説明

ローヤル・パーム(Roystonearegia)果実由来の薬剤組成物並びに前立腺肥大および前立腺炎を治療および予防する方法

本発明は前立腺肥大(BPH)および前立腺炎ならびに脱毛および多毛を予防および/または治療するためのローヤル・パーム(Roystonea regia)の果実から得た新規な薬剤組成物およびその製造方法に関する。本発明の組成物は炭素原子数8〜28、特に8〜18の範囲にある遊離脂肪酸および/またはそれらのエステルの混合物、より具体的には、炭素原子数8、10、12、14、16および18の飽和直鎖遊離脂肪酸および炭素原子数16:1および18:1を有する不飽和遊離脂肪酸を含む。本発明の前記組成物の製造方法は、果実の乾燥および粉砕、任意の塩基性加水分解、続いての有機溶媒による選択的抽出を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は製薬産業に関連し、特に良性前立腺肥大(BPH)および前立腺炎を予防および/または治療するためのローヤル・パーム(Roystonea regia)果実由来の新規な薬剤組成物およびその製造方法に関する。本発明の組成物は、遊離脂肪酸および/またはそのエステルの混合物からなる。脂肪酸および/またはそのエステルの両者は、炭素原子数8〜28、特に炭素原子数8〜18である。特に、混合物は炭素原子数8、10、12、14、16および18の飽和直鎖脂肪酸および炭素原子数16:1および18:1のモノ不飽和脂肪酸からなる。遊離脂肪酸はエステル加水分解により増加される。
【0002】
前記組成物はローヤル・パーム果実をまず乾燥し、粉砕して得られる。当該植物性原料は鹸化生成物を得るまで中等度の塩基性加水分解に付し、かつ、有機溶媒による選択的抽出を行うか、または脂肪酸の混合物を選択的に抽出する。両方法は鹸化前処理を行わずして得られた抽出物と同様な薬理学的性質を有する組成物をもたらす。
【0003】
かくして得られた混合物は、BPHおよび前立腺炎、ならびに脱毛および多毛などの他の疾患の治療のための薬学的に異なった製剤中に含まれる活性成分に類似している。
【0004】
本発明は、得られる薬学的組成物がBPH、前立腺炎、脱毛および多毛に対して使用される医薬と同様に、あるいは医薬製剤として使用され得ることから、製薬産業に関連している。
【背景技術】
【0005】
前立腺は膀胱の真下に位置する腺であり、BPHは50歳以上の男性の50%以上に現われる疾患である。BPHは筋肉線維および腺の上皮構造の増大からなり、夜間頻尿症を含む排尿障害などの尿路閉塞を引き起こし、これらは尿閉の症状を改善するために外科手術をしばしば必要とする(非特許文献1)。ところで、外科手術、特に経尿道はこの症状を患う患者には平均的な治療であり、近年、多くの他の選択肢が出現している(非特許文献2及び3)。これらは非侵襲外科手術手法および5α−レダクターゼ酵素の阻害剤(非特許文献4)、α−アドレナリン受容体および植物療法抽出物などの別の薬剤治療を含む。
【0006】
男性性ホルモン、主にテストステロンは前記疾患の病理学的原因として非常に重要な役割を果たす。これは5α−レダクターゼを経由して、そのより活性な誘導体、ジヒドロテストステロン(DHT)に転換され、アンドロゲン受容体に結合して、タンパク合成、およびその結果として細胞増殖を促進する。それ故、このような症状を患う患者が4〜6倍に増加したDHT濃度を示すことから、5α−レダクターゼの増大する活性がBPHを生じるのであろう。
【0007】
BPHの正確な原因は知られていないが、明らかに精巣の存在に依存し、かつ、その頻度は年齢とともに増加する。前立腺成長に関与するアンドロゲンはDHTであり、5α−レダクターゼ酵素による触媒反応により、テストステロンから前立腺中に形成される。前立腺成長はDHT濃度の増加に直接に関係していることをこれまでに実施された研究が示している。他方、50歳以上の男性ではエストラジオール産生がアンドロゲンに比べて増加し、実験モデルではエストロゲンがDHTと相乗的に作用して、前立腺肥大を誘発することが見出されている。
【0008】
BPHの症状は、患者を困惑させる尿道閉塞および尿道過敏に関与している。これらの症状の中には、夜間多尿症、排尿困難、尿流量および強度の減少、残尿感、および尿閉などが含まれる。大部分の症状は徐々に始まり、障害が進むにつれて、その症状が悪くなり、薬理学的治療を施すことが必要となる。
【0009】
