説明

ワイヤハーネス、電線保護チューブ及びワイヤハーネスのシールド構造

【課題】電装機器に接続されるワイヤハーネスにおいて、配線経路の自由度を犠牲にすることなく、電磁シールド及び電線の保護を実現するための部材を装着する作業を簡素化できること。
【解決手段】ワイヤハーネス1における電線保護チューブ30は、内側シールド部50と外装部40とを備える。内側シールド部50は、蛇腹式の筒状に形成された導電体からなり、内側に電線が通された部材である。外装部40は、内側シールド部50の外周面に密着した筒状に形成された部材である。例えば、内側シールド部50は、蛇腹式の筒状に形成された金属の部材である。また、外装部40は、内側シールド部50における蛇腹構造が形成する凸凹な外側面と嵌り合う凸凹な内側面が形成された筒状の弾性部材である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線とその電線の周囲を覆う電線保護チューブとを備えるワイヤハーネス、電線保護チューブ及びワイヤハーネスのシールド構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両に搭載されるワイヤハーネスは、電線の電磁シールドのため、電線と、電線の周囲を覆うシールド部材と電線の末端に設けられた端子とを有することが多い。一般的なシールド部材は、編組線である。そのようなワイヤハーネスは、その端部が電装機器の筐体内へ開口を通じて挿入され、末端の端子が、電装機器の筐体内に収容された端子台に接続される。また、電線の端部において、シールド部材は、電装機器における導電性の筐体と電気的に接続される。
【0003】
例えば、特許文献1に示されるワイヤハーネスは、編組線と接触する状態で電線に取り付けられた金属製のシールドケースを備える。そのシールドケースが、金属製の筐体に対してネジ止めされることにより、編組線と筐体とが電気的に接続される。シールドケースは、編組線に覆われた電線の端部に対し、かしめ金具により取り付けられる。
【0004】
また、従来のワイヤハーネスにおいて、フレキシブルな電線保護具としてコルゲートチューブが採用されることが多い。コルゲートチューブは、蛇腹式の筒状に形成された電線保護具であるため、長手方向におけるフレキシブル性を有している。従って、コルゲートチューブは、配線経路の自由度を犠牲にすることなく、電線を保護できる。
【0005】
従来、電線の保護と、電線の電磁シールドとの両方が要求されるワイヤハーネスは、特許文献1に示されるような編組線と、コルゲートチューブとを備えることが多い。また、金属製のパイプが、電磁シールドの機能を兼ねる電線保護チューブとして利用されることもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−134953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の一般的なワイヤハーネスは、電線の保護と、電線の電磁シールドとの両方が要求される場合、電線に対して編組線とコルゲートチューブとを取り付け、さらに、編組線を電装機器の筐体にネジ留めするという煩雑な作業を必要とする。また、金属製のパイプが、電線保護チューブとして利用される場合、配線経路の自由度が犠牲になる。即ち、従来のワイヤハーネスは、電磁シールドと電線の保護とを実現するために、煩雑な作業が必要になる、又は配線経路の自由度が犠牲になるという問題点を有している。
【0008】
本発明は、電装機器に接続されるワイヤハーネスにおいて、配線経路の自由度を犠牲にすることなく、電磁シールド及び電線の保護を実現するための部材を装着する作業を簡素化できることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るワイヤハーネスは、電線と、その電線の周囲を覆う電線保護チューブとを備え、さらに、電線保護チューブは、以下に示す各構成要素を備える。
(1−1)第1の構成要素は、蛇腹式の筒状に形成された導電体からなり、内側に電線が通された内側シールド部である。
(1−2)第2の構成要素は、内側シールド部の外周面に密着した筒状に形成された外装部である。
【0010】
