説明

ロボット駆動テンドンに張力を付与するためのシステムおよび方法

【課題】ワイア駆動において、高張力を少ない電力で実現すること。
【解決手段】テンドン張力付与システムは、近位端および遠位端を備えるテンドンと、アクチュエータと、モーターコントローラとを含む。アクチュエータは、ドライブスクリューおよびモーターを含むことができ、また、テンドンの近位端に連結され、電流に応答してテンドンに張力を付与するように構成される。モーターコントローラは、アクチュエータに電気的に連結され、テンドンにストール張力が達成されるまで、第1の大きさを備える電流をアクチュエータに提供するように構成される。また、モーターコントローラは、ストール張力の達成に続いてアクチュエータにパルス電流を提供するように構成される。パルス電流の大きさは、第1の大きさよりも大きい。モーターコントローラはさらに、パルス電流の終了に続いて、モーターを安定状態保持電流に戻すように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本発明は、NASA Space Act Agreement Number SAA-AT-07-003による政府の支援によりなされた。本稿で説明される発明は、米国政府により、または米国政府(すなわち非商業的)の目的のために、実施料の支払いなく製造および使用することができることがある。
【0002】
[0001]本発明は、一般に、ロボット駆動されるテンドン上の張力を維持するためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
[0002]ロボットは、一連のリンクを使用して物体を操作することができる自動化された装置である。リンクは、1つ以上のアクチュエータ駆動のロボットジョイントにより相互接続される。典型的なロボット内の各ジョイントは、少なくとも1つの独立制御変数、または自由度を備える。エンドエフェクタは、作業ツールを把持するなどのタスクをハンドで行うために使用される特定のマニピュレータである。それゆえ、様々なロボットマニピュレータの正確な運動制御は、必要な運動性、器用さ、および作業課題に関連する機能性を達成するのを助ける。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
[0003]器用なロボットは、特に人間のために設計された装置またはシステム、すなわち適切な操作に人間のようなレベルの器用さが必要とされる装置、に直接的な相互作用が必要とされる場合に用いられることがある。ロボットの運動を人間の動作に近似するようにプログラムすることができるので、器用なロボットの使用は、人間のオペレータとの直接的な相互作用が必要とされる場合にも好まれる。そのようなロボットは、テンドンを用いて遠隔的に駆動できる複数のフィンガを含むことができ、ロボットの全体のサイズおよび重量を軽減する。そのようなテンドンは、常に較正された張力レベル内に緊張状態を維持する必要があるが、フィンガを駆動するために、テンドンはより高い張力レベルに移行しなければならない。たとえば、フィンガを用いて把持力を維持するために、テンドンは、弛緩するように命令されるまで、より高い張力レベルを維持しなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[0004]テンドン張力付与システムは、近位端および遠位端を備えるテンドンと、アクチュエータと、モーターコントローラと、を含む。アクチュエータは、ドライブスクリューおよびモーターを含むことができ、また、テンドンの近位端に連結することができ、電流に応答してテンドンに張力を付与するように構成される。
【0006】
[0005]モーターコントローラは電気的にアクチュエータに連結することができ、また、テンドンを通してストール張力が達成されるまで、第1の大きさの電流をアクチュエータに提供するように構成することができる。コントローラは、ストールに続いてアクチュエータにパルス電流を提供することができ、このパルス電流の大きさは第1の大きさよりも大いく、その後、パルス電流の終結に続いて、モーターを安定状態保持電流に戻す。一実施形態において、モーターコントローラは、アクチュエータにパルス電流が提供される前の時間期間において、テンドンに維持される張力がストール張力に維持されることを可能にするように構成することができる。
【0007】
[0006]アクチュエータに提供される保持電流は、システムの最大安定状態電流レベルよりも小さくすることができ、パルス電流の大きさは、システムの最大瞬間電流レベルよりも小さくすることができる。追加的に、アクチュエータに提供されるパルス電流は、テンドンを通して提供される張力を増加させて張力レベルを増幅させ、増幅された張力レベルはストール張力よりも上である。アクチュエータは、パルス電流の結果に続いて、テンドンを通して増幅された張力レベルを維持するように構成することができる。
