説明

ロボット

【課題】作業ユニットに対する配線作業をより容易化する。
【解決手段】本発明にかかる直交型ロボット1は、特定方向に移動可能なスライダ43に、所定の作業を行うための作業ユニット10が取り付けられるように構成されており、上記ロボット1の駆動源である各種モータ17,35,47とそのコントローラ2とは、屈曲自在なケーブル保持部材63,71の内部を通るように配索されるケーブル56,54等を介して電気的に接続されている。上記ケーブル保持部材63,71の内部には、上記ケーブル56,54を通すための第1の配索空間83,85と、上記作業ユニット10に接続される作業ユニット用ケーブル79を通すための第2の配索空間84,86とが形成され、これら第1および第2の配索空間(83,84等)が、仕切部材75,76を介して互いに仕切られている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定方向に延びるフレームに沿ってスライド自在に支持されたスライダと、このスライダを駆動する駆動源と、この駆動源の動作を制御するコントローラとを備え、所定の作業を行うための作業ユニットが上記スライダに取り付けられるように構成されたロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に示されるように、特定方向に延びるフレーム(ベース部材)に沿ってスライド自在に支持されたスライダ(可動部)と、このスライダを駆動するサーボモータ等からなる駆動源と、この駆動源の動作を制御するコントローラとを備えた単軸ロボット、もしくは当該単軸ロボットが互いに直交する状態で複数組み合わされた直交型ロボットが知られている。
【0003】
図9および図10は、上記直交型ロボットの一例を示しており、図9は当該ロボットの正面図、図10は上面図である。これらの図に示される直交型ロボット200は、X軸方向移動用の単軸ロボットとしてのX軸ロボット201と、Y軸方向移動用の単軸ロボットとしてのY軸ロボット202とを有しており、両者が互いに直交する状態で組み付けられることにより構成されている。図例では、上記X軸ロボット201のフレーム203に沿ってX軸方向に移動可能な2つのスライダ204,204が設けられ、これらのスライダ204,204に対して2つのY軸ロボット202,202が取り付けられている(いわゆるダブルキャリアタイプの直交型ロボット)。さらに、上記各Y軸ロボット202,202は、Y軸方向に移動可能なスライダ210,210をそれぞれ有しており、この各スライダ210,210に、例えば部品の移載動作等の所定の作業を行うための作業ユニット214,214がそれぞれ取り付けられるように構成されている。なお、図中において符号205は、上記X軸ロボット201の各スライダ204を駆動するためのサーボモータであり、符号206は、このサーボモータ205の駆動等を制御するためのコントローラである。これらサーボモータ205とコントローラ206とは、ケーブル211等を介して電気的に接続されている。
【0004】
上記X軸ロボット201の幅方向一側部には、上記ケーブル211を中継するための中継ボックス207と、上記各スライダ204と一体に移動するように取り付けられた結線ボックス208とが設置されている。これら中継ボックス207と各結線ボックス208との間には、屈曲自在なケーブル保持部材209が配設されており、上記ケーブル211は、その一部がこのケーブル保持部材209の内部を通るように配索される。そして、ケーブル211は、上記ケーブル保持部材209を通じて上記結線ボックス208の内部に導入された後、この結線ボックス208内で、上記サーボモータ205側から延びるケーブル212と接続されるようになっている。なお、図中の符号213は、Y軸ロボット202用のモータ(図示省略)から延びるケーブルであり、上記ケーブル212と同様に、結線ボックス208の内部で上記ケーブル211と接続される。
【特許文献1】特開平7−276269号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のような直交型ロボット200では、上記作業ユニット214の動作を制御するための図外の作業ユニット用コントローラが必要であり、この作業ユニット用コントローラと上記作業ユニット214とは、上記ケーブル211とは別の作業ユニット用ケーブル(図示省略)により電気的に接続される。この作業ユニット用ケーブルは、上記ケーブル211と共通のケーブル保持部材209の内部を通るように配索されることが多いが、このような作業ユニット用ケーブルの配線作業は、実際にロボットが使用される製造現場等においてユーザの手により行われるのが一般的である。したがって、上記のように多数本のケーブル211が既にケーブル保持部材209の内部に配索されている場合には、このケーブル保持部材209の内部にさらに上記作業ユニット用ケーブルを配索しようとしたときに、上記ケーブル211の存在に起因して上記作業ユニット用ケーブルの配索が行いにくくなる可能性があり、この点についてさらなる改善が求められていた。
