説明

ロータリーアクチュエータ

【課題】圧力媒体の内部漏洩を低減できるとともに、高圧用の回転シールが不要な構造を実現できる、ロータリーアクチュエータを提供する。
【解決手段】ケース11の内部に筒状のシリンダ12が設置される。出力軸13は、シリンダ12の内側の中空領域23に設置される。ピストン(14a、14b)は、円弧状に延び、シリンダ12の内側で、シリンダ12の周方向に沿って摺動して変位可能に支持される。ピストン(14a、14b)は、出力軸13に一体に設けられたアーム15を両側から付勢可能に一対で設けられる。一対のピストン(14a、14b)のそれぞれとシリンダ12との間において圧力媒体が導入される圧力室(26a、26b)が区画される。圧力室(26a、26b)の一方に圧力媒体が供給され、他方から圧力媒体が排出されることで、アーム15が変位し、出力軸13が回転方向において揺動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力媒体の作用によって出力軸が回転方向において揺動して駆動トルクを出力する、ロータリーアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
圧力媒体としての圧力流体の作用によって出力軸が回転方向において揺動して駆動トルクを出力するロータリーアクチュエータとして、特許文献1に開示されたような構造のロータリーアクチュエータが知られている。
【0003】
特許文献1に開示されたロータリーアクチュエータは、円筒状のシリンダの内側にリブが一体に設けられ、シリンダの内側において回転自在に設置された出力軸にベーンが設けられている。シリンダの両端には、エンドキャップが取り付けられている。そして、リブ及びシリンダの内壁面と、ベーン及び出力軸の外壁面とが、圧力室を形成している。隣り合う圧力室に圧力流体が交互に供給されることで、圧力流体の作用によって出力軸が回転方向において揺動して駆動トルクが出力される。
【0004】
また、上記のロータリーアクチュエータにおいては、リブ及びベーンにそれぞれ設けられた溝に、シールが嵌め込まれている。リブに嵌め込まれたシールが出力軸の外壁面に押し付けられ、ベーンに嵌め込まれたシールがシリンダの内壁面に押し付けられている。これにより、隣り合う圧力室の間が封止されるように構成されている。また、圧力室は、エンドキャップと出力軸及びベーンとの間においても、ガスケットを介して封止されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5601165号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されたような従来の一般的なロータリーアクチュエータは、回転する出力軸とシリンダに設けられたリブとの間における回転摺動部が、リブに嵌め込まれたシールによって封止される。そして、回転する出力軸に設けられたベーンとシリンダとの間における回転摺動部も、ベーンに嵌め込まれたシールによって封止される。更に、回転する出力軸及びベーンとエンドキャップとの間における回転摺動部も、ガスケットによって封止される。
【0007】
しかし、回転摺動部におけるシールによる圧力流体の漏洩抑止は難しく、特許文献1に開示されたような従来のロータリーアクチュエータの場合、シール或いはガスケットからの漏洩が多く生じてしまうのが現状である。このため、ロータリーアクチュエータ内での圧力流体の内部漏洩が多く生じることになる。また、従来のロータリーアクチュエータの場合、リブ或いはベーンの溝にシールが嵌め込まれる構造であるため、溝とシールとの間における漏洩も問題となる。また、溝に嵌め込まれたシールには角部が設けられるため、とくに、この角部及びその近傍の部分において、摺動する相手側の面に対する密着性の確保が難しく、漏洩の抑制が困難となる。このため、更に、ロータリーアクチュエータ内での圧力流体の内部漏洩が多く生じてしまうことになる。
【0008】
また、従来のロータリーアクチュエータの場合、摺動する相手側の面に対して高圧で押し付けられるとともに回転摺動部に用いられる高圧用の回転シールが必要となる。このため、静的に用いられるシール或いは直線摺動部に用いられるシールとは異なり、設計上意図されるシール性能を維持可能なシール寿命が大幅に短くなってしまうという問題もある。よって、高圧用の回転シールが不要な構造のロータリーアクチュエータの実現が望まれる。
【0009】
本発明は、上記実情に鑑みることにより、圧力媒体の内部漏洩を低減できるとともに、高圧用の回転シールが不要な構造を実現できる、ロータリーアクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための第1発明に係るロータリーアクチュエータは、圧力媒体の作用によって出力軸が回転方向において揺動して駆動トルクを出力する、ロータリーアクチュエータに関する。そして、第1発明に係るロータリーアクチュエータは、ケースと、前記ケースの内部に設置されて、内側に中空領域が設けられた筒状のシリンダと、前記ケースに対して回転自在に支持され、軸方向が前記シリンダの軸方向と平行に延びるとともに前記中空領域に設置された前記出力軸と、円弧状に延びる部分を有し、前記シリンダの内側に設置されるとともに当該シリンダの周方向に沿って当該シリンダに対して摺動して変位可能に支持されるピストンと、を備え、前記ピストンは、前記出力軸に一体に設けられ又は固定されて前記シリンダの径方向に延びるアームを前記シリンダの周方向における両側から付勢可能に一対で設けられ、一対の前記ピストンのそれぞれと前記シリンダとの間において圧力媒体が導入される圧力室が区画され、一対の前記ピストンの一方によって区画された前記圧力室に圧力媒体が供給され、一対の前記ピストンの他方によって区画された前記圧力室から圧力媒体が排出されることで、前記アームが前記シリンダの周方向に変位し、前記出力軸が回転方向において揺動することを特徴とする。
【0011】
この構成によると、ケースの内部に設置されたシリンダの内側において、対となる圧力室の一方に圧力媒体が供給され他方から圧力媒体が排出されることで、一対のピストンがシリンダの周方向に摺動して変位する。そして、一対のピストンによってアームが付勢されることで、出力軸が回転方向に揺動し、ロータリーアクチュエータの駆動トルクが出力される。このため、上記の構成のロータリーアクチュエータによると、シリンダの内側においてシリンダに対して摺動するピストンとシリンダとの間で圧力室が区画されることになる。これにより、従来のロータリーアクチュエータに設けられていたような、出力軸、ベーン、シリンダ、リブ、エンドキャップで区画される圧力室を備えた構造が不要となる。即ち、上記の構成のロータリーアクチュエータによると、出力軸とシリンダに設けられたリブとの間における回転摺動部、回転する出力軸に設けられたベーンとシリンダとの間における回転摺動部、回転する出力軸及びベーンとエンドキャップとの間における回転摺動部が、不要となる。よって、上記の構成によると、ロータリーアクチュエータ内での圧力媒体の内部漏洩を低減することができる。また、上記の構成のロータリーアクチュエータの場合、摺動する相手側の面に対して高圧で押し付けられるとともに回転摺動部に用いられる高圧用の回転シールも不要となる。
