説明

ロータリキルン炉への燃焼空気の供給制御方法および供給制御装置

【課題】ロータリキルン炉内での燃焼状態が良好となるように燃焼空気を適正に供給することを目的とする。
【解決手段】ロータリキルン炉1と、その燃焼残渣、排ガスを導きさらに燃焼させ且つボイラ部35を有するストーカ炉2と、その排ガスの処理施設3とを具備した燃焼設備でのキルン炉への燃焼空気の供給制御方法であって、廃棄物投入量に基づくボイラ部での設定蒸発量に基づきキルン炉の前段側及び中間段側に供給する空気量をそれぞれ求め、この前段空気量に対してキルン炉前段での計測温度が設定範囲内となるように補正を行い、また中間段空気量に対して、二次燃焼炉及び排ガス処理施設に供給された空気量及び排ガス処理施設から排出された排ガス量並びにこれら空気中の酸素量及び排ガス中の酸素濃度から得られた残存酸素量を用いて求められたキルン炉出口での酸素濃度が、予め設定された設定範囲内となるように補正を行う方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物燃焼設備におけるロータリキルン炉への燃焼空気の供給制御方法および供給制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、廃棄物を燃焼させるロータリキルン炉(以下、キルン炉という)と、このキルン炉からの燃焼残渣および排ガス中の未燃分を燃焼させるとともに廃熱を回収するためのボイラ部を有するストーカ炉とが具備された燃焼設備がある(例えば、特許文献1参照)。なお、このストーカ炉の後には、燃焼排ガスを無害化するため排ガス処理施設が設けられている。
【0003】
ところで、この燃焼設備における廃棄物の供給速度並びにキルン炉およびストーカ炉での燃焼制御すなわち各炉内への燃焼空気の供給制御については、当然ながら、廃棄物の投入量(処理量である)に基づき行われるとともに、ストーカ炉に設けられたボイラ部での蒸発量に基づき、しかもストーカ炉においてダイオキシンなどの有害物質が発生しないように、言い換えれば完全燃焼するように行われている。
【0004】
すなわち、廃棄物のキルン炉への投入量が決定されると、この投入量に基づきキルン炉への廃棄物の供給速度、キルン炉の回転速度、ストーカ炉におけるボイラ部での蒸発量などが設定され、そしてボイラ部での蒸発量が設定されると、この設定蒸発量に基づき、キルン炉およびストーカ炉に供給される燃焼空気の供給量が制御されていた(例えば、特許文献2)。
【特許文献1】特開2004−361030号公報
【特許文献2】特開昭62−255717号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述したような燃焼設備にて燃焼制御を行う際に、ストーカ炉においてダイオキシンなどの有害物質の発生を抑制しようとすると、どうしても、キルン炉から排出される燃焼残渣および排ガス中の未燃分の量に影響を受けるため、キルン炉内での燃焼制御、すなわち燃焼空気の供給制御を良好に行う必要があり、そのためには、キルン炉内での燃焼状態を把握する必要がある。
【0006】
しかし、キルン炉内での燃焼状態を把握しようとすると、前段側においては、温度計を用いてある程度は把握することができるが、後段側においては、特に、ストーカ炉に近いキルン炉の出口付近ではその燃焼が激しいため、温度計を用いて燃焼状態を把握するのが難しく、したがってキルン炉での燃焼状態を適正に維持することができない惧れがある。なお、キルン炉に十分に燃焼空気を供給して燃焼残渣を十分に減らすことも考えられるが、そうすると、キルン炉側における出口温度が高くなりすぎて、内壁面にクリンカが付着してしまうという問題が生じる。
【0007】
そこで、本発明は、ロータリキルン炉を備えた廃棄物燃焼設備において、キルン炉内での燃焼状態、特に、出口付近での燃焼状態を把握することにより、キルン炉内に適正な燃焼空気を供給し得るロータリキルン炉への燃焼空気の供給制御方法および供給制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の請求項1に係るロータリキルン炉への燃焼空気の供給制御方法は、廃棄物を燃焼させる一次燃焼炉であるロータリキルン炉と、このロータリキルン炉から排出された燃焼残渣および排ガスの未燃分をさらに燃焼させるとともに廃熱を回収するボイラ部を有する二次燃焼炉と、この二次燃焼炉から排出される排ガスを処理する排ガス処理施設とを有する廃棄物燃焼設備における上記ロータリキルン炉への燃焼空気の供給制御方法であって、
廃棄物の投入量に基づき予め設定されたロータリキルン炉に供給する空気量に対して、
上記二次燃焼炉および排ガス処理施設に供給された酸素量から排ガス処理施設より排出された残存酸素量を差し引いて求められた差分値をロータリキルン炉に供給した空気量で除算して得られる酸素濃度が、予め設定された設定範囲内となるように、酸素による補正を行う方法である。
【0009】
また、請求項2に係るロータリキルン炉への燃焼空気の供給制御方法は、廃棄物を燃焼させる一次燃焼炉であるロータリキルン炉と、このロータリキルン炉から排出された燃焼残渣および排ガスの未燃分をさらに燃焼させるとともに廃熱を回収するボイラ部を有する二次燃焼炉と、この二次燃焼炉から排出される排ガスを処理する排ガス処理施設とを有する廃棄物燃焼設備における上記ロータリキルン炉への燃焼空気の供給制御方法であって、
廃棄物の投入量から求められた上記ボイラ部での設定蒸発量に基づきロータリキルン炉の前段側に供給すべき設定量としての前段空気量および中間段側に供給すべき設定量としての中間段空気量を求め、
上記前段空気量に対して、ロータリキルン炉の前段側で計測された計測温度が予め設定された設定範囲内となるように、温度による補正を行うことにより、前段側に供給する前段供給空気量を求め、