【0006】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、特定方向に移動可能なスライダに所定の作業を行うための作業ユニットが取り付けられるように構成されたロボットにおいて、上記作業ユニットに対する配線作業をより容易化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためのものとして、本発明は、特定方向に延びるフレームに沿ってスライド自在に支持されたスライダと、このスライダを駆動する駆動源と、この駆動源の動作を制御するコントローラとを備え、所定の作業を行うための作業ユニットが上記スライダに取り付けられるように構成されたロボットであって、上記駆動源とコントローラとが、屈曲自在なケーブル保持部材の内部を通るように配索されるケーブルを介して電気的に接続されており、上記ケーブル保持部材の内部には、上記ケーブルを通すための第1の配索空間と、上記作業ユニットに接続される作業ユニット用ケーブルを通すための第2の配索空間とが形成され、これら第1および第2の配索空間が、仕切部材を介して互いに仕切られていることを特徴とするものである(請求項1)。
【0008】
本発明によれば、ケーブル類を保持するためのケーブル保持部材の内部に、仕切部材によって仕切られた2つの空間を設けたことにより、このうちの一方の空間(第1の配索空間)にロボット用のケーブルを配索した上で、当該空間と仕切られたもう一方の空間(第2の配索空間)に、作業ユニットに接続される作業ユニット用ケーブルを配索することができるため、上記作業ユニットに対する配線作業としてユーザが上記作業ユニット用ケーブルをケーブル保持部材の内部に配索しようとしたときに、その第1の配索空間に上記ロボット用のケーブルが既に存在している状態であっても、ユーザは、他にケーブルが存在しないもう一方の第2の配索空間に、上記作業ユニット用ケーブルを容易に配索することができる。
【0009】
このような構成は、本発明のロボットが、一方向に直線的に移動可能な単軸ロボットが互いに直交する状態で複数組み合わされた直交型ロボットである場合に好適に適用することができる。さらに、本発明のロボットが、X軸方向に独立して移動可能な複数のスライダを有した単一のX軸ロボットと、このX軸ロボットの各スライダに取り付けられる複数のY軸ロボットとを備えた直交型ロボットであって、上記複数のY軸ロボットのスライダ、もしくは、当該スライダに取り付けられるZ軸ロボットのスライダに、上記作業ユニットが取り付けられるように構成されたロボットである場合に、上記構成は特に有効である(請求項2,3)。
【0010】
すなわち、上記のような直交型ロボットでは、より多数のケーブル保持部材を設ける必要があるため、このケーブル保持部材の内部構造に工夫を加えることでユーザの配線作業の負担を軽減するようにした本発明の構成は、上記のような直交型ロボットに対して特に有効である。
【0011】
上記ケーブル保持部材が複数設けられる場合には、この複数のケーブル保持部材のうち、上記ケーブルの配索経路上で少なくともコントローラ側に最も近いケーブル保持部材に、上記仕切部材を設けることが好ましい(請求項4)。
【0012】
このようにすれば、内部に配索されるケーブルの本数が最も多いケーブル保持部材に少なくとも上記仕切部材が設けられることとなり、上記作業ユニット用ケーブルを内部に配索する作業が本来最も行いにくいケーブル保持部材について少なくともその作業性を向上させることができるため、上記作業ユニットに対する配線作業を効率的に容易化できるという利点がある。
【0013】
また、本発明においては、上記ケーブルが、上記コントローラ側から延びる第1のケーブルと、上記駆動源側から延びて上記ケーブル保持部材の内部に配索される第2のケーブルとを有し、これら第1および第2のケーブルが中継ボックスの内部で互いに接続されるように構成されていることが好ましい(請求項5)。
【0014】
このように、上記ケーブルを中継するための中継ボックスを設けた場合には、大幅な配線変更を伴うことなく上記コントローラの設置場所を自由に設定できるという利点がある。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明によれば、特定方向に移動可能なスライダに所定の作業を行うための作業ユニットが取り付けられるように構成されたロボットにおいて、上記作業ユニットに対する配線作業をより容易化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1〜図6は、本発明にかかるロボットの一実施形態を示している。本図に示されるロボット1は、X,Y,Z軸の各方向への移動用のX軸ロボット3、Y軸ロボット4、およびZ軸ロボット5が互いに直交する状態で組み付けられた3軸直交型ロボット(以下、直交型ロボット1という)として構成されている。また、この直交型ロボット1は、いわゆるダブルキャリアタイプの直交型ロボットであり、1つのX軸ロボット3に対して2つのY軸ロボット4,4が取り付けられるとともに、これら各Y軸ロボット4,4に対してそれぞれZ軸ロボット5,5が取り付けられている。このような直交型ロボット1には、そのZ軸ロボット5,5に対して一対の作業ユニット10,10(詳細は後述する)が取り付けられており、上記各単軸ロボット3〜5の作動に応じて、この作業ユニット10がX,Y,Z軸の各方向にそれぞれ移動するように構成されている。
