説明

ワイパブレード

【課題】払拭面へ洗浄液を供給する手段を備えたワイパブレードにおいて、長手方向において払拭面に供給する洗浄液の液量差を小さくし、洗浄液を効率よく利用可能とする。
【解決手段】ワイパブレード13に用いられるカバー部材16(センターカバー部31)の内側には、ウォッシャポンプによって圧送される洗浄液を噴射孔35a,36aから噴射して払拭面に供給する供給パイプ18が備えられる。供給パイプ18に対し長手方向に複数配設される噴射孔35a,36aは、その噴射方向がカバー部31の内側面に向けられる。そして、噴射孔35a,36aから噴射された洗浄液がカバー部31の内側面に当たって噴射孔35a,36a毎の洗浄液が長手方向に拡散し、カバー部31の下端部から長手方向に一様に広がった状態で滴り落ちて払拭面に供給される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、払拭面へ洗浄液を供給する手段を備えたワイパブレードに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ウインドガラスに付着した汚れをワイパブレードにて払拭する際、ウォッシャ装置の作動によりガラス払拭面に洗浄液が供給されるようになっている。このような洗浄液の供給は払拭面全体に均等にすることが要求されており、この要求に対処する技術が例えば特許文献1にて開示されている。
【0003】
特許文献1では、ワイパブレードを構成するプライマリレバー内に液供給管が設けられており、該液供給管の長手方向には多数の噴射孔が設けられている。このプライマリレバー内の液供給管には、その長手方向中央部にてワイパアーム内に設けられる液供給路と接続されており、該ワイパアーム内の液供給路を通じて車体側のウォッシャポンプから洗浄液が供給される。これにより、液供給管に供給された洗浄液は、多数の噴射孔からワイパブレードの長手方向に分配されて払拭面に対して吹き付けられるようになっている。
【特許文献1】登録実用新案第3008142号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の構成では、液供給管の各噴射孔から払拭面に向けて洗浄液がそれぞれ噴射されて供給されるので、払拭面には洗浄液の着水点(着水領域)がワイパブレードの長手方向に点在する。つまり、長手方向において払拭面に供給する洗浄液の液量差が大きくなるため、洗浄液を効率よく利用することができないという問題があった。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、払拭面へ洗浄液を供給する手段を備えたワイパブレードにおいて、長手方向において払拭面に供給する洗浄液の液量差を小さくし、洗浄液を効率よく利用可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、払拭面を払拭するための長尺状のブレードラバーと、ワイパアームの先端部と連結するための連結部を有し、前記ブレードラバーを保持する保持部材と、前記保持部材を内側に収容し前記保持部材を覆うカバー部材と、前記カバー部材内に前記ブレードラバーの長手方向に沿って設けられ、ポンプ装置によって圧送される洗浄液を噴射孔から噴射して前記払拭面に供給する供給パイプと、を備えたワイパブレードであって、前記カバー部材は、前記ブレードラバーの長手方向に形成されるとともにその下端部が前記払拭面方向に向けて延出される延出部を有しており、前記供給パイプの前記噴射孔は、前記ブレードラバーの長手方向に間隔をおいて複数配設されるとともに、前記洗浄液の噴射方向が前記延出部の内側面に向けて設定され、前記噴射孔から噴射された前記洗浄液を前記延出部の内側面に当てて長手方向に拡散するように構成されることをその要旨とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のワイパブレードにおいて、前記延出部は、前記カバー部材の外壁部を兼ねていることをその要旨とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のワイパブレードにおいて、前記保持部材は、前記ワイパアームの先端部と連結するプライマリレバーに階層的に複数のレバーが連結されたレバーアッセンブリであることをその要旨とする。
