説明

ローパスフィルタとその調整方法

【課題】低損失で急峻な減衰特性を有し、通過特性を調整することが容易な小型のローパスフィルタを提供する。
【解決手段】第1のフィルタ1は、2端子対SAW共振子11からなる。第2のフィルタ2は、1端子対SAW共振子21とチップインダクタ22とからなる。第3のフィルタ3は、1端子対SAW共振子31とチップインダクタ32とからなる。チップインダクタ22,32のうち少なくとも一方のインダクタ値を減少させることが可能な減少調整部と、チップインダクタ22,32のうち少なくとも一方のインダクタ値を増大させることが可能な増大調整部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ローパスフィルタとその通過特性を調整する調整方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話機の高機能化が進み、音声通信及びデータ通信の機能に加えて、FM放送やTV放送を受信するチューナの搭載が進みつつある。TV放送受信用チューナ付き携帯電話機では、携帯電話機の送信信号がTV放送の受信信号に影響を与えないようにすることが重要である。その理由は、音声通信及びデータ通信用のアンテナから送信された電力の大きな送信信号がTV放送の受信回路に回りこみ、混信を生じる可能性があるからである。このような混信を防ぐため、VHF/UHF帯の信号を通過させ、音声通信及びデータ通信用の送信帯域の信号を抑圧するローパスフィルタが、チューナ側の回路に搭載される。
【0003】
このようなローパスフィルタ特性を実現するものとして、積層LCローパスフィルタが挙げられる(例えば、特許文献1参照)。積層LCフィルタは、薄いセラミック層上に導体パターンを形成し、これらを複数積層することにより、インダクタやコンデンサを形成し、所定の接続を行ったフィルタである。図32に積層LCローパスフィルタの一般的な等価回路図を示し、図33に積層LCローパスフィルタの通過特性の1例を示す。図32において、INは信号入力端子、OUTは信号出力端子、L10,L11はインダクタ、C10〜C14はコンデンサである。図33では、インダクタL10,L11のQを30とした。インダクタ(コイル)は、その主特性であるインダクタンス成分を得ようとすると同時に抵抗成分ができる。通常、この抵抗成分は少ないほうが優れたインダクタと評価される。インダクタ成分と、この抵抗成分との比をQ特性として表現している。この値が高い方が高効率のインダクタといえる。周波数をf、インダクタ値をL、実効抵抗値をRとすると、Q=2πfL/Rである。図33に示すように、積層LCローパスフィルタでは、VHF/UHFの周波数帯(90MHzから770MHz)が通過帯域となり、800MHz帯CDMAの送信周波数帯(898MHzから925MHz)が減衰域となっている。
【0004】
【特許文献1】特開平07−336176号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の積層LCローパスフィルタでは、減衰極が1.3GHzとなっているため、減衰域(898MHzから925MHz)の減衰量が9dB程度と不十分であるという問題点があった。また、従来の積層LCローパスフィルタでは、段数を増やすことで、減衰極をより通過帯域近傍に近づけ、より大きな減衰量を得ることが可能であるが、段数を増やすと、インダクタに含まれる直列抵抗の影響により、通過帯域の損失も増大し、必要な通過帯域挿入損失を得ることが難しくなるという問題点があった。また、従来の積層LCローパスフィルタでは、素子数が増加すると、フィルタの外形が大きくなるという問題点があった。携帯電話機に搭載するフィルタは小型であることが望ましく、大きなフィルタは携帯電話機には不向きである。
【0006】
さらに、従来の積層LCローパスフィルタでは、インダクタの値のばらつきによりフィルタ特性が劣化するという問題点があった。積層LCローパスフィルタのインダクタは、セラミック焼成時の収縮率のばらつきやシート厚みのばらつきを反映して公差が無視できないほど大きくなっており、このばらつきによりローパスフィルタの特性が大きく変動し、製品の歩留まりが低下する可能性があった。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、低損失で急峻な減衰特性を有し、かつ通過特性を調整することが容易な小型のローパスフィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のローパスフィルタは、第1のフィルタと、この第1のフィルタに並列に接続された第2のフィルタと、前記第1、第2のフィルタと信号入力端子との間に挿入された第3のフィルタとを有し、前記第1のフィルタは、第1の端子が前記第3のフィルタに接続され、第2の端子が信号出力端子に接続され、第3の端子と第4の端子が接地された2端子対SAW共振子からなり、前記第2のフィルタは、第1の端子が前記2端子対SAW共振子の第1の端子に接続され、第2の端子が前記2端子対SAW共振子の第2の端子に接続された第1の1端子対SAW共振子と、この第1の1端子対SAW共振子に並列に接続された第1のチップインダクタとからなり、前記第3のフィルタは、第1の端子が前記信号入力端子に接続され、第2の端子が前記第1、第2のフィルタの第1の端子に接続された第2の1端子対SAW共振子と、この第2の1端子対SAW共振子に並列に接続された第2のチップインダクタとからなり、前記2端子対SAW共振子と前記第1、第2の1端子対SAW共振子とが、圧電基板上に形成され、前記第1、第2のチップインダクタが、前記圧電基板を内蔵するセラミックパッケージ内に搭載され、前記第1、第2のチップインダクタのうち少なくとも一方のインダクタ値を減少させることが可能な減少調整部と、前記第1、第2のチップインダクタのうち少なくとも一方のインダクタ値を増大させることが可能な増大調整部とを備えるものである。
【0009】
また、本発明のローパスフィルタの1構成例において、前記減少調整部は、前記第1のチップインダクタの値を減少させることが可能な第1の減少調整部と、前記第2のチップインダクタの値を減少させることが可能な第2の減少調整部とからなり、前記増大調整部は、前記第1のチップインダクタの値を増大させることが可能な第1の増大調整部と、前記第2のチップインダクタの値を増大させることが可能な第2の増大調整部とからなるものである。
【0010】
また、本発明のローパスフィルタの1構成例は、前記セラミックパッケージの第1のチップインダクタ入力用パッドと前記第1の1端子対SAW共振子の第1の端子に繋がる第1の配線とが第1のチップインダクタ入力用ワイヤを介して接続され、前記セラミックパッケージの第1のチップインダクタ出力用パッドと前記第1の1端子対SAW共振子の第2の端子に繋がる第2の配線とが第1のチップインダクタ出力用ワイヤを介して接続され、前記セラミックパッケージの第2のチップインダクタ入力用パッドと前記第2の1端子対SAW共振子の第1の端子に繋がる第3の配線とが第2のチップインダクタ入力用ワイヤを介して接続され、前記セラミックパッケージの第2のチップインダクタ出力用パッドと前記第2の1端子対SAW共振子の第2の端子に繋がる前記第1の配線とが第2のチップインダクタ出力用ワイヤを介して接続され、前記第1の減少調整部は、前記圧電基板上に第1のスリットを挟んで前記第1の配線と隣り合うように形成された少なくとも1つの第1の減少調整用パッドと、前記第1の配線及び前記第1の減少調整用パッドの各々に対して1本ずつ接続された複数の前記第1のチップインダクタ入力用ワイヤとからなり、前記第2の減少調整部は、前記圧電基板上に第2のスリットを挟んで前記第3の配線と隣り合うように形成された第2の減少調整用パッドと、前記第3の配線及び前記第2の減少調整用パッドの各々に対して1本ずつ接続された複数の前記第2のチップインダクタ入力用ワイヤとからなり、前記第1の増大調整部は、前記圧電基板上に第3のスリットを挟んで前記第1の配線と隣り合うように形成された第1の増大調整用パッドと、この第1の増大調整用パッドと前記第2の配線との間に設けられた第1の容量素子とからなり、前記第2の増大調整部は、前記圧電基板上に第4のスリットを挟んで前記第1の配線と隣り合うように形成された第2の増大調整用パッドと、この第2の増大調整用パッドと前記第3の配線との間に設けられた第2の容量素子とからなるものである。
【0011】
