説明

ワイパ性能評価方法、及びワイパ性能評価装置

【課題】ワイパ性能を高精度で客観的に評価することができるワイパ性能評価方法を提供すること。
【解決手段】ワイパ性能評価方法は、フロントガラス21の背景として一定間隔模様を有した背景部材11を配置し、水滴が掛けられるとともに駆動されたワイパ23にて払拭されるフロントガラス21を一定間隔模様に向かって動画撮像し第1撮像データを得る「撮像工程」と、第1撮像データの静止画を2次元フーリエ変換し、そのフーリエ変換結果に基づいて定量的な水滴払拭情報(水滴払拭率)を得る「第1定量化工程」と、駆動されたワイパ23自体の動きに関する定量的なワイパ視界情報(背景遮蔽率及び動的遮蔽率)を得る「第2定量化工程」とを備え、水滴払拭情報とワイパ視界情報とに基づいてワイパ性能を評価する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、車両に備えられるワイパ装置の性能を評価するためのワイパ性能評価方法、及びワイパ性能評価装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、車両に備えられるワイパ装置の性能は、払拭範囲の性能の他に、フロントガラスへの降雨(水滴)に対して運転者等の視界がどれほど良好なものになるかといった性能が上げられる。即ち、ワイパにてフロントガラスの水滴(雨滴)をどれだけ綺麗に払拭して視界を向上できるかといった性能や、ワイパが視界を横切ることによりどれだけ視界が悪化してしまうかといった性能もワイパ装置の性能の一つとなる。
【0003】
しかし、これらの性能の評価は、一般的に目視により官能評価見本(基準の見本)と比較するといった程度しか行われていない。
又、ガラス越しの視界を評価(検出)する方法としては、フロントガラスを撮像した画像を2次元フーリエ変換し、そのフーリエ変換結果に基づいて評価する方法がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4226775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のような公報に開示された方法は、そのときの気候に応じたガラス越しの視界を評価(ガラスに曇りがあるか否かを検出)するためのものであって、ワイパ性能を高精度に評価するものではなく、例えば、車両試作段階等におけるワイパの駆動速度の設定やワイパの形状の設計等に用いるための評価はできなかった。
【0006】
又、勿論、官能評価においても、主観的となり、評価者によって評価が異なってしまう等、ワイパ性能を高精度に評価することはできない。
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、ワイパ性能を高精度で客観的に評価することができるワイパ性能評価方法、及びワイパ性能評価装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明では、被払拭ガラスの背景として一定間隔模様を有した背景部材を配置し、水滴が掛けられるとともに駆動されたワイパにて払拭される前記被払拭ガラスを前記一定間隔模様に向かって動画撮像し第1撮像データを得る撮像工程と、前記第1撮像データの静止画を2次元フーリエ変換し、そのフーリエ変換結果に基づいて定量的な水滴払拭情報を得る第1定量化工程と、駆動された前記ワイパ自体の動きに関する定量的なワイパ視界情報を得る第2定量化工程とを備え、前記水滴払拭情報と前記ワイパ視界情報とに基づいてワイパ性能を評価するワイパ性能評価方法を要旨としている。
【0008】
同発明によれば、撮像工程にて、被払拭ガラスの背景として一定間隔模様を有した背景部材が配置され、水滴が掛けられるとともに駆動されたワイパにて払拭される被払拭ガラスが前記一定間隔模様に向かって動画撮像され第1撮像データが得られる。そして、第1定量化工程においては、前記第1撮像データの静止画が2次元フーリエ変換され、そのフーリエ変換結果に基づいて定量的な水滴払拭情報が得られる。このとき、被払拭ガラスの背景として一定間隔模様が撮像されているため、水滴が被払拭ガラスに付着していないときのフーリエ変換結果(パワースペクトル分散図)における特定の周波数の強さ(パワー)が強くなり(集中し)、水滴が被払拭ガラスに付着したときにはフーリエ変換結果(パワースペクトル分散図)における強さ(パワー)が前記特定の周波数以外の周波数の領域に分散し、水滴による影響が強く表れることになる。
