説明

ロータの製造方法

【課題】接続後のロータのアンバランス量を低減でき、回転翼における重心位置の調整作業を軽減でき、さらにロータの不良率を抑制できるロータの製造方法を提供する。
【解決手段】本発明は、回転翼と支持軸とが一体的に接続されるロータの製造方法であって、計測により得られた回転翼の重心位置と支持軸の中心軸とを中心軸と直交する方向で位置決めする位置決め工程と、回転翼と支持軸とを位置決め工程での位置決めを行った状態で保持しつつ回転翼と支持軸とを一体的に接続する接続工程とを有する、という方法を採用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両や船舶等において、内燃機関から導かれる排気ガスの運動エネルギーを利用して、内燃機関に圧縮した空気を供給し、内燃機関の性能を向上させる過給機が使用されている。過給機の内部には、排気ガスの運動エネルギーを回転の駆動力に変換するロータが設けられている。ロータは、排気ガスの流動によって回転する回転翼と、回転翼を回転自在に支持する支持軸とを一体的に接続して構成されている。
【0003】
ここで、特許文献1には、ロータを製造する方法が開示されている。特許文献1に開示された製造方法では、回転翼に嵌合凹部を形成し、この嵌合凹部に嵌合できる嵌合凸部を支持軸に形成し、嵌合凹部に嵌合凸部を嵌合させ、接触部に溶接等を施すことで回転翼と支持軸とを一体的に接続している。なお、嵌合凹部及び嵌合凸部は、回転翼及び支持軸のそれぞれの外形・外周面から割り出した機械的な中心位置に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3293712号(第3頁、第3図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来技術には、以下のような課題が存在する。
一般的な支持軸は略円柱状に形成された軸部材であり、外周面側に設けられる所定の軸受によって回転自在に支持されるため、支持軸の回転中心と嵌合凸部の中心位置とはほぼ一致している。一方、回転翼は、周方向に並ぶ複数の翼を備えた複雑な形状となっていることから、製造誤差等の影響により、その機械的な中心位置と回転翼の重心位置とが異なる場合がある。このような支持軸と回転翼とを一体的に接続すると、支持軸の回転中心と回転翼の重心位置との間にズレが生じ、ロータの回転特性がアンバランスとなる虞があった。ロータは高速(例えば、10万rpm以上)で回転することから、その回転特性がアンバランスになるとロータの回転とともに振動が生じる虞があった。
【0006】
振動が生じると、過給機の効率低下や回転翼の破損等の不具合を引き起こすことから、アンバランス量を所定の範囲内に抑えることが必要となる。そのため、回転翼と支持軸とを一体的に接続した後に、回転翼の一部を削ってその重心位置を調整し、ロータのアンバランス量を低減することが行われている。しかし、回転翼は難削性の材料を用いて成形されるため、その調整作業に多くの時間がかかっていた。また、アンバランス量が大きい場合には、回転翼の一部を削るだけではアンバランス量を所定の範囲内に抑えることができず、結果としてそのロータは不良品となっていた。
【0007】
本発明は、以上のような点を考慮してなされたもので、接続後のロータのアンバランス量を低減でき、回転翼における重心位置の調整作業を軽減でき、さらにロータの不良率を抑制できるロータの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
本発明は、回転翼と支持軸とが一体的に接続されるロータの製造方法であって、計測により得られた回転翼の重心位置と支持軸の中心軸とを中心軸と直交する方向で位置決めする位置決め工程と、回転翼と支持軸とを位置決め工程での位置決めを行った状態で保持しつつ回転翼と支持軸とを一体的に接続する接続工程とを有する、という方法を採用する。
本発明では、回転翼の重心位置と支持軸の中心軸とを中心軸と直交する方向で位置決めし、その状態で一体的に接続することから、接続後のロータにおける回転翼の重心位置と支持軸の中心軸とが精度よく合致する。
【0009】
