説明

ロードポート装置及び当該装置に用いられるクランプ装置

【課題】 FOUP固定時に被クランプ部に付与される負荷荷重が増加した場合でも該被クランプ部の変形を抑制し得るロードポート装置を提供する。
【解決手段】 FOUPの底面に対して傾斜した回転軸の周りに回動して退避位置とクランプ位置をとの両位置を取り得るクランプアームを配し、該退避位置では該クランプアームを載置台表面よりも下となるように収容し且つ該クランプ位置では載置台表面から突出して被クランプ部と係合可能となる収容凹部内に該クランプアームを収容したロードポート装置とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造プロセス等において、ポッドと呼ばれる密閉型の搬送容器の内部に保持されたウエハを半導体処理装置に移載する、或いはウエハを該半導体処理装置より該ポッドに移載する際に用いられる所謂FIMS(Front-Opening Interface Mechanical Standard)システム、即ちロードポート装置に関する。また、本発明は当該ロードポート装置において用いられて、ポッドを該ロードポート装置に固定する際に用いられるクランプ装置にも関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造プロセスは、近年では各種処理装置の内部、ウエハを収容して各処理装置間でのウエハ搬送を可能とするポッド、及び該ポッドより各処理装置への基板の受け渡しを行う微小空間、の3空間のみを高清浄状態に保つことで、プロセスを通じての清浄度の管理を行う手法が一般的となっている。このようなポッドは、ウエハを内部に収容し且つ一側面にウエハ挿脱用の開口を有する本体部と、該開口を閉鎖してポッド内部を密閉空間とする蓋と、から構成される。また、該微小空間は、前述したポッドの開口と対向可能な開口部と、該開口部と向かい合い半導体処理装置側に配置された第二の開口部と、を有する。
【0003】
ロードポート装置は、この開口部が形成された隔壁となる部材即ちサイドベースと称呼される壁と、該開口部を閉鎖するドアと、該ドアの動作を司るドア駆動機構と、ポッドが載置される載置台と、から構成される。該載置台は、ポッドの開口と開口部とを向かい合わせるようにポッドを支持可能であり、且つポッドと共に蓋をドアと近接或いは離間させるように移動可能となっている。ドアは、ポッドの蓋を保持可能であり、ドア駆動機構によって蓋を保持した状態で開口部を開放、閉鎖すると共に、開口部と第二の開口部との間の空間より下方に退避或いは該空間への侵入をさせられる。微小空間内にはロボットが配置され、該ロボットは開口部−ポッド開口を介してポッド内部に対する侵入及び退避が可能であって、第二の開口部も介して該ポッド内部と該半導体処理装置との間でウエハの移載を行う。
【0004】
前述した載置台は、載置台の移動時等において載置されたポッドが所定の載置位置からずれることがないように、ポッドを載置台に対して固定する構成が配置されている。例えば特許文献1には、ポッドの載置後に載置台表面から突き出してポッド底面に設けられた係合凹部に侵入し、該係合凹部に設けられた被クランプ面と係合してポッドを固定するクランプユニットが開示されている。また、特許文献2には当初から載置台表面に突き出すように配置され、回動することによって係合凹部の被クランプ面と係合するクランプ装置が開示されている。更に特許文献3にも、ポッド載置後に載置台表面から突き出したクランプ部が被クランプ面と係合する機構を有したウエハ搬送容器装着装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−209986号公報
【特許文献2】特開2006−114699号公報
【特許文献3】特開2002−164412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
半導体製造工程においては、生産性の向上等を目的として、用いるウエハの大口径化が進められている。このため、前述したポッド、微小空間、及び処理装置内部の空間各々も大型化が進められている。ここで、前述した従来技術におけるポッドクランプ用の構成に着目すると、被クランプ部はポッド底面に配置されてポッド底面と平行に延在する板状の部材として設けられている。実際のポッド固定−クランプ時においては、クランプ部によって当該板状部材に鉛直下方に押し下げる負荷荷重を加えている。ここでポッドが大型化するとポッド移動時に発生する慣性力も大きくなり、該慣性力に対向する必要性からクランプ部が被クランプ部に与える負荷荷重も大きくならざるを得ない。
