説明

ローラ、定着装置、及び画像形成装置

【課題】ゴム破断がなく、画像光沢ムラ、紙しわの発生を抑制するローラを提供することを目的とする。また、本発明は、当該定着装置を備える定着装置及び画像形成装置を提供する。
【解決手段】芯金22Aと、前記芯金22Aの外周面上に形成される弾性層22Bと、を有し、前記弾性層22Bが、前記芯金22Aの軸方向に貫通し、該芯金22Aの周方向に切断したときの断面における形状が長径及び短径を有する長穴形状である貫通孔22Dを、複数有し、前記断面において、前記貫通孔22Dの重心と該芯金22Aの重心とを結ぶ直線と、前記貫通孔22Dの長径方向に伸びる直線とがなす角度が、それぞれ30°以上60°以下であることを特徴とするローラ、該ローラを用いる定着装置及び画像形成装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ローラ、定着装置、及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真法としては、既に多数の方法が知られている。一般的には、感光体(像保持体)表面に、種々の手段により電気的に潜像を形成し、形成された潜像を、静電荷現像用トナー(以下、単に「トナー」という場合がある)を用いて現像しトナー画像を形成した後、感光体表面のトナー画像を、中間転写体を介して若しくは介さずに、紙等の被記録体(記録媒体)表面に転写し、この転写画像を加熱、加圧若しくは加熱加圧あるいは溶剤蒸気等により定着する、という複数の工程を経て、定着画像が形成される。感光体表面に残ったトナーは、必要に応じて種々の方法によりクリーニングされ、再び前記の複数の工程に供される。
【0003】
この電子写真法の転写画像の定着に用いられる定着器用ローラは、硬度が低いことが望まれ、芯金の周面に、押出し成形して加硫発泡したシリコーンゴムスポンジ層を介して表面被覆層を形成してなる定着器用ローラにおいて、前記スポンジ層に、芯金の周方向に気泡内部の加熱された気体を逃して気泡内部の熱膨張を抑制するための多数の貫通孔あるいは螺旋状の貫通孔を設けた定着器用ローラが提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1で提案されている定着器用ローラの一例は、図4に示すように、芯金32Aの外周面上に弾性層32Bと離型層32Cが順次形成され、弾性層32Bは、円形の貫通孔32Dを有しているローラである。
【0004】
また、転写画像の定着に用いられる加圧ローラとして、芯金の上に弾性層と離型層を順次形成し、該弾性層中に、該芯金の長手方向で、該芯金の周方向の複数箇所に設けられた貫通孔を有し、加熱手段により加熱された被加熱部材に圧接されるように配設され、該被加熱部材との圧接部にて記録媒体を挟持搬送しつつ、記録媒体上の未定着画像を記録媒体へ定着させる画像形成装置の定着装置に使用される加圧ローラが提案されている(例えば、特許文献2参照)。この加圧ローラの表面と上記貫通孔との距離は、3mm以上に設定されている。
【0005】
更に、特許文献2には、最も近接する上記貫通孔間の上記弾性層の厚さは2mm以上に設定されていること、上記加圧ローラの変形量iと上記弾性層の厚さtとの比の値i/tは0.03以下に設定されていること、上記弾性層部の断面積をS0、上記貫通孔部の総断面積をSとすると、SとS0との比の値S/S0は、0.02以下に設定されていること、及び加圧ローラのローラ硬度は46°以下に設定されていることも記載されている。
【特許文献1】特許第2870878号公報
【特許文献2】特開平7−295418号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、弾性層の破断がなく、画像光沢ムラ、紙しわの発生を抑制するローラを提供することを目的とする。また、本発明は、当該ローラを備える定着装置及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、下記の本発明により解決される。即ち、
請求項1に係る発明は、
芯金と、前記芯金の外周面上に形成される弾性層と、を有し、前記弾性層が、前記芯金の軸方向に貫通し、該芯金の周方向に切断したときの断面における形状が長径及び短径を有する長穴形状である貫通孔を、複数有し、前記断面において、前記貫通孔の重心と前記芯金の重心とを結ぶ直線と、前記貫通孔の長径方向に伸びる直線とがなす角度が、それぞれ30°以上60°以下であることを特徴とするローラである。
【0008】
請求項2に係る発明は、
前記短径の長さが、前記弾性層の平均厚みの1/6以上1/3以下であることを特徴とする請求項1に記載のローラである。
【0009】
請求項3に係る発明は、
前記長径の長さが、前記弾性層の平均厚みの1/2以上3/2以下であることを特徴とする請求項1に記載のローラである。
【0010】
請求項4に係る発明は、
記録媒体上の未定着画像を記録媒体へ定着する定着部材と、前記定着部材の周面に加圧する加圧部材と、を備え、前記定着部材、もしくは加圧部材の少なくとも1つが、請求項1に記載のローラを備えることを特徴とする定着装置である。
【0011】
請求項5に係る発明は、