また、本発明に係るワイヤハーネスにおいて、内側シールド部及び外装部が、以下の構成を備えることが考えられる。即ち、内側シールド部が、蛇腹式の筒状に形成された金属の部材である。また、外装部が、内側シールド部における蛇腹構造が形成する凸凹な外側面と嵌り合う凸凹な内側面が形成された筒状の弾性部材である。
【0011】
また、本発明に係るワイヤハーネスにおいて、外装部が筒状の弾性部材である場合に、外装部の端部に、電装機器の筐体における電線導入口の縁部に被せられる接続部が形成されていることが考えられる。
【0012】
また、本発明に係るワイヤハーネスにおいて、内側シールド部及び外装部が、以下の構成を備えることが考えられる。即ち、内側シールド部が、蛇腹式の筒状に形成された金属の部材である。また、外装部が、内側シールド部の外側面に沿って形成された樹脂の被覆である。
【0013】
また、本発明に係るワイヤハーネスにおいて、内側シールド部及び外装部が、以下の構成を備えることが考えられる。即ち、外装部は、蛇腹式の筒状に形成された金属の部材である。また、内側シールド部は、外装部の内側面に沿って蛇腹式の筒状に形成され、外装部よりも導電率の高い金属の部材である。
【0014】
また、本発明は、本発明に係るワイヤハーネスが備える電線保護チューブの発明として捉えられることもできる。即ち、本発明に係る電線保護チューブは、電線の周囲を覆うチューブであり、以下に示す各構成要素を備える。
(2−1)第1の構成要素は、蛇腹式の筒状に形成された導電体からなる内側シールド部である。
(2−2)第2の構成要素は、内側シールド部の外周面に密着した筒状に形成された外装部である。
【0015】
また、本発明は、本発明に係るワイヤハーネスのシールド構造の発明として捉えられることもできる。即ち、本発明に関わるワイヤハーネスのシールド構造は、以下の各構成要素を備える。
(3−1)第1の構成要素は、電線保護チューブの一部を構成し、蛇腹式の筒状に形成された導電体からなり、内側に前記電線が通された内側シールド部である。
(3−2)第2の構成要素は、電線保護チューブの一部を構成し、内側シールド部の外周面に密着した筒状に形成された外装部である。
(3−3)第3の構成要素は、電装機器の導電性の筐体における電線の導入口の縁部から内側シールド部の内側へ突出し、内側シールド部における蛇腹構造が形成する凸凹な内側面の凹部もしくは凸部と嵌り合う凸部もしくは凹部が形成された導電体からなるシールド接続部である。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るワイヤハーネスにおいて、電線保護チューブは、主として電磁シールドの機能を果たす内側シールド部と、主として電線保護の機能を果たす外装部とが、相互に密着して一体に保持された構造を有している。そのため、電磁シールド及び電線の保護の両方に関する部材は、電線を電線保護チューブに通すという簡易な操作により、一括して電線に対して取り付けられる。
【0017】
また、本発明において、電線保護チューブは、蛇腹構造を有するため、比較的強度の高い材料で構成された場合でも、長手方向におけるフレキシブル性を有している。そのため、本発明によれば、配線経路の自由度は犠牲にならない。
【0018】
また、電線保護チューブの内側面は、内側シールド部の蛇腹構造が形成する凸凹な面である。従って、本発明によれば、電線保護チューブの内側シールド部を、電装機器の筐体に対して電気的に接続する機構として、電線保護チューブの内側の凸凹な面と、電装機器の筐体の突出部に形成された凹部もしくは凸部との嵌め合い機構を採用することができる。これにより、内側シールド部を電装機器の筐体に対して電気的に接続する作業の簡素化が可能となる。
【0019】
また、本発明において、内側シールド部が金属の部材であり、外装部が、内側シールド部の凸凹な外側面と嵌り合う凸凹な内側面が形成された筒状の弾性部材であれば、以下の効果が得られる。この場合、外装部が緩衝機能を有するため、電線保護チューブが周囲の物と接触して異音が生じることが防止される。さらに、ゴムなどの弾性部材からなる外装部の端部に、電装機器の筐体における電線導入口の縁部に被せられる接続部が形成されていれば、電線保護チューブは、電線及び電装機器内への浸水を防ぐ防水機能を発揮する。
【0020】
また、本発明において、内側シールド部が金属の部材であり、外装部が、樹脂の被覆であれば、外装部がゴムなどの弾性部材である場合よりも、電線保護の性能が高まる。