上記中間段空気量に対して、二次燃焼炉および排ガス処理施設に供給された酸素量から排ガス処理施設より排出された残存酸素量を差し引いて求められた差分値をロータリキルン炉に供給した空気量で除算して得られる酸素濃度が、予め設定された設定範囲内となるように、酸素による補正を行うことにより、中間段に供給する中間段供給空気量を求める方法である。
【0010】
また、請求項3に係るロータリキルン炉への燃焼空気の供給制御方法は、請求項2に記載の燃焼空気の供給制御方法において、酸素量により補正された中間段空気量に対して、さらにボイラ部での計測蒸発量が予め設定された設定蒸発量となるように、蒸発量による補正を行う方法である。
【0011】
また、請求項4に係るロータリキルン炉への燃焼空気の供給制御装置は、廃棄物を燃焼させる一次燃焼炉であるロータリキルン炉と、このロータリキルン炉から排出された燃焼残渣および排ガスの未燃分を燃焼させるとともに廃熱を回収するボイラ部を有する二次燃焼炉と、この二次燃焼炉から排出される排ガスを処理する排ガス処理施設とを有する廃棄物燃焼設備における上記ロータリキルン炉への燃焼空気の供給制御装置であって、
廃棄物の投入量から求められた上記ボイラ部での設定蒸発量に基づきロータリキルン炉の前段側に供給すべき空気量を設定する前段空気量設定部および中間段側に供給すべき空気量を設定する中間段空気量設定部と、
上記前段空気量設定部にて求められた前段空気量に対して、ロータリキルン炉の前段側に設けられた温度計により計測される計測温度が予め設定された設定範囲内となるように補正を行う温度補正部と、
上記二次燃焼炉および排ガス処理施設に供給された酸素量から排ガス処理施設から排出された残存酸素量を差し引いて求められた差分値をロータリキルン炉に供給した空気量で除算して酸素濃度を求める酸素演算部と、
上記中間段空気量設定部にて求められた中間段設定空気量に対して、上記酸素演算部で求められたキルン炉出口における酸素量が予め設定された設定範囲内となるように補正を行う酸素補正部とを具備したものである。
【0012】
また、請求項5に係るロータリキルン炉への燃焼空気の供給制御装置は、請求項4に記載の燃焼空気の供給制御装置において、ボイラ部における設定蒸発量と計測蒸発量との偏差を求める蒸発量偏差演算部と、
酸素補正部にて補正された中間段補正空気量を入力するとともに上記蒸発量偏差演算部にて求められた偏差が無くなるように当該中間段補正空気量をさらに補正する蒸発量補正部とを具備したものである。
【0013】
さらに、請求項6に係るロータリキルン炉への燃焼空気の供給制御装置は、請求項5に記載の燃焼空気の供給制御装置において、
酸素演算部を、
二次燃焼炉および排ガス処理施設に設けられた流量計にて計測された各空気量を加算してロータリキルン炉より後方で供給された合計供給空気量を求める空気量加算部と、
この空気量加算部にて求められた合計供給空気量に当該供給された空気の酸素濃度を乗算して合計供給空気量に含まれる酸素量を求める供給酸素量演算部と、
排ガス処理施設の後段側に設けられた流量計にて計測された総排ガス量から上記供給空気量演算部にて求められた合計供給空気量を減算してキルン炉出口での排ガス量を求めるキルン炉出口排ガス量演算部と、
排ガス処理施設の後段側に設けられた酸素濃度計により計測された酸素濃度を上記総排ガス量に乗算することにより当該総排ガス中の残存酸素量を求める残存酸素量演算部と、
この残存酸素量演算部にて求められた残存酸素量から上記供給酸素量演算部にて求められた供給酸素量を減算してキルン炉出口酸素量を求めるキルン炉出口酸素量演算部と、
このキルン炉出口酸素量演算部にて求められたキルン炉出口酸素量を上記キルン炉出口排ガス量演算部にて求められた排ガス量で除算して酸素濃度を求める酸素濃度演算部とから構成したものである。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の燃焼空気の供給制御方法によると、廃棄物の投入量に基づき設定されたロータリキルン炉に供給する空気量の補正を行う際に、当該廃棄物燃焼設備から排出される残存酸素量および供給された酸素量から求められたキルン炉出口での酸素濃度に基づき行うようにしたので、従来、キルン炉出口の燃焼状態の把握が困難であった場合に比べて、より適正な酸素量、すなわち燃焼空気を供給することができる。
【0015】
また、請求項2〜請求項6に記載の燃焼空気の供給制御方法および供給制御装置の構成によると、ボイラ部での設定蒸発量に基づき設定されたキルン炉の前段側に供給すべき前段空気量に対し、廃棄物の性状に基づき補正を行うとともに、前段での炉内温度が設定温度範囲内となるように補正をしているので、炉内温度を適正な値にすることができ、例えばクリンカが発生しない温度以下にすることができ、したがってキルン炉前段側での燃焼を良好に行うことができる。
【0016】
さらに、ボイラ部での設定蒸発量に基づき設定されたキルン炉の中間段側に供給すべき中間段空気量に対し、特に、キルン炉出口での酸素濃度に基づき補正を行うとともに、ストーカ炉におけるボイラ部での蒸発量が設定蒸発量となるように、補正を行うようにしているので、キルン炉の中間段以降での燃焼を良好に維持し得るとともにボイラ部での蒸発量を一定に維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
[実施の形態]
以下、本発明の実施の形態に係る廃棄物燃焼設備のロータリキルン炉における燃焼空気の供給制御方法および供給制御装置を、図1〜図5に基づき説明する。
【0018】
まず、廃棄物燃焼設備の概略全体構成について説明する。
この廃棄物燃焼設備は、図1に示すように、例えば天井走行クレーンに設けられたバケットを介して貯留ピットから供給される廃棄物を燃焼させる一次燃焼炉としてのロータリキルン炉(以下、キルン炉という)1と、このキルン炉1から排出された燃焼残渣(焼却残渣ともいう)および排ガスを導き当該燃焼残渣に含まれる未燃分および排ガス中の未燃分を燃焼させるとともに廃熱を回収するためのストーカ式の二次燃焼炉すなわちストーカ炉2と、このストーカ炉2から排出された排ガスを無害化して(具体的には、排ガス中の有害成分、塵埃などを除去して)大気に放出するための排ガス処理施設3と、少なくとも上記キルン炉1およびストーカ炉2における燃焼状態を制御するための制御装置4とから構成されている。