像保持体と、前記像保持体表面を帯電する帯電手段と、前記像保持体表面に潜像を形成する潜像形成手段と、形成された前記潜像をトナー像として現像する現像手段と、前記トナー像を記録媒体に転写する転写手段と、前記記録媒体に転写されたトナー像を記録媒体に定着する定着手段と、を備え、前記帯電手段、転写手段、及び定着手段の少なくとも1つが、請求項1に記載のローラを備えることを特徴とする画像形成装置である。
【0012】
請求項6に係る発明は、
前記定着手段が、前記ローラを備えることを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置である。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比べ、弾性層の破断がないといった効果を奏する。
【0014】
請求項2に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比べ、弾性層の破断がないといった効果が顕著になる。
【0015】
請求項3に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比べ、弾性層の破断がないといった効果が顕著になる。
【0016】
請求項4に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比べ、180℃以上の高温の定着温度において使用しても通紙部と非通紙部とでの外径差を少なくできる、といった効果を奏する。
【0017】
請求項5に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比べ、画像光沢ムラが少ない画像が得られ、紙しわの発生を抑制することができる、といった効果を奏する。
【0018】
請求項6に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比べ、180℃以上の高温の定着温度での定着ができ、更に生産性も向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明のローラは、芯金と、前記芯金の外周面上に形成される弾性層と、を有し、前記弾性層が、前記芯金の軸方向に貫通し、該芯金の周方向に切断したときの断面における形状が長径及び短径を有する長穴形状である貫通孔を、複数有し、前記断面において、前記貫通孔の重心と前記芯金の重心とを結ぶ直線と、前記貫通孔の長径方向に伸びる直線とがなす角度が、それぞれ30°以上60°以下であることを特徴とする。
【0020】
本発明のローラは、帯電手段、転写手段、及び定着手段等として画像形成装置に備えられるローラ、物体を搬送する手段としてベルトコンベアに備えられるローラ等に用いることができ、これらの中でも帯電手段、転写手段、及び定着手段等として画像形成装置に備えられるローラに好ましく用いることができ、定着装置(定着手段)に定着部材、もしくは加圧部材として備えられるローラにより好ましく用いることができ、特に加圧部材として好ましく用いることができる。
【0021】
以下に、本発明のローラの好ましい実施形態について図面を参照しつつ説明する。尚、同一の機能を有する部材には、全図面を通して同じ符号を付与し、重複する説明は省略することがある。
【0022】
図1は、本発明のローラの一実施形態を示す概略構成図である。図1に示すローラは、芯金22Aの外周面上に弾性層22Bと離型層22Cが順次形成されている。尚、図1に示すローラには離型層22Cが形成されているが、離型層22Cは本発明のローラにおいては必ずしも形成されていなくてもよい。更に、図1に示すローラは、弾性層22Bにおいて、芯金22Aの軸方向に貫通する複数の貫通孔22Dを有している。複数の貫通孔22Dは、それぞれ図1のように、長径及び短径を有する長穴形状であり、芯金22Aの周方向(軸方向に対して垂直な方向に)に切断したときの断面において、該貫通孔の重心と該芯金の重心とを結ぶ直線と、該貫通孔の長径方向に伸びる直線とがなす角度が30°以上60°以下であることを特徴とする。尚、本発明において、貫通孔22Dが弾性層22Bを軸方向に貫通するとは、弾性層22Bの一端から他の端部まで貫通することを意味する。また、本発明において、弾性層とは、100Paの外力の印加により変形させても、もとの形状に復元する材料から構成される層をいう。
【0023】
ここで、長穴形状とは、芯金22Aの周方向に切断したときの断面において、長径及び短径を有し、曲線的に湾曲している構造をいい、具体的には、円を曲線的に湾曲させた構造が挙げられ、楕円形状(長径と短径との比率を変更したものも含む。)、小判型の形状のものが挙げられる。
また、長径の長さとは、前述した断面において、最も離れた2点間の長さをいい、短径の長さとは、該長径と直行する角度で測定した径の内、最も離れた2点間の長さをいう。長径、短径の長さは、マイクロメーターによる測定や、顕微鏡による観察、電子顕微鏡による画像解析等で測定することができる。本発明において、長径、短径の長さはマイクロメーター(ミツトヨ社製MDC−MJ/PJ)を用いて測定した。
【0024】
