説明

ロボット教示システム

【課題】ロボットの教示作業に必要な時間を短縮することが可能なロボット教示システムを提供する。
【解決手段】ロボット教示システム10は、ロボット11と、ロボットコントローラ12と、ツール13と、制御部20とを備えている。制御部20は、加工対象Wの図面データ25を読み込む図面データ読込部21と、図面データ25を表示する表示部29と、表示部29上で参照マーク35を移動させる入力部22とを有している。特定領域設定部43は目標図形50に対して特定領域51を設定するとともに、通過位置設定部24は、図面データ25上の特定領域51に参照マーク35を一致させた場合に、当該特定領域51に対応する一の通過位置を定める。プログラム作成部31は、移動プログラム32を作成し、出力部33は、移動プログラム32をロボットコントローラ12に送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工対象に対して加工作業を行うロボットを教示(ティーチング)するロボット教示システムに係り、とりわけロボットの教示作業に必要な時間を短縮することが可能なロボット教示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、半田付け、ねじ締め等の作業をロボットに行わせる場合、予め各作業に対応するツールをロボット先端に取付け、その後ロボットに各作業位置を教示する。この場合、ロボットを手動で実際に操作して位置決めを行い、各作業位置を1箇所ずつロボットに教示する必要がある。
【0003】
このように、ロボットの教示作業には時間がかかっている。このため、ロボットの教示作業に必要な時間を短縮するため、ロボットを実際に動作させることなくオフラインで教示作業を行うこと(オフラインティーチング)が求められている。
【0004】
このようなオフラインティーチングを行うためのシステムも存在する。しかしながら、従来のオフラインティーチングシステムにおいては、教示位置を一点ずつ設定する必要があるため、効率的にロボットプログラムを作成することは難しい。例えば、ロボットに半田付け作業を行わせる場合、半田付けを行う箇所は、例えばワーク上の円の中心点または線分の端部等であることが多い。しかしながら、従来のオフラインティーチングシステムを用いた場合、マウス等を操作することにより画面上でカーソルを移動させて、例えば円の中心点または線分の端部に教示位置を正確に合わせることは難しい。このため、教示作業に時間がかかっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−188778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこのような点を考慮してなされたものであり、目標図形上で通過位置を正確に設定することを容易にすることにより、ロボットの教示作業に必要な時間を短縮することが可能なロボット教示システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、加工対象に対して加工作業を行うロボットを教示するロボット教示システムにおいて、ロボットと、ロボットに接続されたロボットコントローラと、ロボットに取付られたツールと、ロボットコントローラに接続され、ロボットコントローラを制御する制御部とを備え、制御部は、目標図形を含む加工対象の図面データを読み込む図面データ読込部と、目標図形を含む図面データを表示する表示部と、表示部上で参照マークを移動させる入力部と、目標図形に対して、入力部からの参照マークが一致した際、一の通過位置を特定する特定領域を設定する特定領域設定部と、図面データ上の特定領域に入力部からの参照マークが一致した場合に、図面データに基づいて当該特定領域に対応する一の通過位置を定める通過位置設定部と、通過位置設定部により設定されたロボットの通過位置に基づいて、ロボットの移動プログラムを作成するプログラム作成部と、プログラム作成部で作成された移動プログラムをロボットコントローラへ送信する出力部とを有することを特徴とするロボット教示システムである。
【0008】
本発明は、表示部は、参照マークが図面データ上の特定領域に一致したとき、当該目標図形の色を変化させることを特徴とするロボット教示システムである。
【0009】
本発明は、目標図形は円形状からなり、通過位置設定部は、目標図形を構成する円の中心点を前記一の通過位置として定めることを特徴とするロボット教示システムである。
【0010】