【0021】
ところで、比較的導電率の低い鉄などの金属は、導電率の高い銅などの金属に比べ安価である。本発明において、外装部が、比較的導電率の低い金属の部材であり、内側シールド部が、外装部よりも導電率の高い金属の部材であれば、安価で、電線保護の性能の高い電線保護チューブを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1実施形態に係るワイヤハーネス1の斜視図である。
【図2】ワイヤハーネス1の縦断面図である。
【図3】ワイヤハーネス1が備える電線保護チューブ30の分解断面図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係るワイヤハーネス1Aの斜視図である。
【図5】ワイヤハーネス1の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であり、本発明の技術的範囲を限定する事例ではない。
【0024】
<第1実施形態>
まず、図1から図3を参照しつつ、本発明の第1実施形態に係るワイヤハーネス1、及び本発明の第1実施形態に係る電線保護チューブについて説明する。図1に示されるように、ワイヤハーネス1は、心線の周囲に絶縁被覆が形成され、末端に端子20が設けられた複数の電線10と、それら電線10の周囲を覆う電線保護チューブ30とを備えている。
【0025】
電線10は、長尺な導電体である芯線と、その芯線の周囲を覆う絶縁体である絶縁被覆とを有する。端子20が取り付けられる電線10の端部は、予め一定の長さの分の芯線の周囲から絶縁被覆が剥がれた状態、即ち、一定の長さ分の芯線が絶縁被覆から伸び出た状態に加工されている。そして、その芯線が、端子20と電気的に接続されている。電線10の芯線は、例えば、銅又はアルミニウムを主成分とする金属の線材である。
【0026】
ワイヤハーネス1における電線10の末端の端子20は、電装機器における導電性の筐体70に形成された電線導入口74から挿入され、筐体70の中に配置された端子台80に接続される。筐体70は、例えばアルミニウム、ステンレス又は銅などの金属(導電体)からなり、端子台80は、電線10と不図示の電子部品との電気的な接続を中継する。なお、図2において、電装機器の筐体70及びその筐体70の中に配置された端子台80が、仮想線(二点鎖線)により示されている。図2に示される例では、電線10の端子20は、端子台80に対してネジで固定されている。
【0027】
<電線保護チューブ>
電線保護チューブ30は、外側の面を形成する外装部40と、内側の面を形成する内側シールド部50とからなる二重構造を有している。
【0028】
<電線保護チューブ:内側シールド部>
内側シールド部50は、蛇腹式の筒状に形成された導電体からなる部材である。また、ワイヤハーネス1において、電線10は、内側シールド50の内側に通されている。本実施形態において、内側シールド部50は、蛇腹式の筒状に形成された金属の部材である。即ち、内側シールド部50は、その長手方向に沿って表面に出っ張り部とへこみ部とが交互に連続して形成された蛇腹構造を有している。内側シールド部50は、例えば、銅、銅の合金又はアルミニウムなどの導電率の高い金属の部材である。
【0029】
なお、図2及び図3に示されるように、内側シールド部50において、内側面における凹部51は、その裏側に位置の外側面における凸部52を形成する。同様に、内側シールド部50において、内側面における凸部は、その裏側に位置の外側面における凹部を形成する。
【0030】
内側シールド部50は、電線10の周囲を覆う導電体であるため、電装機器における導電性の筐体70と電気的に接続されることにより、電線10と外部との間の電磁ノイズの伝播を遮蔽する。
【0031】
内側シールド部50は、蛇腹構造を有することにより、その長手方向において湾曲しやすいフレキシブル性を有している。但し、内側シールド部50がフレキシブル性を有するためには、内側シールド部50の厚みに制限がある。また、金属製の内側シールド部50は、絶縁性及び緩衝性を備えていない。そのため、電線保護チューブ30は、その外側面における絶縁性及び緩衝性を実現するため、外装部40を備えている。
【0032】
<電線保護チューブ:外装部>