【0012】
従って、本発明によると、圧力媒体の内部漏洩を低減できるとともに、高圧用の回転シールが不要な構造を実現できる、ロータリーアクチュエータを提供することができる。
【0013】
第2発明に係るロータリーアクチュエータは、第1発明のロータリーアクチュエータにおいて、前記シリンダは、分割された状態で形成された複数のシリンダブロックを有し、複数の前記シリンダブロックが前記シリンダの軸方向に沿って積層されることで、前記シリンダが一体に組み立てられ、前記シリンダには、当該シリンダに対して摺動して変位可能に支持される前記ピストンを収納するピストンチャンバが設けられ、前記シリンダの軸方向において隣り合う前記シリンダブロック同士の間において、前記ピストンチャンバが区画されていることを特徴とする。
【0014】
この構成によると、複数のシリンダブロックがシリンダの軸方向に積層されることでシリンダが組み立てられ、隣り合うシリンダブロック同士の間にピストンチャンバが区画される。このため、ピストンチャンバが形成される際、シリンダブロックに対して半割状態の溝が形成された後、それらが組み合わされることで、ピストンチャンバが構成されることになる。これにより、シリンダの周方向に摺動して変位するピストンを収納するピストンチャンバを容易に形成でき、シリンダを容易に製造することができる。
【0015】
第3発明に係るロータリーアクチュエータは、第1発明又は第2発明のロータリーアクチュエータにおいて、一対の前記ピストンとして構成されるピストンユニットは、複数設けられ、複数の前記ピストンユニットは、前記出力軸の軸方向に沿って並んで設置されていることを特徴とする。
【0016】
この構成によると、出力軸の軸方向に沿って並んで複数設置されたピストンユニットによってアームが付勢されて出力軸が駆動される。このため、シリンダの径方向の寸法を増大させることなく、コンパクトな構造で、駆動トルクの高出力化を図ることができる。
【0017】
第4発明に係るロータリーアクチュエータは、第1発明乃至第3発明のいずれかのロータリーアクチュエータにおいて、前記アームは、前記出力軸における複数個所から前記シリンダの径方向に延びるように、複数設けられていることを特徴とする。
【0018】
この構成によると、アームが出力軸の複数個所から径方向に延びるように設けられる。このため、アームを介して出力軸を回転駆動する一対のピストンが複数ユニット設置される場合に、それらの設置位置に関する設計の自由度を向上させることができる。尚、例えば、アームは、出力軸の軸方向における複数個所からシリンダの径方向に延びるように設けられていてもよい。また、アームは、シリンダの周方向における角度が異なる方向に向かって出力軸における複数個所からシリンダの径方向に延びるように設けられていてもよい。また、出力軸の軸方向における位置が同じ位置であってシリンダの周方向における角度が異なる方向に複数のアームが延びる構造のロータリーアクチュエータを構成することもできる。この場合、シリンダの軸方向に長大化してしまうことを抑制するとともにシリンダの径方向に大型化してしまうことも抑制しつつ、駆動トルクの高出力化を図ることができる。
【0019】
第5発明に係るロータリーアクチュエータは、第1発明乃至第4発明のいずれかのロータリーアクチュエータにおいて、前記シリンダには、当該シリンダに対して摺動して変位可能に支持される前記ピストンを収納するピストンチャンバが設けられ、前記ピストンチャンバは、前記シリンダの本体に設置されるとともに円弧状に延びる筒状の中空部材によって区画されていることを特徴とする。
【0020】
この構成によると、ピストンチャンバを区画する部材が、シリンダの本体とは別部材として設けられた筒状の中空部材によって構成される。このため、ピストンが摺動する面に継ぎ目がなく、更に内部漏洩を低減できる構造のピストンチャンバを容易に形成することができる。
【0021】
第6発明に係るロータリーアクチュエータは、第3発明のロータリーアクチュエータにおいて、複数の前記ピストンユニットのうち前記アームに作用する付勢力を生じさせる前記ピストンユニットの数を変更して前記アームを駆動可能であることを特徴とする。
【0022】
この構成によると、複数のピストンユニットのうちアームに作用する付勢力を生じさせるピストンユニットの数を変更してアームを駆動可能であるため、ロータリーアクチュエータの可変出力構造を容易に実現することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によると、圧力媒体の内部漏洩を低減できるとともに、高圧用の回転シールが不要な構造を実現できる、ロータリーアクチュエータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施の形態に係るロータリーアクチュエータについて軸方向に対して垂直な方向から見た図であって一部断面を含む図である。
【図2】図1に示すロータリーアクチュエータについてA−A線矢視方向から見た断面を示す断面図である。
【図3】図2に示すロータリーアクチュエータにおけるシリンダの断面図である。
【図4】図2に示すロータリーアクチュエータにおけるピストンユニットを示す図である。
【図5】図2に示すロータリーアクチュエータの動作を制御する油圧回路を模式的に示す回路図である。
【図6】変形例に係るロータリーアクチュエータについて軸方向に対して垂直な方向から見た図であって一部断面を含む図である。
【図7】図6に示すロータリーアクチュエータについてC−C線矢視方向から見た断面を示す断面図である。
【図8】変形例に係るロータリーアクチュエータにおける出力軸及びアームを示す図である。
【図9】変形例に係るロータリーアクチュエータにおける軸方向と垂直な断面を示す断面図である。
【図10】図9に示すロータリーアクチュエータの動作を制御する油圧回路を模式的に示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。尚、本発明は、圧力媒体の作用によって出力軸が回転方向において揺動して駆動トルクを出力する、ロータリーアクチュエータに関して広く適用することができるものである。
【0026】
図1は、本発明の一実施の形態に係るロータリーアクチュエータ1について軸方向に対して垂直な方向から見た図であって一部断面を含む図である。また、図2は、ロータリーアクチュエータ1について図1のA−A線矢視方向から見た断面を示す断面図である。尚、図1は、図2のB−B線矢視方向から見た断面を含んで図示されている。
【0027】
図1及び図2に示すロータリーアクチュエータ1は、圧力媒体の作用によって出力軸13がその軸心を回転中心とする回転方向において揺動して駆動トルクを出力するアクチュエータとして設けられている。圧力媒体としては、圧縮空気、圧油、等、種々の圧力流体が挙げられる。また、圧力媒体として、金属材料、樹脂材料、セラミックス材料、或いはこれらの複合材料、等を素材とした粉末粒子状の紛体が用いられてもよい。尚、本実施形態では、圧力媒体として圧油が用いられる形態を例にとって説明する。