【0008】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載のワイパブレードにおいて、前記カバー部材は、前記供給パイプを着脱可能に保持するパイプ保持部を有することをその要旨とする。
【0009】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載のワイパブレードにおいて、前記カバー部材は、樹脂材料よりなり、前記供給パイプを一体形成してなることをその要旨とする。
【0010】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載のワイパブレードにおいて、前記供給パイプは、噴射孔から前記洗浄液を長手方向に扁平とした拡散流として噴射する噴射ノズルを有することをその要旨とする。
【0011】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載のワイパブレードにおいて、前記噴射ノズルは、前記洗浄液の拡散方向を変更すべく前記供給パイプに対して可動可能に取り付けられることをその要旨とする。
【0012】
請求項8に記載の発明は、請求項1〜7のいずれか1項に記載のワイパブレードにおいて、前記カバー部材は、長手方向と直交する横断面形状において、車両走行時に生じる走行風を受けると前記ブレードラバーを前記払拭面側に押圧する押圧力を生成するフィン部をその一方側に設け、他方側に前記洗浄液が噴射される前記延出部を設けることをその要旨とする。
【0013】
(作用)
請求項1に記載の発明によれば、ブレードラバーの保持のための保持部材を覆うカバー部材の内側には、ポンプ装置によって圧送される洗浄液を噴射孔から噴射して払拭面に供給する供給パイプが備えられており、該供給パイプに対し長手方向に複数配設される噴射孔は、その噴射方向がカバー部材において下端部が払拭面方向に延出される延出部の内側面に向けられる。そして、噴射孔から噴射された洗浄液がカバー部材の延出部の内側面に当たって噴射孔毎の洗浄液が長手方向に拡散し、延出部の下端部から長手方向に広がった状態で滴り落ちて払拭面に供給される。これにより、長手方向において払拭面に供給する洗浄液の液量差を小さくでき、また長手方向に一様となるように洗浄液の供給が可能となるため、洗浄液を効率よく利用可能となる。しかも、少ない噴射孔で対応可能である。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、洗浄液が噴射されるカバー部材の延出部は、そのカバー部材の外壁部を兼ねている。そのため、外壁部とは別に延出部を設ける場合と比べて、カバー部材の小型化に貢献できる。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、保持部材は、ワイパアームの先端部と連結するプライマリレバーに階層的に複数のレバーが連結されたレバーアッセンブリである。複数のレバーが階層的に連結されるレバーアッセンブリをカバー部材で覆うことは、特に外観デザイン向上だけでなくレバーアッセンブリ間を通過する走行風による風切り音発生抑止効果を奏する。
【0016】
請求項4に記載の発明によれば、カバー部材には、供給パイプを着脱可能に保持するパイプ保持部が設けられる。従って、カバー部材に対する供給パイプの着脱が容易であり、供給パイプのメンテナンス等も容易である。
【0017】
請求項5に記載の発明によれば、カバー部材は樹脂材料よりなり、供給パイプが一体形成されてなる。これにより、ワイパブレードの部品数が少なくて済む。
請求項6に記載の発明によれば、供給パイプには、噴射孔から洗浄液を長手方向に扁平とした拡散流として噴射する噴射ノズルが設けられる。これにより、噴射孔から噴射された洗浄液がカバー部材の延出部の内側面に当たるまでの間、より長手方向に広く広がるために、より少ない噴射孔で少量の洗浄液を効率よく長手方向に分散して払拭面に供給可能となる。
【0018】
