ワイヤハーネス用のクリップ
【課題】ワイヤハーネスに粘着テープを巻き付けて取り付ける基板型のクリップの形状を改良する。
【解決手段】樹脂成形品からなり、長さ方向に延在する基板の表面の幅方向の中央部に車体係止部を突設し、かつ、該車体係止部から離れた長さ方向の端部の粘着テープ巻付領域に溝を幅方向に並設して該基板の幅方向の両側を裏面側に向けて互いに近接する方向に湾曲できる可動領域とし、前記基板の裏面に配置するワイヤハーネスの外周面に沿って前記可動領域を湾曲させ、該ワイヤハーネスと共に粘着テープを巻き付けてワイヤハーネスに取り付けるものとしている。
【解決手段】樹脂成形品からなり、長さ方向に延在する基板の表面の幅方向の中央部に車体係止部を突設し、かつ、該車体係止部から離れた長さ方向の端部の粘着テープ巻付領域に溝を幅方向に並設して該基板の幅方向の両側を裏面側に向けて互いに近接する方向に湾曲できる可動領域とし、前記基板の裏面に配置するワイヤハーネスの外周面に沿って前記可動領域を湾曲させ、該ワイヤハーネスと共に粘着テープを巻き付けてワイヤハーネスに取り付けるものとしている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤハーネス用のクリップに関し、詳しくは、四輪車や二輪車の車両に配索されるワイヤハーネスに車体固定用のクリップを粘着テープで巻き付けて固定するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に配索されるワイヤハーネスの所要位置に車体係止用のクリップを取り付け、該クリップに設けた車体係止部(クリップヘッド)を車体に設けた係止孔に挿入係止している。この種のクリップとして、従来から図10に示すテープ巻きされる基板型のクリップ100が汎用されている。該クリップ100は樹脂成形品からなり、長方形の基板(プレート)101の表面101aの中央より車体係止部(クリップヘッド)102を突設し、基板の長さ方向の両側をテープ巻き部103、104とし、長さ方向両端にテープ止め突起105、106を設けている。
基板101の裏面にワイヤハーネス110を沿わせて配置し、両側のテープ巻き部103、104に粘着テープ120A、120Bで巻き付けてワイヤハーネス110にクリップ100を固定している。
【0003】
前記クリップ100の両側にワイヤハーネス110を粘着テープ120A、120Bで固着した状態で車両に配索している。其の際、図11(A)に示すようにワイヤハーネス110をクリップ100の取付位置に近接した位置から曲げ配索される場合がある。図11(B)に示すように、曲げられたワイヤハーネスが他部材125と干渉する恐れがあるとワイヤハーネス110が粘着テープ120Aの固着位置から急激に曲げられる。この場合、粘着テープ120Aを曲げ方向に引っ張り、粘着テープ120Aが伸びると、クリップ100をワイヤハーネス110に安定して固定できなくなる問題がある。
【0004】
この種のクリップとして、特開2009−296694号公報で図12(A)(B)に示すように、丸電線の集束体であるワイヤハーネス110とフラット回路体130の両方に取り付けられるクリップ150が提供されている。該クリップ150の両側にワイヤハーネス保持部151を突設し、その間の長さ方向の中央部の一カ所にテープ巻付部152を設けている。該テープ巻付部152に粘着テープ120を巻き付けてワイヤハーネス110およびフラット回路体130とを固着している。該粘着テープ120の巻き付け位置の両側にはワイヤハーネス保持部151が突出しているため、粘着テープ120はワイヤハーネス110に引っ張られても伸びることはない。よって、前記したワイヤハーネスの急激曲げにより粘着テープが引っ張られて伸びることは防止できる。
【0005】
しかしながら、該クリップ150は、長さ方向の1カ所を粘着テープ120で巻き付けているだけであるため、両側にワイヤハーネス保持部151を必要としている。かつ、クリップ150はワイヤハーネスとフラット回路体の両方に取り付けるものであるため、複雑な形状になっており、ワイヤハーネスのみに取り付けるクリップとしては適さない。
【0006】
さらに、ワイヤハーネスの分岐位置にクリップを取り付ける場合が多い。その場合、クリップの取付前にワイヤハーネスの分岐形状をテープ巻きして形成する必要がある。よって、ワイヤハーネスの分岐形成のための粘着テープの巻き付けと、該分岐位置にクリップを取り付けるための粘着テープの巻き付けが必要であり、粘着テープの巻き付けが2回必要となり、作業手数がかかる問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−296694号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は前記問題に鑑みてなされたもので、丸電線の集束体であるワイヤハーネス用のテープ巻きクリップにおいて、前記図10に示す汎用されている長方形状の基板の両側にワイヤハーネスと共に粘着テープを巻き付けるタイプのクリップにおいて、ワイヤハーネスが急激に曲げられても、粘着テープに伸びを発生させないようにし、クリップをワイヤハーネスに安定した状態で固着保持できるようにすることを課題としている。
さらに、分岐位置に粘着テープを巻き付けるクリップでは、分岐形成のための粘着テープの巻き付けを不要とし、粘着テープの巻き付け回数を減らすことを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本発明は、樹脂成形品からなり、長さ方向に延在する基板の表面の幅方向の中央部に車体係止部を突設し、かつ、該車体係止部から離れた長さ方向の端部の粘着テープ巻付領域に溝を幅方向に並設して該基板の幅方向の両側を裏面側に向けて互いに近接する方向に湾曲できる可動領域とし、
前記基板の裏面に配置するワイヤハーネスの外周面に沿って前記可動領域を湾曲させ、該ワイヤハーネスと共に粘着テープを巻き付けてワイヤハーネスに取り付けるものとしていることを特徴とするワイヤハーネス用のクリップを提供している。
【0010】