【0008】
[0007]一構成において、テンドンの遠位端は、器用なロボットのフィンガに連結することができる。その場合、アクチュエータはフィンガアクチュエータとすることができる。追加的に、アクチュエータのドライブスクリューは、ボールスクリューを含むことができ、これは、ボールスクリューを中心に配置され、また、テンドンに連結されるボールナットを備える。アクチュエータは、動作中、常に少なくともテンドン上の最小張力を維持するように構成することができ、最小張力はストール張力よりも小さい。
【0009】
[0008]テンドンに張力を付与するためにアクチュエータを制御する方法は、テンドンおよびアクチュエータを提供することを含み、アクチュエータは、電流に応答してテンドンを通じて張力を付与するように構成される。テンドンは近位端および遠位端を備えることができ、テンドンの近位端はアクチュエータに連結される。本方法はさらに、テンドンにストール張力が達成されるまで、第1の大きさの初期電流によりアクチュエータを駆動することを含み、また、ストールに続いて第1の大きさよりも大きなパルス電流をアクチュエータに伝達し、パルス電流の結果に続いて、モーターに伝達される電流レベルを安定状態を保持する大きさに戻すことを含む。
【0010】
[0009]本発明の上述の特徴および利点、また他の特徴および利点は、添付図面とともに本発明を実施する形態の以下の詳細な説明から容易に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本明細書で説明されるように駆動することができるテンドン駆動フィンガを備えるロボットを備えるロボットシステムを示す概略図である。
【図2】図1に示されるロボットの下アームアセンブリの概略斜視図である、アームアセンブリは複数のテンドン駆動ロボットフィンガを備える状態を示す図である。
【図3】器用なロボットフィンガを制御するのに使用するテンドンおよびアクチュエータのアセンブリの概略斜視図である。
【図4】図3に示される、テンドンおよびアクチュエータアセンブリの斜視部分断面図である。
【図5】テンドンアクチュエータに提供されるモーター電流の概略グラフであり、把持ルーチンの間にわたる対応するテンドン張力を共に示すグラフである。
【図6】ロボット式に駆動されるテンドンに張力を付与するための方法のフローダイアグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[0016]図面を参照し、いくつかの図面を通じて同様の参照符号は同一または類似の要素を示す。図1において、器用なロボット11およびコントローラ12を含むロボットシステム10が示される。ロボット11は、様々なマニピュレータを含むことができ、これは、複数のテンドン駆動フィンガ14を含む。コントローラ12は、プロセッサおよび/または関連するハードウェア装置として実施化することができ、または、代替的に、単一のまたは分散ハードウェア装置内にネストされたソフトウェアベースの制御ループとして実施化することができ、1つまたはそれ以上のプロセッサにより自動的に実行される。さらに、コントローラ12は、1つ以上の制御ルーチンを実行するコントロールシステム25を含むことができる。
【0013】
[0017] 物体30を把持する場合などに、器用なロボット11のフィンガ14を操作するために、コントローラ12は、図3に概略的に示されるように、1つ以上のテンドン50を通して付与される張力を変化させるように動作することができる。制御システム25は、たとえば、非限定的に、テンドン内に維持される張力を調節するために、力ベース制御および/または位置ベース制御を採用することができる。そのような制御は、さらに、制御性を向上させるために、閉ループの力および/または位置フィードバックを含むことができる。制御システム25内で、適用される特定の制御法則、すなわち、力または位置による制御法則は、与えられたフィンガ14のために利用可能な張力センサの数に応じて選択することができる。
【0014】
[0018]一実施形態において、図1に示されるロボット11は、人間のような外観を備えるように構成することができ、また、与えられた作業課題を実行するのに必要な程度に人間のようなレベルの器用さを備えるように構成することができる。人間型ロボットおよび他の器用なロボットは、特に人間が使用するように設計された装置またはシステムと直接的な相互作用が必要とされる場面において使用することができ、たとえば、物体30を適切に操作するのに人間のようなレベルの器用さが必要とされる装置などである。図1に示されるロボット11のような人間型ロボットの使用は、ロボットの運動を人間の運動に緊密に近似するようにプログラムすることができるので、ロボットと人間のオペレータとの間の直接的な相互作用が必要とされる場合に好ましい。ロボット11のフィンガ14は、たとえば、ホストマシン、サーバー、またはそのような装置のネットワークのような、コントローラ12のハードウェア要素により直接的に制御することができ、ロボットが物体30に対して行う任意の操作または作業課題の実行の間に制御信号55のセットを介して制御される。