【0009】
又、第2定量化工程においては、駆動されたワイパ自体の動きに関する定量的なワイパ視界情報が得られる。そして、共に定量的な前記水滴払拭情報と前記ワイパ視界情報とに基づいてワイパ性能を評価するため、高精度で客観的な評価が可能となり、一般的にトレードオフの関係となる水滴(雨滴)に対する視界の向上とワイパ自体による視界の悪化の抑制とを両立させる(共に基準を満たす)ような、例えば、車両試作段階等におけるワイパの駆動速度の設定やワイパの形状の設計等を容易に行うことが可能となる。
【0010】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載のワイパ性能評価方法において、前記第1定量化工程は、前記フーリエ変換結果から前記ワイパ自体の周波数成分を除去するためのフィルタリングを行い、フィルタリング後のフィルタ後結果に基づいて前記水滴払拭情報を得ることを要旨としている。
【0011】
同発明によれば、第1定量化工程では、前記フーリエ変換結果からワイパ自体の周波数成分を除去するためのフィルタリングが行われ、フィルタリング後のフィルタ後結果に基づいて水滴払拭情報が得られるため、ワイパ自体の動きに関せず水滴のみに関するような水滴払拭情報を得ることができる。よって、より高度にワイパ性能を評価することができ、水滴(雨滴)に対する視界の向上とワイパ自体による視界の悪化の抑制とを両立させる(共に基準を満たす)ような、例えば、ワイパの駆動速度の設定やワイパの形状の設計等をより適正に行うことが可能となる。
【0012】
請求項3に記載の発明では、請求項1又は2に記載のワイパ性能評価方法において、前記第1定量化工程は、前記フーリエ変換結果又は前記フィルタ後結果から時間に対するパワースペクトル分散度の特性を求め、該特性から時間に対する水滴払拭率を前記水滴払拭情報として得ることを要旨としている。
【0013】
同発明によれば、第1定量化工程では、前記フーリエ変換結果又は前記フィルタ後結果から時間に対するパワースペクトル分散度の特性が求められ、該特性から時間に対する水滴払拭率が前記水滴払拭情報として得られる。よって、例えば、水滴払拭情報を具体的にイメージし易く取り扱いの容易な水滴払拭率として得ることができ、また例えば、官能評価見本(基準の見本)との摺り合わせを水滴払拭率同士で容易に行うといったことが可能となる。
【0014】
請求項4に記載の発明では、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のワイパ性能評価方法において、前記第2定量化工程は、駆動された前記ワイパを動画撮像して得られた第2撮像データの静止画と背景画像との差分処理を行い、その差分処理結果から時間に対する背景遮蔽率を前記ワイパ視界情報として得ることを要旨としている。
【0015】
同発明によれば、第2定量化工程では、駆動されたワイパを動画撮像して得られた第2撮像データの静止画と背景画像との差分処理が行われ、その差分処理結果から時間に対する背景遮蔽率が前記ワイパ視界情報として得られる。よって、例えば、ワイパ視界情報を具体的にイメージし易く取り扱いの容易な背景遮蔽率として得ることができる。
【0016】
請求項5に記載の発明では、請求項1乃至4のいずれか1項に記載のワイパ性能評価方法において、前記第2定量化工程は、駆動された前記ワイパを動画撮像して得られた第2撮像データにおける時間差を有した静止画同士で差分処理を行い、その差分処理結果から時間に対する動的遮蔽率を前記ワイパ視界情報として得ることを要旨としている。
【0017】
同発明によれば、第2定量化工程では、駆動されたワイパを動画撮像して得られた第2撮像データにおける時間差を有した静止画同士で差分処理が行われ、その差分処理結果から時間に対する動的遮蔽率が前記ワイパ視界情報として得られる。よって、例えば、ワイパ視界情報を具体的にイメージし易く取り扱いの容易な動的遮蔽率として得ることができる。