【0017】
図7は、上記X軸ロボット3を模式的に示す図である。この図7および先の図1〜図6に示すように、X軸ロボット3は、X軸方向に延びるフレーム6と、このフレーム6に沿ってスライド自在に支持された2つのスライダ9,9とを有している。上記フレーム6は、上方に開口する凹状の枠材からなるベース部材7と、このベース部材7の上端開口を覆うカバー部材8とを有しており、これらカバー部材8とベース部材7との間に部分的に挟まれるような状態で上記各スライダ9,9がスライド自在に支持されている。
【0018】
上記フレーム6の内部には、その延設方向(X軸方向)に沿って延びる一対のガイドレール11,11(図4,図5等)が設けられ、この共通のガイドレール11に対して上記各スライダ9,9がそれぞれX軸方向に摺動可能に係合している。上記各ガイドレール11,11の間には、ボールねじ軸13がX軸方向に延びるように設置されており、このボールねじ軸13は、上記フレーム6の両端部に設けられたベアリング14(図7)等の軸受部材を介して軸回りに回転可能に支持されている。
【0019】
上記各スライダ9,9の下方には、主に図7に示すように、上記ボールねじ軸13に螺合されるナット部材15,15と、このナット部材15,15を回転駆動する駆動源としての中空モータ17,17とがそれぞれ取り付けられている。上記各ナット部材15,15は、ベアリング19を介し相対回転可能な状態で上記各スライダ9,9にそれぞれ取り付けられているとともに、カップリング21を介して上記各中空モータ17,17に連結されている。そして、上記各中空モータ17,17によってナット部材15,15が正方向または逆方向に回転駆動されることにより、上記各スライダ9,9が、ボールねじ軸13およびガイドレール11に沿って+X方向または−X方向に個別に移動するように構成されている。
【0020】
図1および図2に示すように、上記X軸ロボット3のスライダ9の上面には、上記Y軸ロボット4が、正面視略L字状のブラケット25を介して取り付けられている。すなわち、Y軸ロボット4は、上記スライダ9と一体にX軸方向に移動可能な状態でX軸ロボット3に支持されている。
【0021】
上記Y軸ロボット4は、図1〜図5に示すように、Y軸方向に延びるように設置されたフレーム26と、このフレーム26に沿ってスライド自在に支持されたスライダ29とを有している。上記フレーム26は、凹状の枠材からなるベース部材27およびこれを覆うカバー部材28を有しており、このうちのベース部材27が上記ブラケット25に対しボルト締結等の手段により固定されている。
【0022】
また、上記フレーム26の内部には、上記スライダ29をY軸方向に摺動自在に支持する一対のガイドレール31,31と、これら両ガイドレール31,31の間に並設されたボールねじ軸33と、このボールねじ軸33を軸回りに回転駆動する駆動源としてのサーボモータ35とが配設されている。
【0023】
上記スライダ29には、上記ボールねじ軸33に螺合される図外のナット部材が一体に取り付けられている。そして、上記ボールねじ軸33が上記サーボモータ35により正方向または逆方向に回転駆動されるのに応じて、上記スライダ29が、上記ナット部材とともにガイドレール31に沿って+Y方向または−Y方向に移動するように構成されている。
【0024】
図1〜図3に示すように、上記Y軸ロボット4のスライダ29には、上記Z軸ロボット5がボルト締結等の手段により固定されている。すなわち、Z軸ロボット5は、上記スライダ29と一体にY軸方向に移動可能な状態でY軸ロボット4に支持されている。
【0025】
上記Z軸ロボット5は、図1〜図5に示すように、上記Y軸ロボット4の場合と同様の構成要素として、フレーム36、スライダ43、ガイドレール44、ボールねじ軸45、およびサーボモータ47を有している。上記フレーム36は、ベース部材37およびカバー部材38を備えた下部フレーム39と、この下部フレーム39の上端に取り付けられるフレームであってベース部材40およびカバー部材41を備えた上部フレーム42とを有している。
【0026】
上記スライダ43には、上記ボールねじ軸45に螺合されるナット部材46が一体に取り付けられている。そして、上記ボールねじ軸45が上記サーボモータ47により正方向または逆方向に回転駆動されるのに応じて、上記スライダ43が、上記ナット部材46とともにガイドレール44に沿って+Z方向または−Z方向に移動するように構成されている。