上述のように長穴形状の貫通孔22Dを30°以上60°以下の角度で傾けることにより、弾性層22Bを外周面側からみたときに、貫通孔22Dの占める割合が多くなり(貫通孔22Dを傾けないと、弾性層22Bを外周面側からみたときの貫通孔22Dの占める割合が小さくなる。)、弾性層22Bの表面硬度のむらを少なくでき、画像光沢ムラ、紙しわの発生を抑制することができる。さらに貫通孔同士の距離を一定以上の長さに保てるため、弾性層の破断を抑制することができる。
また、本発明のローラを定着装置に用いる場合においても、貫通孔同士の距離を一定以上の長さに保ちながら貫通孔の断面積を大きくできるため、高温(180℃以上)で定着しても、ローラの外径の変化を抑えることができる。この結果、生産性も向上する。
【0025】
また、貫通孔22Dは、前記短径の長さが弾性層22Aの平均厚みの1/6以上1/3以下であることが好ましく、5/24以上7/24以下であることがより好ましく、11/48以上13/48以下であることが更に好ましい。前記短径の長さが弾性層22Aの平均厚みの1/6以上であると、充分な空気抜けができ、高温(180℃以上)で定着してもローラの外径の変化を抑えることができる。一方、1/3以下であると、貫通孔同士の距離を充分に保てる。
【0026】
更に、貫通孔22Dは、前記長径の長さが、前記弾性層の平均厚みの1/2以上3/2以下であることが好ましく、5/8以上11/8以下であることがより好ましく、3/4以上5/4以下であることが更に好ましい。前記長径の長さが、前記弾性層の平均厚みの1/2以上であると、充分な空気抜けができ、高温(180℃以上)での定着が可能となる。一方、3/2以下であると、貫通孔同士の距離を一定長さ以上に保てるという効果が顕著になる。
【0027】
尚、本発明において、弾性層22Bの平均厚みは、まずマイクロメーター(ミツトヨ社製MDC−MJ/PJ)にて芯金の径を測定し、弾性層以外の層(例えば離型層)が備わる場合は弾性層以外の層の厚さを別途測定し、次にローラ1つあたり軸方向の4箇所について、レーザー外径測定器(キーエンス社製VG−035/VG−300)を用いてローラの外径を測定し、測定されたローラの外径から、先に測定した芯金の径と、場合によって弾性層以外の層の厚さを引いたものを半分にした値を平均したものである。
【0028】
貫通孔22Dは、芯金22Aの周方向に沿って切断したときの断面において、貫通孔22Dの重心と芯金22Aの重心とを結ぶ直線と、貫通孔22Dの長径方向に伸びる直線とがなす角度が30°以上60°以下であることを特徴とし、35°以上55°以下であることが好ましく、40°以上50°以下であることがより好ましい。前記角度が30°未満であると、弾性層の表面硬度のむらが発生してしまい、60°を超えると、貫通孔22D同士の距離が一定以上の長さを保てなくなる。
ここで、貫通孔22Dの重心は、貫通孔22Dにおける長径の両端を結んだ線分を二等分する点と定める。また、芯金の重心は、芯金22Aの直径を二等分する点(芯金の中心)と定める。
また、貫通孔22Dの長径方向とは、貫通孔22Dにおける長径の両端を結ぶ直線に沿った方向をいう。
【0029】
また、貫通孔22Dは、弾性層の耐久性確保とローラの外径変化抑制の点で、弾性層22Bの芯金22Aと接する面からの最短距離が弾性層22Aの平均厚みの1/12以上5/12以下であることが好ましく、1/6以上1/3以下であることがより好ましい。
更に、貫通孔22Dは、弾性層の表面硬度のむら低減と外径変化の抑制の点で、弾性層22Bの外周面(離型層を有する場合は離型層と接する面)からの最短距離が弾性層22Aの平均厚みの1/12以上5/12以下であることが好ましく、1/6以上1/3以下であることがより好ましい。
【0030】
一方、貫通孔22Dの数は、弾性層の耐久性確保の点で、10以上26以下であることが好ましく、13以上23以下であることがより好ましく、16以上20以下であることがより好ましい。
【0031】
芯金22Aとしては、例えば、金属としてアルミニウム、鉄、銅等のローラ、ガラス製のローラが用いられる。
【0032】
弾性層22Bとしては、シリコーンゴム、フッ素ゴム等の汎用のゴム組成物、スポンジで構成することができるが、この中でもスポンジが好ましい。該スポンジとしては、シリコーンゴムが好ましい。
また、弾性層22Bの厚みとしては、ローラに対向する部材との接触領域確保の点で、2mm以上10mm以下であることが好ましく、3mm以上8mm以下であることがより好ましい。
【0033】
本発明のローラは、芯金と弾性層の他に、前述した離型層やその他の層を有していてもよい。
【0034】
本発明の定着装置は、記録媒体上の未定着画像を記録媒体へ定着させる定着部材と、前記定着部材の周面に圧接される加圧部材とを備え、前記定着部材、もしくは前記加圧部材の少なくとも1つが既述の本発明のローラを備えることを特徴とする。既述のように本発明のローラは、加圧部材として好ましく用いることができる。
【0035】
図2は、本発明の定着装置の一実施形態を示す概略構成図である。図2に示される定着装置28は、本発明のローラである加圧ローラ22と、加圧パッド24と、電磁誘導加熱装置26と、定着ベルト20とから構成される。定着ベルト20は加圧ローラ22と接触部分を形成する。
【0036】
次に定着装置28について説明する。
