説明

ロボット本体のキャスティング方法及び装置

【課題】 到達が困難な位置に、ロボット本体を正確に移動させることができ、災害救助や宇宙空間の作業等に広く応用することを可能にする。
【解決手段】 ロボット本体の初期位置と、ロボット本体の目標到達位置の3次元座標とに基づいて、少なくとも3カ所の目標固定位置を決定し、ワイヤの先端に設けられたグリッパあるいはアンカーをそれぞれの目標固定位置に固定し、ロボット本体と目標固定位置との間をそれぞれワイヤで連結する。次にロボット本体の目標キャスティング軌道を演算し、ワイヤのうち、少なくとも2本のワイヤの張力をそれぞれの目標値に制御し、各ワイヤにより張力拮抗状態を形成する。その後張力拮抗状態にあるワイヤのいずれかの固定を解除し、蓄積された弾性エネルギにより、ロボット本体を3次元空間にキャスティングするとともに、ロボット本体の3次元空間での運動を、各ワイヤの繰り出し量、巻き取り量、あるいは張力を別個に制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
宇宙開発や、土木・建築現場、災害救助・復旧支援、地質調査、海底・湖底開発、爆発物の処理等で使用する機材等を備え、かつロボットから伸展可能なワイヤ並びに把持部材(グリッパ等)を介して環境との結合が可能なロボットをキャスティングによって目標位置に移動させる方法とその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1にみられるように、大型宇宙構造物の建設保守を想定して、作業を行うロボットに伸展式のアームを設け、このアームを用いて複数のテザー式のアームの構造物への把持位置を変更することにより、構造物上の移動を可能にするシステムが提案されている。
【0003】
下記特許文献2では、線状柔軟リンクの先端に備えたグリッパを、剛体アームにより所望の箇所に投擲して、環境に固定されたバーをグリッパにより把持させた上で、線状柔軟リンクの巻き取りと剛体アームの運動を協調させることにより、ロボット本体を所定の位置に移動させるシステムが提案されている。
【0004】
また、下記非特許文献1では、線路や道路を通すため、山の斜面を削って法面(斜面)を安全に形成するシステムとして、下記非特許文献1にみられるように、予め急斜面の最上面に2箇所のアンカーを設置し、このアンカーに固定された2本のワイヤでロボットを支持し、各ロープに作用する張力を制御することにより、ロープが常に張った状態でロボットを所定の位置に移動させるようなシステムが開発されている。
【0005】
なお、下記特許文献3には、ロボットアームに接続される把持部材を、慣性力、遠心力を利用して投擲するとともに、並進・回転制御用に線状柔軟リンク(ワイヤ)の張力によって、把持部材を目標位置に制御する技術が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−260436号公報
【特許文献2】特開2007−136601号公報
【特許文献3】特許4006528号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】足歩行型法面作業ロボットTITAN XIの開発−基本設計と脚機構の動作実験−、程島 竜一・土居 隆宏・福田 靖・広瀬 茂男・岡本 俊仁・森 純一、日本ロボット学会誌、23.7.81−91(2005)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記先行技術によれば、無重力の宇宙空間や、急斜面において、テザーやロープを張った状態でロボットを目標位置に移動させることができる。
しかしながら、上記特許文献1のものでは、宇宙構造物の外壁にある固定バーにフックをかける際、剛体の伸展式アームを用いていることから、長いアームを搭載する場合、ロボット運搬機での占有空間や搬送重量の増加を招き、装置搬送のコストが増加する問題やアーム操作時のエネルギ消費が高くなる問題が生ずる。
また、伸展式アームの伸展方法はSTEM機構や自動車のアンテナ機構と同様の一直線方向の並進運動を想定しているため、図1に示すようにアームの根元から目標の固定バーまでの間に、壁などの障害物がある場合、これを迂回して固定バーにフックを掛けることは非常に困難である。仮に、伸展式アームとして回転関節を含む多関節駆動系アームを用いれば、アームを屈曲させることにより障害物を回避してアームを伸展させることが可能になると考えられるが、アームの重量や慣性モーメントが増加するため、消費エネルギの増加に加え、アームの制震制御が困難となる問題が生ずる。
【0009】
一方、剛体の伸展式アームが短い場合、アームの届く範囲が狭いため、図2に示すようにハンドが固定バーに届くように外壁に短い距離間隔で多数の固定バーを密に設置しなければならない。
そのため設置費用がかかるうえに、移動時にフックをかける作業の頻度が高くなり、作業効率が低下するという問題がある。すなわち、テザー張力が拮抗する状態で広い可動領域を確保するには、領域の各頂点がお互いに遠い位置になければならないが、そのためには各頂点へ短いアームでフックを掛けながらロボットが移動していく必要があり、広い可動領域の確保に時間を要することになる。
【0010】
また、図3に示すように構造物の外壁にアームの長さより幅のある深い溝がある場合、ロボットはその溝を飛び越えて移動することはできず、溝の側面に沿って設置した固定バーにフックをかけながら溝の底へ下りて、再び他方の側面に沿って上る必要があるため、移動に時間がかかるうえに、移動距離が長くなり、消費エネルギが高くなる問題がある。