【0027】
上記Z軸ロボット5のスライダ43には、例えば部品移載用の吸着ノズル機構等からなる作業ユニット10(仮想線で示す)が取り付けられている。この作業ユニット10は、Y軸ロボット4(およびこれに取り付けられたZ軸ロボット5)がX軸ロボット3によってX軸方向に駆動されるとともに、Z軸ロボット5がY軸ロボット4によってY軸方向に駆動され、されにはZ軸ロボット5のスライダ43がZ軸方向に駆動されることにより、X,Y,Z軸の各方向に移動するように構成されている。
【0028】
以上のように構成された直交型ロボット1は、図1に示されるコントローラ2によりその動作が制御される。これにより、直交型ロボット1に取り付けられた上記作業ユニット10のX,Y,Z空間上での移動動作が制御される。一方、上記作業ユニット10が行う独自の動作(例えば部品吸着動作)は、上記コントローラ2とは別の作業ユニット用コントローラ81によって制御される。
【0029】
上記直交型ロボット1の各単軸ロボット3〜4と上記コントローラ2とは、各種ケーブル(50等)を介して電気的に接続されており、このケーブルを通じて上記各単軸ロボット3〜4に対し電力の供給や制御信号の送受信が行われるようになっている。また、上記作業ユニット10と作業ユニット用コントローラ81とは、上記ケーブルとは別の作業ユニット用ケーブル79により電気的に接続されている。
【0030】
図1、図3、および図6に示すように、上記X軸ロボット3のフレーム6の一側部、つまり、直交型ロボット1の前方側(−Y側)にあたるフレーム6の幅方向一側の側壁面部には、ボックス状の部材からなる中継ボックス49が取付ステー48を介して取り付けられている。上記直交型ロボット1に用いられるケーブルは、この中継ボックス49で中継されて上記各単軸ロボット3〜5へと配索されるようになっている。
【0031】
図8は、上記直交型ロボット1(および作業ユニット10)の制御系を示すブロック図である。この図8および先の図1〜図6に示すように、上記直交型ロボット1に用いられるケーブルは、上記コントローラ2から中継ボックス49を介して各Y軸ロボット4,4の内部へと延びるメインケーブル50と、このメインケーブル50の一部と上記X軸ロボット3の中空モータ17とを接続するX軸モータケーブル51と、上記メインケーブル50の一部と上記Y軸ロボット4のサーボモータ35とを接続するY軸モータケーブル52と、上記Z軸ロボット5のサーボモータ47から延びるZ軸モータケーブル53と、このZ軸モータケーブル53と上記メインケーブル50の一部とを接続する中継ケーブル54とから構成されている。そして、これら各ケーブル50〜54を介して上記コントローラ2と各単軸ロボット3〜5用のモータ(中空モータ17およびサーボモータ35,47)が電気的に接続され、これらの間で各種制御信号の送受信や電力の供給が行われることにより、上記各単軸ロボット3〜5の動作がそれぞれ個別に制御されるようになっている。
【0032】
なお、図例では、電力供給用のケーブルと制御信号を送受信するためのケーブルとが別々に構成されている。上記各モータ17,35,47用のケーブル51,52,53や中継ケーブル54がそれぞれ2本存在するのはこのためである。また、上記メインケーブル50については、これら各ケーブルの本数に対応して設けられるが、X軸モータケーブル51およびY軸モータケーブル52に対しては共用のケーブルが用いられている。
【0033】
上記メインケーブル50は、上記コントローラ2と中継ボックス49との間に配索される第1のケーブル55と、上記中継ボックス49と各Y軸ロボット4,4との間に配索される第2のケーブル56とを有しており、これら第1および第2のケーブル55,56どうしが、上記中継ボックス49の内部でコネクタ62を介して互いに接続されるようになっている。
【0034】
上記中継ボックス49は、その下面の高さが上記X軸ロボット3のフレーム6の底面(つまりフレーム6が設置される床面)よりも所定距離だけ上方に位置するように設置されている。当該中継ボックス49の下面には、上記第1のケーブル55を内部に導入するためのケーブル導入部59が設けられている。このケーブル導入部59には、上記第1のケーブル55が挿通される挿通孔が設けられ、この挿通孔を通じて上記第1のケーブル55が上記中継ボックス49の内部に導入されるようになっている。
【0035】
また、上記中継ボックス49の左右両側面、つまり中継ボックス49の+X側および−X側の側壁面部には、その下端部に開口部61(図3,図6)が形成されており、この開口部61を通じて上記第2のケーブル56が中継ボックス49の内部から導出されるようになっている。
【0036】
