説明

ロールブランケット乾燥装置

【課題】 ブランケットに大きな温度変化を生じさせることなく乾燥効率を高める。
【解決手段】 ブランケットロール1の外周部のブランケット2の外周面の1個所に、ブランケットロール1のロール軸心方向に一直線状に延びる乾燥処理領域Xを設定する。乾燥処理領域Xに向けて空気4を吹き付ける空気噴射ノズル3を設け、乾燥処理領域Xと空気噴射ノズル3を覆う吸引カバー5に、排気装置6を接続する。ブランケット2の乾燥処理領域Xに、空気噴射ノズル3より空気4を吹き付け、この吹き付ける空気4によりブランケット2を局所的に押し潰すように変形させて、ブランケット2に吸収されていた印刷インクの溶媒18を搾り出し、搾り出された溶媒18を空気4の流れによって直ちに吹き飛ばすと共に、排気装置6へ吸引させて回収させることで、ブランケット2より除去させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オフセット印刷の実施時に印刷インクの溶媒を吸収して膨潤するブランケットロールのブランケットを乾燥させるために用いるロールブランケット乾燥装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
印刷装置の1つの形式として知られているオフセット印刷装置では、版の印刷パターン溝(凹部)に付けた印刷インクをブランケットロールの外周面へ一旦転写(受理)処理し、次いで、上記ブランケットロールより印刷対象の表面へ印刷インクの再転写(印刷)処理を行う印刷サイクルを繰り返し行うと、該ブランケットロールの外周部に設けてあるブランケットが次第に上記印刷インクの溶媒(溶剤)を吸収し(ブランケットに印刷インクの溶媒が次第に染み込んで)、該ブランケットが膨潤するという現象が生じることが知られている。
【0003】
ところで、近年、金属蒸着膜のエッチング等による微細加工に代えて、導電性ペーストを印刷用のインクとして用いた印刷技術、たとえば、凹版オフセット印刷技術を用いて基板上に液晶ディスプレイ等の画像表示素子の電子回路を印刷して形成する手法が提案されてきている。
【0004】
上記基板上に電子回路を印刷により形成する場合は、電極となる線幅として、たとえば、10μm程度と微細なものが要求されることがあり、よって、紙等に文字や画像を印刷する通常のオフセット印刷に比して高い印刷精度が要求される。
【0005】
そのため、この種の高い印刷精度が要求されるオフセット印刷装置では、印刷処理時に前記したような印刷インクの溶媒の吸収によりブランケットが許容以上に膨潤すると、版からの転写(受理)ができなくなることがあり、又、ブランケットの膨潤によりブランケットの厚み寸法が変化すると、ブランケットロールの外径寸法に変化が生じ、更には、上記ブランケットにおける膨潤した部分が柔らかくなってしまうため、該ブランケットロールの周速や、該ブランケットロールを版や印刷対象に接触させるときの印圧(接触圧力)が変化して、高い印刷精度を満足させることができなくなり、又、ブランケット自体の寿命が短くなる虞が懸念される。
【0006】
そこで、印刷パターンを高い印刷精度で印刷することが求められるオフセット印刷装置において、ブランケットに吸収された印刷インクの溶媒を乾燥させるための手法として、印刷インクを被転写体へ転写した後のブランケットの表面を、温風の噴射により最高温度が40〜250℃となるように加熱して、該ブランケットに吸収された印刷インクの溶媒を蒸散させるようにし、次いで、ブランケットの熱膨張、熱収縮に伴う印刷精度の低下を防ぐために、上記所定温度に加熱して印刷インキの溶媒を蒸散させた後の印刷用ブランケットに対し、冷風を噴射してその表面温度が15〜55℃になるように冷却するようにした手法が従来提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【0007】
又、オフセット印刷装置におけるブランケットに吸収された印刷インクの溶媒を、該ブランケットの表面(インキ受理面)の近傍に配置した吸引ノズルによるブランケット表面近傍の空気の連続的な吸引に伴って乾燥させるときに、該吸引ノズルに対してブランケットロールの回転方向上流側となる位置に設けたガスノズルより、上記ブランケットに対して窒素ガス等のガスを、5〜15℃の冷風として、あるいは、30〜150℃の温風として、2〜100m/sに設定した風速で吹き付けるようにして、上記ブランケットからの印刷インクの溶媒の蒸発を促すようにする考えも従来提案されている(たとえば、特許文献2参照)。
【0008】
なお、印刷版を冷却する版面冷却方法において、版胴の表面に近接させて配置した赤外線放射温度計のような非接触式温度検知器により検知される版面温度に応じて、版面に送る冷風の風量及び温度の少なくとも一方をコントロールするという考えは、従来提案されている(たとえば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−66804号公報
【特許文献2】特開2008−296551号公報