【0015】
[0019]図1に示されるロボット11は、複数の自由度(DOF)で自動化された作業を実行するようにプログラムでき、また、他の相互に作用する作業を実行するようにプログラムでき、または、たとえば、クランプ、照明、リレーなどの他の統合されたシステムコンポーネントを制御するようにプログラムすることができる。可能な一実施形態によれば、ロボット11は、複数の独立する、および相互依存する、移動可能なアクチュエータ駆動のロボットジョイントを備えることができ、これらのいくつかは運動範囲が重なる。様々な指関節を分離および移動させるフィンガ14の様々なジョイント23に加えて、ロボット11のロボットジョイントは肩ジョイントを含むことができ、この位置は、全体として図1に矢印13で示され、また、ロボットジョイントは、肘ジョイント(矢印15)、手首ジョイント(矢印17)、首ジョイント(矢印19)、および腰ジョイント(矢印21)を含むことができる。
【0016】
[0020]図1を参照すると、各ロボットジョイントは、1つ以上のDOFを備えることができる。たとえば、肩ジョイント(矢印14)および肘ジョイント(矢印15)のような従順なジョイントは、ピッチおよびロールの形態で少なくとも2のDOFを備えることができる。同様に、首ジョイント(矢印19)は少なくとも3のDOFを備えることができ、腰ジョイント(矢印21)および手首ジョイント(矢印17)は、1以上のDOFを備えることができる。作業の複雑さに依存して、ロボット11は、42以上のDOFで運動することができる。各ロボットジョイントは、たとえば、ジョイントモーター、リニアアクチュエータ、ロータリーアクチュエータ等の1つ以上のアクチュエータを含み、また、これにより内部的に駆動される。
【0017】
[0021]一実施形態において、ロボット11は図2に示される下アームアセンブリ75を含むことができる。他の実施形態において、ロボット11は、ヘッド16、トルソ18、腰20、アーム22、ハンド24、フィンガ14、および親指26のような追加の人間のようなコンポーネントを含むことができ、これらのコンポーネント内またはそれらの間に上述の様々なジョイントが備えられる。人間のように、両方のアーム22および他のコンポーネントは、ある程度重なる運動範囲を備えることができる。また、ロボット11は、ロボットの具体的な用途または意図している使用に応じて、レッグ、トレド、または他の移動可能なまたは固定のベースのような作業に適した固定部またはベース(図示せず)を備えることができる。電源28は、ロボット11に一体的に搭載することができ、たとえば、トルソ18の背後に保持または装着される充電式バッテリパックまたは他の好適なエネルギー供給部であり、または、テザリングケーブルを通して遠隔的に取り付けられ、様々なジョイントに運動のための十分な電気エネルギーを供給する電源を備えることができる。
【0018】
[0022]コントローラ12は、上述したように、サーバーまたはホストマシン、すなわち、1つ以上のディジタルコンピュータまたはデータ処理装置として実施化することができ、それぞれは1つ以上のマイクロプロセッサまたは中央処理装置(CPU)、読取専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、電気的に消去可能なプログラム可能な読取専用メモリ(EEPROM)、高速クロック、アナログ−ディジタル(A/D)回路、ディジタル−アナログ(D/A)回路、任意の必要な入出力(I/O)回路および装置、および信号調整およびバッファ機器を備える。
【0019】
[0023] 単純さおよび明確さのために図1において単一の装置として示されているが、制御システム12の様々な要素は、ロボット11を最適に制御するのに必要な数の多くの異なるハードウェアおよびソフトウェアコンポーネントとして分散させることができる。コントローラ12またはコントローラ12で容易にアクセス可能な個別の制御ルーチン/システム25は、ROMまたは他の好適な実体的なメモリ位置および/またはメモリ装置内に記憶させることができ、制御システムの関連するハードウェハコンポーネントにより自動的に実行され、それぞれの制御機能を提供する。
【0020】