本発明は、目標図形は線分形状からなり、通過位置設定部は、目標図形を構成する線分の一方の端点または線分の中心点を前記一の通過位置として定めることを特徴とするロボット教示システムである。
【0011】
本発明は、目標図形は長方形形状からなり、通過位置設定部は、目標図形を構成する長方形の角の点または長方形の中心点を前記一の通過位置として定めることを特徴とするロボット教示システムである。
【0012】
本発明は、図面データは、DXFデータまたはガーバーデータからなることを特徴とするロボット教示システムである。
【0013】
本発明は、通過位置設定部により設定されたロボットの通過位置を編集する通過位置編集部を更に備えたことを特徴とするロボット教示システムである。
【0014】
本発明は、制御部は、付加情報を蓄積する情報蓄積部を有し、プログラム作成部は、情報蓄積部に蓄積された付加情報に基づいて移動プログラムを作成することを特徴とするロボット教示システムである。
【0015】
本発明は、ツールおよびロボットコントローラに接続されたツールコントローラを更に備え、ツールコントローラは、ロボットコントローラからの制御信号によって制御されることを特徴とするロボット教示システムである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ユーザーが参照マークを通過位置(教示点)に対して正確に合わせなくても、通過位置設定部が通過位置を目標図形に対して正確に設定するので、教示作業に必要な時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明によるロボット教示システムの一実施の形態を示す全体構成図。
【図2】目標図形および特定領域の具体例を示す図。
【図3】本発明によるロボット教示システムの一実施の形態の作用を示す図(表示部に表示される画面)。
【図4】通過位置設定部における通過位置の設定方法を示すフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施の形態について、図1乃至図4を参照して説明する。ここで、図1乃至図4は、本発明の一実施の形態を示す図である。
【0019】
まず、図1により、本実施の形態によるロボット教示システムの概略について説明する。図1に示すように、ロボット教示システム10は、ロボット11と、ロボット11に接続されるとともに、ロボット11を手動で操作する際に用いられるプログラミングペンダント15が設けられたロボットコントローラ12と、ロボット11に取付られたツール13と、ロボットコントローラ12に接続されるとともにツール13に接続されたツールコントローラ14とを備えている。
【0020】
このうちロボット11は、ワーク(加工対象)Wに対して加工作業を行うロボットであり、例えば直交ロボット、スカラロボット、垂直多関節ロボット等からなっている。またワークWは、例えばプリント基板、電子部品等からなっているが、ロボット11により作業が行われるものであれば特に限定されない。
【0021】
ツール13は、例えば半田付け用ツール、ねじ締め用ツール、溶接用ツール、および塗装用ツール等、ワークWに対して所定の作業を行う手段からなっている。一方、ツールコントローラ14は、ロボットコントローラ12からの制御信号によって各ツール13を制御可能となっている。
【0022】
また図1に示すように、ロボットコントローラ12には、このロボットコントローラ12を制御する例えばコンピュータからなる制御部20が接続されている。以下、この制御部20の構成について説明する。
【0023】
制御部20は、ワークWの図面データ25を読み込む図面データ読込部21と、ロボット11の通過位置を入力するための入力部22と、ロボット11の通過位置、ワークWの図面データ25等を視覚的に表示するための表示部29とを有している。
【0024】
このうち表示部29は、液晶モニタ等、従来公知の表示手段から構成されている。この表示部29には、ポインタ(参照マーク)35が表示される(図3(c)〜(g)参照)。そして入力部22を操作することにより、ポインタ(参照マーク)35が表示部29上で移動するようになっている。
【0025】
図面データ読込部21には、ワークWの図面データ25を記憶する記憶部23が接続されている。図面データ読込部21は、この記憶部23から図面データ25を読み込むとともに、このようにして読み込んだ図面データ25を表示部29に表示する機能を有している。
【0026】