本発明のクリップは、粘着テープ巻付領域をワイヤハーネスの外周面に添わせて湾曲させることができる可動領域を設けていることを特徴とする。粘着テープはワイヤハーネスの外周面に沿って湾曲させた可動領域の基板とワイヤハーネスの外周に巻き付けているため、基板の裏面をワイヤハーネスに広範囲で面接触させてワイヤハーネスへの保持力を高めることができる。
また、基板をワイヤハーネスの外周面に沿って湾曲させるため、ワイヤハーネス径が大小相違しても共用で用いることができる。
【0011】
前記基板の表面の可動領域に設ける溝は、幅方向に等間隔で設けても良いが、幅方向の両側にそれぞれ2本程度の溝を設け、中央部には溝を設けないことが好ましい。これは、溝を設けていない幅方向の中央部の基板の表面に車体係止部を突設しており、該車体係止部を変形させないことが好ましいことに因る。
【0012】
前記基板の表面側の幅方向の中央に設ける車体係止部(クリップヘッド)は、基板表面から突設した皿部の中央から軸部が突設し、該軸部の先端から一対の羽根部を折り返し状に突設し、該羽根部の先端に係止段部を設けている。該車体係止部を車体に設けた取付孔に挿入し、係止段部を取付孔の周縁に係止して車体に固定するものである。
【0013】
前記基板の長さ方向の端部の裏面に幅方向に間隔をあけて突起を設け、前記ワイヤハーネスに外装するコルゲートチューブの谷部に前記突起を嵌合させるものとしていることが好ましい。
このように、基板タイプのクリップにおいて、コルゲートチューブの谷部に嵌合する突起を設けると、コルゲートチューブの軸線方向の移動を阻止した仮止め状態で粘着テープを巻き付けることができ、作業性がよい。
なお、基板の厚さが大である時は突起(凸部)に変えて凹部を設け、コルゲートチューブの山部を嵌合してもよい。
【0014】
前記基板は長方形状とし、前記車体係止部は基板の長さ方向の中央部に設け、該基板の表面の長さ方向の両側部分に前記溝を長さ方向に延在すると共に幅方向に並設した前記可動領域を設け、かつ、該基板の長さ方向の両端に幅方向の両側縁から裏側に向けて一対のリブを突設し、この幅方向に対向する一対のリブを互いに近接する方向に湾曲させ、該一対のリブもワイヤハーネスの外周面に沿わせる構成としてもよい。
【0015】
前記のように、粘着テープの巻付部分の外側にリブを位置させると、ワイヤハーネスが急激に曲げられても、リブに応力が集中し、粘着テープへの負担を無くすことができ、粘着テープの伸びを無くすことができる。
【0016】
また、ワイヤハーネスの分岐位置に取り付けるクリップでは、前記基板は、前記車体係止部を突設した中央部を幅狭部にすると共に、長さ方向の両側の粘着テープ巻付領域を幅広部とした可動領域とし、該両側の幅広部の長さ方向の両側の表面に前記溝を設けると共に裏面に前記突起を設けることが好ましい。
【0017】
前記のように、基板の両側の可動領域となる幅広部の間に車体係止部を突設した幅狭部を設けると、該幅狭部の幅方向の両側外縁からワイヤハーネスの幹線から分岐する枝線を引き出すことができる。その際、幹線の両側は基板と粘着テープを巻き付けて固着して円柱形状になっているため、この円柱形状の両側の固着部に挟まれた間から枝線を分岐させることができるため、前以てワイヤハーネスに粘着テープを巻き付けて分岐を形成する必要がない。よって、従来問題となっていた粘着テープの巻き付け作業の回数を減らすことができる。
かつ、分岐線ワイヤハーネスの外周面に沿って湾曲させる部分を幅広部とすると、ワイヤハーネスへの接触面積を大きくでき、さらに、基板の両側に幅広部を設けると、ワイヤハーネスをより安定して保持することができる。
【0018】
前記基板は長さ方向の一側部は幅狭部にすると共に他側部は幅広部とし、前記幅狭部の表面に前記車体係止部を突設する一方、前記幅広部の表面に前記溝を設けて可動領域を設けてもよい。
即ち、幅広部を基板の長さ方向の両側に設けると、言わば、両持ち支持となるが、前記形状とすると片持ち支持となる。ワイヤハーネスの電線本数が比較的少ない場合は片持ち支持で取付強度は確保できると共に、粘着テープの巻き付けが一カ所だけになる利点がある。
【発明の効果】
【0019】
前記のように、本発明に係わる粘着テープで巻き付ける基板型のクリップでは、基板の長さ方向の端部の粘着テープ巻付領域に溝を設けて可動領域とし、該可動領域をワイヤハーネスの外周面に沿って幅方向に湾曲させることにより、ワイヤハーネスと基板とを面接触させることができ、基板とワイヤハーネスの固着力を強めることができる。かつ、前記のように、可動領域を設けてワイヤハーネスの外周面に沿わせるため、ワイヤハーネス径が相違しても共用で用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施形態のクリップを取り付けたワイヤハーネスの斜視図である。
【図2】前記第1実施形態のクリップを示し、(A)は底面図、(B)は底面側からみた斜視図、(C)は平面図、(D)断面図である。
【図3】クリップの裏面にワイヤハーネスを配置した状態の側面図である。
【図4】クリップの表面側からワイヤハーネスの外周面にかけて粘着テープを巻き付けた状態を示す側面図である。
【図5】本発明のクリップを取り付けたワイヤハーネスの作用を示す図面である。
【図6】本発明の第2実施形態のクリップを示し、(A)は斜視図、(B)は底面図、(C)は(B)のA−A線断面図である。
【図7】(A)(B)(C)は第2実施形態のクリップを分岐を有するワイヤハーネスに取り付ける工程を示す図面である。
【図8】(A)(B)は第2実施形態の作用を示す図面である。
【図9】本発明の第3実施形態のクリップを示す斜視図である。
【図10】従来のクリップをワイヤハーネスに取り付けた状態を示す斜視図である。
【図11】(A)(B)は従来のクリップの問題点を示す説明図である。
【図12】(A)(B)は他の従来例を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
実施形態のクリップは、四輪車または二輪車に配索するワイヤハーネス10に粘着テープ11を巻き付けて取り付ける所謂基板タイプのクリップである。
【0022】