また、本発明のローパスフィルタの1構成例において、前記第1の減少調整部は、前記圧電基板上に第1のスリットを挟んで前記第2の配線と隣り合うように形成された少なくとも1つの第1の減少調整用パッドと、前記第2の配線及び前記第1の減少調整用パッドの各々に対して1本ずつ接続された複数の前記第1のチップインダクタ出力用ワイヤとからなり、前記第2の減少調整部は、前記圧電基板上に第2のスリットを挟んで前記第1の配線と隣り合うように形成された第2の減少調整用パッドと、前記第1の配線及び前記第2の減少調整用パッドの各々に対して1本ずつ接続された複数の前記第2のチップインダクタ出力用ワイヤとからなり、前記第1の増大調整部は、前記圧電基板上に第3のスリットを挟んで前記第1の配線と隣り合うように形成された第1の増大調整用パッドと、この第1の増大調整用パッドと前記第2の配線との間に設けられた第1の容量素子とからなり、前記第2の増大調整部は、前記圧電基板上に第4のスリットを挟んで前記第1の配線と隣り合うように形成された第2の増大調整用パッドと、この第2の増大調整用パッドと前記第3の配線との間に設けられた第2の容量素子とからなるものである。
【0012】
また、本発明は、第1のフィルタと、この第1のフィルタに並列に接続された第2のフィルタと、前記第1、第2のフィルタと信号入力端子との間に挿入された第3のフィルタとを有するローパスフィルタの通過特性を調整する調整方法であって、前記第1のフィルタは、第1の端子が前記第3のフィルタに接続され、第2の端子が信号出力端子に接続され、第3の端子と第4の端子が接地された2端子対SAW共振子からなり、前記第2のフィルタは、第1の端子が前記2端子対SAW共振子の第1の端子に接続され、第2の端子が前記2端子対SAW共振子の第2の端子に接続された第1の1端子対SAW共振子と、この第1の1端子対SAW共振子に並列に接続された第1のチップインダクタとからなり、前記第3のフィルタは、第1の端子が前記信号入力端子に接続され、第2の端子が前記第1、第2のフィルタの第1の端子に接続された第2の1端子対SAW共振子と、この第2の1端子対SAW共振子に並列に接続された第2のチップインダクタとからなり、前記2端子対SAW共振子と前記第1、第2の1端子対SAW共振子とが、圧電基板上に形成され、前記第1、第2のチップインダクタが、前記圧電基板を内蔵するセラミックパッケージ内に搭載され、前記ローパスフィルタの通過域の高域側の端部周波数が規格値より低い場合は、前記第1、第2のチップインダクタのうち少なくとも一方のインダクタ値を減少させ、前記ローパスフィルタの通過域の高域側の端部周波数が規格値より高い場合は、前記第1、第2のチップインダクタのうち少なくとも一方のインダクタ値を増大させるようにしたものである。
【0013】
また、本発明のローパスフィルタの調整方法の1構成例は、前記ローパスフィルタの通過域の高域側の端部周波数が規格値より低い場合は、前記第1のチップインダクタ入力用ワイヤと前記第1のチップインダクタ出力用ワイヤと前記第2のチップインダクタ入力用ワイヤと前記第2のチップインダクタ出力用ワイヤのうち少なくとも1つのワイヤの本数を増やして、前記第1、第2のチップインダクタのうち少なくとも一方のインダクタ値を減少させ、前記ローパスフィルタの通過域の高域側の端部周波数が規格値より高い場合は、前記第1、第2のチップインダクタのうち少なくとも一方に並列に容量素子を接続して、前記第1、第2のチップインダクタのうち少なくとも一方のインダクタ値を増大させるようにしたものである。
【0014】
また、本発明のローパスフィルタの調整方法において、前記ローパスフィルタは、前記前記圧電基板上に第1のスリットを挟んで前記第1の配線と隣り合うように形成された少なくとも1つの第1の減少調整用パッドと、前記第1の配線及び前記第1の減少調整用パッドの各々に対して1本ずつ接続された複数の前記第1のチップインダクタ入力用ワイヤとからなる第1の減少調整部と、前記圧電基板上に第2のスリットを挟んで前記第3の配線と隣り合うように形成された第2の減少調整用パッドと、この第2の減少調整用パッド及び前記第3の配線の各々に対して1本ずつ接続された複数の前記第2のチップインダクタ入力用ワイヤとからなる第2の減少調整部と、前記圧電基板上に第3のスリットを挟んで前記第1の配線と隣り合うように形成された第1の増大調整用パッドと、この第1の増大調整用パッドと前記第2の配線との間に設けられた第1の容量素子とからなる第1の増大調整部と、前記圧電基板上に第4のスリットを挟んで前記第1の配線と隣り合うように形成された第2の増大調整用パッドと、この第2の増大調整用パッドと前記第3の配線との間に設けられた第2の容量素子とからなる第2の増大調整部とを有し、前記ローパスフィルタの通過域の高域側の端部周波数が規格値より低い場合は、前記第1のスリットと前記第2のスリットのうち少なくとも一方にボールボンドを形成して、前記第1の配線と前記第1の減少調整用パッドとの間、及び前記第3の配線と前記第2の減少調整用パッドとの間のうち少なくとも一方を接続し、前記第1、第2のチップインダクタのうち少なくとも一方のインダクタ値を減少させ、前記ローパスフィルタの通過域の高域側の端部周波数が規格値より高い場合は、前記第3のスリットと前記第4のスリットのうち少なくとも一方にボールボンドを形成して、前記第1の配線と前記第1の増大調整用パッドとの間、及び前記第1の配線と前記第2の増大調整用パッドとの間のうち少なくとも一方を接続し、前記第1、第2のチップインダクタのうち少なくとも一方のインダクタ値を増大させるようにしたものである。
【0015】
また、本発明のローパスフィルタの調整方法において、前記ローパスフィルタは、前記圧電基板上に第1のスリットを挟んで前記第2の配線と隣り合うように形成された少なくとも1つの第1の減少調整用パッドと、前記第2の配線及び前記第1の減少調整用パッドの各々に対して1本ずつ接続された複数の前記第1のチップインダクタ出力用ワイヤとからなる第1の減少調整部と、前記圧電基板上に第2のスリットを挟んで前記第1の配線と隣り合うように形成された第2の減少調整用パッドと、前記第1の配線及び前記第2の減少調整用パッドの各々に対して1本ずつ接続された複数の前記第2のチップインダクタ出力用ワイヤとからなる第2の減少調整部と、前記圧電基板上に第3のスリットを挟んで前記第1の配線と隣り合うように形成された第1の増大調整用パッドと、この第1の増大調整用パッドと前記第2の配線との間に設けられた第1の容量素子とからなる第1の増大調整部と、前記圧電基板上に第4のスリットを挟んで前記第1の配線と隣り合うように形成された第2の増大調整用パッドと、この第2の増大調整用パッドと前記第3の配線との間に設けられた第2の容量素子とからなる第2の増大調整部とを有し、前記ローパスフィルタの通過域の高域側の端部周波数が規格値より低い場合は、前記第1のスリットと前記第2のスリットのうち少なくとも一方にボールボンドを形成して、前記第2の配線と前記第1の減少調整用パッドとの間、及び前記第1の配線と前記第2の減少調整用パッドとの間のうち少なくとも一方を接続し、前記第1、第2のチップインダクタのうち少なくとも一方のインダクタ値を減少させ、前記ローパスフィルタの通過域の高域側の端部周波数が規格値より高い場合は、前記第3のスリットと前記第4のスリットのうち少なくとも一方にボールボンドを形成して、前記第1の配線と前記第1の増大調整用パッドとの間、及び前記第1の配線と前記第2の増大調整用パッドとの間のうち少なくとも一方を接続し、前記第1、第2のチップインダクタのうち少なくとも一方のインダクタ値を増大させるようにしたものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、第1のフィルタと、第1のフィルタに並列に接続された第2のフィルタと、第1、第2のフィルタと信号入力端子との間に挿入された第3のフィルタとを設け、第1のフィルタを2端子対SAW共振子から構成し、第2のフィルタを第1の1端子対SAW共振子と第1のチップインダクタとから構成し、第3のフィルタを第2の1端子対SAW共振子と第2のチップインダクタとから構成することにより、減衰極を遮断周波数近傍にすることが可能となり、減衰域の減衰量を改善することができる。また、本発明では、SAW共振子を用いるため、フィルタを小型化できる。また、本発明では、積層LCフィルタのように所望の減衰量を得るために段数を増やす必要がないので、通過帯域の挿入損失が増大することがなく、外形が大型化することもない。その結果、本発明では、低損失で急峻な減衰特性を有する小型のローパスフィルタを実現することができる。また、本発明では、減少調整部と増大調整部を設けることにより、ローパスフィルタの通過特性を容易に調整することができるので、ローパスフィルタの歩留りを向上させることができる。
【0017】