記憶部23としては、磁気ディスク、フロッピーディスク(登録商標)、ハードディスク、光ディスク(CD−ROM、CD−RおよびDVD等)、光磁気ディスク(MO等)または半導体メモリ等からなり、図面データ25を記憶することができるものであれば、制御部20内部に位置しているか外部に位置しているかは問わない。また図面データ25としては、例えばDXFファイル等のCADデータ、あるいはガーバーデータ等のCAMデータが挙げられる。この図面データ25は複数の目標図形50を含んでいる。ここで目標図形50とは、図面データ25のうち、例えば円、線分、矩形等の典型的な形状の図形からなる部分的な図形のデータをいう。なお、各目標図形50は、ワークWのうち、例えば半田付けやねじ締めを行う部分に形成された開口等に対応していても良い。
【0027】
さらに入力部22としては、例えばマウス、キーボード等、ユーザーがポインタ35を表示部29上で移動させたり、情報を入力したりする際に使用可能な入力手段が挙げられる。
【0028】
一方、図面データ読込部21には、特定領域設定部43が接続されている。特定領域設定部43は、図面データ25上の各目標図形50に対して、それぞれ特定領域51を設定する機能を有している。
【0029】
ここで、特定領域51とは、後述するように入力部22からのポインタ35が一致した際、一の通過位置を特定するための領域である。具体的には、特定領域51とは、各目標図形50の内部またはその周辺で、ユーザーによりポインタ35を合わせやすい程度の大きさの範囲に設定された領域である。この特定領域51には、各目標図形50内部の領域および/または各目標図形50外部近傍の領域が含まれている。また、隣接する目標図形50の特定領域51同士が重ならないようにすることが好ましい。
【0030】
例えば、目標図形50が円である場合、特定領域設定部43は、この円の中心点から一定範囲の円領域内を特定領域51として定めることができる(図2(a)参照)。この場合、特定領域51を構成する円は、目標図形50の円と同一の円からなっていても良い。あるいは、特定領域51を構成する円は、目標図形50の円より大きい円からなっていても良く、図2(a)に示すように目標図形50の円より小さい円からなっていても良い。
【0031】
また目標図形50が線分である場合、特定領域設定部43は、この線分から一定距離の幅を有する矩形領域を特定領域51として定めることができる(図2(b)参照)。あるいは、特定領域設定部43は、目標図形50の線分の各端点を中心とする円内を特定領域51として定めても良い。
【0032】
また目標図形50が矩形(長方形)である場合、特定領域設定部43は、この長方形の内部を特定領域51として定めることができる(図2(c)参照)。あるいは、特定領域設定部43は、長方形のそれぞれの角の点を中心とする円内を特定領域51として定めても良く、また長方形の中心点を中心とする一定範囲の円内を特定領域51として定めても良い。さらに特定領域51が長方形からなる場合、この長方形は、目標図形50を構成する長方形と同一の長方形からなっていても良い(図2(c))。あるいは、特定領域51の長方形は、目標図形50を構成する長方形より大きくても良く、小さくても良い。
【0033】
さらに特定領域設定部43には通過位置設定部24が接続されている。通過位置設定部24は、加工作業を行う際にロボット11が通過する通過位置および通過順序を設定するものであり、図面データ読込部21により読み込まれた図面データ25に基づいて、特定領域51に対応する一の通過位置(教示点)を定める機能を有している。また通過位置設定部24は、この通過位置および通過順序を表示部29に表示する機能も有している。
【0034】
すなわちユーザーが通過位置を設定しようとする際、入力部22を操作し、図面データ25上の複数の特定領域51のうち一の特定領域51にポインタ(参照マーク)35を一致させる。次いで、ユーザーが入力部22を操作することにより、目標図形50が指定される。そして通過位置設定部24は、この入力部22により指定された目標図形50の情報と、図面データ読込部21により読み込まれた図面データ25とに基づいて、当該特定領域51に対応する一の通過位置(教示点)を定めるようになっている。
【0035】
例えば、目標図形50が円である場合、通過位置設定部24は、この円の中心点を通過位置T1として定めることができる(図2(a)参照)。
【0036】
また目標図形50が線分である場合、通過位置設定部24は、この線分の一方の端点を通過位置T2として定めることができる(図2(b)参照)。あるいは、通過位置設定部24は、線分の中心点を通過位置として定めても良い。