【特許文献3】特開昭64−72846号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところが、上記特許文献1に示されたものでは、ブランケットの表面に温風を吹き付けるようにしてあるが、その目的は、ブランケットの表面を加熱して印刷インクの溶媒を蒸散させることにある。そのために、印刷インクの溶媒として沸点の温度が高い溶媒が用いられている場合は、該溶媒の沸点に応じてブランケットの加熱温度を高く設定する必要があり、上記印刷インクの溶媒の乾燥処理を実施する毎に、ブランケットに大きな温度変化が生じるようになるため、この大きな温度変化による該ブランケットの性状や耐久性(寿命)への影響が懸念される。
【0011】
又、特許文献2に示されたものでは、ブランケットに対し、窒素ガス等のガスを2〜100m/sの風速で吹き付けるようにしてあるが、特許文献2に記載されたものでは、上記ガスの風速が100m/sを超えると、ブランケットの表面(インキ受理面)の周囲の気流を乱して塵埃を飛散させるおそれがあるとされているため、100m/sを超える速度の気流をブランケットに吹き付ける考えが示唆されるものではない。しかも、特許文献2には、ブランケットに対して上記ガスを吹き付けることによって該ブランケットの表面を局所的に変形させるという考えは全く示されていない。
【0012】
特許文献3に示されたものは、版面を冷却する手法に関するものであって、ブランケットの乾燥に関する記載はない。そのため、特許文献3に記載されたものからは、ブランケットの乾燥に用いるための装置の構成が何ら示唆されるものではない。
【0013】
そこで、本発明は、オフセット印刷装置におけるオフセット印刷処理に伴って印刷インクの溶媒を吸収したブランケットロールのブランケットについて、大きな温度変化を生じさせることなく印刷インクの溶媒を効率よく乾燥させることができるロールブランケット乾燥装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、上記課題を解決するために、請求項1に対応して、ブランケットロールのブランケット外周面における周方向の1個所で上記ブランケットロールのロール軸心方向に沿って延びる直線状の乾燥処理領域に向けて、該ブランケットに吸収されている印刷インクの溶媒を搾り出すために該ブランケットの乾燥処理領域の表面を局所的に変形させるように空気を吹き付ける空気噴射ノズルを備え、更に、上記乾燥処理領域及び上記空気噴射ノズルを覆う吸引カバーと、該吸引カバー内を、上記空気噴射ノズルより噴射する空気の量よりも多い流量で吸引する排気装置を備えてなる構成を有するロールブランケット乾燥装置とする。
【0015】
又、上記構成において、空気噴射ノズルよりブランケットの乾燥処理領域に吹き付ける空気を加熱して温風とするためのヒータを備え、更に、空気噴射ノズルより乾燥処理領域に向けて吹き付ける空気によってブランケットに吸収されていた印刷インクの溶媒が気化するときに気化熱として該ブランケットより奪われる熱量に、上記温風として吹き付ける空気よりブランケットに与える熱量が一致するように、上記ヒータによる空気の加熱温度を制御する温度制御装置を備えるようにした構成とする。
【0016】
更に、上記各構成において、吸引カバー及び空気噴射ノズルを、ブランケットに対して近接、離反する方向へ移動させるための退避機構を備えるようにした構成とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明のロールブランケット乾燥装置によれば、以下のような優れた効果を発揮する。(1)ブランケットロールのブランケット外周面における周方向の1個所で上記ブランケットロールのロール軸心方向に沿って延びる直線状の乾燥処理領域に向けて、該ブランケットに吸収されている印刷インクの溶媒を搾り出すために該ブランケットの乾燥処理領域の表面を局所的に変形させるように空気を吹き付ける空気噴射ノズルを備え、更に、上記乾燥処理領域及び上記空気噴射ノズルを覆う吸引カバーと、該吸引カバー内を、上記空気噴射ノズルより噴射する空気の量よりも多い流量で吸引する排気装置を備えてなる構成としてあるので、上記ブランケットを、空気噴射ノズルより吹き付ける空気によって局所的に押し潰すように変形させて、該ブランケットに吸収されている印刷インクの溶媒を積極的に搾り出すようにしながら、搾り出された上記溶媒を直ちに除去することができる。このため、ブランケットに吸収された印刷インクの溶媒を乾燥させることができる。更に、上記ブランケットにおける乾燥処理領域に配置される部分では、その外周面近傍に、印刷インクの溶媒の蒸気濃度が低い空気の流れを常に存在させることができるため、該印刷インクの溶媒のブランケットの表面からの蒸発を促進させることができる。よって、ブランケットに大きな温度変化を与える必要なしに、該ブランケットを効率よく乾燥させることができる。
(2)更に、オフセット印刷装置におけるオフセット印刷処理を実施する際に、上記ブランケットが印刷インクの溶媒によって膨潤する虞を抑制できるようになることから、上記オフセット印刷処理の連続性を向上させることが可能になる。又、ブランケットに許容以上の膨潤が生じる場合の問題を回避できるため、高い印刷精度が要求されるオフセット印刷装置での高精度の印刷処理の実施に有利なものとすることができる。