図2に示されるように、本発明の定着装置28は、磁界が印加された際に発生する渦電流により発熱する発熱層を含む定着ベルト20と、定着ベルト20に接して接触部分を形成し回転する加圧ローラ22と、定着ベルト20の加圧ローラ22が設けられた側と反対側の面を内側から押圧する加圧パッド24と、交番電流を流すことにより定着ベルト20の発熱層に磁界を印加する電磁誘導加熱装置26とを有している。
【0037】
定着装置28における定着は、未定着トナー像86が形成された記録媒体88を、定着ベルト20と加圧ローラ22との接触部分に、加熱された定着ベルト20と接するように挿通させて行われる。記録媒体88が接触部分を通過する際に、未定着トナー像86が溶融した状態で押圧され記録媒体表面に定着される。
【0038】
次に、定着装置の具体例について、詳細に説明する。
この定着ベルト20に接するように加圧ローラ22が配され、定着ベルト20と加圧ローラ22とは接触部分を形成している。加圧ローラ22は、芯金22A上にシリコーンゴム等による貫通孔22Dを有するスポンジ層(弾性層)22Bが形成され、さらにその上層にフッ素系化合物による離型層22Cが形成された構成を有する。
【0039】
定着ベルト20の内側には、加圧ローラ22と対向する位置に、定着ベルト20の内面を押圧し、局所的に接触圧を高める加圧パッド24が設けられている。この加圧パッド24は、定着ベルト20の内面に接して接触部分を押圧する接触部ヘッド24Bと、この接触部ヘッド24Bを保持するシリコーンゴム等を含む接触部パッド24Cと、接触部パッド24Cを支持する支持体24Aとから構成されている。
【0040】
さらに、定着ベルト20を中心として加圧ローラ22と対向する位置に、電磁誘導コイル(励磁コイル)26Aを内蔵した電磁誘導加熱装置26が設けられている。電磁誘導加熱装置26は、電磁誘導コイル26Aに交流電流を印加することにより、発生する磁場を励磁回路で変化させ、定着ベルト20の発熱層に渦電流を発生させるものである。この渦電流が発熱層の電気抵抗によって熱(ジュール熱)に変換され、結果的に定着ベルト20の表面が発熱する。
【0041】
定着装置28による定着について説明する。
まず、不図示の駆動装置により加圧ローラ22が矢印G方向に回転し、それにつれて定着ベルト20も矢印F方向に従動回転する。ここで、未定着トナー像86が形成された記録媒体88は矢印H方向に、定着装置28の接触部分に挿通される。この際、未定着トナー像86は溶融状態で記録媒体88表面に押圧され、記録媒体88表面に定着される。
尚、図2に示した例では、ローラ駆動(ベルトが従動)であるが、駆動方法はベルト駆動(ローラが従動)であってもよい。
【0042】
定着ベルト20の構成について詳細に説明する。
定着ベルト20は、その内周側から外周側へと、耐熱性樹脂層(基材)、発熱層、離型層がこの順に設けられた構成であるが、発熱層があればその他の層は特に限定されない。また、カラー画像の高画質化や、白黒画像の形成速度向上のために、発熱層の外周側で離型層の内周側の位置に弾性層を設けてもよい。
耐熱性樹脂層(基材)に用いられる材料としては、ポリイミド、芳香族ポリアミド、サーモトロピック液晶ポリマー等の液晶材料など、高耐熱・高強度樹脂等が挙げられるが、この中でもポリイミド、またはポリイミドを主成分(50質量%以上)としたものが好ましい。
【0043】
発熱層は、電磁誘導コイル(励磁コイル)26Aから発生する磁界により渦電流を発生させることで発熱するための層である。かかる金属としては、例えば、ニッケル、鉄、銅、金、銀、アルミニウム、クロム、錫、亜鉛などの単一もしくは2種類以上の合金のどちらでも選択可能である。この中でも銅、金、銀は固有抵抗が低いため、銅、金、銀およびこれらの合金が好ましく、コスト及び加工性から特に銅あるいは銅を主成分(「主成分」とは質量比で50%以上を意味し、保護層の場合も質量比で50%以上を主成分という。)とする合金が好ましい。
離型層に用いられる材料としては、例えば、フッ素ゴムや、ポリテトラフルオロエチレン(以下、「PTFE」という)、パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(以下、「PFA」という)、四フッ化エチレン六フッ化プロピレン共重合体(以下、「FEP」という)等のフッ素樹脂などを用いることができるが、特に限定されるものではない。
【0044】
上述のように、本発明のローラを用いた定着装置(加圧ローラ)について説明したが、本発明のローラを、定着装置の加熱ローラ、帯電手段(帯電ローラ)及び転写手段(転写ローラ)として用いても、ゴム破断がなく、画像光沢ムラ、紙しわの発生を抑制するという効果が得られる。
【0045】
本発明の画像形成装置は、像保持体と、前記像保持体表面を帯電する帯電手段と、前記像保持体表面に潜像を形成する潜像形成手段と、形成された前記潜像をトナー像として現像する現像手段と、前記トナー像を記録媒体に転写する転写手段と、前記記録媒体に転写されたトナー像を記録媒体に定着する定着手段と、を備え、前記帯電手段、転写手段、及び定着手段の少なくとも1つが、既述の本発明のローラを備えることを特徴とし、前記定着手段が、既述の本発明のローラを備えることが好ましい。以下、前記定着手段が既述の本発明のローラを備える画像形成装置について図3を用いて説明する。図3は、本発明の画像形成装置の一実施形態を示す概略構成図である。
【0046】