【0028】
図1及び図2に示すように、ロータリーアクチュエータ1は、ケース11、シリンダ12、出力軸13、複数のピストンユニット14、アーム15、等を備えて構成されている。尚、ケース11、シリンダ12、出力軸13、複数のピストンユニット14、アーム15は、例えば、ステンレス鋼、チタン合金、アルミニウム合金、等の金属材料を主要な素材として形成されている。
【0029】
ケース11は、ケース本体部21、一対の蓋部(22a、22b)を備えて構成されている。ケース本体部21は、例えば、円筒状の部材として設けられ、内側が中空で両端部が開口した部材として構成されている。そして、開口した両端部のそれぞれには、蓋部22a及び蓋部22bが嵌め込まれて固定されている。この一対の蓋部(22a、22b)によって、ケース本体部21の両端部が閉鎖されている。各蓋部(22a、22b)は、例えば、円盤状の部材として設けられている。そして、各蓋部(22a、22b)は、その中央部分において、後述する出力軸13の端部がそれぞれ貫通して突出する貫通孔が形成されている。
【0030】
図3は、図2に対応する断面におけるシリンダ12の断面図である。尚、図3では、ピストンユニット14についても二点鎖線で図示されている。図1乃至図3に示すように、シリンダ12は、ケース11の内側に設置されて、内側に中空領域23が設けられた筒状の構造体として構成されている。中空領域23は、シリンダ12の軸方向に沿って延びる中空の領域として設けられ、後述の出力軸13が設置されている。尚、シリンダ12の軸方向と、アクチュエータ1における長手方向であるアクチュエータ1の軸方向と、ケース11の円筒軸方向と、出力軸13の軸方向とは、平行な方向として構成されており、同一の方向として構成されていてもよい。
【0031】
また、シリンダ12の内側には、それぞれシリンダ12の周方向に沿って円弧状に且つ長孔状に延びる複数のピストンチャンバ24が設けられている。複数のピストンチャンバ24は、シリンダ12の軸方向に沿って並んで設けられている。また、各ピストンチャンバ24は、シリンダ12の内側において、中空領域23にそれぞれ連通する孔として設けられている。そして、各ピストンチャンバ24は、後述するピストンユニット14によって、中空領域23との間での圧油の移動が規制されるように区画されている。
【0032】
また、円弧状に延びる長孔状の各ピストンチャンバ24における円弧方向の中央部分には、ピストンチャンバ24を区画する区画構造体として設けられたプラグブロック25がそれぞれ嵌め込まれて固定されている。プラグブロック25は、ピストンチャンバ23の径寸法に対応した径寸法を有する円形断面で円弧状にピストンチャンバ23の長手方向に沿って短く延びる部材として設けられている。
【0033】
また、プラグブロック25の外周には複数のシール溝が形成され、これらのシール溝には、リング状のシール部材25aがそれぞれ嵌め込まれている。シール部材25aは、静的に用いられる低圧用のシール部材となる。このシール部材25aにより、プラグブロック25の外周とピストンチャンバ23の壁部との間が封止されている。尚、ピストンチャンバ24においては、プラグブロック25とピストンユニット14との間において、後述する一対の圧力室(26a、26b)が区画されている。
【0034】
また、シリンダ12は、分割された状態で形成された複数のシリンダブロック26を備えて構成されている。各シリンダブロック26は、軸方向長さの短い円筒状の部材として設けられている。そして、複数のシリンダブロック26が、ケース11のケース本体21の内側において、シリンダ12の軸方向に沿って積層されていることで、シリンダ12が一体に組み立てられている。
【0035】
また、各シリンダブロック26には、中空領域23の一部を構成する貫通孔として設けられた領域と、半円形状の断面でシリンダ12の周方向に沿って円弧状に延びる溝とが設けられている。上記の溝は、シリンダ12の軸方向における両端以外の位置に設置されるシリンダブロック26では、軸方向における両方の端面に設けられ、シリンダ12の軸方向における両端の位置に設置されるシリンダブロック26では、軸方向における一方の端面に設けられている。そして、シリンダ12の軸方向において隣り合うシリンダブロック26同士の間において、上記の溝同士が対向して円形断面を構成するように重ねられることで、各ピストンチャンバ24が区画されている。また、シリンダブロック26が積層されてピストンチャンバ24が形成される際には、シリンダブロック26間にプラグブロック25が固定される。尚、ピストンチャンバ24を区画する区画構造体は、本実施形態においては、シリンダブロック26とは別体に設けられるとともにピストンチャンバ24に嵌め込まれて固定されるプラグブロック25として設けられているが、この通りでなくてもよい。区画構造体がシリンダブロック26に一体に設けられた形態が実施されてもよい。
【0036】
また、シリンダ12の軸方向において隣り合うシリンダブロック26において、半円形断面の上記の溝が形成されるとともに互いに重ねあわされる合わせ面は、互いに密着するように平坦な面として形成されている。これにより、隣り合うシリンダブロック26間における圧油の漏洩が十分に防止されることになる。尚、隣り合うシリンダブロック26のうちの一方には、上記の合わせ面の外周の縁部において、リング状のシール部材40が嵌め込まれている。このシール部材40は、静的に用いられる低圧用のシール部材となる。
【0037】
また、本実施形態では、複数のシリンダブロック26のうち、シリンダ12の軸方向における両端以外の位置に設置されるシリンダブロック26と、両端の位置に設置されるシリンダブロック26とでは、合わせ面の構成が異なっている。シリンダ12の軸方向における両端以外の位置に設置されるシリンダブロック26は、シリンダ12の軸方向における両方の端面が、重ねられる相手側のシリンダブロック26に対して密着するとともにピストンチャンバ24を区画する合わせ面として設けられている。これに対し、シリンダ12の軸方向における両端の位置に設置されるシリンダブロック26は、一方の端面が、重ねられる相手側のシリンダブロック26に対して密着するとともにピストンチャンバ24を区画する合わせ面として設けられ、他方の端面が、蓋部(22a、22b)に対して密着する合わせ面として設けられている。
【0038】
尚、シリンダブロック26同士が重ね合わされることで円形断面の孔を構成してピストンチャンバ24を形成する、上記の半円形状の断面の溝の形成に際しては、例えば、まず、シリンダブロック26の素材に対してシリンダ12の周方向に円弧状に延びる溝の切削加工が行われる。そして、その切削加工の後、切削加工された半円形状断面を構成する壁面に対して研磨加工が施されることで、滑らかな円弧形状の断面でシリンダ12の周方向に円弧状に延びる溝が形成される。
【0039】
出力軸13は、ケース11に対して回転自在に支持されて、軸方向がシリンダ12の軸方向と平行に延びるとともに中空領域23に設置されている。そして、出力軸13には、軸部13a、端部(13b、13c)が設けられている。
【0040】