【0007】
ポッドの構成上、被クランプ部の板状の部分の厚さを増加させることはポッドの重量増加或いはポッド底部の構成の大型化等に繋がり、許容することが困難と考えられる。しかし、上述したようにクランプ部から発生する負荷荷重の増大も避けられず、従来構成のままではこの増大した負荷荷重のために板状の被クランプ部の変形が生じてしまう恐れがある。このため、負荷荷重の増加と被クランプ部の変形の抑制といった本来トレードオフとなる条件を両立させ得るクランプ機構の開発が望まれる。
【0008】
本発明は以上の状況に鑑みて為されたものであり、ポッドの固定に必要な負荷荷重を増大させた場合であってもポッドの被クランプ部の変形を抑制し得るロードポート装置、及び該ロードポート装置において好適に用いられるクランプ装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明に係るロードポート装置は、一側面に開口を有するポッド本体と開口を開閉する蓋とを有して内部に被収容物を収容可能なポッド、を載置台上に固定し、蓋を開閉してポッド内部の被収容物の挿脱を可能とするロードポート装置であって、ポッドの底面に対して所定の角度傾斜する回転軸の周りで退避位置とクランプ位置との間を回動可能であって、クランプ位置でポッドの被クランプ部と当接可能なクランプ部を有するクランプ部材と、退避位置にあるクランプ部材を収容し、退避位置からクランプ位置まで回動するクランプ部材のクランプ部が載置台の上に突き出す内部広さを有して、載置台の表面に配置され且つクランプ部材が内部に配置される収容凹部と、を有することを特徴としている。
【0010】
なお、前述したロードポート装置において、被クランプ部はポッドの底面に設けられて底面に開口する凹部であって凹部の奥から開口に向かうに従って開口の大きさを狭める被クランプ面を有し、クランプ部は被クランプ面に対応する形状を有することが好ましい。また、クランプ部材は対で配置されることが好ましい。更に、対で配置されるクランプ部材の一方は、回転軸を含み且つ底面に垂直な平面で前記収容凹部を切断した断面において対向して位置する被クランプ面の何れか一方と当接し、被クランプ部材の他方は被クランプ面の他方と当接することがより好ましい。また、クランプ部材は、クランプ部を一方に有し且つ他方で回転軸に支持される棒状のクランプアームと、回転軸を回転させるクランプシリンダと、を有し、クランプシリンダはクランプ位置においてクランプアームを回転軸に沿って引き込む動作を為すことがより好ましい。
【0011】
また、上記課題を解決するために、本発明に係るクランプ装置は、一側面に開口を有するポッド本体と開口を開閉する蓋とを有して内部に被収容物を収容可能なポッド、を載置台上に固定し、蓋を開閉してポッド内部の被収容物の挿脱を可能とするロードポート装置において、ポッドを載置台上に固定するクランプ装置であって、ポッドの底面に対して所定の角度傾斜する回転軸の周りで退避位置とクランプ位置との間を回動可能であって、クランプ位置でポッドの被クランプ部と当接可能なクランプ部を有するクランプ部材と、退避位置にあるクランプ部材を収容し、退避位置からクランプ位置まで回動するクランプ部材のクランプ部が載置台の上に突き出す内部広さを有して、載置台の表面に配置され且つクランプ部材が内部に配置される収容凹部と、を有することを特徴とする。
【0012】
なお、前述したクランプ装置において、被クランプ部はポッドの底面に設けられて底面に開口する凹部であって凹部の奥から開口に向かうに従って開口の大きさを狭める被クランプ面を有し、クランプ部は被クランプ面に対応する形状を有することが好ましい。また、クランプ部材は対で配置されることが好ましい。更に、対で配置されるクランプ部材の一方は、回転軸を含み且つ底面に垂直な平面で前記収容凹部を切断した断面において対向して位置する被クランプ面の何れか一方と当接し、被クランプ部材の他方は被クランプ面の他方と当接することがより好ましい。