[0024]図2を参照すると、下アームアセンブリ75は、図1のロボット11の部品として使用することができる。各下アームアセンブリ75は、複数のテンドン駆動フィンガ14およびテンドン駆動親指26を備えるハンド24を含むことができる。「テンドン駆動」との語は、図3を用いて以下で説明する。下アームアセンブリ75は、複数のフィンガアクチュエータ40を含むことができ、各々は、それぞれ、フィンガ14または親指26内の1つ以上のテンドン50(図3参照)を選択的に引っ張るおよび解放するように構成することができる。下アームアセンブリ75はさらに、手首ジョイント(矢印17)を動かすための複数の手首アクチュエータ38を含む。フィンガアクチュエータ40および/または手首アクチュエータ38のためのプリント回路板アセンブリ(PCBA)39は、パッキングの効率のために、図示のような下アームアセンブリ75上またはその中に位置決めすることができる。下アームアセンブリ75は、ロードセル32に取り付けることができ、これは、下アームアセンブリを図1のロボット11のアーム22の残りに接続するのに用いられる。
【0021】
[0025]複数のフィンガアクチュエータ40は、各フィンガ14および親指26に対応するようにすることができる。一般に、1つのフィンガアクチュエータ40は、各利用可能なDOFプラス1の追加のフィンガアクチュエータを使用することができる。それゆえ、3のDOFを備える各フィンガ14は、4つのフィンガアクチュエータ40を必要とし、2のDOFを備える各フィンガは、3つのフィンガアクチュエータを必要とする、等々である。
【0022】
[0026]図3を参照すると、フィンガアクチュエータ40の可能な実施形態の概略斜視図が提供されている。図示のように、フィンガアクチュエータ40は、近位端51および遠位端53を備えるテンドン50を備えることができ、フィンガアクチュエータ40は、テンドン50の近位端51に連結することができる。追加的に、テンドン終端部52は、テンドン50の遠位端53に連結することができ、これは、テンドン50を器用なロボットのフィンガ14に連結させるように動作することができる。フィンガアクチュエータ40は、モーター44、ギアドライブ46、およびリニアアクチュエータ48を含むことができ、これは、電流に応答して、テンドン50を通して張力を付与するように協働することができる。テンドン50は、フィンガ14内の中心外の位置に示されており、与えられたフィンガ内により多くのテンドンを配置することができる。モーター44、ギアドライブ46、リニアアクチュエータ48は、フィンガ14および親指26内に必要とされるパッケージ空間を最小化するために、下アームアセンブリ75内に配置することができ、リニアアクチュエータ48のようなフィンガアクチュエータ40のより大きなコンポーネントがフィンガおよび親指に対して遠隔的にパッケージされることを可能にする。
【0023】
[0027]テンドン50は、保護外側導管56内に配置されるシースまたは導管ライン54により保護することができる。張力センサ58は、導管56上の圧縮力を測定し、テンドン50上に付与される張力の大きさを決定する。テンドン50内の張力は、図1に示されるコントローラ12により使用され、与えられたフィンガの様々なジョイントにおいて発生したまたはそこで受けているジョイントトルクを形成し、これはモーターコントローラ90に使用されて与えられたハンド24のフィンガおよび親指26の駆動を制御することができる。
【0024】
[0028]フィンガアクチュエータ40はテンドン50を移動させるとき、テンドン50は、張力センサ58に対してスライドする。テンドン50は、テンドン終端部52においてフィンガ14ないで終端する。テンドン50の運動は、テンドン終端部52の相対的な運動を生じさせることができ、テンドン終端部52は、上述のように、フィンガ14の一部に固定することができる。力は、内部的に、すなわちフィンガアクチュエータ40の運動により、テンドン終端部52上に付与され、または、外部的に、すなわち、図1の物体30によりフィンガ14に力が付与される。
【0025】
[0029]図4は、図3に示されるもののようなフィンガアクチュエータアセンブリ40の部分断面の斜視図である。図示のように、モーター44は、ギアドライブ46を駆動するように動力を与え、ギアドライブ46は、ボールスクリュー60の回転を生じさせることができる。ボールナット62は、ボールスクリュー60とのネジ付き係合部を中心に、および/またはこれを備えるように配置することができ、また、ガイドピン64は、ボールナット62から延び、ボールスクリュー60の運動に応じてボールナット62の回転を防止することができる。他の実施形態において、他のリニアアクチュエータ技術を採用することもでき、たとえば、ローラースクリューまたはバックドライブ可能なリードスクリューなどを採用することができる。一実施形態において、ガイドピン64は、リニアアクチュエータ48のハウジング68により画定されるスロット66の少なくとも一部を通って延びることができる。ガイドピン64とリニアアクチュエータハウジング68との間の相互作用は、ガイドピン64そしてボールナット62の回転運動を抑止することができる。それゆえ、ギアドライブ46がボールスクリュー60を回転させるとき、ボールナット62は、ボールスクリュー60に沿って軸方向に並進することができる。モーター44、ギアドライブ46、およびボールスクリュー60は、フィンガアクチュエータ軸Fを画定し、これに沿ってボールナット62が移動するように構成される。