さらに、ロボットが宇宙構造物に接していない初期状態では、短いアームを用いてフックを固定バーに掛けるには構造物の外壁に十分に近づく必要があり、スラスタなどの別の移動装置と衝突を防ぐための制御装置等が新たに必要となるという問題がある。
【0011】
また、上記特許文献3のものでは、ロボット本体の位置を変えずにグリッパを固定バーの方向に投擲して把持させるが、一般的に固定バーの位置が遠方であるほど投擲誤差が拡大するので、固定バーを把持する精度は下がる。また、ロボットの移動範囲が、グリッパの把持位置までに制限されてしまうという問題点がある。
【0012】
上記非特許文献1のものでは、あくまでも、急斜面の最上面に2箇所のアンカーを設置することが前提であり、アンカーが設置できないような急斜面での移動は不可能であり、また、アンカーが設置されたとしても、移動はアンカーの設置箇所から下ろした鉛直線の間の範囲に制限されてしまうという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
そこで、上記の課題を解決するため、本発明では、剛体の伸展式アームの代わりに、剛体アームの先からエンドエフェクタ(グリッパ、アンカー、フックなど)までを繋ぐ軽量で柔軟なワイヤを備え、該ワイヤの繰出量によって該ワイヤの長さを自在に変えることが可能な複数個のアームを用いて、ロボット本体をキャスティングし、環境との結合点で囲まれた領域を越えて目標点へロボットを移動させる。より具体的には、本発明のロボット本体を目標到達位置にキャスティングするロボット本体のキャスティング方法は、
(1)ロボット本体を初期設置位置に配備する工程と、該初期設置位置と、ロボット本体の前記目標到達位置の3次元座標とに基づいて、少なくとも3カ所の目標固定位置を決定し、ワイヤの先端に設けられたグリッパあるいはアンカーなどのエンドエフェクタをそれぞれの目標固定位置に固定し、ロボット本体と目標固定位置との間をそれぞれワイヤで連結する工程と、前記初期設置位置と、前記グリッパあるいはアンカーの固定位置と、前記目標到達位置とに基づいて、前記ロボット本体のキャスティング開始時点における位置及び姿勢並びに目標キャスティング軌道を演算する工程と、各ワイヤの繰出量、巻取量を制御して、前記ロボット本体を、前記キャスティング開始時点における位置及び姿勢に調整する工程と、前記目標キャスティング軌道に基づいて、前記ワイヤのうち、少なくとも2本のワイヤに蓄積される弾性エネルギをそれぞれの目標値に制御することにより、すべてのワイヤの張力拮抗状態において、前記ロボット本体の初期キャスティング力ベクトルを決定する工程と、前記張力拮抗状態にあるワイヤのうち、蓄積される弾性エネルギを前記目標値に制御したワイヤ以外のワイヤの固定を解除し、前記初期キャスティング力ベクトルにより、前記ロボット本体を3次元空間にキャスティングする工程と、前記ロボット本体の3次元空間での運動を、各ワイヤの繰出量、巻取量、あるいは張力を別個に制御することにより、前記ロボット本体を前記目標到達位置に到達させる工程とから構成される。
【0014】
(2)上記ロボット本体のキャスティング方法は、前記決定された目標固定位置の3次元位置に基づいて、前記エンドエフェクタの目標投擲位置及び目標投擲軌道を演算し、該エンドエフェクタを、投擲機構により投擲することにより、それぞれの目標固定位置に固定する工程を具備してもよい。
【0015】
(3)上記ロボット本体のキャスティング方法は、前記エンドエフェクタの目標固定位置に、前記ロボット本体の目標到達位置の上方位置を付加し、前記ロボット本体が目標到達位置に着地させる際の重力による衝撃を緩和させる工程を具備してもよい。
【0016】
(4)また、上記ロボット本体のキャスティング方法は、前記目標到達位置を、前記ロボット本体の目標着地位置の上方に設定し、前記ロボット本体がキャスティングにより該目標到達位置に到達したとき、前記ロボット本体に内蔵したパラシュートを開き、前記ロボット本体が目標着地位置に着地させる際の重力による衝撃を緩和させる工程を具備してもよい。
【0017】
(5)また、上記ロボット本体のキャスティング方法は、前記ロボット本体を3次元空間にキャスティングする工程に先だって、ワイヤ付き鉄球を該目標到達位置より上方に向けて投擲し、前記ロボット本体が該目標到達位置に到達したとき、該鉄球が鉛直方向上向きに所定の速度ベクトル成分を有するようにするとともに、該鉄球が先端に接続されたワイヤを拘束し、前記目標固定位置に固定されたワイヤの少なくとも一本を拘束することにより、各ワイヤに作用する張力の合力が鉛直方向上向きの成分を有するようにすることによって、前記ロボット本体に作用する重力加速度を相殺し、目標着地位置に着地させる際の重力による衝撃を緩和させる工程を具備してもよい。
【0018】
また、上記のロボット本体のキャスティング方法を実現するため、本発明のロボット本体を目標到達位置にキャスティングするロボット本体のキャスティング装置は、