また、本発明では、第1の減少調整用パッドと複数の第1のチップインダクタ入力用ワイヤ又は複数の第1のチップインダクタ出力用ワイヤとから第1の減少調整部を構成し、第2の減少調整用パッドと複数の第2のチップインダクタ入力用ワイヤ又は複数の第2のチップインダクタ出力用ワイヤとから第2の減少調整部を構成し、第1の増大調整用パッドと第1の容量素子とから第1の増大調整部を構成し、第2の増大調整用パッドと第2の容量素子とから第2の増大調整部を構成しておくことにより、第1のスリットと第2のスリットのうち少なくとも一方にボールボンドを形成すれば、第1、第2のチップインダクタのうち少なくとも一方のインダクタ値を減少させることができ、第3のスリットと第4のスリットのうち少なくとも一方にボールボンドを形成すれば、第1、第2のチップインダクタのうち少なくとも一方のインダクタ値を増大させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施の形態となるローパスフィルタの等価回路図である。図1のローパスフィルタは、第1のフィルタ1と、第2のフィルタ2と、第3のフィルタ3と、第4のフィルタ4とから構成されている。図1において、INは信号入力端子、OUTは信号出力端子である。
【0019】
図2に、第1のフィルタ1の平面図を示す。第1のフィルタ1は、2端子対SAW(Surface Acoustic Wave )共振子11からなる。2端子対SAW共振子11は、圧電基板上に送信用IDT(interdigital transducer :すだれ状電極)160と受信用IDT161とを形成し、さらにその両側にそれぞれ反射器162,163を配置したものである。周知のように、IDTは、金属からなる櫛状の対向する2つの電極部を有し、各電極部は、対向する電極部に向かって交互に突出した複数の電極指を有している。
【0020】
図1、図2において、12は2端子対SAW共振子11の第1の端子(フィルタ1の入力端子)、14は2端子対SAW共振子11の第2の端子(フィルタ1の出力端子)、13は2端子対SAW共振子11の第3の端子、15は2端子対SAW共振子11の第4の端子である。第3の端子13と第4の端子15は接地されている。
【0021】
第1のフィルタ1は、2つの反射器162,163間に生じる定在波の周波数とIDT160,161の共振周波数とが一致するときに、入力端子12と出力端子14間に信号が伝送される狭帯域通過フィルタとして動作する。第1のフィルタ1の通過特性の1例を図3に示す。
【0022】
図4に、第3のフィルタ3の平面図を示す。第3のフィルタ3は、1端子対SAW共振子31と、1端子対SAW共振子31に並列に接続されたチップインダクタ32とからなる。1端子対SAW共振子31は、圧電基板上に1つのIDT310を形成し、さらにその両側にそれぞれ反射器311,312を配置したものである。チップインダクタ32としては、大きく分けると、導体層を印刷したフェライト等からなるグリーンシートを複数積層することで巻線を形成した積層チップインダクタと、導線を螺旋状に巻いた巻線チップインダクタの2種類がある。図1、図4において、33は1端子対SAW共振子31の第1の端子(IDT310の入力端子)、34は1端子対SAW共振子31の第2の端子(IDT310の出力端子)、35はチップインダクタ32の入力端子、36はチップインダクタ32の出力端子である。
【0023】
第3のフィルタ3の通過特性の1例を図5に示す。第3のフィルタ3は、2つの減衰極を有する帯域通過フィルタの特性を示す。ただし、図5では、約0.9GHzの低周波側の減衰極のみ記載し、1GHz超の位置にある高周波側の減衰極については省略している。第1のフィルタ1と第3のフィルタ3とを直列に接続し、第1のフィルタ1の通過域(0.9〜1GHz)を第3のフィルタ3の2つの減衰極の間に設定すると、図6に示すように第1のフィルタ1の通過域の両側の約0.9GHzと1GHzの位置に第3のフィルタ3の減衰極が生じ、通過域近傍の減衰量が改善されていることが分かる。
【0024】
フィルタ1,3を直列に接続したフィルタ(以下、直列フィルタ1,3と呼ぶ)と似た構成が、特開昭56−47116号公報に開示されている。特開昭56−47116号公報に開示されたフィルタでは、弾性表面波素子としてトランスバーサルフィルタが使用され、圧電共振子としてセラミック共振子が使用されている。これに対して、本実施の形態の直列フィルタ1,3では、トランスバーサルフィルタの代わりに2端子対SAW共振子11を使用し、また圧電共振子の代わりに1端子対SAW共振子31を使用しており、これらを同一の圧電基板上に形成している点が特開昭56−47116号公報のフィルタと異なる。
【0025】
次に、本実施の形態では、直列フィルタ1,3において、第1のフィルタ1に並列に第2のフィルタ2を接続することにより、非常に急峻な減衰特性を有するローパスフィルタを実現している。第2のフィルタ2は、第3のフィルタ3と同様に、1端子対SAW共振子21と、1端子対SAW共振子21に並列に接続されたチップインダクタ22とからなる。図1において、23は1端子対SAW共振子21の第1の端子(IDTの入力端子)、24は1端子対SAW共振子21の第2の端子(IDTの出力端子)、25はチップインダクタ22の入力端子、26はチップインダクタ22の出力端子である。
【0026】
図1のローパスフィルタの通過特性の具体例については後述することとし、このローパスフィルタの動作について説明する。まず、第1のフィルタ1について考察する。第1のフィルタ1においては音響的結合が含まれているため、LCフィルタの解析に用いられている影像パラメータ法による解析を直接行うことは困難である。まず影像パラメータ法による解析に帰着するため、以下の変換を行う。一般に、対称2端子対回路は、偶モード励振したときのインピーダンスをZeven、奇モード励振したときのインピーダンスをZoddとすると、図7に示すような対称格子型回路に変形できる。
【0027】
偶モード励振とは、2端子対回路の両端に大きさと位相が同じ電圧を印加することであり、奇モード励振とは、2端子対回路の両端に大きさが同じで位相が反転した電圧を印加することである。偶モードインピーダンスZeven、奇モードインピーダンスZoddは、それぞれの励振モードにおける電圧と流入する電流の比である。また、偶モードインピーダンスZevenと奇モードインピーダンスZoddの値は、回路シミュレータにより容易に計算することができる。図7に示した対称格子型回路は、図8のようなT型回路に容易に変形することができる。図8のT型回路について、影像インピーダンスをZ0、伝搬定数をθとすると、次式が成立する。
【0028】
【数1】

【0029】
影像パラメータ理論によれば、θが虚数のときに通過域、実数のときに減衰域になるから、偶モードインピーダンスZevenと奇モードインピーダンスZoddが異符号のときに通過域、同符号のときに減衰域となる。偶モードインピーダンスZevenと奇モードインピーダンスZoddの符号を調べるには、インピーダンスのリアクタンス部の符号を調べればよい。第1のフィルタ1について、偶モードインピーダンスZevenと奇モードインピーダンスZoddのリアクタンス特性を図9、図10に示す。図10は、図9における0.9〜1GHzの帯域を拡大した図である。
【0030】
図9、図10によれば、偶モードインピーダンスZevenと奇モードインピーダンスZoddとが異符号の周波数帯域がフィルタ特性の通過域となり、同符号の周波数帯域が減衰域となっている。上記の説明は、動作原理を説明するために回路が対称回路であるとの仮定をおいている。実際の回路では、IDT160及び161の対数等を異ならせる場合があり、対称性が損なわれる場合があるが、その場合でも原理的には上記説明の延長上にあり、フィルタ特性を直接計算し所望の特性となるよう設計すればよい。
【0031】
第1のフィルタ1に第2のフィルタ2のチップインダクタ22のみを接続した場合のリアクタンス特性を図11、図12に示す。図12は、図11における0.9〜1GHzの帯域を拡大した図である。第1のフィルタ1に並列にチップインダクタ22を接続したことにより、奇モードインピーダンスZoddの符号がほぼ反転し、偶モードインピーダンスZevenと異符合になっていることが分かる。このときの通過特性は、図13のようになり、偶モードインピーダンスZevenと奇モードインピーダンスZoddが同符号となっている一部の帯域(0.94GHz付近)を除いて通過域が形成されている。
【0032】
さらに並列に1端子対SAW共振子21を接続した場合、すなわち第1のフィルタ1に第2のフィルタ2を並列に接続した場合のリアクタンス特性を図14、図15に示す。図15は、図14における0.7〜1GHzの帯域を拡大した図である。第1のフィルタ1に第2のフィルタ2を並列に接続すると、1端子対SAW共振子21とチップインダクタ22で決まるピークが現れ、偶モードインピーダンスZevenと奇モードインピーダンスZoddが同符号の周波数帯域、すなわち減衰域が拡大されることが分かる。
【0033】