【0037】
また目標図形50が矩形(長方形)である場合、通過位置設定部24は、この長方形の中心点を通過位置T3として定めることができる(図2(c)参照)。あるいは、通過位置設定部24は、長方形の角の点を通過位置として定めても良い。
【0038】
図1を再度参照すると、通過位置設定部24には通過位置編集部30が接続されている。通過位置編集部30は、通過位置設定部24により設定されたロボット11の通過位置を編集するためのものである。具体的には、通過位置編集部30において、ユーザーが入力部22を操作することにより、通過位置設定部24により設定されたロボット11の通過位置を必要に応じて微調整することができるようになっている。
【0039】
さらに、通過位置編集部30にはプログラム作成部31が接続されている。このプログラム作成部31は、通過位置設定部24により設定されたロボット11の通過位置および通過順序(ないしは通過位置編集部30で編集された通過位置および通過順序)の情報に基づいて、ロボット11の移動プログラム32を作成するものである。すなわちプログラム作成部31は、ロボット11の通過位置および通過順序の情報に基づき、これら各通過位置を所定の通過順序で通過する移動プログラム32を作成する。
【0040】
さらにまた、プログラム作成部31には、プログラム作成部31で作成された移動プログラム32をロボットコントローラ12へ送信する出力部33が接続されている。
【0041】
一方、プログラム作成部31には、予め各目標図形50毎に設定された付加情報40を蓄積する情報蓄積部34が接続されている。ここで、付加情報40としては、例えば、当該目標図形50に関する登録名(例えば「円1」)、当該目標図形50に対する作業内容(例えば半田付け、ねじ締め)等が挙げられる。そしてプログラム作成部31は、情報蓄積部34に蓄積された付加情報40に基づいて移動プログラム32を作成可能となっている。
【0042】
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用について説明する。具体的には、ロボット11がプリント基板からなるワークWに対して半田付けを行う場合を例にとって、図3(a)〜(g)を用いて説明する。ここで図3(a)〜(g)は、表示部29に表示された図面データ25の画面を示している。なお、以下において、便宜上、ロボット11に取付られたツール13がプリント基板表面に沿って二次元的に動く場合を想定する。
【0043】
まず、ユーザーが入力部22を操作することにより、記憶部23から図面データ読込部21にワークWの図面データ25が読み込まれる。ここで図面データ25には、ワークW上に設けられた複数の目標図形50(50a〜50d)が含まれている。図面データ読込部21は、このようにして読み込んだ図面データ25を表示部29に表示する(図3(a))。なお、図3(a)に示す表示部29の画面中、目標図形50a〜50dは、それぞれワークWのうち、はんだ付け作業を行う孔の箇所に相当している。
【0044】
次に、特定領域設定部43が、図面データ25中の各目標図形50(50a〜50d)に対して、特定領域51(51a〜51d)を設定する。次いで、ユーザーは、入力部22を操作することにより、目標図形50に対して入力部22からのポインタ35を一致しさせる。続いて、通過位置設定部24が、図面データ読込部21により読み込まれた図面データ25に基づいて、ロボット11の通過位置および通過順序を設定する。
【0045】
具体的には、以下のようにしてロボット11の通過位置および通過順序が設定される。
【0046】
まず、特定領域設定部43は、図面データ25から複数の目標図形50a〜50dを抽出する。次に特定領域設定部43は、この抽出した各目標図形50a〜50dに対して、それぞれ特定領域51(51a〜51d)を設定する(図3(b))。なお実際上、特定領域51a〜51dは表示部29に表示されないので、図3(b)において、これらの特定領域51a〜51dを仮想線(二点鎖線)で表示している。
【0047】
次に、ユーザーは、例えば入力部22がマウスからなる場合、表示部29を参照しながらポインタ35を移動する(図3(c))。そしてロボット11が通過する通過位置(教示点)毎にかつロボット11が通過する順番に従って、入力部22を操作(例えばマウスを左クリック)する。
【0048】