外装部40は、内側シールド部50の外周面に密着した筒状に形成された部材である。本実施形態においては、外装部40は、相対的に外径の小さな本体部41と、相対的に外径の大きな接続部42とを有している。本体部41は、内側シールド部50の周囲に形成された部分である。即ち、外装部40は、いわゆるゴムブーツと同様の構成を有している。
【0033】
本実施形態において、外装部40は、内側シールド部50における蛇腹構造が形成する凸凹な外側面と嵌り合う凸凹な内側面が形成された筒状の弾性部材である。図2には、内側シールド部50の外側面における複数の凸部52が、外装部40における本体部41の内側面に形成された複数の凹部43に嵌り合っている状態が示されている。外装部40は、弾性変形可能な絶縁性の部材、例えば、フッ素ゴム、シリコーンゴム又はアクリルゴムなどのゴムからなる部材であることが好ましい。なお、本実施形態において、外装部40の外側面の形状はどのような形状であってもよい。
【0034】
また、電線保護チューブ30において、外装部40の端部、即ち、電線保護チューブ30における電線10の出口の部分には、電装機器の筐体70における電線導入口74の縁部に形成された筒状部71に被せられる接続部72が形成されている。
【0035】
以下、図3を参照しつつ、電線保護チューブ30の組み立て方法について説明する。図3に示されるように、電線保護チューブ30の組み立て工程において、まず、弾性体からなる外装部40が、その径が拡大するよう引き伸ばされる。次に、内側シールド部50が、引き伸ばされた外装部40の内側に挿入される。そして、引き伸ばされた外装部40を元の状態へ収縮させる。これにより、内側シールド部50の外側面における複数の凸部52が、外装部40における本体部41の内側面に形成された複数の凹部43に嵌り合い、内側シールド部50と外装部40とが合体する。また、凸部52と凹部43との嵌め合い機構は、内側シールド部50に対する外装部40の位置ずれを防ぐ。
【0036】
<ワイヤハーネスのシールド機構>
次に、図2を参照しつつ、ワイヤハーネス1のシールド機構について説明する。ワイヤハーネス1のシールド機構は、電線保護チューブ30における内側シールド部50及び外装部40と、電装機器における導電性の筐体70に形成されたシールド接続部72とを含む。なお、電装機器の筐体70は導電体であるため、その一部を構成するシールド接続部72も同じ導電体である。
【0037】
シールド接続部72は、電装機器の筐体70における電線導入口74の縁部から、電線保護チューブ30における内側シールド部50の内側へ突出して形成されている。図2に示される例では、シールド接続部72は、筐体70における電線導入口74の縁部から筒状部71を介して突出し、筒状に形成されている。
【0038】
また、筒状のシールド接続部72の外側の面には、内側シールド部50における蛇腹構造が形成する凸凹な内側面の凹部51と嵌り合う環状の凸部73が形成されている。内側シールド部50とシールド接続部72との嵌め合い機構により、内側シールド部50と電装機器の筐体70とが電気的に接続されるとともに、電線保護チューブ30の端部が、電装機器の筐体70に保持される。
【0039】
<効果>
ワイヤハーネス1において、電線保護チューブ30は、主として電磁シールドの機能を果たす内側シールド部50と、主として電線保護の機能を果たす外装部40とが、相互に密着して一体に保持された構造を有している。そのため、電磁シールド及び電線の保護の両方に関する部材は、電線10を電線保護チューブ30に通すという簡易な操作により、一括して電線10に対して取り付けられる。
【0040】
ワイヤハーネス1において、電線保護チューブ30の内側シールド部50は、蛇腹構造を有するため、比較的強度の高い材料で構成された場合でも、長手方向におけるフレキシブル性を有している。そのため、ワイヤハーネス1が採用された場合、金属パイプが採用される場合のように、配線経路の自由度が犠牲になることはない。
【0041】
また、電線保護チューブ30の内側面は、内側シールド部50の蛇腹構造が形成する凸凹な面である。電線保護チューブ30の内側シールド部50を、電装機器の筐体70に対して電気的に接続する機構として、電線保護チューブ30の内側の凸凹な面と、電装機器の筐体70のシールド接続部72に形成された凸部73との嵌め合い機構を採用することができる。これにより、内側シールド部50を電装機器の筐体70に対して電気的に接続する作業の簡素化が可能となる。