軸部13aは、軸方向がシリンダ12の軸方向と一致する方向に延びる円柱状の部分として設けられている。端部13b及び端部13cは、軸部13aの両端にそれぞれ一体に設けられている。端部13bは、ケース11の蓋部22aに対して摺動して回転自在に支持されている。端部13cは、ケース11の蓋部22bに対して摺動して回転自在に支持されている。
【0041】
端部13bの外周と蓋部22aの貫通孔の内周との間には、リング状のシール部材27が設置されている。本実施形態では、蓋部22aの内周に形成されたシール溝に対してシール部材27が嵌め込まれ、このシール部材27の内側に端部13bが挿入されている。また、端部13cの外周と蓋部22bの貫通孔の内周との間にも、リング状のシール部材28が設置されている。本実施形態では、蓋部22bの内周に形成されたシール溝に対してシール部材28が嵌め込まれ、このシール部材28の内側に端部13cが挿入されている。これらのシール部材(27、28)によって、出力軸13とケース11との間が封止されている。
【0042】
尚、出力軸13及び蓋部(22a、22b)が対向する中空領域23は、大気圧に開放された油が貯留されるタンクを備えたリザーバ回路36(図5を参照)に連通する低圧室となり、シール部材(27、28)としては、低圧用のシール部材が用いられる。また、シール部材(27、28)が嵌め込まれるシール溝は、蓋部(22a、22b)に設けられていなくてもよい。シール部材(27、28)が嵌め込まれるシール溝は、端部(13b、13c)のみに設けられていてもよく、また、蓋部(22a、22b)及び端部(13b、13c)の両方に設けられていてもよい。
【0043】
アーム15は、本実施形態では、略台形状の断面で出力軸13の軸方向と平行に延びる厚肉の1枚の板状の部分として設けられており、出力軸13の軸部13aに一体に設けられている。尚、アーム15は、出力軸13とは別部材として設けられて出力軸13に固定されてもよい。また、アーム15は、出力軸13とともに中空領域23に設置されている。
【0044】
また、アーム15におけるシリンダ12の周方向における両側にそれぞれ設けられる面は、シリンダ12の周方向に対して垂直な面に沿って広がるように設けられている。また、これらの面には、後述するピストンユニット14の各アークピストン(14a、14b)の端部が当接する凹み部15aが設けられている。凹み部15aは、アーム15におけるシリンダ12の周方向の両側の面において、複数のピストンユニット14の位置に対応して、出力軸13の軸方向に沿って複数並んで設けられている。各凹み部15aは、ピストンユニット14の各アークピストン(14a、14b)の端部の形状に対応して形成され、例えば、球面の一部を成す形状に凹み形成されている。
【0045】
図4は、ピストンユニット14を示す図である。図1乃至図4に示すピストンユニット14は、ロータリーアクチュエータ1においては、複数設けられており、それぞれ一対のアークピストン(14a、14b)として構成されている。複数のピストンユニット14は、出力軸13の軸方向に沿って並んで設置されている。各アークピストン(14a、14b)は、本実施形態におけるピストンを構成している。そして、各アークピストン(14a、14b)は、アーク型に形成され、円形断面で円弧状に延びる部分を備えて構成されている。
【0046】
アークピストン(14a、14b)は、シリンダ12の内側のピストンチャンバ24に設置されるとともに、シリンダ12の周方向に沿ってシリンダ12に対して摺動して変位可能に支持されている。また、一対のアークピストン(14a、14b)は、隣り合うシリンダブロック26間で区画される1つのピストンチャンバ24において、プラグブロック25を挟む位置に設置されている。そして、一対のアークピストン(14a、14b)は、ピストンチャンバ24の壁面に対して、ピストンチャンバ24が円弧状に延びる方向に沿って摺動自在に、設置されている。尚、シリンダ12において、ピストンチャンバ24は、シリンダ12に対して摺動して変位可能に支持されるアークピストン(14a、14b)を収納する領域として設けられている。
【0047】
また、各ピストンチャンバ24における壁面には、シール溝が形成され、このシール溝には、リング状のシール部材32が嵌め込まれている。シール部材32は、例えば、各ピストンチャンバ24において、各アークピストン(14a、14b)に対応して2つ設置されている。各シール部材32には、各アークピストン(14a、14b)が摺動自在に挿入されている。これにより、ピストンチャンバ24の壁面とアークピストン(14a、14b)の外周との間の液密性或いは気密性が更に高められている。これらのシール部材32は、直線摺動部に用いられるシール部材と同様の仕様のシール部材として構成されることになる。尚、このシール部材32が設けられていなくてもよく、この場合であっても、ピストンチャンバ24の壁面とアークピストン(14a、14b)の外周との間は、十分に封止される。また、シール部材32が、ピストンチャンバ24ではなくアークピストン(14a、14b)に嵌め込まれている構成が実施されてもよい。
【0048】
また、各ピストンチャンバ24における壁面には、複数のリング嵌め込み溝が形成され、これらのリング嵌め込み溝には、ブロンズ製のリング部材33がそれぞれ嵌め込まれている。リング部材33は、各ピストンチャンバ24において、各アークピストン(14a、14b)に対応してそれぞれ複数設置されている。各リング部材33には、各アークピストン(14a、14b)が摺動自在に挿入されている。これにより、ピストンチャンバ24の壁面とアークピストン(14a、14b)の外周との間において焼き付きが生じてしまうことが、更に効率よく防止されている。
【0049】
尚、アークピストン(14a、14b)の製造に際しては、例えば、まず、円形のリング部材の周方向における2か所の部分が切削加工によって切除される。このように切除される2か所の部分は、例えば、円形のリング部材の径方向中心を介して対向する2か所の部分として、即ち、円形のリング部材の直径方向と交差する2か所の部分として設定される。これにより、円形のリング部材から、一対のアークピストン(14a、14b)の素材が切り出されることになる。次いで、一対のアークピストン(14a、14b)の素材の外周に対して研磨処理が施されることで、円形断面を形成してピストンチャンバ24に対して摺動する各アークピストン(14a、14b)の外周側面が形成されることになる。
【0050】
また、各ピストンユニット14を構成する一対のアークピストン(14a、14b)は、アーム15をシリンダ12の周方向における両側から付勢可能に設けられている。各アークピストン(14a、14b)におけるプラグブロック25に対向する側と反対側の端部31は、ピストンチャンバ24の両端における中空領域23に対する開口から突出するように配置されている。
【0051】