図3に示される画像形成装置40は、像保持体としての感光ドラム60と、感光ドラム60の表面を帯電す帯電装置(帯電手段)62と、帯電させた感光ドラム60の表面に潜像を形成する潜像形成手段としてのレーザースキャナ64及びミラー65と、形成された前記潜像をトナー像として現像する現像手段としての回転式現像装置66と、トナー像を被転写体に転写する転写手段としての中間転写体68及び転写ローラ70と、トナー像を記録媒体に加熱定着する定着手段であると共に、トナーを溶融加熱する定着部材としての定着ベルト20、加圧部材としての加圧ローラ22、定着ベルト20を加圧する加圧パッド24、及び定着ベルト20に磁界を印加する電磁誘導加熱装置26を備える定着装置28と、感光ドラム60の表面を清掃するクリーニング装置74と、感光ドラム60の表面を除電する除電装置76と、記録媒体を収納する給紙ユニット78と、記録媒体を順次送り出す給紙ローラ80と、送り出された記録媒体を一枚ずつ搬送するレジストローラ82と、記録媒体を案内する記録媒体ガイド84と、を少なくとも備えている。
【0047】
詳細には、感光ドラム60の周囲に沿って矢印A方向に順に、感光ドラム60に近接して設けられその表面を帯電させる(非接触型の)帯電装置62と、感光ドラム60の表面に形成された潜像にトナーを付与することによりトナー像を形成する回転式の現像装置66と、外周面が感光ドラム60表面に接し矢印B方向および矢印C方向の両方に回転可能な中間転写体68と、中間転写体68の表面にトナー像を転写した後の感光ドラム60の表面を清掃するクリーニング装置74と、感光ドラム60の表面を除電する除電装置76とが設けられている。
【0048】
なお、帯電装置62の下流で現像装置66の上流の感光ドラム60の表面には、感光ドラム60の表面に潜像を形成するために、各色の画像情報(信号)に応じたレーザ光が、ミラー65を介してレーザースキャナ64より照射される。
また、現像装置66は、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの4色のトナーをそれぞれ収容した各色の現像器(不図示)を備えており、現像装置66が回転することにより、感光ドラム60の表面に形成された潜像に各色のトナーを付与し、トナー像を形成することが可能である。
【0049】
中間転写体68の周囲には、感光ドラム60の他に、転写ローラ70が設けられている。中間転写体68の外周面と転写ローラ70表面とは圧接し、この圧接部を記録媒体が矢印D方向に挿通可能であり、圧接部を記録媒体が通過した際に、中間転写体68表面に保持されたトナー像が、記録媒体の表面に転写される。また、圧接部に対して、矢印D方向と反対側には給紙装置77が設けられ、矢印D方向側には定着装置28が設けられている。
【0050】
給紙装置77は、給紙ユニット78、給紙ローラ80、レジストローラ82および記録媒体ガイド84から構成される。
中間転写体68と転写ローラ70との圧接部への給紙は、給紙ユニット78に収納された記録媒体が、給紙ユニット78に内蔵された不図示の記録媒体押し上げ手段により給紙ローラ80に接触する位置まで押し上げられ、記録媒体が給紙ローラ80に接触した時点で、給紙ローラ80およびレジストローラ82が回転することにより記録媒体ガイド84に沿って矢印D方向に搬送されることにより行われる。
【0051】
次に、画像形成装置40における転写および加熱定着について以下に説明する。
まず、感光ドラム60表面に形成された各色のトナー像は、感光ドラム60と中間転写体68とに印加されたバイアス電圧により、感光ドラム60と中間転写体68との接触部において、各色のトナー像毎に画像情報と一致するように中間転写体68外周面に重ねて転写される。このようにしてカラーのトナー像がその外周面に転写された中間転写体68は矢印C方向に回転し、トナー像は、転写ローラ70と中間転写体68との圧接部において、給紙装置によって、圧接部に搬送されてきた記録媒体表面に転写される。
【0052】
トナー像がその表面に転写された記録媒体は、矢印D方向に移動し、定着装置28により加熱定着され、記録媒体表面に画像が定着される。定着ベルト20の表面は、表面に対向して設けられた電磁誘導加熱装置26により、定着可能な温度に達するまで加熱される。表面が定着可能な温度に達した後は、定着ベルト20は加圧ローラ22と接触して矢印V1方向へ、加圧ローラ22はV2方向へ回転し、加圧ローラ22との接触部分において、矢印D方向へと挿通される記録媒体表面のトナー像を加熱溶融することにより加熱定着する。このようにしてカラー画像がその表面に形成された記録媒体はさらに矢印D方向に搬送され、画像形成装置40の外部に排出される。
【0053】
上述のように、本発明のローラを用いた定着装置(加圧ローラ)について説明したが、本発明のローラを、定着装置の加熱ローラ、帯電手段(帯電ローラ)及び転写手段(転写ローラ)を用いても、ゴム破断がなく、画像光沢ムラ、紙しわの発生を抑制するという効果が得られる。また、上述のように、本発明のローラを定着装置の加圧ローラに用いると、ゴム破断がなく、画像光沢ムラ、紙しわの発生を抑制するという効果と共に、定着温度を高くすることができ、結果として生産性を向上させることができるという効果が得られる。
【実施例】