また、本発明は、支持軸における回転翼側の端部に凸部を形成する凸部形成工程と、凸部が隙間をあけて挿入される凹部を回転翼に形成する凹部形成工程とを有し、位置決め工程では、凹部に凸部を挿入し回転翼と支持軸との位置関係を相対的に調整して位置決めする、という方法を採用する。
【0010】
また、本発明は、支持軸における回転翼側の端部に凸部を形成する凸部形成工程と、凸部が隙間をあけて挿入される凹部を回転翼に形成する凹部形成工程と、計測により得られた回転翼の重心位置を示す基準部を回転翼に形成する基準部形成工程とを有し、位置決め工程では、凹部に凸部を挿入し基準部を用いて回転翼と支持軸との位置決めを行う、という方法を採用する。
【0011】
また、本発明は、支持軸における回転翼側の端部に嵌合凸部を形成する嵌合凸部形成工程と、回転翼における重心位置の計測結果に基づく位置に嵌合凸部が嵌合する嵌合凹部を形成する嵌合凹部形成工程とを有し、位置決め工程では、嵌合凹部に嵌合凸部を嵌合させて回転翼と支持軸との位置決めを行う、という方法を採用する。
【0012】
また、本発明は、回転翼における重心位置の計測に用いられ、嵌合凹部よりも小径の小径部を回転翼に形成する小径部形成工程を有し、嵌合凹部形成工程では、小径部を拡げて回転翼における重心位置の計測結果に基づく位置に嵌合凹部を形成する、という方法を採用する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、以下の効果を得ることができる。
本発明によれば、接続後のロータのアンバランス量を低減でき、回転翼における重心位置の調整作業を軽減でき、さらにロータの不良率を抑制できるという効果がある。そのため、本発明によれば、ロータの製造コストを低減できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】タービンロータ1の構成を示す概略図である。
【図2】タービンロータ1の製造方法を示すフローチャートである。
【図3】タービンロータ1の製造における各工程を示す概略図である。
【図4】偏重心量の比較結果を示す概略図である。
【図5】タービンロータ1Aの構成を示す断面図である。
【図6】タービンロータ1Aの製造方法を示すフローチャートである。
【図7】タービンロータ1Aの製造における各工程を示す概略図である。
【図8】タービンロータ1Bの構成を示す断面図である。
【図9】タービンロータ1Bの製造方法を示すフローチャートである。
【図10】タービンロータ1Bの製造における各工程を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を、図1から図10を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。また、各図面における矢印Fは前方向を示すものとする。
【0016】
〔第1実施形態〕
本実施形態に係るタービンロータ(ロータ)1の構成を、図1を参照して説明する。
図1は、タービンロータ1の構成を示す概略図であって、(a)は側面図、(b)は(a)のA−A線視断面図である。
タービンロータ1は、不図示の過給機の内部に設けられ、内燃機関から導かれる排気ガスの運動エネルギーを回転の駆動力に変換するものである。タービンロータ1は、タービンインペラ(回転翼)2と、タービン軸(支持軸)3とを有している。
【0017】
タービンインペラ2は、内燃機関から導かれる排気ガスの流動によって高速回転(例えば、10万rpm以上)する回転翼である。タービンインペラ2は、ハブ21と、翼部22と、翼側接続部23とを有している。タービンインペラ2は、高温の排気ガスが流動する領域内で使用されるため、高耐熱性・高剛性の金属材料(例えばインコネル等)を用いて一体的に成形されている。その成形には精密鋳造等が用いられる。なお、タービンインペラ2における重心位置を、符号Gで表している。
【0018】