この際、ユーザーは、入力部22を操作(例えばマウスを移動)することにより、図面データ25上の複数の特定領域51a〜51dのうち、初めにロボット11が通過する通過位置に対応する一の特定領域51aにポインタ35を一致させる(図3(d))。このようにポインタ35が図面データ25上の特定領域51に一致したとき、表示部29は、当該目標図形50aの色を変化させても良い。なお、ユーザーが入力部22を操作することにより、表示部29に表示された図面データ25を適宜拡大および縮小できるようになっていることが好ましい。
【0049】
次に、ユーザーが入力部22を更に操作する(例えばマウスを左クリックする)ことにより、入力部22から通過位置設定部24に当該目標図形50aを指定したという情報が送られる。これにより当該目標図形50aの指定が完了する。
【0050】
次に、通過位置設定部24は、入力部22からの情報と図面データ25とに基づいて、当該特定領域51に対応する一の通過位置Ta(教示点)を定める(図3(e))。
【0051】
すなわち、図3(d)に示すように、ユーザーが入力部22を操作(例えばマウスを移動)して、円形の目標図形50aに対応する特定領域51a内にポインタ35を一致させ、更に入力部22を操作(例えば左クリック)した場合、目標図形50aが指定されたという情報が通過位置設定部24に送られる。この場合、通過位置設定部24は、目標図形50aの円の中心点を通過位置Taとして定める(図3(e)参照)。この際、表示部29において、ポインタ35が、目標図形50aの円の中心点(すなわち通過位置Ta)に自動で移動するようになっていても良い。
【0052】
続いて、ユーザーは、入力部22を操作(例えばマウスを移動)して、図面データ25上の複数の特定領域51a〜51dのうち、2番目にロボット11が通過する通過位置に対応する一の特定領域51bにポインタ35を一致させる。すなわち長方形の目標図形50bに対応する特定領域51b内にポインタ35を一致させる。続いてユーザーが、入力部22を操作(例えば左クリック)することにより、目標図形50bが指定されたという情報が通過位置設定部24に送られる。この場合、通過位置設定部24は、目標図形50bの長方形の中心点を通過位置Tbとして定める(図3(f)参照)。この際、表示部29において、ポインタ35が、目標図形50aの長方形の中心点(すなわち通過位置Tb)に自動で移動するようになっていても良い。
【0053】
同様に、通過位置設定部24は、各目標図形50c、50dに対しても、それぞれ通過位置Tc、Tdを定める(図3(g)参照)。次いで、通過位置設定部24は、Ta、Tb、Tc、Tdの順に、ロボット11の通過位置および通過順序を設定する。この際、通過位置設定部24は、ロボット11の通過位置および通過順序を視覚的に認識可能な形で表示部29に表示しても良い。
【0054】
続いて、通過位置編集部30において、通過位置設定部24で設定されたロボット11の通過位置等を編集する。すなわち、ユーザーが入力部22を操作することにより、通過位置設定部24により設定されたロボット11の通過位置等を必要に応じて編集する。例えば、ロボット11の通過位置(X方向、Y方向、Z方向)を微調整したり、ロボット11の速度を調整したりすることができる。
【0055】
続いて、プログラム作成部31は、通過位置設定部24により設定されたロボット11の通過位置の情報に基づいて、ロボット11の移動プログラム32を作成する。すなわち、プログラム作成部31は、ロボット11が通過位置Ta、Tb、Tc、Tdをこの順番に通過する移動プログラム32を作成する。なお、この移動プログラム32は、ロボットコントローラ12が直接読み取り可能な言語形式で記述される。
【0056】
この際、プログラム作成部31は、情報蓄積部34に予め蓄積された付加情報40を参照し、この付加情報40に基づいて移動プログラム32を作成しても良い。具体的には、プログラム作成部31は、各通過位置Ta、Tb、Tc、Tdのそれぞれについて、各目標図形50a〜50d(各通過位置Ta、Tb、Tc、Td)毎の付加情報40を参照する。そしてプログラム作成部31は、ロボット11が通過位置Ta、Tb、Tc、Tdに到達した際、各目標図形50a〜50d(各通過位置Ta、Tb、Tc、Td)の付加情報40に基づく所定の加工作業(例えば半田付け、ねじ締め等)を行う加工作業用プログラムを作成しても良い。なお、この場合、加工作業用プログラムは移動プログラム32の一部に含まれる。
【0057】
