説明

ローラ及びその製造方法

【課題】支持体とその外周に弾性層、被覆層を少なくとも有するローラの製造方法において、被覆層表面に気泡起因の欠陥のないローラを製造する。
【解決手段】支持体とその外周に弾性層、被覆層を少なくとも有するローラの製造方法において、弾性層を形成したローラを垂直方向に塗工液に浸漬して被覆層用塗工層を形成する際、前記塗工液に前記ローラの弾性層下端面を接触させ、一旦引き上げ乾燥し、次にローラ全体を前記弾性層下端面から塗工液に浸漬することにより、弾性層上に被覆層用塗工層を形成する工程を有し、前記塗工液の粘度が、B型粘度計60rpm、1号ローター、25℃の測定条件にて、0.006Pa・s以上、0.015Pa・s以下であることを特徴とするローラの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子写真装置、静電記録装置等に用いられるローラ及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、複写機、プリンター等のOA機器は高画質化が進んでいる。それに伴い、感光体上の静電潜像をトナーにより可視化する現像プロセスにおいては、弾性層を有するローラを現像ローラとして用い、感光体に均一に圧接して現像を行なう接触現像方式が提案されている。この接触現像方式においては、現像ローラは感光体への均一な圧接幅を確保するため、弾性材料を含む弾性層を有すると共に、電圧を印加してトナー像を感光体上に形成するため、均一な導電性や耐リーク性が求められる。そこで、例えば導電性支持体上に電子導電剤やイオン導電剤を分散し、所望の抵抗値に調整した弾性層を形成する。さらに、その外周に耐磨耗性やトナー帯電性、トナー搬送性を得るためにナイロン、ウレタン等の樹脂に、適宣表面粗さを確保するための粗し粒子や、導電性を確保するための導電剤を添加した被覆層を設ける場合が多い。
【0003】
この被覆層を作製する方法としては塗工(コーティング)が用いられる。具体的にはディップ塗工やロールコート、スプレー塗布等の方法が挙げられる。その中で、溶剤中に樹脂と導電剤を分散させた塗工液を用意し、そこにローラを浸漬、引き上げるディップ塗工は簡便に数μm〜数十μmの均一な被覆層が形成されることから用いられることが多い。弾性層を形成したローラを垂直方向に塗工液に浸漬して被覆層用塗工層を形成するディップ塗工では、弾性層下端面が塗工液面に触れた際、弾性層下端面と塗工液の間に空気が付着保持される場合がある。ここで付着保持された空気はローラを浸漬、引き上げしている最中に開放され、気泡となり、この気泡は塗工液面まで上昇し、ローラと液面の表面張力の関係でローラ側に付着することもある。更に、ローラは降下、上昇するため、気泡は液面でローラ表面を擦り跡がつくため、乾燥後もローラの軸方向にスジ状の凹欠陥となって残る。
【0004】
接触現像方式の場合、現像ローラの被覆層表面はトナーや感光体と接触するため、均一な面であることが要求される。例えば、被覆層に膜厚ムラ(塗工ムラ)や気泡起因の欠陥が見られる場合、この跡が画像不良として現れてしまう。
【0005】
この気泡起因の欠陥に対する防止策として、様々な検討や対応がされている。
【0006】
塗工液にシリコーン系消泡剤を添加することで気泡の発生を抑制している技術の開示がある(特許文献1)。消泡剤の添加により気泡の発生を抑制することで感光体表面の欠陥を防ぐことができる。しかし、ローラの高機能化が進んでいる現在、出来れば添加剤の種類は少ない方が設計は容易となる。
【0007】
また、気泡の発生しにくい形状のマスキングキャップを用いることで対応している技術の開示がある(特許文献2)。マスキングキャップによりローラ浸漬時に塗工液中の気泡の発生を防ぐことが出来るため、表面欠陥のない被覆層を形成できる。しかし、弾性層下端面の形状に合ったマスキングキャップが必要となるため、可能であればマスキングキャップを用いない被覆層の形成方法が望まれる。
【0008】
ローラの表面に被覆層を形成するローラの製造方法において、以下のような技術の開示がある(特許文献3)。まず、ローラ全体を垂直方向に被覆層用塗工液に浸漬する。次に、このローラを、ローラ全長の1/2以下の長さ分のみローラの軸方向に引き上げ、ローラを再び塗工液に浸漬する工程を少なくとも1回以上繰り返し行う。最後に、ローラ全体をローラの軸方向に引き上げる。しかし、これは液だれ等による被覆膜の不均一化、特にローラ上端部の被覆層の厚みがローラ下端部のそれに比べて薄くなる等の欠点を解消する目的で行う技術であり、塗工時において、弾性層下端面に空気が付着保持されて生ずる問題に注目したものではない。