したがって、アルフゾシン、ドキサゾシン、テラゾシンなどのα−アドレナリン拮抗薬(非特許文献5)および数種の植物抽出物がBPHを治療するために広く使用されている。目下、植物治療製品は、ヨーロッパおよび米国において一般的であり、BPHの治療のために処方される全薬剤の80%を占める。
【0010】
特に、ノコギリパルメット[サバル・セルラータ(Sabal serrulata)、同義語、セレノア・レペンス(Serenoa repens)]の果実および西洋イラクサ(Urticadioica)の根の抽出物が一般的である。二重盲検の管理臨床試験がノコギリパルメット抽出物とフィナステライド、すなわち、5α−レダクターゼのタンパク阻害剤の効果を比較するために実施された。この試験では、6ケ月間の治療において両治療間には同様の効果があることが示された(非特許文献6及び7)。他方、西洋イラクサ(Urticadioica)の根の抽出物はBPHを治療するために臨床的に使用されている。いくつかの組織学的および生物学的データは、アンドロゲン依存性前立腺細胞の増殖における根抽出物の効果を証明した。
【0011】
ノコギリパルメット(Saw palmetto)の作用機構は、全体的に解明されておらず、1つ以上の作用機構が含まれるようである。すなわち、これはα−アドレナリン受容体の非競合阻害を発揮することができると治験により証明され、タムスロシンに類似した作用機構が示唆される。他の著者達は、ノコギリパルメット(Saw palmetto)はおそらく腺破裂による上皮収縮を可能とすることを検討し、5α−レダクターゼ酵素の阻害に関与するフィナステライドと同様の作用機構を示唆した。これが基本的な作用機構のようである(非特許文献8)。
【0012】
アンドロゲン脱毛症は男女に共通していて、アンドロゲン依存性である。この理由は、無毛は5α−レダクターゼ酵素の濃度の直接に関係しており、DHTである無毛関連アンドロゲンは、当該酵素の作用によりテストステロンから産生するためである。したがって、5α−レダクターゼ酵素の濃度の増加が無毛の男性の前頭部領域で検出されている(非特許文献9)が、5α−レダクターゼ酵素欠損症候群の男性は脱毛に悩んでいない(非特許文献10)。
【0013】
脱毛は、思春期の後に直ちに始まり得る、広く分布する特徴として実証されていて、男女両者における無毛を予防するための製品を開発することが必要である。
【0014】
既に知られているように、ノコギリパルメット(Saw palmetto)の脂質抽出物は、受容体に対するDHTの結合部位の50%をブロックし、前立腺細胞核への侵入をブロックし、5α−レダクターゼ酵素活性を強く阻害して、DHTホルモンの産生を抑制する。したがって、このような種の果実抽出物は脱毛症の治療に使用されている(特許文献1〜3)。
【0015】
BPHを治療するために商業的に使用されているノコギリパルメット(Saw palmetto)の抽出物は、別の既報方法により植物果実から得られたステロールと高分子量アルコールを含む脂肪酸の混合物である(特許文献4〜7、非特許文献11及び12)。しかしながら、本発明のヤシ科(Arecacee)の果実、すなわち、ローヤル・パーム(Roystonea regia)の果実に到達するために、本発明においてクレームするような単純でかつ経済的な方法を報告している著者はほとんどいない。
【0016】
【非特許文献1】マドセン(Madsen)とブルスケビッツ(Bruskewitz)、Curr Opinion Nephrol Hipert4:455−459,1995
【非特許文献2】オースターリング(Oesterling)、New Engl. J. Med332: 99−109,1995
【非特許文献3】ゲラー(Geller)ら、J.Clin.Endocrinol Metab.80, 745−756,1995
【非特許文献4】ボイル(Boyle)ら、Urology;48:398−405, 1996
【非特許文献5】チャップル(Chapple)、Eur.Urol.29,129−144, 1996
【非特許文献6】カッラロ(Carraro)ら、Prostate29,231−240, 1996
【非特許文献7】マークス(Marks)ら、Journal of Urology163:1451−1456, 2000
【非特許文献8】ニーダープルム(Niederprum)ら、Annals N.Y.Acad.Sci.,768,227−30,1995
【非特許文献9】ビングハム(Bingham)KDら、J.Endrocrinology57, 111,1973