また、クランプ部材は、クランプ部を一方に有し且つ他方で回転軸に支持される棒状のクランプアームと、回転軸を回転させるクランプシリンダと、を有し、クランプシリンダはクランプ位置においてクランプアームを回転軸に沿って引き込む動作を為すことがより好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ポッドの固定に必要な負荷荷重を被クランプ部内の複数の方向へ分散させて作用させることにより、負荷荷重に対する被クランプ部の剛性が向上する。従って、負荷荷重を増大させた場合であっても、被クランプ部の変形を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1A】本発明の一実施形態に係るロードポート装置に関し、ポッド1を載置台上に載置した状態を側面から見た場合の概略構成を示している。
【図1B】図1Aに示すロードポート装置に関し、ポッド1が載置されない状態でこれを上方から見た場合の概略構成を示している。
【図2A】図1Aに示されるクランプ部材及び関連する構成について、これらを拡大したものであって、非クランプ状態にある構成を示す図である。
【図2B】図2Aに示される構成について、ポッドをクランプした状態を示す図である。
【図3A】図1Bに示されるクランプ部材及び関連する構成について、これらを拡大したものであって、非クランプ状態にある構成を示す図である。
【図3B】図3Aに示される構成について、ポッドをクランプした状態を示す図である。
【図4A】本発明に係るクランプアームの更なる実施形態を模式的に示す図である。
【図4B】本発明に係るクランプアームの更なる実施形態であって図4Aに示す態様とは異なる態様を模式的に示す図である。
【図5A】本発明の更なる実施形態であって、対となるクランプ部材の配置の更なる実施形態を模式的に示す図である。
【図5B】本発明の更なる実施形態であって、対となるクランプ部材の配置の更なる実施形態を模式的に示す図である。
【図5C】本発明の更なる実施形態であって、対となるクランプ部材の配置の更なる実施形態を模式的に示す図である。
【図5D】本発明の更なる実施形態であって、対となるクランプ部材の配置の更なる実施形態を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態について、以下に図面を参照して説明する。図1Aは、本発明の一実施形態におけるロードポート装置に関し、ポッド2を載置テーブル上に載置した状態を側面から見た場合の概略構成を示している。なお、同図において、本発明に係るロードポート装置の特徴的構成であるクランプ部材及び関連する構成について、部分的な透視図を用いてこれらを示している。図1Bは、図1Aに示すロードポート装置に関し、ポッド2が載置されない状態でこれを上方から見た場合の概略構成を示している。図2A及び2Bは載置台にポッド2が載置された状態でのクランプ部材及びその近傍を図1Aと同様の様式にてこれを拡大して示した図であり、図2Aはポッドを固定していない状態を、図2Bはポッドを固定した状態を各々示している。また、図3A及び3Bは図1Bと同様の様式にてクランプ部材及びその近傍を拡大して示した図であって、図3Aはポッドを固定していない状態を、図3Bはポッドを固定した状態を各々示している。また、図3A及び3Bにおいて、図中左方にドア111等が配置され、図中右方から載置台121上に対するポッド2の移載が行われる。また、これら図において、収容凹部129の配置はこれらを図1Bに示す視点から見た状態をそのまま例示している。
【0016】
ここで、ロードポートに対して載置されるポッド及び該ポッドに収容されるウエハについて先に述べる。ポッド2における本体2aの内部には、被収容物たるウエハ1を内部に収めるための空間が形成されている。本体2aは、水平方向に存在するいずれか一面に開口2bを有する略箱状の形状を有する。また、ポッド2は、本体2aの開口2bを密閉するための蓋4を備えている。本体2aの内部に水平に保持されたウエハ1を鉛直方向に重ねる為の複数の段を有する棚(不図示)が配置されており、ここに載置されるウエハ1各々はその間隔を一定としてポッド2内部に収容される。ウエハ1は本発明における被収容物として、ポッド2は、一側面に開口2bを有するポッド本体2aと、該開口2bを開閉する蓋4とを有し、且つ内部に被収容物収容可能な構成として定義される。また、これら構成と関連して、本発明に係るロードポート装置はこの蓋4をポッド2の開口2bについて開閉し、ポッド本体2aの内部に存在する被収容物の挿脱を可能とすることを目的としている。
