説明

ロールと、ロール用のスプリング

【課題】強くて、寿命が長く、長期間に亘って緩まずに強く作動することの可能なコンビロールに適したスプリングを提供すること。
【解決手段】スプリング(7)の前端(13)、後端(14)に、それぞれ、第1のスロット(15)、第2のスロット(25)が開かれ、第1のスロットは後端に向かって、第2のスロットは前端に向かって、延伸して到達せず、かつ、第1のスロットはリング状の端面(19,20)を有する前方を向いた舌片(27,28)を分離し、第2のスロットはリング状の端面(30,31)を有する前方を向いた舌片(27,28)を分離し、スプリング本体の両端において、端面(19,31)が、隣接する舌片の端面(20,30)に対して軸方向に突出し、突出した端面(19,31)は隣接するリング(6A,3)の端面(10)に対して押圧される。スプリングが圧縮された時にラビリンス状のスプリング力が端部間に生じる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1には、ロールであって、ロールシャフトと、2つの軸方向に離間されたストップリングであって、一方が固定され、他方がロックナットであるものと、複数の他のリングであって、ロール、及び、又は、スペーサリングの形態を有し、ストップリングの間に装着されているものと、少なくとも1つのスプリングであって、2つの軸方向に離間した端部で画成されるスプリングと、を具備するものに関する。
本発明は、第2には、このようなスプリングに関する。
【背景技術】
【0002】
当業者の間ではコンビロールといわれる、上述のようなロールにおいては、重要なことは、ロールリングがスペーサリングに対して密着して押圧されるようにし、リングが互いに対してスリップしないようにすることである。そのためには、ロックナットのみでは不十分であって、リングのセットの中に、少なくとも1つの強いスプリングを配設し、長い期間にわたって持続的にスプリング力をリングに印加することが必要である。そのために、従来から、色々なスプリングの中で皿ばねが使われてきた(特許文献1参照)。しかしながら、様々な理由によって、皿ばねの利用はうまくいっていない。その理由の1つは、この様なスプリングは、緩みやすく、あるいは、疲労するのが非常に早いということである。他の理由は、皿ばねは隣接するリングと線接触し、面接触はしないということである。
【0003】
【特許文献1】US5735788
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、従来のロール及びそれに付設されるスプリングが内蔵するスプリング力の問題を除去し、改善されたロールとスプリングをそれぞれ提供することを目指すものである。
したがって、本発明の第1の目的は、強くて寿命が長く、長期間に亘って緩まずに強く作動することの可能なコンビロールに適したスプリングを提供することである。
さらなる目的は、ストロークが小さい、あるいは、長さが小さいが、充分に動的なスプリング力を発生することのできるスプリングを提供することである。
また、さらなる目的は、ストップリングの間の可能な空間(ロール幅)に不必要に進入しないように通常の軸方向の長さを有するスプリングを提供することである。
また、本発明は隣接するリングと線接触ではなくて面接触することを保証するスプリングを提供することを目指している。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、少なくとも第1の課題は、第1の態様として、独立請求項1に記載のタイプされたタイプのロールによって実現される。本発明のロールの有利な実施形態はさらに請求項2で規定されている。
【0006】
他の態様では、発明はロールスプリングに関する。このスプリングの主要部は独立請求項3に記載されている。本発明によるスプリングの好適な実施形態については、さらに従属請求項4−10で規定されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
図1において、参照符号1は駆動可能なロールシャフトを示し、それは基本的に回転対称な形状を有しており、2つの軸方向に離間した2つのストップリング2、3を備え、その1つ、リング2は固定されているが、他方のリング3はロックナットである。固定されたリング2は図1に示されるようにシャフトのリング状の肩部として形成することもできるし、あるいは、軸方向には固定されるがシャフトに着脱可能な別体のリングとして(図示せず)形成することもできる。着脱可能なロックナット3はシャフト4にネジ継手4を介して結合されており、ネジ継手はナットリングの内側の雌ネジとシャフト上の雄ネジを含む。
【0008】
ストップリング2、3の間に、一組の着脱可能なリングが配設されており、その内の幾つかはロールリング5であり、その他はスペーサリング6である。特殊なスペーサリング6Aがロールリング5とリング形状のスプリング7の間に挿入されている。一般的に、全てのリングは、一方で、円筒外側面8と円筒内側面9によって、他方で反対配置された平らな端面10によって画成される範囲において、回転対称、より正確には円筒形の基本形状を有している。円筒外側面8と円筒内側面9は、通常回転による加工がされ、シャフトの中心軸Cにより規定される。
【0009】
図2−4はスプリング7の特徴の詳細を示している。
図2では、スプリング7も、中心軸C(装着状態において、スプリングリングの中心軸はロールシャフトの中心軸と一致する)円筒外側面11と円筒内側面12で画成される回転対称な基本形状を有している。さらには、スプリング本体は相互に反対の位置の、軸方向に離間した、通常はリング形状の端部13,14によって画成されている。