請求項7に記載の発明によれば、噴射ノズルは、洗浄液の拡散方向を変更すべく供給パイプに対して可動可能に取り付けられる。これにより、噴射ノズルを可動させることで、洗浄液の長手方向の液量配分が調整可能となる。特に、長手方向外側に向けて洗浄液を拡散させるようにすれば、供給パイプを短くしても洗浄液を長手方向に分散でき、長尺のワイパブレード(ブレードラバー)へ対応できる。
【0019】
請求項8に記載の発明によれば、カバー部材には、長手方向と直交する横断面形状において、車両走行時に生じる走行風を受けるとブレードラバーを払拭面側に押圧する押圧力を生成するフィン部がその一方側に設けられ、他方側に洗浄液が噴射される延出部が設けられる。つまり、ワイパブレードの停止位置において洗浄液が噴射される延出部がブレードラバーよりも払拭開始時の進行方向側に配置される。従って、払拭を開始したブレードラバーの直前にて洗浄液の供給がなされるため、払拭面の迅速な汚れ落としが可能となり、該払拭面のドライ状態でのブレードラバーの摺接をも防止される。
【0020】
また、カバー部材のフィン部とは反対側に供給パイプを配置することで、フィン部側では押圧力を得るための斜面などで形状の規制を受けることから、カバー部材の無用な大型化を伴わない合理的な供給パイプの配置が可能である。
【発明の効果】
【0021】
従って、本発明によれば、ワイパブレードの長手方向において払拭面に供給する洗浄液の液量差を小さくし、洗浄液を効率よく利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明を具体化した一実施の形態を図面に従って説明する。
図1は、自動車のフロントガラス(ウインドシールドガラス)1の払拭面1aに付着した汚れや雨滴等を払拭する車両用ワイパ11を示す。
【0023】
車両用ワイパ11は、ワイパアーム12とワイパブレード13とから構成されている。ワイパアーム12は、基端部がワイパモータ(図示略)の駆動力にて所定角度で往復回動されるピボット軸(図示略)に固定され、該アーム12の先端部にはワイパブレード13が回動可能に連結される。尚、ワイパアーム12には、ワイパブレード13を払拭面1aに押圧するためのスプリング(図示略)が装着されている。そして、ピボット軸の往復回動に伴ってワイパアーム12が往復揺動運動を行うことにより、ワイパブレード13が払拭面1aの払拭動作を行うようになっている。
【0024】
ワイパブレード13は、図3に示すように、レバーアッセンブリ14と、ブレードラバー15と、カバー部材16と、連結部材17と、供給パイプ18とを備えている。
レバーアッセンブリ14は、それぞれ金属板材をプレス加工することにより形成される3つのレバー、即ちプライマリレバー21と、そのプライマリレバー21の長手方向両端部にそれぞれ回動可能に連結される2つのセカンダリレバー22とによりトーナメント状(階層的)に構成されている。
【0025】
プライマリレバー21は、長手方向中央部にホルダ部21aと、該ホルダ部21aの両側から長手方向に延びるアーム部21bとを有している。ホルダ部21aは、上部に開口部21cを有しており、該開口部21cからワイパアーム12の先端部が挿入される。また、ホルダ部21aには連結部材17が回動可能に装着されており、この連結部材17にワイパアーム12の先端部が開口部21cから装着されて連結される。アーム部21bは、長手方向から見て、払拭面1a側が開口した山折り形状(断面略U字状)に形成されている(図7参照)。
【0026】
セカンダリレバー22は、プライマリレバー21のアーム部21bと同様、長手方向から見て、払拭面1a側が開口した山折り形状(断面略U字状)に形成されている。セカンダリレバー22は、長手方向中央部がプライマリレバー21の両端部(各アーム部21bの先端)にそれぞれ回動可能に連結されている。各セカンダリレバー22の長手方向両端部には、ブレードラバー15を把持(保持)するための把持部22aがそれぞれ形成されている。把持部22aは、長手方向から見て、下方(払拭面1a側)が開口する略コ字状をなしており、更に開口端が互いに内側に延びて幅狭に形成されている。これら4つの把持部22aは、ゴム材にて長尺に形成され払拭面1aに接触して払拭するためのブレードラバー15を図2に示すように長手方向に所定間隔を以て把持する。因みに、ブレードラバー15には、把持部22aから受ける払拭面1a側への押圧力を長手方向に分散するためのバッキング19が該ラバー15の長手方向に沿って装着されている(図7参照)。