【0017】
また、ポッド2の底面には、後述するクランプ部材と係合してポッド2を載置台に固定する際に用いられる凹形状からなる被クランプ部2cが設けられる。被クランプ部2cは、底面からポッド2の内部空間に向けて穿たれた凹部と、ポッド2の底面側に設けられて該凹部の周囲からポッド底面に沿って該凹部を狭めるように張り出した被クランプ領域とからなる。該被クランプ領域は凹部の奥から凹部開口に向かうに従って徐々に凹部開口を狭めるようにテーパ面が形成されている。該テーパ面は、後述するクランプ部材の当接面と当接して、クランプ部材によるポッド2の載置台への固定保持を為す際の被クランプ面2dとして作用する。即ち、本実施形態に係るロードポート装置では、被クランプ部2cはポッド2の底面に設けられて該底面に開口する凹部であって、この凹部の奥から開口に向かうに従って該開口の大きさを狭める被クランプ面2dを有している。
【0018】
次に、本実施形態に係るロードポート装置の構成について、以下に述べる。ロードポート装置101は、サイドプレート105、ポッド載置部120及びドアシステム110を有する。サイドプレート105は、微小空間たる半導体処理装置の搬送室の前述した開口部が配置される壁に対して取り付けられる。該サイドプレート105は、本発明の微小空間となる搬送室と外部空間とを、搬送室の壁(半導体処理装置の外壁の一部を構成するロードポート装置101の壁)と協同して分離する。また、サイドプレート105は第一の開口部105aを有し、ドアシステム110は当該第一の開口部105aの開閉を目的として設置される。ドアシステム110は、ドア111によって第一の開口部105aを開閉し、ポッド載置部120の下方に配置される不図示のドア駆動機構によって該ドア111の開閉動作等を行う。
【0019】
ポッド載置部120は、該サイドプレート105に隣接して外部空間側に配置される。ポッド載置部120は、載置台121、載置台駆動機構123、及びクランプ部材125を有する。載置台121は、表面が略平坦な板状の部材からなり、該表面に対して作業者或いはポッド搬送装置によってポッド2の移載が行われる。また、載置台121の表面には、位置決めピン127と、クランプ部材125を収容する収容凹部129とが配置される。ポッド2は、底面に配置された不図示の位置決め凹部に対して当該位置決めピン127が嵌合することにより、載置台121の表面上所定位置に載置される。当該載置状態で、ポッド2の開口2bはサイドプレート105における第一の開口部105aと正対する状態となる。載置台駆動機構123は載置台121を支持し、該載置台121のサイドプレート105に対する接近及び離間の動作を行う。接近時において、ポッド2の蓋4はドア111と略当接し、ドア111による蓋4の保持、及びドア111による第一の開口部105aの開放動作を為すことによって、ポッド2の開放が為される。なお、載置台駆動機構123は公知のリニアスライダ、アクチュエータ等から構成されており、本発明の主たる特徴と特に関連しないことから本明細書での説明は省略する。
【0020】
本実施形態において、図2A及び2Bに示すように、クランプ部材125は、クランプアーム125aと、クランプシリンダ125bとを有する。クランプシリンダ125bは、所定の回転軸αを中心に回転する軸部を有し、該軸部は回転ストロークの一端部で、該軸部を駆動するシリンダ本体により該回転軸αに沿ってシリンダ本体に向けて所定量dだけ引き込まれる。クランプアーム125aは該クランプシリンダ125bの軸部に一方の端部が支持され、他方の端部或いはその近傍がポッド2における被クランプ面2dと当接するクランプ部125cを構成する。回転軸αは、ポッド2の底面に対して垂直ではなく所定の傾斜角θを有する。なお、本発明におけるポッド2の底面は、該ポッド2を載置台121上に載置した状態においてポッド2が支持される平面であって、ポッド2が載置台駆動機構123により移動される際にボッド2の開口2aの下辺が移動する平面と平行な平面により規定される。また、本実施形態では、クランプ部125cを端部としているが、クランプ位置において被クランプ面2dと当接可能であれば端部に規定されず、例えば棒状のクランプアーム125aの一方に配されるとして良い。また、この場合、棒状のクランプアーム125aの他方が回転軸によって支持されると理解されることが好ましい。