【非特許文献10】エブリング(Ebling)FJ,Clin Endocrinol Metab319,1986
【非特許文献11】クリストニ(Cristoni), Fitoterapia68,355,1997
【非特許文献12】デュスワーフ(DeSwaef)Nat Prod Letters7,223,1996
【特許文献1】WO9702041
【特許文献2】USA6,019,976
【特許文献3】WO9833472
【特許文献4】EPO541853
【特許文献5】EPO492305
【特許文献6】EPO250953
【特許文献7】USA特許6,039,950
【発明の開示】
【0017】
本発明の組成物を製造する方法は、ローヤル・パーム(Roystonea regia)の果実を乾燥することに基づく。乾燥果実は粉砕して、粒径5000μm未満の微細な粉末を得る。この粉末はその後、アルカリ水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物および有機水酸化物、特に低分子量水酸化物、さらに具体的には、水酸化ナトリウム、カリウム、カルシウムまたはアンモニウムによる塩基性加水分解に付すか、あるいは付さない。続いて有機溶媒中での選択的抽出またはCOによる超臨界抽出を行う。
【0018】
加水分解された、あるいはされなかった植物性材料は、従来の固液抽出機中で抽出する。その際、脂肪酸および/またはそのエステルは炭素原子数1〜3のアルコールおよび炭素原子数5〜8の炭化水素などの適切な溶媒中で選択的に抽出して、果実中に存在する他の成分から分離する。このような溶媒として、メタノール、エタノール、2−プロパノール、ヘキサン、ペンタン、イソペンタン、ヘプタンおよびオクタンが挙げられる。
【0019】
得られる収量は5〜20%である。得られる酸混合物の組成は、炭素原子数12、14、16および18の飽和酸、ならびに炭素原子数16:1または18:1を有する不飽和酸を含む。これらの定性的および定量的組成は、表1に示される。
【0020】
[表1]
ローヤル・パーム(Roystonea regia)の脂質抽出物に存在する脂肪酸の組成
成分 酸混合物中の相対的パーセント
カプリル酸(C8:0) <3.0
カプリン酸(C10:0) <3.0
ラウリン酸(C12:0) 3.0〜40.0
ミリスチン酸(C14:0) 4.0〜15.0
パルミチン酸(C16:0) 10.0〜80.0
パルミトレイン酸(C16:1) 0.15〜20.0、
ステアリン酸(C18:0) 0.1〜5.0
オレイン酸(C18:1) 3.0〜50.0
クロマトグラフィーのピークの全量として定量した。ここで、オレイン酸溶出物(ピークの60〜70%)、リノレン酸(ピークの25〜40%)、およびリノレン酸(クロマトグラフィーのピークの10%未満)である。
【0021】
本発明のローヤル・パーム(Roystonea regia)果実から得られた物質の全体的評価は、このような組成物が非常に安全であり、かつ、十分に耐性があることを示す。ゲッ歯類動物にて実施された毒性試験の結果から支持される信頼性ある利点は、物質に関連する毒性を示さなかった。
本発明の目的は、以下の実施例により詳細に説明され、参照されるが、これらに限定されない。
【実施例】
【0022】
実施例1
ローヤル・パーム(Roystonea regia)の新鮮な果実5kgを採取し、制御された温度45℃のオーブン中に7日間、置いた。粉砕機中で乾燥果実を1500〜2000μmの粒子径に粉砕し、このような粉末から1000gを採取し、攪拌反応器中に置き、アルカリ加水分解に付した。その後、生成物をヘキサン10lにて抽出し、55℃まで加熱し、36時間、絶えず、攪拌した。その後、生成物を濾過し、真空下で50℃にて蒸発乾燥させた。得られた抽出物の重量は98.5gであり、ガスクロマトグラフィーにより測定された組成物を表2に示す。
【0023】
[表2]
ローヤル・パーム(Roystonea regia)の脂質抽出物中に存在する脂肪酸の組成
成分 酸混合物中の相対的パーセント
カプリル酸(C8:0) 1.0
カプリン酸(C10:0) 1.0
ラウリン酸(C12:0) 5.7
ミリスチン酸(C14:0) 4.4
パルミチン酸(C16:0) 75.1
パルミトレイン酸(C16:1) 1.9
ステアリン酸(C18:0) 1.9
オレイン酸(C18:1) 9.1
【0024】
実施例2