ハブ21は、略円錐状に形成された部材であって、翼部22のベースとなるものである。翼部22は、ハブ21の外周面で周方向に複数並んで配置されている。翼部22は、排気ガスの流動を受けて、タービンインペラ2を回転させるためのものである。翼側接続部23は、ハブ21の後端面における中央部に設けられ、タービン軸3との接続に用いられる箇所である。翼側接続部23は、略円筒状に形成され、その中心軸が前後方向と平行する向きで設置されている。翼側接続部23の後端面(すなわちタービン軸3側の端面)は、前後方向と直交する平面状に形成されている。また、翼側接続部23には、凹部24が形成されている。凹部24は、タービン軸3側に向かって開口する、背面視略円形の孔部となっている。
【0019】
タービン軸3は、前後方向で延びる略丸棒状の軸部材であって、タービンインペラ2と一体的に接続され、タービンインペラ2を回転自在に支持するものである。タービン軸3は、過給機の軸受ハウジング(図示せず)に回転自在に支持されている。タービン軸3は、高剛性を備える一般的な金属材料(例えばクロムモリブデン鋼等)を用いて成形されている。その成形には一般的な塑性加工(鍛造、転造等)や機械加工(切削、研削等)が用いられる。タービン軸3には、軸側接続部31と、凸部32と、雄ネジ部33とが形成されている。なお、タービン軸3の中心軸を、符号Cで表している。
【0020】
軸側接続部31は、タービン軸3の前端側に設けられ、タービンインペラ2との接続に用いられる箇所である。また、軸側接続部31の前端面(すなわちタービンインペラ2側の端面)は、前後方向と直交する平面状に形成されている。軸側接続部31の前端面には翼側接続部23の後端面が当接しており、両部材の当接部は溶接により一体的に接続された溶接部Wとなっている。すなわち、溶接部Wにおいて、タービンインペラ2とタービン軸3とが一体的に接続されている。
【0021】
凸部32は、軸側接続部31の前端側に設けられ、タービンインペラ2に向かって突出している。凸部32は、略円柱状に形成され、タービンインペラ2の凹部24内に挿入されている。凸部32の外径は、凹部24の内径よりも小さく設定されている。雄ネジ部33は、タービン軸3の後端側に設けられ、空気を圧縮するために用いられる不図示のコンプレッサインペラを接続するために用いられるものである。
【0022】
続いて、本実施形態に係るタービンロータ1の製造方法を、図2及び図3を参照して説明する。
図2は、タービンロータ1の製造方法を示すフローチャートである。
図3は、タービンロータ1の製造における各工程を示す概略図である。なお、図3(a)から図3(f)までは、図2に示すフローチャートのステップS11からステップS16までにそれぞれ対応している。
【0023】
タービンロータ1の製造方法の概要を、図2を参照して説明する。
まず、タービンインペラ2及びタービン軸3をそれぞれ成形する部材成形工程を実施する(ステップS11、凸部形成工程)。タービン軸3の軸側接続部31、凸部32及び雄ネジ部33は、この工程で形成される。
【0024】
次に、タービンインペラ2の翼側接続部23に、凹部24を形成するインペラ開先加工工程を実施する(ステップS12、凹部形成工程)。
【0025】
次に、タービンインペラ2の重心位置Gを計測するインペラ重心位置計測工程を実施する(ステップS13)。
【0026】
次に、タービンインペラ2の重心位置Gとタービン軸3の中心軸Cとを、中心軸Cと直交する方向で位置決めする位置決め工程を実施する(ステップS14、位置決め工程)。
【0027】
次に、タービンインペラ2とタービン軸3とを一体的に接続する接続工程を実施する(ステップS15、接続工程)。
【0028】
最後に、タービンインペラ2の翼部22における翼端部22aを、タービン軸3の中心軸Cに応じて研削するインペラ研削工程を実施する(ステップS16)
以上で、タービンロータ1の製造が完了する。
【0029】
次に、タービンロータ1の製造における各工程を、図3を参照して説明する。
図3(a)に示すように、部材成形工程では、タービン軸3が成形されるとともにタービンインペラ2が成形される。タービンインペラ2は、上述したように精密鋳造等を用いて成形される。翼側接続部23には、タービンインペラ2の精密鋳造等による成形とともに、加工前凹部24Pが同時に形成される。加工前凹部24Pは、凹部24よりも小径の孔部である。
【0030】