第1のフィルタ1に第2のフィルタ2を並列に接続した場合の通過特性を図16に示す。本実施の形態では、第1のフィルタ1に並列にチップインダクタ22を接続することにより、狭帯域通過フィルタからローパスフィルタに変換することができ、さらに第1のフィルタ1に1端子対SAW共振子21を並列に接続することより、急峻な肩特性と広い減衰域を有するローパスフィルタを実現することができる。
【0034】
そして、フィルタ1,2を並列に接続した構成に図5の特性を有する第3のフィルタ3を直列に接続すると、ローパスフィルタの減衰域の減衰量を増大させることができる。なお、本実施の形態のローパスフィルタの減衰域の高域側の端部周波数は、第1のフィルタ1によりほぼ決定され、減衰域の低域側の端部周波数は、チップインダクタ22と1端子対SAW共振子21により決定される。また、第3のフィルタ3の減衰極周波数を適切に設定することにより、減衰域の周波数特性を設定することができる。
【0035】
さらに、信号入力端子INと接地との間に第4のフィルタ4を挿入することにより、ローパスフィルタの減衰域の減衰量を更に増大させることができる。第4のフィルタ4は、1端子対SAW共振子41からなる。1端子対SAW共振子41は、1端子対SAW共振子31と同様に、圧電基板上に1つのIDTを形成し、さらにその両側にそれぞれ反射器を配置したものである。図1において、42は1端子対SAW共振子41の第1の端子、43は1端子対SAW共振子41の第2の端子である。
【0036】
次に、本実施の形態のローパスフィルタの設計法について説明する。まず、以下の(a)〜(d)のような前提条件を定める。
(a)ラダー型のフィルタは、入出力端子間に挿入される素子である直列腕と、入出力端子と接地との間に挿入される素子である並列腕のインピーダンス関係によりフィルタ特性が決まる。
(b)本実施の形態では、ローパスフィルタを直列腕及び並列腕に分解することができないため、ラダー型フィルタとは言えない。よって、ラダー型フィルタの動作説明で使用される影像インピーダンスによる方法を直接適用することはできない。
(c)このため、本実施の形態では、偶モードインピーダンスと奇モードインピーダンスの概念を導入する。
(d)偶モードインピーダンスと奇モードインピーダンスの虚部の符号によりフィルタ特性が定まる。すなわち、偶モードインピーダンスの虚部Im|Zeven|と奇モードインピーダンスの虚部Im|Zodd|とが異符号のとき通過域となり、Im|Zeven|とIm|Zodd|とが同符号のとき減衰域となり、Im|Zeven|とIm|Zodd|とが同じ値のときに減衰極が生じる。
【0037】
以下、 第1のフィルタ1に第2のフィルタ2を並列に接続したフィルタについて考える。第1のフィルタ1に第2のフィルタ2を並列に接続したフィルタの偶モードインピーダンスの虚部Im|Zeven|と奇モードインピーダンスの虚部Im|Zodd|を図17に示す。また、図17の場合におけるフィルタの通過特性を図18に示す。偶モードインピーダンスの虚部Im|Zeven|は、主に第1のフィルタ1の素子の値により定まり、奇モードインピーダンスの虚部Im|Zodd|は、主に第2のフィルタ2の素子の値により定まる。
【0038】
図17では、奇モードインピーダンスの虚部Im|Zodd|が零となる周波数P1より低い帯域、及び偶モードインピーダンスの虚部Im|Zeven|が零となる周波数P2より高い帯域で、偶モードインピーダンスの虚部Im|Zeven|と奇モードインピーダンスの虚部Im|Zodd|が異符号となっているため、これらの帯域が通過域となる。
【0039】
一方、周波数P1とP2の間では、偶モードインピーダンスの虚部Im|Zeven|と奇モードインピーダンスの虚部Im|Zodd|が同符号となっているため、周波数P1とP2の間の帯域が減衰域となる。特に、図17に示す破線の帯域Bでは、偶モードインピーダンスの虚部Im|Zeven|と奇モードインピーダンスの虚部Im|Zodd|が同一の値となる周波数が複数生じ、減衰極が形成される。
【0040】
所望の通過域と減衰域を得るためには、周波数P1が目的の遮断周波数(通過域の高域側の端部周波数)となるよう調整し、偶モードインピーダンスの虚部Im|Zeven|と奇モードインピーダンスの虚部Im|Zodd|が同じ値となる帯域Bが所望の減衰域と一致するよう調整すればよい。そのためには、まず第1のフィルタ1のIDT160,161の共振波長λ1を調整して、周波数P2が減衰域の高域側の端部周波数付近となるよう設定する。次に、第2のフィルタ2のIDTの共振波長λ2を調整して、図17の帯域Bが目的の減衰域の周波数範囲と一致するよう調整する。このとき、λ2<λ1の関係を満たすようにする。
【0041】
第1のフィルタ1に第2のフィルタ2を並列に接続したフィルタにおいてλ2>λ1とした場合のリアクタンス特性を図19に示し、このときの通過特性を図20に示す。図19に示すように、λ2>λ1とした場合、偶モードインピーダンスの虚部Im|Zeven|と奇モードインピーダンスの虚部Im|Zodd|とが連続的に同一の値となる帯域Bがなくなり、周波数P1とP2の間でIm|Zeven|とIm|Zodd|が一致するのは2点のみとなる。このため、減衰極が分離し、図18の場合に比べて減衰域の減衰量が劣化する(図20)。
【0042】
第2のフィルタ2のIDTの共振波長λ2を変化させると、通過域の高域側の端部周波数を決めるP1が変化するため、チップインダクタ22の長さを調整して、P1が前述のように目的の遮断周波数になるよう設定する。この操作により、偶モードインピーダンスの虚部Im|Zeven|と奇モードインピーダンスの虚部Im|Zodd|が同一の値となる帯域Bが変化するため、波長λ2を調整する。このようなチップインダクタ22の長さの調整と第2のフィルタ2のIDTの共振波長λ2の調整とを、所望の特性を満たすまで繰り返す。
【0043】
第1のフィルタ1及び第2のフィルタ2のIDTの電極指の交差幅と電極指の対数は、通過域のインピーダンスと帯域Bの傾きに影響を与える。第1のフィルタ1のIDT160,161の電極指の交差幅及び電極指の対数で決まるIm|Zeven|の傾きと第2のフィルタ2のIDTの電極指の交差幅及び電極指の対数で決まるIm|Zodd|の傾きとが一致するように調整すると共に、通過域が所望の特性インピーダンス(通常50Ω)となるよう適切に設定する。以上の調整は、手動で行うことも可能であるが、適切な誤差関数を定めて、コンピュータにより最適な組み合わせを探索するようにすると良い。
【0044】
なお、以上の設計方法の説明では、第1のフィルタ1のIDT160の共振波長とIDT161の共振波長を同一の値としたが、異なる値に設定しても良い。この場合のリアクタンス特性を図21に示す。IDT160とIDT161の共振波長を異なる値にすると、偶モードインピーダンスの虚部Im|Zeven|と奇モードインピーダンスの虚部Im|Zodd|が同一の値となる帯域Bが拡大し、より広帯域な減衰域を実現することができる。
【0045】
また、第1のフィルタ1のIDT160とIDT161間の距離を調整すると、偶モードインピーダンスの虚部Im|Zeven|と奇モードインピーダンスの虚部Im|Zodd|が同一の値となる帯域を更に拡大することができ、減衰域を更に拡大することができる。この場合のリアクタンス特性を図22に示す。この調整は、IDT160とIDT161間の距離を通常0.5λとするところを0.7λから0.9λ付近にすると良い。
【0046】
第3のフィルタ3は、図5のような通過特性を有している。そこで、第1のフィルタ1に第2のフィルタ2を並列に接続したフィルタと、第3のフィルタ3とにおいて、通過域と減衰域が互いに一致するようにして、これらを従属接続すれば、より減衰量が増大し好ましい。
【0047】
次に、本実施の形態のローパスフィルタの実装構造について説明する。図1のローパスフィルタを従来の方法で実装すると、図23のようになる。図23の例では、プリント基板500上にセラミックパッケージ501と2つのチップインダクタ22,32とを半田付けしている。セラミックパッケージ501は、図1のローパスフィルタの各構成要素のうちチップインダクタ22,32を除く構成要素を搭載したものである。図23において、502はセラミックパッケージ501の底面に形成されたパッド(不図示)と半田で接続されるフットパターン、503,504はセラミックパッケージ501とチップインダクタ22とを接続する配線、505,506はセラミックパッケージ501とチップインダクタ32とを接続する配線である。
【0048】
図23のような実装構造では、セラミックパッケージ501とチップインダクタ22,32の実装に一定の距離が必要であり、実装面積が増大しがちである。また、プリント基板500上にセラミックパッケージ501とチップインダクタ22,32とを実装しなければ、最終的なフィルタ特性を評価することができないため、品質管理上問題が生じる可能性がある。また、チップインダクタ22とセラミックパッケージ501内の1端子対SAW共振子21との接続、およびチップインダクタ32とセラミックパッケージ501内の1端子対SAW共振子31との接続には、セラミックパッケージ501内の配線及びプリント基板500上の配線503〜506が必要であり、配線長が非常に長くなるため、ローパスフィルタの挿入損失の更なる低減を図ることは困難である。