ローヤル・パーム(Roystonea regia)の新鮮な果実10kgを制御された温度45℃のオーブン中に7日間、置いた。粉砕機中で乾燥果実を1500μm未満の粒子径にまで粉砕し、このような粉末から1500gを採取し、アルカリ加水分解に付した。その後、エタノール10lを入れたソックスレー抽出器中で、生成物を60℃で、48時間、抽出した。次いで、有機溶液を除去し、濾過し、真空下に50℃で蒸発乾燥させた。得られた抽出物を重量測定し、ガスクロマトグラフィーにより分析した。その組成を表3に示す。
【0025】
[表3]
ローヤル・パーム(Roystonea regia)の脂質抽出物中に存在する脂肪酸の組成
成分 酸混合物中の相対的パーセント
カプリル酸(C8:0) 1.0
カプリン酸(C10:0) 1.0
ラウリン酸(C12:0) 3.2
ミリスチン酸(C14:0) 5.5
パルミチン酸(C16:0) 27.1
パルミトレイン酸(C16:1) 18.5
ステアリン酸(C18:0) 0.3
オレイン酸(C18:1) 43.3
【0026】
実施例3
ローヤル・パーム(Roystonea regia)の新鮮な果実5kgを採取し、制御された温度45℃のオーブン中に7日間、置いた。粉砕機中で乾燥果実を1500μm〜1800μmの粒子径にまで粉砕し、このような粉末から1000gを採取し、アルカリ加水分解に付した。その後、ヘプタン10lを入れた攪拌反応器中で、生成物を60℃で、攪拌しながら、50時間、抽出した。次いで、溶媒を除去し、濾過し、真空下に65℃で蒸発乾燥させた。得られた抽出物を重量測定し、ガスクロマトグラフィーにより分析した。表4に要約した組成を示す。
【0027】
[表4]
ローヤル・パーム(Roystonea regia)の脂質抽出物中に存在する脂肪酸の組成
成分 酸混合物中の相対的パーセント
カプリル酸(C8:0) 1.0
カプリン酸(C10:0) 1.0
ラウリン酸(C12:0) 3.16
ミリスチン酸(C14:0) 12.7
パルミチン酸(C16:0) 13.0
パルミトレイン酸(C16:1) 1.7
ステアリン酸(C18:0) 2.3
オレイン酸(C18:1) 36.6
【0028】
実施例4
ローヤル・パーム(Roystonea regia)の新鮮な果実5kgを採取し、制御された温度45℃のオーブン中に7日間、置いた。粉砕機中で乾燥果実を1000μm〜1800μmの粒子径にまで粉砕し、このような粉末から1000gを採取し、水酸化アンモニウムで処理して、粉末全てを湿潤化させた。その後、ヘキサン10lを入れた攪拌反応器中で、粉末を55℃で、攪拌しながら、36時間、抽出した。次いで、溶媒を除去し、真空下に50℃で蒸発乾燥させた。得られた抽出物を重量測定し、ガスクロマトグラフィーにより分析した。表5に要約した組成を示す。
【0029】
[表5]
ローヤル・パーム(Roystonea regia)の脂質抽出物中に存在する脂肪酸の組成
成分 酸混合物中の相対的パーセント
カプリル酸(C8:0) 1.0
カプリン酸(C10:0) 1.0
ラウリン酸(C12:0) 19.7
ミリスチン酸(C14:0) 9.7
パルミチン酸(C16:0) 14.8
パルミトレイン酸(C16:1) 0.2
ステアリン酸(C18:0) 3.8
オレイン酸(C18:1) 49.8
【0030】
実施例5
ローヤル・パーム(Roystonea regia)の果実から得られた脂質抽出物の効果を評価するために、体重30〜40gのOF1雄白色種マウスを制御された温度(25±2℃)と湿度の実験室条件に7日間、適応させた。適応期間後、この動物を無作為に別々な実験群に分けた。ローヤル・パーム(Roystonea regia)の抽出物をツイーン−20/HO賦形剤中に懸濁させ、懸濁液を経口投与した(5ml/kg)。コントロール動物は賦形剤を投与した。貯蔵テストステロンを植物油中に溶解し、1回投与量として100mg/kgを筋肉内(im)へ注射した。動物を無作為に次の群に分けた:1)陰性コントロール、2)陽性コントロール(テストステロンを注射し、賦形剤を経口投与した動物)、3)、4)および5)テストステロンを筋肉内(im)経路から注射し、ローヤル・パーム(Roystonea regia)果実の抽出物、200、400および800mg/kgをそれぞれ経口から投与した動物、および6)テストステロンを注射し、ノコギリパルメット(Saw palmetto)果実の抽出物400mg/kgを経口投与した動物。
【0031】