図3(b)に示すように、インペラ開先加工工程では、翼側接続部23に凹部24が形成される。凹部24は、研削加工等を用いて、加工前凹部24Pを研削し拡径することで形成される。なお、インペラ開先加工工程では、翼側接続部23の後端面(図3においては紙面下側の端面)が同時に加工され、タービンインペラ2の中心軸方向と直交する平面状に形成される。
【0031】
図3(c)に示すように、インペラ重心位置計測工程では、重心位置計測装置4を用いてタービンインペラ2における重心位置Gを計測する。重心位置計測装置4は、タービンインペラ2を排気ガスの流動による回転方向で回転させることで、重心位置Gを計測する装置である。重心位置計測装置4の回転軸(図示せず)にはタービンインペラ2を保持するためのチャック41が設けられており、チャック41は凹部24内に挿入されてタービンインペラ2を保持する。重心位置計測装置4がタービンインペラ2を回転させて、重心位置Gが計測される。計測された重心位置Gは、タービンインペラ2毎に個別に管理される。なお、タービンインペラ2の重心位置Gを計測する方法としては、回転型に限られるわけではなく、非回転型の計測装置を用いてもよい。
【0032】
図3(d)に示すように、位置決め工程では、タービンインペラ2の重心位置Gとタービン軸3の中心軸Cとを、中心軸Cと直交する方向で位置決めする。まず、タービン軸3を軸保持部51によって保持することで、所定の位置に固定しておく。翼側接続部23の凹部24内にタービン軸3の凸部32を挿入し、翼側接続部23と軸側接続部31とを互いに当接させる。ここで、アクチュエータ52を用いてタービンインペラ2を中心軸Cと直交する方向に微小移動させて、タービンインペラ2の重心位置Gとタービン軸3の中心軸Cとを位置決めする。すなわち、中心軸Cの延長線上に重心位置Gを配置させる。
【0033】
アクチュエータ52は、タービンインペラ2の位置を測定する位置決めセンサ53の測定結果に応じて、タービンインペラ2を移動させる。位置決めセンサ53には、光学式や機械接触式のセンサが用いられる。位置決め終了後、アクチュエータ52はタービンインペラ2をその位置で保持する。なお、本実施形態では、タービン軸3を固定し、タービンインペラ2を移動させているが、これに限定されるものではなく、タービンインペラ2を固定し、タービン軸3を中心軸Cに直交する方向に移動させて位置決めしてもよい。
【0034】
図3(e)に示すように、接続工程では、溶接装置6によって翼側接続部23と軸側接続部31との当接部を溶接し、タービンインペラ2とタービン軸3とを一体的に接続する。溶接時には、タービンインペラ2はアクチュエータ52によって保持され、タービン軸3は軸保持部51によって保持されている。溶接装置6には、電子ビーム溶接やレーザ溶接等の、溶接領域を狭く形成できるものが用いられる。位置決め工程及び接続工程を実施することで、タービンインペラ2の重心位置Gとタービン軸3の中心軸Cとが精度よく位置決めされたタービンロータ1を製造することが可能となる。
【0035】
図3(f)に示すように、インペラ研削工程では、タービン軸3の中心軸Cに応じて、翼部22の翼端部22aを研削する。タービンインペラ2は複雑な形状となっているため、タービンインペラ2の重心位置Gと、翼部22の翼端部22aから割り出した機械的な中心位置とが一致していない場合がある。そこで、重心位置Gすなわち中心軸Cから翼端部22aまでの距離が、いずれの翼部22においても等しくなるように、翼端部22aを研削して調整する。
以上で、タービンロータ1の製造が完了する。
【0036】
次に、タービンインペラ2とタービン軸3との位置決め工程を行う場合と行わない場合とでの、重心位置Gと中心軸Cとの間のズレすなわち偏重心量の比較結果を、図4を参照して説明する。
図4は、偏重心量の比較結果を示す概略図である。
【0037】
図4は、発生しうる複数の誤差要素を考慮して、完成したタービンロータ1における偏重心量及びその発生頻度をシミュレーションにより検証した結果である。図4の横軸には偏重心量(μm)を表し、縦軸には発生の頻度を表している。
【0038】