【0042】
また、弾性部材である外装部40は、緩衝機能を有するため、電線保護チューブ30が周囲の物と接触して異音が生じることが防止される。さらに、外装部40の端部に接続部42が形成されているため、電線保護チューブ30は、電線10及び電装機器内への浸水を防ぐ防水機能を発揮する。
【0043】
<第2実施形態>
次に、図4及び図5を参照しつつ、本発明の第2実施形態に係るワイヤハーネス1A及び本発明の第2実施形態に係る電線保護チューブ30Aについて説明する。このワイヤハーネス1Aは、図1から図3に示されたワイヤハーネス1と比較して、電線保護チューブ30の変形例である電線保護チューブ30Aを備える点においてのみ異なる。図4及び図5において、図1から図3に示される構成要素と同じ構成要素は、同じ参照符号が付されている。以下、ワイヤハーネス1Aにおけるワイヤハーネス1と異なる点についてのみ説明する。
【0044】
<電線保護チューブ>
ワイヤハーネス1Aが備える電線保護チューブ30Aも、電線保護チューブ30と同様に、外側の面を形成する外装部40Aと、内側の面を形成する内側シールド部50とからなる二重構造を有している。
【0045】
<電線保護チューブ:内側シールド部>
内側シールド部50は、蛇腹式の筒状に形成された導電体からなる部材である。本実施形態においても、内側シールド部50は、蛇腹式の筒状に形成された金属の部材である。内側シールド部50は、例えば、銅、銅の合金又はアルミニウムなどの導電率の高い金属の部材である。この蛇腹構造により、内側シールド部50は、その長手方向において湾曲しやすいフレキシブル性を有している。
【0046】
<電線保護チューブ:外装部>
外装部40Aは、内側シールド部50の外周面に密着した筒状に形成された部材である。本実施形態において、外装部40Aは、内側シールド部50の外側面に沿って形成された樹脂の被覆である。そのため、外装部40Aは、内側シールド部50における蛇腹構造が形成する凸凹な外側面と嵌り合う凸凹な内側面を有する蛇腹式の筒状に形成されている。外装部40Aは、ある程度の可撓性を有する樹脂、例えば、ポリアミド(PA)、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)又はABS樹脂などからなる被覆である。外装部40Aは、例えば、内側シールド部50に対する樹脂の2色成形などによって形成される。
【0047】
<ワイヤハーネスのシールド機構>
次に、図5を参照しつつ、ワイヤハーネス1Aのシールド機構について説明する。ワイヤハーネス1Aのシールド機構は、ワイヤハーネス1のシールド機構と同様である。即ち、ワイヤハーネス1Aのシールド機構は、電線保護チューブ30Aにおける内側シールド部50及び外装部40Aと、電装機器における導電性の筐体70に形成されたシールド接続部72とを含む。
【0048】
また、シールド接続部72には、内側シールド部50における蛇腹構造が形成する凸凹な内側面の凹部51と嵌り合う環状の凸部73が形成されている。内側シールド部50とシールド接続部72との嵌め合い機構により、内側シールド部50と電装機器の筐体70とが電気的に接続されるとともに、電線保護チューブ30Aの端部が、電装機器の筐体70に保持される。
【0049】
<効果>
ワイヤハーネス1Aが採用されることにより、ワイヤハーネス1が採用される場合と同様に、配線経路の自由度を犠牲にすることなく、電磁シールド及び電線の保護を実現するための部材を装着する作業を簡素化できるという効果が得られる。また、外装部40Aは、樹脂の被覆であるため、弾性部材である外装部40よりも、電線保護の性能が高まる。
【0050】
<第3実施形態>
また、本発明の第3実施形態として、ワイヤハーネス1Aが備える電線保護チューブ30Aが、金属の内側シールド部50と、金属の外装部40Aとを備えることも考えられる。この場合、外装部40Aは、蛇腹式の筒状に形成された金属の部材である。また、内側シールド部50は、外装部40Aの内側面に沿って蛇腹式の筒状に形成され、外装部40Aよりも導電率の高い金属の部材である。
【0051】