【0018】
請求項6に記載の発明では、請求項4又は5に記載のワイパ性能評価方法において、前記第2撮像データは、前記第1撮像データを得る前記撮像工程と水滴を掛けることのみ異なり水滴を掛けずに行う準撮像工程で得ることを要旨としている。
【0019】
同発明によれば、第2撮像データは、前記第1撮像データを得る撮像工程と水滴を掛けることのみ異なり水滴を掛けずに行う準撮像工程で得られるため、例えば、準撮像工程を撮像工程の前(直前)又は後(直後)に行うことで、主要な機器等を変更することなく、容易に第2撮像データを得ることができる。
【0020】
請求項7に記載の発明では、被払拭ガラスの背景として配置される一定間隔模様を有した背景部材と、水滴が掛けられるとともに駆動されたワイパにて払拭される前記被払拭ガラスを前記一定間隔模様に向かって動画撮像し第1撮像データを得るための撮像手段と、前記第1撮像データの静止画を2次元フーリエ変換し、そのフーリエ変換結果に基づいて定量的な水滴払拭情報を得るための第1定量化手段と、駆動された前記ワイパ自体の動きに関する定量的なワイパ視界情報を得るための第2定量化手段とを備え、前記水滴払拭情報と前記ワイパ視界情報とに基づいてワイパ性能を評価可能としたことを要旨としている。
【0021】
同構成によれば、背景部材、撮像手段、第1定量化手段及び第2定量化手段を用いて請求項1乃至6のいずれか1項に記載のワイパ性能評価方法を行うことで、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の発明の効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、ワイパ性能を高精度で客観的に評価することができるワイパ性能評価方法、及びワイパ性能評価装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本実施の形態におけるワイパ性能評価装置の模式図。
【図2】本実施の形態における背景部材の部分正面図。
【図3】(a)水滴の付着が少ない場合のパワースペクトル分散図。(b)水滴の付着が多い場合のパワースペクトル分散図。
【図4】(a)画像(静止画)にワイパがある場合のパワースペクトル分散図。(b)ワイパ自体の周波数成分を除去するためのフィルタリングを行った場合のパワースペクトル分散図。
【図5】(a)本実施の形態における撮像工程を説明するための模式図。(b)大雨、高速作動時の時間−パワースペクトル分散度特性図。
【図6】(a)小雨時の時間−水滴払拭率特性図。(b)大雨時の時間−水滴払拭率特性図。
【図7】水滴払拭率の平均値を比較したグラフ。
【図8】水滴払拭率が70%未満となる時間比率を比較したグラフ。
【図9】(a)背景遮蔽率を説明するための画像。(b)時間−背景遮蔽率特性図。
【図10】(a)動的遮蔽率を説明するための画像。(b)動的遮蔽率を説明するための画像。
【図11】時間−動的遮蔽率特性図。
【図12】背景遮蔽率の平均値及び動的遮蔽率の平均値をそれぞれ比較したグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図1〜図12に従って説明する。
図1に示すように、本実施の形態のワイパ性能評価装置は、背景部材11と、撮像手段としてのビデオカメラ12と、第1定量化手段及び第2定量化手段としてのパソコン等の演算装置13とを備える。
【0025】
背景部材11は、一定間隔模様11a(図2参照)を有し、被払拭ガラスとしてのフロントガラス21の背景とすべく、車両22の前方に配置される。尚、一定間隔模様11a(図2参照)とは、2次元フーリエ変換した際に特定の周波数の強さ(パワー)が強くなる(集中する)模様であって、本実施の形態では水平方向の特定の周波数の強さ(パワー)が強くなる縦縞模様(白黒交互の縦縞模様)とされている。又、本実施の形態の一定間隔模様11aは、ワイパ23(図9(a)参照)の太さより十分に細く設定されている。
【0026】