図4に示すように、位置決め工程を行わない場合では、生じる偏重心量の中心値は25〜30μm内に位置している。一方、位置決め工程を行う場合では、生じる誤差の中心値は10〜15μm内に位置している。また、位置決め工程を行う場合では、生じる偏重心量の多くが10〜15μm内に集中している。一方、位置決め工程を行わない場合における偏重心量は、位置決め工程を行う場合に比べて分散している。すなわち、本実施形態に係るタービンロータ1の製造方法では、従来の製造方法に比べて、発生する偏重心量を減少させ、且つ発生する偏重心量のバラツキを低減させることができる。したがって、少ない偏重心量のタービンロータ1を安定して製造することができる。
【0039】
また、少ない偏重心量のタービンロータ1を安定して製造することができることから、接続後のタービンロータ1に行っていた、偏重心量を低減させるための調整作業を軽減することができる。さらに、大きな偏重心量が発生することを防止できるため、タービンロータ1の不良率を抑制できる。結果として、タービンロータ1の製造コストを低減できる。
【0040】
したがって、本実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
本実施形態によれば、少ない偏重心量のタービンロータ1を安定して製造できるという効果がある。また、偏重心量を低減させるための調整作業を軽減でき、さらにタービンロータ1の不良率を抑制できる。結果として、本実施形態によれば、タービンロータ1の製造コストを低減できるという効果がある。
【0041】
〔第2実施形態〕
本実施形態に係るタービンロータ(ロータ)1Aの構成を、図5を参照して説明する。
図5は、タービンロータ1Aの構成を示す断面図である。なお、図5において、図1に示す第1の実施形態の構成要素と同一の要素については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0042】
タービンロータ1Aは、不図示の過給機の内部に設けられ、内燃機関から導かれる排気ガスの運動エネルギーを回転の駆動力に変換するものである。タービンロータ1Aは、タービンインペラ(回転翼)2Aと、タービン軸(支持軸)3とを有している。
【0043】
タービンインペラ2Aにおけるハブ21の前端部には、センタ穴(基準部)25が形成されている。センタ穴25は、前方に向かって開口し、前後方向に延びる正面視円形の孔部である。センタ穴25の中心軸は、タービンインペラ2Aの中心軸と直交する方向に関して、タービンインペラ2Aの重心位置Gと同一の位置に配置されている。第1の実施形態と同様に、重心位置Gは中心軸Cの延長線上に配置されているため、センタ穴25の中心軸も中心軸Cの延長線上に配置されている。
【0044】
続いて、本実施形態に係るタービンロータ1Aの製造方法を、図6及び図7を参照して説明する。
図6は、タービンロータ1Aの製造方法を示すフローチャートである。
図7は、タービンロータ1Aの製造における各工程を示す概略図である。なお、図7(a)から図7(g)までは、図6に示すフローチャートのステップS21からステップS27までにそれぞれ対応している。
【0045】
タービンロータ1Aの製造方法の概要を、図6を参照して説明する。
まず、タービンインペラ2A及びタービン軸3をそれぞれ成形する部材成形工程を実施する(ステップS21、凸部形成工程)。タービン軸3の軸側接続部31、凸部32及び雄ネジ部33は、この工程で形成される。
【0046】
次に、タービンインペラ2Aの翼側接続部23に、凹部24を形成するインペラ開先加工工程を実施する(ステップS22、凹部形成工程)。
【0047】
次に、タービンインペラ2Aの重心位置Gを計測するインペラ重心位置計測工程を実施する(ステップS23)。
【0048】
次に、タービンインペラ2Aの中心軸と直交する方向に関して、タービンインペラ2Aの重心位置Gと同一の位置に、センタ穴25を形成するセンタ穴加工工程を実施する(ステップS24、基準部形成工程)。
【0049】
次に、タービンインペラ2Aの重心位置Gとタービン軸3の中心軸Cとを、中心軸Cと直交する方向で位置決めする位置決め工程を実施する(ステップS25、位置決め工程)。
【0050】
次に、タービンインペラ2Aとタービン軸3とを一体的に接続する接続工程を実施する(ステップS26、接続工程)。
【0051】
最後に、タービンインペラ2Aの翼部22における翼端部22aを、タービン軸3の中心軸Cに応じて研削するインペラ研削工程を実施する(ステップS27)
