説明

ロータおよびモータ

【課題】磁性板の積層枚数を増やした場合でも、圧入時の応力が過度に大きくなることを防止することのできるロータ、および当該ロータを備えたモータを提供すること。
【解決手段】モータのロータ5において、コア2(積層コア)に用いた磁性板20には、回転軸51の外周面が貫通穴280の内周面に接して圧入に寄与する第1磁性板21と、かかる圧入に寄与しない第2磁性板22とが含まれている。このため、磁性板20の積層枚数を増やした場合でも、回転軸51をコア2に圧入する際の応力が過度に大きくなることを防止することができる。第2磁性板22は、周方向の一部分で貫通穴280の内周面から径方向外側に向けて凹んだ凹部281を備えた凹部付き第2磁性板22aであり、コミュテータ7は、モータ軸線方向Lの他方側L2に突出して凹部281に嵌った突部711を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータや発電機に用いられるロータ、および当該ロータを備えたモータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
モータや発電機に用いられるロータは、回転軸と、回転軸が嵌る軸穴を備えたコアと、コアに巻回されたコイルとを有している。かかるロータにおいて、コアとして積層コアを用いる場合、回転軸が圧入される貫通穴が形成された複数枚の磁性板を積層することによって積層コアが構成される(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−22619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の構成において、磁性板の積層枚数を増やした場合、圧入時の応力が強すぎてシャフトが曲がってしまい、シャフトの振れが大きくなるという問題点がある。すなわち、磁性板の積層枚数が増えると、軸穴の内径寸法の管理が難しく、軸穴の内径が小さくなりやすいので、圧入時の応力が強すぎてシャフトが曲がってしまうという問題が発生しやすくなる。
【0005】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、磁性板の積層枚数を増やした場合でも、圧入時の応力が過度に大きくなることを防止することのできるロータ、および当該ロータを備えたモータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、回転軸と、該回転軸が嵌る軸穴を備えたコアと、該コアに巻回されたコイルと、を有するロータにおいて、前記コアは、前記軸穴を構成する貫通穴が形成された複数枚の磁性板が積層された積層コアであって、当該複数枚の磁性板には、前記回転軸の外周面が前記貫通穴の内周面に接する第1磁性板と、前記回転軸の外周面と前記貫通穴の内周面との間に隙間を有する第2磁性板と、が含まれていることを特徴とする。
【0007】
本発明に係るロータにおいて、積層コアに用いた磁性板には、回転軸の外周面が貫通穴の内周面に接して圧入に寄与する第1磁性板と、かかる圧入に寄与しない第2磁性板とが含まれているため、磁性板の積層枚数を増やした場合でも、回転軸を積層コアに圧入する際の応力が過度に大きくなることを防止することができる。それ故、圧入時に回転軸が曲がることを防止することができる。
【0008】
本発明において、前記積層コアは、モータ軸線方向の中央側に前記第1磁性板を備え、前記第1磁性板のモータ軸線方向における両側に前記第2磁性板を備えていることが好ましい。かかる構成によれば、積層コアは、モータ軸線方向の中央側で回転軸に固定されているので、積層コアは、回転軸に安定した状態で固定することができる。
【0009】
本発明において、前記第2磁性板は、前記第1磁性板のモータ軸線方向における一方側に位置する枚数と、前記第1磁性板のモータ軸線方向における他方側に位置する枚数とが同一であることが好ましい。かかる構成によれば、積層コアにはモータ軸線方向で方向性がないので、いずれの向きに用いてもよいという利点がある。
【0010】