【0021】
クランプ部材125は、載置台121表面に設けられた収容凹部129内に配置される。収容凹部129はクランプ部材125がその底部に固定され、図2Aに示す退避姿勢(クランプの動作を開始する前の初期位置であって、非クランプ状態の位置)においては、クランプアーム125aが該収容凹部129内に収容され、ポッド2の底面よりも下方に位置する状態となる。本発明では、クランプアーム125aの回転軸αがポッド2の底面に対して傾斜角θを有するような配置されている。図1B、図3A及び3Bに示すように、収容凹部129は長辺と短辺とからなる矩形状の開口を有している。クランプアーム125aは、その長さが矩形の長辺よりも短く、且つ短辺より長く設定されており、クランプシリンダ125bによるクランプアーム125aの回転中心が矩形の一角に配置される。当該配置と、回転軸αの傾斜角θの存在により、回転動作によってクランプ姿勢に至ったクランプアーム125aの一部、この場合クランプ部125cが収容凹部129から突き出すことを可能としている。即ち、収容凹部129は載置台121の表面に配置され且つクランプ部材125が内部に配置される。更に、収容凹部129は、退避位置にあるクランプ部材125(クランプアーム125a)を収容し、クランプ位置まで回動したクランプ部125、特にそのクランプ部125cが載置台121の上に突き出す内部広さを有している。
【0022】
クランプアーム125aの回転によってクランプアーム125aのクランプ部125cが収容凹部129の外部に突き出したクランプ姿勢が得られた状態を、図2Bにおいて点線で示している。当該クランプ姿勢は、クランプアーム125aの回転動作の終端部での姿勢となる。この状態からクランプシリンダ125bによる所定量dの引込み操作が行われることで、実線に示す位置にクランプアーム125aが移動し、クランプ部125cが被クランプ面2dと当接し、ポッド2の載置台121に対する固定、クランプが為される。即ち、クランプシリンダ125bは、クランプ位置においてクランプアーム125aを回転軸αに沿って引き込む動作を行っている。本実施形態では、前述した収容凹部129のテーパ面である被クランプ面2dは、回転軸αに対して垂直となるように形成されている。クランプ部125cにおける被クランプ面2dとの当接面は被クランプ面2dと平行に配置されており、引込み操作によってこれら面接触することとなり、ポッド2は安定して載置台121に固定されることとなる。
【0023】
なお、クランプ部125cから被クランプ面2dに加えられるクランプ時の負荷荷重は、回転軸αと平行な力を相対的にクランプ部材125aに与えることによって得られる。本実施例では、クランプシリンダ125bから加えられる回転軸αに沿った引き込み力によってクランプ用の負荷荷重を得ている。なお、本実施例ではクランプ部125cと被クランプ面2dとの間での摺動を抑制する観点から、回動終了後にクランプアーム125aを引き込む構成としている。しかし、クランプアーム125aの材料選択等によって摺動に伴って発塵の問題を考慮しなくても良い場合には、単純に回動によってクランプ状態が得られる構成としても良い。この場合、回動終端において被クランプ面2dとクランプ部125cとが当接すれば良いことから、例えば被クランプ面2dが回転軸に対して垂直に配置されない場合も考えられる。しかし、この場合であって、クランプに供せられる負荷荷重は、クランプシリンダ125bからクランプアーム125aに加えられる回転軸αに沿った力によって得られる。
【0024】
また、図1B、3A及び3Bに示されるように、本実施形態ではロードポート装置101に対して2つのクランプ部材125が対として配されている。これらクランプ部材125は各々ポッド2の底面に対して垂直な軸に対して対称となる回転軸αを有し、同一方向(本実施形態では図3Aの紙面内で時計回り)に回転する構成となっている。また、待機位置におけるクランプアーム125a各々が、平行な軸に沿い且つ各々のクランプ部125cが最も離れた位置となるように配置される。また、これらは、図3Bに示すクランプ状態においてクランプアーム125aは平行となる。その際、各々の対応する被クランプ部2cにおいて、各々のクランプ部125cはポッド2の駆動方向で逆の位置となるテーパ面を被クランプ面2dとしてポッド2のクランプを為す。換言すれば、クランプ部材125(及び収容凹部129)は、互いの回転軸αを中点として、収容凹部129の配置、クランプシリンダ125bの配置、クランプ部125cの配置及びクランプアーム125aの動作方向が点対称となっている。これら配置によって、クランプ部材125の各々は互いに対向するように回転移動することとなる。