(3)しかも、上記ブランケットより分離あるいは気化させた印刷インクの溶媒は、吸引カバーより排気装置へ回収できるため、周辺環境が悪化する虞を未然に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明のロールブランケット乾燥装置の実施の一形態を示す概略切断側面図である。
【図2】図1のロールブランケット乾燥装置に退避機構を備えた状態の概要を示す図である。
【図3】図1のA−A方向矢視図である。
【図4】図1のロールブランケット乾燥装置により乾燥処理を行うブランケットの熱の出入りを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態を図面を参照して説明する。
【0020】
図1乃至図4は本発明のロールブランケット乾燥装置の実施の一形態を示すもので、以下のような構成としてある。
【0021】
すなわち、本発明のロールブランケット乾燥装置Iは、ブランケットロール1の外周部に設けてあるブランケット2の外周面の1個所に、上記ブランケットロール1のロール軸心方向(以下、単にロール軸心方向と云う)に沿って延びる直線状の乾燥処理領域Xを設定し、該乾燥処理領域Xに向けて乾燥用の空気4を吹き付けて、該吹き付ける空気4によって上記乾燥処理領域Xのブランケット2の表面を局所的に押し潰して該ブランケット2に吸収されている印刷インクの溶媒18を搾り出すように変形させるための空気噴射ノズル3を備える。
【0022】
更に、上記空気噴射ノズル3と上記ブランケット2における乾燥処理領域Xを覆う吸引カバー5と、該吸引カバー5に排気ダクト7を介して接続した外部の排気ブロワや排気ポンプのような排気装置6とを備えて、該排気装置6により、上記吸引カバー5の内部の空気4を、上記空気噴射ノズル3より噴射する空気4の量よりやや多い流量となるように吸引できるようにした構成とする。
【0023】
詳述すると、上記吸引カバー5は、上記ブランケットロール1の周方向に沿う方向と、ブランケットロール1の径方向に沿う方向にそれぞれ所要寸法を有して側面形状を略矩形状とすると共に、ロール軸心方向に沿う方向を長尺として上記ブランケット2のロール軸心方向の幅寸法よりも若干長い寸法の箱型として、上記ブランケット2に臨ませて配置する側となる底面側を開口部8とした構成としてある。
【0024】
更に、図3に示すように、上記吸引カバー5における開口部8の周縁に位置する4つの側壁9a,9b,9c,9dのうち、ブランケット2のロール軸心方向の幅方向両端部よりも外側となる位置に配置されるロール軸心方向に垂直な一対の側壁9aと9bは、その底部を、残る2つの側壁9c,9d、すなわち、ロール軸心方向と平行に延びる2つの側壁9c,9dの底端よりも上記ブランケット2の厚み寸法に対応する分、突出させると共に、該突出端部となる各側壁9a,9bの底端を、上記ブランケットロール1の外周面に沿う湾曲形状(円弧形状)としてある。
【0025】
これにより、上記吸引カバー5は、ブランケットロール1のブランケット2の外周面における周方向の1個所(図1ではブランケット2の外周面の右端部)に設定した乾燥処理領域Xの外側に、該吸引カバー5の開口部8を近接させて配置する際に、上記ブランケット2のロール軸心方向の幅方向両端部よりも外側に配置される一対の側壁9aと9bの底端を、上記ブランケットロール1の外周面に該ブランケットロール1の製作誤差による外周面位置のぶれを考慮した所定の隙間寸法、たとえば、0.1mm〜0.5mm程度の隙間寸法で近接させて配置すると共に、上記ロール軸心方向と平行に延びる各側壁9c,9dの底端を、上記ブランケット2の外周面に該ブランケット2の厚み寸法のぶれを考慮した所定の隙間寸法、たとえば、0.5mm〜1mm程度の隙間寸法で近接させて配置できるようにして、該吸引カバー5における4方の各側壁9a,9b,9c,9dの底端と、対応するブランケットロール1あるいはブランケット2の外周面との隙間を狭くすることで、上記ブランケット2の乾燥処理領域Xの外側に配置した上記吸引カバー5の内部と外部での空気の吹き抜けを抑制できるようにしてある。
【0026】
上記空気噴射ノズル3は、上記ブランケット2のロール軸心方向の幅寸法に対応したロール軸心方向の幅寸法を備えた扁平な矩形筒状としてある空気供給チャンバ10の一端側に、流路断面積を上記空気供給チャンバ10の流路断面積より徐々に減少させ且つその先端部に上記ブランケット2のロール軸心方向の幅寸法に対応してロール軸心方向に延びるスリット状の噴射口12を備えたノズル体11を、一体に取り付けた構成としてある。
【0027】