【0026】
[0030]ギアドライブ46は、連結部70を介してボールスクリュー60に接続され、これにより、連結部70がギアドライブ46のトルクを伝達することを可能にし、一方で、軸方向の負荷の伝達を最小化する。追加的に、ベアリング72を連結部70とボールスクリュー60との間に配置することができ、アクチュエータハウジング68とボールスクリュー60との間の摩擦を低減し、また、テンドン50から伝達された軸方向の負荷をボールスクリューへ伝達する。
【0027】
[0031]位置センサ74は、フィンガアクチュエータハウジング68に搭載することができ、ボールナット62のボールスクリュー60に沿う軸方向の位置を検出する。図示のように、位置センサ74は、ボールナット62に取り付けられた磁石76を備えるホール効果センサを含むことができる。代替的に、位置センサ74はリニアエンコーを含むことができ、あるいは他の連続的なまたは離散的な形態の位置検出を採用することができる。
【0028】
[0032]テンドン50は、ボールナット62の運動がテンドン50の対応する運動を生じさせるように、適当な方法でボールナット62に取り付けることができる。テンドン50の運動は、テンドンが配置されているフィンガの側に応じて、フィンガ14をまっすぐにし、または曲げる。反対の、まっすぐにする動作または曲げ動作を実行するために、追加的なフィンガアクチュエータ40を用いることができる。それゆえ、(図3に示される)各フィンガ14は、各自由度のために少なくとも1つのフィンガアクチュエータ40を備えることができる。一般に、各フィンガ14は、自由度につき1つのアクチュエータにもう一つ追加のアクチュエータを備えることができる。たとえば、3DOFのフィンガは4つのアクチュエータを備え、4DOFのフィンガは5つのアクチュエータを備えることができる。
【0029】
[0033]各フィンガアクチュエータ40は、モーター40に電気的に連結されるそれぞれのモーターコントローラ90により制御することができる。複数のモーターコントローラ90は、より大きなコントローラ(たとえば図1に示されるコントローラ12)内に含まれるようにすることができ、または、互いに別個にすることもできる。モーターコントローラ90は、モーター44に直接的に動作電流91を提供するように構成することができ、あるいは、単に、モーターを通って流れる電流を制御する高レベル命令を提供するようにすることもできる。たとえば、一実施形態において、モーターコントローラ90は、モーターに0から255までのディジタル値を提供するようにすることができ、これは、モーターで電流またはトルクに変換される。
【0030】
[0034]動作中、各テンドン50により最小の張力が維持されるようにすることができ、および/または各フィンガアクチュエータにより常に提供されるようにすることができる。各テンドン50は、望ましくは、ただ引っ張るように構成されるので、最小の張力は、フィンガアクチュエータ40が、テンドン50にいかなる緩みも発生しない「準備」状態に維持されるようにすることを可能にする。ボールナット62の、軸Fに沿う遠位方向80の運動は、テンドン50に付与される張力を弛緩し、逆に、ボールナット62の近位方向への運動は、テンドン50に付与される張力を大きくすることができる。ナット62が軸Fに沿って移動するスピードを大きくするために、そして、フィンガアクチュエータ40の応答スピードを速くするために、フィンガアクチュエータ40は、ギアドライブ46における相対的に低いギア比を備えるようにすることができ、および/またはボールスクリュー60内における相対的に低いギア比を備えるようにすることができる。一実施形態において、たとえば、非限定的に、ギア比は約14:1とすることができる。しかし、他のギア比も同様に使用することができる。しかし、アクチュエータ40の低トルク減少とのトレードオフは、テンドン50を通して維持される張力がボールスクリュー60に沿うボールナットをバックドライブする可能性を増加させる。これは、本来的にバックドライブがより困難なシステムダイナミクスを備える高いギア比のシステムとは対照的である。テンドン50に大きな張力を維持することができるシステムを提供し、ボールナット62のボールスクリュー60に沿うバックドライブの可能性を減少させるために、モーター44は、ギアドライブ46およびボールスクリュー60のシステムダイナミクスを増加させるように構成することができる。