【0019】
上記キルン炉1は、略水平軸心回りで回転自在に支持された(正確には、供給口より排出口の方が下位となるように僅かに傾斜されている)円筒状の炉本体11と、この炉本体11をリングギア12を介して回転させる電動機などの回転駆動装置13と、上記炉本体11の供給口側に設けられたフード部14に配置された例えばプッシャー式の廃棄物供給装置15と、このフード部14に設けられて燃焼空気(キルン側での一次燃焼空気でもある)を炉本体11の前部に供給するための前段空気供給ノズル16と、炉本体11の中間部分の外周に配置された空気分配管17から燃焼空気(キルン側での二次燃焼空気でもある)を当該炉本体11の中間部分に供給するために炉本体11の周方向に沿って所定間隔おきに配置された複数の中間段空気供給ノズル18と、これら各空気供給ノズル16,18に燃焼空気を供給するためのキルン側空気供給装置19とから構成されている。
【0020】
上記中間段空気供給ノズル18は前後2列に配置され、前側中間段空気供給ノズル18Aと後側中間段空気供給ノズル18Bとから構成されるともに、これら各供給ノズル18A,18Bの噴出方向はキルン回転方向と逆向きにされるとともに、そのノズルが配置された鉛直面に対して15〜60度の範囲で斜め後方に向くように設けられている。勿論、この中間段空気供給ノズル18の先端については、炉本体11内にて層状の廃棄物表面から十分に上方に突出するような長さにされている。
【0021】
なお、上記空気分配管17の構成については、中間段空気供給ノズル18は回転側の炉本体11に設けられており、具体的には、炉本体11に設けられて移動側空気供給通路を形成する内側環状溝部17aと、例えば炉本体11を支持するフレーム側に設けられて上記移動側空気供給通路を覆い得る固定側空気供給通路を形成する外側環状蓋部17bとから構成されている。
【0022】
上記キルン側空気供給装置19は、送風機21と、この送風機21からの空気を前段空気供給ノズル16および中間段空気供給ノズル18に供給するための主空気管22および当該主空気管22から各ノズルなどの各空気供給箇所まで導くための分岐空気管23とから構成され、また上記各分岐空気管23には、それぞれ燃焼空気の供給量を計測するための第1および第2流量計24,25が設けられるとともにそれぞれの空気の供給量を制御し得る第1および第2ダンパ(空気量調節器である)26,27が設けられている。
【0023】
なお、以下において、炉本体11の前段空気供給ノズル16の位置(例えば、ノズルの直ぐ前側位置)を第1ポイント(イ)、前側中間段空気供給ノズル18Aの位置(例えば、ノズルの直ぐ前側位置)を第2ポイント(ロ)、後側中間段空気供給ノズル18Bの位置(例えば、ノズルの直ぐ前側位置)を第3ポイント(ハ)、炉本体11の排出口(以下、キルン炉出口という)の部分を第4ポイント(ニ)と称し、またこれら第1〜第3ポイント(イ)〜(ハ)には、炉本体11内の廃棄物の温度を計測し得る第1〜第3温度計28〜30がそれぞれ設けられている。
【0024】
上記ストーカ炉2は、キルン炉1から排出された燃焼残渣の未燃分および排ガス中に含まれた未燃分をさらに燃焼させるための火格子31が配置された主燃焼室32と、この主燃焼室32の上方に配置された二次燃焼室33と、この二次燃焼室33で燃焼した排ガスを導く煙道部34に設けられて熱回収を行うためのボイラ部35と、上記火格子31の下方および二次燃焼室33に燃焼空気を供給するための火格子用空気供給装置36および二次燃焼室用空気供給装置37とから構成されている。
【0025】
上記火格子用空気供給装置36は、送風機38と、この送風機38からの空気を火格子31の下部の風箱39に供給するための空気供給管40と、この空気供給管40の途中に設けられて空気の供給量を調節し得る第3ダンパ(空気量調節器)41とから構成され、また上記二次燃焼室用空気供給装置37は、送風機42と、この送風機42からの空気を二次燃焼室33に供給するための空気供給管43と、この空気供給管43の途中に設けられて空気の供給量を調節し得る第4ダンパ(空気量調節器)44とから構成されている。また、上記空気供給管40,43の途中には、第3および第4流量計45,46が設けられている。
【0026】
上記ボイラ部35には、二次燃焼室33および煙道部34に設けられた水管壁部に供給されたボイラ水を導いて飽和蒸気を分離する気水分離器47と、煙道部34に設けられるとともに上記気水分離器47にて分離された飽和蒸気を導きさらに過熱する過熱管48と、この過熱管48にて過熱された過熱蒸気を消費設備(例えば、ガスタービン、温水器など)に導くための蒸気取出管49とから構成されるとともに、この蒸気取出管49途中には蒸発量(蒸気量)を計測するための蒸気流量計50が設けられている。
【0027】
さらに、上記排ガス処理施設3は、上記ストーカ炉2の煙道部34から排出される排ガスを接続管51を介して導き所定温度まで冷却するための調温塔52と、この調温塔52にて調温された排ガスを接続管53を介して導き塵埃を除去するための集塵装置(例えば、バグフィルタである)54と、この集塵装置54で塵埃が除去された排ガスを途中に誘引送風機55が設けられた排ガス導出管56を介して導き大気に放出するためのガス放出筒(所謂、煙突である)57と、このガス放出筒57の手前に設けられてガスを無害化するための触媒を有する触媒反応筒(図示せず)と、上記調温塔52に設けられた噴霧ノズル61に水を供給する水供給管62および噴霧用空気を供給する空気供給管63と、同じく噴霧ノズル61に空気供給管64を介してパージ用空気を供給するための送風機65と、接続管53の途中に薬剤注入管66を介して薬剤注入用の空気を供給するための送風機67とから構成されている。勿論、図示しないが、上記薬剤注入管66には薬剤注入口が設けられている。