以上で、タービンロータ1Aの製造が完了する。
【0052】
次に、タービンロータ1Aの製造における各工程を、図7を参照して説明する。なお、図7(a)ないし(c)は、図3(a)ないし(c)と同様の工程であるため、その説明を省略する。
【0053】
図7(d)に示すように、センタ穴加工工程では、タービンインペラ2Aの中心軸と直交する方向に関して、インペラ重心位置計測工程にて計測された重心位置Gと同一の位置に、センタ穴25の中心軸が位置するように形成される。センタ穴25は、ハブ21の前端部(図7においては紙面上側の端部)に形成される。センタ穴25の形成には一般的な切削加工法が用いられる。
【0054】
図7(e)に示すように、位置決め工程では、タービンインペラ2Aの重心位置Gとタービン軸3の中心軸Cとを、中心軸Cと直交する方向で位置決めする。まず、タービン軸3を軸保持部51によって保持することで、所定の位置に固定しておく。翼側接続部23の凹部24内にタービン軸3の凸部32を挿入し、翼側接続部23と軸側接続部31とを互いに当接させる。
【0055】
ここで、位置決めピン54を、センタ穴25内に嵌入させる。位置決めピン54は、略円柱状の軸部材であり、センタ穴25に密接して(又は精度上許容できる微小な隙間をあけて)嵌入できる外径を有している。位置決めピン54の中心軸はタービン軸3の中心軸Cの延長線上に配置され、位置決めピン54は中心軸Cに沿って往復移動できる。そのため、位置決めピン54がセンタ穴25内に嵌入することで、タービンインペラ2Aは中心軸Cと直交する方向で位置調整され、センタ穴25の中心軸はタービン軸3の中心軸Cの延長線上に配置される。結果として、タービンインペラ2Aの重心位置Gは、タービン軸3の中心軸Cの延長線上に配置される。なお、位置決めピン54は、図7(f)に示す接続工程の実施中にも、センタ穴25内に嵌入させておくことが望ましい。
【0056】
図7(f)及び(g)は、図3(e)及び(f)と同様の工程であるため、その説明を省略する。
以上で、タービンロータ1Aの製造が完了する。
【0057】
したがって、本実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
本実施形態によれば、少ない偏重心量のタービンロータ1Aを安定して製造できるという効果がある。また、偏重心量を低減させるための調整作業を軽減でき、さらにタービンロータ1Aの不良率を抑制できる。結果として、本実施形態によれば、タービンロータ1Aの製造コストを低減できるという効果がある。
【0058】
〔第3実施形態〕
本実施形態に係るタービンロータ(ロータ)1Bの構成を、図8を参照して説明する。
図8は、タービンロータ1Bの構成を示す断面図である。なお、図8において、図1に示す第1の実施形態の構成要素と同一の要素については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0059】
タービンロータ1Bは、不図示の過給機の内部に設けられ、内燃機関から導かれる排気ガスの運動エネルギーを回転の駆動力に変換するものである。タービンロータ1Bは、タービンインペラ(回転軸)2Bと、タービン軸(支持軸)3Bとを有している。
【0060】
翼側接続部23には、嵌合凹部26が形成されている。嵌合凹部26は、タービン軸3B側に向かって開口する、背面視略円形の孔部となっている。また、タービンインペラ2Bの中心軸と直交する方向に関して、嵌合凹部26の中心軸は、タービンインペラ2Bの重心位置Gと同一の位置に配置されている。
【0061】
軸側接続部31の前端側には、嵌合凸部34が設けられている。嵌合凸部34は、略円柱状に成形され、タービンインペラ2Bに向かって突出している。嵌合凸部34の中心軸はタービン軸3の中心軸Cの延長線上に配置され、嵌合凸部34の外径は嵌合凹部26に密接して(又は精度上許容できる微小な隙間をあけて)嵌合できる大きさとなっている。
【0062】
続いて、本実施形態に係るタービンロータ1Bの製造方法を、図9及び図10を参照して説明する。
図9は、タービンロータ1Bの製造方法を示すフローチャートである。