【0027】
カバー部材16は、図1〜図3に示すように、前記レバーアッセンブリ14を覆い、ブレードラバー15の両端部まで延びるように設けられる。カバー部材16は、それぞれ樹脂材料にて所定の剛性を有するように形成されるセンターカバー部31と、該センターカバー部31の両側に配置される2つのサイドカバー部32とから構成されている。
【0028】
センターカバー部31は、前記プライマリレバー21に装着され、該レバー21の略全体を覆う。センターカバー部31は、長手方向中央部にホルダ収容部31aと、該ホルダ収容部31aの両側から長手方向に延びるアーム収容部31bとを有している。ホルダ収容部31aは、プライマリレバー21のホルダ部21aを収容するとともに該ホルダ部21aに設けた開口部21cと対応した開口部31cを上部に有しており、該開口部31cからワイパアーム12の先端部が挿入される。アーム収容部31bは、長手方向から見て、払拭面1a側が開口した山折り形状(断面略U字状)に形成されている(図7参照)。
【0029】
サイドカバー部32は、その基端部がプライマリレバー21の両端部(アーム部21bの先端部)に対して回動可能に装着される。サイドカバー部32は、センターカバー部31のアーム収容部31bと同様、払拭面1a側が開口した長手方向から見て山折り形状(断面略U字状)に形成され、基端部から先端部に向かうほど頂部の高さが次第に低く形成されている。サイドカバー部32は、プライマリレバー21の両端から突出するセカンダリレバー22を覆うとともに、該セカンダリレバー22よりも更に端部側においては払拭面1aに追従すべくセカンダリレバー22の端部から所定長さだけ突出されたブレードラバー15の上部に配置される。サイドカバー部32の先端部には、ブレードラバー15の端部を把持(保持)すべく前記セカンダリレバー22の把持部22aと略同様な形状をなす把持部32aが形成されている。そして、サイドカバー部32は、各セカンダリレバー22の端部から長手方向に突出したブレードラバー15の撓みに追従するように、プライマリレバー21の両端部に装着される基端部を中心に回動するようになっている。
【0030】
また、センターカバー部31のアーム収容部31b及び各サイドカバー部32における車両前方側の外壁部には、車両走行時に生じる走行風を受けるとブレードラバー15を払拭面1a側に押圧する押圧力を生成するフィン部31d,32bがそれぞれ形成されている。また、フィン部31d,32bは、アーム収容部31b及びサイドカバー部32の長手方向全体に設けられている。
【0031】
また、図5及び図7に示すように、センターカバー部31のフィン部31dとは反対側(車両後方側)の外壁部31eの内側にはパイプ収容部31fが長手方向に沿って設けられ、該収容部31fには供給パイプ18が配設されている。
【0032】
供給パイプ18は、図3及び図4に示すように、所定の剛性を有する樹脂材料にて形成される一対のパイプ部材35,36と、該パイプ部材35,36と同材料若しくは異なる樹脂材料にて所定の剛性をなす三股ジョイント37とを備えている。
【0033】
三股ジョイント37は、各パイプ部材35,36間の接続やワイパアーム12から延びる車体側パイプ40との接続を図るべく3つのパイプを接続可能なジョイントであり、センターカバー部31(ホルダ収容部31a)の内側において開口部31cの近傍に配設される。三股ジョイント37は、車体側パイプ40との接続を図る円筒状の車体側連結部37aがホルダ収容部31aの車両前方側まで延出されており、図1及び図3に示すように、該ホルダ収容部31aの一側壁に設けられる切欠き部31gに挿入されて該切欠き部31gから外側に突出している。
【0034】
ここで、図1にて示すワイパアーム12には、その下面において、車体側に設けられるポンプ装置としてのウォッシャポンプ(図示略)から延びる車体側パイプ40が配設されている。車体側パイプ40は全体若しくは少なくとも先端部が弾性材料にて形成されており、該パイプ40の先端部が三股ジョイント37の車体側連結部37aに嵌められる。
【0035】