本発明に係るロータは、例えば、ブラシ付きのモータに用いられる。かかるブラシ付きのモータは、前記コアに対してモータ軸線方向の一方側で前記回転軸に固定されたコミュテータと、前記コミュテータに接するブラシと、を有しており、前記積層コアは、モータ軸線方向の一方側に、前記第2磁性板として、周方向の一部分で前記貫通穴の内周面から径方向外側に向けて凹んだ凹部を備えた凹部付き第2磁性板を備え、前記コミュテータは、モータ軸線方向の他方側に突出して前記凹部に嵌った突部を備えていることが好ましい。かかる構成によれば、凹部と突部との嵌め合いによってコミュテータの回転軸に対する空回りを防止することができるので、回転軸とコミュテータとの接着固定等を行わなくて済むという利点がある。
【0011】
本発明において、前記突部の先端部は、前記凹部内で前記積層コアと軸線方向で離間していることが好ましい。かかる構成によれば、積層コアや突部にモータ軸線方向の寸法ばらつきがあっても、コミュテータを適正な位置に配置することができる。
【0012】
本発明において、前記積層コアは、モータ軸線方向の他方側にも、前記凹部付き第2磁性板をモータ軸線方向の一方側と同数備えていることが好ましい。かかる構成によれば、積層コアにはモータ軸線方向で方向性がないので、いずれの向きに用いてもよいという利点がある。
【0013】
本発明において、前記積層コアは、前記凹部付き第2磁性板以外の全ての前記第2磁性板では、前記凹部が形成されず前記隙間の幅が周方向で略一定であることが好ましい。かかる構成によれば、凹部付き第2磁性板以外の第2磁性板は、凹部が形成されていない分、磁気路が広く磁気飽和しにくいという利点がある。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るロータにおいて、積層コアに用いた磁性板には、回転軸の外周面が貫通穴の内周面に接して圧入に寄与する第1磁性板と、かかる圧入に寄与しない第2磁性板とが含まれているため、磁性板の積層枚数を増やした場合でも、回転軸を積層コアに圧入する際の応力が過度に大きくなることを防止することができる。それ故、圧入時に回転軸が曲がることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態1に係るブラシ付きのモータの全体構成を示す説明図である。
【図2】図1に示すモータに用いたロータの説明図である。
【図3】図1に示すモータに用いたコアの説明図である。
【図4】図1に示すモータに用いたコミュテータの説明図である。
【図5】本発明の実施の形態2に係るモータに用いたコアの断面図である。
【図6】本発明の他の実施の形態のモータに用いたコアを反出力側からみたときの底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の説明において、モータ軸線方向Lのうち、回転軸の基端側が位置する側を一方側L1(反出力側/下方側)とし、回転軸の先端側が位置する側を他方側L2(出力側/上方側)とする。
【0017】
[実施の形態1]
(ブラシ付きモータの全体構成)
図1は、本発明の実施の形態1に係るブラシ付きのモータの全体構成を示す説明図であり、図1(a)、(b)、(c)は、モータを出力側からみたときの平面図、断面図、およびモータを反出力側からみたときの底面図である。
【0018】
図1に示すブラシ付きモータ1は、カップ状のモータケース3の上端面31から回転軸51の出力端側が突出している。モータケース3の内部には、回転軸51のモータ軸線方向Lの略中央部分にコア2が圧入により固定されている。コア2の外周側には複数の突極29が等角度間隔に形成されているとともに、複数の突極29の各々にはコイル53が巻回されて電機子50が構成されている。本形態において、コア2には絶縁塗装が施されているので、コア2にインシュレータを取り付けずに、コイル53が直接巻回されている。このようにして、電機子50および回転軸51は、一体に回転可能なロータ5を構成している。
【0019】
モータケース3において、円筒状胴部32の内周面には、複数の極に着磁された永久磁石6が固着され、永久磁石6はコア2の外周面に所定の隙間を介して対峙している。モータケース3のモータ軸線方向Lの一方側L1に位置する開口端には、ポリアミド製等のブラシホルダ4が取り付けられている。本形態において、モータケース3は、モータ軸線方向Lからみたとき、円弧部分と、円弧部分の間を繋ぐ直線部分とからなる小判形状を有しており、かかる形状に対応して、ブラシホルダ4も、モータ軸線方向Lからみたとき、円弧部分と、円弧部分の間を繋ぐ直線部分とからなる小判形状を有している。
【0020】