【0028】
また、上記排ガス導出管56の途中には第5流量計71が配置され、上記空気供給管63の途中には第6流量計72が配置され、さらにガス放出筒57の排出口側には、排ガス中の酸素濃度を計測する酸素濃度計73が設けられている。なお、パージ用空気を供給する空気供給管64から供給される空気量、および上記薬剤注入管66から供給される空気量については、それぞれ一定量にされており、既知量である。
【0029】
次に、この廃棄物燃焼設備における制御系すなわち制御装置4について説明する。
この制御装置4には、図2に示すように、大きく分けて、廃棄物の投入量を決定する廃棄物投入量決定部81と、この廃棄物投入量決定部81からの投入量に基づきキルン炉1の炉本体11の回転速度を設定するキルン炉回転速度設定部82と、上記廃棄物投入量決定部81からの投入量に基づきキルン炉1内に廃棄物を供給する廃棄物供給装置15の供給速度を設定するための廃棄物供給速度設定部83と、上記キルン炉回転速度設定部82で設定された回転速度に基づき回転駆動装置13を制御するキルン炉回転速度制御部84と、上記廃棄物供給速度設定部83で設定された設定供給速度に基づき廃棄物供給装置15を制御する廃棄物供給速度制御部85と、上記廃棄物投入量決定部81からの投入量に基づき発生される蒸発量を設定する蒸発量設定部91と、この蒸発量設定部91で設定された蒸発量に基づきキルン炉1に供給する空気量を制御するキルン炉側空気供給制御部92と、上記蒸発量設定部91で設定された蒸発量に基づきストーカ炉2に供給する空気量を設定するストーカ炉側空気供給制御部93とが具備されている。
【0030】
ところで、本発明の要旨は、この廃棄物燃焼設備から排出される排ガス(例えば、排ガス成分の濃度、排ガス量など)が適正となるように、キルン炉1からストーカ炉2に排出される排ガス性状が適正となるように且つボイラ部35で発生される蒸発量を考慮しつつキルン炉1内の温度についても所定範囲内(例えば、クリンカ発生温度、具体的には、1100℃以下の所定範囲内)となるように制御することにある。
【0031】
このため、キルン炉出口近傍での温度に基づき制御するのが良いのであるが、課題の欄で説明したように、キルン炉出口での温度計測が困難であるため、キルン炉1から排出される排ガスの燃焼状態を、当該キルン炉出口における計算上の酸素濃度[ここでは、酸素濃度と表現したが、本来、酸素量とすべきところ、後述するように間接的にすなわち計算により求めるために、有り得ない酸素量の値(負の値で、酸素不足の場合である)を示す場合もあることから、酸素濃度という語句の代わりに酸素指標という語句を用いることもできる]から判断するようにしたもので、この求められた酸素濃度が予め実験などで求められた設定範囲内となるように制御するものである。
【0032】
すなわち、キルン炉出口においては、燃焼が活発に行われており、温度を計測器で計測することが困難であるため、後述するように、最終的にガス放出筒57から排出される排ガスの酸素濃度から求められる排ガス中の残存酸素量と、ストーカ炉2および排ガス処理施設3において外部から供給された空気中に含まれている供給酸素量とから、キルン炉出口での酸素量を求め、次にこの酸素量を、排ガス処理施設3から排出される排ガス量とストーカ炉2および排ガス処理施設3において外部から供給された燃焼空気量とから求めたキルン炉出口における排ガス量で除算してキルン炉出口での酸素濃度(酸素指標)を求めるようにしている。
【0033】
以下、制御装置4については、本発明の要旨に係るキルン炉1への燃焼空気の制御を行うキルン炉側空気供給制御部92に着目して説明する。
なお、このキルン炉側空気供給制御部92においては、キルン炉出口での酸素濃度を求めるためのキルン炉酸素濃度演算部が設けられており、以下、このキルン炉酸素濃度演算部について説明する。
【0034】
図3に示すように、このキルン炉酸素濃度演算部(請求項に記載した酸素演算部に相当する)101は、空気供給管40,43,63の途中に設けられた第3、第4および第6流量計45,46,72からの計測値(ストーカ炉風箱への空気量、ストーカ炉二次燃焼室への空気量、調温塔への空気量)、並びに空気供給管64および薬剤注入管66から供給される一定量であるその他の既知空気量を入力するとともにその合計(キルン炉より後方の全ての分)を求める空気量加算部102と、排ガス導出管56の途中の第5流量計71にて計測された放出排ガス量(当該燃焼設備から排出される総排ガス量である)から上記空気量加算部102にて求められた合計供給空気量を減算してキルン炉1から排出されるキルン炉出口排ガス量を求めるキルン炉出口排ガス量演算部103と、上記空気量加算部102にて求められた合計供給空気量に空気中の酸素濃度(21%)を乗算して供給された酸素量を求めるキルン炉より後方での供給酸素量演算部104と、ガス導出管56に設けられた第5流量計71により計測された放出排ガス量に、酸素濃度計73により計測された酸素濃度値を乗算して当該排ガス中に含まれている残存酸素量を求める残存酸素量演算部105と、この残存酸素量演算部105で求められた残存酸素量からキルン炉より後方にて供給された合計供給酸素量を減算してキルン炉出口における酸素量(請求項に記載した差分値に相当する)を求めるキルン炉出口酸素量演算部106と、上記キルン炉出口排ガス量演算部103で求められたキルン炉出口排ガス量Aに対する上記キルン炉出口酸素量演算部106で求められたキルン炉出口酸素量Bの割合(B/A)を求めてキルン炉出口での酸素濃度を求める酸素濃度演算部107とから構成されている。
【0035】
すなわち、このキルン炉酸素濃度演算部101は、放出排ガス量とその酸素濃度とにより求められた残存酸素量から、キルン炉1より下流側のストーカ炉2および排ガス処理施設3で供給された供給酸素量を減算することにより、キルン炉出口における酸素量を求めるとともに、この酸素量をキルン炉1から排出される排ガス量で除算した値を酸素濃度として求めるものである。