図1乃至図5に第1実施形態のクリップを示す。
クリップ1は樹脂成形品からなり、長方形状の基板2の表面2aの長さ方向Lの中央部に車体係止部3を突設している。また、基板2の長さ方向の両端2b、2cに幅方向Sの両側面より裏側に向けてリブ4Aと4B、5Aと5Bを対向して突設している。これら対向する一対のリブ4Aと4B、5Aと5Bは互いに近接する方向に向けて湾曲させている。
【0023】
さらに、基板2の表面2aには、車体係止部3の両側と対向する位置から両端面2b、2cまで延在する溝6を幅方向に平行にそれぞれ4本並設している。この長さ方向の両側に夫々設けた4本の溝6は幅方向の中央部は空けて、幅方向の両側部に2本6aと6b、6cと6dを近接させて設けている。車体係止部3の両側の溝6を設けた領域を可動領域X1、X2としている。
【0024】
この可動領域X1、X2では、基板2の裏面2dにワイヤハーネス10を沿わせた状態で、可動領域X1、X2の表面からワイヤハーネス10の外周面にかけて粘着テープ11A、11Bを巻き付けると、溝6を支点として基板2がワイヤハーネス10の外周面に沿って湾曲するように可動させることができる。よって、溝6の深さ及び溝6のピッチは粘着テープの巻き付けで基板2を湾曲させることが出来る程度に設定している。
【0025】
粘着テープ11A、11Bの巻付領域は可動領域X1、X2となり、該可動領域X1、X2の長さ方向両端にリブ4Aと4B、5Aと5Bを夫々突設しているため、該巻付領域に巻き付けた粘着テープ11A、11Bを前記リブ4A〜5Bでテープ止めしている。
【0026】
基板2の表面2aの中央に設ける前記車体係止部3は、基板表面2aから突設した皿部3aと、該皿部3aの中央から突設した軸部3bと、軸部3bの先端から折り返し状に突設した一対の羽根部3cを備え、該羽根部3cの先端に係止段部3dを設けている。
前記基板2の可動領域X1、X2に粘着テープ11A、11Bを巻き付けるため、前記皿部3aは可動領域X1、X2に挟まれた間に設け、粘着テープの巻き付け領域に突出しないように設定している。
【0027】
前記構成としたクリップ1は車両に配索するワイヤハーネス10の車体固定位置に粘着テープ11A、11Bを巻き付けて取り付けている。
即ち、図3に示すように、基板2の裏面2dの長さ方向Lに沿ってワイヤハーネス10の長さ方向を沿わせて配置し、基板2の可動領域X1、X2の外面(基板表面2a側)からワイヤハーネス10の外周面にかけて粘着テープ11A、11Bをそれぞれ強く巻き付ける。
【0028】
この粘着テープ11A、11Bの巻き付けにより、可動領域X1、X2では溝6を支点として基板2がワイヤハーネス10の外周面に密着する方向、即ち、幅方向Sに湾曲し、図3に示す状態から図4に示すように変形し、基板2の裏面2dをワイヤハーネス10に面接触させた状態で粘着テープ11A、11Bで固着される。
従来のクリップの基板は粘着テープの巻き付けで湾曲しないために、円形のワイヤハーネスと基板とは線接触であったが、前記のようにクリップ1を湾曲させてワイヤハーネス10と面接触させることで、クリップ1をワイヤハーネス10に対して従来よりも強く固着することができる。
かつ、該粘着テープ11A、11Bの外側には、それぞれリブ4Aと4B、5Aと5Bが位置し、粘着テープ11A、11Bを外部干渉材から保護している。
【0029】
前記のようにクリップ1を粘着テープ11A、11Bで巻き付けたワイヤハーネス10を車体(図示せず)にクリップ1を介して固定しながら配索する。その際、クリップ1から突設した車体係止部3を、車体(図示せず)の貫通孔に挿入し、車体係止部3の係止段部3dを貫通孔の周縁に係止し、かつ、皿部3aを車体の表面に圧接してクリップ1を車体に固定する。
【0030】
図5に示すように、クリップ1の取付位置に近接した位置に他部材50が位置し、ワイヤハーネス10が干渉する場合、ワイヤハーネス10は図示のように90度曲げられる。このように、ワイヤハーネス10が急激に曲げられると、クリップ1にワイヤハーネス10による曲げ方向の引っ張り負荷が作用する。其の際、ワイヤハーネス10が曲げられる側のクリップ1のリブ4A、4Bに応力が集中し、粘着テープ11Aへの負荷を無くすことができ、粘着テープ11Aに伸びを発生させない。よって、クリップ1をワイヤハーネス10に粘着テープ11A、11Bで安定的に固着できる。
【0031】
このように、クリップ1の取付位置からワイヤハーネスが急激に曲げられても粘着テープ11A、11Bに伸びが生じるのを防止できるため、クリップ1をワイヤハーネス10にガタつきなく取り付けることができる。よって、ワイヤハーネス10をクリップ1を介して車体に強固に取り付けることができる。
【0032】
図6乃至図8に第2実施形態のクリップ1ーAを示す。
第2実施形態のクリップ1ーAは、ワイヤハーネス10の幹線10Aから枝線10Bが分岐する位置の直上に取り付けるクリップである。
【0033】
基板2は、車体係止部3を突設した中央部を幅狭部20にすると共に、長さ方向の両側の粘着テープ巻付領域を幅広部21(21A、21B)とした可動領域X1、X2としている。前記中央の幅狭部20の幅方向の両側から枝線10Bを引き出し、該枝線10Bの分岐位置を挟む幹線10Aの両側を幅広部21A、21Bと粘着テープ11A、11Bで巻き付けるものとしている。前記幅狭部20の基板表面2aには第1実施形態と同様な車体係止部3を突設している。
両側の幅広部21の可動領域X1、X2の幅は第1実施形態の基板の幅より広くし、幅狭部20の幅は第1実施形態の基板の幅より狭くしている。前記幅狭部20の幅は幅広部21の幅の1/5〜1/3程度としている。
【0034】
前記幅広部21(21A、21B)の長さ方向の両端側に沿った位置に、表面2aに溝6を幅広部21の長さ方向の全長に延在して設けていると共に、基板の裏面2dに凸状の突起23を幅方向に間隔をあけて設けている。なお、幅狭部20と連続する幅方向の中央部には前記溝6および突起23を設けていない。
【0035】