回転軸51は、モータ軸線方向Lの他方側L2がモータケース3の上端面31に保持されたラジアル軸受91によって回転可能に支持されており、回転軸51においてラジアル軸受91によって支持されている部分と、コア2が固着されている部分との間には、スリーブからなる円筒状の筒部80が設けられている。
【0021】
筒部80のモータ軸線方向Lの一方側L1の端部81は、コア2に当接している。これに対して、筒部80のモータ軸線方向Lの他方側L2の端部82は、径方向外側に広がる鍔部83になっており、かかる鍔部83は、ラジアル軸受91に対してモータ軸線方向Lの一方側L1で所定の隙間を介して対向している。
【0022】
ここで、鍔部83は、後述するように、筒部80のラジアル軸受91側の端部82を塑性変形させることにより形成されている。より具体的には、筒部80は、ポリアセタール樹脂等の熱可塑性樹脂からなるスリーブであり、鍔部83は、筒部80のラジアル軸受91側の端部82を熱溶融させることにより形成されている。
【0023】
回転軸51のモータ軸線方向Lの一方側L1は、ブラシホルダ4に形成された有底円筒部42の底面によりスラスト方向に支持されているとともに、有底円筒部42の内部に保持されたラジアル軸受96によって回転可能に支持されている。
【0024】
回転軸51において、コア2よりモータ軸線方向Lの一方側L1に位置する部分には、回転軸51と一体に回転するコミュテータ7が構成され、このコミュテータ7と隣接する位置にはワッシャ75およびバリスタ77が配置されている。コミュテータ7は、回転軸51に固定された樹脂製のスリーブ71と、このスリーブ71の外周面において等角度間隔に保持されたセグメント72とを備えており、スリーブ71をモータ軸線方向Lで貫通する穴710内に回転軸51が通されている。
【0025】
コミュテータ7の外周面に対しては、2本のブラシ9の先端側が各々、弾性をもって接しており、これらのブラシ9の基端側は各々、ブラシホルダ4に保持されている。ここで、ブラシ9は、先端側が櫛歯状に3分割されている。ブラシ9は金属板から構成され、コミュテータ7の外周面に当接する先端側は、摺動部として、貴金属とのクラッド材で形成されている。
【0026】
ブラシホルダ4は、モータケース3の開放端に重なるフランジ部41と、このフランジ部41の内側でターミナル99が固着された厚肉部43と、コミュテータ7の周りにブラシ9を配置可能な空間を構成する平面形状が略矩形の凹部44とが形成されており、この凹部44の中央位置にラジアル軸受96を保持する有底円筒部42が形成されている。
【0027】
このように構成したブラシホルダ4に対して、ブラシ9の基端側は、ブラシホルダ4のスリット内に固定されており、スリットの内部では、ブラシ9の基端側とターミナル99とが直接、あるいは基板やリード線等といった配線部材を介して電気的に接続されている。
【0028】
(コア2の構成)
図2は、図1に示すモータ1に用いたロータ5の説明図であり、図2(a)、(b)は、ロータ5の断面図、およびロータ5に設けた筒部80の説明図である。図3は、図1に示すモータ1に用いたコア2の説明図であり、図3(a)、(b)、(c)、(d)は、コア2を出力側からみたときの平面図、断面図、コア2を反出力側からみたときの底面図、およびコアの拡大断面図である。
【0029】
図1に示すモータ1およびロータ5において、コア2は、図2および図3に示すように、回転軸51が嵌る軸穴28を有する積層コアであって、コア2では、軸穴28を構成する貫通穴280が形成された複数枚の磁性板20が積層されている。複数枚の磁性板20はいずれも、貫通穴280が中央に形成された円板部25と、円板部25の外周部分から外側に突出して突極29を構成する腕部290を3つ有しており、3つの腕部290の先端部では、周方向の両側に向けて延在する円弧部291を備えている。磁性板20において、3つの腕部290にはモータ軸線方向Lの一方側L1に向けて突出したボス293が形成され、その結果、モータ軸線方向Lの他方側L2には凹部294が形成されている。また、磁性板20のボス293は、モータ軸線方向Lの一方側L1に位置する磁性板20の凹部294に嵌るように加締めされ、複数枚の磁性板20は全てが一体化し、コア2を構成している。
【0030】
このような構成のコア2を回転軸51に固定するにあたって、本形態では、軸穴28に対して回転軸51を圧入した構造が採用されている。また、本形態では、以下に説明するように、複数枚の磁性板20のうち、一部の磁性板20は回転軸51の圧入固定に寄与し、他の磁性板20は回転軸51の圧入固定に寄与していない。