図1〜図5に示すように、上記中継ボックス49が設置される側のX軸ロボット3の側方(−Y側の側方)には、上記中継ボックス49から各Y軸ロボット4,4へと延びる上記第2のケーブル56,56をそれぞれ保持するための一対のX軸用ケーブル保持部材63,63が、上記中継ボックス49をX軸方向の両側から挟むような状態で設置されている。なお、図2ではこのX軸用ケーブル保持部材63を2点鎖線で示している。
【0037】
上記X軸用ケーブル保持部材63は、例えば、矩形枠状の断面を有した多数の単位枠体が長手方向に互いに連結されて構成された長尺な中空状の部材からなり、上記各単位枠体どうしが互いの連結角度を変化させ得る状態で連結されることにより、長手方向に自在に屈曲するように構成されている。そして、上記中継ボックス49から延びる第2のケーブル56が、このようなケーブル保持部材63の内部に入口側フランジ63aを通じて導入され、反対側の出口側フランジ63bを通じて外部に導出されることにより、上記第2のケーブル56の軸方向中間部がこのケーブル保持部材63の内部に挿通されて保持されている。
【0038】
上記X軸用ケーブル保持部材63は、上記X軸ロボット3のフレーム6の側壁(−Y側の側壁)に取り付けられた取付ステー65の上面に入口側フランジ63aが固定されるとともに、上記X軸ロボット3のスライダ9の側壁に取り付けられかつ上記入口側フランジ63aの設置部よりも上方に配置された取付ステー67の上面に出口側フランジ63bが固定されることにより、上記フレーム6の側部において当該フレーム6の底面から所定距離だけ上方に離間した高さに位置する状態で設置されている。また、このようなX軸用ケーブル保持部材63は、上記スライダ9のX軸方向の移動に追従して変形することが可能である。すなわち、X軸用ケーブル保持部材63は、上記X軸ロボット3の静止時には、上記入口側および出口側フランジ63a,63bが上記各取付ステー65,67上の定位置に支持されることで一定の形状に保持されているが、上記スライダ9およびこれに固定された上記取付ステー67がX軸方向に移動すると、この移動に上記出口側フランジ63bを追従させるべく異なる形状に屈曲変形する。上記第2のケーブル56は、このようなX軸用ケーブル保持部材63の内部を通って上記中継ボックス49とY軸ロボット4との間を配索されることにより、上記X軸ロボット3の作動中において上記Y軸ロボット4(およびスライダ9)がX軸方向に往復動するような状況下でも、互いに絡まり合ったりするようなことなく安定した状態に保持される。
【0039】
上記ケーブル保持部材63の出口側フランジ63bから導出された上記第2のケーブル56は、図2〜図5に示すように、Y軸ロボット4の長手方向一端部(−Y側の端部)の下方へと配索されてフレーム26の内部に導入される。この第2のケーブル56が導入される部分のフレーム26の内部には、図5に示すように、所定の空間からなる結線部68が形成されており、上記第2のケーブル56は、フレーム26のベース部材27およびカバー部材28との隙間を通じて上記結線部68内に導入され、そこで他のケーブル(51,52,54)と接続される(特に図8参照)。なお、図2および図5では、上記各種ケーブルのうち、第2のメインケーブル56と中継ケーブル54との接続状態のみを示しており、他のケーブルの接続状態についてはその図示を省略している。また、図示された2本の中継ケーブル54およびこれに対応する第2のメインケーブル56は、1本が電力供給用でもう1本が制御用である。
【0040】
上記結線部68の近傍には上記Y軸ロボット4用のサーボモータ35が設置されており、このサーボモータ35から延びるY軸モータケーブル52(図8)が、結線部68に導入された上記第2のケーブル56の一部とコネクタ69を介して接続されるようになっている。また、上記結線部68には、さらに、X軸ロボット3用の中空モータ17から延びる上記X軸モータケーブル51、およびZ軸ロボット5側から延びる上記中継ケーブル54がそれぞれ導入されており、これら各ケーブル51,54が同様にコネクタ69を介して上記第2のケーブル56と接続されている。
【0041】
上記Y軸ロボット4のフレーム26の上部には、上記X軸用ケーブル保持部材63と同様の構造を有するY軸用ケーブル保持部材71が設置されており、上記中継ケーブル54の軸方向中間部がこのY軸用ケーブル保持部材71の内部に挿通されて保持されている。このY軸用ケーブル保持部材71は、上記Y軸ロボット4のフレーム26の上面部に入口側フランジ71aが固定されるとともに、上記Z軸ロボット5のフレーム36に取り付けられかつ上記入口側フランジ71aの設置部よりも上方に配置された取付ステー74の上面に出口側フランジ71bが固定されることにより、上記Z軸ロボット5のY軸方向の移動に追従するように変形可能な状態で上記Y軸ロボット4の上部に取り付けられている。
【0042】