前記突起23は幅方向に一列に並設し、図7に示すように、ワイヤハーネス10の幹線10Aに外装したコルゲートチューブ40の谷部40aに差し込まれる大きさとしている。コルゲートチューブ40は汎用されているコルゲートチューブであり、環状の山部40bと谷部40aとが軸線方向に交互に設けられた樹脂成形品からなる。該コルゲートチューブ40の外周面に沿って前記可動領域X1、X2が湾曲され、湾曲状態で周方向に並列される前記突起23がコルゲートチューブ40の1つの谷部40aに差し込まれ、コルゲートチューブ40の長さ方向(軸線方向)の移動を阻止するものとしている。
【0036】
なお、突起23を長さ方向に間隔をあけて2列等の複数列で設けてもよい。コルゲートチューブ40によって山谷のピッチが相違すると共用できなくたるため、突起23は1列が好ましい。
また、本第2実施形態のクリップでは、ワイヤハーネス巻付領域を前記幅広部21としてコルゲートチューブとの接触面積を大としているため、第1実施形態で設けていたリブは設けていない。なお、該幅広部21の幅方向両端から第1実施形態と同様に湾曲させたリブを突設してもよい。
【0037】
次に、前記クリップ1−Aにワイヤハーネス10を取り付ける工程について説明する。 図7(A)に示すように、クリップ1−Aの基板2の裏面2d上に長さ方向に沿ってワイヤハーネス10の幹線10Aを搭載する。該幹線10Aから分岐する枝線10Bは長さ方向中央の幅狭部20に位置させて、両側の枝線10Bを幅狭部20の幅方向の両側縁より外方にそれぞれ引き出す。この状態で、ワイヤハーネス10には幹線10Aから枝線10Bが分岐する位置に粘着テープを巻き付けて分岐部を保持することは行っていないが、分岐部を挟む幹線10Aの両側にコルゲートチューブ40をそれぞれ外装している。
この状態で、両側のコルゲートチューブ40の谷部40aに幅広部21A、22Bの突起23が差し込まれるように位置合わせする。
【0038】
ついで、図7(B)に示すように、両側の幅広部21(21A、21B)をそれぞれコルゲートチューブ40の外周面に添わせるように、表面2a側の溝6を屈曲支点として湾曲させる。この状態で、図7(B)に示すようにコルゲートチューブ40の外周を幅広部21で囲む。
ついで、図7(C)に示すように、粘着テープ11Aを湾曲させた幅広部21Aの外周面からコルゲートチューブ40の外周面にかけて巻き付けて固着する。ついで、枝線10Bの引き出し部分を外して、他方の幅広部21Bの外周面からコルゲートチューブ40の外周面にかけて粘着テープ11Bを巻き付けて固着する。
【0039】
このように、基板2の両側の湾曲させた幅広部21にワイヤハーネス10の幹線10Aを粘着テープ11A、11Bで固着している略円柱形状とし、この円柱形状の両側の固着部に挟まれた間から枝線10Bを分岐させることができるため、分岐部が保持される。よって、枝線10Bを幹線10Aから分岐させる分岐形成用の粘着テープの巻き付けを予め施しておく必要がなく、分岐テープ巻きなしの分岐を作成することができる。
【0040】
かつ、粘着テープによる巻き付けで、基板に幅方向に並設した突起23をコルゲートチューブ40の谷部40aに周状に嵌合することができ、ワイヤハーネスに外装したコルゲートチューブ40の軸線方向の移動を阻止した状態で安定してクリップ1−Aに取り付けることができる。よって、図8に示すように、コルゲートチューブ40を外装した幹線10Aが曲げ方向に引っ張られても、コルゲートチューブ40を長さ方向に位置ずれすることなく安定して保持できる。
【0041】
図9に第3実施形態のクリップ1−Bを示す。
第3実施形態のクリップ1−Bは第2実施形態のクリップの一方の幅広部21Bを無くした所謂片持ち形状としている。
【0042】
基板2は長さ方向の一側部は幅狭部20にすると共に他側部は幅広部21とし、幅狭部20の表面に車体係止部3を突設すると共に幅広部21に前記溝6を設けて可動領域としている。なお、幅広部21の裏面に突起を設けていない。
【0043】
前記の片持ち支持のクリップ1−Bは、ワイヤハーネスの電線本数が比較的少ない場合は片持ち支持で取付強度は確保できると共に、粘着テープの巻き付けが一カ所だけになる利点があるため、好適に用いられる。また、ワイヤハーネスにコルゲートチューブを外装していないため突起を設けていない。
【符号の説明】
【0044】
1 クリップ
2 基板
2a 表面
2d 裏面
3 車体係止部
4A、4B、5A、5B リブ
6 溝
10 ワイヤハーネス
10A 幹線
10B 枝線
11A、11B 粘着テープ
20 幅狭部
21(21A、21B) 幅広部
23 突起
40 コルゲートチューブ
40a 谷部
X1、X2 可動領域
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤハーネス用のクリップに関し、詳しくは、四輪車や二輪車の車両に配索されるワイヤハーネスに車体固定用のクリップを粘着テープで巻き付けて固定するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に配索されるワイヤハーネスの所要位置に車体係止用のクリップを取り付け、該クリップに設けた車体係止部(クリップヘッド)を車体に設けた係止孔に挿入係止している。この種のクリップとして、従来から図10に示すテープ巻きされる基板型のクリップ100が汎用されている。該クリップ100は樹脂成形品からなり、長方形の基板(プレート)101の表面101aの中央より車体係止部(クリップヘッド)102を突設し、基板の長さ方向の両側をテープ巻き部103、104とし、長さ方向両端にテープ止め突起105、106を設けている。
基板101の裏面にワイヤハーネス110を沿わせて配置し、両側のテープ巻き部103、104に粘着テープ120A、120Bで巻き付けてワイヤハーネス110にクリップ100を固定している。
【0003】
前記クリップ100の両側にワイヤハーネス110を粘着テープ120A、120Bで固着した状態で車両に配索している。其の際、図11(A)に示すようにワイヤハーネス110をクリップ100の取付位置に近接した位置から曲げ配索される場合がある。図11(B)に示すように、曲げられたワイヤハーネスが他部材125と干渉する恐れがあるとワイヤハーネス110が粘着テープ120Aの固着位置から急激に曲げられる。この場合、粘着テープ120Aを曲げ方向に引っ張り、粘着テープ120Aが伸びると、クリップ100をワイヤハーネス110に安定して固定できなくなる問題がある。