【0036】
そして、この酸素濃度が所定範囲内となるようにキルン炉1に供給する燃焼空気を制御することにより、キルン炉1内での燃焼を良好に行わせるととともに、キルン炉1からストーカ炉2に適正な温度で且つ適正な量の排ガスを供給するとともに、ボイラ部35においては、所定の蒸発量が得られるようにするものである。
【0037】
次に、上記キルン炉側空気供給制御部92を、図4に基づき詳しく説明する。
このキルン炉側空気供給制御部92においては、廃棄物の性状、キルン炉1の炉内温度、ボイラ部35での蒸発量、およびキルン炉出口での酸素濃度が用いられて制御が行われる。
【0038】
具体的に説明すると、廃棄物の性状については、RDF投入量、木屑投入量、混合廃棄物投入量、汚泥投入量、油泥投入量、液状汚泥投入量から補正係数を決定し、この補正係数が用いられる。なお、この補正係数は、それぞれ、種類ごとで且つ投入割合(%)に応じて予め求められているグラフ(投入割合−補正係数)から得られるもので、例えば数種類のものが混ざっている場合には、それぞれ求められた補正係数の平均値が用いられる。なお、カロリーの高いもの(所謂、クリンカ発生のもと)については、補正係数を小さく、逆に、カロリーの低いものは補正係数を大きくする。
【0039】
また、キルン炉1における温度については、第2ポイント(ロ)に設置された第2温度計29により計測された計測温度の移動平均値が用いられる。
また、ボイラ部35での蒸発量としては、ボイラ部35で発生した蒸気の需要施設への蒸気取出管49の途中に設けられた蒸気流量計50にて計測された計測蒸発量が用いられる。
【0040】
このキルン炉側空気供給制御部92は、図4に示すように、大きく分けて、蒸発量設定部91で設定された設定蒸発量に基づき前段に供給する空気量を決定するとともに、キルン炉1の第2温度計29で計測された第2ポイント(ロ)での温度に基づき前段空気量に対して補正を行い、キルン炉1の前段に供給する空気量を求める前段供給空気量演算部111と、同じく蒸発量設定部91で設定された設定蒸発量に基づき中間段に供給する空気量を決定するとともに、計測した蒸発量と求めたキルン炉出口の酸素濃度に基づき中間段空気量に対して補正を行い、キルン炉1の中間段に供給する空気量を求める中間段供給空気量演算部112とから構成されている。
【0041】
上記前段供給空気量演算部111は、蒸発量設定部91で設定された設定蒸発量に対して前段に供給する空気量を決定する関数を有するとともにその入力された設定蒸発量からその前段空気量(前段設定空気量)を設定する前段空気量設定部121と、廃棄物の性状(例えば、固形分、水分、泥などによるもの)に応じて発熱量を変更するための補正係数を設定するための廃棄物性状補正係数設定部122と、上記前段空気量設定部121により設定された前段空気量を入力するとともに上記廃棄物性状補正係数設定部122により設定された補正係数を乗算することにより第1前段補正空気量を求める性状補正部123と、キルン炉1の第2ポイント(ロ)での目標温度[勿論、クリンカなどが発生しない温度で且つガス化に適した温度範囲(例えば、600〜900℃)内での温度値である]を設定する目標温度設定部124と、キルン炉1の第2ポイント(ロ)に設けられた第2温度計29からの計測温度を入力してその移動平均値を求める温度移動平均演算部125と、上記目標温度設定部124からの目標温度と上記温度移動平均演算部125からの移動平均値を入力して偏差を求める温度偏差演算部126と、この温度偏差演算部126で求められた温度の偏差に対して空気量の補正値を決定する関数を有するとともにその入力された偏差から温度補正係数を求める温度補正係数演算部127と、上記性状補正部123で求められた第1前段補正空気量に上記温度補正係数演算部127で求められた温度補正係数を乗算して補正する温度補正部128と、この温度補正部128で補正された第2前段補正空気量に対して予め設定された上限値を考慮して最終的に前段(フード部の前段空気供給ノズル)に供給する最終前段供給空気量(勿論、第2前段補正空気量が上限値を超える場合には上限値が採用される)を求める最終前段空気量演算部129とから構成されている。
【0042】
したがって、この最終前段空気量演算部129で求められた最終前段供給空気量が、図示しないダンパーの制御部に出力され、この制御部から、当該最終前段供給空気量を供給し得る開度指令が第2ダンパー27に出力される。
【0043】
また、上記中間段供給空気量演算部112は、蒸発量設定部91で設定された設定蒸発量に対して中間段に供給する空気量を決定する関数を有するとともにその入力された設定蒸発量からその中間段空気量(中間段設定空気量)を設定する中間段空気量設定部131と、この中間段空気量設定部131で設定された中間段空気量と上記前段空気量設定部121で設定された前段空気量とを加算する空気量加算部132と、この空気量加算部132で求められた合計空気量および上記性状補正部123で補正された第1前段補正空気量を入力して当該第1前段補正空気量を減算することにより中間段空気量を修正する中間段空気量修正部133と、ロータリキルン炉1の初期運転時または保守後の運転開始時の状況に応じて初期調整が必要となった場合に、この初期調整に対応する調整係数を設定する(初期調整が必要でない場合には、調整係数は1.0にされる)調整係数設定部134と、上記中間段空気量修正部133で求められた中間段空気量および上記調整係数設定部134で設定された調整係数を入力するとともに中間段空気量に調整係数を乗算することにより空気量の補正を行う第1中間段空気量補正部135と、キルン炉1の出口における目標酸素濃度を設定するキルン炉出口目標酸素濃度設定部136と、このキルン炉出口目標酸素濃度設定部136からの目標酸素濃度と上記キルン炉酸素濃度演算部101で求められたキルン炉出口酸素濃度を入力してその偏差を求める酸素濃度偏差演算部137と、この酸素濃度偏差演算部137