この加工作業用プログラムの一例としては以下のようなものが挙げられる。すなわち、まずロボット11が通過位置Ta、Tb、Tc、Tdに到達すると、ロボット11はワークWに接近し、この状態で一時停止する。次いでロボットコントローラ12からツールコントローラ14に対して制御信号を送信する。これによりツール13がワークWに対して所定の加工作業を行い、この間ロボット11は待機している。加工作業が終了した後、ツールコントローラ14からロボットコントローラ12に対して信号が送信され、この信号を受けて、ロボット11はワークWから離間するとともに、次の通過位置に向けて進行する。
【0058】
このようにして移動プログラム32が完成した場合、出力部33は、作成された移動プログラム32をロボットコントローラ12へ送信する。
【0059】
このようにして、ユーザーがプログラミングペンダント15を手動で操作することなく、ロボット11の教示作業をオフラインで完了することができる。オフラインでの教示作業が終了した後、ロボットコントローラ12は、移動プログラム32に沿ってロボット11を動作させる。
【0060】
なお、本実施の形態において、特定領域51にポインタ35を一致させた場合に、当該特定領域51に対応する一の通過位置を自動的に定めるモード(以下吸着モードともいう)と、このような吸着モードを用いることなく、入力部22により指定された位置をそのままロボット11の通過位置として設定するモード(以下通常モードともいう)とが、切り替え可能となっていることが好ましい。
【0061】
次に、図4により、通過位置設定部24における通過位置の設定方法について更に説明する。
【0062】
まず、通過位置設定部24は、吸着モード(すなわち特定領域51にポインタ35を一致させた場合に、当該特定領域51に対応する一の通過位置を自動的に定めるモード)が選択されているか否かを判断する(ステップS01)。これが否定される場合(NO)、ユーザーが入力部22を操作して指定した位置をそのままロボット11の通過位置として設定する通常モードに移行する(ステップS06)。
【0063】
他方、これが肯定される場合(YES)、通過位置設定部24は、入力部22により指定されたポインタ35の位置が、図面データ25上の特定領域51に一致しているか否かを判断する(ステップS02)。これが否定される場合(NO)、通過位置設定部24は、ユーザーが入力部22を操作して指定した位置をそのままロボット11の通過位置として設定する(ステップS05)。
【0064】
他方、これが肯定される場合(YES)、通過位置設定部24は、当該特定領域51に対応する一の通過位置を定める(ステップS03)。
【0065】
次に、通過位置設定部24は、このようにして定められた通過位置の情報をプログラム作成部31に送る(ステップS04)。
【0066】
その後、上述したように、プログラム作成部31が、通過位置設定部24により設定されたロボット11の通過位置に基づいて、ロボット11の移動プログラム32を作成し、出力部33が、この移動プログラム32をロボットコントローラ12へ送信する。
【0067】
このように、本実施の形態によれば、通過位置設定部24は、図面データ25上の複数の特定領域51のうち一の特定領域51にポインタ35を一致させた場合に、図面データ25に基づいて、当該特定領域51に対応する一の通過位置を定める。このことにより、ユーザーがポインタ35を通過位置に対して正確に合わせなくても、通過位置設定部24が通過位置(教示点)を目標図形50に対して正確に設定するので、教示作業に必要な時間を短縮することができる。
【0068】
また、本実施の形態によれば、表示部29は、ポインタ35が図面データ25上の特定領域51に一致したとき、当該目標図形50の色を変化させるので、表示された当該目標図形50が選択されたことを視覚的に認識しやすい。
【0069】
さらに、本実施の形態によれば、目標図形50は円形状からなり、通過位置設定部24は、目標図形50を構成する円の中心点を一の通過位置として定める。あるいは、目標図形50は線分形状からなり、通過位置設定部24は、目標図形50を構成する線分の一方の端点または線分の中心点を一の通過位置として定める。あるいはまた、目標図形50は長方形形状からなり、通過位置設定部24は、目標図形50を構成する長方形の角の点または長方形の中心点を一の通過位置として定める。このことにより、ワークWの図面データ25に含まれることが多い典型的な目標図形50の形状に対して、容易に通過位置を定めることができる。
【0070】
さらに、本実施の形態によれば、通過位置編集部30において、通過位置設定部24により設定されたロボット11の通過位置を編集することができるので、ロボット11の通過位置等を必要に応じて微調整することができる。
【0071】