上記Y軸用ケーブル保持部材71の内部を通るように配索される上記中継ケーブル54は、図1および図3〜図5に示すように、上記ケーブル保持部材71の出口側フランジ71bから外部に導出されてZ軸ロボット5の上端部側へと配索され、そこからフレーム36の上部フレーム42の内部に導入される。この中継ケーブル54が導入される部分の上部フレーム42の内部には、図5に示すように、所定の空間からなる結線部72が形成されており、上記中継ケーブル54は、上部フレーム42に設けられたケーブル導入部60(図1)を通じて上記結線部72内に導入される。そして、この結線部72において、上記中継ケーブル54と、Z軸ロボット5用のサーボモータ47から延びる上記Z軸モータケーブル53とが接続されるようになっている。具体的には、上記結線部72の近傍に上記サーボモータ47が設置され、このサーボモータ47から延びるZ軸モータケーブル53が、上記中継ケーブル54とコネクタ73を介して接続されている(図5および図8参照)。
【0043】
図4および図5に示すように、上記X軸用ケーブル保持部材63は、その内部が仕切部材75によって2つの空間に仕切られており、そのうちの一方の空間に、上記中継ボックス49からY軸ロボット4の結線部68へと延びる上記第2のケーブル56が配索されるとともに、もう一方の空間に、上記作業ユニット10に用いられる作業ユニット用ケーブル79が配索されるように構成されている。すなわち、上記X軸用ケーブル保持部材63の内部には、上記第2のケーブル56を通すための第1の配索空間83と、上記作業ユニット用ケーブル79を通すための第2の配索空間84とが形成されており、これら第1および第2の配索空間83,84が、上記仕切部材75を介して互いに仕切られている。なお、図4および図5では、X軸用ケーブル保持部材63の入口側および出口側フランジ63a,63bが仕切部材75によって仕切られた状態が示されているが、上記各フランジ63a,63bの間の本体部分についても同様に仕切部材75によって仕切られている(このことは、次のY軸用ケーブル保持部材71についても同じ)。
【0044】
同様に、上記Y軸用ケーブル保持部材71は、図1および図2に示すように、その内部が仕切部材76によって2つの空間に仕切られており、そのうちの一方の空間に、上記Y軸ロボット4の結線部68から上記Z軸ロボット5の結線部72へと延びる中継ケーブル54が配索されるとともに、もう一方の空間に、上記作業ユニット用ケーブル79が配索されるように構成されている。すなわち、上記Y軸用ケーブル保持部材71の内部には、上記中継ケーブル54を通すための第1の配索空間85と、上記作業ユニット用ケーブル79を通すための第2の配索空間86とが形成されており、これら第1および第2の配索空間85,86が、上記仕切部材76を介して互いに仕切られている。
【0045】
このように、上記各ケーブル保持部材63,71の内部には、直交型ロボット1用の各種ケーブル(54および56)と、上記作業ユニット10に用いられる作業ユニット用ケーブル79とが、上記仕切部材75,76で仕切られた異なる空間(83,84等)に別々に配索されるようになっている。なお、このうち作業ユニット用ケーブル79は、上記のように各ケーブル保持部材63,71の内部を通るように配索された後、さらに、Z軸ロボット5に取り付けられる図略のZ軸用ケーブル保持部材の内部を通るように配索され、そこから外部に導出されて最終的に上記作業ユニット10用のモータ等に接続されることになる。
【0046】
上記のようにX,Y,Z軸の各方向に移動可能なスライダ9,29,43をそれぞれ有した各単軸ロボット3〜5を備えるとともに、このうちのZ軸ロボット5のスライダ43に、部品の移載動作等の所定の作業を行うための作業ユニット10が取り付けられるように構成された直交型ロボット1において、上記各単軸ロボット3〜5用のモータ17,35,47と、これを制御するためのコントローラ2とを、屈曲自在なケーブル保持部材63,71の内部を通るように配索されるケーブル54,56を含んだ各種ケーブルを介して電気的に接続するとともに、上記ケーブル保持部材63,71の内部に、仕切部材75,76によって仕切られた2つの空間、つまり、上記ケーブル54,56を通すための第1の配索空間83,85と、上記作業ユニット10に接続される作業ユニット用ケーブル79を通すための第2の配索空間84,86とを形成するようにした上記実施形態の構成によれば、ロボットが使用される製造現場等においてユーザの手により行われるのが一般的な上記作業ユニット用ケーブル79の配線作業をより容易化できるという利点がある。
【0047】
すなわち、上記実施形態によれば、ケーブル類を保持するためのケーブル保持部材63,71の内部に、仕切部材75,76によって仕切られた2つの空間を設けたことにより、このうちの一方の空間(第1の配索空間83,85)に、直交型ロボット1用のケーブル54,56を配索した上で、当該空間と仕切られたもう一方の空間(第2の配索空間84,86)に、上記作業ユニット用ケーブル79を配索することができるため、上記作業ユニット10に対する配線作業としてユーザが上記作業ユニット用ケーブル79をケーブル保持部材63,71の内部に配索しようとしたときに、その第1の配索空間83,85に上記ケーブル54,56が既に存在している状態であっても、ユーザは、他にケーブルが存在しないもう一方の第2の配索空間84,86に、上記作業ユニット用ケーブル79を容易に配索することができる。