(6)先端にグリッパあるいはアンカーなどのエンドエフェクタを備えた少なくとも3本のワイヤと、該ワイヤのそれぞれに対応してロボット本体に設置され、各ワイヤの末端が結合された回転ドラムと、該回転ドラムのワイヤ繰出量及び巻取量を制御する駆動モータ、電磁ブレーキ、電磁クラッチとからなる繰出・巻取制御装置と、前記ロボット本体の初期設置位置、前記エンドエフェクタの固定位置及び前記ロボット本体の目標到達位置に基づいて、前記ロボット本体のキャスティング開始時点における位置及び姿勢並びに目標キャスティング軌道を演算するとともに、該演算結果に基づいて、前記繰出・巻取制御装置を介して前記回転ドラムのワイヤ繰出量及び巻取量並びに各ワイヤに蓄積される弾性エネルギを制御するコントローラとを具備している。
【0019】
(7)上記ロボット本体のキャスティング装置は、前記ロボット本体のフレームの少なくとも3カ所に、軸線方向の伸縮量、軸線周りの旋回量及び複数の関節角度を制御し得る剛体アームが設置され、該剛体アームのそれぞれは、前記繰出・巻取制御装置及び前記エンドエフェクタを前記固定位置に投擲する投擲機構を具備し、前記コントローラからの指令に応じて、前記エンドエフェクタの投擲開始位置及び投擲方向を制御するとともに、マニピュレータ機能を具備してもよい。
【0020】
(8)前記投擲機構は、ワイヤが巻回される回転ドラム、該回転ドラムを駆動する駆動モータ、該回転ドラムを制動する電磁ブレーキ、前記駆動モータから前記回転ドラムに伝達されるトルクを制御するとともにドラムを自由に回転させる電磁クラッチ及びワイヤの運動を拘束あるいは解放する電磁ブレーキを具備してもよい。
【0021】
(9)さらに、前記ロボット本体は、前記コントローラにより作動されるパラシュートを内蔵していてもよい。
【0022】
(10)また、前記ロボット本体は、鉄球と、該鉄球を予め設定された方向に投擲する投擲機構と、該鉄球を先端に備えたワイヤの末端が結合された回転ドラムと、該ワイヤを拘束する電磁ブレーキとをさらに備え、前記コントローラにより前記鉄球の投擲方向と投擲速度を制御するとともに、所定のタイミングで前記電磁ブレーキを作動させて該ワイヤを拘束するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明のロボット本体のキャスティング方法、及びこれを実現するキャスティング装置によれば、これまで車輪などの移動機構や伸展式アームでは到達が困難であった環境でも、ワイヤの固定位置で囲まれた領域を越えて、ロボット本体を予め演算された3次元空間内の目標軌道に沿ってキャスティングし、正確に目標位置に到達させるとともに、ロボット本体を目標姿勢で着地させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】アンテナ式に進展する剛体アームを使用した従来技術を示す図である。
【図2】短い剛体アームを使用した従来技術を示す図である。
【図3】アンテナ式に進展する剛体アームを使用した従来技術において、剛体アームの長さより幅のある深い溝がある場合の移動ルートを示す図である。
【図4】本発明によりロボット本体を対岸にキャスティングさせる際の動作を示す図である。
【図5】キャスティング準備のための張力拮抗状態を示す図である。
【図6】ロボット本体を目標位置に到達させるための方向制御を示す図である。
【図7】遠方の見えない場所へキャスティングする例を示す図である。
【図8】裏側の破損部を検査し修復するため、回り込んでキャスティングする例を示す図である。
【図9】ロボット本体の主要部を示す図である。
【図10】地上の目標固定端の上方でロボット本体に内蔵したパラシュートを作動させた状態を示す図である。
【図11】ワイヤ付き鉄球を投擲して、ロボット本体の落下速度を緩和させた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施例について説明する。
【実施例】
【0026】
図4は、ロボット本体1を対岸にキャスティング移動させる場合を示している。
ロボット本体1は、初期位置に所定の姿勢で設置され、その四隅に設けられた剛体アーム11、12、13、17は、ワイヤの先端に取り付けられたグリッパ5、6やアンカー(突き刺し機構)7を投擲する投擲機構を有している。この投擲装置については後述するが、上記特許文献3に示されているような、ワイヤ2、3、4の先端に連結されているグリッパ5、6あるいはアンカー7に回転運動や並進運動を与え、ワイヤの張力によって空中における回転運動や並進運動を制御する装置を用いて、木や岩などの環境の固定端8、9、10に向けて正確に投擲するものである。
なお、この実施例では、後述するように剛体アーム11、12、13、17にマニピュレータ機能を具備させているが、ロボット本体1に、目標とする着地位置で必要とされる作業を実行するための種々のマニピュレータやカメラ等を搭載してもよい。
【0027】
まず、剛体アーム11、12、13の投擲機能を使用して、ワイヤ2、3、4の先端に装着されたグリッパ5、6、アンカー7を目標とする固定端8、9、10にキャスティングし、図5に示すように各固定端8、9及び固定端10に固定し、ワイヤ2、3、4により、パラレルワイヤ構造を形成する。
なお、固定端8、9、10がアクセス可能な位置にある場合は、剛体アーム11、12、13、17のマニピュレータ機能を使用して固定してもよいし、作業員がワイヤ2、3、4を引き延ばして、手動で環境の固定端8、9、10に固定してもよい。
【0028】
この実施例では、各ワイヤ3、4は、弾性的に伸縮し得る素材で形成されており、ロボット本体1側に設けたコントローラ及び各剛体アーム11、12、13に個別に設けられた投擲機構の繰出・巻取制御装置により、独立してワイヤ2、3、4の繰出量、巻取量が制御されるようになっている。