以下の説明を端部はわかり易くするために、それぞれ前と後と称する。しかし、これは図2に限られ、そこでは端部13が前側に、端部14が後側に示されている。
【0010】
図4に示されるように、多数のスロット(またはギャップ)15が前端13に開いており、それらは後端14に向かって延伸するが、到達はしていない。例示されているものにおいては、前方が開いたスロット15の数は2である。そして、スロット15は前部で3個の舌片16,17,18を分割し、各舌片は自由端表面19,20,21を有する。
【0011】
各スロット15は2つの離間した、共中心の円筒面22、23によって画成されており、それらは、底部24において終焉している。
【0012】
スプリング本体の後端14には、2つの同じ第2スロット25が開いており、それらは前端13に向かって延伸するが、到達はしていない。スロット15と同様に、スロット25は3つの後方を向いた舌片26,27,28を分離し、これら3つ舌片26、27、28は端面29,30,31を有する。各スロット25は、共中心の円筒面32、33によって画成されており、それらは、底部34において終焉している。
【0013】
図4において、L1はスプリング本体の全長、あるいは、軸方向長さを表し、L2はスロット25の深さを表している。有利には、4つのスロットが、すなわち、スロット15も、1つの同じ深さL2を有している。スロットの深さを幅広く変え、スプリングの特性を変えることも可能であるが、深さL2はスプリング本体の全長L1の少なくとも60%を超えるべきであるが、スプリング本体の全長L1の90%を超えるべきではない。
【0014】
有利には、スロット15は隣接する2つのスロット25の丁度半分の位置に設けられる。2つの外側の前方を向いた舌片17、18は、1つの内側の前方を向いた舌片16の2倍の材料厚さ(外径と内径の差で決定される)を有する。逆に、外側の後方を向いた舌片28は、2つの内側の前方を向いた舌片26,27の半分の材料厚さを有する。
【0015】
本発明の重要な特徴によれば、スプリング本体の各端部の端面の1つは、1つ、あるいは、2つ以上、隣りの、舌片に対して、軸方向に変位している。このようにして、図4に明示されているように、内側の前方を向いた舌片16の端面19は、直ぐ隣の舌片17の端面20に対して(前方に)変位している。さらに、舌片17の端面20は、最外側の舌片18の端面21に対して前方に変位している。
スプリングに負荷がかかっていない状態では、変位は、図4で、それぞれ、S1、S2で示されている。実際には、これらは、外径D1と内径D2の差が20−50mmであって、全長L1が60−120mmであると仮定して、0.2〜2mmとされ、好ましくは、0.4〜1mmとされる。
【0016】
同じ様にして(逆向きではあるが)、端面29,30,31が軸方向に段階的に相対的にS1、S2だけ変位されている。実際には、端部14における変位S1、S2は互いに同じ大きさで、また、対応する反対側の端部13における変位S1,S2と同じ大きさである。
【0017】
本発明によれば、少なくとも、隣接するロール内のリングに対するスプリング本体の接触面を形成する端面19,31は平面を有するように形成される。製造上の理由から、他の端面20、21;29、30も平面とされる。
【0018】
上述のスプリング本体は、有利には、例えば、スチールのような金属で1つの部品として製造される。例えば、適切な弾性を有するリング状の材料を加工(回転、平削り、及び、又は、中ぐり)することによって、スプリング力、スプリング長さ、寸法等にかかわる様々な要求に応えられるスプリングを製造することが可能である。
【0019】
図1には、スプリング7がロックナット3とスペーサリング6Aの間に装着されて示されており、スプリングの平らな端面31は同じく平らなロックナット3の内側の端面に押圧され、端面19はスペーサリング6Aの平らな端面に対して押圧されている。ロックナットが締め付けられると、スプリングには逆向きの軸方向の力が供給され、それはスプリング内部にラビリンス状に連結したスプリング力を発生し、より詳細には、スロットの底部24,34に隣接した舌片のU字状の部分の上方において、スプリングは端面19と端面31の間でスプリングの弾性変形によって圧縮される。クランプ力の大きさに応じて、端面19,31は隣接する端面20,30に対して若干内側に移動し、順に、端面20,30は端面21,29に対して内側に移動する。変形と変位動作が小さくても、大きなスプリング力が発生する。
【0020】
図1には、複数の締め付け具35のうちの1つ、例えば、ネジが、ロックナットの周囲のリム部に配置されて示されており、この締め付け具は最初にスプリングのテンションを調整に使用するだけではなくて、必要ならば再調整にも使用できる。
【0021】
本発明は、上記され、図示された実施形態に限定されるものではない。よって、リングの組の上へのスプリングの配置はロックナットの直近部に限定されるものではない。重要なことは、ロールシャフトのリングの組の中でスプリングはアクティブであるということである。さらには、スプリングそのものは1つの単一な部品の形状にされた本体の形状だけではなくて、その他の方法でも実現できる。したがって、スプリング本体は、2つ、または、3つの分割された要素で組み立てることも可能である。これらは、互いに一体になるように適切な方法によって永久的に一体化される。また、スプリングをスチール、または、金属以外の材料で製造することもこのましい。さらには、舌片の数、分離スロットの数は、それぞれ、請求項の範囲内において変更することができる。しかしながら、少なくとも1つのスロットがスプリング本体の1つの端部において開いていなければならず、少なくとも1つのスロットがスプリング本体の他方の端部において開いていなければない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明のスプリングを含むコンビロールの長手方向の部分断面図である。