さらに、本実施の形態によれば、制御部20は、付加情報40を蓄積する情報蓄積部34を有し、プログラム作成部31は、情報蓄積部34に蓄積された付加情報40に基づいて移動プログラム32を作成する。このことにより、各通過位置でロボット11が行う加工作業の内容を自動的に移動プログラム32に組み込むことができ、教示作業に必要な時間を短縮することができる。
【符号の説明】
【0072】
10 ロボット教示システム
11 ロボット
12 ロボットコントローラ
13 ツール
14 ツールコントローラ
15 プログラミングペンダント
20 制御部
21 図面データ読込部
22 入力部
23 記憶部
24 通過位置設定部
25 図面データ
29 表示部
30 通過位置編集部
31 プログラム作成部
32 移動プログラム
33 出力部
34 情報蓄積部
35 ポインタ(参照マーク)
40 付加情報
43 特定領域設定部
50、50a〜50d 目標図形
51、51a〜51d 特定領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工対象に対して加工作業を行うロボットを教示するロボット教示システムにおいて、
ロボットと、
ロボットに接続されたロボットコントローラと、
ロボットに取付られたツールと、
ロボットコントローラに接続され、ロボットコントローラを制御する制御部とを備え、
制御部は、
目標図形を含む加工対象の図面データを読み込む図面データ読込部と、
目標図形を含む図面データを表示する表示部と、
表示部上で参照マークを移動させる入力部と、
目標図形に対して、入力部からの参照マークが一致した際、一の通過位置を特定する特定領域を設定する特定領域設定部と、
図面データ上の特定領域に入力部からの参照マークが一致した場合に、図面データに基づいて当該特定領域に対応する一の通過位置を定める通過位置設定部と、
通過位置設定部により設定されたロボットの通過位置に基づいて、ロボットの移動プログラムを作成するプログラム作成部と、
プログラム作成部で作成された移動プログラムをロボットコントローラへ送信する出力部とを有することを特徴とするロボット教示システム。
【請求項2】
表示部は、参照マークが図面データ上の特定領域に一致したとき、当該目標図形の色を変化させることを特徴とする請求項1記載のロボット教示システム。
【請求項3】
目標図形は円形状からなり、通過位置設定部は、目標図形を構成する円の中心点を前記一の通過位置として定めることを特徴とする請求項1または2記載のロボット教示システム。
【請求項4】
目標図形は線分形状からなり、通過位置設定部は、目標図形を構成する線分の一方の端点または線分の中心点を前記一の通過位置として定めることを特徴とする請求項1または2記載のロボット教示システム。
【請求項5】
目標図形は長方形形状からなり、通過位置設定部は、目標図形を構成する長方形の角の点または長方形の中心点を前記一の通過位置として定めることを特徴とする請求項1または2記載のロボット教示システム。
【請求項6】
図面データは、DXFデータまたはガーバーデータからなることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項記載のロボット教示システム。
【請求項7】
通過位置設定部により設定されたロボットの通過位置を編集する通過位置編集部を更に備えたことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項記載のロボット教示システム。
【請求項8】
制御部は、付加情報を蓄積する情報蓄積部を有し、プログラム作成部は、情報蓄積部に蓄積された付加情報に基づいて移動プログラムを作成することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項記載のロボット教示システム。
【請求項9】
ツールおよびロボットコントローラに接続されたツールコントローラを更に備え、
ツールコントローラは、ロボットコントローラからの制御信号によって制御されることを特徴とする請求項8記載のロボット教示システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−240816(P2010−240816A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−95689(P2009−95689)
【出願日】平成21年4月10日(2009.4.10)
【出願人】(000003458)東芝機械株式会社 (843)
【Fターム(参考)】