【0009】
【特許文献1】特開2000−56496号公報
【特許文献2】特開2005−316123号公報
【特許文献3】特開平08−207171号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
以上のように、弾性層を形成したローラを垂直方向に塗工液に浸漬して被覆層塗工層を形成する場合、弾性層下端面に空気が付着保持すると、ローラの表面欠陥、さらには画像不良が生じる。
【0011】
更に近年、現像ローラは弾性層の弾性特性を阻害しないように、被覆層の厚みは5〜15μmであることが求められており、これを実現するため、塗工液の粘度はより低粘度であることが必要となってきている。塗工液の粘度が低下するとより気泡が発生しやすくなるため、ローラの表面欠陥、画像不良の発生は増加する。
本発明者らは、前記気泡の発生原因について鋭意調査、検討を行った。その結果、弾性層が形成されたローラの弾性層端面は、塗工液に対するぬれ性が悪いということが分かった。そのため、弾性層端面は塗工液浸漬時、塗工液面と最初に接触するが、ぬれ性が悪いため空気を巻き込んでしまう。これにより、弾性層下端面に空気が付着保持され、引き上げ最中に開放されることで気泡が発生する。そこで、さらに検討することにより以下の発明に至った。
【課題を解決するための手段】
【0012】
すなわち、支持体とその外周に弾性層、被覆層を少なくとも有するローラの製造方法において、
弾性層を形成したローラを垂直方向に塗工液に浸漬して被覆層用塗工層を形成する際、前記塗工液に前記ローラの弾性層下端面を接触させ、一旦引き上げ乾燥し、
次にローラ全体を前記弾性層下端面から前記塗工液に浸漬することにより、弾性層上に被覆層用塗工層を形成する工程を有し、
前記塗工液の粘度が、B型粘度計60rpm、25℃の測定条件にて、0.006Pa・s以上、0.015Pa・s以下であることを特徴とするローラの製造方法である。
【発明の効果】
【0013】
弾性層を形成したローラを垂直方向に塗工液に浸漬して被覆層用塗工層を形成する際、前記塗工液に弾性層下端面を接触させ、一旦引き上げ乾燥する。ここで形成された被覆層用塗工層は、塗工液に対して良好なぬれ性を示す。この後、更に弾性層下端面からローラ全体を塗工液に浸漬する。この時、弾性層下端面のぬれ性は良好なため、空気の巻き込みを防ぐことができる。
【0014】
したがって、本発明のローラの製造方法により製造されたローラは、被覆層表面の気泡による欠陥の発生を抑えることができる。そして、このローラを現像ローラとして用いることにより、被覆層表面上の欠陥が画像上に現れないため、良好な画像形成が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明は、支持体と該支持体の外周に弾性層、被覆層を少なくとも有するローラの製造方法において、以下の(1)から(5)の工程を有する。
(1)支持体の外周に弾性層を形成する工程
(2)弾性層下端面をローラの垂直方向から被覆層用塗工液に接触する工程
(3)前記被覆層用塗工液から一旦引き上げ、乾燥する工程
(4)ローラ全体を前記弾性層下端面から前記被覆層用塗工液に浸漬する工程
(5)前記被覆層用塗工液から引き上げ、弾性層上に被覆層用塗工層を形成する工程。
【0016】
このような方法で得られたローラを、現像ローラとして電子写真装置内の現像ユニットに搭載して用いることで、被覆層表面上の気泡による欠陥が画像上に現れないため、良好な画像が得られる。
【0017】
[弾性層の形成]
本発明のローラは、図1に断面図を示すように、支持体1と、支持体1の外周に設けられた弾性層2と、弾性層2の外周に設けられた被覆層3とを少なくとも有する。なお、弾性層2とは、本発明のローラを現像ローラとして用いた場合、現像規制部材及び感光ドラムと圧接した際、適度な弾性を持たせることで適切な接触面積を得るために設けた層である。本発明においては、弾性層2は1層若しくは複数層設けることができる。
【0018】
前記支持体は、導電性を有する材料であればよく、例えば鉄、銅、ステンレス等の金属が挙げられる。また、これら金属の表面は、無電解ニッケルメッキによるメッキ処理等の被覆処理が施されてもよい。
【0019】