投与期間(14日間)を終了するとすぐにマウスを屠殺し、その腹部を切開術により腹面中間線にそって開き、前立腺を分離し、重量測定した。処置群とコントロール群との対比は、マン・ホイットニー(Mann Whitney)Uテストにより行った。その結果を表6に示す。
【0032】
観察されたように、貯蔵テストステロン(100mg/kg)を筋肉内(im)注射したものは、陰性コントロール群に比べて、前立腺の重量および体重に対する前立腺の割合が有意に増加した。
【0033】
【表6】

BW:体重(g)、PW:前立腺重量(mg)、%I:阻害パーセント、+++:p<0.001、マン・ホイットニーUテスト、見かけ対コントロール、:p<0.05、**:p<0.01、***:p<0.001、比較対コントロール
【0034】
本発明の組成物(200〜800mg/kg)を2週間、経口投与すると、テストステロンで誘発した前立腺の増加を有意に、かつ用量依存的に阻害して、最高用量(800mg/kg)で92.7%の阻害パーセントを達成した。本発明の組成物はまた、前立腺重量/体重の割合の増加を有意に、かつ用量依存的に阻害して、800mg/kgで96.6%の阻害パーセントを達成した。他方、ノコギリパルメット(Saw palmetto)(400mg/kg)を繰り返し投与する処置では、前立腺の増大を62%阻害し、PW/BWの割合を59%まで低下させ、同様な用量で阻害がそれぞれ77%と72%であったローヤル・パーム(Roystonea regia)果実の抽出物よりも効果が小さかった。
【0035】
この実験で得られた結果は、マウスのBPHにおけるローヤル・パーム(Roystonea regia)果実の脂質抽出物の効果を立証し、前立腺の大きさの用量依存的な低下を示し、400mg/kgで96.6%の阻害パーセントを達成し、同様な用量のノコギリパルメット(Saw palmetto)により誘導されたものよりもより大きな阻害パーセントに達した。
【0036】
実施例6
ローヤル・パーム(Roystonea regia)果実からの脂質抽出物の効果を評価するために、体重250〜270gのスプラーク・ドーリー(Spraque Dawley)雄ラットを制御された温度(25±2℃)と湿度の実験室条件に7日間、適応させた。適応後、動物を無作為に別々な実験群に分けた。
【0037】
ローヤル・パーム(Roystonea regia)の抽出物をツイーン−20/HO賦形剤中に懸濁させ、治療薬を経口投与した(5ml/kg)。コントロール動物には賦形剤を投与した。テストステロンプロピオネートを植物油中に溶解し、14日間、4mg/kgを皮下(sc)経路から注射した。
【0038】
ラットを無作為に6つの実験群に分けた:1)陰性コントロール+(植物油)、2)コントロール(賦形剤)+テストステロン、3)、4)および5)ローヤル・パーム(Roystonea regia)果実の抽出物、50、200および400mg/kg+テストステロン。投与期間(2週間)を終了するとすぐにラットを屠殺し、過度に出血させ、その腹部を切開術により腹面中間線にそって開き、前立腺を分離し、重量測定した。処置群とコントロール群の対比は、マン・ホイットニー(Mann Whitney)Uテストにより行った。その結果を表7に示す。
【0039】
【表7】

BW:体重(g)、PW:前立腺重量(mg)、%I:阻害パーセント、++++:p<0.0001、見かけ対コントロール、:p<0.05、**:p<0.01、***:p<0.001、比較対コントロール、マン・ホイットニーUテスト
【0040】
観察されるように、テストステロン4mg/kgを14日間、皮下注射したところ、陰性コントロールに比べて、前立腺重量および前立腺重量と体重の割合は有意に増加した。ローヤル・パーム(Roystonea regia)とノコギリパルメット(Saw palmetto)(400mg/kg)果実の抽出物を2週間、経口投与すると、テストステロン注射により誘発した前立腺の大きさの増加を有意に阻害し、それぞれ阻害パーセント41および58%を達成した。ローヤル・パーム(Roystonea regia)果実の抽出物もまた400mg/kgで前立腺重量と体重の割合を有意に減少させ、45%の阻害を達成した。
【0041】
この研究で得られた結果は、テストステロンで処置したラットに14日間、400mg/kgのローヤル・パーム(Roystonea regia)果実の抽出物による治療効果を示し、両治療において、体重に対する前立腺の大きさの増加を同様に阻害した(45%)。このことはローヤル・パーム果実の抽出物の潜在的治療用途にとって好ましいものである。