【0048】
具体的に、ケーブル保持部材63,71が上記のように2つの空間に仕切られていない場合には、ユーザがこのケーブル保持部材63,71の内部に上記作業ユニット用ケーブル79を配索しようとしたときに、この作業ユニット用ケーブル79が、直交型ロボット1の出荷時等において既にケーブル保持部材63,71の内部に配索されている上記ケーブル54,56に絡まり合ったりすることに起因して、当該作業ユニットケーブル79の配線作業に支障が生じるおそれがある。これに対し、上記実施形態のようにケーブル保持部材63,71の内部が2つの空間に仕切られていれば、このような事態が生じるおそれがなく、上記作業ユニット用ケーブル79の配線作業をより容易に行うことができる。
【0049】
また、上記実施形態では、直交型ロボット1用の各種ケーブルのうち、コントローラ2側から延びる第1のケーブル55と、Y軸ロボット4の結線部68から延びて上記X軸用ケーブル保持部材63の内部に配索される第2のケーブル56とが、中継ボックス49の内部で互いに接続されるように構成されているため、大幅な配線変更を伴うことなく上記コントローラ2の設置場所を自由に設定できるという利点がある。
【0050】
すなわち、上記中継ボックス49が存在せず、上記第1および第2のケーブル55,56が一連の長尺なケーブルによって構成されている場合には、上記コントローラ2の設置場所を大きく変更したいという要求があったときに、これに伴って上記一連のケーブル全体を交換する必要があり、しかも再配線時には当該ケーブルを上記X軸用ケーブル保持部材63の内部に再び通す必要がある。これに対し、上記実施形態のように中継ボックス49が設けられていれば、上記のようにコントローラ2の設置場所を大きく変更する場合においても、この中継ボックス49とコントローラ2との間に配索される上記第1のケーブル55のみを交換すればよく(つまり、もう一方の第2のケーブル56は交換しなくても済み)、上記のようなコントローラ2の設置場所の変更を比較的容易に行うことができる。
【0051】
なお、上記実施形態では、X軸用ケーブル保持部材63およびY軸用ケーブル保持部材71の両方に、上記仕切部材75,76をそれぞれ設けたが、各種ケーブル(54,55,56等)の配索経路上においてコントローラ2側により近いX軸用ケーブル保持部材63にのみ上記仕切部材75を設け、Y軸用ケーブル保持部材71に設けられる上記仕切部材76は省略してもよい。いずれにせよ、上記実施形態のような3軸直交型ロボットでは、少なくともX軸用ケーブル保持部材63に上記仕切部材75を設けることが好ましい。
【0052】
すなわち、ケーブルの配索経路上でコントローラ2側に最も近い上記X軸用ケーブル保持部材63の内部には、Y軸用ケーブル保持部材71に比べてより多数のケーブル(図例では4本のケーブル56)が配索されるため、上記作業ユニット用ケーブル79をこのX軸用ケーブル保持部材63の内部に配索しようとしたときに、この作業ユニット用ケーブル79が上記ケーブル56と絡まり合ったりする可能性が相対的に高くなる。そこで、上記X軸用ケーブル保持部材63の内部に少なくとも上記仕切部材75を設けることにより、上記作業ユニット用ケーブル79を内部に配索する作業が本来最も行いにくいX軸用ケーブル保持部材63について少なくともその作業性を向上させることができるため、上記作業ユニット10に対する配線作業を効率的に容易化することができる。
【0053】
また、上記実施形態では、上記各ケーブル保持部材63,71の内部空間を、水平方向に延びる仕切部材75,76によって上下に仕切るようにしたが、上記仕切部材75,76を上下方向に設置することにより、上記各ケーブル保持部材63,71の内部空間を左右に仕切るようにしてもよい。
【0054】
また、上記実施形態では、本発明にかかるロボットの一例として、X,Y,Z軸の各方向に直線的に移動可能な各単軸ロボット3〜5が組み合わされた3軸直交型ロボット1について説明を行ったが、本発明のロボットは、このような3軸直交型ロボット1に限らず、例えば、X,Y軸の2種類の単軸ロボットが組み合わされた2軸直交型ロボットであってもよい。また、本発明のロボットは、上記実施形態の直交型ロボット1のようないわゆるダブルキャリアタイプのロボットに限らず、X軸ロボット3に対し単一のY軸ロボット4が取り付けられたいわゆるシングルキャリアタイプのロボットであってもよい。
【0055】