【0049】
これらの問題を解決するため、チップインダクタ22,32をセラミックパッケージ内に搭載したレイアウトを図24に示す。図24において、100はアルミナ等からなるセラミックパッケージ、101はLiTaO3 等からなる圧電基板、102は信号入力用パッド(図1の信号入力端子IN)、103はワイヤを介して1端子対SAW共振子41の第2の端子43と接続される第1の接地用パッド、104はワイヤを介して1端子対SAW共振子41の第2の端子43と接続される第2の接地用パッド、105はワイヤを介して第2のチップインダクタ32の入力端子35と接続される第2のチップインダクタ入力用パッド、106はワイヤを介して第2のチップインダクタ32の出力端子36と接続される第2のチップインダクタ出力用パッド、107はワイヤを介して第1のチップインダクタ22の入力端子25と接続される第1のチップインダクタ入力用パッド、108はワイヤを介して第1のチップインダクタ22の出力端子26と接続される第1のチップインダクタ出力用パッド、109はワイヤを介して2端子対SAW共振子11の第3の端子13と接続される第3の接地用パッド、110はワイヤを介して2端子対SAW共振子11の第4の端子15と接続される第4の接地用パッド、111は信号出力用パッド(図1の信号出力端子OUT)である。
【0050】
112〜117は圧電基板101上に形成された配線であり、112は1端子対SAW共振子41の第1の端子42と1端子対SAW共振子31の第1の端子33とを接続する配線、113は1端子対SAW共振子41の第2の端子43と接続された配線、114は1端子対SAW共振子31の第2の端子34と2端子対SAW共振子11の第1の端子12及び1端子対SAW共振子21の第1の端子23とを接続する配線、115は1端子対SAW共振子21の第2の端子24と2端子対SAW共振子11の第2の端子14とを接続する配線、116は2端子対SAW共振子11の第3の端子13と接続された配線、117は2端子対SAW共振子11の第4の端子15と接続された配線である。また、118〜121はセラミックパッケージ100上に形成された配線であり、118は第2のチップインダクタ32の入力端子35と接続された配線、119は第2のチップインダクタ32の出力端子36と接続された配線、120は第1のチップインダクタ22の入力端子25と接続された配線、121は第1のチップインダクタ22の出力端子26と接続された配線である。
【0051】
圧電基板101上に形成されるフィルタ1〜4の各共振子の電極、配線、パッドの材料としては例えばAlCu(0.5%)がある。また、AlCuに限らず種々の金属や合金を用いてもよい。
【0052】
122は信号入力用パッド102と配線112とを接続する信号入力端子用ワイヤ、123は第1の接地用パッド103と配線113とを接続する第1の接地用ワイヤ、124は第2の接地用パッド104と配線113とを接続する第2の接地用ワイヤ、125は第2のチップインダクタ入力用パッド105と配線112とを接続する第2のチップインダクタ入力用ワイヤ、126は第2のチップインダクタ出力用パッド106と配線114とを接続する第2のチップインダクタ出力用ワイヤ、127は第1のチップインダクタ入力用パッド107と配線114とを接続する第1のチップインダクタ入力用ワイヤ、128は第1のチップインダクタ出力用パッド108と配線115とを接続する第1のチップインダクタ出力用ワイヤ、129は第3の接地用パッド109と配線116とを接続する第3の接地用ワイヤ、130は第4の接地用パッド110と配線117とを接続する第4の接地用ワイヤ、131は信号出力用パッド111と配線115とを接続する信号出力端子用ワイヤである。
【0053】
図25は、セラミックパッケージ100のパッドと圧電基板101の配線との接続方法、およびチップインダクタ32のセラミックパッケージ100への搭載方法を説明するための斜視図である。なお、図25では、セラミックパッケージ100の一部を透視して記載している。チップインダクタ32は、導電性ペースト132を用いて配線118および119と接続される。チップインダクタ22についても同様にしてセラミックパッケージ100上に搭載される。
【0054】
配線119と第2のチップインダクタ出力用パッド106とは、ビアホール133を介して接続される。配線118と第2のチップインダクタ入力用パッド105との接続、配線120と第1のチップインダクタ入力用パッド107との接続、配線121と第1のチップインダクタ出力用パッド108との接続についても同様にビアホールを介して行われる。そして、第2のチップインダクタ出力用パッド106と圧電基板101上の配線114とは、第2のチップインダクタ出力用ワイヤ126を介して接続される。
【0055】
図24のレイアウトによれば、図23に示したレイアウトに比べて、配線長を短くすることができ、挿入損失の低減を図ることができる。しかし、図23、図24のいずれのレイアウトにおいても、従来の積層LCローパスフィルタと同様に、インダクタの値のばらつきによりフィルタ特性が劣化するという問題点がある。図26に、図24のレイアウトによる図1のローパスフィルタにおいてチップインダクタ22の値が変動した場合の通過特性の1例を示す。
【0056】
図1の回路構成によれば、従来の積層LCフィルタに比べて、非常に急峻な減衰特性を得ることができる。しかし、チップインダクタの公称公差は±0.2nH程度と無視できないほど大きく、チップインダクタ22の値が大きくなった場合、通過域の高域側の端部周波数が図26に示すように低周波側にシフトするため、通過域が狭くなる。一方、チップインダクタ22の値が小さくなった場合は、通過域の高域側の端部周波数が高周波側にシフトするために通過域は拡大するものの、減衰域が狭くなる。このようなフィルタ特性の劣化により、歩留まりが低下する可能性がある。
【0057】
そこで、本実施の形態では、以下の構造によりローパスフィルタの通過特性を調整することを可能にする。図27は本実施の形態のローパスフィルタのレイアウトを示す平面図であり、図24と同一の構成には同一の符号を付してある。本実施の形態では、圧電基板101上に、チップインダクタ22,32の値を実効的に減少させることが可能な減少調整部135,137と、チップインダクタ22,32の値を実効的に増大させることが可能な増大調整部136,138とを設けている。
【0058】
図28(A)、図28(B)は減少調整部135,137を拡大した平面図である。第1の減少調整部135は、圧電基板101上に第1のスリット140を挟んで配線114と隣り合うように形成された第1の減少調整用パッド141と、第1のチップインダクタ入力用パッド107と配線114とを接続する第1のチップインダクタ入力用ワイヤ127aと、第1のチップインダクタ入力用パッド107と第1の減少調整用パッド141とを接続する第1のチップインダクタ入力用ワイヤ127bとから構成される。
【0059】
同様に、第2の減少調整部137は、圧電基板101上に第2のスリット142を挟んで配線112と隣り合うように形成された第2の減少調整用パッド143と、第2のチップインダクタ入力用パッド105と配線112とを接続する第2のチップインダクタ入力用ワイヤ125aと、第2のチップインダクタ入力用パッド105と第2の減少調整用パッド143とを接続する第2のチップインダクタ入力用ワイヤ125bとから構成される。
【0060】
図29(A)、図29(B)は増大調整部136,138を拡大した平面図である。第1の増大調整部136は、圧電基板101上に第3のスリット144を挟んで配線114と隣り合うように形成された第1の増大調整用パッド145と、この第1の増大調整用パッド145と配線115との間に設けられた第1の容量素子146とから構成される。第1の容量素子146は、第1の増大調整用パッド145と繋がる電極部147と、空隙148を挟んで電極部147と対向する、配線115と繋がる電極部148とからなる。
【0061】
第2の増大調整部138は、圧電基板101上に第4のスリット150を挟んで配線114と隣り合うように形成された第2の増大調整用パッド151と、この第2の増大調整用パッド151と配線112との間に設けられた第2の容量素子152とから構成される。第2の容量素子152は、第2の増大調整用パッド151と繋がる電極部153と、空隙154を挟んで電極部153と対向する、配線112と繋がる電極部155とからなる。なお、容量素子146,152として、交差指状電極等を用いる場合には、通過域内で不要なリップルが生じないようIDT周期及び伝搬方向を適切に選ぶ必要がある。