【0004】
この種のクリップとして、特開2009−296694号公報で図12(A)(B)に示すように、丸電線の集束体であるワイヤハーネス110とフラット回路体130の両方に取り付けられるクリップ150が提供されている。該クリップ150の両側にワイヤハーネス保持部151を突設し、その間の長さ方向の中央部の一カ所にテープ巻付部152を設けている。該テープ巻付部152に粘着テープ120を巻き付けてワイヤハーネス110およびフラット回路体130とを固着している。該粘着テープ120の巻き付け位置の両側にはワイヤハーネス保持部151が突出しているため、粘着テープ120はワイヤハーネス110に引っ張られても伸びることはない。よって、前記したワイヤハーネスの急激曲げにより粘着テープが引っ張られて伸びることは防止できる。
【0005】
しかしながら、該クリップ150は、長さ方向の1カ所を粘着テープ120で巻き付けているだけであるため、両側にワイヤハーネス保持部151を必要としている。かつ、クリップ150はワイヤハーネスとフラット回路体の両方に取り付けるものであるため、複雑な形状になっており、ワイヤハーネスのみに取り付けるクリップとしては適さない。
【0006】
さらに、ワイヤハーネスの分岐位置にクリップを取り付ける場合が多い。その場合、クリップの取付前にワイヤハーネスの分岐形状をテープ巻きして形成する必要がある。よって、ワイヤハーネスの分岐形成のための粘着テープの巻き付けと、該分岐位置にクリップを取り付けるための粘着テープの巻き付けが必要であり、粘着テープの巻き付けが2回必要となり、作業手数がかかる問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−296694号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は前記問題に鑑みてなされたもので、丸電線の集束体であるワイヤハーネス用のテープ巻きクリップにおいて、前記図10に示す汎用されている長方形状の基板の両側にワイヤハーネスと共に粘着テープを巻き付けるタイプのクリップにおいて、ワイヤハーネスが急激に曲げられても、粘着テープに伸びを発生させないようにし、クリップをワイヤハーネスに安定した状態で固着保持できるようにすることを課題としている。
さらに、分岐位置に粘着テープを巻き付けるクリップでは、分岐形成のための粘着テープの巻き付けを不要とし、粘着テープの巻き付け回数を減らすことを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本発明は、樹脂成形品からなり、長さ方向に延在する基板の表面の幅方向の中央部に車体係止部を突設し、かつ、該車体係止部から離れた長さ方向の端部の粘着テープ巻付領域に溝を幅方向に並設して該基板の幅方向の両側を裏面側に向けて互いに近接する方向に湾曲できる可動領域とし、
前記基板の裏面に配置するワイヤハーネスの外周面に沿って前記可動領域を湾曲させ、該ワイヤハーネスと共に粘着テープを巻き付けてワイヤハーネスに取り付けるものとしていることを特徴とするワイヤハーネス用のクリップを提供している。
【0010】
本発明のクリップは、粘着テープ巻付領域をワイヤハーネスの外周面に添わせて湾曲させることができる可動領域を設けていることを特徴とする。粘着テープはワイヤハーネスの外周面に沿って湾曲させた可動領域の基板とワイヤハーネスの外周に巻き付けているため、基板の裏面をワイヤハーネスに広範囲で面接触させてワイヤハーネスへの保持力を高めることができる。
また、基板をワイヤハーネスの外周面に沿って湾曲させるため、ワイヤハーネス径が大小相違しても共用で用いることができる。
【0011】
前記基板の表面の可動領域に設ける溝は、幅方向に等間隔で設けても良いが、幅方向の両側にそれぞれ2本程度の溝を設け、中央部には溝を設けないことが好ましい。これは、溝を設けていない幅方向の中央部の基板の表面に車体係止部を突設しており、該車体係止部を変形させないことが好ましいことに因る。
【0012】
前記基板の表面側の幅方向の中央に設ける車体係止部(クリップヘッド)は、基板表面から突設した皿部の中央から軸部が突設し、該軸部の先端から一対の羽根部を折り返し状に突設し、該羽根部の先端に係止段部を設けている。該車体係止部を車体に設けた取付孔に挿入し、係止段部を取付孔の周縁に係止して車体に固定するものである。
【0013】
前記基板の長さ方向の端部の裏面に幅方向に間隔をあけて突起を設け、前記ワイヤハーネスに外装するコルゲートチューブの谷部に前記突起を嵌合させるものとしていることが好ましい。
このように、基板タイプのクリップにおいて、コルゲートチューブの谷部に嵌合する突起を設けると、コルゲートチューブの軸線方向の移動を阻止した仮止め状態で粘着テープを巻き付けることができ、作業性がよい。
なお、基板の厚さが大である時は突起(凸部)に変えて凹部を設け、コルゲートチューブの山部を嵌合してもよい。
【0014】
前記基板は長方形状とし、前記車体係止部は基板の長さ方向の中央部に設け、該基板の表面の長さ方向の両側部分に前記溝を長さ方向に延在すると共に幅方向に並設した前記可動領域を設け、かつ、該基板の長さ方向の両端に幅方向の両側縁から裏側に向けて一対のリブを突設し、この幅方向に対向する一対のリブを互いに近接する方向に湾曲させ、該一対のリブもワイヤハーネスの外周面に沿わせる構成としてもよい。
【0015】
前記のように、粘着テープの巻付部分の外側にリブを位置させると、ワイヤハーネスが急激に曲げられても、リブに応力が集中し、粘着テープへの負担を無くすことができ、粘着テープの伸びを無くすことができる。
【0016】
また、ワイヤハーネスの分岐位置に取り付けるクリップでは、前記基板は、前記車体係止部を突設した中央部を幅狭部にすると共に、長さ方向の両側の粘着テープ巻付領域を幅広部とした可動領域とし、該両側の幅広部の長さ方向の両側の表面に前記溝を設けると共に裏面に前記突起を設けることが好ましい。