本実施形態では、例えば、外装部40Aは、比較的導電率の低い鉄などの金属の部材である。一方、内側シールド部50は、導電率の高い銅又は銅の合金などの金属で構成されている。本実施形態では、金属製の外装部40Aが、電線保護チューブ30Aの形状を保持する構造体として機能する。そのため、内側シールド部50は、外装部40Aよりも厚みの薄い筒状であってもよい。例えば、内側シールド部50は、外装部40Aの内側面に溶着された金属の膜、又は外装部40Aの内側面に沿って形成れた編組線などであってもよい。
【0052】
導電率の低い鉄などの金属は、導電率の高い銅などの金属に比べ安価である。そのため、本実施形態によれば、安価で、電線保護の性能の高い電線保護チューブを実現することができる。
【0053】
<その他>
図2及び図5に示された実施形態においては、内側シールド部50とシールド接続部72との嵌め合い機構は、内側シールド部50の内側面の凹部51と、環状の凸部73とにより構成されている。しかしながら、内側シールド部50とシールド接続部72との嵌め合い機構は、内側シールド部50の内側面の凸部と、シールド接続部72に形成された凹部とにより構成されてもよい。
【符号の説明】
【0054】
1,1A ワイヤハーネス
10 電線
20 端子
30,30A 電線保護チューブ
40,40A 外装部
41 外装部の本体部
42 外装部の接続部
43 外装部の内側面の凹部
50 内側シールド部
51 内側シールド部の内側面の凹部
52 内側シールド部の内側面の凸部
70 電装機器の筐体
71 筐体の筒状部
72 筐体のシールド接続部
73 シールド接続部の凸部
74 電線導入口
80 端子台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線と該電線の周囲を覆う電線保護チューブとを備えたワイヤハーネスであって、
前記電線保護チューブは、
蛇腹式の筒状に形成された導電体からなり、内側に前記電線が通された内側シールド部と、
前記内側シールド部の外周面に密着した筒状に形成された外装部と、を備えることを特徴とするワイヤハーネス。
【請求項2】
前記内側シールド部は、蛇腹式の筒状に形成された金属の部材であり、
前記外装部は、前記内側シールド部における蛇腹構造が形成する凸凹な外側面と嵌り合う凸凹な内側面が形成された筒状の弾性部材である、請求項1に記載のワイヤハーネス。
【請求項3】
前記外装部の端部に、電装機器の導電性の筐体における電線導入口の縁部に被せられる接続部が形成されている、請求項2に記載のワイヤハーネス。
【請求項4】
前記内側シールド部は、蛇腹式の筒状に形成された金属の部材であり、
前記外装部は、前記内側シールド部の外側面に沿って形成された樹脂の被覆である、請求項1に記載のワイヤハーネス。
【請求項5】
前記外装部は、蛇腹式の筒状に形成された金属の部材であり、
前記内側シールド部は、前記外装部の内側面に沿って蛇腹式の筒状に形成され、前記外装部よりも導電率の高い金属の部材である、請求項1に記載のワイヤハーネス。
【請求項6】
電線の周囲を覆う電線保護チューブであって、
蛇腹式の筒状に形成された導電体からなる内側シールド部と、
前記内側シールド部の外周面に密着した筒状に形成された外装部と、を備えることを特徴とする電線保護チューブ。
【請求項7】
電線及び該電線の周囲を覆う電線保護チューブを備えたワイヤハーネスのシールド構造であって、
前記電線保護チューブの一部を構成し、蛇腹式の筒状に形成された導電体からなり、内側に前記電線が通された内側シールド部と、
前記電線保護チューブの一部を構成し、前記内側シールド部の外周面に密着した筒状に形成された外装部と、
電装機器の導電性の筐体における前記電線の導入口の縁部から前記内側シールド部の内側へ突出し、前記内側シールド部における蛇腹構造が形成する凸凹な内側面の凹部もしくは凸部と嵌り合う凸部もしくは凹部が形成された導電体からなるシールド接続部と、を備えることを特徴とするワイヤハーネスのシールド構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−175879(P2012−175879A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−38001(P2011−38001)
【出願日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】