【0031】
[0035]図5は、電流プロット100および張力プロット102を示し、これは、把持ルーチンの継続時間にわたるフィンガアクチュエータ40のものである(すなわち、電流プロット100は、モーター44に提供される電流101を時間104の関数として示し、張力プロット102は、テンドン50に提供される張力103を時間の関数として示している。)。図示のように、把持手順は、たとえば、6つの異なる過程(すなわち、過程106、108、110、112、114、116)に分割することができ、これらはそれぞれ、手順内でのアクチュエータ40および/またはコントローラ90の異なる動作を示している。これらの過程は、単に例示的なものであり、本発明を限定するものではない。
【0032】
[0036]第1過程106内で、フィンガアクチュエータ40は、テンドン50に維持される最小張力118となる「準備」状態に維持される。この最小張力118は、部分的に、モーター44を通る最小電流により生成することができる。時間122において駆動命令が提供されると、電流101は増加し、これは、フィンガ14が物体30に向かって加速するようにする。フィンガ14が移動している間、テンドン50の張力103は、過程108で示されるように徐々に大きくなる。
【0033】
[0037]時間124において、フィンガ14は物体30に係合し、テンドン50の張力103は、安定状態レベル125(すなわち、ストール張力125)まで急速に増加する。張力103の増加は、張力プロット102の過程110において見られる。時間124において、張力103は、フィンガ14上への物体30の外部的な影響により不連続になる。物体30のコンプライアンスに応じて、テンドン50の張力103は、異なる速度で増加する。しかし、必然的に、把持される物体30は、モーターをストールさせるのに十分な抵抗を提供し、張力をこれ以上増加させない(すなわち時間126)。これが生じたら、モーターコントローラ90は、モーター44に提供される電流101をより低い電流レベル128に減少させるように構成することができ、またこれは、安定状態保持電流128と言及される。一実施形態において、安定状態保持電流128は、最大安定状態電流レベル129であるか、またはそれよりもわずかに低い電流とすることができる。そのような最大レベルは、モーター44および/またはコントローラ90が不確定な時間期間にわたって作動的に維持できる最大の電流量を示すものとすることができる。
【0034】
[0038]ストール張力125に到達したら、コントローラ90は、過程114で示されるようにパルス電流130をモーター44に提供し、時間132において開始される。パルス電流130は、相対的に短い期間134とすることができ、相対的に高い大きさ136を備えるようにすることができる(保持電流128と比較した場合)。一実施形態において、パルス電流130の存続期間134は、たとえば、非限定的に、約10−50ミリ秒とすることができる。追加的に、パルス電流130の大きさ136は、コントローラ90により提供される、またはモーター44が受け取る、可能な最大瞬間電流137とすることができ、またはそれよりもわずかに低い電流とすることができる。一実施形態において、図5に示されるように、システムは時間期間112だけストール張力125にある。他の実施形態において、システムは、パルス電流130を提供する前に、延長された時間期間にストール張力125を維持する必要はない。その場合、過程112の時間期間は、単一の瞬間に減少される。
【0035】
[0039]パルス電流130は、高振幅のサージでモーター44を強制的に駆動させることにより、テンドン50内の張力を、低いストール張力125から高い張力レベル138まで増加させる。パルス130が時間142において保持電流128戻ると、張力プロット102の過程116に示されるように、テンドン50およびフィンガアクチュエータ40内でより高い張力レベル138を維持することができる。一実施形態において、高い張力を低い電流で維持する能力は、部分的に、ボールスクリュー60および/またはギアドライブ46の摩擦ダイナミクスによるものであり、また、部分的に、モーター44に付与される保持電流128によるものである。保持電流128は、フィンガアクチュエータ40の摩擦ダイナミクスを増大させ、モーター44をバックドライブしないようにする。保持電流を低くすることにより、高い保持トルク/張力を単にモーターだけで維持することに依存する場合よりも相当な電力を抑えることができる。
【0036】