ビデオカメラ12は、前記フロントガラス21を介して前記一定間隔模様11aを向くように車両運転席24内に配置される。このビデオカメラ12は、水滴が掛けられるとともに駆動されたワイパ23にて払拭されるフロントガラス21を一定間隔模様11aに向かって動画撮像した第1撮像データを得ることが可能とされている。
【0027】
演算装置13は、前記第1撮像データの静止画を2次元フーリエ変換し、そのフーリエ変換結果に基づいて定量的な水滴払拭情報(後述する水滴払拭率)を得ることが可能とされている。又、演算装置13は、駆動されたワイパ23自体の動きに関する定量的なワイパ視界情報(後述する背景遮蔽率及び動的遮蔽率)を得ることが可能とされている。
【0028】
ここで、ワイパ性能評価方法について説明しながら、演算装置13が行う水滴払拭情報(水滴払拭率)及びワイパ視界情報(背景遮蔽率及び動的遮蔽率)を得るための処理について詳しく説明する。
【0029】
ワイパ性能評価方法は、「撮像工程」と「第1定量化工程」と「第2定量化工程」とを備える。
まず「撮像工程」では、図1に示すようにフロントガラス21の背景として一定間隔模様11a(図2参照)を有した背景部材11を配置し、水滴が掛けられるとともに駆動されたワイパ23にて払拭されるフロントガラス21を一定間隔模様11aに向かって動画撮像し第1撮像データを得る。
【0030】
次に、「第1定量化工程」では、演算装置13によって、第1撮像データの静止画を2次元フーリエ変換し、そのフーリエ変換結果に基づいて定量的な水滴払拭情報(本実施の形態では水滴払拭率)を得る。
【0031】
詳しくは、「第1定量化工程」では、まず第1撮像データにおける一定時間毎(例えば0.05秒毎)の静止画をそれぞれ2次元フーリエ変換して、そのフーリエ変換結果としてそれぞれのパワースペクトル分散図(例えば、図3(a)(b)参照)を得る。尚、図3(a)は、水滴の付着が少ない場合のパワースペクトル分散図P1であって、図3(b)は、水滴の付着が多い場合のパワースペクトル分散図P2である。
【0032】
そして、本実施の形態の「第1定量化工程」では、前記フーリエ変換結果(パワースペクトル分散図)からワイパ23自体の周波数成分を除去するためのフィルタリングを行う(図4(a)(b)参照)。尚、図4(a)は、静止画にワイパ23が映っている状態(図9(a)参照)のパワースペクトル分散図P3であって、一定間隔模様11aによって強さ(パワー)が強くなる部分を中心としてワイパ23自体の周波数成分が斜めに延びるように現れている。そこで、ワイパ23自体の周波数成分と離間した(具体的には高周波の)周波数成分のみが残るように(図4(b)参照)、フィルタリングを行ったパワースペクトル分散図P4を得るようにしている。
【0033】
そして、「第1定量化工程」では、フィルタリング後のフィルタ後結果(図4(b)参照)に基づいて水滴払拭情報としての水滴払拭率を得る。具体的には、まず図5(b)に示すように、フィルタ後結果(図4(b)参照)から時間(本実施の形態では6秒間)に対するパワースペクトル分散度の特性を求め、該特性から時間に対する水滴払拭率(図6(a)(b)参照)を得る。尚、本実施の形態では、「撮像工程」で撮像する範囲Hを、図5(a)に示すように、まず車両運転席24側の往動中のワイパ23aにて払拭され(t1)、次に助手席25側の往動中のワイパ23bにて払拭され(t2)、次に助手席25側の復動中のワイパ23bにて払拭され(t3)、次に車両運転席24側の復動中のワイパ23aにて払拭される(t3)位置に設定している。そして、図5(b)では、1サイクル中に、まず車両運転席24側の往動中のワイパ23aにて払拭された直後(時間t1)にパワースペクトル分散度が小さくなり、次に助手席25側の往動中のワイパ23bにて払拭された直後(時間t2)にパワースペクトル分散度が小さくなり、次に助手席25側の復動中のワイパ23bにて払拭された直後(時間t3)にパワースペクトル分散度が小さくなり、次に車両運転席24側の復動中のワイパ23aにて払拭された直後(時間t4)にパワースペクトル分散度が小さくなる様子が現れている。