上記構成としてある空気噴射ノズル3は、上記吸引カバー5内で、上記ブランケット2の外周面の乾燥処理領域Xにおける法線方向の位置よりも上記ブランケット2の乾燥処理を行う際のブランケットロール1の回転方向(矢印r方向、以下単にロール回転方向と云う)の下流側に寄った位置に、該空気噴射ノズル3より噴射する空気4の進行方向が、上記ブランケット2の乾燥処理領域Xに向くようにした姿勢で配置して、上記吸引カバー5におけるロール回転方向の下流側に位置する側壁9dに、取付部材13を介して取り付けてある。これにより、上記ブランケットロール1の回転に伴われてブランケット2がロール回転方向に移動するときに、該ブランケット2における上記乾燥処理領域Xに順次位置するようになる部分に対して、上記空気噴射ノズル3より噴射する空気4が、斜め方向からの対向流として吹き付けられるようにしてある。空気噴射ノズル3を上記のような配置としたのは、該空気噴射ノズル3より噴射する空気4が上記ブランケット2の乾燥処理領域Xに吹き付けられた後に流れる方向が、該乾燥処理領域Xよりもロール回転方向(矢印r方向)の上流側に向くようにして、後述するように、上記空気噴射ノズル3より噴射させる空気4によって上記ブランケット2の乾燥処理領域Xに位置する部分から吹き飛ばされる印刷インクの溶媒18の液滴や蒸気、あるいは、その他のごみ19が、上記吸引カバー5内で、ブランケット2における上記乾燥処理領域Xを通過した後の部分に再付着する虞を抑制できるようにするためである。
【0028】
更に、上記空気噴射ノズル3における空気供給チャンバ10の他端側に設けた空気入口14には、上記吸引カバー5を内外方向に貫通させて配置した空気入口管15の一端部が接続してある。上記空気入口管15における吸引カバー5の外部に位置する他端部には、給気ブロワや給気ポンプ等の空気供給装置16を備えた空気供給ライン17が接続してある。
【0029】
これにより、上記空気供給装置16を運転して、該空気供給装置16より空気供給ライン17を通して導かれる空気4が、空気入口管15を経て上記空気噴射ノズル3の空気入口14より空気供給チャンバ10へ供給されると、該空気供給チャンバ10の下流側に設けてあるノズル体11の部分で流路断面積が絞られて空気4の流通抵抗が高まるようにしてあることに伴って、該空気供給チャンバ10内で、上記空気入口14より流入した空気4の流れを、ロール軸方向へ一様に分散させることができるようにしてあり、このロール軸方向へ分散された空気4を、上記空気供給チャンバ10の流路断面積に比して流路断面積が小さくなるようにしてある上記ノズル体11のスリット状の噴射口12より、気流速度を増速させた状態で且つ該噴射口12の全幅より均等な流量で、上記ブランケット2の乾燥処理領域Xのロール軸方向に沿う方向の全域に向けて噴き出すことができるようにしてある。
【0030】
上記空気噴射ノズル3より、上記ブランケット2の乾燥処理領域Xに対して該ブランケット2に吸収されている印刷インクの溶媒18を搾り出すために該乾燥処理領域Xにおけるブランケット2の表面を局所的に押し潰して変形させるように吹き付ける空気4の気流速度は、たとえば、130〜170m/s、より好ましくは150m/sに設定するようにする。これにより、上記空気噴射ノズル3より130〜170m/sという高速の気流で空気4が吹き付けられる上記ブランケット2における乾燥処理領域Xに位置する部分に、上記吹き付けられる空気4の圧力によって図1に二点鎖線で示す如き局所的に押し潰されるような変形を生じさせることができるようにして、該ブランケット2に吸収されている印刷インクの溶媒18を、上記ブランケット2が押し潰されるように変形した部分で搾り出させるようにし、このブランケット2より搾り出された印刷インクの溶媒18を、上記空気噴射ノズル3より連続的に吹き付けている空気4の気流によって直ちにブランケット2の表面より吹き飛ばして除去できるようにしてある。
【0031】
この際、上記空気噴射ノズル3より130〜170m/sという気流速度で空気4が吹き付けられることにより上記ブランケット2が押し潰されるように変形するときの変形量は、オフセット印刷処理時に上記ブランケット2を版や印刷対象に対して所定の印圧で押し付ける際に該ブランケット2に生じる変形の変形量以下であるため、特に問題を生じることはない。
【0032】
なお、上記空気噴射ノズル3よりブランケット2の乾燥処理領域Xに対して吹き付ける空気4の気流速度を170m/s以下に設定したのは、上記乾燥処理領域Xに対して吹き付ける空気4の気流速度が170m/sを超えると、この吹き付ける空気4の圧力によって上記ブランケット2の乾燥処理領域Xに生じさせる局所変形が、該ブランケット2に吸収されている印刷インクの溶媒を搾り出すという効果を得るために所望されるブランケット2の変形量に比して過大になり、このために、上記空気4の気流速度を高めるために消費されるエネルギーに無駄が生じると共に、上記ブランケット2に局所的に大きな圧力が加えられることに伴って、該ブランケット2に損傷が生じる虞も懸念されるようになるためである。
【0033】
一方、上記空気噴射ノズル3より上記ブランケット2の乾燥処理領域Xに対して吹き付ける空気4の気流速度を130m/s以上に設定したのは、上記乾燥処理領域Xに対して吹き付ける空気4の気流速度が130m/s未満である場合は、この吹き付ける空気4の圧力によって上記ブランケット2の乾燥処理領域Xに生じる局所変形が、該ブランケット2に吸収されている印刷インクの溶媒18を搾り出すという効果を得るために所望されるブランケット2の最小の変形量に比して、不十分になるためである。
【0034】
上記吸引カバー5における上記ブランケット2より離反する側の端部(頂部)には、たとえば、その中央付近に空気回収口20を設けて、該空気回収口20に、上記排気装置6が排気ダクト7を介して接続してある。
【0035】