[0040]図6は、把持ルーチンの間にロボット式に駆動されるフィンガテンドン50に張力付与を行う方法150を示している。図示のように把持命令が160において提供されると、フィンガアクチュエータモーター44は第1電流で駆動され、第1電流は、フィンガが物体30に接触するように運動させる(ステップ162)。図5に関して上述したように、接触の際に、テンドン50に付与される張力103は、モーター44により生成される力が、物体30の反発力とバランスするまで増加し、このときモーター44はストールする。ストールが検出されると、「張力ブースト」命令がステップ164において提供される。張力ブースト命令により、コントローラ90はパルス電流130をモーター44に提供する。パルス電流130は、強制的にモーター44がテンドン50に、ステップ162において最初に平衡状態に維持されているときよりも高い張力を付与するようにする。
【0037】
[0041]ステップ164におけるパルス電流130の伝達に続いて、モーター44に提供される電流レベルは、ステップ166において到達する最初のストール電流128に戻る。この電流128は、フィンガアクチュエータ40の摩擦ダイナミクスとともに、テンドン50に上昇した張力(パルス電流を介して付与される)が維持されるようにする。ステップ168は、低い電流命令により維持される高い張力138のルーチンを含む。
【0038】
[0042]本発明を実施する形態が詳細に説明されたが、当業者は、本発明を添付の特許請求の範囲で示される範囲内で本発明を実施する様々な代替設計および実施形態を認識するであろう。あらゆる方向に関する記載(たとえば、上、下、上方、下方、左、右、左方、右方、上側、下側、垂直、水平など)は、読み手による本願発明の理解を助けるために単に特定する目的において使用されており、とくに本発明の姿勢、向き、用途など限定するものではない。上述の説明または添付図面に含まれるあらゆる事項は、限定的なものではなく例示的なものであることを意図している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テンドン張力付与システムであって、
近位端および遠位端を備えるテンドンと、
前記テンドンの前記近位端に連結され、電流に応答して前記テンドンに張力を付与するように構成されるアクチュエータと、を有し、前記アクチュエータはドライブスクリューおよびモーターを含み、
前記システムはさらに、前記アクチュエータに電気的に連結されるモーターコントローラを有し、前記モーターコントローラは、
前記テンドンにストール張力が達成させるまで、第1の大きさを備える電流を前記アクチュエータに提供し、
前記ストール電流の達成に続いて、前記アクチュエータにパルス電流を提供し、前記パルス電流の大きさは前記第1の大きさよりも大きく、
前記パルス電流の終結に続いて、前記モーターを安定状態保持電流に戻す、ように構成される、システム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムであって、前記テンドンの前記遠位端は器用なロボットのフィンガに連結される、システム。
【請求項3】
請求項1に記載のシステムであって、前記ドライブスクリューはボールスクリューであり、前記アクチュエータはさらに、前記ボールスクリューを中心に配置され、且つ、前記テンドンに連結されるボールナットを含む、システム。
【請求項4】
請求項1に記載のシステムであって、前記モーターコントローラは、前記アクチュエータに前記パルス電流を提供する前に、所定時間ストール張力にあるように前記テンドン内に張力を維持できるように構成される、システム。
【請求項5】
請求項1に記載のシステムであって、前記保持電流は、前記システムの最大安定状態電流レベルよりも小さい大きさを備え、前記パルス電流の大きさは、前記システムの最大瞬間電流レベルよりも小さい大きさである、システム。
【請求項6】
請求項1に記載のシステムであって、前記アクチュエータに提供される前記パルス電流は、前記テンドンに提供される張力を、ブースト張力レベルに増加させるように動作可能であり、前記ブースト張力レベルは前記ストール張力よりも大きい、システム。
【請求項7】
請求項6に記載のシステムであって、前記アクチュエータは、前記パルス電流の終了に続いて前記テンドンを前記ブースト張力レベルに維持するように構成される、システム。
【請求項8】
請求項1に記載のシステムであって、前記アクチュエータは、動作中に前記テンドンに少なくとも最小張力を維持するように構成され、前記最小張力は、前記ストール張力よりも小さい、システム。
【請求項9】
把持ルーチンの間、器用なロボットのフィンガを通じて増加した把持力を提供するシステムであって、前記システムは、
近位端および遠位端を備え、前記器用なロボットのフィンガの長さに沿って延びるテンドンを有し、前記テンドンの前記遠位端は前記フィンガに連結され、