【0042】
実施例7
ローヤル・パーム(Roystonea regia)果実の抽出物の効果を評価するために、体重250〜270gのスプラーク・ドーリー(Spraque Dawley)雄ラットを制御された温度(25±2℃)と湿度の実験室条件に7日間、適応させた。適応後、動物を無作為に別々な実験群に分けた。テストステロンプロピオネートを植物油に溶解し、14日間、一日投与量3〜4mg/kgを皮下経路から投与した。
【0043】
ローヤル・パーム(Roystonea regia)の抽出物をツイーン−20/HO賦形剤中に懸濁させ、治療薬を経口投与した(5ml/kg)。コントロール動物は賦形剤を投与した。
【0044】
テストステロン3mg/kgで処置したラットを5つの実験群に分けた:1)陰性コントロール+(植物油)、2)陽性コントロール(賦形剤)+テストステロン、3)、4)D−004、50および200mg/kg+テストステロン;5)ノコギリパルメット(Saw palmetto)200mg/kg+テストステロン。同様に、テストステロン4mg/kgで処置した動物を6つの実験群に分けた:1)陰性コントロール+(植物油)、2)コントロール(賦形剤)+テストステロン;3、4、5)ローヤル・パーム(Roystonea regia)抽出物50、200および400mg/kg+テストステロン;6)ノコギリパルメット(Saw palmetto)400mg/kg+テストステロン。全ての経口治療薬を14日間、投与した。表8および9に結果を示す。
【0045】
【表8】

BW:体重(g)、PW:前立腺重量(g)、++:p<0.01、+++:p<0.001、比較対見かけ;:p<0.05、:p=0.05比較対コントロール(マン・ホイットニーUテスト)
【0046】
【表9】

BW:体重(g)、PW:前立腺重量(mg)、%I:阻害パーセント、++:p<0.01、+++:p<0.001比較対見かけ、:p<0.05、t:p=0.06比較対コントロール(マン・ホイットニーUテスト)
【0047】
実施例8
体重4〜5kgのラビットを研究に使用した。処置前とローヤル・パーム(Roystonea regia)果実の脂質抽出物で処置した後に、各ラビットの毛の成長を測定した。毛の測定は、ローヤル・パーム(Roystonea regia)果実の抽出物による経口処置前、処置中および処置後に、各測定間に4週間の間隔をおいて、行った。各動物を鎮静させた後、約1平方インチの背部領域を剪毛し、この領域の毛を重量測定した。
【0048】
剪毛したラビットをそれぞれ5羽の4群へ分け、群1のラビットにローヤル・パーム(Roystonea regia)の抽出物400mgを1日に1回、毎日投与し、群2のラビットに賦形剤を1日に1回、毎日投与し、群3のラビットにローヤル・パーム(Roystonea regia)の抽出物400mgを200mgの2回にわけて、毎日投与し、そして、群4のラビットに群3のように、賦形剤を2回にわけて投与した。
【0049】
群間の対比による差異分析および集団内についての対試料によるウィルコクソン(Wilcoxon)テストを使用して、生じた領域での毛成長の重量変化を比較した。当該変化は有意差、p<0.05として考察された。
【0050】
この研究の結果は、群1と群3のラビットの毛成長は群2および群4のラビットの毛成長よりも有意に優れていて、初期の毛重量においても優れていたことを立証し、ローヤル・パーム(Roystonea regia)の抽出物が脱毛症を治療するために使用され得ることを立証する。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の脂肪酸:カプリル酸(C8:0)、カプリン酸(C10:0)、ラウリン酸(C12:0)、ミリスチン酸(C14:0)、パルミチン酸(C16:0)、パルミトレイン酸(C16:1)、ステアリン酸(C18:0)およびオレイン酸(C18:1)(オレイン酸自体、リノール酸およびリノレン酸を含む)ならびにこれらの脂肪酸のエステル混合物を含み、遊離脂肪酸はエステル加水分解により増加された炭素原子数8〜28を有する1級脂肪酸の混合物を含むローヤル・パーム(Roystonea regia)の未成熟または成熟果実から得られた薬剤組成物。
【請求項2】
下記組成の脂肪酸を特徴とする、請求項1に記載の1級脂肪酸およびそのエステルの混合物を含む薬剤組成物。
ローヤル・パーム(Roystonea regia)果実の脂質抽出物中に存在する脂肪酸の混合物