【0062】
次に、本実施の形態のローパスフィルタの調整方法について説明する。まず、図27〜図29に示した状態までローパスフィルタの製造が終了した時点で、ローパスフィルタの通過特性を測定し、通過域の高域側の端部周波数(カットオフ周波数)によりローパスフィルタを規格内の良品、端部周波数が規格値より低い不良品、端部周波数が規格値より高い不良品にランク分けする。
【0063】
ローパスフィルタをランク分けした後に、通過域の高域側の端部周波数が規格値より低い不良品については、図30に示すように、第1の減少調整部135のスリット140の箇所にAu等からなるボールボンド156を形成し、配線114と第1の減少調整用パッド141とを電気的に接続する。第1のチップインダクタ入力用パッド107と配線114とを接続する第1のチップインダクタ入力用ワイヤは調整前は127aの1本のみであるが、ボールボンド156を形成した後は127aと127bの2本に増加する。これにより、第1のチップインダクタ22の実効的なインダクタ値が小さくなるため、ローパスフィルタの高域側の端部周波数が高周波側にシフトする。こうして、通過域の高域側の端部周波数が規格値より低い不良品が規格内の良品になるように、ローパスフィルタの通過特性を調整することができる。
【0064】
なお、図30の例では、第1の減少調整部135を用いて調整を行っているが、第2の減少調整部137のスリット142の箇所にボールボンドを形成してもよい。これにより、配線112と第2の減少調整用パッド143とが電気的に接続され、第2のチップインダクタ32の実効的なインダクタ値が小さくなるため、ローパスフィルタの高域側の端部周波数が高周波側にシフトする。また、減少調整部135と137の両方を同時に用いて調整を行うようにしてもよい。
【0065】
一方、通過域の高域側の端部周波数が規格値より高い不良品については、図31に示すように、第1の増大調整部136のスリット144の箇所にAu等からなるボールボンド157を形成し、配線114と第1の増大調整用パッド145とを電気的に接続する。これにより、第1の容量素子146が第1のチップインダクタ22に並列に接続され、第1のチップインダクタ22の実効的なインダクタ値が大きくなるため、ローパスフィルタの高域側の端部周波数が低周波側にシフトする。こうして、通過域の高域側の端部周波数が規格値より高い不良品が規格内の良品になるように、ローパスフィルタの通過特性を調整することができる。
【0066】
なお、図31の例では、第1の増大調整部136を用いて調整を行っているが、第2の増大調整部138のスリット150の箇所にボールボンドを形成してもよい。これにより、配線114と第2の増大調整用パッド151とが電気的に接続されて、第2の容量素子152が第2のチップインダクタ32に並列に接続され、第2のチップインダクタ32の実効的なインダクタ値が大きくなるため、ローパスフィルタの高域側の端部周波数が低周波側にシフトする。また、増大調整部136と138の両方を同時に用いて調整を行うようにしてもよい。
【0067】
以上のような調整を行った後に、セラミックパッケージ100の封止等の工程を経てローパスフィルタが完成する。
以上のように、本実施の形態の回路構成によれば、従来の積層LCフィルタに比べて、非常に急峻な減衰特性を得ることができる。本実施の形態では、SAW共振子を用いるため、フィルタを小型化できる。さらに、本実施の形態では、積層LCフィルタのように所望の減衰量を得るために段数を増やす必要がないので、通過帯域の挿入損失が増大することがなく、外形が大型化することもない。そして、本実施の形態の実装構造によれば、ローパスフィルタの通過特性を容易に調整することができるので、ローパスフィルタの歩留りを向上させることができる。
【0068】
なお、本実施の形態において、ローパスフィルタの通過特性を更に細かく調整することも可能である。この場合は、第1の減少調整用パッド141をn−1個設けると共に(nは3以上の自然数)、第1のチップインダクタ入力用ワイヤをn本にして、配線114及び第1の減少調整用パッド141の各々に対して第1のチップインダクタ入力用ワイヤを1本ずつ接続する。同様に、第2の減少調整用パッド143をn−1個設けると共に、第2のチップインダクタ入力用ワイヤをn本にして、配線112及び第2の減少調整用パッド143の各々に対して第2のチップインダクタ入力用ワイヤを1本ずつ接続する。また、第1の増大調整用パッド145と第1の容量素子146とをm(mは2以上の自然数)個ずつ設け、第2の増大調整用パッド151と第2の容量素子152とをm個ずつ設ける。
【0069】
通過域の高域側の端部周波数が低周波側にシフトしている不良品については、配線114と繋がる第1のチップインダクタ入力用ワイヤの本数、及び配線112と繋がる第2のチップインダクタ入力用ワイヤの本数を端部周波数のシフト量に応じて決定すればよい。すなわち、通過域の高域側の端部周波数のシフト量に応じて、配線114とn−1個の第1の減少調整用パッド141との間のn−1個のスリット140の中から少なくとも1つを選択して、選択したスリット140にボールボンドを形成し、同様に配線112とn−1個の第2の減少調整用パッド143との間のn−1個のスリット142の中から少なくとも1つを選択して、選択したスリット142にボールボンドを形成すればよい。これにより、チップインダクタ22,32のインダクタ値の減少量を細かく調整することができる。
【0070】
一方、通過域の高域側の端部周波数が高周波側にシフトしている不良品については、第1のチップインダクタ22に並列に接続される第1の容量素子146の個数、及び第2のチップインダクタ32に並列に接続される第2の容量素子152の個数を端部周波数のシフト量に応じて決定すればよい。すなわち、通過域の高域側の端部周波数のシフト量に応じて、配線114とm個の第1の増大調整用パッド145との間のm個のスリット144の中から少なくとも1つを選択して、選択したスリット144にボールボンドを形成し、配線114とm個の第2の増大調整用パッド151との間のm個のスリット150の中から少なくとも1つを選択して、選択したスリット150にボールボンドを形成すればよい。これにより、チップインダクタ22,32のインダクタ値の増大量を細かく調整することができる。
【0071】
また、本実施の形態では、通過域の高域側の端部周波数が規格値より低い場合、配線114と繋がる第1のチップインダクタ入力用ワイヤの本数及び配線112と繋がる第2のチップインダクタ入力用ワイヤの本数のうち少なくとも一方を調整するようにしているが、配線115と繋がる第1のチップインダクタ出力用ワイヤの本数及び配線114と繋がる第2のチップインダクタ出力用ワイヤの本数のうち少なくとも一方を調整するようにしてもよい。
【0072】
この場合は、第1の減少調整用パッド141を配線115の隣に設け、配線115及び第1の減少調整用パッド141の各々に対して第1のチップインダクタ出力用ワイヤを1本ずつ接続する。また、第2の減少調整用パッド143を配線114の隣に設け、配線114及び第2の減少調整用パッド143の各々に対して第2のチップインダクタ出力用ワイヤを1本ずつ接続する。こうして、第1のチップインダクタ出力用ワイヤと第2のチップインダクタ出力用ワイヤの本数により、チップインダクタ22,32のインダクタ値の減少量を調整することができる。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、例えばTV放送受信用チューナ付き携帯電話機のチューナ回路に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の実施の形態となるローパスフィルタの等価回路図である。
【図2】本発明の実施の形態における第1のフィルタの平面図である。
【図3】本発明の実施の形態における第1のフィルタの通過特性の1例を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態における第3のフィルタの平面図である。
【図5】本発明の実施の形態における第3のフィルタの通過特性の1例を示す図である。
【図6】第1のフィルタと第3のフィルタとを直列に接続したフィルタの通過特性の1例を示す図である。
【図7】対称2端子対回路を変形した対称格子型回路の等価回路図である。
【図8】図7の対称格子型回路を変形したT型回路の等価回路図である。
【図9】本発明の実施の形態における第1のフィルタについて偶モードインピーダンスと奇モードインピーダンスのリアクタンス特性の1例を示す図である。
【図10】図9を拡大した図である。