前記システムはさらに、ドライブスクリューおよびおモーターを含むフィンガアクチュエータを有し、前記フィンガアクチュエータは、前記器用なロボットの下アームアセンブリ内に前記フィンガから離間して配置され、前記フィンガアクチュエータは、前記テンドンの前記近位端に連結され、電流に応答して前記テンドンに張力を付与するように構成され、
前記システムはさらに、前記フィンガアクチュエータに電気的に連結されるモーターコントローラを有し、前記モーターコントローラは、
前記テンドンにストール張力が達成されるまで、前記フィンガアクチュエータに、第1の大きさの電流を提供し、
前記ストール張力の達成に続いて、前記アクチュエータにパルス電流を提供するように構成され、前記パルス電流の大きさは、前記第1の大きさよりも大きく、
前記モーターコントローラはさらに、前記パルス電流の終了に続いて、前記モーターを安定状態保持電流に戻すように構成される、システム。
【請求項10】
請求項9に記載のシステムであって、前記ドライブスクリューはボールスクリューであり、前記アクチュエータは、前記ボールスクリューを中心に配置され、前記テンドンに連結されるボールナットを含む、システム。
【請求項11】
請求項9に記載のシステムであって、前記モーターコントローラは、前記アクチュエータに前記パルス電流を提供する前に、前記テンドン内に維持される張力が所定期間にわたりストール張力であることを可能にするように構成される、システム。
【請求項12】
請求項9に記載のシステムであって、前記保持電流は、前記システムの最大安定状態電流レベルよりも小さい大きさを備え、前記パルス電流の大きさは、前記システムの最大瞬間電流レベルよりも小さい、システム。
【請求項13】
請求項9に記載のシステムであって、前記アクチュエータに提供される前記パルス電流は、前記テンドンに提供される張力をブースト張力レベルに増加させるように動作可能であり、前記ブースト張力レベルは前記ストール張力よりも大きい、システム。
【請求項14】
請求項13に記載のシステムであって、前記アクチュエータは、前記パルス電流の終了に続いて、前記テンドンを前記ブースト張力レベルに維持するように構成される、システム。
【請求項15】
テンドンに張力を付与するようにアクチュエータを制御する方法であって、前記方法は、
近位端および遠位端を備えるテンドンを提供するステップと、
前記テンドンの前記遠位端に連結され、電流に応答して前記テンドンに張力を付与するように構成されるアクチュエータを提供するステップと、を有し、前記アクチュエータはドライブスクリューおよびモーターを含み、
前記方法はさらに、前記テンドンにストール張力が達成されるまで、第1の大きさを備える電流で前記アクチュエータを駆動するステップと、
前記ストール張力の達成に続いて、前記アクチュエータにパルス電流を伝達するステップと、を有し、前記パルス電流の大きさは、前記第1の大きさよりも大きく、
前記方法はさらに、前記パルス電流の終了に続いて、前記モーターに伝達される電流を、安定状態に保持する大きさに戻すステップを有する、方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法であって、前記アクチュエータに提供される前記パルス電流は、前記テンドンに提供される張力をブースト張力レベルに増加させるように動作可能であり、前記ブースト張力レベルは前記ストール張力よりも大きい、方法。
【請求項17】
請求項15に記載の方法であって、さらに、
複数のフィンガを備える器用なロボットを提供するステップを有し、
前記テンドンの前記遠位端は、前記器用なロボットのフィンガに連結される、方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法であって、前記器用なロボットは、42の自由度を含む、方法。
【請求項19】
請求項17に記載の方法であって、前記電流により前記アクチュエータは前記フィンガに力を付与する、方法。
【請求項20】
請求項15に記載の方法であって、安定状態に保持する大きさの前記電流は、前記モーターのバックドライブを防止する、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−152889(P2012−152889A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−237659(P2011−237659)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(511095986)ジーエム・グローバル・テクノロジー・オペレーションズ・エルエルシー (14)
【出願人】(510149563)ザ・ユナイテッド・ステイツ・オブ・アメリカ・アズ・リプレゼンテッド・バイ・ジ・アドミニストレーター・オブ・ザ・ナショナル・エアロノーティクス・アンド・スペース・アドミニストレーション (27)
【Fターム(参考)】