【0017】
前記のように、基板の両側の可動領域となる幅広部の間に車体係止部を突設した幅狭部を設けると、該幅狭部の幅方向の両側外縁からワイヤハーネスの幹線から分岐する枝線を引き出すことができる。その際、幹線の両側は基板と粘着テープを巻き付けて固着して円柱形状になっているため、この円柱形状の両側の固着部に挟まれた間から枝線を分岐させることができるため、前以てワイヤハーネスに粘着テープを巻き付けて分岐を形成する必要がない。よって、従来問題となっていた粘着テープの巻き付け作業の回数を減らすことができる。
かつ、分岐線ワイヤハーネスの外周面に沿って湾曲させる部分を幅広部とすると、ワイヤハーネスへの接触面積を大きくでき、さらに、基板の両側に幅広部を設けると、ワイヤハーネスをより安定して保持することができる。
【0018】
前記基板は長さ方向の一側部は幅狭部にすると共に他側部は幅広部とし、前記幅狭部の表面に前記車体係止部を突設する一方、前記幅広部の表面に前記溝を設けて可動領域を設けてもよい。
即ち、幅広部を基板の長さ方向の両側に設けると、言わば、両持ち支持となるが、前記形状とすると片持ち支持となる。ワイヤハーネスの電線本数が比較的少ない場合は片持ち支持で取付強度は確保できると共に、粘着テープの巻き付けが一カ所だけになる利点がある。
【発明の効果】
【0019】
前記のように、本発明に係わる粘着テープで巻き付ける基板型のクリップでは、基板の長さ方向の端部の粘着テープ巻付領域に溝を設けて可動領域とし、該可動領域をワイヤハーネスの外周面に沿って幅方向に湾曲させることにより、ワイヤハーネスと基板とを面接触させることができ、基板とワイヤハーネスの固着力を強めることができる。かつ、前記のように、可動領域を設けてワイヤハーネスの外周面に沿わせるため、ワイヤハーネス径が相違しても共用で用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施形態のクリップを取り付けたワイヤハーネスの斜視図である。
【図2】前記第1実施形態のクリップを示し、(A)は底面図、(B)は底面側からみた斜視図、(C)は平面図、(D)断面図である。
【図3】クリップの裏面にワイヤハーネスを配置した状態の側面図である。
【図4】クリップの表面側からワイヤハーネスの外周面にかけて粘着テープを巻き付けた状態を示す側面図である。
【図5】本発明のクリップを取り付けたワイヤハーネスの作用を示す図面である。
【図6】本発明の第2実施形態のクリップを示し、(A)は斜視図、(B)は底面図、(C)は(B)のA−A線断面図である。
【図7】(A)(B)(C)は第2実施形態のクリップを分岐を有するワイヤハーネスに取り付ける工程を示す図面である。
【図8】(A)(B)は第2実施形態の作用を示す図面である。
【図9】本発明の第3実施形態のクリップを示す斜視図である。
【図10】従来のクリップをワイヤハーネスに取り付けた状態を示す斜視図である。
【図11】(A)(B)は従来のクリップの問題点を示す説明図である。
【図12】(A)(B)は他の従来例を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
実施形態のクリップは、四輪車または二輪車に配索するワイヤハーネス10に粘着テープ11を巻き付けて取り付ける所謂基板タイプのクリップである。
【0022】
図1乃至図5に第1実施形態のクリップを示す。
クリップ1は樹脂成形品からなり、長方形状の基板2の表面2aの長さ方向Lの中央部に車体係止部3を突設している。また、基板2の長さ方向の両端2b、2cに幅方向Sの両側面より裏側に向けてリブ4Aと4B、5Aと5Bを対向して突設している。これら対向する一対のリブ4Aと4B、5Aと5Bは互いに近接する方向に向けて湾曲させている。
【0023】
さらに、基板2の表面2aには、車体係止部3の両側と対向する位置から両端面2b、2cまで延在する溝6を幅方向に平行にそれぞれ4本並設している。この長さ方向の両側に夫々設けた4本の溝6は幅方向の中央部は空けて、幅方向の両側部に2本6aと6b、6cと6dを近接させて設けている。車体係止部3の両側の溝6を設けた領域を可動領域X1、X2としている。
【0024】
この可動領域X1、X2では、基板2の裏面2dにワイヤハーネス10を沿わせた状態で、可動領域X1、X2の表面からワイヤハーネス10の外周面にかけて粘着テープ11A、11Bを巻き付けると、溝6を支点として基板2がワイヤハーネス10の外周面に沿って湾曲するように可動させることができる。よって、溝6の深さ及び溝6のピッチは粘着テープの巻き付けで基板2を湾曲させることが出来る程度に設定している。
【0025】
粘着テープ11A、11Bの巻付領域は可動領域X1、X2となり、該可動領域X1、X2の長さ方向両端にリブ4Aと4B、5Aと5Bを夫々突設しているため、該巻付領域に巻き付けた粘着テープ11A、11Bを前記リブ4A〜5Bでテープ止めしている。
【0026】
基板2の表面2aの中央に設ける前記車体係止部3は、基板表面2aから突設した皿部3aと、該皿部3aの中央から突設した軸部3bと、軸部3bの先端から折り返し状に突設した一対の羽根部3cを備え、該羽根部3cの先端に係止段部3dを設けている。
前記基板2の可動領域X1、X2に粘着テープ11A、11Bを巻き付けるため、前記皿部3aは可動領域X1、X2に挟まれた間に設け、粘着テープの巻き付け領域に突出しないように設定している。
【0027】
前記構成としたクリップ1は車両に配索するワイヤハーネス10の車体固定位置に粘着テープ11A、11Bを巻き付けて取り付けている。
即ち、図3に示すように、基板2の裏面2dの長さ方向Lに沿ってワイヤハーネス10の長さ方向を沿わせて配置し、基板2の可動領域X1、X2の外面(基板表面2a側)からワイヤハーネス10の外周面にかけて粘着テープ11A、11Bをそれぞれ強く巻き付ける。
【0028】