なお、図5では、アンカー7に換え、グリッパ14で固定端10に結合された状態を示している。
【0029】
グリッパ5、6及びアンカー7が環境にある固定端8、9、10に固定されると、ロボット本体1あるいは外部に設置されたコントローラにより、ワイヤ2、3、4を、各投擲機構の繰出・巻取制御装置を介して巻き取り、あるいは繰り出すことによって、ロボット本体1を投擲可能な位置に移動させる。
繰出・巻取制御装置のそれぞれは、図9に示されるように、ワイヤ2、3、4の基端が連結されるとともに、これらの巻き取り、繰り出しを行う回転ドラム21、この回転ドラム21を駆動する駆動モータ23、この回転ドラムを制動する電磁ブレーキ(図示せず)、ワイヤ2、3、4を瞬時にロックあるいは解放する電磁ブレーキ22、及び回転ドラム21と駆動モータ23とを切り離し、ドラムを自由に回転させる電磁クラッチ24などから構成されている。
なお、駆動モータ23の出力軸は、電磁クラッチ24、タイミングベルト26を介して回転ドラム21に連結されており、コントローラには、このタイミングベルト26の張力を測定するベルト張力測定器25の検出値とともに、ワイヤ2、3、4をガイドするローラにそれぞれ設けられた張力検出器の検出値が入力されるようになっている。
【0030】
コントローラは、駆動モータ23の出力、電磁ブレーキ22のオンオフ、電磁クラッチ24の伝達トルクを制御するとともに、ベルト張力測定器25の出力に基づいて、駆動モータ23から回転ドラム21に伝達されるトルクを目標値にフィードバック制御することにより、各ワイヤ2、3、4の巻取量、繰出量及び張力をそれぞれ独立して制御し、キャスティング開始時のロボット本体1の初期位置及び初期姿勢を微調整することができる。
【0031】
次に、ワイヤ2を繰出・巻取制御装置内に搭載された電磁ブレーキ22によりロックし、ワイヤ3、4の繰出・巻取制御装置が、ワイヤ3、4を巻き取ってバネのように伸ばし、ワイヤ2、3、4のそれぞれに個別の目標張力を発生させて、図5に示すようにロボット本体1をワイヤ張力が拮抗する静止状態にする。ここで、固定端8、9、10で形成される三角形内部の範囲が、張力拮抗状態となり得る可動領域となる。
【0032】
なお、この実施例では、ワイヤ2にはあまり伸縮しない高バネ係数の素材を使用し、ワイヤ3、4には、所定の伸縮ストロークが確保できるよう、低バネ係数の素材を使用するが、すべてのワイヤ2、3、4に、高バネ係数の素材を使用し、ワイヤ3、4に、本発明者が上記特許文献2で提案した、スライダ上に設置された電磁ブレーキによりワイヤ3、4にロックすることにより、一端が投擲レバー側に、他端がスライダ側に固定されたスプリングを伸張させて、所定の伸縮ストロークが確保されるようにしてもよい。
【0033】
なお、環境との結合機能を有するグリッパ5、6やアンカー7、あるいはフック等のエンドエフェクタはロボット本体1にある収納箱16に収納されており、各剛体アーム11、12、13,17は、そのアーム先端を収納箱16に伸ばし、周囲の環境に応じてグリッパ5、6やアンカー7等のエンドエフェクタを選択した上で着脱できるようになっている。
【0034】
図5の状態では、ロボット本体1には、各ワイヤ2、3、4の目標張力が作用しており、これらの張力の合力は釣り合いの状態になる。
次に、この静止状態において、剛体アーム11の投擲装置に設けられた繰出・巻取制御装置内の電磁ブレーキ22を解放することによりワイヤ2のロックを解除して、ワイヤ2をその張力が零の状態になるように繰り出せば、合力の釣り合い状態が崩れ、ワイヤ3、4の張力の合力がロボット本体の重心にかかる並進力並びにその重心を通る軸まわりの回転力として作用し、図6に示されるように、ロボット本体1はグリッパ6とアンカー7の間を通る方向へ加速され、ロボット本体1が空間にキャスティングされることになる。
【0035】
ロボット本体1が空間にキャスティングされてからの3次元空間における運動の制御は、それぞれの繰出・巻取制御装置によりワイヤ2、3、4の繰出量、巻取量を調整して、各ワイヤの張力を制御することにより行う。
【0036】
図9はロボット本体1の主要部を示すもので、Y型のフレームを2つ組み合わせ、各端部に剛体アーム11、12、13、17が配置され、その中央部に収納箱16が設置されている。各剛体アーム11、12、13、17は、マニピュレータ機能を具備させるため、コントローラからの指令に応じて、軸線方向の伸縮量、軸線周りの旋回量とともに、複数の関節角度を制御できるようになっている。
【0037】
各剛体アーム11、12、13、17の先端には、モータにより回転駆動される投擲レバー27が設けられ、コントローラからの指令により、各剛体アームの伸縮長さ、軸方向の回転角及び各関節の回転角を調整した後、投擲レバー27を駆動するモータが目標回転速度に達したとき、所定の投擲角度で投擲機構の電磁クラッチを解放し、所定の初速度、所定の投擲角度で、グリッパ5、6やアンカー7などのエンドエフェクタを、目標軌道に沿って目標固定位置に投擲するようになっている。
また、収納箱16には、各種エンドエフェクタが収納され、その側部空間に剛体アーム11、12、13、17、あるいは各種作業用のマニピュレータ、カメラ、コントローラなどが収容される。
【0038】
以下、具体的なキャスティングについて説明する。
(1)〈グリッパ、アンカーのキャスティング〉