各アークピストン(14a、14b)の端部31は、例えば、球面の一部を成す形状に形成されている。そして、一方のアークピストン14aの端部31が、アーム15におけるシリンダ12の周方向の両側の面のうちの一方に設けられた凹み部15aに嵌まり込んで当接するように設置される。更に、他方のアークピストン14bの端部31が、アーム15におけるシリンダ12の周方向の両側の面のうちの他方に設けられた凹み部15aに嵌まり込んで当接するように設置される。尚、各アークピストン(14a、14b)の端部31とアーム15とは、ピン部材等を介して連結されていてもよい。
【0052】
また、ピストンユニット14が摺動自在に支持されるピストンチャンバ24では、一対のアークピストン(14a、14b)のそれぞれとシリンダ12との間において、圧力媒体としての圧油が導入される一対の圧力室(26a、26b)が区画されている。一方の圧力室26aは、一対のアークピストン(14a、14b)のうちの一方のアークピストン14aと、ピストンチャンバ24と、プラグブロック25におけるピストンチャンバ24の長手方向において露出した一方の端面と、によって区画されている。他方の圧力室26bは、一対のアークピストン(14a、14b)のうちの他方のアークピストン14bと、ピストンチャンバ24と、プラグブロック25におけるピストンチャンバ24の長手方向において露出した他方の端面と、によって区画されている。
【0053】
圧力室26aには、圧油が供給されるとともに圧油が排出される給排孔29aが開口している。また、圧力室26bにも、圧油が供給されるとともに圧油が排出される給排孔29bが開口している。給排孔29aは、複数のシリンダブロック26において、それぞれシリンダ12の軸方向に貫通するように設けられている。そして、各シリンダブロック26の給排孔29aは、複数のシリンダブロック26に亘って直列に並ぶとともに連通した状態に配置されている。また、給排孔29bも、複数のシリンダブロック26において、それぞれシリンダ12の軸方向に貫通するように設けられている。そして、各シリンダブロック26の給排孔29bは、複数のシリンダブロック26に亘って直列に並ぶとともに連通した状態に配置されている。
【0054】
そして、一対のアークピストン(14a、14b)の一方によって区画された圧力室(圧力室26a及び26bの一方)に圧油が供給され、一対のアークピストン(14a、14b)の他方によって区画された圧力室(圧力室26a及び26bの他方)から圧油が排出されることで、一対のアークピストン(14a、14b)が変位することになる。これにより、一対のアークピストン(14a、14b)によって付勢されたアーム15がシリンダ12の周方向に変位し、アーム15とともに出力軸13が、その軸心を回転中心とする回転方向において揺動することになる。
【0055】
尚、ロータリーアクチュエータ1においては、複数のシリンダブロック26の給排孔29aが連通しているため、複数の圧力室26aは、略同時タイミングで圧油が供給され、また、略同時タイミングで圧油が排出されることになる。同様に、複数のシリンダブロック26の給排孔29bが連通しているため、複数の圧力室26bは、略同時タイミングで圧油が供給され、また、略同時タイミングで圧油が排出されることになる。
【0056】
そして、例えば、給排孔29aから圧油が供給され、給排孔29bから圧油が排出される状態では、アークピストン14a及びアークピストン14bが、図2にて示される図面上においてシリンダ12の周方向に沿って時計周り方向に変位することになる。これにより、アーム15及び出力軸13が、図2の図面上においてシリンダ12の周方向に沿って時計周り方向に揺動する。一方、給排孔29bから圧油が供給され、給排孔29aから圧油が排出される状態では、アークピストン14a及びアークピストン14bが、図2にて示される図面上においてシリンダ12の周方向に沿って反時計周り方向に変位することになる。これにより、アーム15及び出力軸13が、図2の図面上においてシリンダ12の周方向に沿って反時計周り方向に揺動する。
【0057】
また、ロータリーアクチュエータ1では、例えば、ケース11の蓋部22bにおいて、中空領域23に連通する連通孔30が開口している。連通孔30は、大気圧に開放された油が貯留されるタンクを備えたリザーバ回路36(図5を参照)に連通している。これにより、出力軸13及びアーム15が設置された中空領域23は、常時、低圧室として機能することになる。
【0058】
尚、上述したロータリーアクチュエータ1の組立作業については、種々の順番で実施することができる。次に、一例としてのロータリーアクチュエータ1の組立手順を例示する。例えば、まず、蓋部22bが治具に保持された状態で、出力軸13及びアーム15の一体成形品が、蓋部22bに対して取り付けられる。そして、中空領域23の内側に出力軸13及びアーム15が挿入される状態で、シリンダブロック26が順番に直列にシリンダ12の軸方向に積層される。
【0059】
シリンダブロック26が順番に積層される際には、各シリンダブロック26間において、シール部材25aが取り付けられたプラグブロック25と、シール部材32及びリング部材33が取り付けられた一対のアークピストン(14a、14b)とが、ピストンチャンバ24に設置される。そして、シリンダブロック26の積層による組立が完了した段階で、ケース本体21にシリンダ12が挿入された状態となるように、ケース本体21がシリンダ12の外周に装着される。ケース本体21の装着が完了すると、蓋部22aがケース本体21に取り付けられて固定される。これにより、ロータリーアクチュエータ1の組立作業の概略が完了することになる。
【0060】
次に、上述したロータリーアクチュエータ1の動作を制御する油圧回路の構成と、ロータリーアクチュエータ1の作動とについて説明する。図5は、図2に示すロータリーアクチュエータ1の断面図とともにロータリーアクチュエータ1の動作を制御する油圧回路を模式的に示す回路図である。図5に示すように、ロータリーアクチュエータ1に対しては、本実施形態における圧力媒体供給源である油圧源34から圧力媒体としての圧油が供給される。油圧源34は、油圧ポンプを備えて構成されている。そして、ロータリーアクチュエータ1から排出された圧油は、前述したリザーバ回路35に流入して戻ることになる。リザーバ回路35に戻った圧油は、油圧源34で昇圧され、再び、ロータリーアクチュエータ1に供給される。
【0061】
油圧源34及びリザーバ回路35と、ロータリーアクチュエータ1との間には、ロータリーアクチュエータ1への圧油の供給経路及びロータリーアクチュエータ1からの圧油の排出経路を切り替える制御弁36が設けられている。即ち、ロータリーアクチュエータ1は、制御弁36を介して油圧源34及びリザーバ回路35に接続されている。
【0062】
制御弁36は、油圧源34に連通する供給通路34a及びリザーバ回路35に連通する排出通路35aと、ロータリーアクチュエー1に連通する一対の給排通路(38a、38b)との接続状態を切り替えるバルブ機構として設けられている。給排通路38aは、複数のシリンダブロック26における給排孔29aに連通しており、給排通路38bは、複数のシリンダブロック26における給排孔29bに連通している。尚、排出通路35aからは、分岐通路39が分岐している。この分岐通路39は、排出通路35aとケース11における連通孔30とを連通している。
【0063】