この粘着テープ11A、11Bの巻き付けにより、可動領域X1、X2では溝6を支点として基板2がワイヤハーネス10の外周面に密着する方向、即ち、幅方向Sに湾曲し、図3に示す状態から図4に示すように変形し、基板2の裏面2dをワイヤハーネス10に面接触させた状態で粘着テープ11A、11Bで固着される。
従来のクリップの基板は粘着テープの巻き付けで湾曲しないために、円形のワイヤハーネスと基板とは線接触であったが、前記のようにクリップ1を湾曲させてワイヤハーネス10と面接触させることで、クリップ1をワイヤハーネス10に対して従来よりも強く固着することができる。
かつ、該粘着テープ11A、11Bの外側には、それぞれリブ4Aと4B、5Aと5Bが位置し、粘着テープ11A、11Bを外部干渉材から保護している。
【0029】
前記のようにクリップ1を粘着テープ11A、11Bで巻き付けたワイヤハーネス10を車体(図示せず)にクリップ1を介して固定しながら配索する。その際、クリップ1から突設した車体係止部3を、車体(図示せず)の貫通孔に挿入し、車体係止部3の係止段部3dを貫通孔の周縁に係止し、かつ、皿部3aを車体の表面に圧接してクリップ1を車体に固定する。
【0030】
図5に示すように、クリップ1の取付位置に近接した位置に他部材50が位置し、ワイヤハーネス10が干渉する場合、ワイヤハーネス10は図示のように90度曲げられる。このように、ワイヤハーネス10が急激に曲げられると、クリップ1にワイヤハーネス10による曲げ方向の引っ張り負荷が作用する。其の際、ワイヤハーネス10が曲げられる側のクリップ1のリブ4A、4Bに応力が集中し、粘着テープ11Aへの負荷を無くすことができ、粘着テープ11Aに伸びを発生させない。よって、クリップ1をワイヤハーネス10に粘着テープ11A、11Bで安定的に固着できる。
【0031】
このように、クリップ1の取付位置からワイヤハーネスが急激に曲げられても粘着テープ11A、11Bに伸びが生じるのを防止できるため、クリップ1をワイヤハーネス10にガタつきなく取り付けることができる。よって、ワイヤハーネス10をクリップ1を介して車体に強固に取り付けることができる。
【0032】
図6乃至図8に第2実施形態のクリップ1ーAを示す。
第2実施形態のクリップ1ーAは、ワイヤハーネス10の幹線10Aから枝線10Bが分岐する位置の直上に取り付けるクリップである。
【0033】
基板2は、車体係止部3を突設した中央部を幅狭部20にすると共に、長さ方向の両側の粘着テープ巻付領域を幅広部21(21A、21B)とした可動領域X1、X2としている。前記中央の幅狭部20の幅方向の両側から枝線10Bを引き出し、該枝線10Bの分岐位置を挟む幹線10Aの両側を幅広部21A、21Bと粘着テープ11A、11Bで巻き付けるものとしている。前記幅狭部20の基板表面2aには第1実施形態と同様な車体係止部3を突設している。
両側の幅広部21の可動領域X1、X2の幅は第1実施形態の基板の幅より広くし、幅狭部20の幅は第1実施形態の基板の幅より狭くしている。前記幅狭部20の幅は幅広部21の幅の1/5〜1/3程度としている。
【0034】
前記幅広部21(21A、21B)の長さ方向の両端側に沿った位置に、表面2aに溝6を幅広部21の長さ方向の全長に延在して設けていると共に、基板の裏面2dに凸状の突起23を幅方向に間隔をあけて設けている。なお、幅狭部20と連続する幅方向の中央部には前記溝6および突起23を設けていない。
【0035】
前記突起23は幅方向に一列に並設し、図7に示すように、ワイヤハーネス10の幹線10Aに外装したコルゲートチューブ40の谷部40aに差し込まれる大きさとしている。コルゲートチューブ40は汎用されているコルゲートチューブであり、環状の山部40bと谷部40aとが軸線方向に交互に設けられた樹脂成形品からなる。該コルゲートチューブ40の外周面に沿って前記可動領域X1、X2が湾曲され、湾曲状態で周方向に並列される前記突起23がコルゲートチューブ40の1つの谷部40aに差し込まれ、コルゲートチューブ40の長さ方向(軸線方向)の移動を阻止するものとしている。
【0036】
なお、突起23を長さ方向に間隔をあけて2列等の複数列で設けてもよい。コルゲートチューブ40によって山谷のピッチが相違すると共用できなくたるため、突起23は1列が好ましい。
また、本第2実施形態のクリップでは、ワイヤハーネス巻付領域を前記幅広部21としてコルゲートチューブとの接触面積を大としているため、第1実施形態で設けていたリブは設けていない。なお、該幅広部21の幅方向両端から第1実施形態と同様に湾曲させたリブを突設してもよい。
【0037】
次に、前記クリップ1−Aにワイヤハーネス10を取り付ける工程について説明する。 図7(A)に示すように、クリップ1−Aの基板2の裏面2d上に長さ方向に沿ってワイヤハーネス10の幹線10Aを搭載する。該幹線10Aから分岐する枝線10Bは長さ方向中央の幅狭部20に位置させて、両側の枝線10Bを幅狭部20の幅方向の両側縁より外方にそれぞれ引き出す。この状態で、ワイヤハーネス10には幹線10Aから枝線10Bが分岐する位置に粘着テープを巻き付けて分岐部を保持することは行っていないが、分岐部を挟む幹線10Aの両側にコルゲートチューブ40をそれぞれ外装している。
この状態で、両側のコルゲートチューブ40の谷部40aに幅広部21A、22Bの突起23が差し込まれるように位置合わせする。
【0038】
ついで、図7(B)に示すように、両側の幅広部21(21A、21B)をそれぞれコルゲートチューブ40の外周面に添わせるように、表面2a側の溝6を屈曲支点として湾曲させる。この状態で、図7(B)に示すようにコルゲートチューブ40の外周を幅広部21で囲む。
ついで、図7(C)に示すように、粘着テープ11Aを湾曲させた幅広部21Aの外周面からコルゲートチューブ40の外周面にかけて巻き付けて固着する。ついで、枝線10Bの引き出し部分を外して、他方の幅広部21Bの外周面からコルゲートチューブ40の外周面にかけて粘着テープ11Bを巻き付けて固着する。
【0039】
このように、基板2の両側の湾曲させた幅広部21にワイヤハーネス10の幹線10Aを粘着テープ11A、11Bで固着している略円柱形状とし、この円柱形状の両側の固着部に挟まれた間から枝線10Bを分岐させることができるため、分岐部が保持される。よって、枝線10Bを幹線10Aから分岐させる分岐形成用の粘着テープの巻き付けを予め施しておく必要がなく、分岐テープ巻きなしの分岐を作成することができる。