図10は、タービンロータ1Bの製造における各工程を示す概略図である。なお、図10(a)から図10(f)までは、図9に示すフローチャートのステップS31からステップS36までにそれぞれ対応している。
【0063】
タービンロータ1Bの製造方法の概要を、図9を参照して説明する。
まず、タービンインペラ2B及びタービン軸3Bをそれぞれ成形する部材成形工程を実施する(ステップS31、嵌合凸部形成工程)。タービン軸3Bの軸側接続部31、嵌合凸部34及び雄ネジ部33は、この工程で形成される。
【0064】
次に、タービンインペラ2Bの重心位置Gを計測するインペラ重心位置計測工程を実施する(ステップS32)。
【0065】
次に、タービンインペラ2Bの翼側接続部23に、嵌合凹部26を形成するインペラ開先加工工程を実施する(ステップS33、嵌合凹部形成工程)。
【0066】
次に、タービンインペラ2Bの重心位置Gとタービン軸3Bの中心軸Cとを、中心軸Cと直交する方向で位置決めする位置決め工程を実施する(ステップS34、位置決め工程)。
【0067】
次に、タービンインペラ2Bとタービン軸3Bとを一体的に接続する接続工程を実施する(ステップS35、接続工程)。
【0068】
最後に、タービンインペラ2Bの翼部22における翼端部22aを、タービン軸3Bの中心軸Cに応じて研削するインペラ研削工程を実施する(ステップS36)
以上で、タービンロータ1Bの製造が完了する。
【0069】
次に、タービンロータ1Bの製造における各工程を、図10を参照して説明する。
図10(a)に示すように、部材成形工程では、タービン軸3Bが成形されるとともにタービンインペラ2Bが成形される。タービンインペラ2Bは、精密鋳造等を用いて成形される。翼側接続部23には、タービンインペラ2Bの精密鋳造等による成形とともに、チャック用凹部(小径部)26Pが同時に形成される。チャック用凹部26Pは、嵌合凹部26よりも小径の孔部である。
【0070】
図10(b)に示すように、インペラ重心位置計測工程では、重心位置計測装置4を用いてタービンインペラ2Bにおける重心位置Gを計測する。重心位置計測装置4の回転軸(図示せず)にはタービンインペラ2Bを保持するためのチャック41Aが設けられており、チャック41Aはチャック用凹部26P内に挿入されてタービンインペラ2Bを保持する。
【0071】
図10(c)に示すように、インペラ開先加工工程では、翼側接続部23に嵌合凹部26が形成される。嵌合凹部26は、研削加工等を用いて、チャック用凹部26Pを研削し拡径することで形成される。嵌合凹部26は、その中心軸が、タービンインペラ2Bの中心軸と直交する方向に関して、インペラ重心位置計測工程にて計測された重心位置Gと同一の位置になるように形成される。また、嵌合凹部26は、嵌合凸部34が密接して(又は精度上許容できる微小な隙間をあけて)嵌合できる大きさに形成される。
【0072】
図10(d)に示すように、位置決め工程では、タービンインペラ2Bの重心位置Gとタービン軸3Bの中心軸Cとを、中心軸Cと直交する方向で位置決めする。翼側接続部23の嵌合凹部26内にタービン軸3Bの嵌合凸部34を嵌合させて、翼側接続部23と軸側接続部31とを互いに当接させる。ここで、嵌合凹部26は重心位置Gと同一の位置に配置され、嵌合凸部34はタービン軸3Bの中心軸Cと同一の位置に配置されているため、嵌合凹部26内に嵌合凸部34を嵌合させるのみで、タービンインペラ2Bの重心位置Gとタービン軸3Bの中心軸Cとが、中心軸Cと直交する方向で位置決めされる。
【0073】
図10(e)及び(f)は、図3(e)及び(f)と同様の工程であるため、その説明を省略する。
以上で、タービンロータ1Bの製造が完了する。
【0074】
したがって、本実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
本実施形態によれば、少ない偏重心量のタービンロータ1Bを安定して製造できるという効果がある。また、偏重心量を低減させるための調整作業を軽減でき、さらにタービンロータ1Bの不良率を抑制できる。結果として、本実施形態によれば、タービンロータ1Bの製造コストを低減できるという効果がある。