【0054】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。但し、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
図1と同様の構造のローラを作製した。具体的には、芯金22Aは、鉄を使用している。弾性層22B(平均厚み:5mm)は、スポンジ層でありシリコーンゴムを加硫発泡させたスポンジゴムを使用している。離型層22Cは、カーボンブラック等の導電性付与剤を混入したテトラフルオルエチレンとパーフルオルアルキルパーフルオルビニルエーテルの共重合体(以下、導電性(表面抵抗値が10Ω以下)PFAとする)の50μm厚の導電性PFAチューブを使用している。貫通孔22Dは、図示しない押出機のトーピードに断面が長穴形状のピンを多数設け、原料ゴムをスクリューにより押出成形し、加熱しながら加硫発泡することにより形成した。貫通孔22Dは、それぞれ芯金22Aの周方向に切断したときの断面における重心が、離型層22Cと接する面からの最短距離が2.5mmとなるように、加圧ローラの軸に平行に18個、等間隔に形成されている。尚、複数の貫通孔22D(円を長径と短径を有するように湾曲させた長穴形状の貫通孔)の詳細(芯金22Aの周方向に切断したときの断面において、弾性層22Bの平均厚みに対する長径及び短径の長さの比率、貫通孔22Dの重心と芯金22Aの重心とを結ぶ直線と、貫通孔22Dの長径方向に伸びる直線とがなす角度)を表1に示す。なお、各長さは前述の方法で測定した。
【0055】
一方、定着ベルト20の直径を30mm、加圧ローラ22の直径を30mm、ローラ硬度を55〜65°(高分子計器株式会社製ASKER−C型ゴム硬度計による測定値)とし、さらに加圧力を30kg程度、定着ベルト20と加圧ローラ22の距離を6〜8mm程度として、表1に記載の貫通孔22Dを設けながら、図3に示す構造の画像形成装置に加圧ローラとして装着して長時間画像形成動作を行った。その際のゴム破断、画像の光沢むら、紙しわ、定着ベルトの発熱層クラック、剥離不良のレベルを以下の方法で評価した。その結果を表1に示す。
【0056】
(評価方法)
[ゴム破断]
10万枚以上通紙した後に、弾性層に亀裂が発生しているかどうかを目視にて確認して、以下の基準でゴム破断を評価した。
○:亀裂なし
△:長さ1mm未満の亀裂発生
×:長さ1mm以上の亀裂発生
【0057】
[画像の光沢むら]
100%濃度の黒色画像を形成して定着処理した後の用紙画像部を、75度鏡面光沢計GM−26D(村上色彩技術研究所社製品)を用いて測定して、以下の基準で画像の光沢むらを評価した。
○:光沢度の差が5%未満
△:光沢度の差が5%以上10%未満
×:光沢度の差が10%以上
【0058】
[紙しわ]
A3サイズで坪量が64g/mの用紙を100枚連続通紙した場合の紙しわ発生状況を目視確認して、以下の基準で紙しわを評価した。
○:紙しわが未発生(0枚)
△:紙しわが1枚発生
×:紙しわが2枚以上発生
【0059】
[発熱層クラック]
10万枚以上通紙した後に、定着ベルト表面温度を小スポット型赤外放射温度計(キーエンス社製IT2−02)で全面について測定し、φ30mm以内の部分的な温度低下の有無を確認して、以下の基準で発熱層クラックを評価した。
○:定着ベルト表面の温度差が10℃未満
△:定着ベルト表面の温度差が10℃以上20℃未満
×:定着ベルト表面の温度差が20℃以上
【0060】
[剥離不良]
先端に白紙部(2mm以上8mm以下)を設け、240%濃度の画像を形成し定着処理したA4サイズで坪量が64g/mの用紙先端が、剥離爪に接触するかどうかを確認して、以下の基準で剥離不良を評価した。
○:用紙先端白紙部の幅が4mm未満で剥離爪に非接触
△:用紙先端白紙部の幅が4mm以上6mm未満で剥離爪に非接触
×:用紙先端白紙部の幅が6mm以上で剥離爪に接触
【0061】
表1に示すように実施例1では、ゴム破断、画像光沢むら、紙しわ、定着ベルト発熱層クラック、剥離不良は発生しなかった。
【0062】
(実施例2)
実施例1において、複数の貫通孔を、それぞれの貫通孔の重心と該芯金の重心とを結ぶ直線と、該貫通孔の長径方向に伸びる直線とがなす角度を30°に変えたこと以外、実施例1と同様にローラを作製し、実施例1と同様の評価を実施した。その結果、表1に示すようにゴム破断、画像光沢むら、紙しわ、定着ベルト発熱層クラック、剥離不良は発生しなかった。
【0063】
(実施例3)
実施例1において、複数の貫通孔を、それぞれの貫通孔の重心と該芯金の重心とを結ぶ直線と、該貫通孔の長径方向に伸びる直線とがなす角度を60°に変えたこと以外、実施例1と同様にローラを作製し、実施例1と同様の評価を実施した。その結果、表1に示すようにゴム破断、画像光沢むら、紙しわ、定着ベルト発熱層クラック、剥離不良は発生しなかった。
【0064】
(実施例4)
実施例1において、複数の貫通孔を、それぞれ弾性層の平均厚みに対する短径の長さの比率を1/6に変えたこと以外、実施例1と同様にローラを作製し、実施例1と同様の評価を実施した。その結果、表1に示すようにゴム破断、画像光沢むら、紙しわ、定着ベルト発熱層クラック、剥離不良は発生しなかった。
【0065】
(実施例5)