ロボット本体1に設けられたカメラからの画像あるいは環境に設置したカメラからの画像を用いて、ユーザがグリッパ5、6で固定する固定端8、9、10の3次元位置を決め、画像を表示する画面上において、各固定端8、9、10との結合位置をロボットに与え、投擲の指示を送る。
【0039】
なお、固定端周辺の暗さや霧などの影響や地形や障害物の状態などによって、カメラ画像の解像度が十分得られず、固定端の位置を正確に計測できない場合は、カメラ画像から推定されるおおよその位置データをもとに、ワイヤを介して本体と繋がったワイヤ付き鉄球などの破損しにくいエンドエフェクタを剛体アームにより固定端周辺へ投擲する。
このワイヤ付き鉄球が固定端周辺に着地して静止したら、該ワイヤ付き鉄球とロボット本体を繋ぐワイヤを巻き取って、該ワイヤ付き鉄球が動かず、かつワイヤが伸びない程度にワイヤを張った状態にし、そのときのワイヤの繰り出し長さとロボット本体1からみたワイヤの方向ベクトルを計測することにより、ロボット本体1からみた該ワイヤ付き鉄球の位置を算出することができ、着地点に到るまでの軌跡の良否を確認するとともに、ロボット本体1の初期設置位置からみた固定端の位置を推測することができる。
【0040】
そして、この鉄球に内蔵したライトにより固定端周辺の照明を行い、カメラ画像の解像度を上げ、固定端の位置を正確に測定できるようにしたり、あるいは、鉄球自体にもカメラを設けて、算出した鉄球の位置からの固定端の位置を算出する。
また、これによっても、固定端の測定が困難な場合には、その後、ワイヤを巻き取って該ワイヤ付き鉄球をロボット本体へ回収して、さらに、固定端周辺の他の場所へ再度、投擲し、固定端の測定が可能となるまでこれを繰り返せばよい。
【0041】
さらに、正確に固定端周辺の計測する必要がある場合は、複数のワイヤ付き鉄球を同時にそれぞれ固定端周辺の別の場所へ投擲することによって、固定端周辺の複数の場所に着地したワイヤ付き鉄球の各位置を上記の方法によりそれぞれ算出する。
これにより、固定端周辺の複数の位置を正確に算出できるので、固定端の位置をカメラ画像により確認し、あるいは、固定端周辺の鉄球の位置データと、各鉄からの固定端の位置データに基づいて、固定端の位置を高精度に推定することができる。
【0042】
次に、ロボット本体1内、あるいは外部に設けられたコントローラは、視覚センサあるいはレーザレンジセンサなどの計測器を用いてユーザが指示した固定端の実際の位置を測定し、ロボット本体1の現在位置から各固定端との結合位置までの相対位置を演算し、その結果に基づいて、グリッパ5、6、アンカー7の目標投擲軌道及び目標投擲位置を演算し、各剛体アーム11、12、13の先端に設けられた投擲機構を利用して各目標位置に投擲し、グリッパ5、6、アンカー7を投擲目標位置である固定端8、9、10にそれぞれ固定する。
【0043】
なお、ロボット本体1の初期位置とキャスティング目標位置との間に建物等の障害物があるときは、コントローラはこうした障害物を避けた目標キャスティング軌道を演算し、この演算結果に基づいて、グリッパ5、6、アンカー7を目標3次元位置へ投擲する。
また、グリッパ等を投擲しなくても固定端に届く場合は、剛体アーム11、12、13をマニピュレータとして使用して、収容箱16から最適なエンドエフェクタを選択して装着した後、アームの伸張、旋回、関節角度を制御することにより、直接8、9、10にそれぞれのエンドエフェクタを固定させてもよい。
【0044】
(2)〈ロボット本体の固定〉
ロボット本体1内、あるいは外部に設けられたコントローラは、図5のように、繰出・巻取制御装置により各ワイヤの繰出量、巻取量を制御することにより、周辺及び対岸の環境、地形、さらには、ユーザが指定するロボット本体1の目標キャスティング位置・姿勢に基づいて決定した、キャスティング開始時点における初期位置、初期姿勢となるよう、ロボット本体1の位置及び姿勢の微調整を行う。
【0045】
(3)〈各ワイヤの張力制御〉
コントローラは、まず、ロボット本体1が初期位置及び初期姿勢から、目標キャスティング位置及び着地時の目標姿勢へ到達するのに必要なエネルギを算出する。次に、ワイヤ2を繰出・巻取制御装置内に搭載された電磁ブレーキ22によりロックし、例えば、各ワイヤ3、4をガイドする部材に設けられたひずみ計などの張力検出器の検出値に基づいて、ワイヤ3、4の繰出・巻取制御装置を用いてワイヤ3、4を巻き取ってバネのように伸ばすことによって、必要とされるエネルギに相当するよう、ワイヤ3、4の弾性エネルギを蓄積し、ロボット本体1をワイヤ2、3、4が個々の目標張力で拮抗する静止状態を維持しながら、ロボット本体1のキャスティング準備を整える。
なお、例えば、ワイヤ3、4のバネ定数が等しい場合は、ワイヤ3に蓄積する弾性エネルギをワイヤ4より大きくすることにより、ロボット本体1のキャスティング時の方向を右側に向けるなど、ワイヤ3、4に蓄積する弾性エネルギに差を付けることにより、キャスティング開始時のキャスティング力ベクトルを調節することができる。
【0046】
(4)〈ロボット本体のキャスティング〉
コントローラは、ワイヤ2をロックしている電磁ブレーキ22に対しロック解除の指令出力し、かつワイヤ2の張力が零となるように繰出・巻取制御装置に対して繰り出しの指令を与えると、ワイヤ2、3、4の張力拮抗状態が崩れ、ワイヤ3及びワイヤ4の張力の和となる3次元力ベクトルがロボット本体1の重心に作用する。