で求められた偏差を入力するとともに当該偏差に基づくPID制御係数を求めるPID演算部138と、上記第1中間段空気量補正部135で求められた第1中間段補正空気量および上記PID演算部138からの制御係数を入力するとともに当該第1中間段補正空気量に制御係数を乗算することによりさらに空気量の補正を行う第2中間段空気量補正部(請求項に記載した酸素補正部に相当し、当該酸素補正部に第1中間段空気量補正部も含めることもできる)139と、ボイラ部35における設定蒸発量および上記蒸気流量計50にて計測された計測蒸発量を入力してその偏差を求める蒸発量偏差演算部140と、この蒸発量偏差演算部140で求められた偏差を入力するとともに当該偏差に基づきPID制御係数を求めるPID演算部141と、上記第2中間段空気量補正部139で求められた第2中間段補正空気量および上記PID演算部141からの制御係数を入力するとともに当該第2中間段補正空気量に制御係数を乗算することにより蒸発量に基づく空気量の補正を行い最終的に中間段に供給する最終中間段供給空気量を求める最終中間段空気量演算部(請求項に記載した蒸発量補正部に相当する)142とから構成されている。
【0044】
したがって、この最終中間段空気量演算部142で求められた最終中間段供給空気量が、図示しないダンパーの制御部に出力され、この制御部から、当該最終中間段供給空気量を供給し得る開度指令が第1ダンパー26に出力される。
【0045】
次に、上記制御装置4による燃焼空気の供給制御方法について説明する。
なお、本発明の要旨は、キルン炉側における燃焼空気の供給制御方法であるため、以下、キルン炉1側に着目して説明する。
【0046】
このキルン炉1における供給空気量の制御を簡単に説明すれば、キルン炉1から排出される燃焼残渣および排ガスの未燃分をストーカ炉2側に導き、完全燃焼させる際に、ストーカ炉2側での燃焼負荷が増大しないように、キルン炉1側で適正な空気量でもって燃焼を行うとともに、この燃焼時においては、キルン炉1側での温度が高くなり過ぎないように、すなわちキルン炉1内にてクリンカが発生するのを防止するものである。
【0047】
そして、キルン炉1内での燃焼状態、特に、キルン炉出口での燃焼状態を同出口での酸素濃度に基づき判断するとともに、この酸素濃度が所定の範囲となるように、供給すべき空気量を制御するものである。
【0048】
まず、廃棄物の種類、投入比率などが廃棄物投入量決定部81に入力されて廃棄物の投入量が決定される(所謂、計画処理量である)。
そして、この投入量がキルン炉回転速度設定部82に入力されてキルン炉1の回転速度が設定された後、この設定回転速度がキルン炉回転速度制御部84に入力されて、キルン炉1の回転速度が制御される。
【0049】
また、上記投入量が廃棄物供給速度設定部83に入力されてキルン炉1に設けられた廃棄物供給装置15での供給速度が設定された後、この設定供給速度が廃棄物供給速度制御部85に入力されて廃棄物の供給速度が制御される。
【0050】
さらに、上記投入量が蒸発量設定部91に入力されてボイラ部35での蒸発量が設定された後、この設定蒸発量がキルン炉側空気供給制御部92に入力される。
次に、このキルン炉側空気供給制御部92での制御について説明する。
【0051】
設定蒸発量が、前段空気量設定部121および中間段空気量設定部131に入力されて、キルン炉1の前段部分(前段空気供給ノズル16)および中間段部分(中間段空気供給ノズル18)に供給する空気量がそれぞれ所定の関数に基づき初期値としての前段空気量(前段設定空気量)および中間段空気量(中間段設定空気量)が求められる。
【0052】
そして、前段空気量が性状補正部123に入力され、ここで、予め設定されている廃棄物の性状補正係数が乗算されて、第1前段補正空気量が求められる。
この第1前段補正空気量は、温度補正部128に入力されて、キルン炉1の炉本体11の第2ポイント(ロ)に設けられた第2温度計29からの計測温度と目標温度との偏差に基づき求められた温度補正係数が乗算されて第2前段補正空気量が求められる。
【0053】
そして、この第2前段補正空気量が最終前段空気量演算部129に入力されて上限値と比較され、上限値を超えない場合には、当該第2前段補正空気量がそのまま最終前段供給空気量として、また上限値を超える場合には、当該上限値が最終前段供給空気量として決定され、そしてこの最終前段供給空気量が所定のダンパーの制御部に出力され、この制御部から当該最終前段供給空気量に応じた開度指令が第2ダンパー27に出力される。
【0054】
このように、ボイラ部35での設定蒸発量に基づき設定されたキルン炉1の前段側に供給すべき前段空気量に対し、廃棄物の性状に基づき補正を行うとともに、前段の終端部分すなわち中間段の始端部分での炉内温度が、クリンカが発生しない目標温度となるように補正を行うようにしているので、キルン炉1における前段側での燃焼を良好に行うことができる。
【0055】
一方、中間段空気量は空気量加算部132に入力されて、前段空気量と中間段空気量との合計空気量が求められた後、中間段空気量修正部133に入力され、ここで合計空気量から第1前段補正空気量が減算され、前段空気量の補正分が修正される。すなわち、前段空気量が性状補正部123で増加されると、その増加分だけ中間段空気量から減らされることになり、キルン炉1に供給される全空気量が一定になるように調整されている(排ガス量の増加が防止されている)。勿論、逆に、前段空気量が性状補正部123で減少された場合には、その減少分だけ中間段空気量が増やされる。
【0056】
次に、この調整された中間段空気量は、第1中間段空気量補正部135に入力され、ここで、キルン炉1における運転初期状況に応じた調整係数が乗算されて中間段空気量が補正される。
【0057】
この補正された第1中間段補正空気量が第2中間段空気量補正部139に入力され、ここで、キルン炉酸素濃度演算部101で求められたキルン炉出口における酸素濃度と目標酸素濃度との偏差に基づきさらに補正が行われる。