これにより、上記空気供給装置16を運転して空気噴射ノズル3より上記ブランケット2の乾燥処理領域Xに対し上記所定の気流速度で乾燥用の空気4の吹き付けを行うときには、上記排気装置6も同時に運転するようにすることにより、該排気装置6によって上記吸引カバー5の内部の空気4を、上記空気噴射ノズル3より噴射する空気4の量よりやや多い流量で吸引するようにして、上記吸引カバー5の内部を、該吸引カバー5の外部(周囲)よりも減圧できるようにしてある。
【0036】
したがって、上記ブランケット2の乾燥処理領域Xに対して上記空気噴射ノズル3より上記所定の気流速度で空気4を吹き付けると、前述したように、該領域Xに位置する部分のブランケット2に吸収されていた印刷インクの溶媒18が搾り出されると共に、この搾り出された溶媒18が上記空気4の気流によって順次吹き飛ばされるようになり、更には、上記ブランケット2の表面に付着していた印刷インクの残留物や塵等のその他のごみ19も上記空気4の吹き付けに伴ってブランケット2の表面より脱離して吹き飛ばされるようになるが、この際、吸引カバー5内の空気4は上記排気装置6によって吸引されていると共に、吸引カバー5内はその外部に比して減圧されているため、上記印刷インクの溶媒18の液滴や蒸気、及び、上記ブランケット2の表面より脱離したその他のごみ19が含まれるようになる上記吸引カバー5内の空気4は、該吸引カバー5の外部へ漏らすことなく上記排気装置6へ吸引させて回収することができるようにしてある。よって、上記印刷インクの溶媒18の液滴や蒸気、及び、その他のごみ19を含んだ空気4が上記吸引カバー5の外部に漏れ出ることで本発明のロールブランケット乾燥装置Iの周辺環境が悪化する虞を未然に防止することができるようにしてある。
【0037】
ところで、上記空気噴射ノズル3より上記ブランケット2の乾燥処理領域Xに対し空気4の吹き付けを行って、該領域Xに位置する部分のブランケット2に吸収されていた印刷インクの溶媒18の搾り出しと、この搾り出された溶媒18の上記空気4の気流による吹き飛ばしを行うときに、該溶媒18の気化(蒸発)が生じると、この溶媒18の気化熱によって上記ブランケット2の熱が奪われて該ブランケット2に温度低下が生じるが、このような温度の変化は、該ブランケット2の熱膨張係数に応じた寸法の変化に繋がる。そのため、上記ブランケット2に対する印刷インクの溶媒18の乾燥処理を行った後に高い印刷精度が要求されるオフセット印刷を再開するときに、上記のようなブランケット2の温度変化が生じていると、印刷精度の低下に繋がる虞が懸念される。
【0038】
そこで、本発明では、ブランケットロール1をロール回転方向(矢印r方向)に回転させながら上記ブランケット2における乾燥処理領域Xに位置する部分についての印刷インクの溶媒18の乾燥処理を行うときに、上記ブランケット2における上記乾燥処理領域Xを通過した乾燥処理済みの部分の温度が、該乾燥処理が行われる以前の部分の温度と一致するようにするために、上記ブランケット2に対して空気噴射ノズル3より吹き付ける空気4を温風とすることにより、上記乾燥処理領域Xにて印刷インクの溶媒18を乾燥させる際の気化熱としてブランケット2より奪われる熱に相当する熱を、上記温風とした空気4から上記ブランケット2へ与えることができるようにしてある。
【0039】
ここで、上記ブランケット2で生じる熱の変化について考えると、先ず、前提として、たとえば、上記ブランケット2が、室温が20〜23℃程度に維持されている図示しないクリーンルーム内にあるとすると、図4に示すように、該ブランケット2に吸収されていた上記印刷インクの溶媒18が気化するときには、該溶媒18に固有の気化熱αと、該溶媒18の気化する量mとの積の熱量ΔU(ΔU=α×m)が、該ブランケット2より奪われる。
【0040】
一方、上記吸引カバー5内でブランケット2に対して空気噴射ノズル3より空気4を吹き付けるときに、該空気4の温度THiの温風とすると共に、その流量をV(m/s)とし、更に、上記吸引カバー5の空気回収口20より排気ダクト7側へ排出される空気4の温度がTHoとなっているときに、上記供給側の空気温度THiと排気側の空気温度THoとの温度差、及び、空気4の流量V(m/s)とから算出される上記ブランケット2へ与えられる熱量がΔUINである場合、ΔUIN=ΔUとなるようにすれば、上記ブランケット2に上記印刷インクの溶媒18の乾燥処理の前後で温度変化が生じないことになる。しかし、現実的には、気化する上記溶媒18の量を検出することは困難である。
【0041】
以上の点に鑑みて、本発明では、上記ブランケット2に上記印刷インクの溶媒18の乾燥処理の前後で温度変化が生じないようにするために、図2に示すように、上記吸引カバー5におけるロール回転方向(矢印r方向)の上流側に位置する側壁9cの外側に、上記ロール回転方向に移動するブランケット2における上記吸引カバー5の設置個所に達する以前の部分、すなわち、上記ブランケット2における印刷インクの溶媒18の乾燥処理前の部分の温度を検出するための赤外放射温度計等の非接触式の温度検出器である乾燥処理前温度検出器21を、ブラケット22を介して取り付ける。
【0042】