【図11】本発明の実施の形態において第1のフィルタに第2のフィルタの位相線路を接続した場合のリアクタンス特性の1例を示す図である。
【図12】図11を拡大した図である。
【図13】本発明の実施の形態において第1のフィルタに第2のフィルタの位相線路のみを接続した場合の通過特性の1例を示す図である。
【図14】本発明の実施の形態において第1のフィルタに第2のフィルタを並列に接続した場合のリアクタンス特性の1例を示す図である。
【図15】図14を拡大した図である。
【図16】本発明の実施の形態において第1のフィルタに第2のフィルタを並列に接続した場合の通過特性の1例を示す図である。
【図17】本発明の実施の形態において第1のフィルタに第2のフィルタを並列に接続した場合のリアクタンス特性の他の例を示す図である。
【図18】本発明の実施の形態において第1のフィルタに第2のフィルタを並列に接続した場合の通過特性の他の例を示す図である。
【図19】本発明の実施の形態において第1のフィルタに第2のフィルタを並列に接続した場合のリアクタンス特性の他の例を示す図である。
【図20】本発明の実施の形態において第1のフィルタに第2のフィルタを並列に接続した場合の通過特性の他の例を示す図である。
【図21】本発明の実施の形態において第1のフィルタに第2のフィルタを並列に接続した場合のリアクタンス特性の他の例を示す図である。
【図22】本発明の実施の形態において第1のフィルタに第2のフィルタを並列に接続した場合のリアクタンス特性の他の例を示す図である。
【図23】図1のローパスフィルタを従来の方法で実装したときのレイアウトを示す平面図である。
【図24】チップインダクタをセラミックパッケージ内に搭載した場合のローパスフィルタのレイアウトを示す平面図である。
【図25】セラミックパッケージのパッドと圧電基板の配線との接続方法およびチップインダクタのセラミックパッケージへの搭載方法を説明するための斜視図である。
【図26】図24のローパスフィルタにおいてチップインダクタの値が変動した場合の通過特性の1例を示す図である。
【図27】本発明の実施の形態のローパスフィルタのレイアウトを示す平面図である。
【図28】図27のローパスフィルタにおける減少調整部を拡大した平面図である。
【図29】図27のローパスフィルタにおける増大調整部を拡大した平面図である。
【図30】通過域の高域側の端部周波数が規格値より低い場合のローパスフィルタの調整方法を説明する平面図である。
【図31】通過域の高域側の端部周波数が規格値より高い場合のローパスフィルタの調整方法を説明する平面図である。
【図32】従来の積層LCローパスフィルタの等価回路図である。
【図33】図32の積層LCローパスフィルタの通過特性の1例を示す図である。
【符号の説明】
【0075】
1…第1のフィルタ、2…第2のフィルタ、3…第3のフィルタ、4…第4のフィルタ、11…2端子対SAW共振子、21、31、41…1端子対SAW共振子、22、32…チップインダクタ、100…セラミックパッケージ、101…圧電基板、105…第2のチップインダクタ入力用パッド、106…第2のチップインダクタ出力用パッド、107…第1のチップインダクタ入力用パッド、108…第1のチップインダクタ出力用パッド、125a,125b…第2のチップインダクタ入力用ワイヤ、126…第2のチップインダクタ出力用ワイヤ、127a,127b…第1のチップインダクタ入力用ワイヤ、128…第1のチップインダクタ出力用ワイヤ、135,137…減少調整部、136,138…増大調整部、140,142,144,150…スリット、141,143…減少調整用パッド、145,151…増大調整用パッド、146,152…容量素子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のフィルタと、この第1のフィルタに並列に接続された第2のフィルタと、前記第1、第2のフィルタと信号入力端子との間に挿入された第3のフィルタとを有し、
前記第1のフィルタは、第1の端子が前記第3のフィルタに接続され、第2の端子が信号出力端子に接続され、第3の端子と第4の端子が接地された2端子対SAW共振子からなり、
前記第2のフィルタは、第1の端子が前記2端子対SAW共振子の第1の端子に接続され、第2の端子が前記2端子対SAW共振子の第2の端子に接続された第1の1端子対SAW共振子と、この第1の1端子対SAW共振子に並列に接続された第1のチップインダクタとからなり、
前記第3のフィルタは、第1の端子が前記信号入力端子に接続され、第2の端子が前記第1、第2のフィルタの第1の端子に接続された第2の1端子対SAW共振子と、この第2の1端子対SAW共振子に並列に接続された第2のチップインダクタとからなり、
前記2端子対SAW共振子と前記第1、第2の1端子対SAW共振子とが、圧電基板上に形成され、前記第1、第2のチップインダクタが、前記圧電基板を内蔵するセラミックパッケージ内に搭載され、
前記第1、第2のチップインダクタのうち少なくとも一方のインダクタ値を減少させることが可能な減少調整部と、前記第1、第2のチップインダクタのうち少なくとも一方のインダクタ値を増大させることが可能な増大調整部とを備えることを特徴とするローパスフィルタ。
【請求項2】
請求項1記載のローパスフィルタにおいて、
前記減少調整部は、前記第1のチップインダクタの値を減少させることが可能な第1の減少調整部と、前記第2のチップインダクタの値を減少させることが可能な第2の減少調整部とからなり、
前記増大調整部は、前記第1のチップインダクタの値を増大させることが可能な第1の増大調整部と、前記第2のチップインダクタの値を増大させることが可能な第2の増大調整部とからなることを特徴とするローパスフィルタ。
【請求項3】
請求項2記載のローパスフィルタにおいて、
前記セラミックパッケージの第1のチップインダクタ入力用パッドと前記第1の1端子対SAW共振子の第1の端子に繋がる第1の配線とが第1のチップインダクタ入力用ワイヤを介して接続され、前記セラミックパッケージの第1のチップインダクタ出力用パッドと前記第1の1端子対SAW共振子の第2の端子に繋がる第2の配線とが第1のチップインダクタ出力用ワイヤを介して接続され、前記セラミックパッケージの第2のチップインダクタ入力用パッドと前記第2の1端子対SAW共振子の第1の端子に繋がる第3の配線とが第2のチップインダクタ入力用ワイヤを介して接続され、前記セラミックパッケージの第2のチップインダクタ出力用パッドと前記第2の1端子対SAW共振子の第2の端子に繋がる前記第1の配線とが第2のチップインダクタ出力用ワイヤを介して接続され、
前記第1の減少調整部は、前記圧電基板上に第1のスリットを挟んで前記第1の配線と隣り合うように形成された少なくとも1つの第1の減少調整用パッドと、前記第1の配線及び前記第1の減少調整用パッドの各々に対して1本ずつ接続された複数の前記第1のチップインダクタ入力用ワイヤとからなり、
前記第2の減少調整部は、前記圧電基板上に第2のスリットを挟んで前記第3の配線と隣り合うように形成された第2の減少調整用パッドと、前記第3の配線及び前記第2の減少調整用パッドの各々に対して1本ずつ接続された複数の前記第2のチップインダクタ入力用ワイヤとからなり、
前記第1の増大調整部は、前記圧電基板上に第3のスリットを挟んで前記第1の配線と隣り合うように形成された第1の増大調整用パッドと、この第1の増大調整用パッドと前記第2の配線との間に設けられた第1の容量素子とからなり、
前記第2の増大調整部は、前記圧電基板上に第4のスリットを挟んで前記第1の配線と隣り合うように形成された第2の増大調整用パッドと、この第2の増大調整用パッドと前記第3の配線との間に設けられた第2の容量素子とからなることを特徴とするローパスフィルタ。
【請求項4】
請求項2記載のローパスフィルタにおいて、
前記セラミックパッケージの第1のチップインダクタ入力用パッドと前記第1の1端子対SAW共振子の第1の端子に繋がる第1の配線とが第1のチップインダクタ入力用ワイヤを介して接続され、前記セラミックパッケージの第1のチップインダクタ出力用パッドと前記第1の1端子対SAW共振子の第2の端子に繋がる第2の配線とが第1のチップインダクタ出力用ワイヤを介して接続され、前記セラミックパッケージの第2のチップインダクタ入力用パッドと前記第2の1端子対SAW共振子の第1の端子に繋がる第3の配線とが第2のチップインダクタ入力用ワイヤを介して接続され、前記セラミックパッケージの第2のチップインダクタ出力用パッドと前記第2の1端子対SAW共振子の第2の端子に繋がる前記第1の配線とが第2のチップインダクタ出力用ワイヤを介して接続され、
前記第1の減少調整部は、前記圧電基板上に第1のスリットを挟んで前記第2の配線と隣り合うように形成された少なくとも1つの第1の減少調整用パッドと、前記第2の配線及び前記第1の減少調整用パッドの各々に対して1本ずつ接続された複数の前記第1のチップインダクタ出力用ワイヤとからなり、