【0031】
すなわち、複数枚の磁性板20には、全周にわたって回転軸51の外周面が貫通穴280の内周面に接してコア2の回転軸51への圧入固定に寄与する第1磁性板21と、回転軸51の外周面と貫通穴280の内周面との間に隙間Gを有する第2磁性板22とが含まれている。
【0032】
より具体的には、回転軸51は丸棒状であり、複数枚の磁性板20のうち、第1磁性板21に形成されている貫通穴280は、回転軸51の外径寸法と略同等の内径寸法を有する円形である。このため、コア2の軸穴28に回転軸51を挿入した際、回転軸51は、第1磁性板21に形成されている貫通穴280に圧入され、全周にわたって回転軸51の外周面が貫通穴280の内周面に接する。その結果、回転軸51は、第1磁性板21に圧入固定される。
【0033】
これに対して、第2磁性板22に形成されている貫通穴280は、回転軸51の外径寸法より大きい。このため、コア2の軸穴28に回転軸51を挿入した際、回転軸51は、第1磁性板21に形成されている貫通穴280には緩く挿入されるため、全周にわたって回転軸51の外周面と貫通穴280の内周面との間には隙間Gが介在することになる。
【0034】
ここで、コア2は、モータ軸線方向Lの中央側に第1磁性板21を備え、第1磁性板21のモータ軸線方向Lにおける両側に第2磁性板22を備えている。また、第2磁性板22は、第1磁性板21のモータ軸線方向Lにおける一方側L1に位置する枚数と、第1磁性板21のモータ軸線方向Lにおける他方側L2に位置する枚数とが同一である。より具体的には、本形態において、磁性板20の数は計9枚であり、5枚の第1磁性板21の両側に第2磁性板22が2枚ずつ配置されている。
【0035】
また、本形態において、第2磁性板22はいずれも、周方向の一部分で円形の貫通穴280の内周面から径方向外側に向けて凹んだ凹部281を備えた凹部付き第2磁性板22aとして構成されている。本形態において、凹部281は、貫通穴280の周りに等角度間隔に3つ、半円形状に形成されている。従って、回転軸51の外周面と第2磁性板22(凹部付き第2磁性板22a)の貫通穴280の内周面との間に形成された隙間Gにおいて、凹部281が形成されている部分は幅寸法が広い空間G0になっている。
【0036】
(コミュテータ7の構成)
図4は、図1に示すモータ1に用いたコミュテータ7の説明図であり、図4(a)、(b)、(c)は、コミュテータ7を出力側からみたときの平面図、断面図、およびコミュテータ7を反出力側からみたときの底面図である。
【0037】
図4に示すように、本形態のモータ1において、コミュテータ7には、スリーブ71のモータ軸線方向Lの他方側L2の端部712には、周方向に等角度間隔に断面半円形状の3つの突部711が形成されている。3つ突部711は各々、スリーブ71の肉厚と同一の厚さをもってスリーブ71の内周および外周から連続してモータ軸線方向Lの他方側L2に向けて突出している。かかる突部711は、図2に示すようにロータ5を構成した際、コア2と係合して、回転軸51およびコア2に対するコミュテータ7の空回りを防止する。
【0038】
より具体的には、コミュテータ7において、3つの突部711は各々、回転軸51の外周面と第2磁性板22(凹部付き第2磁性板22a)の貫通穴280の内周面との間に形成された隙間Gのうち、凹部281により形成された空間G0とモータ軸線方向Lで重なる位置に形成されている。従って、回転軸51にコア2を取り付けた後、スリーブ71の穴710内に回転軸51を圧入すると、コミュテータ7の3つの突部711は各々、回転軸51とコア2との間に形成された3つの空間G0の各々に嵌る。従って、コミュテータ7については、回転軸51やコア2と接着剤によって固定しなくても空回りすることがない。
【0039】
ここで、空間G0のモータ軸線L方向の寸法は、2枚の第2磁性板22(凹部付き第2磁性板22a)の厚さ分であるのに対して、突部711の突出寸法は、1枚の第2磁性板22(凹部付き第2磁性板22a)の厚さ分である。このため、スリーブ71のモータ軸線方向Lの他方側L2の端部712がコア2に当接するまで、スリーブ71の穴710内に回転軸51を圧入しても、突部711の先端部711aは、凹部281内でコア2とモータ軸線方向Lで離間している。このため、第1磁性板21および第2磁性板22に用いた磁性板の厚さばらつき等が原因でコア2にモータ軸線方向Lの寸法ばらつきがあっても、コミュテータ7を適正な位置に配置することができる。