【0075】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0076】
例えば、第1の実施形態では、凹部24及び凸部32が形成されているが、これに限定されるものではなく、タービンインペラ2及びタービン軸3にそれぞれ平面部を形成し、該平面部を互いに当接させて位置決めを実施し、平面部の縁部を溶接するようにしてもよい。また、タービンインペラ2及びタービン軸3にそれぞれ平面部を形成しつつ、各平面部に凹部をそれぞれ形成し、凹部の周囲の平面部を互いに当接させて位置決めを実施し、平面部の縁部を溶接するようにしてもよい。
【0077】
また、第2の実施形態では、基準部としてセンタ穴25が形成されているが、センタ穴25は図5に示した形状に限定されるものではなく、皿もみ形状、円錐形状等でもよい。また、位置決めピン54の先端形状も、半球、円錐等でもよい。また、センタ穴を複数(例えば3点)形成し、それらの中心位置が重心位置Gを示すようにしてもよい。さらに、タービンインペラ2Aのセンタ穴25が形成される位置に、重心位置Gを示す基準部として凸部等を形成し、当該凸部を用いてタービンインペラ2Aの位置決めを行ってもよい。
【符号の説明】
【0078】
1,1A,1B…タービンロータ(ロータ)、2,2A,2B…タービンインペラ(回転翼)、24…凹部、25…センタ穴(基準部)、26…嵌合凹部、26P…チャック用凹部(小径部)、3,3B…タービン軸(支持軸)、32…凸部、34…嵌合凸部、C…中心軸、G…重心位置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転翼と支持軸とが一体的に接続されるロータの製造方法であって、
計測により得られた前記回転翼の重心位置と、前記支持軸の中心軸とを、前記中心軸と直交する方向で位置決めする位置決め工程と、
前記回転翼と前記支持軸とを前記位置決め工程での位置決めを行った状態で保持しつつ、前記回転翼と前記支持軸とを一体的に接続する接続工程とを有することを特徴とするロータの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のロータの製造方法において、
前記支持軸における前記回転翼側の端部に凸部を形成する凸部形成工程と、
前記凸部が隙間をあけて挿入される凹部を前記回転翼に形成する凹部形成工程とを有し、
前記位置決め工程では、前記凹部に前記凸部を挿入し、前記回転翼と前記支持軸との位置関係を相対的に調整して位置決めすることを特徴とするロータの製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載のロータの製造方法において、
前記支持軸における前記回転翼側の端部に凸部を形成する凸部形成工程と、
前記凸部が隙間をあけて挿入される凹部を前記回転翼に形成する凹部形成工程と、
計測により得られた前記回転翼の重心位置を示す基準部を、前記回転翼に形成する基準部形成工程とを有し、
前記位置決め工程では、前記凹部に前記凸部を挿入し、前記基準部を用いて前記回転翼と前記支持軸との位置決めを行うことを特徴とするロータの製造方法。
【請求項4】
請求項1に記載のロータの製造方法において、
前記支持軸における前記回転翼側の端部に嵌合凸部を形成する嵌合凸部形成工程と、
前記回転翼における重心位置の計測結果に基づく位置に、前記嵌合凸部が嵌合する嵌合凹部を形成する嵌合凹部形成工程とを有し、
前記位置決め工程では、前記嵌合凹部に前記嵌合凸部を嵌合させて前記回転翼と前記支持軸との位置決めを行うことを特徴とするロータの製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載のロータの製造方法において、
前記回転翼における重心位置の計測に用いられ、前記嵌合凹部よりも小径の小径部を前記回転翼に形成する小径部形成工程を有し、
前記嵌合凹部形成工程では、前記小径部を拡げて前記回転翼における重心位置の計測結果に基づく位置に前記嵌合凹部を形成することを特徴とするロータの製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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