本発明では支持体の外周に弾性層を形成する。弾性層に用いられる材料は、変形後に速やかに形状が回復することが求められる観点から、圧縮永久歪み特性、反発弾性特性に優れたシリコーンゴムを用いることが好ましい。また、寸法精度が要求されるので反応時に分子等の脱離のない付加型シリコーンゴムを用いるのがより好ましい。例えば、ジメチルシリコーンゴム、メチルフェニルシリコーンゴム、メチルビニルシリコーンゴム、メチルフェニルビニルシリコーンゴム等が挙げられる。
【0020】
弾性層の厚さは、1.0〜6.0mmの範囲にあることが好ましく、1.5〜5.0mmの範囲にあることがより好ましい。弾性層の厚さが1.0mmより薄くなると、均一なニップを確保することが困難になる場合がある。一方、弾性層の厚さを6.0mmより厚くしても、帯電性能の向上につながらないだけでなく、ゴム材料の成型コストが上昇し、コスト的に不利である。
【0021】
弾性層は例えば、支持体を円筒金型内に配置し、その金型に付加型シリコーンゴムを注入し、加熱硬化した後、脱型し、必要に応じて再度硬化することで形成することができる。また、精度を向上させるため円筒金型内で成型した後、研磨する方法で形成してもよい。
【0022】
[被覆層の形成]
次に、被覆層用塗工液面に対してローラが垂直になるようにして、前記弾性層を形成したローラの弾性層下端面を塗工液に接触させ、一旦引き上げ乾燥する。この際、支持体の露出部にマスキングを施してもよい。
【0023】
ローラの塗工液面への進入速度は、2〜50mm/sが好ましく、2〜30mm/sがより好ましい。塗工液面への進入速度が50mm/sより速いと、弾性層下端面が塗工液面に接触した際、物理的な振動により空気を巻き込んでしまい、弾性層下端面に被覆層用塗工層の形成されない箇所ができることがある。
【0024】
弾性層下端面の被覆層用塗工層は、ローラを一旦引き上げ乾燥させることで、形成される。ここで形成された被覆層用塗工層は、被覆層用塗工液に対するぬれ性が良好なため、再度弾性層下端面からローラ全体を浸漬する際、空気を巻き込むことなく浸漬することが可能となる。
【0025】
弾性層端部はその成型方法により異なるが、その端部形状は図2の断面図に示すような環状凹部を有する場合が多い。
【0026】
本発明において弾性層下端面とは図2の断面図に示すように、塗工液7に面している弾性層下端面4及び5のことを指す。弾性層下端面4及び5を塗工液7に接触させる際、図2のようにローラ側面6が弾性層下端面4よりも突き出ているときには、Bに示す位置までローラを浸漬する。
【0027】
弾性層下端面に被覆層用塗工層が形成された後、ローラ全体を前記弾性層下端面から塗工液に浸漬することにより、弾性層上に被覆層用塗工層を形成する。
【0028】
被覆層を形成する樹脂材料としては、例えば、フッ素樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ブチラール樹脂、スチレン−エチレン・ブチレン−オレフィン共重合体(SEBC)及びオレフィン−エチレン・ブチレン−オレフィン共重合体(CEBC)等が挙げられる。好ましくは、ポリウレタン樹脂である。
【0029】
前記樹脂材料に、静摩擦係数を小さくする目的でグラファイト、雲母、二硫化モリブデン及びフッ素樹脂粉末等の固体潤滑材、或いはフッ素系界面活性剤、ワックス又はシリコーンオイル等を添加することもできる。フッ素系界面活性剤としては、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、パーフルオロアルキルアミンオキサイド及びフッ素化アルキルエステル等が挙げられる。ワックスとしては、パラフィンワックス、ポリオレフィンワックス、フィッシャートロピッシュワックス、アミドワックス、高級脂肪酸、エステルワックス及びこれらの誘導体又はこれらのグラフト/ブロック化合物等が挙げられる。
【0030】
また、被覆層に導電性を持たせるため、各種導電剤を添加することもできる。例えば、カーボンブラック、グラファイト、銅、アルミニウム、ニッケル、鉄粉及び金属酸化物である導電性酸化錫や導電性チタン等が挙げられる。
【0031】
さらに、耐磨耗性やトナー搬送性を得るために粗し粒子が加えられることが多い。この粗し粒子としては、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリウレタン等からなる球形状樹脂粒子が好ましい。
【0032】