又、図5(b)は、一例として、大雨を想定した量の水滴を掛けた場合(大雨時)であって、ワイパ23の速度を高速とした場合(高速作動時)の時間−パワースペクトル分散度特性図を示している。又、図6(a)(b)は、時間−パワースペクトル分散度特性から得た時間−水滴払拭率特性図であって、図6(a)は小雨を想定した量の水滴を掛けた場合(小雨時)のものを示し、図6(b)は大雨を想定した量の水滴を掛けた場合(大雨時)のものを示している。又、図6(a)には、小雨時にワイパ23の速度を低速とした場合(低速作動時)の時間−水滴払拭率特性S1(図中、太線参照)と、小雨時にワイパ23の速度を高速とした場合(高速作動時)の時間−水滴払拭率特性S2(図中、細線参照)とを図示している。又、図6(b)には、大雨時にワイパ23の速度を低速とした場合(低速作動時)の時間−水滴払拭率特性S3(図中、太線参照)と、大雨時にワイパ23の速度を高速とした場合(高速作動時)の時間−水滴払拭率特性S4(図中、細線参照)とを図示している。尚、前記水滴払拭率は、ワイパ23を駆動せず水滴を掛け続けたときの(最大の)パワースペクトル分散度を0%とするとともに、水滴が付いていない状態の(最少の)パワースペクトル分散度を100%とした場合の割合である。
【0034】
そして、例えば、図7に示すように、水滴払拭率の平均値を比較することで、ワイパ23にてフロントガラス21の水滴(雨滴)をどれだけ綺麗に払拭して視界を向上できるかといったワイパ性能を評価してもよいし、図8に示すように、水滴払拭率が予め定めた閾値Z(例えば70%であって、図6(a)(b)参照)未満となる時間の比率を比較して評価するようにしてもよい。
【0035】
又、「第2定量化工程」では、駆動されたワイパ23自体の動きに関する定量的なワイパ視界情報(本実施の形態では、背景遮蔽率及び動的遮蔽率)を得る。
詳しくは、「第2定量化工程」では、演算装置13によって、駆動されたワイパ23を動画撮像して得られた第2撮像データにおける一定時間毎の静止画(図9(a)の左側の画像G1)と背景画像(図9(a)の中央の画像G2)との差分処理をそれぞれ行い(差分画像(図9(a)の右側の画像G3)を得て)、その差分処理結果(差分画像(図9(a)の右側の画像G3))から時間に対する背景遮蔽率(図9(b)参照)をワイパ視界情報として得る。尚、図9(b)には、ワイパ23の速度を低速とした場合(低速作動時)の時間−背景遮蔽率特性X1(図中、太線参照)と、ワイパ23の速度を高速とした場合(高速作動時)の時間−背景遮蔽率特性X2(図中、細線参照)とを図示している。又、本実施の形態の前記第2撮像データは、前記第1撮像データを得るための前記「撮像工程」と水滴を掛けることのみ異なり水滴を掛けずに行う「準撮像工程」で得たものあって、例えば、「撮像工程」の前(直前)又は後(直後)に得る。
【0036】
又、「第2定量化工程」では、演算装置13によって、前記第2撮像データにおける時間差を有した静止画同士(図10(a)の左側の画像G4と中央の画像G5)で差分処理を行い(差分画像(図10(a)の右側の画像G6)を得て)、その差分処理結果(差分画像(図10(a)の右側の画像G6))から時間に対する動的遮蔽率(図11参照)をワイパ視界情報として得る。尚、図11には、ワイパ23の速度を低速とした場合(低速作動時)の時間−動的遮蔽率特性Y1(図中、太線参照)と、ワイパ23の速度を高速とした場合(高速作動時)の時間−動的遮蔽率特性Y2(図中、細線参照)とを図示している。
【0037】
そして、例えば、図12に示すように、背景遮蔽率の平均値を比較したり、動的遮蔽率の平均値を比較することで、ワイパ23が視界を横切ることによりどれだけ視界が悪化してしまうかといった性能を評価する。尚、背景遮蔽率は、背景(フロントガラス21)に対してワイパ23がどれだけの面積を遮蔽するかという単純な率と同等となるが、動的遮蔽率は、ワイパ23の動き自体に基づき、例えば、ワイパ23が往復動作中の折り返し位置では、ワイパ23がフロントガラス21上(視界)に有りながらもその動きがほぼ止まるため、動的遮蔽率はほぼ0%となる。例えば、図10(b)に示すように、ワイパ23が往復動作中の折り返し位置では、時間差を有した静止画同士(図10(b)の左側の画像G7と中央の画像G8)でほぼ違いがなく、差分処理結果(図10(b)の右側の画像G9)に差分部分がほとんど現れていない(ほぼ0%である)ことがわかる。