又、上記吸引カバー5におけるロール回転方向の下流側に位置する側壁9dの外側に、上記ロール回転方向に移動するブランケット2における上記吸引カバー5の設置個所を通過した部分、すなわち、上記吸入カバー5内での印刷インクの溶媒18の乾燥処理を受けた後の部分の温度を検出するための上記乾燥処理前温度検出器21と同様の非接触式の温度検出器である乾燥処理後温度検出器23を、ブラケット24を介して取り付ける。
【0043】
上記空気供給ライン17における途中個所には、空気供給装置16の運転により該空気供給ライン17を通して上記空気噴射ノズル3へ供給させる空気4を加熱(昇温)するためのヒータ等の空気加熱装置25を設けると共に、該空気供給ライン17における上記空気加熱装置25の設置個所よりも下流側となる位置に、空気供給温度検出器26を設ける。
【0044】
更に、上記、乾燥処理前と処理後の各温度検出器21と23よりそれぞれ入力される信号と、上記空気供給温度検出器26より入力される信号を基に、上記加熱装置25へ温度制御指令を与えるための温度制御装置27を備えた構成としてある。
【0045】
上記温度制御装置27は、上記乾燥処理前温度検出器21より入力される上記ブランケット2における乾燥処理前の部分の温度に対し、上記乾燥処理後温度検出器23より入力される上記ブランケット2における乾燥処理後の部分の温度の低下分がゼロになるように、上記ヒータ25へ、空気供給温度検出器26で検出される空気4の温度、すなわち、上記空気供給ライン17を通して空気噴射ノズル3へ供給して該空気噴射ノズル3よりブランケット2の乾燥処理領域Xに向けて吹き付ける空気4の温度を加熱(昇温)させるための制御指令を与えるようにしてある。
【0046】
なお、上記該空気噴射ノズル3よりブランケット2の乾燥処理領域Xに向けて吹き付ける空気4の温度は、ブランケット2の温度変化による性状や耐久性(寿命)への影響を抑えるという観点から考えると、高くても50〜70℃程度になるようにすることが望ましい。
【0047】
以上により、上記ブランケット2は、上記乾燥処理領域Xでの乾燥処理の前後での温度変化が抑えられるようになる。このため、該ブランケット2の寿命を延ばす効果が期待できるようにしてあると共に、オフセット印刷処理を速やかに再開することが可能になるようにしてある。
【0048】
なお、オフセット印刷装置におけるブランケット2をブランケットロール1の外周に取り付けるときの取付形式によっては、ブランケット2の取り付けに用いる取付具(図示せず)が、該ブランケット2の外周面よりも外側へ突出する場合がある。そのため、このようなブランケット2の外周面より突出する取付具を採用する場合は、上記空気噴射ノズル3や上記吸引カバー5を、上記ブランケットロール1の回転に伴われて上記ブランケット2の外周面より突出する取付具が回転移動しても干渉が生じることのない位置まで、上記ブランケット2より離反する方向へ退避させるための退避機構を備えるようにすればよい。
【0049】
この種の退避機構は、たとえば、図2に符号28で示すように、ブランケットロール1のホルダ1aにおける上記ブランケット2の外周面の乾燥処理領域Xの外側に配置してある上記吸引カバー5よりも上方となる位置に、水平方向に延びる支持部材29を取り付け、該支持部材29の下面側に、上記ブランケット2の外周面の乾燥処理領域Xにおける法線方向に沿って延びるガイドレール30を設置し、該ガイドレール30に、上記吸引カバー5におけるブランケット2より離反する側の端部に取り付けた接続部材31を、ガイドブロック32を介してスライド可能に取り付ける。
【0050】
更に、上記支持部材29に、上記吸引カバー5よりブランケット2から離反する方向に或る間隔を隔てて配置した反力受け部材33を固定すると共に、該反力受け部材33と上記吸引カバー5との間に、上記ガイドレール30の長手方向に沿う方向に伸縮作動するシリンダ34を介装させて取り付けた構成としてある。これにより、上記シリンダ34を伸長作動させることで、上記ガイドレール30に沿って移動するガイドブロック32と共に、上記接続部材31を介して上記吸引カバー5及び該吸引カバー5に取り付けてある上記空気噴射ノズル3を、上記ブランケット2に近接させる方向へ移動させることができるようにしてある。
【0051】
一方、上記シリンダ34を収縮作動させることにより、上記とは逆に吸引カバー5と空気噴射ノズル3とを上記ブランケット2より離反する方向へ移動させることができるようにしてあり、このブランケット2より離反する方向へ移動させた上記吸引カバー5の位置が、上述したブランケット2の外周面より突出する取付具の回転移動軌跡よりも外側となるように設定してあるものとする。
【0052】
以上の構成としてある本発明のロールブランケット乾燥装置Iを使用する場合は、図示しないクリーンルームに設置されたオフセット印刷装置について、オフセット印刷処理における版(図示せず)よりブランケットロール1のブランケット2の表面への印刷パターンの転写(受理)処理と、該ブランケットロール1のブランケット2の表面から基板等の印刷対象(図示せず)への再転写(印刷)処理の印刷サイクルを終了した後、次の印刷サイクルに入るまでの間に、上記ブランケットロール1を図1、図2における矢印rで示すロール回転方向へ或る一定の速度で回転させた状態で、空気供給装置16と、排気装置6を運転する。
【0053】