【0040】
(モータ1の製造方法)
本形態のモータ1を製造するにあたっては、まず、回転軸51にコア2を圧入固定する。次に、コミュテータ7のスリーブ71の穴710内に回転軸51を圧入すると、コミュテータ7の3つの突部711は各々、回転軸51とコア2との間に形成された3つの空間G0の各々に嵌る。次に、コア2にコイル53を巻回した後、コイル53の端部をセグメント72の端部に接続する。また、バリスタ77をハンダ付けする。次に、コミュテータ7を研磨し、セグメント72の外周面をスリーブ71の外周面に揃える。
【0041】
次に、回転軸51のモータ軸線方向Lの他方側L2にスリーブからなる筒部80を装着し、筒部80のモータ軸線方向Lの一方側L1の端部81をコア2に当接させる。この時点では、図2(a)に示すように、筒部80は、長さ方向の全体が同一の外径寸法を有している。なお、筒部80を装着した後、コイル52の巻回を行ってもよい。
【0042】
この状態で、回転軸51のラジアル軸受91側とは反対側の端部(モータ軸線方向Lの一方側L1の端部)から筒部80のラジアル軸受91側の端部82(モータ軸線方向Lの他方側L2の端部82)までの寸法を測定する。
【0043】
かかる測定結果において、寸法が長い場合、図1(b)および図2(b)に示すように、筒部80の端部82を塑性変形させて、筒部80のラジアル軸受91側の端部82を鍔部83とする。本形態において、筒部80は、ポリアセタール樹脂等の熱可塑性樹脂からなるスリーブであるので、筒部80のラジアル軸受91側の端部82を熱溶融させて鍔部83とする。その結果、筒部80のモータ軸線方向Lの寸法が短くなるので、回転軸51のラジアル軸受91側とは反対側の端部(モータ軸線方向Lの一方側L1の端部)から筒部80のラジアル軸受91側の端部82(モータ軸線方向Lの他方側L2の端部82)までの寸法を調整することができる。従って、図1に示すようにモータ1を組み立てた際、筒部80は、ラジアル軸受91側に当接することにより、ロータ5のラジアル軸受91側への可動範囲を規定する。それ故、ロータ5のモータ軸線方向Lにおけるガタつきを小さく抑えることができる。また、筒部80のラジアル軸受91側の端部82(鍔部83)は、コイル53よりもモータ軸線方向Lの他方側L2に位置する。従って、ロータ5がモータ軸線方向Lの他方側L2に変位しても、コイル53がラジアル軸受91に当接することがないので、コイル53の損傷を防止することができる。
【0044】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態のロータ5およびモータ1において、コア2(積層コア)に用いた磁性板20には、回転軸51の外周面が貫通穴280の内周面に接して圧入に寄与する第1磁性板21と、かかる圧入に寄与しない第2磁性板22とが含まれている。このため、磁性板20の積層枚数を増やした場合でも、回転軸51をコア2に圧入する際の応力が過度に大きくなることを防止することができる。それ故、圧入時に回転軸51が曲がることを防止することができるので、ロータ5が回転した際の回転軸51の振れを防止することができる。
【0045】
また、コア2は、モータ軸線方向Lの中央側に第1磁性板21を備え、第1磁性板21のモータ軸線方向Lにおける両側に第2磁性板22を備えている。このため、コア2は、モータ軸線方向Lの中央側で回転軸51に固定されているので、コア2を回転軸51に安定した状態で固定することができ、ロータ5が回転した際の回転軸51の振れを防止することができる。
【0046】
また、第2磁性板22は、第1磁性板21のモータ軸線方向Lにおける一方側L1に位置する枚数と、第1磁性板21のモータ軸線方向Lにおける他方側L2に位置する枚数とが同一である。このため、コア2にはモータ軸線方向Lで方向性がないので、いずれの向きに用いてもよいという利点がある。
【0047】
また、コア2は、モータ軸線方向Lの一方側L1に、第2磁性板22として、周方向の一部分で貫通穴280の内周面から径方向外側に向けて凹んだ凹部281を備えた凹部付き第2磁性板22aを備えており、コミュテータ7は、モータ軸線方向Lの他方側L2に突出して凹部281に嵌った突部711を備えている。このため、凹部281と突部711との嵌め合いによってコミュテータ7の回転軸51に対する空回りを防止することができるので、回転軸51とコミュテータ7との接着固定等を行わなくて済むという利点がある。