【0038】
そして、例えば、上記水滴払拭率の平均値の比較結果(図7参照)や上記水滴払拭率が70%未満となる時間比率の比較結果(図8参照)と、背景遮蔽率の平均値の比較結果及び動的遮蔽率の平均値の比較結果(図12参照)とから総合的且つ定量的にワイパ性能を評価する。即ち、一般的にトレードオフの関係となる水滴(雨滴)に対する視界の向上(雨量増加に伴うワイパ払拭回数の増加)とワイパ23自体による視界の悪化(ワイパ払拭回数増加に伴うワイパ23自体による視界の妨げの増加)の抑制とを両立させる(共に基準を満たす)ような、例えば、車両試作段階等におけるワイパ23の駆動速度の設定やワイパ23の形状(例えばフィン等の付加部品の有無)の設計等を行うための評価を行う。
【0039】
次に、上記実施の形態の特徴的な作用効果を以下に記載する。
(1)「撮像工程」にて、フロントガラス21の背景として一定間隔模様11aを有した背景部材11が配置され、水滴が掛けられるとともに駆動されたワイパ23(23a,23b)にて払拭されるフロントガラス21が一定間隔模様11aに向かって動画撮像され第1撮像データが得られる。そして、「第1定量化工程」にて第1撮像データの静止画が2次元フーリエ変換され、そのフーリエ変換結果に基づいて定量的な水滴払拭情報(水滴払拭率)が得られる。このとき、フロントガラス21の背景として一定間隔模様11aが撮像されているため、水滴がフロントガラス21に付着していないときのフーリエ変換結果(パワースペクトル分散図)における特定の周波数の強さ(パワー)が強くなり(集中し)、水滴がフロントガラス21に付着したときにはフーリエ変換結果(パワースペクトル分散図)における強さ(パワー)が前記特定の周波数以外の周波数の領域に分散し、水滴による影響が強く表れることになる。
【0040】
又、「第2定量化工程」にて駆動されたワイパ23自体の動きに関する定量的なワイパ視界情報(背景遮蔽率及び動的遮蔽率)が得られる。そして、共に定量的な水滴払拭情報(水滴払拭率)とワイパ視界情報(背景遮蔽率及び動的遮蔽率)とに基づいてワイパ性能を評価するため、客観的で高精度な評価が可能となり、一般的にトレードオフの関係となる水滴(雨滴)に対する視界の向上(雨量増加に伴うワイパ払拭回数の増加)とワイパ23自体による視界の悪化(ワイパ払拭回数増加に伴うワイパ23自体による視界の妨げの増加)の抑制とを両立させる(共に基準を満たす)ような、例えば、車両試作段階等におけるワイパ23の駆動速度の設定やワイパ23の形状(例えばフィン等の付加部品の有無)の設計等を容易に(定量的に)行うことが可能となる。
【0041】
(2)「第1定量化工程」では、前記フーリエ変換結果からワイパ23自体の周波数成分を除去するためのフィルタリングが行われ、フィルタリング後のフィルタ後結果(図4(b)参照)に基づいて水滴払拭情報(水滴払拭率)が得られるため、ワイパ23自体の動きに関せず水滴のみに関するような水滴払拭情報(水滴払拭率)を得ることができる。よって、より高度にワイパ性能を評価することができ、水滴(雨滴)に対する視界の向上とワイパ23自体による視界の悪化の抑制とを両立させる(共に基準を満たす)ような、例えば、ワイパ23の駆動速度の設定やワイパ23の形状の設計等をより適正に行うことが可能となる。
【0042】
(3)「第1定量化工程」では、前記フィルタ後結果(図4(b)参照)から時間に対するパワースペクトル分散度の特性(図5(b)参照)が求められ、該特性から時間に対する水滴払拭率(図6(a)(b)参照)が前記水滴払拭情報として得られる。よって、例えば、水滴払拭情報を具体的にイメージし易く取り扱いの容易な水滴払拭率として得ることができ、また例えば、官能評価見本(基準の見本)との摺り合わせを水滴払拭率同士で容易に行うといったことが可能となる。
【0043】