前記第2の減少調整部は、前記圧電基板上に第2のスリットを挟んで前記第1の配線と隣り合うように形成された第2の減少調整用パッドと、前記第1の配線及び前記第2の減少調整用パッドの各々に対して1本ずつ接続された複数の前記第2のチップインダクタ出力用ワイヤとからなり、
前記第1の増大調整部は、前記圧電基板上に第3のスリットを挟んで前記第1の配線と隣り合うように形成された第1の増大調整用パッドと、この第1の増大調整用パッドと前記第2の配線との間に設けられた第1の容量素子とからなり、
前記第2の増大調整部は、前記圧電基板上に第4のスリットを挟んで前記第1の配線と隣り合うように形成された第2の増大調整用パッドと、この第2の増大調整用パッドと前記第3の配線との間に設けられた第2の容量素子とからなることを特徴とするローパスフィルタ。
【請求項5】
第1のフィルタと、この第1のフィルタに並列に接続された第2のフィルタと、前記第1、第2のフィルタと信号入力端子との間に挿入された第3のフィルタとを有するローパスフィルタの通過特性を調整する調整方法であって、
前記第1のフィルタは、第1の端子が前記第3のフィルタに接続され、第2の端子が信号出力端子に接続され、第3の端子と第4の端子が接地された2端子対SAW共振子からなり、前記第2のフィルタは、第1の端子が前記2端子対SAW共振子の第1の端子に接続され、第2の端子が前記2端子対SAW共振子の第2の端子に接続された第1の1端子対SAW共振子と、この第1の1端子対SAW共振子に並列に接続された第1のチップインダクタとからなり、前記第3のフィルタは、第1の端子が前記信号入力端子に接続され、第2の端子が前記第1、第2のフィルタの第1の端子に接続された第2の1端子対SAW共振子と、この第2の1端子対SAW共振子に並列に接続された第2のチップインダクタとからなり、
前記2端子対SAW共振子と前記第1、第2の1端子対SAW共振子とが、圧電基板上に形成され、前記第1、第2のチップインダクタが、前記圧電基板を内蔵するセラミックパッケージ内に搭載され、
前記ローパスフィルタの通過域の高域側の端部周波数が規格値より低い場合は、前記第1、第2のチップインダクタのうち少なくとも一方のインダクタ値を減少させ、
前記ローパスフィルタの通過域の高域側の端部周波数が規格値より高い場合は、前記第1、第2のチップインダクタのうち少なくとも一方のインダクタ値を増大させることを特徴とするローパスフィルタの調整方法。
【請求項6】
請求項5記載のローパスフィルタの調整方法において、
前記セラミックパッケージの第1のチップインダクタ入力用パッドと前記第1の1端子対SAW共振子の第1の端子に繋がる第1の配線とが第1のチップインダクタ入力用ワイヤを介して接続され、前記セラミックパッケージの第1のチップインダクタ出力用パッドと前記第1の1端子対SAW共振子の第2の端子に繋がる第2の配線とが第1のチップインダクタ出力用ワイヤを介して接続され、前記セラミックパッケージの第2のチップインダクタ入力用パッドと前記第2の1端子対SAW共振子の第1の端子に繋がる第3の配線とが第2のチップインダクタ入力用ワイヤを介して接続され、前記セラミックパッケージの第2のチップインダクタ出力用パッドと前記第2の1端子対SAW共振子の第2の端子に繋がる前記第1の配線とが第2のチップインダクタ出力用ワイヤを介して接続され、
前記ローパスフィルタの通過域の高域側の端部周波数が規格値より低い場合は、前記第1のチップインダクタ入力用ワイヤと前記第1のチップインダクタ出力用ワイヤと前記第2のチップインダクタ入力用ワイヤと前記第2のチップインダクタ出力用ワイヤのうち少なくとも1つのワイヤの本数を増やして、前記第1、第2のチップインダクタのうち少なくとも一方のインダクタ値を減少させ、
前記ローパスフィルタの通過域の高域側の端部周波数が規格値より高い場合は、前記第1、第2のチップインダクタのうち少なくとも一方に並列に容量素子を接続して、前記第1、第2のチップインダクタのうち少なくとも一方のインダクタ値を増大させることを特徴とすることを特徴とするローパスフィルタの調整方法。
【請求項7】
請求項6記載のローパスフィルタの調整方法において、
前記ローパスフィルタは、
前記前記圧電基板上に第1のスリットを挟んで前記第1の配線と隣り合うように形成された少なくとも1つの第1の減少調整用パッドと、前記第1の配線及び前記第1の減少調整用パッドの各々に対して1本ずつ接続された複数の前記第1のチップインダクタ入力用ワイヤとからなる第1の減少調整部と、
前記圧電基板上に第2のスリットを挟んで前記第3の配線と隣り合うように形成された第2の減少調整用パッドと、この第2の減少調整用パッド及び前記第3の配線の各々に対して1本ずつ接続された複数の前記第2のチップインダクタ入力用ワイヤとからなる第2の減少調整部と、
前記圧電基板上に第3のスリットを挟んで前記第1の配線と隣り合うように形成された第1の増大調整用パッドと、この第1の増大調整用パッドと前記第2の配線との間に設けられた第1の容量素子とからなる第1の増大調整部と、
前記圧電基板上に第4のスリットを挟んで前記第1の配線と隣り合うように形成された第2の増大調整用パッドと、この第2の増大調整用パッドと前記第3の配線との間に設けられた第2の容量素子とからなる第2の増大調整部とを有し、
前記ローパスフィルタの通過域の高域側の端部周波数が規格値より低い場合は、前記第1のスリットと前記第2のスリットのうち少なくとも一方にボールボンドを形成して、前記第1の配線と前記第1の減少調整用パッドとの間、及び前記第3の配線と前記第2の減少調整用パッドとの間のうち少なくとも一方を接続し、前記第1、第2のチップインダクタのうち少なくとも一方のインダクタ値を減少させ、
前記ローパスフィルタの通過域の高域側の端部周波数が規格値より高い場合は、前記第3のスリットと前記第4のスリットのうち少なくとも一方にボールボンドを形成して、前記第1の配線と前記第1の増大調整用パッドとの間、及び前記第1の配線と前記第2の増大調整用パッドとの間のうち少なくとも一方を接続し、前記第1、第2のチップインダクタのうち少なくとも一方のインダクタ値を増大させることを特徴とすることを特徴とするローパスフィルタの調整方法。
【請求項8】
請求項6記載のローパスフィルタの調整方法において、
前記ローパスフィルタは、
前記圧電基板上に第1のスリットを挟んで前記第2の配線と隣り合うように形成された少なくとも1つの第1の減少調整用パッドと、前記第2の配線及び前記第1の減少調整用パッドの各々に対して1本ずつ接続された複数の前記第1のチップインダクタ出力用ワイヤとからなる第1の減少調整部と、
前記圧電基板上に第2のスリットを挟んで前記第1の配線と隣り合うように形成された第2の減少調整用パッドと、前記第1の配線及び前記第2の減少調整用パッドの各々に対して1本ずつ接続された複数の前記第2のチップインダクタ出力用ワイヤとからなる第2の減少調整部と、
前記圧電基板上に第3のスリットを挟んで前記第1の配線と隣り合うように形成された第1の増大調整用パッドと、この第1の増大調整用パッドと前記第2の配線との間に設けられた第1の容量素子とからなる第1の増大調整部と、
前記圧電基板上に第4のスリットを挟んで前記第1の配線と隣り合うように形成された第2の増大調整用パッドと、この第2の増大調整用パッドと前記第3の配線との間に設けられた第2の容量素子とからなる第2の増大調整部とを有し、
前記ローパスフィルタの通過域の高域側の端部周波数が規格値より低い場合は、前記第1のスリットと前記第2のスリットのうち少なくとも一方にボールボンドを形成して、前記第2の配線と前記第1の減少調整用パッドとの間、及び前記第1の配線と前記第2の減少調整用パッドとの間のうち少なくとも一方を接続し、前記第1、第2のチップインダクタのうち少なくとも一方のインダクタ値を減少させ、
前記ローパスフィルタの通過域の高域側の端部周波数が規格値より高い場合は、前記第3のスリットと前記第4のスリットのうち少なくとも一方にボールボンドを形成して、前記第1の配線と前記第1の増大調整用パッドとの間、及び前記第1の配線と前記第2の増大調整用パッドとの間のうち少なくとも一方を接続し、前記第1、第2のチップインダクタのうち少なくとも一方のインダクタ値を増大させることを特徴とすることを特徴とするローパスフィルタの調整方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【公開番号】特開2007−124539(P2007−124539A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−317041(P2005−317041)
【出願日】平成17年10月31日(2005.10.31)
【出願人】(000104722)京セラキンセキ株式会社 (870)
【Fターム(参考)】