【0048】
また、突部711の先端部711aは、凹部281内でコア2とモータ軸線方向Lで離間している。このため、コア2での磁性板20を積層した際のモータ軸線方向Lの寸法ばらつきや、突部711のモータ軸線方向Lの寸法ばらつきがあっても、コミュテータ7等を適正な位置に配置することができる。
【0049】
また、コア2は、モータ軸線方向Lの他方側L2にも、凹部付き第2磁性板22aをモータ軸線方向Lの一方側L1と同数備えている。このため、コア2にはモータ軸線方向Lで方向性がないので、いずれの向きに用いてもよいという利点がある。
【0050】
[実施の形態2]
図5は、本発明の実施の形態2に係るモータ1に用いたコア2の断面図である。なお、本形態の基本的な構成は、実施の形態1と同様であるため、共通する部分には、同一の符号を付してそれらの説明を省略する。
【0051】
図5に示すように、本形態でも、実施の形態1と同様、コア2は、回転軸51が嵌る軸穴28を有する積層コアであって、コア2では、軸穴28を構成する貫通穴280が形成された複数枚の磁性板20が積層されている。本形態において、磁性板20の枚数は21枚である。
【0052】
かかる構成のコア2を回転軸51に固定するにあたって、本形態でも、実施の形態1と同様、軸穴28に対して回転軸51を圧入した構造が採用されている。また、本形態でも、実施の形態1と同様、複数枚の磁性板20のうち、一部の磁性板20は回転軸51の圧入固定に寄与し、他の磁性板20は回転軸51の圧入固定に寄与していない。
【0053】
すなわち、複数枚の磁性板20には、回転軸51の外周面が貫通穴280の内周面に接する第1磁性板21と、回転軸51の外周面と貫通穴280の内周面との間に隙間を有する第2磁性板22とが含まれている。より具体的には、回転軸51は丸棒状であり、複数枚の磁性板20のうち、第1磁性板21に形成されている貫通穴280は、回転軸51の外径寸法と略同等の内径寸法を有する円形である。このため、コア2の軸穴28に回転軸51を挿入した際、回転軸51は、第1磁性板21に形成されている貫通穴280に圧入され、全周にわたって回転軸51の外周面が貫通穴280の内周面に接する。その結果、回転軸51は、第1磁性板21に圧入固定される。
【0054】
これに対して、複数枚の磁性板20のうち、第2磁性板22に形成されている貫通穴280は、回転軸51の外径寸法より大きい。このため、コア2の軸穴28に回転軸51を挿入した際、回転軸51は、第1磁性板21に形成されている貫通穴280には遊びをもって挿入されるため、全周にわたって回転軸51の外周面と貫通穴280の内周面との間には隙間Gが介在することになる。
【0055】
ここで、コア2は、モータ軸線方向Lの中央側に第1磁性板21を備え、第1磁性板21のモータ軸線方向Lにおける両側に第2磁性板22を備えている。また、第2磁性板22は、第1磁性板21のモータ軸線方向Lにおける一方側L1に位置する枚数と、第1磁性板21のモータ軸線方向Lにおける他方側L2に位置する枚数とが同一である。より具体的には、本形態において、磁性板20の数は計21枚であり、5枚の第1磁性板21の両側に第2磁性板22が8枚ずつ配置されている。
【0056】
また、本形態において、第2磁性板22のうち、モータ軸線方向Lの両側に位置する第2磁性板22については、周方向の一部分で円形の貫通穴280の内周面から径方向外側に向けて半円形状に凹んだ凹部281を備えた凹部付き第2磁性板22aとして構成されており、実施の形態1で説明したように、コミュテータ7の空回り防止に利用される。本形態において、第2磁性板22のうち、モータ軸線方向Lの両側の各々に配置された8枚の第2磁性板22のうち、2枚が凹部付き第2磁性板22aとして構成されている。
【0057】
また、第2磁性板22のうち、凹部付き第2磁性板22a以外の他の第2磁性板22は全て、凹部281が形成されず隙間Gの幅が周方向で略一定である凹部なしの第2磁性板22bである。このため、第2磁性板22bでは、凹部281が形成されていない分、磁気路が広い。従って、コア2では、磁気飽和が発生しにくいので、より高いトルクを得ることができる等、良好なモータ特性を得ることができる。
【0058】
[他の実施の形態]
図6は、本発明の他の実施の形態のモータ1に用いたコア2を反出力側からみたときの底面図である。なお、本形態の基本的な構成は、実施の形態1と同様であるため、共通する部分には、同一の符号を付してそれらの説明を省略する。