(4)「第2定量化工程」では、駆動されたワイパ23を動画撮像して得られた第2撮像データの静止画と背景画像との差分処理が行われ、その差分処理結果(差分画像(図9(a)の右側の画像G3))から時間に対する背景遮蔽率(図9(b)参照)がワイパ視界情報として得られる。よって、例えば、ワイパ視界情報を具体的にイメージし易く取り扱いの容易な背景遮蔽率(図9(b)参照)として得ることができる。
【0044】
(5)「第2定量化工程」では、駆動されたワイパ23を動画撮像して得られた第2撮像データにおける時間差を有した静止画同士で差分処理が行われ、その差分処理結果(差分画像(図10(a)の右側の画像G6))から時間に対する動的遮蔽率(図11参照)がワイパ視界情報として得られる。よって、例えば、ワイパ視界情報を具体的にイメージし易く取り扱いの容易な動的遮蔽率(図11参照)として得ることができる。
【0045】
(6)「第2定量化工程」では、ワイパ23自体による視界の悪化に関しながらも性質の異なる背景遮蔽率と動的遮蔽率とを共に得るようにしたため、例えばいずれか一方しか得ない場合に比べて、ワイパ性能の評価を細かく行うことができる。
【0046】
(7)第2撮像データは、第1撮像データを得るための「撮像工程」と水滴を掛けることのみ異なり水滴を掛けずに行う「準撮像工程」で得られるものであるため、例えば、「準撮像工程」を「撮像工程」の前(直前)又は後(直後)に行うことで、主要な機器(背景部材11やビデオカメラ12)等を変更することなく、容易に第2撮像データを得ることができる。
【0047】
上記実施の形態は、以下のように変更してもよい。
・上記実施の形態では、「第1定量化工程」でフーリエ変換結果からワイパ23自体の周波数成分を除去するためのフィルタリングを行うとしたが、これに限定されず、フィルタリングを行わず、水滴払拭情報(水滴払拭率)を得るようにしてもよい。
【0048】
・上記実施の形態では、「第1定量化工程」でフィルタ後結果(図4(b)参照)から時間に対するパワースペクトル分散度の特性(図5(b)参照)を求め、該特性から時間に対する水滴払拭率(図6(a)(b)参照)を水滴払拭情報として得るとしたが、時間に対するパワースペクトル分散度の特性(図5(b)参照)をそのまま水滴払拭情報としてワイパ性能の評価に用いるようにしてもよい。
【0049】
・上記実施の形態では、「第2定量化工程」でワイパ視界情報として背景遮蔽率と動的遮蔽率とを共に得るようにしたが、これに限定されず、例えばいずれか一方しか得ずに、ワイパ性能の評価に用いるようにしてもよい。又、「第2定量化工程」で得るワイパ視界情報は、駆動されたワイパ23自体の動きに関する定量的な情報であれば、他の情報に変更してもよく、例えば、ワイパ23の速度(設定された値、又は計測した値)をそのままワイパ視界情報としてもよい。
【0050】
・上記実施の形態では、第2撮像データは、第1撮像データを得るための「撮像工程」と水滴を掛けることのみ異なり水滴を掛けずに行う「準撮像工程」で得られるものであるとしたが、これに限定されず、駆動されたワイパ23を動画撮像して得たものであれば変更してもよい。例えば、簡易的に第1撮像データを第2撮像データとして(共用として)もよい。又、例えば、背景部材11(一定間隔模様11a)を、ワイパ23と見分けのつきやすいもの(例えば、全体が白色)に変更して動画撮像したものとしてもよい。
【0051】
・上記実施の形態では、一定間隔模様11a(図2参照)を白黒交互の縦縞模様としたが、2次元フーリエ変換した際に特定の周波数の強さ(パワー)が強くなる(集中する)模様であれば変更してもよく、例えば、横縞模様に変更してもよい。また、白黒以外の色を用いてもよく、同色の濃淡をつけた縞模様でも良い。
【0052】
・上記実施の形態では、「撮像工程」で撮像する範囲Hを、図5(a)に示すように、車両運転席24側のワイパ23a及び助手席25側のワイパ23bにて払拭される位置としたが、これに限定されず、例えば、車両運転席24側のワイパ23aにのみ払拭される位置に変更してもよい。
【符号の説明】
【0053】