また、樹脂材料の硬化を目的として硬化剤を添加することも出来る。硬化剤としては、MDIの他にNDI、HDI等のイソシアネート、各種イソシアネートのプレポリマー、又はメラミン樹脂、アミド樹脂等、併用するウレタン樹脂を硬化させるものであれば、いずれでもよい。
【0033】
被覆層用塗工液は、前記樹脂材料を溶媒で希釈後、前述した各種添加剤を適宜添加し、攪拌することで得られる。溶媒としては特に制限はなく、水、各種有機溶媒を使用することができる。有機溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、ヘキサン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等が挙げられる。前記水、各種有機溶媒は単独で用いてもよく、また分離しない範囲で2種以上を混合しても良い。このとき、粗し粒子を添加する場合は、粗し粒子の膨潤や溶解が起こらない溶媒を適宜選択すれば良い。
【0034】
本発明では、前記塗工液の粘度を、B型粘度計60rpm、1号ローター、25℃の測定条件にて0.006Pa・s以上、0.015Pa・s以下とする。粘度が0.006Pa・sより低いと、弾性層下端面を塗工液に接触後、一旦引き上げたとき、塗工液の垂れが生じる。この塗工液の垂れにより塗工液面上に気泡が発生し、再度ローラ全体を塗工液に浸漬した際、気泡により表面欠陥が生じる。また粘度が0.015Pa・sより高いと、弾性層下端面を塗工液に接触した際、弾性層下端面に空気を巻き込み、被覆層表面に気泡起因の欠陥が生じる。前記塗工液の粘度としては、0.008Pa・s以上、0.012Pa・s以下が好ましい。
【0035】
ローラ全体を、被覆層用塗工層が形成された弾性層下端面から塗工液に浸漬する際、塗工液にローラを進入する速度、及びローラ全体を浸漬後、ローラを引き上げる速度は特に制限されない。しかし、引き上げる際の速度が速いと膜厚が厚くなる傾向があるため、所望の膜厚が得られる引き上げ速度で引き上げるのが好ましい。
【実施例】
【0036】
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明する。なお、これらは本発明を何ら限定するものではない。
【0037】
[実施例1]
(弾性ローラ1の作製)
φ8mmステンレス製支持体を内径16mmの円筒状金型内に同心となるように設置した。弾性層として液状導電性シリコーンゴムを注型し、130℃のオーブンに入れ20分加熱成型した。液状導電性シリコーンゴムには、オルガノポリシロキサン、オルガノハイドロジエンポリシロキサン、導電性カーボンブラック、白金触媒、石英、シリカを適宜配合したものを用い、液状状態での粘度は150Pa・s、硬化後のアスカC硬度は40°であった。脱型後、200℃のオーブンで4時間二次硬化処理を行い、弾性層厚み4mmの弾性ローラ1を得た。
【0038】
(塗工液1の調製)
ウレタン樹脂(商品名:「ニッポラン5033」、日本ポリウレタン社製)を固形分濃度25%となるようにメチルエチルケトンで希釈した。導電剤としてカーボンブラック(商品名:「MA77」、三菱化学社製)をウレタン樹脂に対し35質量部、粗し粒子としてウレタン粒子(商品名:「アートパールC−400透明」、根上工業株式会社製)をウレタン樹脂に対し20質量部添加し、十分に分散した。その後、硬化剤(商品名:「コロネートL」、日本ポリウレタン社製)をウレタン樹脂に対し10質量部添加、攪拌し、塗工液1とした。塗工液1のB型粘度計(製品名:「ビスメトロン粘度計 VDA」、芝浦システム株式会社製)60rpm、1号ローター、25℃の測定条件での粘度は、0.012Pa・sであった。
【0039】
(弾性層下端面への被覆層用塗工層の形成)
弾性ローラ1を塗工液1面に対して垂直になるように保持しつつ、塗工液1面に向かって真っ直ぐ20mm/sの速度にて降下させ、弾性層下端面が塗工液1に接触した時点で降下を停止し5秒間保持した。その後、3mm/sの速度にて引き上げ、ローラが塗工液1の入った槽から離れた地点にて10秒間乾燥した。
【0040】
(被覆層の形成)
前記弾性層下端面に被覆層用塗工層が形成されたローラを塗工液1面に対して垂直になるように保持しつつ、塗工液1面に向かって真っ直ぐ降下し、ローラ全面を浸漬させた後、引き上げた。降下の速度は20mm/s、ローラ全面が浸漬している浸漬時間は5s、引き上げの速度は3mm/sとした。その後、風乾、熱硬化(150℃、1h)の工程を経て被覆層を形成し、ローラを得た。