また、図4にて示す三股ジョイント37には、長手方向両側にそれぞれ向けられる円筒状の側方連結部37b,37cが形成されている。各側方連結部37b,37cには、各パイプ部材35,36の基端部が嵌められる。
【0036】
パイプ部材35,36は、それぞれ先端部が閉塞される長尺の円筒状をなしている。パイプ部材35は、三股ジョイント37の側方連結部37b,37cから長手方向両側に向けてそれぞれセンターカバー部31の長手方向端部まで延びるようにしてパイプ収容部31f内に配置される。この場合、パイプ収容部31f内には複数のパイプ保持爪31hが長手方向に並んで設けられており(図7にて1つのみ図示)、該保持爪31hにてパイプ部材35,36(供給パイプ18)が着脱可能に保持される。
【0037】
また、センターカバー部31のフィン部31dと反対側の外壁部31eはその下端部が払拭面1a方向に向けて延出されており、パイプ部材35,36は、その外壁部31eの内側面31iと対面する部位に多数の噴射孔35a,36aを有している。因みに、この内側面31iは、払拭面1aに対して略垂直となっている。各噴射孔35a,36aは、長手方向の同一直線上に所定間隔を以て配置され、センターカバー部31の内側面31iに向けて払拭面1aと平行な方向に洗浄液Wの噴射方向が設定されている。尚、三股ジョイント37にも、噴射孔35a,36aと同様な噴射孔37dを形成してもよい。そして、洗浄液Wをセンターカバー部31の内側面31iに当てて長手方向に拡散させ、カバー部31の下端部から洗浄液Wが長手方向に一様に広がった状態で払拭面1aに滴り落ちるようにしている。
【0038】
つまり、本実施の形態では、各噴射孔35a,36aの径やそれらの間隔、また各噴射孔35a,36aとセンターカバー部31の内側面31iとの距離、更には内側面31iの形状等が、カバー部31の下端部にて洗浄液Wが長手方向に一様となるように設定されている。こうして、洗浄液Wの噴射自体を長手方向に一様(連続)としなくとも、洗浄液Wをカバー部31の内側面31iに当てることで該洗浄液Wが長手方向に拡散するため、洗浄液Wは払拭面1aに対して比較的一様に供給される。
【0039】
このような構成の車両用ワイパ11において、その停止状態では、ワイパブレード13がフロントガラス1の下端に配置されている。つまり、カバー部材16のフィン部31d,32bはワイパブレード13の車両前方側に、供給パイプ18が配置されている側がワイパブレード13の車両後方側に位置している。
【0040】
そして、払拭面1aに洗浄液Wの必要が生じウォッシャポンプが作動されると、ウォッシャポンプにてタンクから汲み上げられた洗浄液Wが車体側パイプ40から供給パイプ18に圧送される。供給パイプ18内に洗浄液Wが圧送されると、供給パイプ18(パイプ部材35,36)の噴射孔35a,36aから洗浄液Wがセンターカバー部31の内側面31iに当たり、カバー部31(外壁部31e)の下端部から長手方向に一様に広がった状態で払拭面1aに滴り落ちる(図6及び図7参照)。こうして本実施の形態では、払拭面1aに対する洗浄液Wの供給が長手方向に一様となるようにしている。
【0041】
そして、ウォッシャポンプの作動に連動してワイパブレード13の払拭動作が開始される。このとき、ワイパブレード13が車両後方側、即ち払拭開始時におけるブレードラバー15の進行方向側にて洗浄液Wの吐出がなされるため、払拭面1aの迅速な汚れ落としができ、該払拭面1aのドライ状態でのブレードラバー15の摺接をも防止される。
【0042】
次に、本実施の形態の特徴的な作用効果を記載する。
(1)本実施の形態のワイパブレード13に用いられるカバー部材16(センターカバー部31)の内側には、ウォッシャポンプによって圧送される洗浄液Wを噴射孔35a,36aから噴射して払拭面1aに供給する供給パイプ18(パイプ部材35,36)が備えられている。供給パイプ18に対し長手方向に複数配設される噴射孔35a,36aは、その噴射方向がセンターカバー部31において下端部が払拭面方向に延出される車両後方側の外壁部31eの内側面31iに向けられる。そして、噴射孔35a,36aから噴射された洗浄液Wがカバー部31の内側面31iに当たって噴射孔35a,36a毎の洗浄液Wが長手方向に拡散し、カバー部31の下端部から長手方向に一様に広がった状態で滴り落ちて払拭面1aに供給される。これにより、長手方向に一様となるように洗浄液Wの供給が可能となり、長手方向において払拭面1aに供給する洗浄液Wの液量差を小さくできるため、洗浄液Wを効率よく利用することができる。しかも、少ない噴射孔35a,36aで対応することができる。また、噴射孔35a,36aからの噴射方向にバラツキがあっても、洗浄液Wを一旦内側面31iに当てて払拭面1aに滴り落として供給するので、噴射孔35a,36aの噴射方向を高精度に設定しなくても、洗浄液Wを適切に供給することができる。