【0025】
ロードポート装置101に対して以上に述べたクランプ部材125を配することにより、被クランプ面2dを被クランプ部2cのテーパ部に配することが可能となる。従って、従来のポッド2の下方にのみ負荷荷重を加えた場合に対して、ポッド2の固定に必要な負荷荷重を被クランプ領域の複数の方向(本実施形態の場合には水平方向と垂直方向との分力)に分散して作用させることが可能となり、被クランプ領域の剛性の向上と変形の抑制を為すことが可能となる。特に、被クランプ領域を構成するポッド本体2aの部材の厚さが相対的に厚い方向(本実施形態の場合には水平方向)にも負荷荷重を作用させることが出来るので、負荷荷重による変形の可能性を低減することが出来る。また、クランプ部材125を上述した配置に2つ配することによって、ポッド2の移動方向について各々逆向きの負荷荷重を加えてポッドをクランプすることとなり、ポッド2が大型化した場合であってもクランプのための負荷荷重をポッド2に対して効果的に作用させることが可能となる。また、一対のクランプ部材125の配置により、水平方向に沿った力のモーメントがポッド2へ作用しても抗うことが出来る。更に、回転動作の後に引込み動作をなるロータリークランプシリンダを用いることによって、被クランプ面2dとクランプ部125cとの摺動を極力押さえ、クランプ時の発塵を効率的に抑制することも可能となる。
【0026】
次に、本発明の更なる実施形態について述べる。図4A及び図4Bは、クランプアーム125a或いはクランプ部125cの更なる形態を、各々図2Bと同様の様式にて示したものである。なお、前述した実施形態で述べた構成と同一の構成については同じ参照番号を用いてこれを示し、ここでの説明は省略することとする。図4Aに示す形態では、クランプ部125cに対して半球状の突起を配している。当該形態とすることにより、例えば被クランプ面2dが回転軸αに対して垂直からずれている、或いは表面が荒れている場合であっても、確実な点接触によってポッド2のクランプを為すことが可能となる。従って、被クランプ面2dが所定の傾きを有する平面となっていない場合であっても、クランプ部125cの所謂片当りによる偏磨耗等を防止することができる。
【0027】
被クランプ部2cは、開口部奥から順に一定の最大幅或いは径を有する領域、徐々に幅或いは径を狭める前述したテーパ面を構成する領域、一定の最小幅或いは径を有する領域が連続して配置され開口部に至っている。前述した図1B等及び図4Aに示す実施形態では、このテーパ面を被クランプ面2dとして用いている。図4Bに示す実施形態では、クランプ部125cの形状を、二段形状としている。より詳細には、前述したクランプ部125cに対応する平面部分が被クランプ面2dと当接し、クランプ部125cから連続する段差部分が前述した開口部に繋がる一定幅或いは径の領域と当接する構造となっている。従って、このクランプアーム125aの段差部分は、ポッド2の底面に垂直な面での水平移動を規制することとなり、被クランプ部2cをポッド2の移動方向に抑えることとなる。載置台121上からポッド2を取り除こうとして作用する力はこの移動方向に分力が働く。この段差部分の存在により、ポッド2内のウエハ1を処理している最中にポッド2を移動させようとする操作ミスが生じた場合であっても、ポッド2を移動させてしまうトラブルを確実に予防することが可能となる。
【0028】
なお、以上に述べたクランプ部材125に関して、クランプアーム125aにおけるクランプ部125cの形状は上述した実施形態のものが好ましいが、本発明に態様はこれら形状に限定されない。即ち、被クランプ面2dの形状に応じたクランプ部125cの形状とすることが好ましい。しかし、本発明は当該形態に限定されず、被クランプ部2cにおいてクランプ部125cによりクランプされる部分の形状、構成等に応じて種々の変形が可能である。また、例えば磨耗特性等を考慮して、クランプ部125cに当る部分のみ材質を異ならせる構成とすることも可能である。また、クランプシリンダとして回動-引き込みの二段階の動作を行うものを用いることとしているが、これら動作を同時に行う形態、回動のみを行う形態等、種々の態様の回動用の駆動機構を用いることが可能である。