【0041】
上記の方法で10本のローラを作製し、得られたローラの被覆層表面の気泡による表面欠陥の有無を調べた。被覆層表面の欠陥の有無は目視により調べた。結果を表1に示す。
【0042】
[実施例2]
(塗工液2の調製)
ウレタン樹脂(商品名:「ニッポラン5033」、日本ポリウレタン社製)を固形分濃度15%となるようにメチルエチルケトンで希釈した。導電剤としてカーボンブラック(商品名:「MA77」、三菱化学社製)をウレタン樹脂に対し35質量部、粗し粒子としてウレタン粒子(商品名:「アートパールC−400透明」、根上工業株式会社製)をウレタン樹脂に対し20質量部添加し、十分に分散した。その後、硬化剤(商品名:「コロネートL」、日本ポリウレタン社製)をウレタン樹脂に対し10質量部添加、攪拌し、塗工液2とした。塗工液2のB型粘度計(製品名:「ビスメトロン粘度計 VDA」、芝浦システム株式会社製)60rpm、1号ローター、25℃の測定条件での粘度は0.008Pa・sであった。
【0043】
(弾性層下端面への被覆層用塗工層の形成)
実施例1の弾性ローラ1を塗工液2面に対して垂直になるように保持しつつ、塗工液2面に向かって真っ直ぐ20mm/sの速度にて降下させ、弾性層下端面が塗工液2に接触した時点で降下を停止し5秒間保持した。その後、3mm/sの速度にて引き上げ、ローラが塗工液2の入った槽から離れた地点にて10秒間乾燥した。
【0044】
(被覆層の形成)
前記弾性層下端面に被覆層用塗工層が形成されたローラを塗工液2面に対して垂直になるように保持しつつ、塗工液2面に向かって真っ直ぐ降下し、ローラ全面を浸漬させた後、引き上げた。降下の速度は20mm/s、ローラ全面が浸漬している浸漬時間は5s、引き上げの速度は3mm/sとした。その後、風乾、熱硬化(150℃、1h)の工程を経て被覆層を形成し、ローラを得た。
【0045】
上記の方法で10本のローラを作製し、得られたローラの被覆層表面の欠陥の有無を調べた。結果を表1に示す。
【0046】
[比較例1]
弾性層下端面への被覆層用塗工層の形成工程を行わずにローラ全面の浸漬を行ったこと以外は、実施例1と同様に行った。
【0047】
上記の方法で10本のローラを作製し、得られたローラの被覆層表面の欠陥の有無を調べた。結果を表1に示す。
【0048】
[比較例2]
(塗工液3の調製)
ウレタン樹脂(商品名:「ニッポラン5033」、日本ポリウレタン社製)を固形分濃度40%となるようにメチルエチルケトンで希釈した。導電剤としてカーボンブラック(商品名:「MA77」、三菱化学社製)をウレタン樹脂に対し35質量部、粗し粒子としてウレタン粒子(商品名:「アートパールC−400透明」、根上工業株式会社製)をウレタン樹脂に対し20質量部添加し、十分に分散した。その後、硬化剤(商品名:「コロネートL」、日本ポリウレタン社製)をウレタン樹脂に対し10質量部添加、攪拌し、塗工液3とした。塗工液3のB型粘度計(製品名:「ビスメトロン粘度計 VDA」、芝浦システム株式会社製)60rpm、1号ローター、25℃の測定条件での粘度は0.018Pa・sであった。
【0049】
(弾性層下端面への被覆層用塗工層の形成)
実施例1の弾性ローラ1を塗工液3面に対して垂直になるように保持しつつ、塗工液3面に向かって真っ直ぐ20mm/sの速度にて降下させ、弾性層下端面が塗工液3に接触した時点で降下を停止し5秒間保持した。その後、3mm/sの速度にて引き上げ、ローラが塗工液3の入った槽からはなれた地点にて10秒間乾燥した。
【0050】
(被覆層の形成)
前記弾性層下端面に被覆層用塗工層が形成されたローラを塗工液3面に対して垂直になるように保持しつつ、塗工液3面に向かって真っ直ぐ降下し、ローラ全面を浸漬させた後、引き上げた。降下の速度は20mm/s、ローラ全面が浸漬している浸漬時間は5s、引き上げの速度は3mm/sとした。その後、風乾、熱硬化(150℃、1h)の工程を経て被覆層を形成しローラを得た。
【0051】
上記の方法で10本のローラを作製し、得られたローラの被覆層表面の欠陥の有無を調べた。結果を表1に示す。
【0052】
[比較例3]
(塗工液4の調製)