また、制御弁36は、例えば、電気油圧式サーボ弁(EHSV)として設けられている。そして、制御弁36は、ロータリーアクチュエータ1の動作を制御するアクチュエータコントローラ37からの指令信号に基づいて、供給通路34a及び排出通路35aと給排通路(38a、38b)との接続状態を切り替えるように作動する。尚、より具体的には、制御弁36は、アクチュエータコントローラ37からの電気指令信号に基づいて、パイロットステージにおけるノズルフラッパ式の油圧増幅機構が駆動され、メインステージにおけるスプールの両端に導入されるパイロット圧油の圧力が制御される。そして、パイロットステージで生成されるパイロット圧油によって、メインステージのスプールの位置が比例的に制御されるとともに、上記の各通路(34a、35a、38a、38b)の接続状態の切替も行われる。
【0064】
上記の構成により、制御弁36は、中立位置36aと、第1切替位置36bと、第2切替位置36cとの間で、比例的に位置を切替可能に設けられている。中立位置36aに切り替えられている状態では、制御弁36は、供給通路34a及び排出通路35aと、給排通路(38a、38b)とを遮断している。これにより、各ピストンチャンバ24における一対の圧力室(26a、26b)に対する圧油の供給及び排出が停止される。そして、各ピストンチャンバ24に設置された一対のアークピストン(14a、14b)が停止した状態が維持される。
【0065】
制御弁36が中立位置36aから第1切替位置36bに切り替えられると、供給通路34aと給排通路38aとが接続されて各ピストンチャンバ24の圧力室26aに圧油が供給され、排出通路35aと給排通路38bとが接続されて各ピストンチャンバ24における圧力室26bから圧油が排出される。これにより、アークピストン(14a、14b)が、図5にて示される図面上においてシリンダ12の周方向に沿って時計周り方向に変位することになる。一方、制御弁36が中立位置36aから第2切替位置36cに切り替えられると、供給通路34aと給排通路38bとが接続されて各ピストンチャンバ24の圧力室26bに圧油が供給され、排出通路35aと給排通路38aとが接続されて各ピストンチャンバ24の圧力室26aから圧油が排出される。これにより、アークピストン(14a、14b)が、図5にて示される図面上においてシリンダ12の周方向に沿って反時計周り方向に変位することになる。上記のように、制御弁36が第1切替位置36bに切り替えられた状態と第2切替位置36cに切り替えられた状態とでは、各ピストンチャンバ24に設置された一対のアークピストン(14a、14b)はシリンダ12の周方向において逆方向に移動し、アーム15及び出力軸13も逆方向に揺動するように駆動されることになる。
【0066】
出力軸13が揺動することで、この出力軸13から駆動トルクが出力されることになる。駆動トルクは、出力軸13の端部13b及び端部13cのうちの一方から出力されてもよく、また、出力軸13の両方の端部(13b、13c)から出力されてもよい。尚、出力軸13から出力される駆動トルクは、端部(13b、13c)のうちの少なくともいずれかに連結された駆動対象に対して出力される。駆動対象としては、種々の機器が挙げられる。例えば、航空機の翼において揺動自在に設けられた舵面等の動翼が、ロータリーアクチュエータ1によって駆動されてもよい。また、自動車等のステアリング装置に対してロータリーアクチュエータ1が適用されてもよい。
【0067】
尚、上述の実施形態では、制御弁36及びアクチュエータコントローラ37については、ロータリーアクチュエータ1の構成要素として説明していないが、これらが、ロータリーアクチュエータ1の構成要素として含まれていてもよい。例えば、制御弁36が構成要素として含まれた構成としてロータリーアクチュエータ1が定義されてもよい。また、制御弁36及びアクチュエータコントローラ37が構成要素として含まれた構成としてロータリーアクチュエータ1が定義されてもよい。
【0068】
以上説明したように、ロータリーアクチュエータ1によると、ケース11の内部に設置されたシリンダ12の内側において、対となる圧力室(26a、26b)の一方に圧油が供給され他方から圧油が排出されることで、一対のアークピストン(14a、14b)がシリンダ12の周方向に摺動して変位する。そして、一対のアークピストン(14a、14b)によってアーム15が付勢されることで、出力軸13が回転方向に揺動し、ロータリーアクチュエータ1の駆動トルクが出力される。このため、ロータリーアクチュエータ1によると、シリンダ12の内側においてシリンダ12に対して摺動するアークピストン(14a、14b)とシリンダ12との間で圧力室(26a、26b)が区画されることになる。これにより、従来のロータリーアクチュエータに設けられていたような、出力軸、ベーン、シリンダ、リブ、エンドキャップで区画される圧力室を備えた構造が不要となる。即ち、ロータリーアクチュエータ1によると、従来のロータリーアクチュエータに設けられていたような、出力軸とシリンダに設けられたリブとの間における回転摺動部、回転する出力軸に設けられたベーンとシリンダとの間における回転摺動部、回転する出力軸及びベーンとエンドキャップとの間における回転摺動部が、不要となる。よって、本実施形態によると、ロータリーアクチュエータ1内での圧油(圧力媒体)の内部漏洩を低減することができる。また、ロータリーアクチュエータ1の場合、摺動する相手側の面に対して高圧で押し付けられるとともに回転摺動部に用いられる高圧用の回転シールも不要となる。
【0069】
従って、本実施形態によると、圧力媒体の内部漏洩を低減できるとともに、高圧用の回転シールが不要な構造を実現できる、ロータリーアクチュエータ1を提供することができる。
【0070】
また、ロータリーアクチュエータ1によると、複数のシリンダブロック26がシリンダ12の軸方向に積層されることでシリンダ12が組み立てられ、隣り合うシリンダブロック26同士の間にピストンチャンバ24が区画される。このため、ピストンチャンバ24が形成される際、シリンダブロック26に対して半割状態の溝が形成された後、それらが組み合わされることで、ピストンチャンバ24が構成されることになる。これにより、シリンダ12の周方向に摺動して変位するアークピストン(14a、14b)を収納するピストンチャンバ24を容易に形成でき、シリンダ12を容易に製造することができる。
【0071】
また、ロータリーアクチュエータ1によると、出力軸13の軸方向に沿って並んで複数設置されたピストンユニット14によってアーム15が付勢されて出力軸13が駆動される。このため、シリンダ12の径方向の寸法を増大させることなく、コンパクトな構造で、駆動トルクの高出力化を図ることができる。
【0072】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々に変更して実施することができる。例えば、次のように変更して実施してもよい。
【0073】
(1)前述の実施形態では、シリンダブロックが積層されることでシリンダが一体に組み立てられる形態を例にとって説明したが、必ずしもこの通りでなくてもよい。例えば、シリンダの素材となるブロック状の部材に対して、放電加工によってピストンチャンバの孔あけ加工が行われる形態によって、シリンダが製造されてもよい。