カプリル酸(C8:0) <3.0
カプリン酸(C10:0) <3.0
ラウリン酸(C12:0) 3.0〜40.0%
ミリスチン酸(C14:0) 4.0〜15.0%
パルミチン酸(C16:0) 10.0〜80.0%
パルミトレイン酸(C16:1) 1.5〜20.0%、
ステアリン酸(C18:0) 0.1〜5.0%
オレイン酸(C18:1) 3.0〜50.0%
【請求項3】
BPH、前立腺炎、脱毛および多毛の治療のための請求項1または2に記載の脂肪酸混合物を含む薬剤組成物。
【請求項4】
ローヤル・パーム(Roystonea regia)果実の乾燥、粉砕および篩分け(sieving)、さらに、水酸化物またはアルカリを使用する塩基性加水分解前処理の有無にかかわらず、炭素原子数5〜8の炭化水素、炭素原子数1〜3のアルコールならびにこれらの混合物などの有機溶媒中での固体/液体抽出による他成分からの抽出物の分離を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載のローヤル・パーム(Roystonea regia)から得られた薬剤組成物の製造方法。
【請求項5】
温度10〜100℃、時間1〜1000時間でローヤル・パーム(Roystonea regia)果実を乾燥し、さらに、粒子径6000μm未満を得ることを可能とする適当な破砕機で粉砕する製造方法であって、活性抽出成分の抽出時間が1〜50時間、温度0〜70℃である、請求項4記載の製造方法。
【請求項6】
アルカリ水酸化物またはアルカリ土類水酸化物および塩基性加水分解のための有機物、特に低分子量有機物およびより具体的には水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウムまたは水酸化アンモニウムの使用を特徴とする、請求項4または5に記載の製造方法。
【請求項7】
脂肪酸の混合物を含む抽出物の製造のために、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンまたはオクタンなどの炭化水素を使用することを特徴とする、請求項4または5に記載の製造方法。
【請求項8】
脂肪酸の混合物を含む抽出物の製造のために、メタノール、エタノール、n−プロパノールまたは2−プロパノールなどのアルコールを使用することを特徴とする、請求項4または5に記載の製造方法。
【請求項9】
BPH、前立腺炎、脱毛および多毛の治療において、薬剤として使用される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の薬剤組成物。
【請求項10】
BPH、前立腺炎、脱毛および多毛の治療および/または予防において使用されることを特徴とする、請求項1または2に記載の鹸化を伴うまたは伴わない薬剤組成物。
【請求項11】
BPH、前立腺炎、脱毛および多毛の治療において、薬剤として使用される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の薬剤組成物。
【請求項12】
BPH、前立腺炎、脱毛および多毛の治療および/または予防において、使用されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の鹸化を伴うまたは伴わない薬剤組成物。
【請求項13】
BPH、前立腺炎、脱毛および多毛の治療および/または予防において局所作用を有する固体経口剤(カプセル、軟ゲルカプセル、錠剤)または液剤(乳化液)、座薬またはチンキ剤、ローションまたはシャンプーなどとして投与されるために、1日量50〜1000mgにて使用され、特に1日量150〜1000mgにて処方されることを特徴とする、請求項1、2、3、10、11および12のいずれか1項に記載の鹸化を伴うまたは伴わない薬剤組成物。

【公表番号】特表2006−520331(P2006−520331A)
【公表日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−504216(P2006−504216)
【出願日】平成16年3月15日(2004.3.15)
【国際出願番号】PCT/CU2004/000004
【国際公開番号】WO2004/082696
【国際公開日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(505351027)ラボラトリオス ダルマー エセ.アー. (1)
【Fターム(参考)】