を前記選択方向に取り出すように前記ロボットを制御することを特徴とする請求項1ないし請求項3の何れかに記載のロボット制御装置。
【請求項6】
前記物品を認識して、ワールド座標系における前記物品の位置・姿勢情報を算出する認識処理部と、
前記物品のローカル座標系における、前記複数の取り出し部位の位置・姿勢情報および前記把持方向が入力される入力部と、
前記ワールド座標系における前記物品の位置・姿勢情報と前記ローカル座標系における前記複数の取り出し部位の位置・姿勢情報とに基づいて、前記ワールド座標系における前記複数の取り出し部位の位置・姿勢情報を算出する座標算出部と、
をさらに有し、
前記制御部は、前記ワールド座標系における前記複数の取り出し部位の位置・姿勢情報に基づいて、前記物品を取り出すように前記ロボットを制御することを特徴とする請求項1ないし請求項5の何れかに記載のロボット制御装置。
【請求項7】
請求項6に記載のロボット制御装置と、
前記物品の3次元情報を取得する3次元情報取得装置と、
前記制御部の制御によって前記物品を取り出す前記ロボットと、
を備え、
前記認識処理部は、前記3次元情報に基づいて前記物品の位置・姿勢情報を算出することを特徴とする物品取り出しシステム。
【請求項8】
複数の取り出し部位を備える物品を、前記複数の取り出し部位の何れかを把持して取り出すようにロボットを制御する制御部を備え、前記物品の位置・姿勢情報と、前記複数の取り出し部位の位置・姿勢情報と、前記複数の取り出し部位にそれぞれ設定された把持方向と、が入力されるコンピュータに、
前記物品の位置・姿勢情報に基づいて、前記把持方向のうち、所定の方向となす角度が最小となる把持方向を選択方向として選択する機能と、
前記複数の取り出し部位のうち、前記把持方向として前記選択方向が設定された取り出し部位の位置・姿勢情報を前記制御部に入力する機能と、
を実現させるためのプログラム。
【請求項9】
複数の取り出し部位を備える物品の位置・姿勢情報に基づいて、前記複数の取り出し部位にそれぞれ設定された把持方向のうち、所定の方向となす角度が最小となる把持方向を選択方向として選択し、
前記複数の取り出し部位のうち、前記把持方向として前記選択方向が設定された取り出し部位を把持して前記物品を取り出すようにロボットを制御することを特徴とするロボットの制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−187666(P2012−187666A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−53280(P2011−53280)
【出願日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】