【0058】
さらに、この補正された第2中間段補正空気量が最終中間段空気量演算部142に入力され、ここで、ストーカ炉2のボイラ部35における計測蒸発量と目標蒸発量との偏差に基づきさらに補正が行われる。
【0059】
これらの補正により、キルン炉1の後段側での燃焼状態が良好に維持されるとともにストーカ炉1におけるボイラ部35での蒸発量が目標蒸発量となるように、キルン炉1からの排ガス量が制御される。
【0060】
そして、上記最終中間段空気量演算部142から、最終中間段供給空気量が所定のダンパーの制御部に出力され、この制御部から当該最終中間段供給空気量に応じた開度指令が第1ダンパー26に出力される。
【0061】
このように、ボイラ部35での設定蒸発量に基づき設定されたキルン炉1の中間段側に供給すべき中間段空気量に対し、特に、キルン炉出口での酸素濃度に基づき補正を行うとともに、ストーカ炉2のボイラ部35での蒸発量が目標蒸発量となるように、補正を行うようにしているので、キルン炉1の後段側での燃焼状態を良好に維持することができる。
【0062】
ここで、上述した供給制御方法を用いて実験を行った結果について、図5に基づき簡単に説明しておく。なお、図5(a)はロータリキルン炉の概略構成を示し、(b)は(a)の図面に対応した位置(キルン炉供給口からの距離)での炉内温度を示している。
【0063】
図5において、丸印は本発明に係る空気の供給制御方法(前段への空気供給+中間段への空気供給)よる場合を示し、三角印は前段だけへの空気供給を行った場合を示し、四角印は中間段だけへの空気供給を行った場合を示している。なお、横軸はキルン炉供給口からの距離(位置)を示し、縦軸は各ポイント部で計測した炉内温度を示している。
【0064】
この図5から、前段だけへの空気供給であれば、第1ポイント(イ)と第2ポイント(ロ)との間の部分にだけ空気が供給されることから、この部分で温度が急激に上昇し、そして第2ポイント(ロ)で炉内温度が1200℃を超え、その後減少しているのが分かる。
【0065】
また、中間段だけへの空気供給であれば、空気を供給する手前の第1ポイント(イ)と第2ポイント(ロ)との間の部分では、温度の急激な上昇が見られないものの、空気供給が行われた第2ポイント(ロ)と第3ポイント(ハ)との間の部分では急激に上昇し、そして第3ポイント(ハ)では1200℃近くまで達し、さらに第3ポイント(ハ)と第4ポイント(ニ)との間の部分でも温度が上昇し、第4ポイント(ニ)であるキルン炉排出口においては1200℃を超えている。
【0066】
これに対して、本発明の供給制御方法により、前段側および中間段側に空気供給を行った場合、第1ポイント(イ)〜第2ポイント(ロ)、および第2ポイント(ロ)〜第3ポイント(ハ)の間の部分では徐々に温度が上昇し、第4ポイント(ニ)であるキルン炉排出口に至っても1000℃を若干上回る程度に抑えられているのが良く分かる。なお、図5(b)中の破線の横線は、クリンカの発生温度(1100℃程度)を示している。
【0067】
すなわち、ロータリキルン炉において、前段側および中間段側に適切に空気を配分して、クリンカを発生させることなく、適切な燃焼状態が得られる。
ところで、上記実施の形態においては、中間段空気量の調整係数に基づく調整をした後、キルン炉出口の酸素濃度に基づく補正をし、その後、ボイラ部での蒸発量に基づく補正を行うように説明したが、これらの調整および各補正の順序については、適宜、変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の実施の形態に係る廃棄物燃焼設備の概略構成を示す図である。
【図2】同廃棄物燃焼設備における制御装置の概略構成を示すブロック図である。
【図3】同制御装置におけるキルン炉酸素濃度演算部の概略構成を示すブロック図である。
【図4】同制御装置におけるキルン炉側空気供給制御部の概略構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る燃焼空気の供給制御方法を用いた場合のロータリキルン炉内での温度を示す図で、(a)はロータリキルン炉の概略断面図、(b)はキルン炉の炉内温度を示すグラフである。
【符号の説明】
【0069】
1 ロータリキルン炉
2 ストーカ炉
3 排ガス処理施設
4 制御装置
11 炉本体
14 フード部
15 廃棄物供給装置
16 前段空気供給ノズル
18 中間段空気供給ノズル
19 キルン側空気供給装置
24 第1流量計
25 第2流量計
26 第1ダンパー
27 第2ダンパー
29 第2温度計
35 ボイラ部
36 火格子用空気供給装置
37 二次燃焼室用空気供給装置
45 第3流量計
46 第4流量計
56 排ガス導出管
57 ガス放出筒
71 第5流量計
72 第6流量計
73 酸素濃度計
81 廃棄物投入量決定部
82 キルン炉回転速度設定部
83 廃棄物供給速度設定部
84 キルン炉回転速度制御部
85 廃棄物供給速度制御部
91 蒸発量設定部
92 キルン炉側空気供給制御部
93 ストーカ炉側空気供給制御部
101 キルン炉酸素濃度演算部
102 空気量加算部
103 キルン炉出口排ガス量演算部
104 供給酸素量演算部
105 残存酸素量演算部
106 キルン炉出口酸素量演算部
107 酸素濃度演算部
111 前段供給空気量演算部
112 中間段供給空気量演算部
121 前段空気量設定部
122 廃棄物性状補正係数設定部
123 性状補正部
124 目標温度設定部
125 温度移動平均演算部
126 温度偏差演算部
127 温度補正係数演算部
128 温度補正部
129 最終前段空気量演算部
131 中間段空気量設定部
132 空気量加算部
133 中間段空気量修正部
134 調整係数設定部
135 第1中間段空気量補正部
136 キルン炉出口目標酸素濃度設定部
137 酸素濃度偏差演算部
138 PID演算部
139 第2中間段空気量補正部
140 蒸発量偏差演算部