これにより、上記空気供給装置16より空気供給ライン17を通して空気噴射ノズル3に供給された空気4が、該空気噴射ノズル3より前述した所定の気流速度で、上記ブランケット2の外周面における乾燥処理領域Xに配置されている部分に対して吹き付けられ、該吹き付けられる空気4の圧力により、上記ブランケット2の乾燥処理領域Xに配置された部分が局所的に押し潰されるように変形させられることに伴って、該ブランケット2の変形部分では、上記オフセット印刷処理の間にブランケット2に吸収されていた印刷インクの溶媒18が搾り出されると共に、該搾り出された溶媒18が上記ブランケット2に吹き付けられている空気4の流れによって直ちに液滴のまま、あるいは、気化された状態で吹き飛ばされるようになる。
【0054】
更に、上記ブランケット2における上記乾燥処理領域Xに配置される部分では、その外周面に対し、上記空気噴射ノズル3より噴射される空気4、すなわち、上記印刷インクの溶媒18の蒸気濃度(蒸気圧)が低い空気4が常に吹き付けられるようになることから、該印刷インクの溶媒18のブランケット2の表面からの気化(蒸発)も促進させられるようになる。
【0055】
上記ブランケット2より吹き飛ばされた印刷インクの溶媒18の液滴や蒸気は、上記空気4の吹き付けに伴ってブランケット2の表面より脱離した印刷インクの残留物や塵等のその他のごみ19と一緒に、上記吸引カバー5より排気ダクト7を通して排気装置6に吸引されて回収されるようになる。
【0056】
よって、上記ブランケット2は、ロール回転方向に回転移動するときに、上記乾燥処理領域に配置される部分について、順次吸収されていた印刷インクの溶媒18の該ブランケット2からの分離と回収が行われるようになることから、該ブランケット2は、その全面に亘り上記印刷インクの溶媒18の乾燥処理が行われるようになる。
【0057】
なお、上記ブランケット2における乾燥処理領域Xを通過した部分は、上記吹き付けられていた空気4の圧力が作用しなくなることに伴って、該ブランケット2自身の有する弾性により元の厚み寸法に復帰するようになる。このため、印刷インクの溶媒18の乾燥処理を行った後のブランケット2を用いてオフセット印刷処理を再開するのに何ら問題が生じることはない。
【0058】
このように、本発明のロールブランケット乾燥装置Iによれば、オフセット印刷処理の実施に伴ってブランケット2に吸収されるようになる印刷インクの溶媒18を乾燥させることができ、この乾燥処理の際には、上記ブランケット2を空気噴射ノズル3より吹き付ける空気4の圧力によって局所的に押し潰すように変形させて、該ブランケット2に吸収されている印刷インクの溶媒18を積極的に搾り出すようにしながら、搾り出された上記溶媒18を直ちに除去することができるため、ブランケット2に大きな温度変化を与える必要なしに、該ブランケット2を効率よく乾燥させることができる。
【0059】
したがって、オフセット印刷装置におけるオフセット印刷処理を実施する際に、上記ブランケット2が印刷インクの溶媒18によって膨潤する虞を抑制できるようになることから、上記オフセット印刷処理の連続性を向上させることが可能になる。又、ブランケット2に許容以上の膨潤が生じる場合の種々の問題を回避できるため、高い印刷精度が要求されるオフセット印刷装置での高精度の印刷処理の実施に有利なものとすることができる。
【0060】
更に、上記ブランケット2より分離あるいは気化させた印刷インクの溶媒18は、吸引カバー5より排気装置6へ回収できるため、本発明のロールブランケット乾燥装置Iの周辺環境が悪化する虞を未然に防止することができる。
【0061】
更に、上記吸引カバー5及び空気噴射ノズル3をブランケット2に対して近接、離反させる方向へ移動させるための退避機構28を備えるようにしてあるため、ブランケットロール1の外周部に対するブランケット2の取り付けを、該ブランケット2の外周面より外側に突出する取付具を用いて行う形式のブランケットロール1を備えたオフセット印刷装置にも容易に適用することができる。
【0062】
なお、本発明は上記実施の形態のみに限定されるものではなく、上記吸引カバー5の内側に、上記ブランケット2における乾燥処理領域Xの外周面部に向けて超音波を照射する超音波照射手段を備えた構成としてもよい。このようにすれば、空気噴射ノズル3より吹き付ける空気4の圧力によりブランケット2を変形させて該ブランケット2より印刷インクの溶媒18を搾り出させるときに、該搾り出された印刷インクの溶媒18を、上記超音波照射手段より照射する超音波によって霧化させて、上記空気噴射ノズル3より吹き付ける空気4の流れによって容易に吹き飛ばすことが可能になるため、上記ブランケット2における印刷インクの溶媒18の乾燥効率を高める効果が期待できる。
【0063】
又、上記空気4を温風としてブランケット2に対して吹き付けるようにしてある空気噴射ノズル3を装備した上記吸引カバー5を、ブランケット2の周方向に沿って複数設けるようにしてもよい。このようにすれば、空気噴射ノズル3より吹き付ける空気4の圧力による上記ブランケット2を局部的に押し潰すように変形させて印刷インクの溶媒18を搾り出す処理を、多段に行うことができて、上記ブランケット2における印刷インクの溶媒18の乾燥効率を高める効果が期待できる。
【0064】