実施例1において、複数の貫通孔を、それぞれの貫通孔の重心と該芯金の重心とを結ぶ直線と、該貫通孔の長径方向に伸びる直線とがなす角度を60°に変え、それぞれ弾性層の平均厚みに対する短径の長さの比率を1/3に変えたこと以外、実施例1と同様にローラを作製し、実施例1と同様の評価を実施した。その結果、表1に示すようにゴム破断、画像光沢むら、紙しわ、定着ベルト発熱層クラック、剥離不良は発生しなかった。
【0066】
(実施例6)
実施例1において、複数の貫通孔を、それぞれの貫通孔の重心と該芯金の重心とを結ぶ直線と、該貫通孔の長径方向に伸びる直線とがなす角度を60°に変え、それぞれ弾性層の平均厚みに対する短径の長さの比率を1/4に、長径の長さの比率を1/2に変えたこと以外、実施例1と同様にローラを作製し、実施例1と同様の評価を実施した。その結果、表1に示すようにゴム破断、画像光沢むら、紙しわ、定着ベルト発熱層クラック、剥離不良は発生しなかった。
【0067】
(実施例7)
実施例1において、複数の貫通孔を、それぞれの貫通孔の重心と該芯金の重心とを結ぶ直線と、該貫通孔の長径方向に伸びる直線とがなす角度を60°に変え、それぞれ弾性層の平均厚みに対する短径の長さの比率を1/4に、長径の長さの比率を3/2に変えたこと以外、実施例1と同様にローラを作製し、実施例1と同様の評価を実施した。その結果、表1に示すようにゴム破断、画像光沢むら、紙しわ、定着ベルト発熱層クラック、剥離不良は発生しなかった。
【0068】
(実施例8)
実施例1において、複数の貫通孔を、それぞれの貫通孔の重心と該芯金の重心とを結ぶ直線と、該貫通孔の長径方向に伸びる直線とがなす角度を30°に変え、それぞれ弾性層の平均厚みに対する短径の長さの比率を1/7に、長径の長さの比率を1/2に変えたこと以外、実施例1と同様にローラを作製し、実施例1と同様の評価を実施した。その結果、表1に示すように、弾性層の平均厚みに対する短径の長さの比率を1/7にすることにより、紙しわや定着ベルトの発熱層にクラックが僅かに生じ、剥離不良が僅かに発生したが問題のないレベルであった。
【0069】
(実施例9)
実施例1において、複数の貫通孔を、それぞれの貫通孔の重心と該芯金の重心とを結ぶ直線と、該貫通孔の長径方向に伸びる直線とがなす角度を30°に変え、それぞれ弾性層の平均厚みに対する短径の長さの比率を2/5に、長径の長さの比率を2/3に変えたこと以外、実施例1と同様にローラを作製し、実施例1と同様の評価を実施した。その結果、表1に示すように、弾性層の平均厚みに対する短径の長さの比率が1/3を超えると、前記断面孔角度が30°の場合には、画像の光沢むらが僅かに発生したが問題のないレベルであった。
【0070】
(実施例10)
実施例1において、複数の貫通孔を、それぞれの貫通孔の重心と該芯金の重心とを結ぶ直線と、該貫通孔の長径方向に伸びる直線とがなす角度を60°に変え、それぞれ弾性層の平均厚みに対する短径の長さの比率を2/5に、長径の長さの比率を2/3に変えたこと以外、実施例1と同様にローラを作製し、実施例1と同様の評価を実施した。その結果、表1に示すように、弾性層の平均厚みに対する短径の長さの比率が1/3を超えると、前記断面孔角度が60°の場合には、ゴム破断が僅かに発生するが問題のないレベルであった。
【0071】
(実施例11)
実施例1において、複数の貫通孔を、それぞれの貫通孔の重心と該芯金の重心とを結ぶ直線と、該貫通孔の長径方向に伸びる直線とがなす角度を30°に変え、それぞれ弾性層の平均厚みに対する短径の長さの比率を1/6に、長径の長さの比率を1/3に変えたこと以外、実施例1と同様にローラを作製し、実施例1と同様の評価を実施した。その結果、表1に示すように、弾性層の平均厚みに対する長径の長さの比率が1/2未満であると、紙しわや定着ベルトの発熱層にクラックが僅かに生じ、剥離不良が僅かに発生したが問題のないレベルであった。
【0072】
(実施例12)
実施例1において、複数の貫通孔を、それぞれの貫通孔の重心と該芯金の重心とを結ぶ直線と、該貫通孔の長径方向に伸びる直線とがなす角度を60°に変え、それぞれ弾性層の平均厚みに対する短径の長さの比率を1/3に、長径の長さの比率を5/3に変えたこと以外、実施例1と同様にローラを作製し、実施例1と同様の評価を実施した。その結果、表1に示すように、弾性層の平均厚みに対する長径の長さの比率が3/2を超えると、画像の光沢むらが僅かに発生し、ゴム破断が僅かに発生したが問題のないレベルであった。
【0073】
(比較例1)
実施例1において、複数の貫通孔を、図4に示すようにそれぞれ弾性層の平均厚みに対して1/5の径を有する貫通孔に変えたこと以外、実施例1と同様にローラを作製し、実施例1と同様の評価を実施した。その結果、表1に示すように弾性層のゴム破断や画像の光沢むらは発生しないが、貫通孔径が小さいため弾性層中の空気の抜けが悪く、ローラ中央部と端部とで温度差による外径差が大きくなり紙しわや発熱層にクラックが発生したり、弾性層中への空気の入りが悪く、接触部分を通過後のローラの弾性層の厚さの回復が遅れるために、剥離部手前で用紙を定着ベルト側に押し付ける力が低下して剥離不良が発生した。
【0074】
(比較例2)