そして、張力により剛体アーム12、13の先端にかかる3次元力ベクトルと、ロボット本体1の重心から各アームの先端までの位置ベクトルとの外積で求まる3次元モーメントベクトルの和がロボット本体1の重心を通る軸回りに作用する。これらの3次元力ベクトル及び3次元モーメントベクトルにより表されるロボット本体1の並進運動及び回転運動に関する運動方程式より、ロボット本体1のキャスティング初期の3次元空間における加速度ベクトルが定まり、図6に示されるように、目標位置に向けてのロボット本体1のキャスティングが開始される。
【0047】
(5)〈ロボット本体の3次元空間での運動制御及び姿勢制御〉
ロボット本体1がキャスティングされた後、ワイヤ2、3及び4の巻取量、繰出量を制御することにより、3次元空間において、キャスティング中の運動制御、姿勢制御が行われる。
キャスティング初期は、ワイヤ2、3、4の各繰出・巻取制御装置は、コントローラからの指令に応じて、駆動モータ23の回転方向、回転数、出力トルクを制御するとともに、ベルト張力測定器25の検出値に基づいて、タイミングベルト26を介して回転ドラム21に伝達されるトルクを制御したり、さらには、電磁クラッチ24を解放して回転ドラム21を自由回転させたり、電磁ブレーキ22を作動させることにより、各ワイヤ2、3及び張力を独立して目標張力に制御し、これによりロボット本体1の並進方向や回転方向を制御する。
【0048】
ロボット本体1の3次元空間飛行中は、例えば、ワイヤ3の繰出・巻取制御装置により、ワイヤ張力が増加するように繰出量を減少させたり、巻き取りを開始すると、ロボット本体1のキャスティング方向は進行方向に向かって右側に進み、逆に、ワイヤ4の繰出・巻取制御装置により、ワイヤ張力が増加するように繰出量を減少させたり、巻き取りを開始すると、ロボット本体1のキャスティング方向は進行方向に向かって左側に進むことになり、キャスティング方向を制御することができる。
【0049】
また、ロボット本体1が目標位置に近づくと、ワイヤ2、3、4の各繰出・巻取制御装置を用いて、回転ドラム21に伝達されるトルクを徐々に減少させたり、ロボット本体1に内蔵された加速度計やジャイロ等の検出値あるいは各固定端8、9、10に設定した座標系からみた各ワイヤの角度とその長さから推定されるロボット本体1の位置・姿勢に基づいて、ワイヤ2、3、4の各繰出・巻取制御装置を連携させて、張力に基づくフィードバック制御を行うことにより、ロボット本体1を目標位置・姿勢に制御することができる。
【0050】
地上など重力が作用する場で使用する際は、キャスティング目標位置周辺の上方の固定端を利用して、剛体アーム17の投擲機構により別途グリッパあるいはアンカーを先端に備えたワイヤを、その固定端に予め投擲して固定しておき、ロボット本体1がキャスティング目標位置に着地する際の衝撃を緩和するために、着地前にこのワイヤの繰出量を減少させたり、巻き取ることにより、上方向の張力を与え続けることによってロボット本体1を下方向に減速させる協調制御をするようにしてもよい。
また、図10に示すように、ロボット本体1のキャスティング目標位置を、ロボット本体1の地上における目標固定端の上方に設定し、ロボット本体1がこの目標位置に到達した瞬間に、コントローラが、ロボット本体1に内蔵したパラシュートを作動させて落下速度を抑制し、その間、各ワイヤ2、3、4の繰出量や巻取量を微調整して、ロボット本体1を、目標固定端に固定することもできる。
【0051】
さらに、以下のように、予め鉄球を目標到達位置の上方に投擲しておき、その慣性を利用して落下速度を緩和することができる。
(1)まず、図11の上図のように剛体アーム17を用いてロボット本体1の重心にワイヤで結合された質点(鉄球)28を投擲する。
(2)その後、すぐにロボット本体1を目標位置へキャスティングする。
(3)ロボット本体1が、目標到達位置に到達するまで、上記の実施例と同様に、ワイヤ2〜4の張力を制御することにより、この間の運動制御に影響を与えないようにした上で、図11の下図のように、ロボットが飛んでいる間は、ロボット本体1の重心と鉄球28を結ぶワイヤは緩んだ状態になるように、ワイヤ29用の繰出・巻取制御機構によりワイヤ29を繰り出しておく。
(4)ロボット本体1が目標到達位置へ到達したとき、ロボット本体1の重心と鉄球28を結ぶワイヤ29の張力と、少なくともワイヤ2、3、4のいずれか1本の張力が瞬間的に正となるように、各ワイヤの長さを繰出・巻取制御機構により制御する。あるいは、すべての各ワイヤの運動を電磁ブレーキ等により同時に拘束してもよい。
なお、上記(1)で鉄球28を投擲する際、ロボット本体1が目標到達位置へ到達した時点で、鉄球の速度が、鉛直方向上向きに所定の速度ベクトル成分を有するように、上記(1)での鉄球28の投擲角度、投擲速度が予め設定されている。
(5)ここで、ロボット本体1は、目標固定位置15に向けて落下を開始するが、例えば、各ワイヤを拘束した場合、ロボット本体1の慣性より、ワイヤ2、3、4には、図11の下図に示されるように、ロボット本体1から見ると斜め左上向きの張力が発生し、また、ワイヤ29には、ロボット本体1ならびに鉛直方向上向きの速度ベクトル成分を有する球28の慣性により、ロボット本体1から見ると斜め右上向きの張力が発生する。
【0052】
これにより、ワイヤ2、3、4の張力の水平方向成分は、ワイヤ29の張力の水平方向成分により緩和されるとともに、ワイヤ2、3、4及びワイヤ29の張力の上向き方向の合力が、重力加速度を緩和させるので、ロボット本体1が目標点へ到達するときの衝撃を緩和することが可能となる。なお、ロボット本体1が目標到達位置に到達したときのワイヤ2、3、4、及びワイヤ29の相対位置関係ならびに、そのときのロボット本体1及び鉄球28の運動量などを調べれば、ワイヤ2、3、4の1本あるいは2本のみを拘束すればよい場合もあることが分かる。