【0040】
かつ、粘着テープによる巻き付けで、基板に幅方向に並設した突起23をコルゲートチューブ40の谷部40aに周状に嵌合することができ、ワイヤハーネスに外装したコルゲートチューブ40の軸線方向の移動を阻止した状態で安定してクリップ1−Aに取り付けることができる。よって、図8に示すように、コルゲートチューブ40を外装した幹線10Aが曲げ方向に引っ張られても、コルゲートチューブ40を長さ方向に位置ずれすることなく安定して保持できる。
【0041】
図9に第3実施形態のクリップ1−Bを示す。
第3実施形態のクリップ1−Bは第2実施形態のクリップの一方の幅広部21Bを無くした所謂片持ち形状としている。
【0042】
基板2は長さ方向の一側部は幅狭部20にすると共に他側部は幅広部21とし、幅狭部20の表面に車体係止部3を突設すると共に幅広部21に前記溝6を設けて可動領域としている。なお、幅広部21の裏面に突起を設けていない。
【0043】
前記の片持ち支持のクリップ1−Bは、ワイヤハーネスの電線本数が比較的少ない場合は片持ち支持で取付強度は確保できると共に、粘着テープの巻き付けが一カ所だけになる利点があるため、好適に用いられる。また、ワイヤハーネスにコルゲートチューブを外装していないため突起を設けていない。
【符号の説明】
【0044】
1 クリップ
2 基板
2a 表面
2d 裏面
3 車体係止部
4A、4B、5A、5B リブ
6 溝
10 ワイヤハーネス
10A 幹線
10B 枝線
11A、11B 粘着テープ
20 幅狭部
21(21A、21B) 幅広部
23 突起
40 コルゲートチューブ
40a 谷部
X1、X2 可動領域
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂成形品からなり、長さ方向に延在する基板の表面の幅方向の中央部に車体係止部を突設し、かつ、該車体係止部から離れた長さ方向の端部の粘着テープ巻付領域に溝を幅方向に並設して該基板の幅方向の両側を裏面側に向けて互いに近接する方向に湾曲できる可動領域とし、
前記基板の裏面に配置するワイヤハーネスの外周面に沿って前記可動領域を湾曲させ、該ワイヤハーネスと共に粘着テープを巻き付けてワイヤハーネスに取り付けるものとしていることを特徴とするワイヤハーネス用のクリップ。
【請求項2】
前記基板の長さ方向の端部の裏面に幅方向に間隔をあけて突起を設け、前記ワイヤハーネスに外装するコルゲートチューブの谷部に前記突起を嵌合させるものとしている請求項1に記載のワイヤハーネス用のクリップ。
【請求項3】
前記基板は長方形状とし、前記車体係止部は基板の長さ方向の中央部に設け、該基板の表面の長さ方向の両側部分に前記溝を長さ方向に延在すると共に幅方向に並設して、前記可動領域を設け、かつ、
前記基板の長さ方向の両端に幅方向の両側縁から裏側に向けて一対のリブを突設し、この幅方向に対向する一対のリブを互いに近接する方向に湾曲させ、該一対のリブもワイヤハーネスの外周面に沿わせる構成としている請求項1または請求項2に記載のワイヤハーネス用のクリップ。
【請求項4】
前記基板は、前記車体係止部を突設した中央部を幅狭部にすると共に、長さ方向の両側の粘着テープ巻付領域を幅広部とした可動領域とし、該両側の幅広部に前記溝を設けている請求項1または請求項2に記載のワイヤハーネス用のクリップ。
【請求項5】
前記基板は長さ方向の一側部は幅狭部にすると共に他側部は幅広部とし、前記幅狭部の表面に前記車体係止部を突設すると共に、前記幅広部の表面に前記溝を設けて可動領域を設けている請求項1または請求項2に記載のワイヤハーネス用のクリップ。
【請求項1】
樹脂成形品からなり、長さ方向に延在する基板の表面の幅方向の中央部に車体係止部を突設し、かつ、該車体係止部から離れた長さ方向の端部の粘着テープ巻付領域に溝を幅方向に並設して該基板の幅方向の両側を裏面側に向けて互いに近接する方向に湾曲できる可動領域とし、
前記基板の裏面に配置するワイヤハーネスの外周面に沿って前記可動領域を湾曲させ、該ワイヤハーネスと共に粘着テープを巻き付けてワイヤハーネスに取り付けるものとしていることを特徴とするワイヤハーネス用のクリップ。
【請求項2】
前記基板の長さ方向の端部の裏面に幅方向に間隔をあけて突起を設け、前記ワイヤハーネスに外装するコルゲートチューブの谷部に前記突起を嵌合させるものとしている請求項1に記載のワイヤハーネス用のクリップ。
【請求項3】
前記基板は長方形状とし、前記車体係止部は基板の長さ方向の中央部に設け、該基板の表面の長さ方向の両側部分に前記溝を長さ方向に延在すると共に幅方向に並設して、前記可動領域を設け、かつ、
前記基板の長さ方向の両端に幅方向の両側縁から裏側に向けて一対のリブを突設し、この幅方向に対向する一対のリブを互いに近接する方向に湾曲させ、該一対のリブもワイヤハーネスの外周面に沿わせる構成としている請求項1または請求項2に記載のワイヤハーネス用のクリップ。
【請求項4】
前記基板は、前記車体係止部を突設した中央部を幅狭部にすると共に、長さ方向の両側の粘着テープ巻付領域を幅広部とした可動領域とし、該両側の幅広部に前記溝を設けている請求項1または請求項2に記載のワイヤハーネス用のクリップ。
【請求項5】
前記基板は長さ方向の一側部は幅狭部にすると共に他側部は幅広部とし、前記幅狭部の表面に前記車体係止部を突設すると共に、前記幅広部の表面に前記溝を設けて可動領域を設けている請求項1または請求項2に記載のワイヤハーネス用のクリップ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−10575(P2012−10575A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−286600(P2010−286600)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]