比較例1において、複数の貫通孔を、図4に示すようにそれぞれ弾性層の平均厚みに対して2/5の径を有する貫通孔に変えたこと以外実施例1と同様にローラを作製し、実施例1と同様の評価を実施した。その結果、表1に示すように弾性層中の空気の抜けが良くなるため、紙しわの発生レベルや発熱層にクラックが発生するまでの用紙走行枚数に若干の改善はみられたが、弾性層のゴム破断や画像の光沢むらが発生するようになった。また、剥離不良については改善がみられなかった。
【0075】
(比較例3)
実施例1において、複数の貫通孔を、それぞれの貫通孔の重心と該芯金の重心とを結ぶ直線と、該貫通孔の長径方向に伸びる直線とがなす角度を20°に変えたこと以外、実施例1と同様にローラを作製し、実施例1と同様の評価を実施した。その結果、表1に示すように貫通孔がある部分とない部分とのローラ表面の硬度差が大きくなるため、接触部分の圧力差も大きくなり、画像の光沢むらが発生した。
【0076】
(比較例4)
実施例1において、複数の貫通孔を、それぞれの貫通孔の重心と該芯金の重心とを結ぶ直線と、該貫通孔の長径方向に伸びる直線とがなす角度を70°に変えたこと以外、実施例1と同様にローラを作製し、実施例1と同様の評価を実施した。その結果、表1に示すように近接する貫通孔との周方向における距離が短くなりすぎるため、せん断力が働く周方向のゴムの厚さが薄くなり強度が不足し、ゴム破断が発生した。
【0077】
【表1】

【0078】
以上、表1からわかるように実施例1〜12では、ゴム破断、画像光沢むら、紙しわ、定着ベルト発熱層クラック、剥離不良を防止できていることがわかる。
【0079】
なお、以上説明した各実施例においては、離型層としてPFAチューブを用いたが、この他に、フッ素ゴム、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、FEP(テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体)、ETFE(エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体)のフッ素樹脂を使用してもよい。
また、弾性層として、シリコーンゴムの他に、EPDMゴム、フッ素ゴム等を発泡させたスポンジゴムでも良い。さらに、加圧ローラは加熱手段により加熱されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明のローラの好ましい実施形態を示す概略構成図である。
【図2】本発明の定着装置の好ましい実施形態を示す概略構成図である。
【図3】本発明の画像形成装置の好ましい実施形態を示す概略構成図である。
【図4】従来の加圧ローラの概略構成図である。
【符号の説明】
【0081】
20 定着ベルト(定着用部材)
22 加圧ローラ(加圧部材)
22A 芯金
22B 弾性層
22C 離型層
22D 貫通孔
26 電磁誘導加熱装置
28 定着装置
32A 芯金
32B 弾性層
32C 離型層
32D 貫通孔
40 画像形成装置
60 感光ドラム(像保持体)
62 帯電装置(帯電手段)
64 レーザースキャナ(潜像形成手段)
66 回転式現像装置(現像手段)
70 転写ローラ(転写手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯金と、
前記芯金の外周面上に形成される弾性層と、
を有し、
前記弾性層が、前記芯金の軸方向に貫通し、該芯金の周方向に切断したときの断面における形状が長径及び短径を有する長穴形状である貫通孔を、複数有し、
前記断面において、前記貫通孔の重心と前記芯金の重心とを結ぶ直線と、前記貫通孔の長径方向に伸びる直線とがなす角度が、それぞれ30°以上60°以下であることを特徴とするローラ。
【請求項2】
前記短径の長さが、それぞれ、前記弾性層の平均厚みの1/6以上1/3以下であることを特徴とする請求項1に記載のローラ。
【請求項3】
前記長径の長さが、それぞれ、前記弾性層の平均厚みの1/2以上3/2以下であることを特徴とする請求項1に記載のローラ。
【請求項4】
記録媒体上の未定着画像を記録媒体へ定着する定着部材と、
前記定着部材の周面に加圧する加圧部材と、
を備え、
前記定着部材、もしくは加圧部材の少なくとも1つが、請求項1に記載のローラを備えることを特徴とする定着装置。
【請求項5】
像保持体と、
前記像保持体表面を帯電する帯電手段と、
前記像保持体表面に潜像を形成する潜像形成手段と、
形成された前記潜像をトナー像として現像する現像手段と、
前記トナー像を記録媒体に転写する転写手段と、
前記記録媒体に転写されたトナー像を記録媒体に定着する定着手段と、
を備え、
前記帯電手段、転写手段、及び定着手段の少なくとも1つが、請求項1に記載のローラを備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
前記定着手段が、前記ローラを備えることを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−139691(P2008−139691A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−327272(P2006−327272)
【出願日】平成18年12月4日(2006.12.4)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】