ウレタン樹脂(商品名:「ニッポラン5033」、日本ポリウレタン社製)を固形分濃度5%となるようにメチルエチルケトンで希釈した。導電剤としてカーボンブラック(商品名:「MA77」、三菱化学社製)をウレタン樹脂に対し35質量部、粗し粒子としてウレタン粒子(商品名:「アートパールC−400透明」、根上工業株式会社製)をウレタン樹脂に対し20質量部添加し、十分に分散した。その後、硬化剤(商品名:「コロネートL」、日本ポリウレタン社製)をウレタン樹脂に対し10質量部添加、攪拌し、塗工液4とした。この液のB型粘度計(製品名:「ビスメトロン粘度計 VDA」、芝浦システム株式会社製)60rpm、1号ローター、25℃の測定条件での粘度は0.003Pa・sであった。
【0053】
(弾性層下端面への被覆層用塗工層の形成)
実施例1の弾性ローラ1を塗工液4面に対して垂直になるように保持しつつ塗工液4面に向かって真っ直ぐ20mm/sの速度にて降下させ、弾性層下端面が塗工液4に接触した時点で降下を停止し5秒間保持した。その後、3mm/sの速度にて引き上げ、ローラが塗工液3の入った槽からはなれた地点にて25秒間乾燥した。
【0054】
(被覆層の形成)
前記弾性層下端面に被覆層用塗工層が形成されたローラを塗工液4面に対して垂直になるように保持しつつ、塗工液4面に向かって真っ直ぐ降下し、ローラ全面を浸漬させた後、引き上げた。降下の速度は20mm/s、ローラ全面が浸漬している浸漬時間は5s、引き上げの速度は3mm/sとした。その後、風乾、熱硬化(150℃、1h)の工程を経て被覆層を形成しローラを得た。
【0055】
上記の方法で10本のローラを作製し、得られたローラの被覆層表面の欠陥の有無を調べた。結果を表1に示す。
【0056】
【表1】

【0057】
実施例1、2は、ローラ全体を塗工液に浸漬する際、空気を巻き込むことがないため、被覆層表面の気泡による欠陥の発生を抑えることができた。
【0058】
一方、比較例1は実施例1と同様の条件であるが、弾性層下端面への被覆層用塗工層の形成工程を行なわずに、ローラ全面を塗工液に浸漬した結果、3本のローラにおいて気泡発生による被覆層表面の欠陥が観察された。
【0059】
比較例2は本発明の塗工液の粘度より高粘度の塗工液、比較例3は低粘度の塗工液を用いた結果、比較例2では5本、比較例3では6本のローラに気泡発生による被覆層表面の欠陥が観察された。塗工時の粘度が0.006Pa・sより低いときは、塗工液の垂れにより塗工液表面で気泡が発生し、0.015Pa・sより高いときは、弾性層下端面が塗工液に浸漬する際に気泡を巻き込むことにより、被覆層表面の欠陥が発生した。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明のローラの概念的断面図。
【図2】本発明の弾性層下端面への被覆層用塗工層の形成工程を示す概略図。
【符号の説明】
【0061】
1 支持体
2 弾性層
3 被覆層
4 弾性層下端面(内側)
5 弾性層下端面(外側)
6 ローラ側面
7 塗工液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体とその外周に弾性層、被覆層を少なくとも有するローラの製造方法において、
弾性層を形成したローラを垂直方向に塗工液に浸漬して被覆層用塗工層を形成する際、前記塗工液に前記ローラの弾性層下端面を接触させ、一旦引き上げ乾燥し、
次にローラ全体を前記弾性層下端面から塗工液に浸漬することにより、弾性層上に被覆層用塗工層を形成する工程を有し、
前記塗工液の粘度が、B型粘度計60rpm、1号ローター、25℃の測定条件にて、0.006Pa・s以上、0.015Pa・s以下であることを特徴とするローラの製造方法。
【請求項2】
前記塗工液は、ウレタン樹脂を樹脂材料として含むことを特徴とする請求項1に記載のローラの製造方法。
【請求項3】
前記弾性層を形成したローラの弾性層端部が、環状凹部を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のローラの製造方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載のローラの製造方法により製造されたローラ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−183833(P2009−183833A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−25269(P2008−25269)
【出願日】平成20年2月5日(2008.2.5)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】