【0074】
(2)前述の実施形態では、隣り合うシリンダブロックの間において、各シリンダブロックに形成された半円形状の断面の溝が重ね合わされていることで、ピストンチャンバが区画されている形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。図6及び図7に示すように、ピストンチャンバが、シリンダの本体に設けられた孔に設置されるとともに円弧状に延びる筒状の中空部材によって区画されている形態が実施されてもよい。
【0075】
図6は、変形例に係るロータリーアクチュエータ2について軸方向に対して垂直な方向から見た図であって一部断面を含む図である。図7は、ロータリーアクチュエータ2について図6のC−C線矢視方向から見た断面を示す断面図である。また、図7は、図6のD−D線矢視方向から見た断面を含んで図示されている。図6及び図7に示すロータリーアクチュエータ2は、ピストンチャンバ42を区画する構造において、ロータリーアクチュエータ1と異なっている。尚、以下のロータリーアクチュエータ2についての説明では、ロータリーアクチュエータ1と同様に構成される要素については、図面において同一の符号を付すことで説明を省略し、ロータリーアクチュエータ1と異なる要素についてのみ説明する。
【0076】
ロータリーアクチュエータ2においては、積層されて一体に組み立てられた複数のシリンダブロック26と、隣り合うシリンダブロック26間にそれぞれ設置されたプラグブロック25とが、シリンダ12の本体を構成している。そして、ロータリーアクチュエータ2のシリンダ12においては、円弧状に延びる筒状の中空部材41が更に設けられている。
【0077】
上記の中空部材41は、複数設けられており、シリンダ12の本体において、隣り合うシリンダブロック26が組み合わされることで設けられた各孔43のそれぞれに、1対で設置されている(2つ設置されている)。そして、この中空部材41の内壁によって、シリンダ12に対して摺動して変位可能に支持されるアークピストン(14a、14b)を収納するピストンチャンバ42が区画されている。尚、中空部材41の成形に際しては、例えば、円筒状の中空部材が素材として用いられる。そして、例えば、この素材が円弧状に屈曲形成された後、更に、この素材に対して静水圧成形法によるプレス処理が施されることで、滑らかに円弧状に延びる筒状の中空部材41が成形される。
【0078】
上記の変形例に係るロータリーアクチュエータ2によると、ピストンチャンバ42を区画する部材が、シリンダ12の本体とは別部材として設けられた筒状の中空部材41によって構成される。このため、アークピストン(14a、14b)が摺動する面に継ぎ目がなく、更に内部漏洩を低減できる構造のピストンチャンバ42を容易に形成することができる。
【0079】
(3)アームの形状、設置数、設置位置については、前述の実施形態で例示した形態に限らず、種々変更されて実施されてもよい。例えば、前述の実施形態では、出力軸から1枚のアームがシリンダの径方向に延びるように設けられた形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。アームは、出力軸における複数個所からシリンダの径方向に延びるように、複数設けられていてもよい。
【0080】
図8は、変形例に係るロータリーアクチュエータにおける出力軸44及びアーム45を示す図である。図8に示す変形例においては、アーム45が、出力軸44における複数個所からシリンダ(図示を省略)の径方向に延びるように、複数設けられている。尚、図8では、各アーム45を付勢する各ピストンユニット14の当接位置が、符号「14」を付した二点鎖線で図示されている。この変形例では、アーム45は、出力軸44の軸方向における複数個所からシリンダの径方向にそれぞれ延びるように設けられている形態が例示されている。そして、出力軸44の軸方向において隣り合う位置に設けられるアーム45は、シリンダの周方向における角度が交互に180度異なる方向に向かってシリンダの径方向に延びるように設けられている。
【0081】
図8に示す出力軸44及びアーム45の形態は、出力軸における複数個所からシリンダの径方向に延びるアームが複数設けられた形態の例示であるが、この例に限らず、複数のアームが出力軸に設けられた形態が実施されてもよい。アームが出力軸の複数個所から径方向に延びるように設けられることにより、アームを介して出力軸を回転駆動する一対のピストンが複数ユニット設置される場合に、それらの設置位置に関する設計の自由度を向上させることができる。
【0082】
(4)前述の実施形態では、複数のピストンユニットが全て同時タイミングで作動する形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。複数のピストンユニットのうちアームに作用する付勢力を生じさせるピストンユニットの数を変更してアームを駆動可能である形態が実施されてもよい。
【0083】
図9は、変形例に係るロータリーアクチュエータ3における軸方向と垂直な断面を示す断面図である。図9に示すロータリーアクチュエータ3は、アームに作用する付勢力を生じさせるピストンユニットの数を変更してアームを駆動可能である点において、ロータリーアクチュエータ1と異なっている。尚、以下のロータリーアクチュエータ3についての説明では、ロータリーアクチュエータ1と同様に構成される要素については、図面において同一の符号を付すことで説明を省略し、ロータリーアクチュエータ1と異なる要素についてのみ説明する。
【0084】
図9に示すように、ロータリーアクチュエータ3においては、各ピストンチャンバ24における一対の圧力室(26a、26b)のそれぞれに、給排孔(46a、46b)が開口している。各給排孔46aは、各圧力室26aに開口しており、ピストンチャンバ24を区画する隣り合うシリンダブロック26のうちの一方をシリンダ12の径方向に貫通するとともにケース11を貫通する給排ポートを構成している。また、各給排孔46bは、各圧力室26bに開口しており、ピストンチャンバ24を区画する隣り合うシリンダブロック26のうちの一方をシリンダ12の径方向に貫通するとともにケース11を貫通する給排ポートを構成している。
【0085】
上記の構成により、ロータリーアクチュエータ3は、前述の実施形態のロータリーアクチュエータ1とは異なり、それぞれのピストンチャンバ24における一対の圧力室(26a、26b)に対して、個別に、圧力室(26a、26b)への圧油(圧力媒体)の供給と、圧力室(26a、26b)からの圧油の排出とを、行うことが可能に構成されている。即ち、ロータリーアクチュエータ3は、アーム15に作用する付勢力を生じさせるピストンユニット14の数を変更してアーム15を駆動可能に構成されている。
【0086】