【0043】
(2)カバー部31の外壁部31eの内側面31iに洗浄液Wを当てる構成としているので、外壁部31eとは別に洗浄液Wを当てる部位を設ける場合と比べて、カバー部31(カバー部材16)の小型化に貢献することができる。
【0044】
(3)カバー部材16は、複数のレバー21,22が階層的に連結されるレバーアッセンブリ14を覆う。そのため、ワイパブレード13の外観デザイン向上だけでなくレバーアッセンブリ14間を通過する走行風による風切り音発生抑止効果を奏する。また、カバー部材16にて供給パイプ18を紫外線等から保護することができ、供給パイプ18の早期劣化を防止することができる。
【0045】
(4)カバー部材16(センターカバー部31)には、供給パイプ18を着脱可能に保持するパイプ保持爪31hが設けられる。従って、カバー部31に対する供給パイプ18の着脱が容易であり、供給パイプ18のメンテナンス等も容易である。
【0046】
(5)カバー部材16を構成するセンターカバー部31及びサイドカバー部32には、長手方向と直交する横断面形状において、一方側にフィン部31d,32bが設けられている。センターカバー部31においては、そのフィン部31dとは反対側の外壁部31eに洗浄液Wが噴射されるように構成されている。つまり、ワイパブレード13の停止位置において洗浄液Wが噴射される外壁部31e側がブレードラバー15よりも払拭開始時の進行方向側に配置される。従って、払拭を開始したブレードラバー15の直前にて洗浄液Wの供給がなされるため、払拭面1aの迅速な汚れ落としができ、該払拭面1aのドライ状態でのブレードラバー15の摺接をも防止することができる。
【0047】
また、カバー部31のフィン部31dとは反対側に供給パイプ18を配置することで、フィン部31d側では押圧力を得るための斜面などで形状の規制を受けることから、カバー部31(カバー部材16)の無用な大型化を伴わない合理的な供給パイプ18の配置を行うことができる。
【0048】
尚、本発明の実施の形態は、以下のように変更してもよい。
○上記実施の形態では、カバー部材16をセンターカバー部31及び2つのサイドカバー部32の3つの部品にて構成し、供給パイプ18をセンターカバー部31と対応する長さとして該カバー部31内のみに配置したが、供給パイプ18をサイドカバー部32内まで延設させてもよい。この場合、供給パイプ18がサイドカバー部32の回動を妨げないように配慮する必要がある。
【0049】
また、図8に示すように、センターカバー部31及び2つのサイドカバー部32を一体化したカバー部材33を用いてもよい。因みに、このカバー部材33は、長手方向中央部にホルダ収容部33aを有し、そこから長手方向両側にブレードラバー15の端部まで延びるアーム収容部33bを有している。ホルダ収容部33aにはワイパアーム12の先端部を挿入するための開口部33cが設けられ、アーム収容部33bの先端部にはブレードラバー15を把持する把持部33dが設けられている。また、各アーム収容部33bにはフィン部33eが設けられている。この場合、図示しないが、カバー部材33におけるフィン部33eとは反対側(車両後方側、つまり払拭開始時の進行方向側)にパイプ収容部を形成して対応する。また、ホルダ収容部33aには、供給パイプ18の車体側連結部37aを導出する切欠き部33fが設けられる。また、カバー部材33が1つの部材よりなることから、同図に示すように、供給パイプ18を長くすることも可能である。
【0050】
また、カバー部材16を1つ及び3つ以外の部品数に変更してもよい。