11…背景部材、11a…一定間隔模様、12…ビデオカメラ(撮像手段)、13…演算装置(第1定量化手段及び第2定量化手段)、21…フロントガラス(被払拭ガラス)、23(23a,23b)…ワイパ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被払拭ガラスの背景として一定間隔模様を有した背景部材を配置し、水滴が掛けられるとともに駆動されたワイパにて払拭される前記被払拭ガラスを前記一定間隔模様に向かって動画撮像し第1撮像データを得る撮像工程と、
前記第1撮像データの静止画を2次元フーリエ変換し、そのフーリエ変換結果に基づいて定量的な水滴払拭情報を得る第1定量化工程と、
駆動された前記ワイパ自体の動きに関する定量的なワイパ視界情報を得る第2定量化工程と
を備え、前記水滴払拭情報と前記ワイパ視界情報とに基づいてワイパ性能を評価することを特徴とするワイパ性能評価方法。
【請求項2】
請求項1に記載のワイパ性能評価方法において、
前記第1定量化工程は、前記フーリエ変換結果から前記ワイパ自体の周波数成分を除去するためのフィルタリングを行い、フィルタリング後のフィルタ後結果に基づいて前記水滴払拭情報を得ることを特徴とするワイパ性能評価方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のワイパ性能評価方法において、
前記第1定量化工程は、前記フーリエ変換結果又は前記フィルタ後結果から時間に対するパワースペクトル分散度の特性を求め、該特性から時間に対する水滴払拭率を前記水滴払拭情報として得ることを特徴とするワイパ性能評価方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のワイパ性能評価方法において、
前記第2定量化工程は、駆動された前記ワイパを動画撮像して得られた第2撮像データの静止画と背景画像との差分処理を行い、その差分処理結果から時間に対する背景遮蔽率を前記ワイパ視界情報として得ることを特徴とするワイパ性能評価方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のワイパ性能評価方法において、
前記第2定量化工程は、駆動された前記ワイパを動画撮像して得られた第2撮像データにおける時間差を有した静止画同士で差分処理を行い、その差分処理結果から時間に対する動的遮蔽率を前記ワイパ視界情報として得ることを特徴とするワイパ性能評価方法。
【請求項6】
請求項4又は5に記載のワイパ性能評価方法において、
前記第2撮像データは、前記第1撮像データを得る前記撮像工程と水滴を掛けることのみ異なり水滴を掛けずに行う準撮像工程で得ることを特徴とするワイパ性能評価方法。
【請求項7】
被払拭ガラスの背景として配置される一定間隔模様を有した背景部材と、
水滴が掛けられるとともに駆動されたワイパにて払拭される前記被払拭ガラスを前記一定間隔模様に向かって動画撮像し第1撮像データを得るための撮像手段と、
前記第1撮像データの静止画を2次元フーリエ変換し、そのフーリエ変換結果に基づいて定量的な水滴払拭情報を得るための第1定量化手段と、
駆動された前記ワイパ自体の動きに関する定量的なワイパ視界情報を得るための第2定量化手段と
を備え、前記水滴払拭情報と前記ワイパ視界情報とに基づいてワイパ性能を評価可能としたことを特徴とするワイパ性能評価装置。

【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図11】
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【図12】
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【図3】
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【図4】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−271139(P2010−271139A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−122304(P2009−122304)
【出願日】平成21年5月20日(2009.5.20)
【出願人】(000101352)アスモ株式会社 (1,622)
【Fターム(参考)】