図10は、ロータリーアクチュエータ3の動作を制御する油圧回路を模式的に示す回路図である。図10においては、複数のピストンユニット14が3つのグループに区分され、各グループごとに対応する制御弁47が設けられた油圧回路構成が例示されている。尚、図10に示される油圧回路例では、各グループごとに3つのピストンユニット14が属した形態が例示されている。各制御弁47は、アクチュエータコントローラ37からの指令に基づいて、個別に作動する。尚、制御弁47は、前述の実施形態の制御弁36と同様の構成を備えているが、一対の圧力室(26a、26b)を互いにバイパスさせて連通させることが可能なバイパス位置47aも設けられている点において、制御弁36とは異なっている。
【0087】
また、各制御弁47は、3つのグループのうちのいずれか1つのグループに属する3つのピストンユニット14に作用する圧油(圧力媒体)の給排を制御するように構成されている。このため、各制御弁47に連通する給排通路38aは、その制御弁47が対応するグループに属する3つのピストンユニット14に対応する3つの圧力室26aに開口する給排孔46aに連通している。そして、各制御弁47に連通する給排通路38bは、その制御弁47が対応するグループに属する3つのピストンユニット14に対応する3つの圧力室26bに開口する給排孔46bに連通している。
【0088】
ロータリーアクチュエータ3は、アクチュエータコントローラ37からの指令信号に基づいて作動する複数の制御弁47の制御によって、作動することになる。そして、アーム15を付勢するための付勢力を生じさせるピストンユニット14のグループに対応する制御弁47は、第1切替位置36b又は第2切替位置36cに切り替えられる。一方、アーム15を付勢するための付勢力を生じさせないピストンユニット14のグループに対応する制御弁47は、バイパス位置47aに切り替えられる。アクチュエータコントローラ37からの指令信号に基づいて、アーム15を付勢するための付勢力を生じさせるピストンユニット14のグループが適宜1つ又は複数選択されることで、複数のピストンユニット14のうちアーム15に作用する付勢力を生じさせるピストンユニット14の数が変更されてアーム15が駆動されることになる。
【0089】
ロータリーアクチュエータ3によると、複数のピストンユニット14のうちアーム15に作用する付勢力を生じさせるピストンユニット14の数を変更してアーム15を駆動可能であるため、ロータリーアクチュエータ3の可変出力構造を容易に実現することができる。
【0090】
尚、上述の実施形態では、制御弁47及びアクチュエータコントローラ37については、ロータリーアクチュエータ3の構成要素として説明していないが、これらが、ロータリーアクチュエータ3の構成要素として含まれていてもよい。例えば、制御弁47が構成要素として含まれた構成としてロータリーアクチュエータ3が定義されてもよい。また、制御弁47及びアクチュエータコントローラ37が構成要素として含まれた構成としてロータリーアクチュエータ3が定義されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明は、圧力媒体の作用によって出力軸が回転方向において揺動して駆動トルクを出力する、ロータリーアクチュエータに関して広く適用することができるものである。
【符号の説明】
【0092】
1 ロータリーアクチュエータ
11 ケース
12 シリンダ
13 出力軸
14 ピストンユニット
14a、14b アークピストン(ピストン)
15 アーム
23 中空領域
26 シリンダブロック
26a、26b 圧力室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力媒体の作用によって出力軸が回転方向において揺動して駆動トルクを出力する、ロータリーアクチュエータであって、
ケースと、
前記ケースの内部に設置されて、内側に中空領域が設けられた筒状のシリンダと、
前記ケースに対して回転自在に支持され、軸方向が前記シリンダの軸方向と平行に延びるとともに前記中空領域に設置された前記出力軸と、
円弧状に延びる部分を有し、前記シリンダの内側に設置されるとともに当該シリンダの周方向に沿って当該シリンダに対して摺動して変位可能に支持されるピストンと、
を備え、
前記ピストンは、前記出力軸に一体に設けられ又は固定されて前記シリンダの径方向に延びるアームを前記シリンダの周方向における両側から付勢可能に一対で設けられ、
一対の前記ピストンのそれぞれと前記シリンダとの間において圧力媒体が導入される圧力室が区画され、
一対の前記ピストンの一方によって区画された前記圧力室に圧力媒体が供給され、一対の前記ピストンの他方によって区画された前記圧力室から圧力媒体が排出されることで、前記アームが前記シリンダの周方向に変位し、前記出力軸が回転方向において揺動することを特徴とする、ロータリーアクチュエータ。
【請求項2】
請求項1に記載のロータリーアクチュエータであって、
前記シリンダは、分割された状態で形成された複数のシリンダブロックを有し、
複数の前記シリンダブロックが前記シリンダの軸方向に沿って積層されることで、前記シリンダが一体に組み立てられ、
前記シリンダには、当該シリンダに対して摺動して変位可能に支持される前記ピストンを収納するピストンチャンバが設けられ、
前記シリンダの軸方向において隣り合う前記シリンダブロック同士の間において、前記ピストンチャンバが区画されていることを特徴とする、ロータリーアクチュエータ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のロータリーアクチュエータであって、
一対の前記ピストンとして構成されるピストンユニットは、複数設けられ、
複数の前記ピストンユニットは、前記出力軸の軸方向に沿って並んで設置されていることを特徴とする、ロータリーアクチュエータ。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のロータリーアクチュエータであって、
前記アームは、前記出力軸における複数個所から前記シリンダの径方向に延びるように、複数設けられていることを特徴とする、ロータリーアクチュエータ。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のロータリーアクチュエータであって、
前記シリンダには、当該シリンダに対して摺動して変位可能に支持される前記ピストンを収納するピストンチャンバが設けられ、
前記ピストンチャンバは、前記シリンダの本体に設置されるとともに円弧状に延びる筒状の中空部材によって区画されていることを特徴とする、ロータリーアクチュエータ。
【請求項6】
請求項3に記載のロータリーアクチュエータであって、
複数の前記ピストンユニットのうち前記アームに作用する付勢力を生じさせる前記ピストンユニットの数を変更して前記アームを駆動可能であることを特徴とする、ロータリーアクチュエータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−96463(P2013−96463A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−238213(P2011−238213)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(503405689)ナブテスコ株式会社 (737)
【Fターム(参考)】