また、カバー部材16にフィン部31d,32bを有しているが、フィン部を有していないカバー部材に実施してもよい。
【0051】
○上記実施の形態では、供給パイプ18をパイプ保持爪31hにて着脱可能に保持したが、パイプ保持爪31hの形状を適宜変更してもよく、この場合、供給パイプ18を着脱可能としなくてもよい。
【0052】
○上記実施の形態では、カバー部材16(センターカバー部31)内に供給パイプ18を装着するようにしているが、図9に示すように、例えばセンターカバー部31に供給パイプ38を一体に形成してもよい。この供給パイプ38には、上記実施の形態の噴射孔35a,36aと同様の多数の噴射孔38a(図9にて1つのみ図示)が形成されている。これにより、ワイパブレード13の部品数が少なくて済む。
【0053】
○上記実施の形態では、単に噴射孔35a,36aを形成した供給パイプ18(パイプ部材35,36)を用いたが、例えば図10に示すように、多数の噴射ノズル42を装着した供給パイプ41を用いてもよい。
【0054】
図10に示すように、供給パイプ41には、センターカバー部31の内側面31iに対面する部位に円筒状に突出した連結筒部41aが長手方向に多数設けられている。各連結筒部41aには、噴射孔42aから洗浄液Wを長手方向に扁平とした拡散流として噴射する噴射ノズル42が装着されている。これにより、噴射孔42aから噴射された洗浄液Wがカバー部31の内側面31iに当たるまでの間、より長手方向に広く広がるために、より少ない噴射孔42aで少量の洗浄液Wを効率よく長手方向に分散して払拭面1aに供給することができる。
【0055】
また、例えば図11に示すように、供給パイプ41の両端の連結筒部41aに対し、噴射孔43aから噴射される洗浄液Wの拡散方向が長手方向一方に拡大した(偏った)噴射ノズル43を装着してもよい。この場合、少なくとも両端の噴射ノズル43を連結筒部41aに対し転動可能(可動可能)に装着する。このようにすれば、ブレード長に応じて噴射ノズル43を転動させ、図11(a)のように拡散方向の拡大する側を長手方向の内側に設定するか、図11(b)のように拡散方向の拡大する側を長手方向の外側に設定することで、洗浄液Wの長手方向の液量配分を調整することができる。特に、図11(b)のように長手方向外側に向けて洗浄液Wを拡散させるようにすれば、供給パイプ41を短くしても洗浄液Wを長手方向に分散でき、長尺のワイパブレード13(ブレードラバー15)へ対応することができる。
【0056】
○上記実施の形態では、パイプ部材35,36は長尺の円筒状をなしていたが、断面多角形状のパイプ部材としてもよい。
○上記実施の形態では、ブレードラバー15を保持する保持部材として、3つのレバー21,22からなるレバーアッセンブリ14を用いたが、保持部材の構成はこれに限定されるものではなく、レバーの数を適宜変更してもよい。この場合、レバーの数は1つであってもよい。また、レバーを用いず、バッキング19の長手方向中央部にワイパアーム12と連結するための連結部を設けるとともにバッキング19の剛性を高めて構成し、該バッキング19にてブレードラバー15を保持するようにした保持部材も含む。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本実施の形態における車両用ワイパを示す斜視図である。
【図2】(a)はワイパブレードの平面図であり、(b)はワイパブレードの正面図であり、(c)はワイパブレードの背面図である。
【図3】ワイパブレードの分解斜視図である。
【図4】供給パイプの噴射孔側から見た斜視図である。
【図5】センターカバー部を車両後方側から見た斜視図である。
【図6】洗浄液の供給状態を説明するための模式図である。
【図7】洗浄液の供給状態を説明するためのワイパブレードの横断面図である。
【図8】別例におけるワイパブレードの分解斜視図である。
【図9】別例におけるワイパブレードの断面図である。
【図10】別例における供給パイプの構成を説明するための斜視図である。
【図11】(a)(b)は、別例における供給パイプの構成を説明するための斜視図である。
【符号の説明】
【0058】