【0053】
このような鉄球により重力加速度を緩和する際は、図11に示されるように、ロボット本体1に、鉄球28を先端に備えたワイヤ29の末端を結合した回転ドラム、この鉄球28を所定の投擲方向と投擲速度で投擲する鉄球投擲用投擲装置及び回転ドラムから繰り出されるワイヤを拘束する電磁ブレーキを別途設ける。
そして、コントローラにより鉄球28の投擲方向と投擲速度を演算して、鉄球投擲用投擲装置を制御するとともに、ロボット本体1が目標位置へ到達したとき、電磁ブレーキに作動させて、ワイヤ29を拘束するようにすればよい。
【0054】
一方、無重力空間では、キャスティング初期の速度ベクトルが維持されることから、目標到達位置付近に、別途グリッパあるいはアンカーを備えたワイヤを前記のように固定し、ロボット本体の着地時の運動を制御するようにするとよい。
【0055】
このように、本発明の実施例によれば、固定端に固定されたグリッパ6、アンカー7を結ぶ線(図5では固定端9と10を結ぶ点線)を越えて、ロボット本体1をキャスティング目標位置・姿勢に正確にキャスティングすることができ、さらに、衝撃緩和制御を加えれば、着地時にロボット本体1を安定に正立させたり、損傷を防止したりすることができる。また、同様の方法により、固定端8、9、10で囲まれた張力拮抗状態で移動可能な領域を越えて、ロボット本体1の到達可能領域を様々な方向に拡大することができる。
【0056】
次に、キャスティングを行う環境や、ロボット本体1の目標キャスティング位置に応じた、本発明の具体例を説明する。
〈ロボット本体に、遠方の見えない場所に設置された固定バーを把持させる例〉
図7に示されるように、ロボット本体1は、右側の低い宇宙建造物の壁面等に置かれており、このロボット本体1の剛体アーム17により、左側の高い建物等に設置された固定バー15を把持させる場合、まず、右側の低位置において、ワイヤ2、3、4により、パラレルワイヤ構造を形成し、上述のとおり、各ワイヤ2、3、4をそれぞれの繰出・巻取制御装置により、固定バー15に向けた目標キャスティング位置・姿勢に基づいて、各ワイヤの張力を調整する。
【0057】
なお、ロボット本体1に対する固定バー15の相対位置を測定するために、予め、カメラや、視覚センサあるいはレーザレンジセンサなどの計測器を備えた視覚システム18を、剛体アーム17に設けられた投擲装置により投擲されるグリッパ19で把持させ、これを固定バー15周辺の適切な場所に投擲し、図7の右上の枠内の図のように、剛体アーム17とグリッパ19とを結ぶワイヤを繰り出して、視覚システム18を固定バー15周辺の適切な場所に設置する。そして、視覚システム18設置後、グリッパ19から視覚システム18を離した後、剛体アーム17の引き動作と、ワイヤの巻き取りによりグリッパ19を元の剛体アーム17の先端位置へ戻しておく。
このようにして設置された視覚システム18により、目標とする固定バー15の位置を検出し、その検出結果に基づいてロボット本体1のキャスティング軌道を演算し、ロボット本体1を目標固定バー15へ向けてキャスティングし、ワイヤ2、3、4の各繰出・巻取制御装置を連携制御して、ロボット本体1の3次元空間での運動を制御することにより、確実に固定バー15を把持させることができる。
【0058】
〈ロボット本体に、障害物裏側の目標位置にキャスティングさせる例〉
図8にみられるように、宇宙空間において左側の低い宇宙建造物にあるロボットを右側の高い宇宙建造物裏側の破損部に到達させる場合、ロボット本体1を破損部に直接キャスティングすることは不可能である。そこで、右側の宇宙建造物裏側上端面を基点に、ロボット本体1の進行方向を変えて、高い建物の宇宙建造物を回り込ませるようにして建物裏側の破損部に到達させるようにすればよい。
【産業上の利用可能性】
【0059】
以上説明したとおり、本発明のロボット本体のキャスティング方法及び装置によれば、これまで、到達が困難な環境であっても、ロボット本体を正確に移動させることができ、災害救助や宇宙空間の作業等に広く応用することが可能になる。
【符号の説明】
【0060】
1 ロボット本体
2、3、4 ワイヤ
5、6、14、19 グリッパ
7 アンカー
8、9、10 固定端
15 目標とする固定バー
11、12、13、17 剛体アーム
16 収納箱
18 視覚システム
21 回転ドラム
22 電磁ブレーキ
23 駆動モータ
24 電磁クラッチ
25 ベルト張力測定器
26 タイミングベルト
27 投擲レバー
28 鉄球
29 先端に鉄球が固定されたワイヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボット本体を目標到達位置にキャスティングするロボット本体のキャスティング方法であって、
ロボット本体を初期設置位置に配備する工程と、
該初期設置位置と、ロボット本体の前記目標到達位置の3次元座標とに基づいて、少なくとも3カ所の目標固定位置を決定し、ワイヤの先端に設けられたグリッパあるいはアンカーなどのエンドエフェクタをそれぞれの目標固定位置に固定し、ロボット本体と目標固定位置との間をそれぞれワイヤで連結する工程と、