141 PID演算部
142 最終中間段空気量演算部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物を燃焼させる一次燃焼炉であるロータリキルン炉と、このロータリキルン炉から排出された燃焼残渣および排ガスの未燃分をさらに燃焼させるとともに廃熱を回収するボイラ部を有する二次燃焼炉と、この二次燃焼炉から排出される排ガスを処理する排ガス処理施設とを有する廃棄物燃焼設備における上記ロータリキルン炉への燃焼空気の供給制御方法であって、
廃棄物の投入量に基づき予め設定されたロータリキルン炉に供給する空気量に対して、
上記二次燃焼炉および排ガス処理施設に供給された酸素量から排ガス処理施設より排出された残存酸素量を差し引いて求められた差分値をロータリキルン炉に供給した空気量で除算して得られる酸素濃度が、予め設定された設定範囲内となるように、酸素による補正を行う
ことを特徴とするロータリキルン炉への燃焼空気の供給制御方法。
【請求項2】
廃棄物を燃焼させる一次燃焼炉であるロータリキルン炉と、このロータリキルン炉から排出された燃焼残渣および排ガスの未燃分をさらに燃焼させるとともに廃熱を回収するボイラ部を有する二次燃焼炉と、この二次燃焼炉から排出される排ガスを処理する排ガス処理施設とを有する廃棄物燃焼設備における上記ロータリキルン炉への燃焼空気の供給制御方法であって、
廃棄物の投入量から求められた上記ボイラ部での設定蒸発量に基づきロータリキルン炉の前段側に供給すべき設定量としての前段空気量および中間段側に供給すべき設定量としての中間段空気量を求め、
上記前段空気量に対して、ロータリキルン炉の前段側で計測された計測温度が予め設定された設定範囲内となるように、温度による補正を行うことにより、前段側に供給する前段供給空気量を求め、
上記中間段空気量に対して、二次燃焼炉および排ガス処理施設に供給された酸素量から排ガス処理施設より排出された残存酸素量を差し引いて求められた差分値をロータリキルン炉に供給した空気量で除算して得られる酸素濃度が、予め設定された設定範囲内となるように、酸素による補正を行うことにより、中間段に供給する中間段供給空気量を求める
ことを特徴とするロータリキルン炉への燃焼空気の供給制御方法。
【請求項3】
補正された中間段空気量に対して、さらにボイラ部での計測蒸発量が予め設定された設定蒸発量となるように、蒸発量による補正を行うことを特徴とする請求項2に記載のロータリキルン炉への燃焼空気の供給制御方法。
【請求項4】
廃棄物を燃焼させる一次燃焼炉であるロータリキルン炉と、このロータリキルン炉から排出された燃焼残渣および排ガスの未燃分を燃焼させるとともに廃熱を回収するボイラ部を有する二次燃焼炉と、この二次燃焼炉から排出される排ガスを処理する排ガス処理施設とを有する廃棄物燃焼設備における上記ロータリキルン炉への燃焼空気の供給制御装置であって、
廃棄物の投入量から求められた上記ボイラ部での設定蒸発量に基づきロータリキルン炉の前段側に供給すべき空気量を設定する前段空気量設定部および中間段側に供給すべき空気量を設定する中間段空気量設定部と、
上記前段空気量設定部にて求められた前段空気量に対して、ロータリキルン炉の前段側に設けられた温度計により計測される計測温度が予め設定された設定範囲内となるように補正を行う温度補正部と、
上記二次燃焼炉および排ガス処理施設に供給された酸素量から排ガス処理施設から排出された残存酸素量を差し引いて求められた差分値をロータリキルン炉に供給した空気量で除算して酸素濃度を求める酸素演算部と、
上記中間段空気量設定部にて求められた中間段設定空気量に対して、上記酸素演算部で求められた値が予め設定された設定範囲内となるように補正を行う酸素補正部と
を具備したことを特徴とするロータリキルン炉への燃焼空気の供給制御装置。
【請求項5】
ボイラ部における設定蒸発量と計測蒸発量との偏差を求める蒸発量偏差演算部と、
酸素補正部にて補正された中間段補正空気量を入力するとともに上記蒸発量偏差演算部にて求められた偏差が無くなるように当該中間段補正空気量をさらに補正する蒸発量補正部と
を具備したことを特徴とする請求項4に記載のロータリキルン炉への燃焼空気の供給制御装置。
【請求項6】
酸素演算部を、
二次燃焼炉および排ガス処理施設に設けられた流量計にて計測された各空気量を加算してロータリキルン炉より後方で供給された合計供給空気量を求める空気量加算部と、
この空気量加算部にて求められた合計供給空気量に当該供給された空気の酸素濃度を乗算して合計供給空気量に含まれる酸素量を求める供給酸素量演算部と、
排ガス処理施設の後段側に設けられた流量計にて計測された総排ガス量から上記供給空気量演算部にて求められた合計供給空気量を減算してキルン炉出口での排ガス量を求めるキルン炉出口排ガス量演算部と、
排ガス処理施設の後段側に設けられた酸素濃度計により計測された酸素濃度を上記総排ガス量に乗算することにより当該総排ガス中の残存酸素量を求める残存酸素量演算部と、
この残存酸素量演算部にて求められた残存酸素量から上記供給酸素量演算部にて求められた供給酸素量を減算してキルン炉出口酸素量を求めるキルン炉出口酸素量演算部と、
このキルン炉出口酸素量演算部にて求められたキルン炉出口酸素量を上記キルン炉出口排ガス量演算部にて求められた排ガス量で除算して酸素濃度を求める酸素濃度演算部と
から構成したことを特徴とする請求項5に記載のロータリキルン炉への燃焼空気の供給制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−20123(P2008−20123A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−192243(P2006−192243)
【出願日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【出願人】(000005119)日立造船株式会社 (764)
【Fターム(参考)】