【0059】
図6(a)に示すように、本形態でも、実施の形態1と同様、コア2に用いた磁性板20のうち、凹部付き第2磁性板22aでは、周方向の一部分で円形の貫通穴280の内周面から径方向外側に向けて凹部281が形成されている。かかる凹部281として、実施の形態1では、半円形状の凹部281が形成されていたが、本形態では、矩形形状の凹部281が形成されている。この場合、図4等を参照して説明したコミュテータ7の突部711は、断面矩形形状に形成されることになる。
【0060】
なお、凹部281については、図6(b)に示すように、三角形状の凹部281を採用してもよく、この場合、図4等を参照して説明したコミュテータ7の突部711は、断面三角形状に形成されることになる。
【0061】
なお、上記実施の形態では、コア2に絶縁塗装を行い、インシュレータを取り付けずにコイル53を巻回したが、コア2にインシュレータを取り付けたタイプのモータ1やロータ5に本発明を適用してもよい。
【0062】
また、上記実施の形態では、モータ用のロータ5に本発明を適用したが、発電機用のロータに本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0063】
1・・ブラシ付きのモータ
2・・コア(積層コア)
5・・ロータ
7・・コミュテータ
20・・磁性板
21・・第1磁性板
22・・第2磁性板
22a・・凹部付き第2磁性板
22b・・凹部なしの第2磁性板
28・・軸穴
51・・回転軸
280・・貫通穴
281・・凹部
711・・コミュテータの突部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸と、該回転軸が嵌る軸穴を備えたコアと、該コアに巻回されたコイルと、を有するロータにおいて、
前記コアは、前記軸穴を構成する貫通穴が形成された複数枚の磁性板が積層された積層コアであって、
当該複数枚の磁性板には、前記回転軸の外周面が前記貫通穴の内周面に接する第1磁性板と、前記回転軸の外周面と前記貫通穴の内周面との間に隙間を有する第2磁性板と、が含まれていることを特徴とするロータ。
【請求項2】
前記積層コアは、モータ軸線方向の中央側に前記第1磁性板を備え、前記第1磁性板のモータ軸線方向における両側に前記第2磁性板を備えていることを特徴とする請求項1に記載のロータ。
【請求項3】
前記第2磁性板は、前記第1磁性板のモータ軸線方向における一方側に位置する枚数と、前記第1磁性板のモータ軸線方向における他方側に位置する枚数とが同一であることを特徴とする請求項2に記載のロータ。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一項に記載のロータを備えたモータであって、
前記コアに対してモータ軸線方向の一方側で前記回転軸に固定されたコミュテータと、前記コミュテータに接するブラシと、を有し、
前記積層コアは、モータ軸線方向の一方側に、前記第2磁性板として、周方向の一部分で前記貫通穴の内周面から径方向外側に向けて凹んだ凹部を備えた凹部付き第2磁性板を備え、
前記コミュテータは、モータ軸線方向の他方側に突出して前記凹部に嵌った突部を備えていることを特徴とするモータ。
【請求項5】
前記突部の先端部は、前記凹部内で前記積層コアと軸線方向で離間していることを特徴とする請求項4に記載のモータ。
【請求項6】
前記積層コアは、モータ軸線方向の他方側にも、前記凹部付き第2磁性板をモータ軸線方向の一方側と同数備えていることを特徴とする請求項4または5に記載のモータ。
【請求項7】
前記積層コアは、前記凹部付き第2磁性板以外の全ての前記第2磁性板では、前記凹部が形成されず前記隙間の幅が周方向で略一定であることを特徴とする請求項4乃至6の何れか一項に記載のモータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−78184(P2013−78184A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−215933(P2011−215933)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000002233)日本電産サンキョー株式会社 (1,337)
【Fターム(参考)】