【0029】
上述した実施形態では、一対のクランプ部材125について待機姿勢でクランプ部125cが互いに最も離れた位置に存在し、クランプに際しては両者が同一方向に回動する構成を例示している。なお、これらクランプ部材125は、各々を収容する収容凹部129の間の中点について回転軸α及び該軸についての回転が点対称となるように配置されている。しかしながら、これら一対のクランプ部材125の配置及び回転方向は当該実施形態に限定されない。以下に他の態様について図面を参照して例示する。図5A〜5Dはその他の態様の例示であって、図3A及び3Bと同様の様式でこれらを示している。なお、これら図中において点線で示される位置がクランプ部材125の待機姿勢の際の位置、実線がクランプ時の位置を各々示し、図中の矢印がクランプアーム125a各々のクランプ姿勢時の位置への回動方向を示している。また、先に述べた構成と同一の構成については同じ参照符号を用いてこれを示すこととする。
【0030】
図5Aは、クランプアーム125aの回転方向を逆方向とした場合を示している。また、図5Bは図5Aに示した収容凹部129の配置において、回転軸αが最も離れた位置とされる構成を示している。当該構成では、対で配置されるクランプ部材125の一方は、回転軸αを含み且つポッド2の底面に垂直な平面で収容凹部129を切断した断面において対向して位置する被クランプ面2dの何れか一方と当接し、被クランプ部材125の他方は被クランプ面2dの他方と当接することとしている。これら構成の場合、例えばクランプシリンダ125bが回動のみの動作を為す機構の場合、クランプに至る過程で各々のクランプ部125cからポッド2に加えられる摩擦力はほぼ対向する向きに作用する。従って、クランプ時においてポッド2が載置台121に対してずれることを抑制できる。但し、当該構成の場合、各々のクランプ部125cから被クランプ面2dに作用する負荷荷重の方向が、前述した対称の中心点から離れ且つ逆方向に作用する。従って、ポッド2に対して該中心点を中心として回転を促す力が作用した場合にはクランプの効果が適切に得られない恐れがある。
【0031】
図5C及び図5Dはこの回転力の作用に効果的に抗する配置を示している。図5Cの場合、被クランプ面2cはドア111方向のテーパ面のみとなる。従って前述した回転力の付加或いは搬送機構が存在する方向からの引っ張り付加には強度を有する。図5Dの場合、被クランプ面2cはドア111とは逆の方向のテーパ面のみとなる。従って前述した回転力の付加或いはドア111方向からの引っ張り付加には強度を有する。しかしながら、逆方向からの荷重付加に対しての効力は低下する。従って、これら配置は、ロードポート装置101の使用環境、載置台121内部での収容凹部129及びクランプシリンダ125bの配置上の制約等と考慮して適切に定められることが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0032】
以上述べたように、本発明は半導体処理装置に対して好適に用いるロードポート装置に関している。しかしながら、本発明の利用可能性は当該処理装置むけのみに限定されず、例えば液晶ディスプレイのパネルを扱う処理装置等、半導体に準じた各種処理が行われる種々の処理装置に用いられる所謂ロードポート装置に対しても適用可能である。
【符号の説明】
【0033】
1:ウエハ、 2:ポッド、 2a:ポッド本体、 2b:ポッド開口部、 2c:被クランプ部、 2d:被クランプ面、 4:蓋、 101:ロードポート装置、 105:サイドプレート、 105a:第一の開口部、 110:ドアシステム、 111:ドア、 120:ポッド載置部、 121:載置台、 123:載置台駆動機構、 125:クランプ部材、 125a:クランプアーム、 125b:クランプシリンダ、 125c:クランプ部、 127:位置決めピン、 129:収容凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一側面に開口を有するポッド本体と前記開口を開閉する蓋とを有して内部に被収容物を収容可能なポッド、を載置台上に固定し、前記蓋を開閉して前記ポッド内部の被収容物の挿脱を可能とするロードポート装置であって、