前記初期設置位置と、前記グリッパあるいはアンカーの固定位置と、前記目標到達位置とに基づいて、前記ロボット本体のキャスティング開始時点における位置及び姿勢並びに目標キャスティング軌道を演算する工程と、
各ワイヤの繰出量、巻取量を制御して、前記ロボット本体を、前記キャスティング開始時点における位置及び姿勢に調整する工程と、
前記目標キャスティング軌道に基づいて、前記ワイヤのうち、少なくとも2本のワイヤに蓄積される弾性エネルギをそれぞれの目標値に制御することにより、すべてのワイヤの張力拮抗状態において、前記ロボット本体の初期キャスティング力ベクトルを決定する工程と、
前記張力拮抗状態にあるワイヤのうち、蓄積される弾性エネルギを前記目標値に制御したワイヤ以外のワイヤの固定を解除し、前記初期キャスティング力ベクトルにより、前記ロボット本体を3次元空間にキャスティングする工程と、
前記ロボット本体の3次元空間での運動を、各ワイヤの繰出量、巻取量、あるいは張力を別個に制御することにより、前記ロボット本体を前記目標到達位置に到達させる工程とからなるロボット本体のキャスティング方法。
【請求項2】
前記決定された目標固定位置の3次元位置に基づいて、前記エンドエフェクタの目標投擲位置及び目標投擲軌道を演算し、該エンドエフェクタを、投擲機構により投擲することにより、それぞれの目標固定位置に固定する工程を備えた請求項1に記載されたロボット本体のキャスティング方法。
【請求項3】
前記エンドエフェクタの目標固定位置に、前記ロボット本体の目標到達位置の上方位置を付加し、前記ロボット本体が目標到達位置に着地させる際の重力による衝撃を緩和させる工程を備えた請求項1または2に記載されたロボット本体のキャスティング方法。
【請求項4】
前記目標到達位置を、前記ロボット本体の目標着地位置の上方に設定し、前記ロボット本体がキャスティングにより該目標到達位置に到達したとき、前記ロボット本体に内蔵したパラシュートを開き、前記ロボット本体が目標着地位置に着地させる際の重力による衝撃を緩和させる工程を備えた請求項1ないし3に記載されたロボット本体のキャスティング方法。
【請求項5】
前記ロボット本体を3次元空間にキャスティングする工程に先だって、ワイヤ付き鉄球を該目標到達位置より上方に向けて投擲し、前記ロボット本体が該目標到達位置に到達したとき、該鉄球が鉛直方向上向きに所定の速度ベクトル成分を有するようにするとともに、該鉄球が先端に接続されたワイヤを拘束し、前記目標固定位置に固定されたワイヤの少なくとも一本を拘束することにより、各ワイヤに作用する張力の合力が鉛直方向上向きの成分を有するようにすることによって、前記ロボット本体に作用する重力加速度を相殺し、目標着地位置に着地させる際の重力による衝撃を緩和させる工程を備えた請求項1ないし3に記載されたロボット本体のキャスティング方法。
【請求項6】
ロボット本体を目標到達位置にキャスティングするロボット本体のキャスティング装置であって、
先端にグリッパあるいはアンカーなどのエンドエフェクタを備えた少なくとも3本のワイヤと、
該ワイヤのそれぞれに対応してロボット本体に設置され、各ワイヤの末端が結合された回転ドラムと、該回転ドラムのワイヤ繰出量及び巻取量を制御する駆動モータ、電磁ブレーキ、電磁クラッチとからなる繰出・巻取制御装置と、
前記ロボット本体の初期設置位置、前記エンドエフェクタの固定位置及び前記ロボット本体の目標到達位置に基づいて、前記ロボット本体のキャスティング開始時点における位置及び姿勢並びに目標キャスティング軌道を演算するとともに、該演算結果に基づいて、前記繰出・巻取制御装置を介して前記回転ドラムのワイヤ繰出量及び巻取量並びに各ワイヤに蓄積される弾性エネルギを制御するコントローラとからなるロボット本体のキャスティング装置。
【請求項7】
前記ロボット本体のフレームの少なくとも3カ所に、軸線方向の伸縮量、軸線周りの旋回量及び複数の関節角度を制御し得る剛体アームが設置され、該剛体アームのそれぞれは、前記繰出・巻取制御装置及び前記エンドエフェクタを前記固定位置に投擲する投擲機構を具備し、前記コントローラからの指令に応じて、前記エンドエフェクタの投擲開始位置及び投擲方向を制御するとともに、マニピュレータ機能を具備している請求項5に記載されたロボット本体のキャスティング装置。
【請求項8】
前記投擲機構は、ワイヤが巻回される回転ドラム、該回転ドラムを駆動する駆動モータ、該回転ドラムを制動する電磁ブレーキ、前記駆動モータから前記回転ドラムに伝達されるトルクを制御するとともにドラムを自由に回転させる電磁クラッチ及びワイヤの運動を拘束あるいは解放する電磁ブレーキとからなる請求項5または6に記載されたロボット本体のキャスティング装置。
【請求項9】
前記ロボット本体は、前記コントローラにより作動されるパラシュートを内蔵する請求項5ないし7に記載されたロボット本体のキャスティング装置。
【請求項10】
前記ロボット本体は、鉄球と、該鉄球を予め設定された方向に投擲する投擲機構と、該鉄球を先端に備えたワイヤの末端が結合された回転ドラムと、該ワイヤを拘束する電磁ブレーキとをさらに備え、前記コントローラにより前記鉄球の投擲方向と投擲速度を制御するとともに、所定のタイミングで前記電磁ブレーキを作動させて該ワイヤを拘束するようにした請求項5ないし7に記載されたロボット本体のキャスティング装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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