またさらに、本発明は、上記のような直交型ロボットに限らず、単軸ロボットのみからなる直動型ロボットにも適用することができる。ただし、本発明の構成は、単軸ロボットが複数組み合わされた直交型ロボット、特に、上記実施形態のように、X軸方向に独立して移動可能な2つのスライダ9,9を有した単一のX軸ロボット3と、このX軸ロボット3の各スライダ9,9に取り付けられた2つのY軸ロボット4,4とを備えたいわゆるダブルキャリアタイプの直交型ロボット1に対しより好適に適用することができる。すなわち、このような直交型ロボット1では、2つのX軸用ケーブル保持部材63,63、および2つのY軸用ケーブル保持部材71,71という多数のケーブル保持部材を設ける必要があるため、これらのケーブル保持部材の内部構造に工夫を加えることでユーザの配線作業の負担を軽減するようにした本発明の構成は、上記のような直交型ロボット1に対して特に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の一実施形態にかかるロボットの正面図である。
【図2】図1の一部拡大断面図である。
【図3】上記ロボットの上面図である。
【図4】上記ロボットの側面断面図である。
【図5】図4においてY軸およびZ軸ロボットのカバー部材を取り外した状態を示す図である。
【図6】X軸ロボットおよび中継ボックスを拡大して示す側面断面図である。
【図7】X軸ロボットの構造を模式的に示す図である。
【図8】上記ロボットの制御系を示すブロック図である。
【図9】従来のロボットの概略構成を説明するための正面図である。
【図10】従来のロボットの概略構成を説明するための上面図である。
【符号の説明】
【0057】
1 直交型ロボット(ロボット)
2 コントローラ
3 X軸ロボット(単軸ロボット)
4 Y軸ロボット(単軸ロボット)
5 Z軸ロボット(単軸ロボット)
6,26,36 フレーム
9,29,43 スライダ
17 中空モータ(駆動源)
35,47 サーボモータ(駆動源)
49 中継ボックス
50 メインケーブル(ケーブル)
55 第1のケーブル
56 第2のケーブル
63 X軸用ケーブル保持部材(ケーブル保持部材)
71 Y軸用ケーブル保持部材(ケーブル保持部材)
75,76 仕切部材
83,85 第1の配索空間
84,86 第2の配索空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定方向に延びるフレームに沿ってスライド自在に支持されたスライダと、このスライダを駆動する駆動源と、この駆動源の動作を制御するコントローラとを備え、所定の作業を行うための作業ユニットが上記スライダに取り付けられるように構成されたロボットであって、
上記駆動源とコントローラとが、屈曲自在なケーブル保持部材の内部を通るように配索されるケーブルを介して電気的に接続されており、
上記ケーブル保持部材の内部には、上記ケーブルを通すための第1の配索空間と、上記作業ユニットに接続される作業ユニット用ケーブルを通すための第2の配索空間とが形成され、これら第1および第2の配索空間が、仕切部材を介して互いに仕切られていることを特徴とするロボット。
【請求項2】
請求項1記載のロボットにおいて、
上記ロボットが、一方向に直線的に移動可能な単軸ロボットが互いに直交する状態で複数組み合わされた直交型ロボットであることを特徴とするロボット。
【請求項3】
請求項2記載のロボットにおいて、
上記ロボットが、X軸方向に独立して移動可能な複数のスライダを有した単一のX軸ロボットと、このX軸ロボットの各スライダに取り付けられる複数のY軸ロボットとを備えた直交型ロボットであり、上記複数のY軸ロボットのスライダ、もしくは、当該スライダに取り付けられるZ軸ロボットのスライダに、上記作業ユニットが取り付けられるように構成されたことを特徴とするロボット。
【請求項4】
請求項2または3記載のロボットにおいて、
上記ケーブル保持部材が複数設けられ、この複数のケーブル保持部材のうち、上記ケーブルの配索経路上において少なくともコントローラ側に最も近いケーブル保持部材に、上記仕切部材が設けられたことを特徴とするロボット。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のロボットにおいて、
上記ケーブルが、上記コントローラ側から延びる第1のケーブルと、上記駆動源側から延びて上記ケーブル保持部材の内部に配索される第2のケーブルとを有し、これら第1および第2のケーブルが中継ボックスの内部で互いに接続されるように構成されたことを特徴とするロボット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−229814(P2008−229814A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−76453(P2007−76453)
【出願日】平成19年3月23日(2007.3.23)
【出願人】(000010076)ヤマハ発動機株式会社 (3,045)
【Fターム(参考)】