1a…払拭面、12…ワイパアーム、13…ワイパブレード、14…保持部材としてのレバーアッセンブリ、15…ブレードラバー、16…カバー部材、18…供給パイプ、21…レバーとしてのプライマリレバー、21a…連結部としてのホルダ部、22…レバーとしてのセカンダリレバー、31…カバー部材を構成するセンターカバー部、31d…フィン部、31e…延出部を構成する外壁部、31h…パイプ保持部としてのパイプ保持爪、31i…内側面、32…カバー部材を構成するサイドカバー部、32b…フィン部、33…カバー部材、33e…フィン部、35a…噴射孔、36a…噴射孔、38…供給パイプ、38a…噴射孔、41…供給パイプ、42…噴射ノズル、42a…噴射孔、43…噴射ノズル、43a…噴射孔、W…洗浄液。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
払拭面を払拭するための長尺状のブレードラバーと、
ワイパアームの先端部と連結するための連結部を有し、前記ブレードラバーを保持する保持部材と、
前記保持部材を内側に収容し前記保持部材を覆うカバー部材と、
前記カバー部材内に前記ブレードラバーの長手方向に沿って設けられ、ポンプ装置によって圧送される洗浄液を噴射孔から噴射して前記払拭面に供給する供給パイプと、
を備えたワイパブレードであって、
前記カバー部材は、前記ブレードラバーの長手方向に形成されるとともにその下端部が前記払拭面方向に向けて延出される延出部を有しており、
前記供給パイプの前記噴射孔は、前記ブレードラバーの長手方向に間隔をおいて複数配設されるとともに、前記洗浄液の噴射方向が前記延出部の内側面に向けて設定され、前記噴射孔から噴射された前記洗浄液を前記延出部の内側面に当てて長手方向に拡散するように構成されることを特徴とするワイパブレード。
【請求項2】
請求項1に記載のワイパブレードにおいて、
前記延出部は、前記カバー部材の外壁部を兼ねていることを特徴とするワイパブレード。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のワイパブレードにおいて、
前記保持部材は、前記ワイパアームの先端部と連結するプライマリレバーに階層的に複数のレバーが連結されたレバーアッセンブリであることを特徴とするワイパブレード。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のワイパブレードにおいて、
前記カバー部材は、前記供給パイプを着脱可能に保持するパイプ保持部を有することを特徴とするワイパブレード。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のワイパブレードにおいて、
前記カバー部材は、樹脂材料よりなり、前記供給パイプを一体形成してなることを特徴とするワイパブレード。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のワイパブレードにおいて、
前記供給パイプは、噴射孔から前記洗浄液を長手方向に扁平とした拡散流として噴射する噴射ノズルを有することを特徴とするワイパブレード。
【請求項7】
請求項6に記載のワイパブレードにおいて、
前記噴射ノズルは、前記洗浄液の拡散方向を変更すべく前記供給パイプに対して可動可能に取り付けられることを特徴とするワイパブレード。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のワイパブレードにおいて、
前記カバー部材は、長手方向と直交する横断面形状において、車両走行時に生じる走行風を受けると前記ブレードラバーを前記払拭面側に押圧する押圧力を生成するフィン部をその一方側に設け、他方側に前記洗浄液が噴射される前記延出部を設けることを特徴とするワイパブレード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−347398(P2006−347398A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−176838(P2005−176838)
【出願日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【出願人】(000101352)アスモ株式会社 (1,622)
【Fターム(参考)】