なお、上記のように空気噴射ノズル3を装備した上記吸引カバー5を、ブランケット2の周方向に沿って複数設ける場合に、ロール回転方向の最も下流側に位置する空気噴射ノズル3を、空気4を冷風としてブランケット2に吹き付けるものとしてもよい。このようにすれば、ロール回転方向の上流側に位置する吸引カバー5内で空気噴射ノズル3より空気4を温風としてブランケット2に対し吹き付けることで温度上昇するブランケット2の温度を、ロール回転方向下流側に設けてある吸引カバー5内で空気噴射ノズル3より冷風として吹き付ける空気4により速やかに冷却することができるようになる。このため、ロール回転方向の上流側に位置する吸引カバー5内で上記空気噴射ノズル3より温風として空気4を吹き付けるときには、ブランケット2をより積極的に温度上昇させて、該ブランケット2に吸収されている印刷インクの溶媒18の気化を促すことができるようになるため、該ブランケット2の乾燥効率を高める効果が期待できる。
【0065】
吸引カバー5は、空気噴射ノズル3と、該空気噴射ノズル3より空気4が吹き付けられるブランケット2の乾燥処理領域Xを覆うことができるようにしてあれば、側面形状を適宜変更してもよい。
【0066】
吸引カバー5の各側壁9a,9b,9c,9dの端面と、ブランケットロール1やブランケット2の外周面の対応する個所との隙間は、ブランケットロール1やブランケット2の製作精度による回転時の外周面のぶれを考慮して適宜変更してもよい。
【0067】
吸引カバー5とその内側に取り付けた空気噴射ノズル3をブランケット2の外周面に対して近接、離反する方向へ移動させることができるようにしてあれば、退避機構28は、図1に示した以外のいかなる構成や駆動形式のものを採用してもよい。
【0068】
更に、ブランケットロール1にブランケット2を取り付ける手法として、該ブランケット2の外周面よりも外側に突出することのない取付手法を採用している場合は、上記退避機構28を省略した構成としてもよい。
【0069】
温度制御装置27に、ブランケット2に吸収されていた印刷インクの溶媒18の気化熱としてブランケット2より奪われる熱を、温風として供給する空気4よりブランケット2へ与える熱量で補償させる際に空気供給装置16へ指令を与えて、空気噴射ノズル3より噴射させる上記空気4の気流速度を130〜170m/sの範囲内で調整できるようにした機能を備えるようにしてもよい。
【0070】
オフセット印刷装置におけるブランケットロール1の周辺に設ける機器と上記吸引カバー5との干渉を避けることができるようにしてあれば、本発明のロールブランケット乾燥装置Iの配置は、ブランケット2の周方向の側部以外のいかなる個所としてもよい。
【0071】
図1乃至図3に示したブランケット2の厚み寸法や、図1に示した空気噴射ノズル3より吹き付ける空気4によってブランケット2に生じる変形の大きさは、図示するための便宜的なサイズである。又、本発明のロールブランケット乾燥装置Iの各構成要素の寸法も、図示するための便宜的なサイズであって、実際の寸法を反映したものではない。
【0072】
その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0073】
1 ブランケットロール
2 ブランケット
3 空気噴射ノズル
4 空気
5 吸引カバー
6 排気装置
25 ヒータ
27 温度制御装置
28 退避機構
X 乾燥処理領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブランケットロールのブランケット外周面における周方向の1個所で上記ブランケットロールのロール軸心方向に沿って延びる直線状の乾燥処理領域に向けて、該ブランケットに吸収されている印刷インクの溶媒を搾り出すために該ブランケットの乾燥処理領域の表面を局所的に変形させるように空気を吹き付ける空気噴射ノズルを備え、更に、上記乾燥処理領域及び上記空気噴射ノズルを覆う吸引カバーと、該吸引カバー内を、上記空気噴射ノズルより噴射する空気の量よりも多い流量で吸引する排気装置を備えてなる構成を有することを特徴とするロールブランケット乾燥装置。
【請求項2】
空気噴射ノズルよりブランケットの乾燥処理領域に吹き付ける空気を加熱して温風とするためのヒータを備え、更に、空気噴射ノズルより乾燥処理領域に向けて吹き付ける空気によってブランケットに吸収されていた印刷インクの溶媒が気化するときに気化熱として該ブランケットより奪われる熱量に、上記温風として吹き付ける空気よりブランケットに与える熱量が一致するように、上記ヒータによる空気の加熱温度を制御する温度制御装置を備えるようにした請求項1記載のロールブランケット乾燥装置。
【請求項3】
吸引カバー及び空気噴射ノズルを、ブランケットに対して近接、離反する方向へ移動させるための退避機構を備えるようにした請求項1又は2記載のロールブランケット乾燥装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−143988(P2012−143988A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−4946(P2011−4946)
【出願日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】