【図2】スプリングの単体の斜視図である。
【図3】スプリングの端部の図である。
【図4】図3のA-A線に沿って見た長手方向の拡大断面図である。
【符号の説明】
【0023】
2 リング
3 リング(ロックナット)
4 ネジジョイント
5 ロールリング
6 スペーサリング
7 スプリング
8 外周面
9 内周面
10 端面
11 (スプリングの)外周面
12 (スプリングの)内周面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロールであって、
ロールシャフト(1)と、
2つの軸方向に離間されたストップリング(2,3)であって、一方(2)が固定され、他方がロックナット(3)であるものと、
複数の他のリングであって、ロール、及び、又は、スペーサリングの形態を有し、ストップリングの間に装着されているものと、
少なくとも1つのスプリング(7)であって、軸方向に離間した2つの端部(13,14)で画成される、スプリングと、
を具備するものにおいて、
スプリング(7)の前端(13)に少なくとも1つの第1のスロット(15)が開いており、該第1のスロット(15)は後端に向かって延伸して到達せず、かつ、該第1のスロット(15)はリング状の端面(19,20)を有する前方を向いた舌片(27,28)を分離し、
スプリング(7)の後端(14)に少なくとも1つの第2のスロット(25)が開いており、該第2のスロット(25)は前端に向かって延伸するが到達せず、かつ、該第2のスロット(25)はリング状の端面(30,31)を有する前方を向いた舌片(27,28)を分離し、
スプリング本体の端部(13,14)の各々において、端面(19,31)が、隣接する舌片の端面(20,30)に対して軸方向に突出しており、該突出した端面(19,31)はスプリングの相互に反対の位置の端面で、隣接するリング(6A,3)の端面(10)に対して押圧されている、
ことを特徴とするロール。
【請求項2】
各舌片(16,28)のリング形状の端面(19,31)が平らでスプリングの軸(C)に直角に延伸し、かつ、隣接するリングの端面(6A、3)が平らでリングの軸に直角に延伸している、
ことを特徴とする請求項1に記載のロール。
【請求項3】
ロール用のスプリングであって、
本体が弾性材料で作られ、軸方向に離間した2つの端部(13,14)を有しているリング形状の本体を具備し、
本体の前端に、少なくとも1つの第1のスロット(15)が開かれ、該第1のスロット(15)は後端に向かって延伸するが到達せず、リング形状の端面(19,20)を有する2つの前方を向いた舌片(16,17)を分離し、
本体の後端に、少なくとも1つの第2のスロット(25)が開かれ、該第2のスロット(25)は前端に向かって延伸するが到達せず、リング形状の端面(30,31)を有する2つの後方を向いた舌片(27,28)を分離し、
本体の2つの端部(13,14)のそれぞれにおいて、舌片(16,28)の端面(19,31)が、隣接する舌片(17,27)の端面(20,30)に対して軸方向に突出している、
ことを特徴とするスプリング。
【請求項4】
舌片(16,28)の端面(19,31)が平らで、スプリングの軸線(C)に直角に延伸している、ことを特徴とする請求項3に記載のスプリング。
【請求項5】
スロット(15,25)の軸方向長さ(L2)が、スプリング本体の長さ(L1)の、少なくとも、60%に達している、ことを特徴とする請求項3または4に記載のスプリング。
【請求項6】
スロット(15,25)の軸方向長さ(L2)が、最大で、スプリング本体の長さ(L1)の、90%である、ことを特徴とする請求項3から5のいずれか1つに記載のスプリング。
【請求項7】
スプリング本体の各端部(13,14)において、2つ以上のスロット(15,25)が開いており、それは3つ以上の舌片(16,17,18;26,27,28)を分離している、ことを特徴とする請求項3から6のいずれか1つに記載のスプリング。
【請求項8】
平らな形状を有し、反対の端部(13,14)の間の軸方向長さ(L1)が外径(D1)よりも小さい、ことを特徴とする請求項3から7のいずれか1つに記載のスプリング。
【請求項9】
スプリングが金属の単一の部品から成る、ことを特徴とする請求項3から8のいずれか1つに記載のスプリング。
【請求項10】
スプリングが金属の複数の部品から成る、ことを特徴とする請求項3から8のいずれか1つに記載のスプリング。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−349178(P2006−349178A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−166159(P2006−166159)
【出願日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【出願人】(505277521)サンドビック インテレクチュアル プロパティー アクティエボラーグ (284)
【Fターム(参考)】