前記ポッドの底面に対して所定の角度傾斜する回転軸の周りで退避位置とクランプ位置との間を回動可能であって、前記クランプ位置で前記ポッドの被クランプ部と当接可能なクランプ部を有するクランプ部材と、
前記退避位置にある前記クランプ部材を収容し、前記退避位置から前記クランプ位置まで回動する前記クランプ部材の前記クランプ部が前記載置台の上に突き出す内部広さを有して、前記載置台の表面に配置され且つ前記クランプ部材が内部に配置される収容凹部と、を有することを特徴とするロードポート装置。
【請求項2】
前記被クランプ部は前記ポッドの底面に設けられて前記底面に開口する凹部であって前記凹部の奥から開口に向かうに従って前記開口の大きさを狭める被クランプ面を有し、
前記クランプ部は前記被クランプ面に対応する形状を有することを特徴とする請求項1に記載のロードポート装置。
【請求項3】
前記クランプ部材は対で配置されることを特徴とする請求項1或いは2の何れかに記載のロードポート装置。
【請求項4】
前記対で配置される前記クランプ部材の一方は、前記回転軸を含み且つ前記底面に垂直な平面で前記収容凹部を切断した断面において対向して位置する被クランプ面の何れか一方と当接し、前記被クランプ部材の他方は前記被クランプ面の他方と当接することを特徴とする請求項3に記載のロードポート装置。
【請求項5】
前記クランプ部材は、前記クランプ部を一方に有し且つ他方で前記回転軸に支持される棒状のクランプアームと、前記回転軸を回転させるクランプシリンダと、を有し、
前記クランプシリンダは前記クランプ位置において前記クランプアームを前記回転軸に沿って引き込む動作を為すことを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載のロードポート装置。
【請求項6】
一側面に開口を有するポッド本体と前記開口を開閉する蓋とを有して内部に被収容物を収容可能なポッド、を載置台上に固定し、前記蓋を開閉して前記ポッド内部の被収容物の挿脱を可能とするロードポート装置において、前記ポッドを前記載置台上に固定するクランプ装置であって、
前記ポッドの底面に対して所定の角度傾斜する回転軸の周りで退避位置とクランプ位置との間を回動可能であって、前記クランプ位置で前記ポッドの被クランプ部と当接可能なクランプ部を有するクランプ部材と、
前記退避位置にある前記クランプ部材を収容し、前記退避位置から前記クランプ位置まで回動する前記クランプ部材の前記クランプ部が前記載置台の上に突き出す内部広さを有して、前記載置台の表面に配置され且つ前記クランプ部材が内部に配置される収容凹部と、を有することを特徴とするクランプ装置。
【請求項7】
前記被クランプ部は前記ポッドの底面に設けられて前記底面に開口する凹部であって前記凹部の奥から開口に向かうに従って前記開口の大きさを狭める被クランプ面を有し、
前記クランプ部は前記被クランプ面に対応する形状を有することを特徴とする請求項6に記載のクランプ装置。
【請求項8】
前記クランプ部材は対で配置されることを特徴とする請求項6或いは7の何れかに記載のクランプ装置。
【請求項9】
前記対で配置される前記クランプ部材の一方は、前記回転軸を含み且つ前記底面に垂直な平面で前記収容凹部を切断した断面において対向して位置する被クランプ面の何れか一方と当接し、前記被クランプ部材の他方は前記被クランプ面の他方と当接することを特徴とする請求項8に記載のクランプ装置。
【請求項10】
前記クランプ部材は、前記クランプ部を一方に有し且つ他方で前記回転軸に支持される棒状のクランプアームと、前記回転軸を回転させるクランプシリンダと、を有し、
前記クランプシリンダは前記クランプ位置において前記クランプアームを前記回転軸に沿って引き込む動作を為すことを特徴とする請求項6乃至9の何れか一項に記載のクランプ装置。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【公開番号】特開2013−30660(P2013−30660A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−166584(P2011−166584)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】